(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】需要制御方法、制御装置、プログラム及び電力システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20230301BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230301BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20230301BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H02J3/38 120
G06Q50/06
H02J3/00 180
H02J3/32
(21)【出願番号】P 2019109777
(22)【出願日】2019-06-12
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】立岩 健二
(72)【発明者】
【氏名】八巻 康一郎
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101797(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138629(WO,A1)
【文献】特開2018-169860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 - 5/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生可能エネルギーを利用した発電設備が連系された電力系統に供給される供給電力に関する供給情報を取得し、
前記供給情報に基づき、前記供給電力が所定の上限値を超過するか否かを判定し、
前記上限値を超過すると判定した場合、前記供給電力と前記上限値との差分に相当する余剰電力を、仮想通貨のマイニングに係る演算を行う演算装置に供給する
処理をコンピュータが実行することを特徴とする需要制御方法。
【請求項2】
前記上限値を超過すると判定した場合、前記発電設備からの供給電力を受電する変電設備に配置された前記演算装置に前記余剰電力を供給する
ことを特徴とする請求項1に記載の需要制御方法。
【請求項3】
前記上限値を超過すると判定した場合、前記発電設備に配置された前記演算装置に、該発電設備が発電した前記余剰電力を供給する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の需要制御方法。
【請求項4】
前記余剰電力を、前記演算装置及びエネルギー貯蔵装置に配分して供給する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の需要制御方法。
【請求項5】
前記電力系統における需要電力を示す需要情報を取得し、
前記供給情報及び需要情報に基づき、前記供給電力が前記需要電力を超過するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の需要制御方法。
【請求項6】
前記電力系統の系統容量を記憶する記憶部を参照して、前記供給電力が前記系統容量を超過するか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の需要制御方法。
【請求項7】
前記演算装置におけるマイニングの実行履歴を、該演算装置が配置された前記電力系統の配置箇所と対応付けて記憶部に記憶し、
前記電力系統の指定入力を受け付け、
指定された前記電力系統に配置された一又は複数の前記演算装置におけるマイニングの実行履歴を出力する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の需要制御方法。
【請求項8】
前記供給情報に基づき、前記電力系統において前記供給電力が前記上限値を超過する過剰供給箇所を推定し、
前記過剰供給箇所に前記演算装置を配置すべき旨の配置情報を出力する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の需要制御方法。
【請求項9】
前記発電設備から前記演算装置に供給された前記余剰電力に応じて、該発電設備に対応する供給者との間で前記演算装置がマイニングした前記仮想通貨を分配するスマートコントラクトを生成する
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の需要制御方法。
【請求項10】
再生可能エネルギーを利用した発電設備が連系された電力系統に供給される供給電力に関する供給情報を取得する取得部と、
前記供給情報に基づき、前記供給電力が所定の上限値を超過するか否かを判定する判定部と、
前記上限値を超過すると判定した場合、前記供給電力と前記上限値との差分に相当する余剰電力を、仮想通貨のマイニングに係る演算を行う演算装置に供給するように制御する制御部と
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項11】
再生可能エネルギーを利用した発電設備が連系された電力系統に供給される供給電力に関する供給情報を取得し、
前記供給情報に基づき、前記供給電力が所定の上限値を超過するか否かを判定し、
前記上限値を超過すると判定した場合、前記供給電力と前記上限値との差分に相当する余剰電力を、仮想通貨のマイニングに係る演算を行う演算装置に供給するように制御する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
電力系統における電力の送配電を制御する制御装置と、
前記電力系統に連系され、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電設備と、
前記電力系統に配置され、仮想通貨のマイニングに係る演算を行う演算装置と
を有し、
前記制御装置は、
前記電力系統に供給される供給電力に関する供給情報を取得する取得部と、
前記供給情報に基づき、前記供給電力が所定の上限値を超過するか否かを判定する判定部と、
前記上限値を超過すると判定した場合、前記供給電力と前記上限値との差分に相当する余剰電力を前記演算装置に供給するように制御する制御部と
を備えることを特徴とする電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要制御方法、制御装置、プログラム及び電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光、風力、水力等の再生可能エネルギーを利用した発電設備が普及しつつある。しかしながら、再生可能エネルギーの発電設備が電力系統に多数連系された場合、電力系統への供給電力が過剰になる恐れがあり、出力抑制を行う必要があるなど、問題が起きている。
【0003】
例えば特許文献1では、太陽光発電システムを有する各需要家間における出力抑制のばらつきを低減するため、個々の需要家に対して出力抑制の目標値を定め、目標値に従って分散して出力抑制を行う太陽光発電システムの運転制御方法等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、自家発電を行う各需要者に対して課す出力抑制を公平にするのみで、余剰電力を好適に利用しているとは言えない。
【0006】
一つの側面では、余剰電力を好適に利用することができる需要制御方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの側面に係る需要制御方法は、再生可能エネルギーを利用した発電設備が連系された電力系統に供給される供給電力に関する供給情報を取得し、前記供給情報に基づき、前記供給電力が所定の上限値を超過するか否かを判定し、前記上限値を超過すると判定した場合、前記供給電力と前記上限値との差分に相当する余剰電力を、仮想通貨のマイニングに係る演算を行う演算装置に供給する処理をコンピュータが実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、余剰電力を好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】発電設備DB、需給DB、系統容量DB、マイニングマシンDB、蓄電装置DB、及び電力価格DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図5】端末が表示するレポート画面の一例を示す説明図である。
【
図6】電力供給制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】レポート表示処理に関する手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】変形例に係る発電設備の構成例を示す説明図である。
【
図10】実施の形態2に係るサーバが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態3に係るサーバが実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、電力システムの構成例を示す模式図である。本実施の形態では、商用電源系統である系統Sに連系され、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電設備4から供給される余剰電力を、仮想通貨のマイニングを行うマイニングマシン(演算装置)5に供給する電力システムについて説明する。電力システムは、情報処理装置1、端末2、変電所3、監視装置31、発電設備4、マイニングマシン5、蓄電装置6等を含む。情報処理装置1は、ネットワークNを介して系統Sを構成する各種装置と通信可能に構成されている。
【0011】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信を行う装置であり、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。本実施の形態において情報処理装置1はサーバ装置であるものとし、以下では簡潔のためサーバ1と読み替える。サーバ1は、系統Sを管理する電力会社のサーバ装置であり、広域の上位系統(基幹系統)S1から各地域(例えば各都道府県)の下位系統S2まで含む、系統Sにおける電力の送配電を制御する中央制御装置として機能する。
【0012】
端末2は、本システムの管理者(電力会社)が操作する端末装置であり、サーバ1のクライアント端末として機能するパーソナルコンピュータ等である。
【0013】
変電所3は、変圧器等を有する変電設備であり、例えば配電用変電所である。なお、変電所3は超高圧変電所、一次変電所、二次変電所(中間変電所)等であってもよい。変電所3は、上位系統S1、下位系統S2を介して電源8から送電された電力を降圧し、需要施設7に供給する。
図1に示すように、変電所3は発電設備4からの送電電力を受電可能に構成されている。
【0014】
発電設備4は、再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電設備であり、例えば太陽光発電設備である。なお、発電設備4による発電方式は再生可能エネルギーを用いたものであればよく、例えば風力発電所、水力発電所、地熱発電所等であってもよい。また、発電設備4は、例えば小口需要家が設置した自家発電用の小規模な設備であってもよく、あるいは所定の発電事業者が売電用に設置した大規模な設備であってもよい。発電設備4は、自装置で発電した電力を系統Sに供給可能に接続され、電力会社への売電を行う。
【0015】
なお、発電設備4の接続(連系)箇所は特に限定されず、例えば
図1に示すように、下位系統S2の送配電網に接続されてもよく、また、上位系統S1と下位系統S2の間の送配電網に接続されてもよい。
【0016】
マイニングマシン5は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の高速演算プロセッサを備え、ビットコイン(登録商標)、イーサリアム(登録商標)等の仮想通貨のマイニングに係る演算を行う演算装置である。仮想通貨は、ブロックチェーンと呼ばれる分散型台帳に取引の履歴が記録される暗号通貨であって、ネットワークN上に分散配置された各ノード(マイナー)が取引内容を検証することにより、取引の履歴が改竄困難に実現された暗号通貨である。なお、マイニングマシン5がマイニングを行う仮想通貨の種類は特に限定されない。また、
図1では便宜上、マイニングマシン5を一台のみ図示してあるが、実際には複数台のマイニングマシン5、5、5…が接続されている。
【0017】
例えばマイニングマシン5は、多数がコンテナ等に収容され、変電所3に配置されている。なお、
図1でマイニングマシン5は変電所3の低電圧側に接続されているが、高電圧側に接続されてもよい。
【0018】
また、マイニングマシン5と併設する形で、変電所3には蓄電装置6が配置されている。なお、
図1では蓄電装置6が一つのみ図示されているが、実際には複数の蓄電装置6、6、6…が接続されている。蓄電装置6もマイニングマシン5と同様に、コンテナ等に多数が収容され、変電所3に配置されている。
【0019】
なお、本実施の形態においてマイニングマシン5及び蓄電装置6は変電所3に配置されているものとして説明するが、系統Sにおけるマイニングマシン5及び蓄電装置6の接続箇所は変電所3に限定されず、系統Sを構成する各送電線、変電所3、電源8に相当する発電所、需要施設7、その他の設備の何れかに接続されていればよい。また、後述する変形例のように、再生可能エネルギーの発電設備4にマイニングマシン5及び蓄電装置6を配置してもよい。
【0020】
本実施の形態においてサーバ1は、再生可能エネルギーの発電設備4を含む各種電源から供給される電力が、送配電可能な上限値を表す所定の出力抑制値を超過するものと判定した場合、超過分の余剰電力をマイニングマシン5に供給し、消費するよう制御する。すなわち、サーバ1は、供給過剰の状態を解消するように、マイニングマシン5による需要を創出する。具体的には後述するように、サーバ1は、変電所3内に設置された監視装置31(例えばパーソナルコンピュータ)を介してマイニングマシン5及び/又は蓄電装置6への電力供給を制御し、各装置にマイニング及び/又は蓄電を行わせる。
【0021】
なお、本実施の形態では蓄電装置6(蓄電池)に余剰電力を供給して蓄電を行わせるものとして説明するが、サーバ1は、燃料電池、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES;Compressed Air Energy Storage)システムなどに余剰電力を供給してもよい。すなわち、サーバ1は、所定のエネルギー貯蔵装置に余剰電力を供給可能であればよく、当該装置は蓄電装置6に限定されない。
【0022】
また、本実施の形態では発電設備4からの電力の売電先が電力会社(一般送配電事業者)であるものとして説明するが、売電先は電力会社に限定されず、例えば小売電気事業者、需要家、あるいはP2P(Peer to Peer)で結び付く個人などであってもよい。また、本システムの管理者は電力会社以外に、例えば仮想発電所(VPP;Virtual Power Plant)の運営者、再生可能エネルギー発電事業者などであってもよい。すなわち、管理者は電力会社である必要はなく、また、システム管理者と売電先とは異なっていてもよい。
【0023】
図2は、サーバ1の構成例を示す模式図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、補助記憶部14を有する。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムPを読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。
【0024】
補助記憶部14は、ハードディスク、大容量メモリ等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部14は、発電設備DB141、需給DB142、系統容量DB143、マイニングマシンDB144、蓄電装置DB145、及び電力価格DB146を記憶している。発電設備DB141は、各発電設備4の情報を格納するデータベースである。需給DB142は、電力の需要情報及び供給情報を格納するデータベースである。系統容量DB143は、系統Sの系統容量に関する情報を格納するデータベースである。マイニングマシンDB144は、各マイニングマシン5の情報を格納するデータベースである。蓄電装置DB145は、各蓄電装置6の情報を格納するデータベースである。電力価格DB146は、電力取引市場における電力価格(例えば日本卸電力取引所における卸電力価格)のデータを格納するデータベースである。
【0025】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0026】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムPを読み取って実行するようにしても良い。あるいはサーバ1は、半導体メモリ1bからプログラムPを読み込んでも良い。
【0027】
図3は、発電設備DB141、需給DB142、系統容量DB143、マイニングマシンDB144、蓄電装置DB145、及び電力価格DB146のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
発電設備DB141は、発電設備ID列、種類列、接続列、発電量列を含む。発電設備ID列は、各発電設備4を識別するための発電設備IDを記憶している。種類列、接続列、及び発電量列はそれぞれ、発電設備IDと対応付けて、発電設備4の種類(発電方式)、系統Sにおける接続(連系)箇所、及び発電設備4の発電量を記憶している。
【0028】
需給DB142は、電力系統列、日時列、需要値列、供給値列を含む。電力系統列は、系統Sを地域毎に分類した各電力系統の系統名を記憶している。日時列、需要値列、及び供給値列はそれぞれ、系統名と対応付けて、日時、当該日時における電力需要値、及び供給値を記憶している。
【0029】
系統容量DB143は、電力系統列、送電線/変電所列、運用容量列、空容量列を含む。電力系統列は、系統Sを地域毎に分類した各電力系統の系統名を記憶している。送電線/変電所列、運用容量列、及び空容量列はそれぞれ、系統名と対応付けて、電力系統を構成する送電線又は変電所3、当該送電線又は変電所3の運用容量、及び空き容量を記憶している。
【0030】
マイニングマシンDB144は、マシンID列、接続列、消費電力列、演算列、採掘列を含む。マシンID列は、各マイニングマシン5を識別するためのマシンIDを記憶している。接続列、消費電力列、演算列、及び採掘列はそれぞれ、マシンIDと対応付けて、系統Sにおけるマイニングマシン5の接続(配置)箇所、マイニングマシン5の消費電力、単位時間当たりの演算量、及びマイニングの実行履歴を記憶している。
【0031】
蓄電装置DB145は、蓄電装置ID列、接続列、定格容量列、残容量列を含む。蓄電装置ID列は、各蓄電装置6を識別するための蓄電装置IDを記憶している。接続列、定格容量列、及び残容量列はそれぞれ、蓄電装置IDと対応付けて、蓄電装置6が接続されている電力系統上の接続箇所、蓄電装置6の定格容量、及び現在蓄電可能な残容量を記憶している。
【0032】
電力価格DB146は、時間帯列、価格列を含む。時間帯列は、電力取引市場において取引が行われた時間帯を記憶している。価格列は、時間帯と対応付けて、卸電力の取引価格を記憶している。
【0033】
図4は、実施の形態1の概要を示す説明図である。
図4Aでは、電力の需要値及び供給値の日内変動を示すグラフを図示している。
図4Bでは、系統容量に関する概念図を図示している。
図4に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0034】
図4Aでは一例として、発電設備4が太陽光発電を行うものとして図示してある。当然ながら、太陽光発電は日中行われるものであり、日中の供給電力が増加する。系統Sに多数の発電設備4、4、4…が接続されている場合、日中、各発電設備4からの供給電力が過多となり、系統Sに供給過剰状態が発生する恐れがある。これに対応するため、電力会社では火力発電所等における発電量を制御し、供給電力が需要電力と均衡するように制御している。しかしながら、電力会社側での供給制限で均衡が取れない場合、各発電設備4への出力抑制の要請を行わなければならず、問題となっている。
【0035】
また、
図4Bに示すように、系統Sで送配電可能な系統容量が不足し、新規の発電設備4を系統Sに連系できないという問題も顕在化している。系統Sを構成する各送電線、あるいは変電所3等の送配電設備には送電可能な定格容量が定められており、例えば日本では、定格容量の半分以内で送電を行うよう規定されている。しかしながら、多数の発電設備4、4、4…が連系されることにより、系統容量が不足し、新規参入者が系統Sへの連系を行えない地域もある。
【0036】
そこで本実施の形態では、上記の電力需給、あるいは系統容量の問題に対応するため、超過分の余剰電力をマイニングマシン5に供給する。具体的には以下のように、蓄電装置6も併用しながら、余剰電力をマイニングマシン5に供給して消費させる。
【0037】
例えばサーバ1は、ネットワークNを介して、系統Sを構成する電源8、送電線、変電所3、需要施設7等の各箇所に設置された電力計(不図示)から、系統Sの各箇所における電力の供給値を示す供給情報、及び需要値を示す需要情報を継続的に取得し、需給DB142に記憶している。また、サーバ1は、ネットワークNを介して再生可能エネルギーの発電施設4からも電力の供給情報を継続的に取得し、発電施設DB141に記憶している。
【0038】
サーバ1は、需給DB142に記憶されている供給情報及び需要情報を参照して、供給電力が需要電力を超過するか否かを判定する。例えばサーバ1は、系統Sにおける過去の供給値及び需要値から各パラメータの日内変動を予測し、供給電力が需要電力を超過する供給過剰箇所、及び需要電力を超過する時間帯等を推定する。なお、電力の供給値及び需要値の日内変動を予測する場合、サーバ1は、気象情報(気温、天候等)なども参照しながら各パラメータを予測してもよい。また、サーバ1は供給電力が需要電力を超過するか否かを判定可能であればよく、例えば現時点のパラメータからリアルタイムに供給超過を判定してもよい。
【0039】
また、サーバ1は、需給DB142に記憶されている供給情報と、系統容量DB143に記憶されている系統容量を参照して、供給電力が系統Sの系統容量を超過するか否かを判定する。例えばサーバ1は、過去の電力供給値から供給電力の日内変動を予測し、系統Sを構成する各送電線、変電所3等の各箇所における系統容量と供給電力の予測値とを比較して、供給電力が系統容量を超過する供給過剰箇所、時間帯等を推定する。なお、この場合も上記と同様に、気象情報等も参照しながら供給電力の日内変動を予測してよい。
【0040】
上述の如く、サーバ1は、上限値として需要電力又は系統容量を供給電力と比較し、供給電力が上限値を超過するか否かを判定する。供給電力が上限値を超過すると判定した場合、サーバ1は、供給電力と上限値との差分、すなわち超過分の余剰電力を消費するように、マイニングマシン5に電力を供給する。
【0041】
例えばサーバ1は、マイニングマシンDB144を参照して、供給過剰箇所に対応する変電所3に配置されたマイニングマシン5、5、5…を特定する。サーバ1は、各マイニングマシン5の消費電力値を参照して、上記の余剰電力を複数のマイニングマシン5、5、5…で消費するように、各マイニングマシン5に供給する余剰電力の供給量及び配分を決定する。
【0042】
本実施の形態ではさらに、マイニングマシン5だけでなく蓄電装置6を併用し、マイニングマシン5及び蓄電装置6に余剰電力を配分して供給する。余剰電力の配分方法は特に限定されないが、例えばサーバ1は、余剰電力をマイニングマシン5、5、5…に優先的に供給し、変電所3に配置された全てのマイニングマシン5に供給しても余剰電力を消費できない場合、さらに蓄電装置6、6、6…に供給するように配分する。
【0043】
なお、上記の供給方法(配分方法)は一例であって、例えば蓄電装置6に優先的に供給するようにしてもよい。また、例えばサーバ1は、仮想通貨の現在のレート情報(時価)、マイニングの難易度(Difficulty)等を参照してマイニングによる収益の期待値を計算し、余剰電力の供給配分を決定してもよい。
【0044】
また、例えばサーバ1は、仮想通貨のレート情報、マイニングの難易度等以外に、電力価格に基づいて余剰電力の供給配分を決定してもよい。例えばサーバ1は、電力取引市場における各時間帯の卸電力価格を電力価格DB146に格納しておき、当該卸電力価格を参照して、蓄電装置6に蓄電した電力の放電時における価格を予測し、余剰電力の供給配分を決定する。上記のように、サーバ1は、仮想通貨の時価情報、及び電力価格の時価情報に基づき、マイニングマシン5及び蓄電装置6への余剰電力の供給配分を決定してもよい。
【0045】
上述の如く、サーバ1はマイニングマシン5及び/又は蓄電装置6に供給する余剰電力の供給量及び配分を決定し、当該配分で各マイニングマシン5及び/又は蓄電装置6に余剰電力を供給するように制御する。マイニングマシン5及び蓄電装置6はそれぞれ、余剰電力の供給を受けて、仮想通貨のマイニングに係る演算処理、及び蓄電を行う。
【0046】
サーバ1は監視装置31を介して、各マイニングマシン5におけるマイニングの実行履歴、及び各蓄電装置6における蓄電履歴に関するデータを逐次取得して、マイニングマシンDB144及び蓄電装置DB145に記憶しておく。サーバ1はマイニングマシンDB144及び蓄電装置DB145に各々記憶されているマイニングマシン5の実行履歴及び蓄電装置6の蓄電履歴を参照しながら、以降も余剰電力を各装置に供給していく。
【0047】
図5は、端末2が表示するレポート画面の一例を示す説明図である。
図5では、マイニングマシン5によるマイニングの実行履歴を示すレポート画面の一例を図示している。例えばサーバ1は、端末2からの要求に応じてマイニングの実行履歴を出力し、
図5の画面を端末2に表示させる。
【0048】
例えばサーバ1は、地域指定欄51への操作入力に応じて、マイニング結果の表示対象とする電力系統(上位系統S1、又は下位系統S2)の指定入力を受け付ける。電力系統の指定入力を受け付けた場合、サーバ1は、指定された電力系統に接続されている各マイニングマシン5の実行履歴(例えば前日の実行履歴)を示すレポート画面を生成して端末2に出力する。
【0049】
例えばレポート画面は、需給グラフ52、マイニンググラフ53、及び一覧表54を含む。需給グラフ52は、指定された電力系統における電力の需要値及び供給値の日内変動と、卸電力価格の日内変動とを示すグラフである。マイニンググラフ53は、当該系統に配置されたマイニングマシン5、5、5…におけるマイニングの演算量の総和、及び仮想通貨の採掘量の総和それぞれの日内変動を示すグラフである。一覧表54は、個々のマイニングマシン5のデータ(例えばマイニングの実行履歴、マイニングマシン5が系統Sに接続されている接続箇所等)を一覧で示す表である。
【0050】
サーバ1は、需給DB142、電力価格DB146を参照して指定された電力系統の需給グラフ52を生成すると共に、マイニングマシンDB144を参照してマイニンググラフ53及び一覧表54を生成し、端末2に出力する。端末2は、需給グラフ52、マイニンググラフ53、及び一覧表54を示すレポート画面を表示し、指定された電力系統における電力の需給履歴、取引価格の履歴と、マイニングの実行履歴とを対比可能なように管理者に提示する。これにより管理者(電力会社)は、各地域(電力系統)におけるマイニングの実行履歴を容易に把握することができると共に、電力需給、卸電力価格との関係を容易に把握することができる。
【0051】
図6は、電力供給制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6に基づき、サーバ1が実行する電力供給制御処理の内容について説明する。
サーバ1の制御部11は、系統Sに供給される供給電力であって、再生可能エネルギーを利用した発電設備4からの供給電力を含む、各種電源からの供給電力に関する供給情報を取得する(ステップS11)。制御部11は系統容量DB143を参照して、供給電力が系統Sの系統容量を超過するか否かを判定する(ステップS12)。
【0052】
系統容量を超過しないと判定した場合(S12:NO)、制御部11は、各需要施設7で消費される需要電力に関する需要情報を取得する(ステップS13)。制御部11は、供給情報及び需要情報を参照して、供給電力が需要電力を超過するか否かを判定する(ステップS14)。需要電力を超過しないと判定した場合(S14:NO)、制御部11は一連の処理を終了する。
【0053】
供給電力が系統容量を超過すると判定した場合(S12:YES)、又は供給電力が需要電力を超過すると判定した場合(S14:YES)、制御部11は、超過分の余剰電力を算出する(ステップS15)。制御部11は、余剰電力を消費するように、発電設備4からマイニングマシン5及び/又は蓄電装置6(エネルギー貯蔵装置)に供給する余剰電力の電力量及び配分を決定する(ステップS16)。この場合に制御部11は、例えば仮想通貨の時価情報、及び卸電力価格の時価情報を参照して配分を決定してもよい。制御部11は、決定した配分でマイニングマシン5及び/又は蓄電装置6に余剰電力を供給するように、監視装置31を介して供給電力を制御する(ステップS17)。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0054】
図7は、レポート表示処理に関する手順の一例を示すフローチャートである。
図7に基づき、マイニングの実行履歴を示すレポート画面を端末2に表示させる際の処理内容を説明する。
サーバ1の制御部11は端末2から、マイニング履歴を表示させる電力系統(上位系統S1又は下位系統S2)の指定入力を受け付ける(ステップS31)。制御部11は、指定された電力系統について、当該系統に接続された各マイニングマシン5でのマイニングの実行履歴、当該系統における電力の需給履歴等のデータを各データベースから読み出す(ステップS32)。
【0055】
制御部11は、指定された電力系統におけるマイニングの実行履歴と、当該系統における電力の需給履歴とを示すレポート画面を生成する(ステップS33)。例えば制御部11は、
図5に例示したように、電力の需給値、卸電力価格と仮想通貨のマイニング量とを時系列で示すグラフを表示すると共に、マイニングマシン5毎の実行履歴を一覧で示すレポート画面を生成する。制御部11は、生成したレポート画面を端末2に出力し(ステップS34)、一連の処理を終了する。
【0056】
以上より、本実施の形態1によれば、余剰電力をマイニングマシン5に供給することで、余剰電力を好適に利用することができる。
【0057】
また、本実施の形態1によれば、発電設備4からの供給電力を受電する変電所3にマイニングマシン5を配置することで、より好適に余剰電力を消費させることができる。
【0058】
また、本実施の形態1によれば、蓄電装置6(エネルギー貯蔵装置)を併用することで、より好適に余剰電力を消費させることができる。
【0059】
また、本実施の形態1によれば、系統Sの需要電力から余剰電力の発生を好適に検知することができる。
【0060】
また、本実施の形態1によれば、系統Sの系統容量から余剰電力の発生を好適に検知することができる。
【0061】
また、本実施の形態1によれば、各電力系統(上位系統S1、下位系統S2)におけるマイニングの実行履歴を容易に確認することができる。
【0062】
(変形例)
実施の形態1では、マイニングマシン5を変電所3、つまり管理者(電力会社)側の設備に配置する形態について説明した。しかしながら、マイニングマシン5を個々の発電設備4に配置し、発電設備4毎にマイニングを行うようにしてもよい。ここでは変形例として、マイニングマシン5(及び蓄電装置6)を個々の発電設備4に配置する形態について説明する。
【0063】
図8は、変形例に係る発電設備4の構成例を示す説明図である。変形例に係る発電設備4は、コントローラ41、発電モジュール42、PCS(Power Conditioner)43、マイニングマシン5、蓄電装置6等を有する。コントローラ41は、発電設備4における発電、送電等を管理する制御装置であり、ネットワークNに接続されている。発電モジュール42は太陽光パネル等を含むモジュールであり、太陽光を利用した発電を行う。PCS43は、発電モジュール42が発電した電力のDC/AC変換を行う変換器であり、不図示の配電盤等を介して系統Sの送電線に接続されている。
【0064】
例えばマイニングマシン5及び蓄電装置6はPCS43に接続されており、発電モジュール42から発電電力を供給可能に構成されている。例えばコントローラ41は、サーバ1からの指令に従ってPCS43を制御し、発電モジュール42が発電した電力を送電線に供給するか、あるいはマイニングマシン5及び/又は蓄電装置6に供給する。
【0065】
サーバ1は実施の形態1と同じく、系統Sにおいて供給電力が上限値を超過するか否か判定する。上限値を超過すると判定した場合、サーバ1は各発電設備4のコントローラ41を介してPCS43を制御し、マイニングマシン5及び/又は蓄電装置6への電力供給を行う。これにより、系統Sに出力される電力を抑制し、供給過剰となる事態を防止する。
【0066】
マイニングマシン5及び蓄電装置6の配置が異なる以外は実施の形態1とほぼ同じであるため、変形例ではフローチャートその他の詳細な説明は省略する。
【0067】
(実施の形態2)
本実施の形態では、系統Sにおいて供給電力が過剰となる供給過剰箇所にマイニングマシン5を配置するように、マイニングマシン5の最適配置(配置情報)を管理者に提案する形態について述べる。なお、実施の形態1と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、実施の形態2の概要を示す説明図である。
図9では、系統Sの送配電網が分岐している様子を概念的に図示している。
図9に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0068】
系統Sは上位系統S1から下位系統S2に至るまで、階層的かつ複雑に送配電網が構成されている。本実施の形態でサーバ1は、系統Sにおいて供給電力が上限値を超過して供給過剰状態になると想定される供給過剰箇所を推定し、当該箇所にマイニングマシン5(及び蓄電装置6)を配置するように管理者(電力会社等)に提案する。
【0069】
例えばサーバ1は、需給DB142に記憶されている過去の供給情報及び需要情報、系統容量DB143に記憶されている系統Sの各箇所の系統容量等を参照して、供給電力が上限値を超過する供給過剰箇所を推定する。例えばサーバ1は実施の形態1と同じく、供給電力及び需要電力の予測値を算出して、各箇所において供給電力が需要電力を超過するか否かを判定する。また、サーバ1は、供給電力の予測値を系統容量と比較して、供給電力が系統容量を超過するか否かを判定する。これによりサーバ1は、
図9において太線で示すように、系統Sにおける供給過剰箇所を推定する。
【0070】
供給過剰箇所が推定された場合、サーバ1は、当該箇所で発生する余剰電力を算出し、算出した余剰電力を消費可能なように、当該箇所に配置すべきマイニングマシン5の台数等を決定する。なお、実施の形態1と同様に、マイニングマシン5に加えて蓄電装置6も接続するように決定してもよい。サーバ1は、決定したマイニングマシン5の配置箇所及び台数を示す配置情報を端末2に通知し、表示させる。例えばサーバ1は、マイニングマシン5を接続すべき箇所及び台数を示す系統Sの結線図等を表示させて、マイニングマシン5の最適配置を管理者に提示する。
【0071】
図10は、実施の形態2に係るサーバ1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
サーバ1の制御部11は、需給DB142、系統容量DB143等の各データベースから、系統Sにおける過去の電力供給値を示す供給情報、過去の需要値を示す需要情報、系統Sを構成する各送電線、変電所3等の系統容量などのデータを読み出す(ステップS201)。制御部11は、取得した各種データに基づき、系統Sにおいて供給電力が上限値を超過する供給過剰箇所を推定する(ステップS202)。
【0072】
制御部11は、推定された供給過剰箇所における超過分の供給電力(余剰電力)を算出し、算出した供給電力を消費可能なように、マイニングマシン5(及び蓄電装置6)の配置箇所及び台数を決定する(ステップS203)。制御部11は、決定したマイニングマシン5の配置箇所及び台数を示す配置情報を端末2に出力し(ステップS204)、一連の処理を終了する。
【0073】
以上より、本実施の形態2によれば、マイニングマシン5の最適配置を管理者に提示することができる。
【0074】
(実施の形態3)
本実施の形態では、マイニングした仮想通貨を、発電設備4により系統Sに電力を供給する供給者(需要家、発電事業者等)と、系統Sを管理する管理者(電力会社等)との間で分配する形態について説明する。
図11は、実施の形態3の概要を示す説明図である。
図11では、マイニングした仮想通貨を供給者及び管理者に分配する様子を概念的に図示している。
図11に基づき、実施の形態3の概要を説明する。
【0075】
実施の形態1で説明したように、サーバ1は発電施設4からの供給電力(余剰電力)をマイニングマシン5に供給し、マイニングを行わせる。この場合に、管理者(電力会社)は法定通貨等による決済を行って供給者から買電を行うようにしてもよいが、本実施の形態では、供給電力の買取額をマイニングした仮想通貨の一部で支払い、残りの利益相当額の仮想通貨を管理者が得るようにする。
【0076】
上述の処理をブロックチェーン上で実現するために、サーバ1は、マイニングした仮想通貨を管理者及び供給者の間で分配するためのスマートコントラクトを生成し、トランザクションの検証を行うブロックチェーンの各ノードに出力(ブロードキャスト)しておく。スマートコントラクトは、当事者が事前に取り決めた契約条件に従って契約を自動的に執行するプログラムである。サーバ1は、供給者との間で契約内容を事前合意してスマートコントラクト(例えばイーサリアムの場合はコントラクトアカウント)を生成し、各ノードにブロードキャストしてブロックチェーンに記録しておく。
【0077】
例えばサーバ1は供給者との間で、管理者が供給者から電力を買い取る際の、単位数量当たりの電力の買取額を事前に取り決めておく。また、サーバ1は実施の形態1と同様に、供給電力(の予測値)が上限値を超過するか否かを判定し、発電設備4からマイニングマシン5に供給する余剰電力の供給量等を決定する。そしてサーバ1は、取り決めてある単位数量当たりの買取額に基づき、上記で決定した供給量の余剰電力を買い取る際の買取額を算出する。サーバ1は、当該買取額に従い、マイニングされる仮想通貨を分配するスマートコントラクトを生成する。
【0078】
例えばサーバ1は、ブロックチェーンの各ノードに、上記の買取額と、マイニングされた仮想通貨の数量とを比較してマイニングによる利益が発生したか否かを判定し、利益が発生した場合は買取額に相当する数量の仮想通貨を供給者に送金し、利益額に相当する数量の仮想通貨を管理者に送金する処理を実行させるスマートコントラクトを生成する。なお、この場合に各ノードが仮想通貨を法定通貨に換算するためのレート情報が必要になるが、例えば信頼できる外部API(第三者)からレート情報を参照する、あるいは複数のユーザが合意してレート情報を逐次更新する別のスマートコントラクト(データフィールドコントラクト)をブロックチェーンに用意して参照するなど、種々の方法が考えられる。
【0079】
サーバ1は、上記で生成したスマートコントラクトをブロックチェーンの各ノードにブロードキャストする。ブロックチェーンの各ノードは当該スマートコントラクトを検証し、問題なければブロックチェーンに記録する。
【0080】
その後、サーバ1は余剰電力をマイニングマシン5に供給し、マイニングを実行させる。そしてサーバ1は、マイニングされた仮想通貨を上記のスマートコントラクトに送金するトランザクションを生成してブロードキャストする。当該トランザクションを取得した各ノードは、予め記録されているスマートコントラクトを呼び出して実行し、マイニングされた仮想通貨の法定通貨換算額を算出し、上記の買取額と比較して利益が発生したか否かを判定する。そして各ノードは、スマートコントラクトに従って買取額相当の仮想通貨を供給者に送金し、利益額相当の仮想通貨を管理者に送金するトランザクションを生成してブロックチェーンに記録する。
【0081】
なお、上記では特段説明しなかったが、マイニングした仮想通貨の価値が買取額未満となり、利益が発生しない可能性もある。この場合、例えばマイニングされた仮想通貨を全て供給者に送金し、不足分の金額に相当する仮想通貨を管理者のウォレットから補填(送金)するなど、スマートコントラクトの契約条件として種々の対応が考えられる。
【0082】
図12は、実施の形態3に係るサーバ1が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。サーバ1の制御部11は、実施の形態1の処理に従って供給電力が上限値を超過するものと判定し、発電設備4からの余剰電力をマイニングマシン5に供給してマイニングを行わせる場合に、以下の処理を実行する。
制御部11は、供給者との間で事前に取り決めた単位数量当たりの電力の買取額と、発電設備4からマイニングマシン5に供給される余剰電力の供給量とに基づき、余剰電力の買取額を算出する(ステップS301)。制御部11は、算出した買取額に基づき、マイニングされる仮想通貨を供給者との間で分配するためのスマートコントラクトを生成し、ブロックチェーンの各ノードに出力する(ステップS302)。例えば制御部11は、マイニングした仮想通貨の内、供給者(発電設備4)からの供給電力に相当する数量の仮想通貨を供給者に送金し、残りの仮想通貨を管理者に送金するスマートコントラクトを生成する。制御部11は、当該スマートコントラクトを各ノードにブロードキャストして検証(マイニング)させ、ブロックチェーンに記録する。
【0083】
制御部11は、余剰電力をマイニングマシン5に供給し、マイニングを実行させる(ステップS303)。制御部11は、マイニングした仮想通貨を、ステップS304で生成したスマートコントラクトに送金するトランザクションを生成して各ノードに出力する(ステップS304)。当該トランザクションを取得した各ノードは、ステップS302でブロックチェーンに記録されたスマートコントラクトを呼び出して実行し、マイニングされた仮想通貨を管理者及び供給者に分配して送金するトランザクションを生成する。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0084】
以上より、本実施の形態3によれば、改竄困難なブロックチェーン上で利益分配が可能となり、一連のシステムを好適に運用することができる。
【0085】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 サーバ(情報処理装置)
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
P プログラム
141 発電設備DB
142 需給DB
143 系統容量DB
144 マイニングマシンDB
145 蓄電装置DB
146 電力価格DB
2 端末
3 変電所
4 発電設備
5 マイニングマシン(演算装置)
6 蓄電装置
7 需要施設
8 電源
S 系統
S1 上位系統
S2 下位系統