(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池
(51)【国際特許分類】
B32B 5/32 20060101AFI20230301BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230301BHJP
H01M 50/409 20210101ALI20230301BHJP
【FI】
B32B5/32
B32B27/30 D
B32B27/30 A
H01M50/409
(21)【出願番号】P 2019565033
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045403
(87)【国際公開番号】W WO2020105672
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2018218807
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019066407
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019157556
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 信康
(72)【発明者】
【氏名】加門 慶一
(72)【発明者】
【氏名】佃 明光
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094252(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/094250(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/198534(WO,A1)
【文献】特開2016-225297(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133074(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/058119(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/037552(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/069410(WO,A1)
【文献】特開2007-123254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01M 2/14-2/18
50/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムであって、前記多孔質基材が熱可塑性樹脂からなり、前記粒子A
が単量体単位群aから選ばれる少なくとも一つの単量体単位と単量体単位群bから選ばれる少なくとも一つの単量体単位との共重合体を含む粒子であり、前記単量体単位群aがフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位からなり、前記単量体単位群bがアクリル酸エステル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位からなり、前記粒子Aに含まれる単量体単位群aから選ばれる単量体単位の含有率が25質量%以上80質量%以下であり、かつ前記粒子Bが無機粒子である多孔性フィルム。
【請求項2】
前記多孔質層に含まれる粒子Bの含有率が、多孔質層の全構成成分を100質量%としたとき、70質量%以上95質量%以下である、請求項1に記載の多孔性フィルム。
【請求項3】
前記粒子Aが有機樹脂粒子である、請求項1または2に記載の多孔性フィルム。
【請求項4】
前記フッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位を構成するフッ素含有(メタ)アクリレート単量体に含有されるフッ素原子数が3以上13以下である、請求項1から3のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項5】
ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの少なくとも1種から構成された溶媒に25℃24時間浸漬した後の透気度が浸漬前の透気度の1.0倍以上3.0倍以下である、請求項1から4のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項6】
前記粒子Aが架橋剤を1質量%以上10質量%以下含有する、請求項1から5のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項7】
前記多孔質層の膜厚が1.0μmより大きく8.0μm以下である、請求項1から6のいずれかに記載の多孔性フィルム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータ。
【請求項9】
請求項8に記載の二次電池用セパレータを用いてなる二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔性フィルム、二次電池用セパレータおよび二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池のような二次電池は、スマートフォン、タブレット、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯ゲーム機などのポータブルデジタル機器、電動工具、電動バイク、電動アシスト補助自転車などのポータブル機器、および電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車などの自動車用途など、幅広く使用されている。
【0003】
リチウムイオン電池は、一般的に、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成を有している。
【0004】
二次電池用セパレータとしては、ポリオレフィン系多孔質基材が用いられている。二次電池用セパレータに求められる特性としては、多孔構造中に電解液を含み、イオン移動を可能にする特性と、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造が閉鎖され、イオン移動を停止させることで、放電を停止させるシャットダウン特性が挙げられる。
【0005】
また、二次電池の高容量化、高出力化に伴い、二次電池用セパレータには高い安全性が求められており、高温時に二次電池用セパレータが熱収縮することで発生する正極と負極の接触による短絡を防ぐための、熱寸法安定性が求められてきている。
【0006】
さらに、二次電池の製造工程において、正極、セパレータ、負極を積層した積層体を運搬する際に、積層体構造を維持するため、または、捲回した正極、セパレータ、負極の積層体を円筒型、角型などの缶に挿入する場合、積層体を熱プレスしてから挿入するが、その際に形が崩れないようにするため、もしくは、積層体を熱プレスすることで、より多くの積層体を缶の中に入れ、エネルギー密度を高くするため、さらにはラミネート型において、外装材に挿入した後に形状が変形しないようにするために、電解液を含浸する前のセパレータと電極との接着性が求められている。
【0007】
また一方では、リチウムイオン電池には、高出力化、長寿命化といった優れた電池特性も求められており、高出力特性を低下させることなく、良好な電池特性の持続性を発現することが求められている。
さらには、上記特性を満たした二次電池用セパレータを低コストで提供することが求められている。
【0008】
これらの要求に対して、特許文献1では、耐熱層上に形成された接着層を積層することで電極との接着性と耐ブロッキング性との両立を図っている。また、特許文献2では、粒子状重合体の粒子径と無機粒子の粒子径が特定の関係を満たすことで電極との接着性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】日本国特許第6191597号公報
【文献】国際公開第2018/034094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のとおり、二次電池の製造工程における熱プレス工程によって電極とセパレータの接着性が求められる。また優れた電池特性も求められており、熱寸法安定性、接着性、並びに高出力特性および電池特性の長寿命化の両立を低コストで達成することが必要である。
【0011】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する多孔性フィルムを低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者らは、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する低コスト多孔性フィルムを提供するために、鋭意検討を重ねた。その結果、特許文献1および2に記載の耐ブロッキング性試験では試験条件が不十分であり、適切な試験条件の元では特許文献1に記載の技術では耐ブロッキング性が不十分であることがわかり、耐ブロッキング性を向上させると電極との接着性が不十分となることを見出した。また、熱プレスを行うことで接着層が膨潤し、電極活物質やセパレータの空隙を埋めることで空隙率が低下し、イオン輸送率が下がるために電池特性も低下してしまうことを見出した。さらには、特許文献1は、耐熱層上に接着剤層を塗工するため高コストな二次電池用セパレータであることから、特許文献1および2に記載の技術では、熱寸法安定性、接着性、および電池特性の両立を低コストで達成することが困難である。
【0013】
上記課題を解決するため本発明の多孔性フィルムは次の構成を有する。
(1)多孔質基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムであって、前記多孔質基材が熱可塑性樹脂からなり、前記粒子Aが単量体単位群aから選ばれる少なくとも一つの単量体単位と単量体単位群bから選ばれる少なくとも一つの単量体単位との共重合体を含む粒子であり、前記単量体単位群aがフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位からなり、前記単量体単位群bがアクリル酸エステル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位からなり、前記粒子Aに含まれる単量体単位群aから選ばれる単量体単位の含有率が25質量%以上80質量%以下であり、かつ前記粒子Bが無機粒子である多孔性フィルム。
(2)前記多孔質層に含まれる粒子Bの含有率が、多孔質層の全構成成分を100質量%としたとき、70質量%以上95質量%以下である、(1)に記載の多孔性フィルム。
(3)前記粒子Aが有機樹脂粒子である、(1)または(2)に記載の多孔性フィルム。
(4)前記フッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位を構成するフッ素含有(メタ)アクリレート単量体に含有されるフッ素原子数が3以上13以下である、(1)から(3)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(5)ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの少なくとも1種から構成された溶媒に25℃24時間浸漬した後の透気度が浸漬前の透気度の1.0倍以上3.0倍以下である、(1)から(4)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(6)前記粒子Aが架橋剤を1質量%以上10質量%以下含有する、(1)から(5)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(7)前記多孔質層の膜厚が1.0μmより大きく8.0μm以下である、(1)から(6)のいずれかに記載の多孔性フィルム。
(8)(1)から(7)のいずれかに記載の多孔性フィルムを用いてなる二次電池用セパレータ。
(9)(8)に記載の二次電池用セパレータを用いてなる二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、多孔質基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムであって、粒子Aがフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位およびケイ素含有単量体単位からなる単量体単位群aから選ばれる少なくとも1つを有する重合体を含む粒子であり、かつ粒子Bが無機粒子である多孔性フィルムを用いることで、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する二次電池を低コストで提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の多孔性フィルムは、多孔質基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムであって、粒子Aがフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位およびケイ素含有単量体単位からなる単量体単位群aから選ばれる少なくとも1つを有する重合体を含む粒子であり、かつ粒子Bが無機粒子である。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0016】
[多孔質層]
(粒子A)
本発明における多孔質層は粒子Aを含有する。粒子Aは、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位およびケイ素含有単量体単位からなる単量体単位群aから選ばれる少なくとも1つを有する重合体を含む粒子である。単量体単位群aから選ばれる単量体単位を少なくとも1つ含有することで、粒子Aの表面自由エネルギーを低下させることができ、粒子Aと粒子Bを混合した塗工液を多孔質基材に塗工した際に、粒子Aを表面側に偏在することができ、多孔質層の電極との接着性を向上することができる。本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
フッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位は、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を重合して得られる繰り返し単位である。
【0017】
フッ素含有(メタ)アクリレート単量体としては、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、1,2,2,2-テトラフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。フッ素含有(メタ)アクリレート単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ケイ素含有単量体単位は、ケイ素含有単量体を重合して得られる繰り返し単位である。
ケイ素含有単量体としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、(クロロメチル)(メチル)ジメトキシシラン、(クロロメチル)(メチル)ジエトキシシラン、ジメトキシジメチルフェニルシランなどのジアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシランなどが挙げられる。
【0019】
単量体単位群aの中でも、より粒子Aの表面自由エネルギーを下げることができるフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位を用いることが好ましい。また、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位を構成するフッ素含有(メタ)アクリレート単量体のフッ素原子数は、3以上13以下が好ましい。より好ましくは3以上11以下、さらに好ましくは3以上9以下である。上記範囲にすることで、粒子Aの低表面自由エネルギー化と塗工性を両立することができる。フッ素原子数が3以上の場合は粒子Aの表面自由エネルギーの低下が十分となり、電極との接着性が十分となる。また、フッ素原子数が13以下の場合、多孔質基材への塗工性が担保され、生産性が向上する。
【0020】
なお、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体のフッ素原子数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解し、粒子Bと分離する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(1H-NMR、19F-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法(EDX)、および元素分析法などにより、フッ素含有(メタ)アクリレート単量体を示すシグナル強度から算出することができる。
【0021】
粒子Aは、単位単量体群bから選ばれる単量体単位をコアとして、その周辺に単量体単位群aから選ばれる単量体単位をシェルとして形成させたコアシェル型にすることができる。本明細書におけるコアシェル型とは、コア部をシェル部が全面被覆しているものに加え、コア部を部分的に被覆し、コア部とシェル部が共存しているものも含む。また単量体単位群aから選ばれる単量体単位と共重合可能な単量体単位群bから選ばれる単量体単位を含む共重合体にすることができる。共重合体にすることで、粒子Aの表面自由エネルギーとガラス転移温度を所定の条件に調整することができる。単量体単位群bとしては、不飽和カルボン酸単量体単位、アクリル酸エステル単量体単位、メタクリル酸エステル単量体単位、スチレン系単量体単位、オレフィン系単量体単位、ジエン系単量体単位、アミド系単量体単位などが挙げられる。これら単量体単位を構成する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、5-ヒドロキシペンチルアクリレート、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート、7-ヒドロキシヘプチシルアクリレート、8-ヒドロキシオクチルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、t-ブチルシクロヘキシルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、5-ヒドロキシペンチルメタクリレート、6-ヒドロキシヘキシルメタクリレート、7-ヒドロキシヘプチシルメタクリレート、8-ヒドロキシオクチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。単量体単位群bの中でも、粒子Aの作製時における粒子融着性低減を目的として、単環基の環状炭化水素基を有する、アクリル酸エステル単量体単位およびメタクリル酸エステル単量体単位が特に好ましい。また、ガラス転移温度を所定の温度に調整する、または二次電池の非水電解液を構成する鎖状カーボネートに対する耐薬品性を高める目的として、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、t-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどのスチレン系単量体、エチレン、プロピレンなどのオレフィン系単量体、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系単量体、アクリルアミドなどのアミド系単量体なども挙げることができる。これらのうち、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0022】
粒子Aを形成する有機樹脂の重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法などのいずれの方法を用いてもよい。重合方法としては、例えばイオン重合、ラジカル重合、リビングラジカル重合などいずれの方法も用いてもよい。重合により水系溶媒に粒子Aが分散した水溶液が得られる。こうして得られた水溶液をそのまま用いてもよく、または水溶液から粒子Aを取り出して用いてもよい。
【0023】
重合する際には、乳化剤として、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。これらのうち、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0024】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等が好ましい。
【0025】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。一般的には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が使用される。
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルナトリウム塩、イミダゾリンスルホン酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0026】
また、乳化剤として、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルポリオキシエチレン、パーフルオロアルキルベタイン、パーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸アンモニウム等のフッ素系界面活性剤を使用することもできる。
【0027】
さらに、上記の単量体と共重合可能な、いわゆる反応性乳化剤、例えばスチレンスルホン酸ナトリウム塩、アリルアルキルスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル等を使用することができ、特に2-(1-アリル)-4-ノニルフェノキシポリエチレングリコール硫酸エステルアンモニウム塩と2-(1-アリル)-4-ノニルフェノキシポリエチレングリコールとの併用が好ましい。
【0028】
乳化剤の使用量は、単量体単位群aと単量体単位群bの合計量100質量%当たり、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下である。
【0029】
重合開始剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性重合開始剤、あるいはこれらの水溶性重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤を使用することができる。これらの中でも、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムが好ましい。還元剤としては、例えば、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸またはその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、グルコース等が挙げられる。これらの中でも、L-アスコルビン酸またはその塩が好ましい。
【0030】
重合開始剤の使用量は、単量体単位群aと単量体単位群bの合計量100質量%当たり、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0031】
粒子Aに含まれる単量体単位群aに属する単量体単位の含有率は、10質量%以上100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは15質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上70質量%以下、最も好ましくは25質量%以上60質量%以下である。上記範囲とすることで、十分な電極との接着性が得られる。
【0032】
なお、粒子Aに含まれる単量体単位群aに属する単量体単位の含有率は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分に有機樹脂成分を溶解する有機溶媒を添加して有機樹脂成分のみを溶解し、粒子Bと分離する。続いて、有機樹脂成分が溶解した溶液から有機溶媒を乾燥させ、有機樹脂成分のみを抽出する。得られた有機樹脂成分を用いて、核磁気共鳴法(1H-NMR、19F-NMR)、赤外吸収分光法(IR)、X線光電子分光法(XPS)、蛍光X線分析法(EDX)、および元素分析法などにより、単量体単位群aに属する単量体単位を示すシグナル強度から算出することができる。
【0033】
本明細書における粒子とは、粒子形状を有するものに加え、部分的に造膜し、周辺の粒子およびバインダーと融着しているものも含む。その形状は、特に制限されず、球状、多角形状、扁平状、繊維状等のいずれであってもよい。
【0034】
粒子Aの平均粒径は、0.01μm以上5μm以下が好ましく、より好ましくは0.05μm以上3μm以下、さらに好ましくは0.08μm以上1μm以下である。平均粒径が0.01μm以上とすることで、多孔質構造となり、電池特性が良好となる。また、5μm以下とすることで、多孔質層の膜厚が適切となり、電池特性の低下を抑制できる。
【0035】
粒子Aの平均粒径は以下の方法を用いて測定して得た。電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-3400N)を用いて、多孔質層の表面を倍率3万倍の画像と、無機粒子と有機樹脂粒子からなる多孔質層に置いて無機粒子のみが含有する元素のEDX画像を得た。その際の画像サイズは4.0μm×3.0μmである。なお、画素数は1,280画素×1,024画素であり、1画素の大きさは3.1nm×2.9nmであった。得られたEDX画像の中で無機粒子以外の粒子を粒子Aとした。次に得られた画像上で1つの粒子を完全に囲む面積が最も小さい正方形または長方形を描き、すなわち、正方形または長方形の4辺に粒子の端部が接している正方形または長方形を描き、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺の長さ(長軸径)として、画像上の全ての粒子Aについてそれぞれの粒径を測定し、その算術平均値を平均粒径とした。なお、撮影した画像中に50個の粒子が観察されなかった場合は、複数の画像を撮影し、その複数の画像に含まれる全ての粒子Aの合計が50個以上となるように粒子Aを測定し、その算術平均値を平均粒径とした。
【0036】
また、電極との接着性の観点より、粒子Aは無機成分を含まない有機樹脂粒子であることが好ましい。粒子Aを有機樹脂粒子とすることで、より強固な電極との接着性を付与することができる場合がある。
【0037】
また、粒子Aは、更に架橋剤を含有することができる。架橋剤を含有することにより、電解液への膨潤性を抑制した耐電解液性に優れた重合体粒子を得ることができる。架橋剤の含有量は、粒子A全体を100質量%とするとき、1質量%以上10質量%以下が好ましい。より好ましくは2質量%以上10質量%未満、さらに好ましくは3質量%以上9質量%以下、特に好ましくは5質量%以上8質量%以下である。
【0038】
架橋剤としては、重合した際に架橋構造を形成しうる架橋性単量体を用いることができる。架橋剤の例としては、1分子あたり2以上の反応性基を有する単量体を挙げることができる。より具体的には、架橋性単量体は熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり1つのオレフィン性二重結合を有する単官能性単量体、熱架橋性の架橋性基及び1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体が挙げられる。熱架橋性の架橋性基の例としては、エポキシ基、N-メチロールアミド基、オキセタニル基、オキサゾリン基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
熱架橋性の架橋性基としてエポキシ基と1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、o-アリルフェニルグリシジルエーテルなどの不飽和グリシジルエーテル;ブタジエンモノエポキシド、クロロプレンモノエポキシド、4,5-エポキシ-2-ペンテン、3,4-エポキシ-1-ビニルシクロヘキセン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエンなどのジエンまたはポリエンのモノエポキシド;3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-9-デセンなどのアルケニルエポキシド;並びにグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル-4-ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、グリシジル-4-メチル-3-ペンテノエート、3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4-メチル-3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステルなどの不飽和カルボン酸のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0040】
熱架橋性の架橋性基としてN-メチロールアミド基と1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基を有する(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
【0041】
熱架橋性の架橋性基としてオキセタニル基と1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-2-トリフロロメチルオキセタン、3-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-2-フェニルオキセタン、2-((メタ)アクリロイルオキシメチル)オキセタン、及び2-((メタ)アクリロイルオキシメチル)-4-トリフロロメチルオキセタンが挙げられる。
【0042】
熱架橋性の架橋性基としてオキサゾリン基と1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する架橋性単量体の例としては、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-5-メチル-2-オキサゾリン、及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンが挙げられる。
【0043】
1分子あたり2つ以上のオレフィン性二重結合を有する多官能性単量体の例としては、アリル(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン-トリ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアリルエーテル、ポリグリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ヒドロキノンジアリルエーテル、テトラアリルオキシエタン、トリメチロールプロパン-ジアリルエーテル、前記以外の多官能性アルコールのアリルまたはビニルエーテル、トリアリルアミン、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートが挙げられる。
架橋剤としては、特に、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びウレタンアクリレートを好ましく用いることができる。
【0044】
粒子Aのガラス転移温度は、10℃以上100℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以上90℃以下、さらに好ましくは30℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が10℃以上とすることで、電解液への膨潤性を抑制し電池特性が良好となる。また100℃以下とすることで、電極との接着性が良好となる。ガラス転移温度を適切な範囲にするために、単量体単位群bから単量体単位を適宜選択することができる。ここでガラス転移温度とは、例えば「JIS K7121:2012 プラスチックの転移温度測定方法」の規定に準じた示差走査熱量測定(DSC)において、初めに昇温、冷却した後の2回目の昇温時の低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線のこう配が最大になるような点で引いた接線との交点をガラス転移温度とする。
【0045】
(粒子B)
本発明の多孔質層は粒子Bを含有する。粒子Bは無機粒子であり、多孔質層が無機粒子を含むことで熱寸法安定性および異物による短絡の抑制を付与することができる。
【0046】
具体的に無機粒子としては、酸化アルミニウム、ベーマイト、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化マグネシウムなどの無機酸化物粒子、窒化アルミニウム、窒化硅素などの無機窒化物粒子、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウムなどの難溶性のイオン結晶粒子などが挙げられる。粒子Bの中でも高強度化に効果のある酸化アルミニウム、また粒子Aと粒子Bの分散工程の部品摩耗低減に効果のあるベーマイト、硫酸バリウムが特に好ましい。さらにこれらの粒子を1種類で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
用いる無機粒子の平均粒径は、0.05μm以上5.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.10μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは0.20μm以上1.0μm以下である。0.05μm以上とすることで、透気度増加を抑制できるため、電池特性が良好となる。また、空孔径が小さくなることから電解液の含浸性が低下し生産性に影響を与える場合がある。5.0μm以下とすることで、十分な熱寸法安定性が得られるだけでなく、多孔質層の膜厚が適切となり、電池特性の低下を抑制できる。
【0048】
なお粒子Bの平均粒径は以下の方法を用いて測定して得た。電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-3400N)を用いて、多孔質層の表面を倍率3万倍の画像と、無機粒子と有機樹脂粒子からなる多孔質層に置いて粒子B(無機粒子)のみが含有する元素のEDX画像を得た。その際の画像サイズは4.0μm×3.0μmである。なお、画素数は1,280画素×1,024画素であり、1画素の大きさは3.1nm×2.9nmであった。次に得られたEDX画像から識別される粒子B(無機粒子)の1つの粒子を完全に囲む面積が最も小さい正方形または長方形を描き、すなわち、正方形または長方形の4辺に粒子の端部が接している正方形または長方形を描き、正方形の場合は1辺の長さ、長方形の場合は長辺の長さ(長軸径)として、画像上の全ての粒子Bについてそれぞれの粒径を測定し、その算術平均値を平均粒径とした。なお、撮影した画像中に50個の粒子が観察されなかった場合は、複数の画像を撮影し、その複数の画像に含まれる全ての粒子Bの合計が50個以上となるように粒子Bを測定し、その算術平均値を平均粒径とした。
【0049】
用いる粒子の形状としては、球状、板状、針状、棒状、楕円状などが挙げられ、いずれの形状であってもよい。その中でも、表面修飾性、分散性、塗工性の観点から球状であることが好ましい。
【0050】
(バインダー)
本発明の多孔質層は多孔質層を構成する粒子Aおよび粒子Bを互いに密着させるため、およびこれら粒子を多孔質基材に密着させるために、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、電池の使用範囲で電気化学的に安定である樹脂が好ましい。また、バインダーは有機溶媒に可溶なバインダー、水溶性バインダー、エマルジョンバインダーなどが挙げられ、単体でも、組み合わせて使用してもよい。
【0051】
有機溶媒に可溶なバインダーおよび水溶性バインダーを用いる場合、バインダー自体の好ましい粘度は、濃度が15質量%の際に、10000mPa・s以下であることが好ましい。より好ましくは8000mPa・s以下であり、さらに好ましくは5000mPa・s以下である。濃度が15質量%で粘度を10000mPa・s以下とすることで、塗剤の粘度上昇を抑制でき、粒子Aが表面へ偏在することで、電極との接着性が向上する。
【0052】
また、エマルジョンバインダーを用いる場合、分散剤は水や有機溶媒として、エタノールなどのアルコール系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒などが挙げられるが、水分散系が取り扱い、他の成分との混合性の点から好ましい。エマルジョンバインダーの粒径は、30~1000nm、好ましくは50~500nm、より好ましくは70~400nm、さらに好ましくは100~300nmである。エマルジョンバインダーの粒径を30nm以上とすることで透気度の上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。また、1000nm以下とすることで、多孔質層と多孔質基材との十分な密着性が得られる。
【0053】
バインダーに用いられる樹脂は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ウレタンなどの樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種または必要に応じ2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
バインダーの添加量は粒子Aと粒子Bの合計量に対して、0.5~10質量%、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~5質量%である。バインダーの添加量を0.5質量%以上とすることで、多孔質層と多孔質基材との十分な密着性が得られる。また、10質量%以下とすることで、透気度上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。
【0055】
(多孔質層の形成)
本発明の多孔性フィルムは、多孔質基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムであって、粒子Aがフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位およびケイ素含有単量体単位からなる単量体単位群a少なくとも1つを有する重合体を含む粒子であり、かつ粒子Bが無機粒子である多孔性フィルムにすることで、優れた熱寸法安定性と電極との接着性を有し、かつ優れた電池特性を有する低コスト多孔性フィルムが得られるが、その多孔質層の形成方法について以下に説明する。
【0056】
多孔質層を構成する粒子Aおよび粒子Bは、所定の濃度に分散させることで水系分散塗工液に調整される。水系分散塗工液は、粒子Aおよび粒子Bを、溶媒に分散することで調製される。水系分散塗工液の溶媒としては、少なくとも水が用いられ、さらに、水以外の溶媒を加えてもよい。水以外の溶媒としては、粒子Aおよび粒子Bを溶解せず、固体状態のままで、分散し得る溶媒であれば特に限定されるものではない。例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤が挙げられる。環境への負荷の低さ、安全性及び経済的な観点からは、水、又は、水とアルコールとの混合液を用いることが好ましい。
【0057】
また、塗工液には、必要に応じて、バインダー、造膜助剤、分散剤、増粘剤、安定化剤、消泡剤、レベリング剤、電極接着補助剤等を添加してもよい。造膜助剤は、粒子Aの造膜性を調整し、多孔質基材との密着性を向上させるために添加され、具体的には、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ブチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート、テキサノールなどが挙げられる。これらの造膜助剤は、1種または必要に応じ2種以上を混合して用いてもよい。造膜助剤の添加量は、塗工液全量に対して0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上6質量%以下である。0.1質量以上とすることで、十分な造膜性を得ることができ、10質量%以下とすることで、塗工液を多孔質基材に塗工する際に、塗工液が多孔質基材へ含浸されることを防ぎ、生産性を向上させることができる。
【0058】
電極接着補助剤として、水分散体の有機粒子を添加してもよい。有機粒子を添加すると、粒子Aと相互作用し、一部が表面に偏在することで多孔質層と電極との接着性を向上する場合がある。電極接着補助剤に用いられる樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ウレタンなどが挙げられる。また、有機粒子の融点は、30℃以上150℃以下が好ましく、より好ましくは40℃以上100℃以下、さらに好ましくは50℃以上90℃以下である。融点を30℃以上とすることで、電解液への膨潤性が抑制でき、電池特性が良好となる。また150℃以下とすることで、十分な電極との接着性が得られる。
【0059】
有機粒子の粒径は、10~500nm、好ましくは20~400nm、より好ましくは30~300nm、さらに好ましくは50~250nmである。有機粒子の粒径を10nm以上とすることで、透気度上昇を抑制でき、電池特性が良好となる。また、500nm以下とすることで、表面に偏在し、十分な接着性が得られる。
【0060】
塗工液の分散方法としては、公知の手法を用いればよい。ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波装置、ペイントシェーカーなどが挙げられる。これら複数の混合分散機を組み合わせて段階的に分散を行ってもよい。
【0061】
次に、得られた塗工液を多孔質基材上に塗工し、乾燥を行い、多孔質層を積層する。塗工方法としては、公知の方法で塗工すればよい。例えば、ディップコーティング、グラビアコーティング、スリットダイコーティング、ナイフコーティング、コンマコーティング、キスコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、吹き付け塗装、浸漬コーティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、パット印刷、他の種類の印刷などが利用できる。これらに限定されることはなく、用いる粒子A、粒子B、バインダー、分散剤、レベリング剤、使用する溶媒、基材などの好ましい条件に合わせて塗工方法を選択すればよい。また、塗工性を向上させるために、例えば、多孔質基材にコロナ処理、プラズマ処理などの塗工面の表面処理を行ってもよい。多孔質層は多孔質基材の少なくとも片面に積層されればよいが、十分な電極との接着性を発現するには両面に積層することが好ましい。
【0062】
また、多孔質層は粒子Bを塗工して耐熱層を積層した後に粒子Aを塗工して接着層を積層することも可能であるが、多段階の塗工のため高コストとなり、また多孔質層の表面が全面粒子Aとなることで接着層同士によるブロッキングが発生する可能性もある。さらには、二次電池製造時の捲回後の芯からの抜き取り性も悪化する可能性もある。また、粒子Bを粒子B同士および多孔質基材と密着させるために多量のバインダーを添加する必要があり、電池特性が低下する可能性もあり、好ましくない。これに対し、粒子Aと粒子Bを事前に混合して一つの塗工液で多孔質層を積層することで、低コストとなり、また多孔質層の表面に粒子Aと粒子Bの両方を存在させることで、耐ブロッキング性と抜き取り性も向上することができる。また、粒子Aがバインダーの役割も担うことで、添加するバインダー量も抑制することができ、優れた電池特性を有することができる。これらのことから、多孔質層は粒子Aと粒子Bを事前に混合して一つの塗工液で積層することが好ましい。
【0063】
多孔質層における粒子Bの含有率は、多孔質層全体100質量%中、70質量%以上95質量%以下であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上93質量%以下である。さらに好ましくは、85質量%以上92質量%以下である。多孔質層における粒子Bの含有率が70質量%以上とすることで、十分な熱寸法安定性が得られる。また、多孔質層における粒子Bの含有率が95質量%以下とすることで、粒子Aの含有率が十分となり、電極との接着性が得られる。多孔質層における粒子Bの含有率の測定は公知の手法を用いればよいが、例えば、まず多孔質フィルム上から水およびアルコールなどの有機溶媒を用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得る。得られた構成成分全量の質量を測定した後、構成成分を有機樹脂成分が融解・分解する程度の高温で燃焼し、無機成分である粒子Bのみの質量を測定する。(粒子Bの質量/構成成分全量の質量)×100の式より多孔質層における粒子Bの含有率を算出することができる。
【0064】
多孔質層の膜厚は、1.0μm以上8.0μm以下であることが好ましい。より好ましくは、2.0μm以上6.0μm以下である。さらに好ましくは2.5μm以上5.0μm以下である。ここでいう多孔質層の膜厚とは、多孔質基材の片面に多孔質層を有する多孔性フィルムの場合は、当該多孔質層の膜厚をいい、多孔質基材の両面に多孔質層を有する多孔性フィルムの場合は、当該両方の多孔質層の膜厚の合計をいう。多孔質層の膜厚が1.0μm以上とすることで、十分な熱寸法安定性および電極との接着性が得られる。また、8.0μm以下とすることで、多孔質構造となり、電池特性が良好となる。また、コスト面でも有利となる場合がある。
【0065】
本発明の多孔性フィルムは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの少なくとも1種から構成された溶媒に25℃24時間浸漬した後の透気度が浸漬前の1.0倍以上3.0倍以下であることが好ましい。より好ましくは1.0倍以上2.5倍以下である。更に好ましくは1.0倍以上2.0倍以下である。1.0倍以上の場合、多孔性フィルムの多孔質層が前記溶媒に膨潤することを意味するため、電極との接着性が得られる。また、3.0倍以下とすることで、膨潤によりイオン透過性低下を抑制できる。浸漬する溶媒の種類は、二次電池の非水電解液を構成する鎖状カーボネートである、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートである。1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を用途に合わせて組み合わせてもよい。さらにプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネートと組み合わせてもよい。その場合、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの鎖状カーボネートの体積比率は、20%以上であることが好ましい。さらに好ましくは、35%以上、より好ましくは50%以上である。前記体積比率が20%以上であると、多孔質層の膨潤性と電池特性を両立させることができる。
【0066】
[多孔質基材]
本発明において多孔質基材とは、内部に空孔を有する基材をいう。また、本発明において、多孔質基材としては、例えば内部に空孔を有する多孔膜、不織布、または繊維状物からなる多孔膜シートなどが挙げられる。多孔質基材を構成する材料としては、電気絶縁性であり、電気的に安定で、電解液にも安定である樹脂から構成されていることが好ましい。また、シャットダウン機能を付与する観点から用いる樹脂は融点が200℃以下の熱可塑性樹脂が好ましい。ここでのシャットダウン機能とは、リチウムイオン電池が異常発熱した場合に、熱で溶融することで多孔構造を閉鎖し、イオン移動を停止させて、放電を停止させる機能のことである。
【0067】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂が挙げられ、前記多孔質基材はポリオレフィン系多孔質基材であることが好ましい。また、前記ポリオレフィン系多孔質基材は融点が200℃以下であるポリオレフィン系多孔質基材であることがより好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、およびこれらを組み合わせた混合物などが挙げられ、例えばポリエチレンを90質量%以上含有する単層の多孔質基材、ポリエチレンとポリプロピレンからなる多層の多孔質基材などが挙げられる。
【0068】
多孔質基材の製造方法としては、ポリオレフィン系樹脂をシートにした後に延伸することで多孔質化する方法やポリオレフィン系樹脂を流動パラフィンなどの溶剤に溶解させてシートにした後に溶剤を抽出することで多孔質化する方法が挙げられる。
【0069】
多孔質基材の厚みは、3μm以上50μm以下が好ましく、より好ましくは5μm以上、また30μm以下である。多孔質基材の厚みが50μm以下とすることで多孔質基材の内部抵抗の増加を抑制できる。また、多孔質基材の厚みが3μm以上とすることで、多孔質基材の製造が可能となり、また十分な力学特性を得られる。
【0070】
なお、多孔質基材の厚みは、断面を顕微鏡観察し、測定することができる。多孔質層が積層されている場合は、多孔質基材と多孔質層との界面間の垂直距離を多孔質基材の厚みとして測定する。100mm×100mmサイズに5枚切り出し、そのサンプルの中央部を5枚それぞれについて観察、測定し、その平均値を多孔質基材の厚みとした。
【0071】
多孔質基材の透気度は、50秒/100cc以上1,000秒/100cc以下であることが好ましい。より好ましくは50秒/100cc以上500秒/100cc以下である。透気度を50秒/100cc以上とすることで十分な力学特性を得ることができる。また、1,000秒/100cc以下とすることで、十分なイオン移動性が得られ、電池特性が良好となる。
【0072】
[二次電池]
本発明の多孔性フィルムは、リチウムイオン電池等の二次電池用セパレータに好適に用いることができる。リチウムイオン電池は、正極活物質を正極集電体に積層した正極と、負極活物質を負極集電体に積層した負極との間に、二次電池用セパレータと電解質が介在した構成となっている。
【0073】
正極は、活物質、バインダー樹脂、および導電助剤からなる正極材が集電体上に積層されたものであり、活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、Li(NiCoMn)O2、などの層状構造のリチウム含有遷移金属酸化物、LiMn2O4などのスピネル型マンガン酸化物、およびLiFePO4などの鉄系化合物などが挙げられる。バインダー樹脂としては、耐酸化性が高い樹脂を使用すればよい。具体的にはフッ素樹脂、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂などが挙げられる。導電助剤としては、カーボンブラック、黒鉛などの炭素材料が用いられている。集電体としては、金属箔が好適であり、特にアルミニウム箔が用いられることが多い。
【0074】
負極は、活物質およびバインダー樹脂からなる負極材が集電体上に積層されたものであり、活物質としては、人造黒鉛、天然黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなどの炭素材料、スズやシリコンなどのリチウム合金系材料、Liなどの金属材料、およびチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)などが挙げられる。バインダー樹脂としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂などが用いられる。集電体としては、金属箔が好適であり、特に銅箔が用いられることが多い。
【0075】
電解液は、二次電池の中で正極と負極との間でイオンを移動させる場となっており、電解質を有機溶媒にて溶解させた構成をしている。電解質としては、LiPF6、LiBF4、およびLiClO4などが挙げられるが、有機溶媒への溶解性、イオン電導度の観点からLiPF6が好適に用いられている。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられ、これらの有機溶媒を2種類以上混合して使用してもよい。
【0076】
二次電池の作製方法としては、まず活物質と導電助剤をバインダー樹脂の溶液中に分散して電極用塗布液を調製し、この塗布液を集電体上に塗工して、溶媒を乾燥させることで正極、負極がそれぞれ得られる。乾燥後の塗工膜の膜厚は50μm以上500μm以下とすることが好ましい。得られた正極と負極の間に二次電池用セパレータを、それぞれの電極の活物質層と接するように配置し、アルミラミネートフィルム等の外装材に封入し、電解液を注入後、負極リードや安全弁を設置し、外装材を封止する。このようにして得られた二次電池は、電極と二次電池用セパレータとの接着性が高く、かつ優れた電池特性を有し、また、低コストでの製造が可能となる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら制限されるものではない。本実施例で用いた測定法を以下に示す。
[測定方法]
(1)透気度
王研式透気度測定装置(旭精工(株)社製EG01-5-1MR)を用いて、100mm×100mmサイズの中央部をJIS P 8117(2009)に準拠して測定した。上記測定を試料3枚について実施し、計測された値を平均し、その平均値を透気度(秒/100cc)とした。
【0078】
(2)多孔質層の膜厚
ミクロトームにてサンプル断面を切り出し、その断面を電解放射型走査電子顕微鏡((株)日立製作所製S-800、加速電圧26kV)にて観察して、多孔質基材との界面から最も高いところを厚みとし、片面の場合は片面のみ、両面の場合は両面ともに計測し、その合計を多孔質層の膜厚とした。100mm×100mmサイズのサンプルの中央部を計測した。上記測定を試料5枚について実施し、計測された値を平均した。
【0079】
(3)多孔質層に含まれる粒子Bの含有率
10cm×10cmの多孔質フィルム上から水40gを用いて多孔質層を脱離させ、水およびアルコールなどの有機溶媒を十分に乾燥させて多孔質層に含まれる構成成分を得た。得られた構成成分全量の質量を測定した後、構成成分を有機樹脂成分が溶融・分解する程度の高温で燃焼し、無機粒子のみの質量を測定した。(無機粒子の質量/構成成分全量の質量)×100の式より多孔質層における無機粒子の含有率を質量%で算出した。
【0080】
(4)塗膜外観
100×200mmサイズの試料を黒色の画用紙上に載せ、塗膜外観を観察し、以下の指標に基づき、評価した。
・塗膜外観が優:塗工スジ、塗工ハジキなし
・塗膜外観が良:塗工スジ、塗工ハジキのいずれかが若干確認される
・塗膜外観が可:塗工スジ、塗工ハジキが若干確認される
・塗膜外観が悪:塗工スジ、塗工ハジキが確認され、評価が困難
【0081】
(5)熱収縮率(熱寸法安定性)
100mm×100mmサイズの試料3枚から、各試料の一辺の中点から対辺の中点の長さを測定し、150℃のオーブン中に無張力下で1時間熱処理を行った。熱処理後に試料を取り出し、熱処理前と同一箇所の中点間の長さを測定し、以下の式より熱収縮率を算出した。1枚の試料より同時に2ヶ所算出し、すべての数値の平均値を熱収縮率(熱寸法安定性)とし、10%未満を優、10%以上20%未満を良、20%以上40%未満を可、40%以上を悪とした。
熱収縮率(%)=[(熱処理前の中点間の長さ-熱処理後の中点間の長さ)/(熱処理前の中点間の長さ)]×100。
【0082】
(6)電極との接着性
活物質がLi(Ni5/10Mn2/10Co3/10)O2、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂、導電助剤がアセチレンブラックとグラファイトの正極15mm×100mmと多孔性フィルムを、活物質と多孔質層が接触するように設置し、熱ロールプレス機にて0.5MPa、100℃、0.2m/分で熱プレスを行い、ピンセットを用いて手動で剥離させ、接着強度を下記4段階にて評価を行った。同様に、活物質が黒鉛、バインダーがフッ化ビニリデン樹脂、導電助剤がカーボンブラックの負極と多孔性フィルムとの接着強度も測定し、正極および負極のそれぞれの評価結果を統合した平均接着強度を接着強度として判定した。
・接着強度が秀: より強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
・接着強度が優: 強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した
・接着強度が良: やや強い力で電極と多孔性フィルムが剥離した
・接着強度が可: 弱い力で電極と多孔性フィルムが剥離した
・接着強度が悪: 極弱い力で電極と多孔性フィルムが剥離した。
【0083】
(7)溶媒浸漬後の透気度変化率
100mm×100mmサイズの試料3枚を、それぞれジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネートの少なくとも1種から構成された溶媒2gに25℃24時間浸漬した。その後、試料を取り出し、乾燥させた後に、各サンプルの中央部分1箇所について、王研式透気度測定装置(旭精工(株)社製EG01-5-1MR)を用いて、JIS P 8117(2009)に準拠して測定し、その平均値を透気度(秒/100cm3)とした。上記(1)で得られた透気度と溶媒浸漬後の透気度を用いて、以下の式から溶媒浸漬後の透気度変化率を算出した。
溶媒浸漬後の透気度変化率=溶媒浸漬後の透気度/初期透気度
【0084】
(8)電池作製
正極シートは、正極活物質としてLi(Ni5/10Mn2/10Co3/10)O2を92質量部、正極導電助剤としてアセチレンブラックとグラファイトを2.5質量部ずつ、正極結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部を、プラネタリーミキサーを用いてN-メチル-2-ピロリドン中に分散させた正極スラリーを、アルミ箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した(塗布目付:9.5mg/cm2)。
この正極シートを40mm×40mmに切り出した。この時、活物質層の付いていない集電用のタブ接着部が、前記活物質面の外側に5mm×5mmの大きさになるように切り出した。幅5mm、厚み0.1mmのアルミ製のタブをタブ接着部に超音波溶接した。
【0085】
負極シートは、負極活物質として天然黒鉛98質量部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを1質量部、負極結着剤としてスチレン-ブタジエン共重合体1質量部を、プラネタリーミキサーを用いて水中に分散させた負極スラリーを、銅箔上に塗布、乾燥、圧延して作製した(塗布目付:5.5mg/cm2)。
この負極シートを45mm×45mmに切り出した。この時、活物質層の付いていない集電用のタブ接着部が、前記活物質面の外側に5mm×5mmの大きさになるように切り出した。正極タブと同サイズの銅製のタブをタブ接着部に超音波溶接した。
【0086】
次に、多孔性フィルムを55mm×55mmに切り出し、多孔性フィルムの両面に上記正極と負極を活物質層が多孔性フィルムを隔てるように重ね、正極塗布部が全て負極塗布部と対向するように配置して電極群を得た。1枚の90mm×200mmのアルミラミネートフィルムに上記正極・多孔性フィルム・負極を挟み込み、アルミラミネートフィルムの長辺を折り、アルミラミネートフィルムの長辺2辺を熱融着し、袋状とした。
【0087】
エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPF6を濃度1モル/リットルとなるように溶解させ、作製した電解液を用いた。袋状にしたアルミラミネートフィルムに電解液1.5gを注入し、減圧含浸させながらアルミラミネートフィルムの短辺部を熱融着させてラミネート型電池とした。
【0088】
(9)放電負荷特性
放電負荷特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率にて評価した。
上記ラミネート型電池を用いて、25℃下、0.5Cで放電したときの放電容量と、10Cで放電したときの放電容量とを測定し、(10Cでの放電容量)/(0.5Cでの放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。ここで、充電条件は0.5C、4.3Vの定電流充電とし、放電条件は2.7Vの定電流放電とした。上記ラミネート型電池を5個作製し、放電容量維持率が最大、最小となる結果を除去した3個の測定結果の平均を容量維持率とした。放電容量維持率が55%未満を悪、55%以上65%未満を良、65%以上の場合を優とした。
【0089】
(10)充放電サイクル特性
上記ラミネート型電池の充放電サイクル特性を下記手順にて試験を行い、放電容量維持率にて評価した。
〈1~300サイクル目〉
充電、放電を1サイクルとし、充電条件を2C、4.3Vの定電流充電、放電条件を2C、2.7Vの定電流放電とし、25℃下で充放電を300回繰り返し行った。
〈放電容量維持率の算出〉
(300サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)×100で放電容量維持率を算出した。上記ラミネート型電池を5個作製し、放電容量維持率が最大、最小となる結果を除去した3個の測定結果の平均を容量維持率とした。放電容量維持率が60%未満を充放電サイクル特性が悪、60%以上70%未満を充放電サイクル特性が良、70%以上の場合を充放電サイクル特性が優とした。
【0090】
(実施例1)
イオン交換水300部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で過硫酸アンモニウム0.5部を80℃で添加し、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート40部、シクロヘキシルメタクリレート29部、シクロヘキシルアクリレート29部、ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、イオン交換水50部からなる単量体混合物を4時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後3時間にわたり重合処理を行い、有機樹脂からなる粒子A(平均粒径150nm、ガラス転移温度65℃)を含む分散液Aを製造した。
【0091】
粒子Bとして平均粒径0.4μmのアルミナ粒子(酸化アルミニウムの粒子)を用い、溶媒として粒子Bと同量の水、バインダーとしてアクリル樹脂(水溶性)を粒子Bに対して3質量%、および分散剤としてカルボキシメチルセルロースを粒子Bに対して1質量%添加した上で、ビーズミルにて分散し、分散液Bを調製した。
分散液Aと分散液Bを多孔質層に含まれる粒子Bの含有率が90質量%となるように、水中に分散させて、攪拌機にて混合し、塗工液を調製した。
【0092】
得られた塗工液を、ワイヤーバーを用いてポリエチレン多孔質基材(厚み7μm、透気度110秒/100cc)上へ両面塗工し、熱風オーブン(乾燥設定温度50℃)内で、含有される溶媒が揮発するまで乾燥し、多孔質層を形成し、本発明の多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて、多孔質層の膜厚、透気度、塗膜外観、熱収縮率(熱寸法安定性)、電極との接着性、溶媒浸漬後の透気度変化率(溶媒:ジエチルカーボネート)、放電負荷特性および充放電サイクル特性の測定結果を表1に示す。溶媒浸漬後の透気度変化率について、溶媒としてジメチルカーボネートを用いて浸漬した場合の透気度変化率は2.0倍であり、溶媒としてメチルエチルカーボネートを用いて浸漬した場合の透気度変化率は2.0倍であった。また、溶媒として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの体積比1:1の混合溶媒1kgに、1.0molのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解した混合液を用いて浸漬した場合の透気度変化率は2.1倍であった。
【0093】
(実施例2)
多孔質層に含まれる粒子Bの含有率を94質量%にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0094】
(実施例3)
多孔質層に含まれる粒子Bの含有率を78質量%にした以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0095】
(実施例4)
粒子Aに含まれるフッ素含有アクリレート単量体単位の含有率を30質量%(2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート30部、シクロヘキシルメタクリレート34部、シクロヘキシルアクリレート34部、ヒドロキシエチルメタクリレート2部)にした以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径160nm、ガラス転移温度70℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0096】
(参考例5)
粒子Aに含まれるフッ素含有アクリレート単量体単位の含有率を85質量%(2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート85部、シクロヘキシルメタクリレート6.5部、シクロヘキシルアクリレート6.5部、ヒドロキシエチルメタクリレート2部)にした以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径140nm、ガラス転移温度55℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0097】
(実施例6)
フッ素含有アクリレート単量体単位を構成する単量体として1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径160nm、ガラス転移温度60℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0098】
(実施例7)
フッ素含有アクリレート単量体単位を構成する単量体として2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径150nm、ガラス転移温度55℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0099】
(実施例8)
フッ素含有アクリレート単量体単位を構成する単量体として2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径160nm、ガラス転移温度50℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0100】
(実施例9)
フッ素含有アクリレート単量体単位を構成する単量体として2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径160nm、ガラス転移温度70℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0101】
(実施例10)
粒子Aの重合体を構成する単量体として、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート40部、シクロヘキシルメタクリレート20部、シクロヘキシルアクリレート20部、スチレン18部、ヒドロキシエチルメタクリレート2部を用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径200nm、ガラス転移温度75℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて、多孔質層の膜厚、透気度、塗膜外観、熱収縮率(熱寸法安定性)、電極との接着性、溶媒浸漬後の透気度変化率(溶媒:ジエチルカーボネート)、放電負荷特性および充放電サイクル特性の測定結果を表2に示す。
【0102】
(実施例11)
粒子Aの重合体を構成する単量体として、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート40部、イソボルニルアクリレート29部、イソボルニルメタクリレート29部、ヒドロキシエチルメタクリレート2部を用いた以外は、実施例1と同様にして、粒子A(平均粒径200nm、ガラス転移温度80℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0103】
(参考例12)
単量体単位群aから選ばれる単量体単位としてケイ素含有単量体単位(ジメチルジメトキシシラン50質量%、ジメトキシジメチルフェニルシラン50質量%)からなるシリコーン樹脂粒子(粒子Aに含まれるケイ素含有単量体単位の含有率100質量%、平均粒径2μm)を含む分散液Aを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0104】
(実施例13)
フッ素含有メタクリレート単量体単位を構成する単量体として、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを用いた以外は、実施例2と同様にして、粒子A(平均粒径160nm、ガラス転移温度70℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0105】
(実施例14)
フッ素含有メタクリレート単量体単位を構成する単量体として2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートを用いた以外は、実施例4と同様にして、粒子A(平均粒径160nm、ガラス転移温度70℃)を含む分散液Aおよび本発明の多孔性フィルムを得た。
【0106】
(実施例15)
<1段目の重合>
イオン交換水300部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で過硫酸アンモニウム0.5部を80℃で添加し、シクロヘキシルメタクリレート49部、シクロヘキシルアクリレート49部、ヒドロキシエチルメタクリレート2部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、イオン交換水50部からなる単量体混合物を4時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後3時間にわたり重合処理を行った。
<2段目の重合>
イオン交換水300部、第1段目の重合で得られた重合体粒子50部(固形分換算)、ラウリル硫酸ナトリウム0.2部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で過硫酸アンモニウム0.5部を80℃で添加し、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート50部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、イオン交換水50部からなる単量体混合物を4時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後3時間にわたり重合処理を行うことでコアシェル構造を有する有機樹脂からなる粒子A(平均粒径150nm、ガラス転移温度80℃)を含む分散液Aを製造した。この分散液Aを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0107】
(実施例16)
粒子Bとして平均粒径0.4μmのベーマイト粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0108】
(実施例17)
粒子Bとして平均粒径0.3μmの硫酸バリウム粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0109】
(実施例18)
イオン交換水120部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)1部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で2,2’-アゾビス(2ー(2―イミダゾリン-2-イル)プロパン)(和光純薬工業(株))0.4部を添加し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)40部、ジシクロペンタニルアクリレート(TCDA)20部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)38部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)5部、イオン交換水115部からなる単量体混合物を60℃で2時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後4時間にわたり重合処理を行い、有機樹脂からなる粒子A(平均粒径190nm、ガラス転移温度59℃)を含む分散液Aを製造した。この分散液Aを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0110】
(実施例19)
イオン交換水120部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)1部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で2,2’-アゾビス(2ー(2―イミダゾリン-2-イル)プロパン)(和光純薬工業(株))0.4部を添加し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)30部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)68部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)9部、イオン交換水115部からなる単量体混合物を60℃で2時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後4時間にわたり重合処理を行い、有機樹脂からなる粒子A(平均粒径215nm、ガラス転移温度45℃)を含む分散液Aを製造した。この分散液Aを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて、多孔質層の膜厚、透気度、塗膜外観、熱収縮率(熱寸法安定性)、電極との接着性、溶媒浸漬後の透気度変化率(溶媒:ジエチルカーボネート)、放電負荷特性および充放電サイクル特性の測定結果を表3に示す。
【0111】
(実施例20)
粒子Bとして平均粒径0.4μmのベーマイト粒子を用いた以外は、実施例19と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0112】
(実施例21)
粒子Bとして平均粒径0.3μmの硫酸バリウム粒子を用いた以外は、実施例19と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0113】
(実施例22)
分散液Bのバインダーをエマルジョンバインダーであるアクリル樹脂(平均粒径:200nm)を用いた以外は、実施例19と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0114】
(実施例23)
分散液Bのバインダーをエマルジョンバインダーであるアクリル樹脂(平均粒径:200nm)を用い、また電極接着補助剤の有機粒子としてポリプロピレン粒子(粒径:100nm、融点:65℃)を粒子Bに対して0.2質量%添加した以外は、実施例19と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0115】
(実施例24)
電極接着補助剤の有機粒子としてポリエチレン粒子(粒径:100nm、融点:80℃)を粒子Bに対して0.2質量%添加した以外は、実施例19と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0116】
(実施例25)
イオン交換水120部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)1部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で2,2’-アゾビス(2ー(2―イミダゾリン-2-イル)プロパン)(和光純薬工業(株))0.4部を添加し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)40部、ジシクロペンタニルアクリレート(TCDA)3部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)48部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2部、ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)7部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)9部、イオン交換水115部からなる単量体混合物を60℃で2時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後4時間にわたり重合処理を行い、有機樹脂からなる粒子A(平均粒径195nm、ガラス転移温度52℃)を含む分散液Aを製造した。この分散液Aを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0117】
(実施例26)
イオン交換水120部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)1部を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で2,2’-アゾビス(2ー(2―イミダゾリン-2-イル)プロパン)(和光純薬工業(株))0.4部を添加し、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)30部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)61部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)2部、ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)7部、アデカリアソーブSR-1025(アデカ(株)社製乳化剤)9部、イオン交換水115部からなる単量体混合物を60℃で2時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後4時間にわたり重合処理を行い、有機樹脂からなる粒子A(平均粒径185nm、ガラス転移温度45℃)を含む分散液Aを製造した。この分散液Aを用いた以外は、実施例1と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0118】
(実施例27)
分散液Bのバインダーをエマルジョンバインダーであるアクリル樹脂(平均粒径:200nm)を用いた以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0119】
(実施例28)
分散液Bのバインダーをエマルジョンバインダーであるアクリル樹脂(平均粒径:200nm)を用い、また電極接着補助剤の有機粒子としてポリプロピレン粒子(粒径:100nm、融点:65℃)を粒子Bに対して0.2質量%添加した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0120】
(実施例29)
ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)をウレタンアクリレートUF-07DF(共栄社化学株式会社製)に変更した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。得られた多孔性フィルムについて、多孔質層の膜厚、透気度、塗膜外観、熱収縮率(熱寸法安定性)、電極との接着性、溶媒浸漬後の透気度変化率(溶媒:ジエチルカーボネート)、放電負荷特性および充放電サイクル特性の測定結果を表4に示す。
【0121】
(実施例30)
ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)をウレタンアクリレートUF-C012(共栄社化学株式会社製)に変更した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0122】
(実施例31)
ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)をウレタンアクリレートUF-C052(共栄社化学株式会社製)に変更した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0123】
(実施例32)
ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)をウレタンアクリレートUF-0146(共栄社化学株式会社製)に変更した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0124】
(実施例33)
ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)をアルキレングリコールジメタクリレートPDE-600(共栄社化学株式会社製)に変更した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0125】
(実施例34)
ウレタンアクリレートDP-600BU(日油株式会社製)をアルキレングリコールジメタクリレートADP-400(共栄社化学株式会社製)に変更した以外は、実施例26と同様にして、本発明の多孔性フィルムを得た。
【0126】
(比較例1)
イオン交換水300部、ラウリル硫酸ナトリウム0.2を反応器に仕込み、撹拌を開始した。これに窒素雰囲気下で過硫酸アンモニウム0.5部を80℃で添加し、エチルアクリレート30部、n-ブチルアクリレート30部、メタクリル酸30部、メチルメタクリレート10部、ラウリル硫酸ナトリウム2部、イオン交換水50部からなる単量体混合物を4時間かけて連続的に滴下し、滴下終了後3時間にわたり重合処理を行い、粒子Ac(平均粒径120nm、ガラス転移温度60℃)を含む分散液Aを製造した。得られた分散液Aを使用した以外は、実施例1と同様にして、多孔性フィルムを得た。
【0127】
(比較例2)
粒子Bを添加せずに塗工液を作製した以外は、実施例1と同様にして、多孔性フィルムを得た。
【0128】
(比較例3)
粒子Aを用いずに塗工液を作製した以外は、実施例1と同様にして、多孔性フィルムを得た。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
表1~4から、実施例1~4,6~11,13~34は、いずれも、多孔質基材の少なくとも片面に、粒子Aと粒子Bを含有する多孔質層が積層された多孔性フィルムであって、粒子Aがフッ素含有(メタ)アクリレート単量体単位およびケイ素含有単量体単位からなる単量体単位群aの少なくとも1つを有する重合体を含む粒子であり、かつ粒子Bが無機粒子である多孔性フィルムであるため、十分な熱寸法安定性、電極との接着性、および良好な電池特性が得られる。
【0134】
一方、比較例1は、単量体単位aから選ばれる単量体単位を含まないため、十分な電極との接着性が得られない。比較例2は、粒子Bを添加していないため、十分な熱寸法安定性が得られない。比較例3は、粒子Aを添加していないため、十分な電極との接着性が得られない。