(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/214 20110101AFI20230301BHJP
B60R 21/2165 20110101ALI20230301BHJP
【FI】
B60R21/214
B60R21/2165
(21)【出願番号】P 2019151360
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】山田 郁雄
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0040667(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0040627(US,A1)
【文献】特開平07-117605(JP,A)
【文献】特開平08-085407(JP,A)
【文献】特開2004-001751(JP,A)
【文献】特開2015-013518(JP,A)
【文献】特開2014-181014(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0225096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員の上方のルーフ側に搭載されて、膨張用ガスの流入時に下方に展開膨張して、前記乗員を保護可能なエアバッグを、備えるエアバッグ装置であって、
ルーフパネルと、該ルーフパネルの下面側を覆うルーフヘッドライニングと、前記ルーフパネルと前記ルーフヘッドライニングとの間に配置されるエアバッグ組付体と、を備えて、
該エアバッグ組付体が、折り畳まれた前記エアバッグと、前記エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、前記エアバッグと前記インフレーターとを収納するケースと、を備え、
前記ケースが、前記エアバッグの下面側を覆う底壁部を備えるとともに、後端側に、前記インフレーターを収納させ、前記インフレーターと対向する前端側に、膨張する前記エアバッグを突出させるための突出用開口を、配設させて、前記ルーフパネルの下面側のボディ側部材に取り付けられる構成とされ、
前記ルーフヘッドライニングにおいて、前記エアバッグ組付体を搭載される搭載領域の下方における前後の中間部位に、展開膨張する前記エアバッグに押されて破断可能とされる破断予定部が、車幅方向に略沿うように形成され、
前記ルーフヘッドライニングが、前記搭載領域の前縁側と、車幅方向の両縁側と、の3箇所を、取付手段を用いて、前記ボディ側部材に取り付けられる構成とされ
、
前記ボディ側部材が、車両の車幅方向に略沿うとともに前後方向側で離隔して配設される2つの横杆部と、前後方向に略沿うとともに車幅方向側で離隔して配設される2つの縦杆部と、を備える構成とされて、
前記ケースが、左右両側と後側とに、前記ボディ側部材に取り付けられる取付片を、備える構成とされ、
左右の前記取付片が、前記各縦杆部に取り付けられ、後側の前記取付片が、後側に配置される後側横杆部に取り付けられる構成とされ、
前記ルーフヘッドライニングが、前記搭載領域における車幅方向の両縁側の部位を、前記各縦杆部に取り付けられ、前記搭載領域における前縁側の部位を、前側に配置される前側横杆部に取り付けられる構成とされていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記破断予定部が、前記ルーフヘッドライニングにおいて、下方に向かって突出し、かつ、車幅方向に略沿って延びるように隆起している隆起部に、形成されていることを特徴とする
請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記破断予定部が、車幅方向の両端に、前後両側へ延びる補助破断予定部を、有していることを特徴とする
請求項1または2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員の上方のルーフ側に搭載されて、膨張用ガスの流入時に下方に展開膨張して、乗員を保護可能なエアバッグを、備えるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ルーフ側に収納されるエアバッグ装置としては、ルーフパネルと、ルーフパネルの下面側を覆うルーフヘッドライニングと、の間に、折り畳まれたエアバッグとインフレーターとを収納させ、インフレーターから吐出される膨張用ガスを内部に流入させて膨張するエアバッグによって、ルーフヘッドライニングを押し開き、エアバッグを下方に突出させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。このエアバッグ装置では、ルーフヘッドライニングにおいて、折り畳まれたエアバッグの下面側を覆っている領域が、後縁側に、膨張するエアバッグに押圧されて破断可能な破断予定部を配置させ、前縁側に、破断予定部を破断させて開く部位の開きの起点となるヒンジ部を、配置させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエアバッグ装置では、破断予定部を破断させて開く部位の開きの起点となるヒンジ部が、ルーフヘッドライニング自体を屈曲させて形成されていることから、エアバッグの膨張時に、破断予定部に加えてヒンジ部の部位も破断してしまう場合があり、エアバッグを円滑かつ迅速に下方に突出させる点に、改善の余地があった。また、従来のエアバッグ装置では、ルーフヘッドライニングが、破断予定部の破断時に、ヒンジ部を開きの中心として、折り畳まれたエアバッグの下方を覆っている領域全体を、片開きとして大きく開く構成であることから、ルーフヘッドライニングにおいて開いた領域が、乗員の頭部と接触する場合もあり、このような点にも、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、膨張するエアバッグを、円滑かつ迅速に下方に突出させつつ展開膨張可能なエアバッグ装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアバッグ装置は、シートに着座した乗員の上方のルーフ側に搭載されて、膨張用ガスの流入時に下方に展開膨張して、乗員を保護可能なエアバッグを、備えるエアバッグ装置であって、
ルーフパネルと、ルーフパネルの下面側を覆うルーフヘッドライニングと、ルーフパネルとルーフヘッドライニングとの間に配置されるエアバッグ組付体と、を備えて、
エアバッグ組付体が、折り畳まれたエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、エアバッグとインフレーターとを収納するケースと、を備え、
ケースが、エアバッグの下面側を覆う底壁部を備えるとともに、後端側に、インフレーターを収納させ、インフレーターと対向する前端側に、膨張するエアバッグを突出させるための突出用開口を、配設させて、ルーフパネルの下面側のボディ側部材に取り付けられる構成とされ、
ルーフヘッドライニングにおいて、エアバッグ組付体を搭載される搭載領域の下方における前後の中間部位に、展開膨張するエアバッグに押されて破断可能とされる破断予定部が、車幅方向に略沿うように形成され、
ルーフヘッドライニングが、搭載領域の前縁側と、車幅方向の両縁側と、の3箇所を、取付手段を用いて、ボディ側部材に取り付けられる構成とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るエアバッグ装置では、エアバッグ組付体の搭載領域の下方を覆うルーフヘッドライニングが、搭載領域の前縁側と搭載領域の車幅方向の両縁側とを、取付手段によりボディ側部材に取り付けられ、残りの後縁側を、インフレーターを取り付けたケースにより覆われることとなる。すなわち、本発明に係るエアバッグ装置では、破断予定部の上方側におけるエアバッグ組付体の搭載領域が、前後左右を、ボディ側部材に取り付けられる取付手段、あるいは、インフレーターを取り付けたケースにより塞がれる。そのため、膨張するエアバッグは、ケースの突出用開口から突出する際に、搭載領域の四方を塞がれた状態とされていることから、ルーフパネル側の反力を受けて、搭載領域の下方側において前後の中間部位に形成される破断予定部に押し付けられるような態様となり、その結果、迅速に破断予定部を開裂させつつ破断させ、破断して形成されたルーフヘッドライニングの突出用開口から、円滑に、室内側(下方)に展開膨張することとなる。そして、ルーフヘッドライニングに形成される破断予定部は、搭載領域の前後方向の縁側ではなく、前後の中間部位に配設されていることから、仮に、破断予定部の破断時に、破断予定部の周囲に押し開かれるような扉部が形成されることとなっても、その回転半径は小さく、ルーフヘッドライニングの破断予定部周縁に形成される扉部の室内側(下方)への突出量を抑えることができて、ルーフヘッドライニングと乗員との干渉を防止することができる。
【0008】
特に、本発明のエアバッグ装置では、ケースにおいて、膨張するエアバッグを突出させるための突出用開口は、インフレーターを収納させた後端側と対向する前端側に、形成される構成であり、ケースは、折り畳まれたエアバッグの下面側を覆う底壁部を備える構成である。すなわち、本発明のエアバッグ装置では、ケースは、下面側に開口を有していない構成であることから、突出用開口から膨張しつつ突出するエアバッグが、ルーフヘッドライニングにおける破断予定部の周縁部位をダイレクトに下方へ大きく押圧することを抑制されるような態様となり、破断予定部のケース側の周縁部位が下方に大きく開くことも、的確に、抑制できる。
【0009】
したがって、本発明のエアバッグ装置では、ルーフヘッドライニングの乗員との干渉を抑えて、膨張するエアバッグを、円滑かつ迅速に下方に突出させつつ展開膨張させることができる。
【0010】
また、本発明のエアバッグ装置において、ボディ側部材を、車両の車幅方向に略沿うとともに前後方向側で離隔して配設される2つの横杆部と、前後方向に略沿うとともに車幅方向側で離隔して配設される2つの縦杆部と、を備える構成とし、
ケースを、左右両側と後側とに、ボディ側部材に取り付けられる取付片を備えて、
左右両側の取付片を、各縦杆部に取り付けられ、後側の取付片を、後側に配置される後側横杆部に取り付ける構成とし、
ルーフヘッドライニングを、搭載領域における車幅方向の両縁側の部位を、各縦杆部に取り付け、搭載領域における前縁側の部位を、前側に配置される前側横杆部に取り付ける構成とすることが、好ましい。
【0011】
エアバッグ装置を上記構成とすれば、ケースの取付片とルーフヘッドライニングの取付手段とを取り付けるボディ側部材を共用化することができて、搭載部位の省スペース化を図ることができる。
【0012】
さらに、上記構成のエアバッグ装置において、破断予定部を、ルーフヘッドライニングにおいて、下方に向かって突出し、かつ、車幅方向に略沿って延びるように隆起している隆起部に、形成する構成とすれば、破断予定部が、薄肉として、周囲の部位から違和感が生じ易くとも、隆起部の表面側の屈曲する変化に注目が集まり、この破断予定部を、車内側から目立たなくすることができて、ルーフヘッドライニングの意匠性が良好となって、好ましい。
【0013】
さらにまた、上記構成のエアバッグ装置において、破断予定部における車幅方向の両端に、前後両側へ延びる補助破断予定部を、形成する構成とすれば、エアバッグの展開膨張時に、破断予定部と補助破断予定部とを破断させることにより、ルーフヘッドライニングに形成される突出用開口を、前後に広く確保できて、エアバッグを迅速に突出させることが可能となり、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態であるエアバッグ装置が搭載される付近を示す概略断面図である。
【
図2】実施形態のエアバッグ装置の概略拡大断面図である。
【
図3】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグ組付体を示す概略分解斜視図である。
【
図4】実施形態のエアバッグ装置において、ルーフパネルを除いた状態の概略平面図である。
【
図7】実施形態のエアバッグ装置において、ルーフヘッドライニングの概略部分拡大平面図である。
【
図8】実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態のエアバッグ装置Mは、
図1に示すように、シートとしての助手席PSに着座した乗員MPの上方のルーフRF側に、搭載されている。また、実施形態のエアバッグ装置Mを搭載させる車両Vには、助手席PS前方に配置されるインストルメントパネル(インパネ)55の部位に、助手席用エアバッグ装置60が、搭載されている。
【0016】
助手席用エアバッグ装置60は、
図1,8に示すように、助手席PSの前方におけるインパネ55の上面55a側に搭載されて、エアバッグ63と、エアバッグ63に膨張用ガスを供給するインフレーター62と、折り畳まれたエアバッグ63とインフレーター62とを収納させるケース61と、を備えている。この助手席用エアバッグ装置60のインフレーター62は、制御装置70により作動を制御されるもので、車両Vの前面衝突検知時に、制御装置70からの作動信号を受けて、作動するように、構成されている。そして、エアバッグ63は、膨張完了形状を、
図8に示すように、後面63a側から前方にかけて狭まるような略四角錐形状として構成され、後面63aを、膨張完了時のエアバッグ20の前面20a側を支持する支持面64とされている。また、このエアバッグ63は、エアバッグ装置Mにおけるインフレーター15の非作動時に膨張する場合には、後面63aによって、背もたれ部SBを後傾させない状態で着座している乗員を、拘束することとなる。
【0017】
エアバッグ装置Mは、
図1,2に示すように、ルーフパネル10と、ルーフパネル10の下面側を覆うルーフヘッドライニング35と、ルーフパネル10とルーフヘッドライニング35との間に配置されるエアバッグ組付体12と、を備える構成とされている。ルーフパネル10は、板金製として、車両のルーフRFの外表面側を構成している部材である。なお、図例では、ルーフパネル10は、一枚板状とされているが、所定箇所を補強部材により補強させる構成としてもよい。
【0018】
ルーフパネル10の下面側には、
図2,4に示すように、ボディ側部材1としてのクロスメンバ3F,3Bが、配設されている。クロスメンバ3F,3Bは、詳細な図示は省略するが、車幅方向の両端をルーフサイドリインホースメントに連結されて、ルーフRFの車幅方向の全域にわたって車幅方向に略沿うように配設されている。そして、実施形態の場合、エアバッグ組付体12は、ルーフRFの前縁側に配置されるクロスメンバ3Fと、このクロスメンバ3Fとの間に隙間を設けるようにして後方に配置されるクロスメンバ3Bと、の間の領域に、配設される。詳細には、クロスメンバ3F,3B間には、
図4に示すように、ケース25を連結させるためのボディ側部材1としてのジョイント部材4が、クロスメンバ3F,3Bを連結するように、配設されている。ジョイント部材4は、詳細には、車幅方向側で離隔されてクロスメンバ3F,3B間を連結するようにそれぞれ前後方向に略沿って配設される2つの縦杆部5L,5Rと、縦杆部5L,5R間を連結するように車幅方向に略沿って配設される1つの横杆部6と、を備えている。この横杆部6は、クロスメンバ3F,3Bに略沿うようにして、縦杆部5L,5Rの前後の中央よりも前側となる領域に、配設されている。そして、実施形態の場合、エアバッグ組付体12は、2つの縦杆部5L,5Rと、横杆部6とクロスメンバ3Bとによって囲まれる領域に、配設される。すなわち、実施形態では、後側のクロスメンバ3Bが、横杆部を構成することとなり、ボディ側部材1は、車幅方向に略沿うとともに前後方向側で離隔して配設される2つの横杆部6,3Bと、前後方向に略沿うとともに車幅方向側で離隔して配設される2つの縦杆部5L,5Rと、を備えることとなる。
【0019】
エアバッグ組付体12は、
図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ20と、エアバッグ20に膨張用ガスを供給するインフレーター15と、エアバッグ20とインフレーター15とを収納するケース25と、を備える。
【0020】
インフレーター15は、
図2,3に示すように、外形形状を略円柱状としたインフレーター本体16と、インフレーター本体16を保持してケース25に取り付けるためのリテーナ17と、を備えている。インフレーター本体16は、軸方向を車幅方向に略沿わせるようにして、一端側(実施形態の場合、左端部16a側)に、エアバッグ20内に膨張用ガスを吐出させるためのガス吐出口(図符号省略)を、配設させ、右端部16b側に、制御装置70から延びる図示しないリード線を結線させるように構成されている。リテーナ17は、インフレーター本体16を保持する略筒状の保持部17aと、保持部17aから突出する2つのボルト17bと、を備えている。インフレーター15は、保持部17aにインフレーター本体16を保持させた状態で、ボルト17bとインフレーター本体16の右端部16bとを突出させるようにしてエアバッグ20内に配置されるもので(
図2参照)、ボルト17bを、ケース25における後述する後側壁28に形成される取付孔28aから突出させ、右端部16bを、ケース25における後述する右側壁30に形成される挿通用凹部30aに挿通させるようにして、ケース25内に収納される構成である。そして、インフレーター15は、ボルト17bとナット18とを利用して、エアバッグ20とともに、ケース25の後側壁28に取り付けられる構成である。インフレーター15は、制御装置70により、作動を制御されるもので、実施形態の場合、車両Vの自動運転時等において、制御装置70により、背もたれ部SBを後傾させた状態で助手席PSに着座している乗員MP(安楽姿勢の状態)を検出した状態での車両Vの前面衝突検知時に、作動するように制御されている。すなわち、インフレーター15は、背もたれ部SBを後傾させない状態で助手席PSに着座している乗員(通常着座の状態)を検出している場合には、作動しないように、制御装置70により作動を制御されている。
【0021】
エアバッグ20は、インフレーター15からの膨張用ガスを内部に流入させて膨張可能に、可撓性を有したシート体からなる袋状とされるもので、実施形態の場合、膨張完了形状を、インパネ55から後方に突出するように膨張しているエアバッグ63の後面63a側を覆うような略板状として、構成されている(
図1の二点鎖線及び
図8参照)。このエアバッグ20は、詳細な図示を省略するが、膨張完了時の左右方向側の幅寸法を、エアバッグ63の膨張完了時の左右方向側の幅寸法と略同等として、膨張完了時の厚みを、膨張しているエアバッグ63と協働して、前方移動してくる安楽姿勢状態の乗員MPの上半身を、クッション性よく受け止め可能な寸法に、設定されている。
【0022】
ケース25は、板金製の略箱形状として、
図2,3に示すように、折り畳まれたエアバッグ20の下面側を覆う略長方形状の底壁部26と、底壁部26の外周縁から上方に延びる側壁部27と、を備える構成とされている。側壁部27は、底壁部26の後縁から上方に延びる後側壁28と、底壁部26の車幅方向の両縁(左縁,右縁)から上方に延びる左側壁29,右側壁30と、を備える構成とされている。後側壁28には、インフレーター15のボルト17bを突出可能な取付孔28aが、形成されている。右側壁30の後端側には、インフレーター本体16の右端部16b側を突出可能な挿通用凹部30aが、上端側から凹ませるようにして、形成されている(
図3参照)。すなわち、実施形態では、ケース25は、インフレーター15を、後側壁28に近接させるようにして、後端側に収納させる構成とされている。そして、ケース25において、インフレーター15と対向する前端側(底壁部26の前縁側)に、エアバッグ20を突出させるための突出用開口25aが、形成されている。また、実施形態のケース25は、上面側を略全域にわたって開口させて構成されている。車両搭載状態では、ケース25の上方には、
図2に示すように、近接してルーフパネル10が配設されることとなる。
【0023】
また、ケース25は、左右両側と後側とに、ボディ側部材1に取り付けられる取付片32を、備えている。実施形態の場合、詳細には、ケース25は、上縁側(側壁部27の上縁27a側)における四隅付近(前端側の左右両側と後端側の左右両側)に、ボディ側部材1に取り付けられる取付片32を、配設させている。具体的には、後側の取付片32B,32Bは、後側壁28の左縁,右縁近傍の上端側から後方に突出するように形成され、前側の左右の取付片32F,32Fは、左側壁29,右側壁30の前縁近傍の上端側から左右の外方に突出するように形成されている(
図3参照)。各取付片32には、取付手段としてのボルト33を挿通可能な取付孔32aが、形成されている。各取付孔32aに挿通された各ボルト33は、ボディ側部材1に固着されているナット1aに締結させることにより、ボディ側部材1に取り付けられる構成である(
図5参照)。具体的には、前側の左右の取付片32F,32Fは、ジョイント部材4の各縦杆部5L,5Rに取り付けられ、後側の取付片32B,32Bは、横杆部を構成している後側のクロスメンバ3Bに取り付けられる構成である(
図4参照)。
【0024】
ルーフヘッドライニング35は、
図2,4に示すように、エアバッグ組付体12の搭載領域Aの下面側を覆うエアバッグカバー部40と、エアバッグカバー部40の周囲の一般部36と、を備えている。ルーフヘッドライニング35は、ガラス繊維を混入させた合成樹脂製とされるもので、詳細な図示を省略するが、下面側を、ファブリック等からなる内装材により覆われている。
【0025】
エアバッグ組付体12の搭載領域Aの下面側を覆うエアバッグカバー部40は、展開膨張するエアバッグ20に押されて破断可能とされる破断予定部42と、破断予定部42の破断時に開き可能とされる扉部45と、を備えている。破断予定部42は、
図4に示すように、エアバッグ組付体12を搭載される搭載領域Aの前後の中間部位において、車幅方向(左右方向)に略沿うように、形成されている。エアバッグ組付体12を搭載される搭載領域Aは、具体的に説明すれば、ルーフパネル10とルーフヘッドライニング35との間において、エアバッグ組付体12の配置領域とエアバッグ20の膨張する領域とを合わせた領域であり、実施形態の場合、後述する取付手段としての取付クリップ50F,50L,50Rと、ケース25の後側壁28と、によって囲まれる領域である(
図2,4参照)。破断予定部42は、実施形態の場合、取付クリップ50Fよりも後方で、かつ、ケース25の底壁部26における前縁26aよりもわずかに前方となる位置において、左右方向に略沿った直線状として構成されるもので(
図4参照)、実施形態の場合、
図2に示すように、上側から略断面V字状に切込を入れるように薄肉として、連続的に、形成されている。この破断予定部42の左端42aと右端42bとは、それぞれ、ケース25における左側壁29,右側壁30よりも左右の外方となる位置に、配置されている(
図4参照)。また、破断予定部42は、左端42a側と右端42b側とに、それぞれ、破断予定部42から連なって前後に延びるような補助破断予定部43,43を、有している(
図4,7参照)。補助破断予定部43,43は、取付クリップ50L,50Rよりも車幅方向の内側に、配置されている。実施形態の場合、各補助破断予定部43は、破断予定部42から前側に延びる前側部位43aよりも、破断予定部42から後側に延びる後側部位43bを長くするように、構成されている。そして、破断予定部42と補助破断予定部43,43とに囲まれる領域が、それぞれ、破断予定部42及び補助破断予定部43,43の破断時に開き可能とされる扉部45F,45B(45)を、構成している。すなわち、実施形態では、エアバッグ20の展開膨張時に、前後両側に開く2枚の扉部45F,45Bが、配設されている(
図2の二点鎖線参照)。また、実施形態のルーフヘッドライニング35は、前側の一般部36からエアバッグカバー部40にかけての領域に、図示しないサンバイザーを格納させるための凹部35aを有しており、エアバッグカバー部40に、この凹部35aの後縁を構成して、相対的に下方に略V字形状に突出するように隆起している隆起部35bを、車幅方向に略沿うように、配設させている(
図2,7参照)。そして、実施形態では、破断予定部42は、この隆起部35bの部位、特に、隆起部35bにおける凹部35a側の下ほうに突出する頂部35cの部位に、形成されている(
図2参照)。
【0026】
また、エアバッグカバー部40は、前縁40a側と、車幅方向の両縁(左縁40b,右縁40c)側と、の3箇所を、取付手段を用いて、ボディ側部材1に取り付けられる構成である。実施形態では、取付手段として、ルーフヘッドライニング35と別体の合成樹脂製の取付クリップ50が、使用されている(
図2,4,6参照)。具体的には、前縁40a側に配置される取付クリップ50Fは、ケース25における突出用開口25aの前方であって、破断予定部42よりも前側となる位置において、車幅方向(左右方向)側で離隔した4箇所に配設されている(
図4参照)。これらの取付クリップ50Fは、ジョイント部材4における横杆部6に、取り付けられる構成である。車幅方向の両縁(左縁40b,右縁40c)側に配置される取付クリップ50L,50Rは、ケース25における車幅方向の外方であって、各補助破断予定部43よりも外側となる位置において、それぞれ、前後方向側で離隔した2箇所ずつに、配設されている(
図4参照)。これらの取付クリップ50L,50Rは、ジョイント部材4の各縦杆部5L,5Rに取り付けられる構成である。各取付クリップ50は、
図6に示すように、先端側に、ボディ側部材1(縦杆部5L,5R,横杆部6)に形成される係止孔1bに貫通されて、係止孔1b周縁に係止される係止部50aを、備える構成とされている。
【0027】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明をする。インフレーター15を内部に収納させた状態で折り畳んだエアバッグ20と、インフレーター15と、を、ボルト17bを取付孔28aから突出させ、右端部16bを挿通用凹部30aから突出させるようにして、ケース25内に収納させ、ボルト17bにナット18を締結させることにより、エアバッグ20とインフレーター15とをケース25に取り付けて、エアバッグ組付体12を製造する。そして、このエアバッグ組付体12を、ボルト33を利用して各取付片32を各縦杆部5L,5R及びクロスメンバ3Bに取り付けることにより、ボディ側部材1に取り付ける。その後、ルーフヘッドライニング35を、エアバッグカバー部40の端縁を取付クリップ50を利用してボディ側部材1に取り付け、一般部36の所定箇所をクリップ等を別途使用してボディ側部材に取り付ければ、エアバッグ装置Mを、ルーフパネル10を装着済みの車両Vに取り付けることができて、車両Vに搭載することができる。
【0028】
実施形態のエアバッグ装置Mでは、車両Vに搭載した状態で、制御装置70が、背もたれ部SBを後傾させた状態で助手席PSに着座している乗員(安楽姿勢の状態)を検出した状態での車両Vの前面衝突を検知すれば、インフレーター15に作動信号を出力することとなって、エアバッグ20が、インフレーター15から吐出される膨張用ガスを内部に流入させて膨張し、エアバッグカバー部40の扉部45,45を押し開かせることとなる。そして、エアバッグ20は、ケース25の突出用開口25aと、エアバッグカバー部40の扉部45F,45Bを押し開いて形成される突出用開口46と、を経て、ケース25から下方に向かって突出しつつ展開膨張して、
図1の二点鎖線及び
図7に示すように、エアバッグ63と乗員MPとの間において、乗員MPの前方を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0029】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ組付体12の搭載領域Aの下方を覆うルーフヘッドライニング35(エアバッグカバー部40)が、搭載領域Aの前縁側(前縁40a側)と搭載領域Aの車幅方向の両縁側(左縁40b,右縁40c側)とを、取付手段としての取付クリップ50によりボディ側部材1に取り付けられ、残りの後縁側を、インフレーター15を取り付けたケース25により覆われることとなる。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、破断予定部42の上方側におけるエアバッグ組付体12の搭載領域Aが、前後左右を、ボディ側部材1に取り付けられる取付クリップ50、あるいは、インフレーター15を取り付けたケース25により塞がれる。そのため、膨張するエアバッグ20は、ケース25の突出用開口25aから突出する際に、搭載領域Aの四方を塞がれた状態とされていることから、ルーフパネル10側の反力を受けて、搭載領域Aの下方側において前後の中間部位に形成される破断予定部42に押し付けられるような態様となり、その結果、迅速に破断予定部42を開裂させつつ破断させ、破断して形成されたルーフヘッドライニング35(エアバッグカバー部40)の突出用開口46から、円滑に、室内側(下方)に展開膨張することとなる。そして、ルーフヘッドライニング35に形成される破断予定部42は、搭載領域Aの前後方向の縁側ではなく、前後の中間部位に配設されていることから、破断予定部42の破断時に、破断予定部42の周囲に押し開かれるような扉部45F,45Bが形成されることとなっても、その回転半径は小さく、ルーフヘッドライニング35の破断予定部42周縁に形成される扉部45F,45Bの室内側(下方)への突出量を抑えることができて、ルーフヘッドライニング35と乗員MPとの干渉を防止することができる。
【0030】
特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース25において、膨張するエアバッグ20を突出させるための突出用開口25aは、インフレーター15を収納させた後端側と対向する前端側に、形成される構成であり、ケース25は、折り畳まれたエアバッグ20の下面側を覆う底壁部26を備える構成である。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース25は、下面側に開口を有していない構成であることから、突出用開口25aから膨張しつつ突出するエアバッグ20が、ルーフヘッドライニング35における破断予定部42の周縁部位をダイレクトに下方へ大きく押圧することを抑制されるような態様となり、破断予定部42のケース25側の周縁部位(後側の扉部45B)が下方に大きく開くことも、的確に、抑制できる。
【0031】
したがって、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ルーフヘッドライニング35の乗員MPとの干渉を抑えて、膨張するエアバッグ20を、円滑かつ迅速に下方に突出させつつ展開膨張させることができる。
【0032】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ボディ側部材1が、車両Vの車幅方向に略沿うとともに前後方向側で離隔して配設される2つの横杆部6,3Bと、前後方向に略沿うとともに車幅方向側で離隔して配設される2つの縦杆部5L,5Rと、を備える構成とされ、ケース25に形成される取付片32が、それぞれ、左右の取付片32F,32Fを、各縦杆部5L,5Rに取り付けられ、後側の取付片32B,32Bを、後側に配置される後側横杆部としてのクロスメンバ3Bに取り付けられる構成である。また、ルーフヘッドライニング35におけるエアバッグカバー部40も、左縁40b,右縁40c側の部位を、取付クリップ50L,50Rを用いて各縦杆部5L,5Rに取り付けられ、前縁40a側の部位を、取付クリップ50Fを用いて前側に配置される前側横杆部としての横杆部6に取り付けられる構成である。そのため、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ケース25の取付片32とルーフヘッドライニング35の取付クリップ50とを取り付けるボディ側部材1を共用化することができて、搭載部位の省スペース化を図ることができる。
【0033】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、破断予定部42が、ルーフヘッドライニング35において、下方に向かって突出し、かつ、車幅方向に略沿って延びるようにするように隆起している隆起部35bに、形成される構成であることから、破断予定部42が、薄肉として、周囲の部位から違和感が生じ易くとも、隆起部35bの表面側の屈曲する変化に注目が集まり、この破断予定部42を、車内側から目立たなくすることができて、破断予定部42を車内側から目視し難く、ルーフヘッドライニング35の意匠性が良好となる。勿論、このような点を考慮しなければ、破断予定部を、ルーフヘッドライニングにおいて、凹凸を備えない平坦な領域に、配置させる構成としてもよい。
【0034】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、破断予定部42における車幅方向の両端(左端42a,右端42b)に、前後両側へ延びる補助破断予定部43,43を、形成していることから、エアバッグ20の展開膨張時に、破断予定部42と補助破断予定部43とを破断させることにより、ルーフヘッドライニング35(エアバッグカバー部40)に形成される突出用開口46を、前後に広く確保できて、エアバッグ20を迅速に突出させることができる。実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグカバー部40の領域には、破断予定部42と補助破断予定部43とのみが、形成されて、この破断予定部42と補助破断予定部43とによって囲まれる領域が、扉部45F,45Bとして開くこととなる。すなわち、実施形態のエアバッグ装置Mでは、扉部の開きの起点となるヒンジ部が形成されていないが、ヒンジ部を備えない構成であっても、各扉部45F,45Bは、破断予定部42及び補助破断予定部43の破断後に、補助破断予定部43の端末間の部位を起点として、円滑に開くこととなる。なお、実施形態では、破断予定部42の左端42a,右端42bから、前後に補助破断予定部43,43が延びる構成とされているが、破断予定部の形状は、実施形態に限定されるものではなく、補助破断予定部を、破断予定部の端末から前方あるいは後方の一方に延ばすように構成してもよく、さらには、破断予定部として、補助破断予定部を備えない構成としてもよい。
【0035】
なお、実施形態では、背もたれ部SBを後傾させた状態で助手席PSに着座している乗員MPを保護するためのエアバッグ装置Mを例に採り、説明しているが、本発明を適用可能なエアバッグ装置は、実施形態に限られるものではない。例えば、ルーフに搭載されて、膨張完了時の前面側を、ハンドルやインパネ等の車体側の部材に支持可能させることにより、前方移動する乗員をエアバッグ単体で受け止め可能とするエアバッグ装置や、ルーフに搭載されて、後部座席に着座した後側乗員を保護するためのエアバッグ装置にも、本発明は、適用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1…ボディ側部材、3F,3B…クロスメンバ(横杆部)、4…ジョイント部材、5L,5R…縦杆部、6…横杆部、10…ルーフパネル、12…エアバッグ組付体、15…インフレーター、20…エアバッグ、25…ケース、25a…突出用開口、26…底壁部、28…後側壁、32(32F,32B)…取付片、35…ルーフヘッドライニング、35b…隆起部、40…エアバッグカバー部(搭載領域)、40a…前縁、40b…左縁、40c…右縁、42…破断予定部、46…突出用開口、50(50F,50L,50R)…取付クリップ(取付手段)、A…搭載領域、MP…乗員、PS…助手席(シート)、RF…ルーフ、M…エアバッグ装置。