(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】光源装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20230301BHJP
G03B 21/28 20060101ALI20230301BHJP
G02B 19/00 20060101ALI20230301BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230301BHJP
G02B 5/26 20060101ALI20230301BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/28
G02B19/00
G02B5/20
G02B5/26
G02B5/28
(21)【出願番号】P 2019152559
(22)【出願日】2019-08-23
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】前野 敬一
(72)【発明者】
【氏名】古川 直史
(72)【発明者】
【氏名】相崎 隆嗣
【審査官】新井 重雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-174264(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111145(WO,A1)
【文献】特開2015-082091(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108139055(CN,A)
【文献】特開2015-34933(JP,A)
【文献】特開2013-235043(JP,A)
【文献】特開2014-207083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
G03B 21/28
G02B 19/00
G02B 5/20
G02B 5/26
G02B 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
青色レーザ光を射出する青色レーザモジュールと、
平面形状の入射面を有し、入射した前記青色レーザ光を、青色レーザ光の射出方向である第1の方向とは異なる第2の方向に反射させて蛍光体に導入すると共に、前記蛍光体で励起され、前記第2の方向の逆方向に射出された光の少なくとも一部を透過するダイクロイックミラーと、を備え、
前記ダイクロイックミラーの入射面には、前記青色レーザ光を反射するダイクロコートが形成されたダイクロコート領域を有し、
前記ダイクロコート領域は、前記入射面上での前記第1の方向に直交する方向の距離が、前記青色レーザモジュールから遠いほど、長くなるように形成されていること
を特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記ダイクロイックミラーに形成される前記ダイクロコート領域は、前記蛍光体で励起された光が照射される領域よりも狭いこと
を特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記ダイクロコートは、互いに平行な短辺と長辺を有する台形形状をなし、前記長辺は、前記青色レーザモジュールから遠い位置に配置されていること
を特徴とする請求項1または2に記載の光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ装置などに用いられる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ装置などに用いられる光源装置の従来例として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。特許文献1では、レーザ光源から出射される青色の励起光をダイクロイックミラーで反射させて蛍光板に照射し、蛍光板で励起された光をダイクロイックミラーに透過させることが記載されている。
【0003】
また、特許文献1に記載された光源装置では、ダイクロイックミラーにレーザ光源からの青色励起光を反射する励起光反射部を複数箇所に形成し、該励起光反射部で青色の励起光を蛍光板の方向に反射させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1ではダイクロイックミラーに複数の励起光反射部を形成しているので、励起光反射部と、透過部との境界となる辺が多くなり、この部分での光の反射効率が低下するという問題があった。この辺での反射効率低下は、反射部のダイクロコートを蒸着で形成するとき、蒸着用マスクの陰の影響で辺でのダイクロコートの形成が設計通りにできないこと、などが原因である。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光の反射効率を向上させることが可能な光源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る光源装置は、青色レーザ光を射出する青色レーザモジュールと、平面形状の入射面を有し、入射した青色レーザ光を、青色レーザ光の射出方向である第1の方向とは異なる第2の方向に反射させて蛍光体に導入すると共に、蛍光体で励起され、第2の方向の逆方向に射出された光の少なくとも一部を透過するダイクロイックミラーと、を備える。ダイクロイックミラーの入射面には、青色レーザ光を反射するダイクロコートが形成されたダイクロコート領域を有し、ダイクロコート領域は、入射面上での第1の方向に直交する方向の距離が、青色レーザモジュールから遠いほど、長くなるように形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光源装置では、光の反射効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る光源装置が搭載される投射装置の構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る光源装置の詳細な構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るダイクロイックミラーの入射面に形成されるダイクロコート領域、及び透過領域を示す説明図である。
【
図4】
図4は、比較例に係るダイクロイックミラーの入射面に形成されるダイクロコート領域、及び透過領域を示す説明図である。
【
図5】
図5は、比較例に係るダイクロイックミラーを用いた光源装置の構成を示す説明図である。
【
図6】
図6は、ダイクロイックミラーの変形例の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る光源装置が搭載された投射装置の構成を示す説明図、
図2は光源装置の詳細な構成を示す説明図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る投射装置1は、光源装置2と、照明光学系3と、光変調素子4(4R、4G、4B)と、投射光学系5と、を備えている。
【0011】
図2に示すように、光源装置2は、s波の青色レーザ光BLを射出する青色レーザモジュール21と、射出された青色レーザ光BLの経路上に設けられたダイクロイックミラー22と、ダイクロイックミラー22で反射した青色レーザ光BLを集光する集光レンズ23と、蛍光体ホイール25と、蛍光体24と、を備えている。
【0012】
図3は、ダイクロイックミラー22の入射面の構成を示す説明図である。
図3に示すように、ダイクロイックミラー22は平面形状の入射面を有している。ダイクロイックミラー22の入射面には、ダイクロコートされている台形形状のダイクロコート領域S1と、ダイクロコートされていない透過領域S2が形成されている。ダイクロコート領域S1は特定の波長帯域の光を選択的に反射させる領域であり、本実施形態ではs波の青色レーザ光を反射させ、それ以外の光を透過する。また、透過領域S2は入射した光を透過する領域である。
【0013】
青色レーザモジュール21より射出される青色レーザ光BLの射出方向(
図2で上から下を向く方向)を第1の方向とする。ダイクロイックミラー22の入射面は、第1の方向に対して45°だけ傾斜して配置されている。なお、本実施形態では、一例として45°傾斜して配置する例について説明するが、本発明はこれに限定されない。光の入射方向と反射方向が異なればよい。
【0014】
また、
図3に示すように、台形形状をなすダイクロコート領域S1の、短辺h1側(互いに平行となる2辺の短辺側)は、青色レーザモジュール21から近い側に配置され、長辺h2側は、青色レーザモジュール21から遠い側に配置されている。即ち、ダイクロコートは、ダイクロイックミラー22の入射面上での第1の方向に直交する方向の距離が、青色レーザモジュール21から遠いほど、長くなるように形成されている。
【0015】
第1の方向から入射したs波の青色レーザ光はダイクロコート領域S1にて90°の方向に反射し、集光レンズ23で集光された後、蛍光体24に導入される。反射した青色レーザ光の方向(
図2で左から右に向く方向)を第2の方向とする。
【0016】
蛍光体24を固定する蛍光体ホイール25は、例えば円板形状を有する。蛍光体24は、蛍光体ホイール25の鏡面である表面の外周部に形成されている。青色レーザ光BLが蛍光体24に照射されることにより、蛍光体24は励起され、赤色成分と緑色成分とを含む黄色光(Y)を発光する。更に、青色光を反射する。なお、反射された青色光は蛍光体により散乱されているため、s波とp波を含んでいる。
【0017】
蛍光体ホイール25を回転させた状態で青色レーザ光BLを蛍光体24に照射することにより、青色レーザ光BLが照射されることに起因して発生する局部的な温度上昇を、蛍光体ホイール25の外周部全体に分散させることができる。これにより、蛍光体24の温度上昇を抑制することができる。
【0018】
蛍光体24より射出される黄色光、青色光は、第2の方向の反対方向(
図2で右から左に向く方向)からダイクロイックミラー22の入射面に照射される。黄色光、青色光は例えば、
図3に示す楕円領域S3に導入される。楕円領域S3中の、ダイクロコート領域S1に導入されたs波の青色光は、該ダイクロコート領域S1にて反射し、第1の方向の反対の方向に照射される。ダイクロコート領域S1は、蛍光体24で励起された光が照射される楕円領域S3よりも狭い。
【0019】
一方、楕円領域S3中の透過領域S2に導入された光、及びダイクロコート領域S1を透過した光(黄色光、青色光(p波、s波))は、ダイクロイックミラー22を透過し、照明光WLLとして
図1に示す照明光学系3へ導入される。
【0020】
即ち、ダイクロイックミラー22は、平面形状の入射面を有し、入射した青色レーザ光を、青色レーザ光の射出方向である第1の方向とは異なる第2の方向に反射させて蛍光体24に導入する。更に、蛍光体24で励起され、第2の方向の逆方向に射出された光の少なくとも一部を透過する。
【0021】
図1に戻って、照明光学系3は、反射ミラー30、31、32と、フライアイレンズ33、34と、偏光変換素子35と、レンズ36~39とを有する。更に照明光学系3は、クロスダイクロイックミラー40と、ダイクロイックミラー41と、反射型偏光板42(図では、42R、42G、42Bと記載)とを有する。
【0022】
反射ミラー30は、照明光学系3に入射した照明光WLLをフライアイレンズ33及び34に向けて反射する。フライアイレンズ33、34は、光変調素子4に照射される照明光WLLの照明分布を均一化する。
【0023】
偏光変換素子35は、照明光WLLを、p偏光及びs偏光のうちのいずれか一方の偏光に揃える。偏光変換素子35は、照明光WLLを、例えばs偏光に揃える。s偏光に揃えられた照明光WLLは、レンズ36を介してクロスダイクロイックミラー40へ入射する。クロスダイクロイックミラー40は、照明光WLLを黄色照明光YLLと青色照明光BLLとに分離する。
【0024】
クロスダイクロイックミラー40によって分離された黄色照明光YLLは、反射ミラー31で反射し、ダイクロイックミラー41に入射する。ダイクロイックミラー41は、黄色照明光YLLを、赤色成分を含む赤色照明光RLLと、緑色成分を含む緑色照明光GLLとに分離する。
【0025】
ダイクロイックミラー41は、赤色照明光RLLを透過させ、緑色照明光GLLを反射する。反射型偏光板42は、p偏光及びs偏光のうちのいずれか一方を透過させ、他方を反射する。反射型偏光板42は、例えばs偏光を透過させ、p偏光を反射する。反射型偏光板42は、例えばワイヤグリッドで構成することができる。
【0026】
光変調素子4、及び反射型偏光板42を色ごとに区別するために、赤色照明光RLLが照射される光変調素子4、及び反射型偏光板42を、光変調素子4R、及び反射型偏光板42Rとする。緑色照明光GLLが照射される光変調素子4、及び反射型偏光板42を、光変調素子4G、及び反射型偏光板42Gとする。青色照明光BLLが照射される光変調素子4、及び反射型偏光板42を、光変調素子4B及び、反射型偏光板42Bとする。
【0027】
ダイクロイックミラー41を透過した赤色照明光RLLは、レンズ37を介して反射型偏光板42Rへ入射する。p偏光の赤色照明光RLLは、反射型偏光板42Rを透過して光変調素子4Rに照射される。光変調素子4Rは、赤色成分の画像データに基づいて、赤色照明光RLLを画素ごとに光変調し、s偏光の赤色画像光RMLを生成する。赤色画像光RMLは、反射型偏光板42Rで反射し、投射光学系5へ入射する。
【0028】
ダイクロイックミラー41で反射した緑色照明光GLLは、レンズ38を介して反射型偏光板42Gへ入射する。p偏光の緑色照明光GLLは、反射型偏光板42Gを透過して光変調素子4Gに照射される。光変調素子4Gは、緑色成分の画像データに基づいて、緑色照明光GLLを画素ごとに光変調し、s偏光の緑色画像光GMLを生成する。緑色画像光GMLは、反射型偏光板42Gで反射し、投射光学系5へ入射する。
【0029】
クロスダイクロイックミラー40によって分離された青色照明光BLLは、反射ミラー32で反射し、レンズ39を介して反射型偏光板42Bへ入射する。p偏光の青色照明光BLLは、反射型偏光板42Bを透過して光変調素子4Bに照射される。光変調素子4Bは、青色成分の画像データに基づいて、青色照明光BLLを画素ごとに光変調し、s偏光の青色画像光BMLを生成する。青色画像光BMLは、反射型偏光板42Bで反射し、投射光学系5へ入射する。
【0030】
投射光学系5は、色合成プリズム43と投射レンズ44とを有する。投射光学系5へ入射した赤色画像光RML、緑色画像光GML、及び青色画像光BMLは、色合成プリズム43によって合成され、投射レンズ44によってフルカラー画像の表示画像としてスクリーン等の被投射媒体へ拡大投射される。
【0031】
[本実施形態の作用の説明]
次に、上述のように構成された投射装置1に搭載された光源装置2の作用について説明する。
図4は、
図2に示したダイクロイックミラーの入射面に、複数の短冊形状をなすダイクロコート領域S11を形成した構成(従来のダイクロイックミラーの構成)を示す説明図であり、
図5は
図4に示したダイクロイックミラーを用いた投光装置の光の経路を示す説明図である。
【0032】
図4に示すように、ダイクロコート領域S11が複数の短冊形状に分割されていることにより、ダイクロコート領域S11と透過領域S12との境界となる辺が多くなり、この部分での光の反射効率が低下する。
【0033】
これに対して、本実施形態では
図3にて説明したように、台形形状をなす一つのダイクロコート領域S1とされているので、ダイクロコート領域S1と透過領域S2との境界となる辺は少なく、反射効率の低下が軽減される。更に、s波とp波の分離性能を高めることができる。
【0034】
更に
図3に示したように、台形の短辺h1側が青色レーザモジュール21から近い側に配置され、台形の長辺h2側が青色レーザモジュール21から遠い側に配置されている。このため、青色レーザモジュール21からの距離が遠い位置で、青色レーザ光BLが反射する領域が広くなっている。その結果、青色レーザモジュール21から射出され、反射面に到達するまでに若干広がっている青色レーザ光を、均一に蛍光体24側に反射させることができる。
【0035】
[本実施形態の効果の説明]
このようにして、本実施形態に係る光源装置2では、ダイクロイックミラー22の入射面に、台形形状のダイクロコート領域S1を形成しており、この台形形状は、入射面上で第1の方向に直交する方向の距離が、青色レーザモジュール21から遠いほど、長くなるように形成されている。
【0036】
従って、青色レーザモジュール21より射出されたs波の青色レーザ光BLを均一に第2の方向へ反射させて蛍光体24に導入させることができる。従って、蛍光体24を安定的に励起させて、黄色光を発生させることができる。
【0037】
また、ダイクロコート領域S1が台形形状をなしていることにより、第2の方向の反対方向に射出した黄色光、青色光を効率よくダイクロイックミラー22を透過させて、照明光学系3に導入することが可能となる。
【0038】
[変形例の説明]
上述した実施形態では、ダイクロコート領域S1の形状が台形形状である例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、
図6(a)に示すように台形でない四角形Q1とすることや、
図6(b)に示すように、曲線の辺を持つ形状Q2としてもよい。
【0039】
即ち、ダイクロコート領域S1は、入射面上での第1の方向に直交する方向の距離が、青色レーザモジュール21から遠いほど(即ち、
図3に示す符号h2に近づくほど)、長くなるように形成されていればよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
例えば、上記した実施形態では、青色レーザモジュール21がs波の青色レーザ光を射出する例について説明したが、p波としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 投射装置
2 光源装置
3 照明光学系
4(4R、4G、4B) 光変調素子
5 投射光学系
21 青色レーザモジュール
22 ダイクロイックミラー
23 集光レンズ
24 蛍光体
25 蛍光体ホイール
30~32 反射ミラー
33、34 フライアイレンズ
35 偏光変換素子
36~39 レンズ
40 クロスダイクロイックミラー
41 ダイクロイックミラー
42(42R、42G、42B) 反射型偏光板
43 色合成プリズム
44 投射レンズ