(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】車載用電源制御装置、及び車載用電源装置
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20230301BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230301BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230301BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B60R16/02 660L
B60R16/02 660M
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 302D
(21)【出願番号】P 2019211207
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洸
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-191440(JP,A)
【文献】特開2017-028772(JP,A)
【文献】特開2017-216792(JP,A)
【文献】国際公開第2018/012302(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1負荷および第2負荷に電力を供給する電源部と、
並列に接続される前記第1負荷および前記第2負荷に対して電力を供給する蓄電部と、を備えた車載用電源システムを制御する車載用電源制御装置であって、
前記蓄電部から前記第1負荷および前記第2負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う放電回路と、
前記電源部の出力電圧が印加される導電路の電圧が基準電圧値を下回るバックアップ条件が成立した場合に前記放電回路に前記バックアップ動作を行わせる制御部と、
前記蓄電部の出力電圧を検出する電圧検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記蓄電部から前記第1負荷および前記第2負荷にそれぞれ個別に電力を供給する制御を行い、
前記制御部は、前記バックアップ動作の開始後において前記第2負荷への電力供給が停止状態又は所定の低下状態となっているときに前記蓄電部の出力電圧が閾値電圧より小さくなった場合に前記第2負荷への前記バックアップ動作を禁止する車載用電源制御装置。
【請求項2】
前記蓄電部と前記第2負荷との間の経路において前記第2負荷側へ供給される電力を検出する電力検出部を備え、
前記制御部は、前記バックアップ動作の開始後において、前記電力検出部によって検出される電力が閾値電力より小さくなった場合に前記第2負荷への前記バックアップ動作を禁止する請求項1に記載の車載用電源制御装置。
【請求項3】
前記第2負荷に流れる電流を検出する電流検出部を備え、
前記制御部は、前記電流検出部によって検出される電流が閾値電流より小さくなった場合において、前記蓄電部の出力電圧が前記閾値電圧より小さくなった場合に前記第2負荷への前記バックアップ動作を禁止する請求項1又は2に記載の車載用電源制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記バックアップ動作の開始後において、前記第2負荷への前記バックアップ動作を禁止した後、前記バックアップ動作が終了するまで禁止状態を維持する請求項1から3のいずれか一項に記載の車載用電源制御装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車載用電源制御装置と、
前記蓄電部と、
を含む車載用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載用電源制御装置、及び車載用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冗長化された車載用の電源装置は、サイズ低減やコスト低減を行うために、蓄電素子の構成の簡略化が望まれている。そこで、電源装置は、蓄電素子の構成を必要最小限にするために、蓄電素子の充電状態を正確に把握し得る構成が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1の蓄電素子管理装置は、電流積算法とOCV(Open Circuit Vоltage)法とを用いて蓄電素子のSOC(State Of Charge)を取得して、充電状態を把握する構成となっている。電流積算法は、蓄電素子に流れる電流の時間積算により蓄電素子のSOCを決定する方法である。OCV法は、蓄電素子の電圧と充電状態とのV-SOC相関関係に基づきSOCを決定する方法である。蓄電素子管理装置は、V-SOC相関関係を複数のSOC領域、すなわち第一SOC領域(電流積算法により決定されるSOCが属する領域)と、第二SOC領域(OCV法により決定される領域)とに区分する。蓄電素子管理装置は、第一SOC領域と第二SOC領域とが互いに異なる場合に、第二SOC領域のうちの所定値をSOC推定値として採用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の蓄電素子管理装置のように、一般的な充電状態の推定方法を用いる構成では、蓄電素子の電力供給能力の変化を把握するために、例えば、蓄電素子の出力電圧がどの程度低下したか判別する方法が考えられる。しかし、負荷(車載用装置)が動作している場合、負荷の動作に起因して蓄電素子の出力電圧が変動することになる。このように蓄電素子の出力電圧が負荷の動作に依存することで、蓄電素子の電力供給能力を正確に把握できない問題が生じる。
【0006】
本開示は、蓄電部の電力の供給能力をより正確に把握し、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぎつつ、第1負荷に供給可能な能力を確実に残しておくことができる車載用電源制御装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の車載用電源制御装置は、
第1負荷および第2負荷に電力を供給する電源部と、蓄電部と、を備えた車載用電源システムを制御する車載用電源制御装置であって、
前記蓄電部から前記第1負荷および前記第2負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う放電回路と、
バックアップ条件が成立した場合に前記放電回路に前記バックアップ動作を行わせる制御部と、
前記蓄電部の出力電圧を検出する電圧検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記バックアップ動作の開始後において前記第2負荷への電力供給が停止状態又は所定の低下状態となっているときに前記蓄電部の出力電圧が閾値電圧より小さくなった場合に前記第2負荷へのバックアップ動作を禁止する。
【0008】
本開示の車載用電源装置は、
上記車載用電源制御装置と、
上記蓄電部と、
を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、蓄電部の電力の供給能力をより正確に把握し、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぎつつ、第1負荷に供給可能な能力を確実に残しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例1の車載用電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1の制御部で実行される、第2負荷に対するバックアップ動作の禁止制御の流れを例示するフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施例1の車載用電源制御装置で検出される各検出値の時間変化を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、
図3とは異なる状態で、実施例1の車載用電源制御装置で検出される各検出値の時間変化を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5は、比較例の車載用電源制御装置で検出される各検出値の時間変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の車載用電源制御装置は、
(1)第1負荷および第2負荷に電力を供給する電源部と、蓄電部と、を備えた車載用電源システムを制御する車載用電源制御装置であって、蓄電部から第1負荷および第2負荷に電力を供給するバックアップ動作を行う放電回路と、バックアップ条件が成立した場合に放電回路にバックアップ動作を行わせる制御部と、蓄電部の出力電圧を検出する電圧検出部と、備え、制御部は、バックアップ動作の開始後において第2負荷への電力供給が停止状態又は所定の低下状態となっているときに蓄電部の出力電圧が閾値電圧より小さくなった場合に第2負荷へのバックアップ動作を禁止する。
このように、本開示の車載用電源制御装置は、第2負荷の動作による影響を受けない状態又は影響が小さい状態で取得された蓄電部の出力電圧を閾値電圧と比較することで、蓄電部の電力の供給能力をより正確に把握することができる。制御部は、蓄電部の電力の供給能力が確実に低下している場合には、バックアップ動作を禁止し、それ以上の低下を抑え、第1負荷に供給可能な能力を残しておくことができる。一方、制御部は、一時的な電圧低下があっても停止状態又は低下状態のときに下がっていなければ、禁止しないようにすることができる。これにより、制御部は、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぐことができる。
【0012】
(2)蓄電部と第2負荷との間の経路において第2負荷側へ供給される電力を検出する電力検出部を備えていてもよい。制御部は、バックアップ動作の開始後において、電力検出部によって検出される電力が閾値電力より小さくなった場合に第2負荷へのバックアップ動作を禁止してもよい。
このようにすれば、制御部は、電力検出部によって検出される電力を閾値電力と比較することで、蓄電部によって第2負荷側へ供給可能な電力を把握することができる。これにより、制御部は、第2負荷への電力供給が停止状態又は所定の低下状態とならずに蓄電部の出力電圧を把握できない場合であっても、蓄電部から第2負荷側への電力の供給能力の低下状態を検出することができる。そして、制御部は、蓄電部の電力の供給能力が確実に低下している場合には、バックアップ動作を禁止し、それ以上の低下を抑え、第1負荷に供給可能な能力を残しておくことができる。一方、制御部は、蓄電部の電力の供給能力が確保されている場合には、バックアップ動作を禁止しないようにすることで、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぐことができる。
【0013】
(3)第2負荷に流れる電流を検出する電流検出部を備えていてもよい。制御部は、電流検出部によって検出される電流が閾値電流より小さくなった場合において、蓄電部の出力電圧が閾値電圧より小さくなった場合に第2負荷へのバックアップ動作を禁止してもよい。
このようにすれば、制御部は、第2負荷に流れる電流が閾値電流より小さくなった場合、第2負荷の停止状態又は所定の低下状態であることが推測できる。制御部は、電流検出部によって検出される電流が閾値電流より小さくなった場合に蓄電部の出力電圧を閾値電圧と比較する。これにより、制御武は、第2負荷の動作による影響を受けない状態又は影響が小さい状態で蓄電部の電力の供給能力をより正確に把握することができる。
【0014】
(4)制御部は、バックアップ動作の開始後において、第2負荷へのバックアップ動作を禁止した後、バックアップ動作が終了するまで禁止状態を維持してもよい。
このようにすれば、制御部は、第2負荷へのバックアップ動作を禁止することで、それ以降の第2負荷への電力供給を行う必要がなくなる。そのため、制御部は、第2負荷へのバックアップ動作の禁止後の電力供給を行わない代わりに、第2負荷へのバックアップ動作の禁止前における電力の供給能力を上げることができる。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実装部品の取付け構造の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
<実施例1>
図1には、車両用電源システム1(以下、電源システム1ともいう)と、車両用電源システム1から電力供給を受ける第1負荷81及び第2負荷82とを備えた車両システムSyが開示されている。
図1で示される車両用電源システム1は、主電源として機能する電源部91と、バックアップ電源として機能する蓄電部92と、車両用電源制御装置3(以下、制御装置3ともいう)とを備える。電源システム1は、
車両システムSyによって第1負荷81及び第2負荷82に電力を供給し得るシステムとして構成され、且つ、制御装置3によって失陥時のバックアップ動作を制御し得るシステムとして構成されている。
【0017】
第1負荷81及び第2負荷82は、車両に搭載される様々な電気部品である。第1負荷81は、例えば、特定の条件が成立した場合に動作する電気部品である。第1負荷81は、例えば、外部ECU100から送信される動作指示信号(所定条件が成立した場合に送信される信号)に基づいて、規定通りに動作する電気部品である。すなわち、第1負荷81は、一定の消費電力で、一定の動作時間で動作する。第2負荷82は、例えば、規定通りに動作しない電気部品である。すなわち、第2負荷82は、動作タイミングが定められていない電気部品であり、ユーザの操作に基づいて動作する。第1負荷81は、第4導電路44に電気的に接続されており、電源部91又は蓄電部92から第4導電路44を介して電力が供給される。第2負荷82は、第5導電路45に電気的に接続されており、電源部91又は蓄電部92から第5導電路45を介して電力が供給される。
【0018】
電源部91は、車両に搭載される電源部であり且つ様々な対象へ電力を供給するための主電源として機能する。電源部91は、例えば、鉛バッテリ等の車載バッテリとして構成されている。電源部91は、高電位側の端子が第3導電路43に電気的に接続され、第3導電路43に対して所定の出力電圧を印加する。なお、
図1では、ヒューズやイグニッションスイッチなどは省略して示している。第3導電路43には、スイッチ46が設けられている。スイッチ46は、例えば、FETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子であってもよく、機械式リレーであってもよい。スイッチ46は、制御部10からの指示信号に基づいてオン・オフ動作を行う。スイッチ46は、オン状態のときに電源部91と、第2導電路42、第4導電路44、及び第5導電路45とを導通させる。
【0019】
蓄電部92は、例えば、電気二重層キャパシタ(EDLC)等の蓄電手段によって構成されている。蓄電部92は第1導電路41を介して放電回路20に電気的に接続されており、放電回路20によって充電がなされ、放電回路20によって放電がなされる。蓄電部92は、第1導電路41に対して充電度合いに応じた出力電圧を印加する。この蓄電部92は、バックアップ電源として機能し、少なくとも電源部91からの電力供給が途絶えたときに電力供給源となる。本構成では、蓄電部92と後述する制御装置3とによって車両用電源装置2(以下、電源装置2ともいう)が構成されている。
【0020】
電源システム1は、電源部91からの電力供給が低下していない正常のときに電源部91の出力電圧が電力線となる第3導電路43に印加され、電源部91から第3導電路43を介して様々な電気部品に電力が供給される。なお、電源部91の出力電圧は、電源部91の高電位側端子と低電位側端子との端子間電圧を意味する。
【0021】
制御装置3は、制御部10、放電回路20、電圧検出部31、電圧検出部32、電流検出部33などを備える。
【0022】
放電回路20は、蓄電部92から第1負荷81および第2負荷82の少なくともいずれかに電力を供給するバックアップ動作を行う。放電回路20は、電源部91と蓄電部92との間に介在している。放電回路20は、電圧変換部21と、スイッチ22,23と、を備えている。電圧変換部21は、第1導電路(蓄電部側導電路)41と第2導電路(電源部側導電路)42との間に介在している。電圧変換部21は、昇降圧型のDCDCコンバータとして構成されており、第1導電路41又は第2導電路42の一方の導電路に印加された直流電圧を昇圧又は降圧して他方の導電路に出力する構成である。具体的には、電圧変換部21は、蓄電部92に電気的に接続された第1導電路41の電圧を昇圧又は降圧して第2導電路42に目標電圧(外部ECU100から指示される電圧)を印加する電圧変換動作を行い得る。電圧変換部21は、電源部91に電気的に接続された第2導電路42の電圧を昇圧又は降圧して第1導電路41に目標電圧を印加する電圧変換動作を行い得る。電圧変換部21には、制御部10によって、蓄電部92の放電を指示する放電指示信号、又は蓄電部92の放電停止を指示する放電停止信号が与えられる。電圧変換部21は、制御部10からの信号に応じて、蓄電部92から第2導電路42に放電電流を流す放電動作と、放電電流を遮断する遮断動作とを行う。電圧変換部21は、制御部10から蓄電部92の放電指示信号が与えられている場合、蓄電部92の出力電圧が印加される第1導電路41の電圧を入力電圧として昇圧動作又は降圧動作を行う。そして、電圧変換部21は、出力側の第2導電路42に対して設定された目標電圧を印加するように放電動作(具体的には、第2導電路42に対し制御部10で設定された目標電圧を印加する放電動作)を行う。電圧変換部21は、制御部10から蓄電部92の放電停止信号が与えられている場合、このような放電動作を停止させ、第1導電路41と第2導電路42との間を非導通状態とするように遮断動作を行う。
【0023】
電圧変換部21には、制御部10によって、電源部91から蓄電部92に対する放電を指示する放電指示信号、又は電源部91から蓄電部92に対する放電停止を指示する放電停止信号が与えられる。電圧変換部21は、制御部10からの信号に応じて、第2導電路42から第1導電路41に放電電流を流す放電動作と、放電電流を遮断する遮断動作とを行う。電圧変換部21は、制御部10から電源部91の放電指示信号が与えられている場合、電源部91の出力電圧が印加される第2導電路42の電圧を入力電圧として昇圧動作又は降圧動作を行う。そして、電圧変換部21は、出力側の第1導電路41に対して設定された目標電圧を印加するように放電動作(具体的には、第1導電路41に対し制御部10で設定された目標電圧を印加する放電動作)を行う。電圧変換部21は、制御部10から電源部91の放電停止信号が与えられている場合、このような放電動作を停止させ、第2導電路42と第1導電路41との間を非導通状態とするように遮断動作を行う。
【0024】
スイッチ22,23は、それぞれ第4導電路44、第5導電路45に設けられている。スイッチ22,23は、例えば、FETやバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチ素子であってもよく、機械式リレーであってもよい。スイッチ22,23は、制御部10からの指示信号に基づいてオン・オフ動作を行う。スイッチ22は、オン状態のときに第1負荷81と、第2導電路42及び第3導電路43とを導通させる。スイッチ46がオン状態のときに、スイッチ22がオン状態になると、電源部91から出力される出力電流が第1負荷81に供給されうる。電圧変換部21が放電動作を行っているときに、スイッチ22がオン状態になると、電圧変換部21から出力される出力電流(放電電流)が第1負荷81に供給されうる。
【0025】
スイッチ23は、オン状態のときに第2負荷82と第2導電路42とを導通させる。スイッチ46がオン状態のときに、スイッチ23がオン状態になると、電源部91から出力される出力電流が第2負荷82に供給されうる。電圧変換部21が放電動作を行っているときに、スイッチ23がオン状態になると、電圧変換部21から出力される出力電流(放電電流)が第2負荷82に供給されうる。
【0026】
電圧検出部31は、第3導電路43に設けられている。電圧検出部31は、電圧検出回路として構成され、第3導電路43に印加される電圧を検出する。電圧検出部31は、第3導電路43の電圧を検出して、検出した電圧を検出値として制御部10に入力する。なお、電圧検出部31は、第3導電路43の電圧を分圧回路によって分圧して検出し、検出値として制御部10に入力してもよい。
【0027】
電圧検出部32は、第1導電路41に設けられている。電圧検出部32は、第1導電路41に印加される電圧(蓄電部92の出力電圧)を検出し、検出値として制御部10に入力する。ここで、電圧変換部21は、図示しない電流検出回路を備えており、第1導電路41において第2負荷82側へ流れる電流を検出する構成となっている。後述する制御部10は、電圧検出部32によって検出された電圧と、電圧変換部21の電流検出回路によって検出された電流とに基づいて、第1導電路41における電力を算出する。なお、電圧検出部32、電圧変換部21、及び後述する制御部10は、「電力検出部」の一例に相当し、蓄電部92と第2負荷82との間の経路(具体的には、第1導電路41)において第2負荷82側へ供給される電力を検出する構成となっている。
【0028】
電流検出部33は、第5導電路45に設けられている。電流検出部33は、第5導電路45に流れる電流を検出し、検出値として制御部10に入力する。
【0029】
制御部10は、放電回路20などを制御する制御回路である。制御部10は、バックアップ条件が成立した場合に放電回路20にバックアップ動作を行わせる。制御部10は、例えばマイクロコンピュータとして構成されており、CPU、ROM又はRAM等のメモリ、AD変換器等を有している。制御部10は、電源部91からの電力供給が途絶えた場合でも、蓄電部92からの電力によって動作することが可能となるように電力供給を受け得る。制御部10は、外部ECU100から、第1負荷81及び第2負荷82に電力を供給するように指示する指示信号等を受け取る。
【0030】
次に、制御部10で実行される、第2負荷82に対するバックアップ動作の禁止制御について説明する。なお、制御部10は、例えばイグニッションスイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられると、外部ECU100からの指示信号を受け、第1負荷81及び第2負荷82に電力を供給する制御を行う。すなわち、制御部10は、スイッチ22,23,46をオフ状態からオン状態に切り替えるとともに、電圧変換部21に対して第2導電路42から第1導電路41に放電電流を流す放電動作を行なわせる。制御部10は、電圧検出部31からの入力信号に基づいて、電源部91からの電力供給が失陥状態であるか否かを継続的に監視している。すなわち、制御部10は、第3導電路43に印加される電圧(電源部91の高電位側の端子の電圧)が基準電圧値を下回るか否かを判定している。制御部10は、バックアップ条件が成立した場合に、
図2で示す制御を開始する。バックアップ条件は、電源部91からの電力供給が失陥状態となることであり、第3導電路43に印加される電圧が基準電圧値を下回ることである。
【0031】
制御部10は、ステップS11で、バックアップ動作を開始する制御(放電回路40にバックアップ動作を行なわせる制御)を行う。すなわち、制御部10は、スイッチ46をオン状態からオフ状態に切り替え、電圧変換部21に対して第1導電路41から第2導電路42に放電電流を流す放電動作を行なわせる。これにより、蓄電部92から第1負荷81および第2負荷82に対して電力が供給される。
【0032】
続いて、制御部10は、ステップS12で、第1導電路41の電力が閾値電力(例えば100W)未満であるか否か判断する。閾値電力は、例えば、蓄電部92から第1負荷81に供給されることで第1負荷81が動作可能となる電力よりも所定値(例えば5W)だけ大きい閾値として設定される。制御部10は、電圧検出部32によって検出された蓄電部92の出力電圧と、電圧変換部21の電流検出回路によって検出された第1導電路41を流れる電流と、に基づいて第1導電路41の電力を算出する。制御部10は、ステップS12で、第1導電路41の電力が閾値電力未満でないと判断する場合、Noに進み、後述するステップS13を行う。例えば、
図3に示す、車載用電源制御装置で検出される各検出値の時間変化を示すタイミングチャートにおいて、時間T1,T2,T3では、第1導電路41の電力が閾値電力以上である(閾値電力未満でない)ため、ステップS12でNoに進む。
【0033】
一方で、制御部10は、ステップS12で第1導電路41の電力が閾値電力未満であると判断する場合、Yesに進み、ステップS15を行う。例えば、
図4に示す、
図3とは異なる各検出値の時間変化を示すタイミングチャートにおける時間T4では、第1導電路41の電力が閾値電力未満であるため、ステップS12でYesに進む。制御部10は、ステップS15で、第2負荷82へのバックアップ動作(電力供給)を禁止する。すなわち、制御部10は、スイッチ23をオン状態からオフ状態に切り替える。これにより、制御装置3は、第1負荷81を動作させるために供給可能な電力を蓄電部92に確保することができる。制御部10は、第2負荷82へのバックアップ動作を禁止した後、バックアップ動作が終了するまで(外部ECU100から停止指示を取得するまで)、第2負荷82へのバックアップ動作の禁止状態を維持する。バックアップ動作の禁止状態とは、制御部10によって行われる予め定められた制御に基づいて生じる状態である。バックアップ動作の禁止状態は、禁止終了条件が成立した場合(バックアップ動作が終了した場合や、イグニッションがオフ状態になった場合等)に、制御部10からの指令に基づいて終了する。制御部10は、ステップS15の処理の後、
図2の制御を終了する。
【0034】
制御部10は、ステップS13で、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧(例えば、10V)未満であるか否か判断する。閾値電圧は、例えば、その閾値電圧より所定の値だけ小さい電圧が蓄電部92から出力可能となることで、第1負荷81が動作可能となる閾値として設定されている。制御部10は、ステップS13で、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧以上であると判断する場合には、Noに進み、再びステップS12の処理を行う。例えば、
図3に示すタイミングチャートにおいて、時間T1では、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧以上であるため、ステップS13でNoに進む。制御部10は、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧以上であると判断する場合には、蓄電部92に第1負荷81に動作させるための電力を供給する能力があるとして、バックアップ動作を継続させる。一方で、制御部10は、ステップS13で、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧未満であると判断する場合には、Yesに進み、ステップS14の処理を行う。例えば、
図3に示すタイミングチャートにおいて、時間T2,T3では、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧未満であるため、ステップS13でYesに進む。
【0035】
制御部10は、ステップS14で、第2導電路42を流れる電流が閾値電流(例えば、5A)未満であるか否か判断する。閾値電流は、例えば、第2負荷82に電流が供給可能な状態(スイッチ23がオン状態)において、第2負荷82が動作していないときに、電流検出部33で検出される電流の大きさとして設定される。制御部10は、ステップS14で、第2導電路42を流れる電流が閾値電流未満でないと判断する場合、Noに進み、再びステップS12の処理を行う。第2導電路42を流れる電流が閾値電流未満でないと判断する場合、ステップS13で検出された蓄電部92の電力供給能力の精度が低いと推定できる。そのため、制御部10は、蓄電部92に第1負荷81に動作させるための電力を供給する能力があるとして、バックアップ動作を継続させる。
【0036】
一方で、制御部10は、ステップS14で、第2導電路42を流れる電流が閾値電流未満であると判断する場合、Yesに進み、ステップS15の処理を行う。例えば、
図3に示すタイミングチャートにおいて、時間T3では、第2導電路42を流れる電流が閾値電流未満であるため、Yesに進む。第2導電路42を流れる電流が閾値電流未満の場合、第2負荷82への電力供給が停止状態又は所定の低下状態となっていることが推定される。停止状態とは、外部ECU100等による制御によって第2負荷82が動作しておらず、第2負荷82に電力が供給されない状態である。具体的には、停止状態は、第2負荷82に供給される電流(電流検出部33で検出される電流)が0となる状態である。所定の低下状態とは、第2負荷82への電力供給が比較的低い状態である。例えば、所定の低下状態とは、第2負荷82に供給される電流(電流検出部33で検出される電流)が0より大きく閾値電流未満となる状態である。所定の低下状態は、第2負荷82に暗電流が流れる場合や、第2負荷82が低消費電力で動作するとき等に生じる。
図3の時間T3では、第2導電路42を流れる電流が0より大きく閾値電流未満であるため、第2負荷82への電力供給が所定の低下状態となっている。
【0037】
制御部10は、ステップS15で、第2負荷82へのバックアップ動作(電力供給)を禁止し、
図2の制御を終了する。例えば、制御部10は、バックアップ動作が終了するまで(外部ECU100から停止指示を取得するまで)、第2負荷82へのバックアップ動作の禁止状態を維持する。第2導電路42を流れる電流が閾値電流未満の場合、ステップS13で検出された蓄電部92の電力供給能力の精度が高いと推定できる。そのため、制御部10は、蓄電部92に第1負荷81に動作させるための電力を供給する能力がないとして、バックアップ動作を禁止する。このように、制御部10は、バックアップ動作の開始後において、第2負荷82に供給される電流が閾値電流より小さくなった場合において、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧より小さくなった場合に、第2負荷82へのバックアップ動作を禁止する。
【0038】
図5は、従来の車載用電源制御装置で検出される各検出値の時間変化を示すタイミングチャートである。従来の車載用電源制御装置では、第2負荷82の動作の有無に関わらず、蓄電部の出力電圧が閾値電力未満であるか否か判断する構成であった。そのため、
図5における実線の波形の時間T5では、第2負荷82が動作しているにもかかわらず、蓄電部の出力電圧が閾値電力未満であるため、第2負荷82へのバックアップ動作を禁止している。これにより、破線で示す波形のように蓄電部92に第2負荷82を動作させるための電力の供給能力が十分にあるにもかかわらず、第2負荷82を動作させることができなくなる。一方で、本開示の制御装置3では、
図5における破線の波形の時間T6で、第2負荷82が動作していない状態において蓄電部92の出力電圧が閾値電力未満であるため、第2負荷82へのバックアップ動作を禁止している。これにより、制御部10は、第2負荷82を動作させることが可能な期間を従来の構成よりも長くすることができ、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぐことができる。
【0039】
本開示の制御装置3は、例えば以下のような効果を奏する。
(1)制御装置3は、第2負荷82の動作による影響を受けない状態又は影響が小さい状態で取得された蓄電部92の出力電圧を閾値電圧と比較することで、蓄電部92の電力の供給能力をより正確に把握することができる。すなわち、制御装置3は、第2負荷82の動作によって蓄電部92の内部抵抗で生じる電圧降下の影響を受けない状態で、蓄電部92の電力の供給能力を正確に把握することができる。制御部10は、蓄電部92の電力の供給能力が確実に低下している場合には、バックアップ動作を禁止し、それ以上の低下を抑え、第1負荷81に供給可能な能力を残しておくことができる。一方、制御部10は、一時的な電圧低下があっても第2負荷82の停止状態のときに下がっていなければ、禁止しないようにすることができる。これにより、制御部10は、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぐことができる。
【0040】
(2)蓄電部92と第2負荷82との間の経路(第1導電路41)において第2負荷82側へ供給される電力を検出する電力検出部を備えている。制御部10は、バックアップ動作の開始後において、電力検出部によって検出される電力が閾値電力より小さくなった場合に第2負荷82へのバックアップ動作を禁止する。
このようにすれば、制御部10は、電力検出部によって検出される電力を閾値電力と比較することで、蓄電部92によって第2負荷82側へ供給可能な電力を把握することができる。これにより、制御部10は、第2負荷82への電力供給が停止状態又は所定の低下状態とならずに蓄電部92の出力電圧を把握できない場合であっても、蓄電部92から第2負荷82側への電力の供給能力の低下状態を検出することができる。そして、制御部10は、蓄電部92の電力の供給能力が確実に低下している場合には、バックアップ動作を禁止し、それ以上の低下を抑え、第1負荷81に供給可能な能力を残しておくことができる。一方、制御部10は、蓄電部92の電力の供給能力が確保されている場合には、バックアップ動作を禁止しないようにすることで、バックアップ動作の過剰な禁止を防ぐことができる。
【0041】
(3)第2負荷82に流れる電流を検出する電流検出部33を備えている。制御部10は、電流検出部33によって検出される電流が閾値電流より小さくなった場合において、蓄電部92の出力電圧が閾値電圧より小さくなった場合に第2負荷82へのバックアップ動作を禁止する。
このようにすれば、制御部10は、第2負荷82に流れる電流が閾値電流より小さくなった場合、第2負荷82の停止状態又は所定の低下状態であることが推測できる。そのため、制御部10は、電流検出部33によって検出される電流が閾値電流より小さくなった場合に蓄電部92の出力電圧を閾値電圧と比較する。そして、制御部10は、第2負荷82の動作による影響を受けない状態又は影響が小さい状態で蓄電部92の電力の供給能力をより正確に把握することができる。
【0042】
(4)制御部10は、バックアップ動作の開始後において、第2負荷82へのバックアップ動作を禁止した後、バックアップ動作が終了するまで禁止状態を維持する。
このようにすれば、制御部10は、第2負荷82へのバックアップ動作を禁止することで、それ以降の第2負荷82への電力供給を行う必要がなくなる。そのため、制御部10は、第2負荷82へのバックアップ動作の禁止後の電力供給を行わない代わりに、第2負荷82へのバックアップ動作の禁止前における電力の供給能力を上げることができる。
【0043】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。例えば、以下の実施形態を採用することができる。
【0044】
上述した実施例では、制御部10は、ステップS12で、電圧検出部32によって検出された電圧と、電圧変換部21の電流検出回路によって検出された電流とに基づいて、第1導電路41における電力を算出する構成であった。しかしながら、制御部10は、第1導電路41以外の導電路の電力を検出する構成であってもよい。例えば、電圧変換部21が、第2導電路42において第2負荷82側へ流れる電流を検出する第2電流検出回路と、第2導電路42に印加される電圧を検出する第2電圧検出回路と、を備えていてもよい。そして、制御部10は、第2電圧検出回路によって検出された電圧と、第2電流検出回路によって検出された電流とに基づいて、第2導電路42における電力を算出する構成であってもよい。
【0045】
上述した実施例では、制御部10は、
図2のステップS15で、バックアップ動作が終了するまで(外部ECU100から停止指示を取得するまで)、第2負荷82へのバックアップ動作の禁止状態を維持していた。しかしながら、制御部10は、その他のタイミングまで第2負荷82へのバックアップ動作の禁止状態を維持する構成であってもよい。例えば、制御部10は、第1負荷81が動作を完了するまで禁止状態を維持する構成であってもよい。
【0046】
上述した実施例では、蓄電部92に電気二重層キャパシタ(EDLC)を用いているが、この構成に限定されず、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素充電池などの他の蓄電手段を用いてもよい。また、蓄電部92を構成する蓄電手段の数は1つに限定されず、複数の蓄電手段によって構成されていてもよい。
【0047】
上述した実施例では、車両用電源システム1は、第1負荷81及び第2負荷82を備えていたが、その他の負荷を備えていてもよい。
【0048】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1…車両用電源システム
2…車両用電源装置
3…車両用電源制御装置
10…制御部
20…放電回路
21…電圧変換部
22,23,46…スイッチ
31…電圧検出部
32…電圧検出部
33…電流検出部
40…放電回路
41…第1導電路
42…第2導電路
43…第3導電路
44…第4導電路
45…第5導電路
46…スイッチ
81…第1負荷
82…第2負荷
91…電源部
92…蓄電部
100…外部ECU
Sy…車両システム