(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/214 20110101AFI20230301BHJP
B60R 21/231 20110101ALI20230301BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20230301BHJP
【FI】
B60R21/214
B60R21/231
B60R21/2338
(21)【出願番号】P 2019145759
(22)【出願日】2019-08-07
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 郁雄
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/132332(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0215338(US,A1)
【文献】米国特許第09725064(US,B1)
【文献】特開2018-171967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるルーフ内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて、下方に向かって突出するように展開膨張可能なエアバッグを、有し、膨張完了時の前記エアバッグにより、座席に着座した乗員を保護可能な乗員保護装置であって、
前記エアバッグが、膨張完了時に、
内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、車幅方向側で並設される後部座席の前方において、各後部座席の前方を連続して覆うように車幅方向に略沿って連続的に形成される略板状の車幅方向膨張部と、
該車幅方向膨張部の後面側からそれぞれ前記各後部座席側に向かって突出するように配置される突出膨張部と、
を備える構成とされ、
前記車幅方向膨張部が、上下方向に略沿うように配置されて、前記各後部座席に着座した後側乗員の前方を覆う構成とされ、
前記突出膨張部が、前記車幅方向膨張部における下側の領域において、前記後側乗員と相対して配置されるとともに、外形形状を略直方体状として、膨張完了時の後面を、後側乗員における上半身の下部側の領域を受止可能な下部受止面とし、該下部受止面から連なるように配置される膨張完了時の上面を、前記後側乗員の上半身の上部側の領域を受止可能な上部受止面として、構成され
、
前記下部受止面が、上下方向に略沿うように形成され、
前記上部受止面が、前記下部受止面にかけて下降するように、後下がりに傾斜して、形成されていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記エアバッグが、相互に分離して配設される前記後部座席間を区画するように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、前記車幅方向膨張部の中央付近から後方に延びるような略板状とされる前後方向膨張部を、備える構成とされ、
該前後方向膨張部が、上下方向に略沿うように配置されて、前記後側乗員の側方を覆い可能に、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記前後方向膨張部が、前記車幅方向膨張部から前方に延びるように配置される前側膨張部位を、備える構成とされ、
該前側膨張部位が、車幅方向側で相互に分離するように並設される前部座席間に配置されるとともに、上下方向に略沿うように配置されて該前部座席に着座した前側乗員の側方を覆い可能に、構成されていることを特徴とする請求項2に記載の乗員保護装置。
【請求項4】
前記車幅方向膨張部よりも後側に配置される前記前後方向膨張部の後側膨張部位において、前記車幅方向膨張部の近傍となる位置に、それぞれ、前記後部座席の座面より上側となる位置において、前記各後部座席側に向かって突出するように配置される後側側方突出膨張部が、形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乗員保護装置。
【請求項5】
前記後側側方突出膨張部が、膨張完了時に車幅方向の外側に配置される壁部において、下側の領域を、上下方向に略沿わせ、上側の領域を、下側の領域にかけて下降させるように傾斜させて、構成されていることを特徴とする請求項4に記載の乗員保護装置。
【請求項6】
前記前側膨張部位において、前記車幅方向膨張部の近傍となる位置に、それぞれ、前記前部座席の座面より上側となる位置において、前記各前部座席に向かって突出するように配置される前側側方突出膨張部が、形成されていることを特徴とする
請求項4または5に記載の乗員保護装置。
【請求項7】
前記前側側方突出膨張部が、膨張完了時に車幅方向の外側に配置される壁部において、下側の領域を、上下方向に略沿わせ、上側の領域を、下側の領域にかけて下降させるように傾斜させて、構成されていることを特徴とする請求項6に記載の乗員保護装置。
【請求項8】
前記後側側方突出膨張部が、前記突出膨張部から連なるようにして、形成されていることを特徴とする
請求項4乃至7のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【請求項9】
前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターが、前記車幅方向膨張部の左端側及び右端側と、前記前後方向膨張部の前端側及び後端側と、前記車幅方向膨張部と前記前後方向膨張部との交差部位と、の5箇所に、配設されていることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか1項に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるルーフ内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて、下方に向かって突出するように展開膨張可能なエアバッグを、有し、膨張完了時のエアバッグにより、座席に着座した乗員を保護可能な乗員保護装置に、関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、車幅方向側で並設される前席と後席とを有する車両に搭載されて、膨張完了時に、各前席,後席間を区画するように、上方から見て略十字形の板状に膨張するエアバッグを、備える構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の乗員保護装置では、エアバッグは、前席,後席間を区画するように配置されて、前席,後席に着座した乗員の前方を覆う構成であるものの、膨張完了形状を板状とされていることから、車両の衝突時において、膨張したエアバッグに向かうように移動する乗員を安定して拘束する点に、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、乗員を安定して保護することが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、車両におけるルーフ内に折り畳まれて収納されて、内部に膨張用ガスを流入させて、下方に向かって突出するように展開膨張可能なエアバッグを、有し、膨張完了時のエアバッグにより、座席に着座した乗員を保護可能な乗員保護装置であって、
エアバッグが、膨張完了時に、
内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、車幅方向側で並設される後部座席の前方において、各後部座席の前方を連続して覆うように車幅方向に略沿って連続的に形成される略板状の車幅方向膨張部と、
車幅方向膨張部の後面側からそれぞれ各後部座席側に向かって突出するように配置される突出膨張部と、
を備える構成とされ、
車幅方向膨張部が、上下方向に略沿うように配置されて、各後部座席に着座した後側乗員の前方を覆う構成とされ、
突出膨張部が、車幅方向膨張部における下側の領域において、後側乗員と相対して配置されるとともに、外形形状を略直方体状として、膨張完了時の後面を、後側乗員における上半身の下部側の領域を受止可能な下部受止面とし、下部受止面から連なるように配置される膨張完了時の上面を、後側乗員の上半身の上部側の領域を受止可能な上部受止面として、構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、エアバッグが、後部座席の前方を連続して覆うように板状に膨張している車幅方向膨張部と、この車幅方向膨張部の後面側から部分的に突出する突出膨張部と、を備える構成とされ、この突出膨張部は、各後部座席に着座した後側乗員と相対するように、配置される構成である。そのため、車両の衝突時において、後側乗員が、エアバッグに向かうように、前方移動する際に、この後側乗員を、相対して配置される突出膨張部により、安定して拘束することができる。具体的には、突出膨張部は、膨張完了時の後面から構成される下部受止面により、前方移動する後側乗員の上半身の下部側の領域を受け止め、その後、下部受止面から連なる上部受止面により、後側乗員の上半身における上部側の領域を受け止めることとなり、突出膨張部によって、前方移動する乗員を、的確に、拘束することができる。また、本発明の乗員保護装置では、膨張完了時のエアバッグにおいて、車幅方向膨張部が、各後部座席の前方を連続して覆うように、車幅方向に略沿って連続的に形成される略板状とされていることから、例えば、後側乗員が、突出膨張部の配置領域からそれるように車幅方向の中央側の斜め前方に向かって移動することとなっても、車幅方向膨張部によって、さらなる前方移動を規制することができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、乗員を安定して保護することができる。
【0009】
また、本発明の乗員保護装置において、エアバッグに、相互に分離して配設される後部座席間を区画するように、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、車幅方向膨張部の中央付近から後方に延びるような略板状とされる前後方向膨張部を、配設させる構成とし、
前後方向膨張部を、上下方向に略沿うように配置されて、後側乗員の側方を覆い可能に、構成することが、好ましい。
【0010】
乗員保護装置を上記構成とすれば、後部座席間を、膨張完了時のエアバッグにおいて、内部に膨張用ガスを流入させて板状に膨張している前後方向膨張部によって、区画することができ、後側乗員が車幅方向の中央側となる側方に移動することとなっても、後部座席間に膨張している前後方向膨張部によって、拘束することができる。
【0011】
さらに、上記構成の乗員保護装置において、前後方向膨張部を、車幅方向パネル部から前方に延びるように配置される前側膨張部位を、備える構成とし、
前側膨張部位を、車幅方向側で相互に分離するように並設される前部座席間に配置させるとともに、上下方向に略沿うように配置されて前部座席に着座した前側乗員の側方を覆い可能に、構成することが、好ましい。
【0012】
乗員保護装置を上記構成とすれば、前部座席に着座した前側乗員が、車幅方向の中央側となる側方に移動することとなっても、前部座席間に膨張している前後方向膨張部の前側膨張部位によって、拘束することができる。
【0013】
さらにまた、上記構成の乗員保護装置において、車幅方向膨張部よりも後側に配置される前後方向膨張部の後側膨張部位において、車幅方向膨張部の近傍となる位置に、それぞれ、後部座席の座面より上側となる位置において、各後部座席側に向かって突出するように配置される後側側方突出膨張部を、形成する構成とすれば、車幅方向の中央側となる側方に向かって移動する後側乗員を、後側側方突出膨張部によって、的確に拘束することができて、好ましい。
【0014】
さらにまた、上記構成の乗員保護装置において、前側部位において、車幅方向膨張部の近傍となる位置に、それぞれ、前部座席の座面より上側となる位置において、各前部座席に向かって突出するように配置される前側側方突出膨張部を、形成する構成とすれば、車幅方向の中央側となる側方に向かって移動する前側乗員を、前側側方突出膨張部によって、的確に拘束することができて、好ましい。
【0015】
さらにまた、上記構成の乗員保護装置において、後側側方突出膨張部を、突出膨張部から連なるようにして、形成する構成とすれば、後側側方突出膨張部と突出膨張部とが、後側乗員の前方から車幅方向の中央側の側方にかけて、連続的に配置されることとなり、後側乗員が、車幅方向の中央側の斜め前方に向かって移動することとなっても、この後側乗員を、後側側方突出膨張部と突出膨張部とによって、的確に拘束することができて、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させた車両の概略部分拡大平面図である。
【
図2】実施形態の乗員保護装置を搭載させる車両の車室内を示す概略部分拡大平面図である。
【
図3】実施形態の乗員保護装置を搭載させる車両の概略部分拡大断面図である。
【
図4】実施形態の乗員保護装置の概略部分拡大断面図である。
【
図5】実施形態の乗員保護装置で使用されるエアバッグを単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
【
図12】
図5のエアバッグにおいて、交差部位を示す部分拡大横断面図である。
【
図13】
図5のエアバッグを構成する基材を示す平面図である。
【
図14】
図5のエアバッグを構成する基材の残りを示す平面図である。
【
図15】
図5のエアバッグを構成する基材の残りを示す平面図である。
【
図16】
図5のエアバッグを構成する基材の残りを示す平面図である。
【
図17】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略平面図である。
【
図18】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略側面図である。
【
図19】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略背面図である。
【
図20】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略部分拡大側面図である。
【
図21】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略部分拡大平面図である。
【
図22】実施形態の乗員保護装置を搭載した車両において、座席を回転させた状態を示す概略平面図である。
【
図23】実施形態の乗員保護装置を搭載した車両において、座席を回転させた別の状態を示す概略平面図である。
【
図24】実施形態の乗員保護装置を搭載した車両において、座席を回転させた別の状態を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Mを搭載する車両Vは、
図1,2に示すように、前部座席FSとしての運転席DSと助手席PSとを、相互に分離させるとともに、車幅方向側で並設させ、後部座席RS(RS1,RS2)を、相互に分離させるとともに、車幅方向側で並設させている。
【0018】
乗員保護装置Mは、車両VのルーフR内に折り畳まれて収納されるエアバッグ15と、エアバッグ15に膨張用ガスを供給可能なインフレーター10と、を備えている。また、乗員保護装置Mは、
図3に示すように、下面側を全域にわたって、ルーフRを構成するルーフヘッドライニング5により覆われて、ルーフR内に収納されている。ルーフヘッドライニング5には、エアバッグ15の展開膨張時に、破断して、エアバッグ15を下方に突出可能な破断予定部6が、上面側から切り欠かれるような薄肉状として(
図4参照)、連続的に、エアバッグ15の配置領域の略全長にわたって、配設されている。実施形態の場合、エアバッグ15は、
図1に示すように、上方側から見て略十字状に折り畳まれた折り完了体55の状態で、ルーフR内に収納される構成であり、破断予定部6は、帯状の折り完了体55の幅方向の略中央を通り、かつ、折り完了体55の全長にわたるようにして、上方側から見て略十字形状に、配置されている(
図1参照)。また、実施形態では、ルーフヘッドライニング5の上面側には、折り完了体55の周囲(幅方向の両側)を囲むように、上方に突出する規制壁部7が、並列状態として、連続的に形成されている(
図4参照)。この対向して配置される2つの規制壁部7,7は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張するエアバッグ15を、並列される規制壁部7,7間に配置された破断予定部6を破断させて、ルーフヘッドライニング5から下方に円滑に突出させるために、形成されるもので、ボディ1側の部材であるクロスメンバ3の近傍まで延びるように、配設されている。
【0019】
インフレーター10は、実施形態の場合、エアバッグ15(折り完了体55)の前端15a側,後端15b側,左端15c側,右端15d側と、エアバッグ15における後述する車幅方向膨張部17と前後方向膨張部27との交差部位36と、の5箇所に、配設されている(
図1,6参照)。実施形態の場合、インフレーター10としては、外形形状を略円柱状とされるシリンダタイプのものが使用されている。インフレーター10は、車幅方向膨張部17の領域内である左端15c側,右端15d側,交差部位36においては、軸方向を左右方向に略沿わせるように配置され、前後方向膨張部27の領域内である前端15a側,後端15b側においては、軸方向を前後方向に略沿わせるように配置されている。具体的には、各インフレーター10は、詳細な図示を省略するが、一端側に、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出口を備え、ガス吐出口から吐出される膨張用ガスをエアバッグ15内に流出させる構成である。実施形態の場合、各インフレーター10は、
図4に示すように、取付手段としてのボルト10aを外部に突出させるようにして、エアバッグ15内に収納され、このボルト10aを利用して、エアバッグ15とともに、ボディ1側の部材であるクロスメンバ3に取り付けられている。クロスメンバ3は、
図1に示すように、ルーフRの前縁及び後縁と、ルーフRの前後の中間部位を略等分割するような3箇所と、の、計5箇所において、それぞれ、車幅方向の全域にわたって、連続的に配設されている。詳細には、実施形態の場合、中央に配置される中央クロスメンバ3Cは、車両Vを上方から見た状態において、前後の中央よりやや前方となる位置であって、前部座席FSと後部座席RSとの間となる位置に、配置される。そして、インフレーター10は、前縁側に配置される前側クロスメンバ3Fと、後縁側に配置される後側クロスメンバ3Rと、中央クロスメンバ3Cと、に、取り付けられている。実施形態の場合、インフレーター10は、車両Vの前面衝突時、側面衝突時、斜め衝突時、若しくは、オフセット衝突時等、前方や側方からの衝撃力作用時に、図示しない制御装置からの作動信号を受けて作動を開始させるように、図示しないリード線により、制御装置と電気的に接続されている。
【0020】
エアバッグ15は、可撓性を有したシート体からなる袋状とされて、インフレーター10から吐出される膨張用ガスを内部に流入させて、ルーフR(ルーフヘッドライニング5)から下方に向かって突出するように展開膨張するもので、実施形態の場合、膨張完了時に、2つの前部座席FS(運転席DS,助手席PS)と2つの後部座席RS(RS1,RS2)とを、区画するように、配設される構成である(
図2,17参照)。なお、エアバッグ15は、詳細な図示を省略するが、膨張完了時の上端側(後述する上壁部20,30の部位)の所定箇所を、インフレーター10及び別途設けられる取付ブラケット(図示省略)等を利用して、ボディ1側のクロスメンバ3に取り付けられる構成である。
【0021】
エアバッグ15は、
図5~11,17に示すように、膨張完了時に、前部座席FSと後部座席RSとを区画するように車幅方向に略沿って形成される略板状の車幅方向膨張部17と、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)間,後部座席RS(RS1,RS2)間をそれぞれ区画するように前後方向に略沿って形成される略板状の前後方向膨張部27と、車幅方向膨張部17の後面側から後方に向かって突出するように配置される2つの突出膨張部40(40L,40R)と、前後方向膨張部27から各前部座席FS(運転席DS,助手席PS),後部座席RS1,RS2側に向かって突出するように配置される前側側方突出膨張部45(45L,45R),後側側方突出膨張部48(48L,48R)と、を備える構成とされている。
【0022】
車幅方向膨張部17は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張完了時の外形形状を略板状として、エアバッグ15の膨張完了時に、後部座席RSの前方において、各後部座席RS1,RS2の前方を連続して覆うように、車幅方向に略沿って連続的に形成される部位である(
図17,19参照)。車幅方向膨張部17は、
図8,9に示すように、前後方向側で対向する前壁部18,後壁部19と、膨張完了時に上端側に配置される上壁部20と、膨張完了時に下端側に配置される下壁部21と、を備え、膨張完了時に、上下方向に略沿うように配置される。また、車幅方向膨張部17は、膨張完了時における車幅方向側(左右方向側)の幅寸法を、ルーフRの車幅方向側の幅寸法よりも僅かに小さくして、左端17a,右端17bを、それぞれ、後部座席RS1,RS2における車幅方向の外縁側と略一致した位置に配置させるような寸法に、設定され(
図17,19参照)、膨張完了時における上下方向側の長さ寸法を、下端17cを後部座席RSにおける座部RSSの座面近傍となる位置に配置させるような寸法に、設定されている(
図18,19参照)。また、車幅方向膨張部17は、膨張完了時の厚さを、後部座席RSに着座した後側乗員RPの膝RKと前部座席FSとの間に円滑に進入して膨張可能な寸法に、設定されている(
図18,20参照)。そして、車幅方向膨張部17は、座部RSSの座面近傍に位置する下端17c側の部位により、後側乗員RPの膝RKを保護することもできる。この車幅方向膨張部17は、
図18,19に示すように、膨張完了時に、後部座席RSに着座した後側乗員RPの前方を覆うこととなる。
【0023】
前後方向膨張部27は、内部に膨張用ガスを流入させて膨張し、膨張完了時の外形形状を略板状として、実施形態の場合、エアバッグ15の膨張完了時に、各前部座席FS(運転席DS,助手席PS),後部座席RS1,RS2の側方を連続して覆うように、前後方向に略沿って連続的に形成される部位である(
図17,18参照)。前後方向膨張部27は、
図8,10,11に示すように、車幅方向(左右方向)側で対向する左壁部28,右壁部29と、膨張完了時に上端側に配置される上壁部30と、膨張完了時に下端27c側に配置される下壁部31と、を備え、膨張完了時に、上下方向に略沿うように配置されるもので、膨張完了時における前後方向側の幅寸法を、ルーフRの前後方向側の幅寸法よりも僅かに小さく設定されている(
図18参照)。また、前後方向膨張部27は、膨張完了時における上下方向側の長さ寸法を、車幅方向膨張部17と略同一として、構成されており、換言すれば、エアバッグ15の膨張完了時における前後方向膨張部27の下端27cは、前部座席FS,後部座席RSにおける座部FSS,RSSの座面近傍となる位置に配置される構成である(
図18,19参照)。また、実施形態の場合、前後方向膨張部27は、膨張完了時の厚さを、車幅方向膨張部17の厚さと略同一として(
図5,6参照)、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)間,後部座席RS1,RS2間に、円滑に進入して膨張可能な寸法に、設定されている。実施形態の場合、前後方向膨張部27と車幅方向膨張部17とは、
図5,6に示すように、上下方向側から見た外形形状を略十字形状として、交差部位36で上下の全域にわたって連通されるようにして、一体的に、構成されている。
【0024】
前後方向膨張部27は、車幅方向膨張部17よりも前側に配置される前側膨張部位33と、車幅方向膨張部17よりも後側に配置される後側膨張部位34と、を備えている。前側膨張部位33は、膨張完了時に、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)に着座した前側乗員FPの側方を覆うこととなり、後側膨張部位34は、膨張完了時に、後部座席RS1,RS2に着座した後側乗員RPの側方を覆うこととなる。
【0025】
車幅方向膨張部17の後面側から各後部座席RS1,RS2側に向かって突出して形成される突出膨張部40(40L,40R)は、詳細には、車幅方向膨張部17において、前後方向膨張部27の左右に配置される左側膨張部位23,右側膨張部位24に、それぞれ、形成されている。これらの突出膨張部40(40L,40R)は、エアバッグ15の膨張完了時に、車幅方向膨張部17における下側の領域において、後側乗員RPと相対して配置されるもので(
図20参照)、前端側を、車幅方向膨張部17における後壁部19に形成される開口19aの周縁に連結させることにより、車幅方向膨張部17に連通されて、外形形状を略直方体状として構成されている(
図9参照)。各突出膨張部40L,40Rは、膨張完了時に上下方向側で対向する上壁部40a,下壁部40bと、車幅方向側で対向する内壁部40c,外壁部40dと、膨張完了時に後側に配置される後壁部40eと、を備えている。そして、各突出膨張部40(40L,40R)は、膨張完了時の後面(後壁部40e)を、後側乗員RPの上半身RUにおける下側の領域(腹部RA)を受止可能な下部受止面41(41L,41R)とし、下部受止面41から連なるように配置される膨張完了時の上面(上壁部40a)を、後側乗員RPの上半身RUにおける上側の領域(実施形態の場合、胸部RBから頭部RHにかけて)を受止可能な上部受止面42(42L,42R)として、構成されている。詳細には、膨張完了時のエアバッグ15において、下部受止面41L,41Rを構成する後壁部40eは、突出膨張部40L,40Rにおける下半分程度のエリアにおいて、上下方向に略沿うように形成され、上部受止面42L,42Rを構成する上壁部40aは、前側半分程度の前側部位40aaを、前後方向に略沿わせ、後面に連なる後側半分程度の後側部位40abを、前後方向に対して、後下がりに傾斜させるように、構成されている(
図9参照)。すなわち、上部受止面42L,42Rは、下部受止面41L,41Rにかけて下降するように、傾斜して、形成されている。
【0026】
また、実施形態では、2つの突出膨張部40(40L,40R)は、外形形状を略同一として、構成されている。この突出膨張部40(40L,40R)は、膨張完了時の前後方向の幅寸法を、エアバッグ15の膨張完了時に、車幅方向膨張部17と、後部座席RS1,RS2に着座している後側乗員RPの上半身RUとの間の隙間を埋めるように、膨張完了時の後壁部40eを後部座席RSにおける座部RSSの前端よりも後方(後側乗員RPの膝RKよりも後方)に配置可能な寸法に、設定されている(
図20参照)。すなわち、各突出膨張部40(40L,40R)は、後部座席RSに着座している後側乗員RPの大腿部RTより上側に、配置される構成であり、さらに換言すれば、後部座席RSにおける座部RSSの座面より上側となる位置に、配置されている。具体的には、突出膨張部40L,40Rは、膨張完了時における前端側の上下方向の幅寸法を、車幅方向膨張部17の上下方向側の長さ寸法の3/7程度として、膨張完了時の下面(下壁部40b)を後側乗員RPの大腿部RTよりも上側に位置させ、下部受止面41L,41R(後壁部40e)を後側乗員RPの上半身RUの下部領域(腹部RA)と前後方向側で対向させるように、設定されている。また、突出膨張部40(40L,40R)は、膨張完了時の前後方向側の幅寸法を、車幅方向膨張部17の厚さ寸法の3.8倍程度に、設定されている。さらに、各突出膨張部40L,40Rは、実施形態の場合、
図6,8に示すように、車幅方向膨張部17における左側膨張部位23,右側膨張部位24の左右方向(車幅方向)の略全域にわたって、配設されている。すなわち、各突出膨張部40L,40Rは、車幅方向の内側となる内壁部40cを、前後方向膨張部27に近接させるように、構成されている(
図8参照)。
【0027】
前側側方突出膨張部45L,45Rは、前後方向膨張部27における前側膨張部位33において、車幅方向膨張部17の近傍となる位置に、それぞれ、各前部座席FS(運転席DS,助手席PS)に向かって突出するように配置されている(
図17参照)。各前側側方突出膨張部45(45L,45R)は、エアバッグ15の膨張完了時に、前側膨張部位33における下側の領域において、前側乗員FPの側方(車幅方向の内側)を覆うように配置されるもので、具体的には、実施形態の場合、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)間の隙間を塞ぐように、配置されることとなる。各前側側方突出膨張部45(45L,45R)は、車幅方向の内端側を、前後方向膨張部27における左壁部28,右壁部29に形成される開口28a,29aの周縁に連結させることにより、前側膨張部位33に連通されている(
図10参照)。各前側側方突出膨張部45L,45Rは、膨張完了時の外形形状を扁平な略直方体状として構成されるもので、膨張完了時に上下方向側で対向する上壁部45a,下壁部45bと、前後方向側で対向する前壁部45c,後壁部45dと、膨張完了時に車幅方向の外側に配置される外壁部45eと、を備えている。そして、上壁部45aは、車幅方向の外半分程度の領域となる外壁部45e側の領域を、外壁部45e側にかけて下降させるように、傾斜して、構成されている。外壁部45eは、各前側側方突出膨張部45L,45Rにおける下半分程度のエリアにおいて、上下方向に略沿うように形成されている。
【0028】
各前側側方突出膨張部45L,45Rは、前後方向側の幅寸法を異ならせる以外は、外形形状を略同一として、構成されるもので、膨張完了時における上下方向側での配置位置及び上下方向側の幅寸法を、突出膨張部40L,40Rと略一致させて構成されている。すなわち、各前側側方突出膨張部45L,45Rは、前部座席FSにおける座部FSSの座面より上側となる位置に、配置されるとともに、前側乗員FPの腹部の側方に配置される下側の領域を厚く膨張させるように、構成されている。また、各前側側方突出膨張部45L,45Rは、エアバッグ15の膨張完了時に、それぞれ、前側膨張部位33と前部座席FS(運転席DS,助手席PS)に着座した前側乗員FPとの間の隙間を塞ぐように配置されるもので、実施形態の場合、膨張完了時の車幅方向側の幅寸法(前後方向膨張部27からの突出量)を、突出膨張部40L,40Rの膨張完了時の前後方向の幅寸法(車幅方向膨張部17からの突出量)の半分よりやや小さな寸法(5/12程度)として、膨張完了時の前後方向膨張部27の厚さ寸法よりも若干大きくして、構成されている。また、実施形態の場合、右側(運転席DS側)に配置される前側側方突出膨張部45Rは、左側(助手席PS側)に配置される前側側方突出膨張部45Lよりも、前後方向側の幅寸法を、小さく設定されている。具体的には、右側の前側側方突出膨張部45Rは、前後方向側の幅寸法を、左側の前側側方突出膨張部45Lの3/5程度に、設定されている。そして、各前側側方突出膨張部45L,45Rは、膨張完了時の後端側(後壁部45d)を、車幅方向膨張部17における前壁部18に近接させるように、構成されている(
図8参照)。
【0029】
後側側方突出膨張部48(48L,48R)は、前後方向膨張部27における後側膨張部位34において、車幅方向パネル部の近傍となる位置に、それぞれ、各後部座席RS(RS1,RS2)に向かって突出するように配置されている(
図17参照)。各後側側方突出膨張部48L,48Rは、エアバッグ15の膨張完了時に、後側膨張部位34における下側の領域において、後側乗員RPの側方(車幅方向の内側)を覆うように配置されるもので、具体的には、実施形態の場合、後部座席RS(RS1,RS2)間の隙間を塞ぐように、配置されることとなる。各後側側方突出膨張部48L,48Rは、車幅方向の内端側を、前後方向膨張部27における左壁部28,右壁部29に形成される開口28b,29bの周縁に連結させることにより、後側膨張部位34に連通されている(
図11参照)。各後側側方突出膨張部48L,48Rは、膨張完了時の外形形状を扁平な略直方体状として構成されるもので、膨張完了時に上下方向側で対向する上壁部48a,下壁部48bと、前後方向側で対向する前壁部48c,後壁部48dと、膨張完了時に車幅方向の外側に配置される外壁部48eと、を備えている。そして、上壁部48aは、車幅方向の外半分程度の領域となる外壁部48e側の領域を、外壁部48e側にかけて下降させるように、傾斜して、構成されている。外壁部48eは、各後側側方突出膨張部48L,48Rにおける下半分程度のエリアにおいて、上下方向に略沿うように形成されている。
【0030】
各後側側方突出膨張部48L,48Rは、前後方向側の幅寸法を異ならせる以外は、外形形状を略同一として、構成されるもので、膨張完了時における上下方向側での配置位置及び上下方向側の幅寸法を、突出膨張部40L,40R及び前側側方突出膨張部45L,45Rと、略一致させて構成されている。すなわち、各後側側方突出膨張部48L,48Rは、後部座席RSにおける座部RSSの座面より上側となる位置に、配置されるとともに、後側乗員RPの腹部の側方に配置される下側の領域を厚く膨張させるように、構成されている。また、各後側側方突出膨張部48L,48Rは、エアバッグ15の膨張完了時に、後側膨張部位34と後部座席RSに着座した後側乗員RPとの間の隙間を塞ぐように配置されるもので、膨張完了時の車幅方向側の幅寸法を、前側側方突出膨張部45L,45Rの車幅方向側の幅寸法(前後方向膨張部27からの突出量)と略同一として、すなわち、膨張完了時の前後方向膨張部27の厚さ寸法よりも若干大きくして、構成されている。実施形態では、左側に配置される後側側方突出膨張部48Lが、右側に配置される後側側方突出膨張部48Rよりも、前後方向側の幅寸法を、小さく設定されている。具体的には、左側の後側側方突出膨張部48Lは、前後方向側の幅寸法を、右側の後側側方突出膨張部48Rの3/5程度に、設定されている。実施形態のエアバッグ15では、各突出膨張部40L,40Rが、内壁部40cを、車幅方向膨張部17に近接させるように、配設されており、各後側側方突出膨張部48L,48Rは、膨張完了時の前端側(前壁部48c)を、各突出膨張部40L,40Rにおける後壁部40eに、近接させるように、構成されている(
図8参照)。すなわち、各後側側方突出膨張部48L,48Rは、それぞれ、突出膨張部40L,40Rから連なるようにして、形成されている。
【0031】
また、実施形態のエアバッグ15では、内部にテザーを配置させることにより、膨張完了時の車幅方向膨張部17と前後方向膨張部27との板形状を維持している。具体的には、テザーとしては、車幅方向膨張部17における左側膨張部位23,右側膨張部位24,前後方向膨張部27における前側膨張部位33,後側膨張部位34の内部にそれぞれ配設されて厚さを規制する厚み規制テザー50と、車幅方向膨張部17と前後方向膨張部27との交差部位36内に配置されて交差部位36の外形形状を規制する形状規制テザー53と、が、配設されている(
図8~12参照)。厚み規制テザー50は、左側膨張部位23,右側膨張部位24においては、車幅方向膨張部17における前壁部18と後壁部19とを連結するように、配設され(
図8,9参照)、前側膨張部位33,後側膨張部位34においては、前後方向膨張部27における左壁部28と右壁部29とを連結するように、配設されている(
図8,10,11参照)。各厚み規制テザー50は、前側膨張部位33,後側膨張部位34,左側膨張部位23,右側膨張部位24において、それぞれ、上下で3箇所となる位置に、配設されるもので、水平方向に略沿うように、各前側膨張部位33,後側膨張部位34,左側膨張部位23,右側膨張部位24の略全域にわたって、配設されている(
図7,8参照)。また、各厚み規制テザー50は、帯状の2枚のテザー用基布50a,50aから、構成されている。詳細に説明すれば、前側膨張部位33において上下の中央と下側とに配置されている厚み規制テザー50は、前後で2分割され、後側膨張部位34において上下の中央と下側とに配置される厚み規制テザー50は、前後で3分割されている(
図7参照)。形状規制テザー53は、4枚のテザー用基布53aから構成されるもので、交差部位36内において、前側膨張部位33と左側膨張部位23との境界部位、前側膨張部位33と右側膨張部位24との境界部位、後側膨張部位34と左側膨張部位23との境界部位、若しくは、後側膨張部位34と右側膨張部位24との境界部位から、それぞれ延びる4枚のテザー用基布53aの先端相互を連結させるようにして、上下方向側から見て略「×」字形状に、配設されている(
図12参照)。この形状規制テザー53は、交差部位36内において、上下の端部側を除いて、上下の略全域にわたって、連続的に配設されている(
図7参照)。
【0032】
エアバッグ15は、可撓性を有したシート体からなるもので、実施形態の場合、ポリエステル糸やポリアミド糸等からなる可撓性を有した織布から形成されている。エアバッグ15は、所定形状の基材の周縁相互を結合させることにより、袋状とされるもので、具体的には、
図13~16に示すように、上面構成パネル60と、下面構成パネル61と、側面構成パネル部63と、前側側方突出部用パネル部70L,70Rと、後側側方突出部用パネル部74L,74Rと、突出部用パネル部78L,78Rと、から構成されている。
【0033】
上面構成パネル60は、
図13に示すように、外形形状を略十字形状とされて、車幅方向膨張部17と前後方向膨張部27との上壁部20,30を、構成している。下面構成パネル61は、
図14に示すように、外形形状を、上面構成パネル60と同一の略十字形状とされて、車幅方向膨張部17と前後方向膨張部27との下壁部21,31を、構成している。
【0034】
側面構成パネル部63は、
図13~16に示すように、それぞれ、略長方形状とされて、車幅方向膨張部17の左側膨張部位23における前壁部18から前後方向膨張部27の前側膨張部位33における左壁部28にかけてを構成する前左パネル64と、車幅方向膨張部17の右側膨張部位24における前壁部18から前後方向膨張部27の前側膨張部位33における右壁部29にかけてを構成する前右パネル65と、車幅方向膨張部17の左側膨張部位23における後壁部19から前後方向膨張部27の後側膨張部位34における左壁部28にかけてを構成する後左パネル66と、車幅方向膨張部17の右側膨張部位24における後壁部19から前後方向膨張部27の後側膨張部位34における右壁部29にかけてを構成する後右パネル67と、の4枚の基材から構成されている。前左パネル64と前右パネル65とは、外形形状を略同一として構成され、後左パネル66と後右パネル67とは、外形形状を略同一として構成される。
【0035】
前左パネル64は、上縁64aを、上面構成パネル60における左前側縁60aと結合され、下縁64bを、下面構成パネル61における左前側縁61aと結合され、側縁64cを、前右パネル65の側縁65cと結合され、側縁64dを、後左パネル66の側縁66cと結合される。前右パネル65は、上縁65aを、上面構成パネル60における右前側縁60bと結合され、下縁65bを、下面構成パネル61における右前側縁61bと結合され、側縁65dを、後右パネル67の側縁67cと結合される。後左パネル66は、上縁66aを、上面構成パネル60における左後側縁60cと結合され、下縁66bを、下面構成パネル61における左後側縁61cと結合され、側縁66dを、後右パネル67の側縁67dと結合される。後右パネル67は、上縁67aを、上面構成パネル60における右後側縁60dと結合され、下縁67bを、下面構成パネル61における右後側縁61dと結合される。
【0036】
前側側方突出部用パネル部70L,70Rは、それぞれ、前側側方突出膨張部45L,45Rを構成するもので、
図13,14に示すように、前側側方突出膨張部45L,45Rにおける上壁部45aから外壁部45eを経て下壁部45bにかけてを構成する略長方形状の中央パネル71L,71Rと、前壁部45c及び後壁部45dを構成する一対の縁側パネル72FL,72FR,72RL,72RRと、を備えている。これらの中央パネル71L,71Rと縁側パネル72FL,72FR,72RL,72RRとは、対応する縁部相互を結合させることにより、一端側を開口させた前側側方突出膨張部45L,45Rを構成することとなり、この前側側方突出膨張部45L,45Rにおける開口部分の周縁が、それぞれ、前左パネル64若しくは前右パネル65に形成される開口28a,29aの周縁に結合される構成である。
【0037】
後側側方突出部用パネル部74L,74Rは、それぞれ、後側側方突出膨張部48L,48Rを構成するもので、
図15,16に示すように、後側側方突出膨張部48L,48Rにおける上壁部48aから外壁部48eを経て下壁部48bにかけてを構成する略長方形状の中央パネル75L,75Rと、前壁部48c及び後壁部48dを構成する一対の縁側パネル76FL、76FR,76RL,76RRと、を備えている。これらの中央パネル75L,75Rと縁側パネル76FL、76FR,76RL,76RRとは、対応する縁部相互を結合させることにより、一端側を開口させた後側側方突出膨張部48L,48Rを構成することとなり、この後側側方突出膨張部48L,48Rにおける開口部分の周縁が、それぞれ、後左パネル66若しくは後右パネル67に形成される開口28b,29bの周縁に結合される構成である。
【0038】
突出部用パネル部78L,78Rは、それぞれ、突出膨張部40L,40Rを構成するもので、
図15,16に示すように、突出膨張部40L,40Rにおける上壁部40aから後壁部40eを経て下壁部40bにかけてを構成する略長方形状の中央パネル79L,79Rと、内壁部40c及び外壁部40dを構成する一対の縁側パネル80OL,80IL,80IR,80ORと、を備えている。これらの中央パネル79L,79Rと縁側パネル80OL,80IL,80IR,80ORとは、対応する縁部相互を結合させることにより、一端側を開口させた突出膨張部40L,40Rを構成することとなり、この突出膨張部40L,40Rにおける開口部分の周縁が、それぞれ、後左パネル66もしくは後右パネル67に形成される開口19aの周縁に結合される構成である。
【0039】
実施形態の乗員保護装置Mが搭載される車両Vには、
図1に示すように、前部座席FSとしての運転席DSの前方に、ステアリングホイール用のエアバッグ装置85が、搭載され、前部座席FSとしての助手席PSの前方に、助手席用のエアバッグ装置88が、搭載され、前部座席FS,後部座席RSの側方の窓SWL,SWRの上縁側に、頭部保護用のエアバッグ装置92L,92Rが、搭載されている。ステアリングホイール用のエアバッグ装置85と助手席用のエアバッグ装置88とは、車両Vの前面衝突時、斜め衝突時、若しくは、オフセット衝突時に、エアバッグ86,89を膨張させることとなり、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)に着座した前側乗員FPの前方は、ステアリングホイールWを覆うように膨張を完了させたステアリングホイール用のエアバッグ86と、膨張している助手席用のエアバッグ89と、により、覆われることとなる(
図17参照)。頭部保護用のエアバッグ装置92L,92Rは、車両Vの斜め衝突時、オフセット衝突時、若しくは、側面衝突時に、エアバッグ93L,93Rを膨張させることとなり、前側乗員FP,後側乗員RPにおける車幅方向の外側は、窓SWL,SWRを覆うように膨張を完了させた頭部保護用のエアバッグ93L,93Rにより、覆われることとなる(
図17参照)。そして、実施形態の乗員保護装置Mでは、車両Vの前面衝突時、斜め衝突時、オフセット衝突時、若しくは、側面衝突時に、インフレーター10が、制御装置からの作動信号を受けて作動することとなり、エアバッグ15が、内部に膨張用ガスを流入させて、ルーフヘッドライニング5から下方へ突出し、
図17~19に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0040】
そして、実施形態の乗員保護装置Mでは、エアバッグ15が、後部座席RS1,RS2の前方を連続して覆うように板状に膨張する車幅方向膨張部17と、この車幅方向膨張部17の後面側から部分的に突出する突出膨張部40(40L,40R)と、を備える構成とされ、この突出膨張部40(40L,40R)は、各後部座席RS1,RS2に着座した後側乗員RPと相対するように、配置される構成である(
図19~21参照)。そのため、車両Vの衝突時において、後側乗員RPが、エアバッグ15に向かうように、前方移動する際に、この後側乗員RPを、相対して配置される突出膨張部40L,40Rにより、安定して拘束することができる。具体的には、突出膨張部40L,40Rは、膨張完了時の後面(後壁部40e)から構成される下部受止面41L,41Rにより、前方移動する後側乗員RPの上半身RUの下部側の領域(腹部RA)を受け止め、その後、下部受止面41L,41Rから連なる上部受止面42L,42Rにより、後側乗員RPの上半身RUにおける上部側の領域である胸部RBを受け止めることとなり、突出膨張部40L,40Rによって、前方移動する後側乗員RPを、的確に、拘束することができる(
図20参照)。また、実施形態の乗員保護装置Mでは、膨張完了時のエアバッグ15において、車幅方向膨張部17が、
図19,21に示すように、各後部座席RS1,RS2の前方を連続して覆うように、車幅方向に略沿って連続的に形成される略板状とされていることから、例えば、後側乗員RPが、突出膨張部40L,40Rの配置領域からそれるように車幅方向の中央側の斜め前方に向かって移動することとなっても、車幅方向膨張部17によって、さらなる前方移動を規制することができる。
【0041】
したがって、実施形態の乗員保護装置Mでは、乗員RPを安定して保護することができる。
【0042】
特に、実施形態の乗員保護装置Mでは、突出膨張部40L,40Rは、上部受止面42L,42Rを、下部受止面41L,41Rにかけて下降するように、車幅方向側から見て後下がりに傾斜させている構成であり、換言すれば、上部受止面42L,42Rが、腹部RAを下部受止面41L,41Rに受け止められた胸部RBから頭部RHにかけてと略沿うように配置されることから、上部受止面42L,42Rによって、後側乗員RPの頭部RHをソフトに受け止めることができる。
【0043】
また、実施形態の乗員保護装置Mでは、エアバッグ15が、相互に分離して配設される後部座席RS1,RS2間を区画するように、車幅方向膨張部17の中央付近から後方に延びるような略板状とされる前後方向膨張部27を、配設させる構成とされ、この前後方向膨張部27は、上下方向に略沿うように配置されて、後側乗員RPの側方を覆い可能に、構成されている(
図17,18参照)。そのため、後部座席RS1,RS2間を、膨張完了時のエアバッグ15において、内部に膨張用ガスを流入させて板状に膨張している前後方向膨張部27によって、区画することができ、後側乗員RPが車幅方向の中央側となる側方に移動することとなっても、後部座席RS1,RS2間に膨張している前後方向膨張部27によって、拘束することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、前後方向膨張部を備えない構成のものを使用してもよい。
【0044】
さらに、実施形態の乗員保護装置Mでは、前後方向膨張部27が、車幅方向膨張部17から前方に延びるように配置される前側膨張部位33を、備え、この前側膨張部位33が、車幅方向側で相互に分離するように並設される前部座席FS(運転席DS,助手席PS)間に配置されるとともに、上下方向に略沿うように配置されて前部座席FS(運転席DS,助手席PS)に着座した前側乗員FPの側方を覆い可能に、構成されている(
図17,18参照)。そのため、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)に着座した前側乗員FPが、車幅方向の中央側となる側方に移動することとなっても、前部座席FS(運転席DS,助手席PS)間に膨張している前後方向膨張部27の前側膨張部位33によって、拘束することができる。なお、このような構成を考慮しなければ、エアバッグとして、前側膨張部位を備えず、後部座席間のみに配置される前後方向膨張部を、有する構成のものを使用してもよい。
【0045】
さらにまた、実施形態の乗員保護装置Mでは、前後方向膨張部27の後側膨張部位34において、車幅方向膨張部17の近傍となる位置に、それぞれ、後部座席RSの座面より上側となる位置において、各後部座席RS1,RS2側に向かって突出するように配置される後側側方突出膨張部48L,48Rが、形成されていることから、車幅方向の中央側となる側方に向かって移動する後側乗員RPを、後側側方突出膨張部48L,48Rによって、的確に拘束することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、後部座席間を、板状の前後方向膨張部の後側膨張部位のみによって覆い、後側側方突出膨張部を備えない構成のものを使用してもよい。
【0046】
さらにまた、実施形態の乗員保護装置Mでは、前側膨張部位33において、車幅方向膨張部17の近傍となる位置に、それぞれ、前部座席FS(運転席DS,助手席)の座面より上側となる位置において、各前部座席FS(運転席DS,助手席)に向かって突出するように配置される前側側方突出膨張部45L,45Rが、形成されていることから、車幅方向の中央側となる側方に向かって移動する前側乗員FPを、前側側方突出膨張部45L,45Rによって、的確に拘束することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、前部座席間を、板状の前後方向膨張部の前側部位のみによって覆い、前側側方突出膨張部を備えない構成のものを使用してもよい。
【0047】
さらにまた、実施形態の乗員保護装置Mでは、後側側方突出膨張部48L,48Rが、それぞれ、突出膨張部40L,40Rから連なるようにして、形成されていることから、後側側方突出膨張部48L,48Rと突出膨張部40L,40Rとが、
図21に示すように、後側乗員RPの前方から車幅方向の中央側の側方にかけて、連続的に配置されることとなり、後側乗員RPが、車幅方向の中央側の斜め前方に向かって移動することとなっても、この後側乗員RPを、後側側方突出膨張部48L,48Rと突出膨張部40L,40Rとによって、的確に拘束することができる。なお、このような点を考慮しなければ、エアバッグとして、後側側方突出膨張部と突出膨張部とを、間に大きな隙間を設けるようにして、配置させる構成のものを、使用してもよい。後側側方突出膨張部と突出膨張部とを、間に大きな隙間を設けるように配置させる構成とする場合にも、後側側方突出膨張部若しくは突出膨張部のどちらか一方を、車幅方向パネル部と前後方向パネル部との交差部位に近接する領域まで延ばすように配設させれば、交差部位付近に配置される領域によって、車幅方向の中央側斜め前方に向かって移動する後側乗員を、安定して拘束することができる。
【0048】
実施形態では、前席及び後席を、それぞれ、車両の進行方向側を向くように配置させた状態の車両Vで、乗員保護装置Mを作動させることを説明しているが、実施形態の乗員保護装置Mは、多様なシートアレンジを設定可能な車両にも、搭載することができる。例えば、自動運転対応可能な車両に搭載した場合において、各前部座席FS1,FS2、各後部座席RS1,RS2を、車幅方向側で対向させるような横並びアレンジ(
図22参照)や、車両の前後方向側で対向させるような対面アレンジ(
図23参照)、それぞれ、前後方向及び車幅方向に対して傾斜させつつ相互に対向させるようなクロスアレンジ(
図24参照)等のように、それぞれ、回転させる場合においても、膨張完了時のエアバッグ15が、車幅方向膨張部17と前後方向膨張部27とによって、前部座席FS1,FS2,後部座席RS1,RS2を区画するように配設されることから、前部座席FS1,FS2,後部座席RS1,RS2に着座している前側乗員FP,後側乗員RPが、車両への衝撃力の作用時に、相互に接近するように移動することとなっても、膨張を完了させたエアバッグ15によって、前側乗員FP,後側乗員RPを、的確に保護することができる。特に、実施形態の乗員保護装置Mのエアバッグ15では、各突出膨張部40L,40R,前側側方突出膨張部45L,45R,後側側方突出膨張部48L,48Rが、上下方向側での位置を一致させるように配置されるとともに、交差部位36から四方に延びる領域(左側膨張部位23と突出膨張部40Lとから構成される領域、右側膨張部位24と突出膨張部40Rとから構成される領域、前側膨張部位33と前側側方突出膨張部45L,45Rとから構成される領域、後側膨張部位34と後側側方突出膨張部48L,48Rとから構成される領域)が、それぞれ、厚さを略同一として、厚く膨張するように、構成されていることから、座席をどのような向きで回転させた場合にも、座席に着座している乗員を安定して保護することができる。
【符号の説明】
【0049】
5…ルーフヘッドライニング、10…インフレーター、15…エアバッグ、17…車幅方向膨張部、23…左側膨張部位、24…右側膨張部位、27…前後方向膨張部、33…前側膨張部位、34…後側膨張部位、36…交差部位、40(40L,40R)…突出膨張部、41(41L,41R)…腹部受止面、42(42L,42R)…上半身受止面、45(45L,45R)…前側側方突出膨張部、48(48L,48R)…後側側方突出膨張部、FS…前部座席、RS…後部座席、FP…前側乗員、RP…後側乗員、RU…上半身、RA…腹部、RB…胸部、R…ルーフ、V…車両、M…乗員保護装置。