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  • 特許-ポリオレフィン微多孔膜の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ポリオレフィン微多孔膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20230301BHJP
   C08J 9/00 20060101ALI20230301BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20230301BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20230301BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08J9/00 A CES
B29C67/20 B
B29K23:00
B29L7:00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019571075
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2019038555
(87)【国際公開番号】W WO2020148946
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2019004455
(32)【優先日】2019-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 愛
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-106237(JP,A)
【文献】国際公開第2018/164057(WO,A1)
【文献】特開2006-124652(JP,A)
【文献】国際公開第2011/062176(WO,A1)
【文献】特開2002-338728(JP,A)
【文献】国際公開第2013/147071(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/015416(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 67/20
B29K 23:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂及び可塑剤を押出機により溶融混練してポリオレフィン溶液を調製し、次いでこのポリオレフィン溶液を口金からシート状に吐出した後、延伸及び前記可塑剤の除去を行う工程を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、樹脂および可塑剤を押出機へ供給し、押出機内で加熱、混練する工程において、樹脂が押出機へ投入された後、可塑剤を投入する前の段階で、不活性ガスを押出機へ供給し、不活性ガス雰囲気下で樹脂組成物の溶融混練を行うことよりなり、前記混練工程において、前記不活性ガスを前記押出機原料投入口より押出機スクリュー長の5%以上20%以下の下流の位置より供給し、前記混練工程において、押出機へ供給する前記不活性ガスの流速が5m/sec以上10m/sec以下であり、前記押出機内のガスを吸引し排気する工程を含み、前記ガスを吸引する時の吸引圧が-300kPa以上-10kPa以下の範囲であるポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項2】
前記不活性ガスが窒素であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィン溶液が前記押出機より押出されてから前記口金よりシート状に吐出されるまでの滞留時間が10分以上120分以下の範囲である請求項1または2記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が1万以上1000万以下である請求項1~の何れか一項記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微多孔膜は、様々な孔径、孔形状、孔数を有し、その特異な構造により発現され得る特性から、ろ過膜、透析膜等のフィルター、電池用セパレータや電解コンデンサー用のセパレータ等の種々の分野に用いられる。これらの中でも、ポリオレフィンを樹脂材料とする微多孔膜は、耐薬品性、絶縁性、機械的強度等に優れ、シャットダウン特性を有するため、二次電池用セパレータとして広く用いられる。
【0003】
これらの用途においては、製造工程中での樹脂の性状異常(低分子量化、変色、炭化物の発生)は製品の品質に大きく影響を及ぼす。
【0004】
ポリオレフィンは溶融混練を行い、フィルム成形が行われるが、溶融時に酸素が混入していた場合、溶融混練時の熱により熱酸化劣化が発生し、樹脂の変色や炭化物の生成、分子鎖切断による低分子量化、強度低下を引き起こすことが知られている。このため、溶融加工時の酸化劣化を防止する技術として、下記に示す特許文献1~3のような方法がとられている。
【0005】
例えば特許文献1では、樹脂原料の酸化劣化を抑制するため、酸化防止剤を添加しフィルム製膜を行う方法を記載している。
【0006】
特許文献2には、樹脂組成物の劣化を抑制するため、押出機の樹脂原料供給部のスクリュー構成およびバレル温度を特定の範囲とし、原料タンク、ホッパーおよび押出機への原料投入部までの樹脂経路の酸素濃度を窒素ガス供給により制御する方法を記載している。
【0007】
また、特許文献3には、品質劣化抑制のため、押出機の摺胴部が不活性ガスシールされた状態でポリオレフィンの溶融混練を行う方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-215901号公報
【文献】特開2011-255652号公報
【文献】特開2001-79830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし特許文献1~3に開示される方法では、押出機により樹脂組成物を得る際、樹脂の熱酸化劣化を抑制するための改良がなされているが、酸化劣化抑制および押出機での吐出精度向上の観点では改善の余地があった。
【0010】
樹脂等の酸化劣化物が樹脂組成物中に含有されていると、外観異常、強度低下の原因となる場合がある。酸化劣化抑制のため、溶融混練を不活性ガス雰囲気下にて行う方法が挙げられるが、不活性ガス供給時、投入原料の吹き出しやエア噛みに伴う押出機吐出量の変動、外観不良が発生する場合があった。
【0011】
本発明は、前記事情を考慮し、製造工程におけるポリオレフィンの溶融加工時の酸化劣化を防止することで、樹脂の性状異常を抑制し、表面外観、膜強度均一性に優れ、かつ、押出機での吐出精度に優れるポリオレフィン微多孔膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の状況の下、本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ポリオレフィン樹脂および可塑剤を押出機へ供給し、押出機内で溶融混練する工程において、樹脂が押出機へ投入された後に、樹脂温度が酸化開始温度以下の段階で、押出機の所定の箇所より不活性ガスを押出機へ供給し、不活性ガス雰囲気下で樹脂組成物の溶融混練を行うことが、上記課題に対して従来のポリオレフィン微多孔膜の製造方法よりも優れることを見出し本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0014】
ポリオレフィン樹脂及び可塑剤を押出機により溶融混練してポリオレフィン溶液を調製し、次いでこのポリオレフィン溶液を口金からシート状に吐出した後、延伸及び前記可塑剤の除去を行う工程を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、樹脂および可塑剤を押出機へ供給し、押出機内で加熱、混練する工程において、樹脂が押出機へ投入された後、可塑剤を投入する前の段階で、不活性ガスを押出機へ供給し、不活性ガス雰囲気下で樹脂組成物の溶融混練を行うことよりなり、前記混練工程において、前記不活性ガスを前記押出機原料投入口より押出機スクリュー長の5%以上20%以下の下流の位置より供給し、前記混練工程において、押出機へ供給する前記不活性ガスの流速が5m/sec以上10m/sec以下であり、前記押出機内のガスを吸引し排気する工程を含み、前記ガスを吸引する時の吸引圧が-300kPa以上-10kPa以下の範囲であるポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【0015】
前記ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度が400g/20μm以上1500g/20μm以下、かつ突刺強度の変動偏差が1%以下である前記記載の製造方法にて製造されたポリオレフィン微多孔膜。
【0016】
前記記載のポリオレフィン微多孔膜を用いたリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、二次電池用セパレータとして好適なポリオレフィン微多孔膜を、歩留まり、品質及び収率が改善された工程にて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態のポリオレフィン微多孔膜の製造方法の押出工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について好ましい実施形態に基づき説明する。なお、本明細書において、ポリオレフィン微多孔膜とは、ポリオレフィンを主成分として含む微多孔膜をいい、好ましくは、ポリオレフィンを微多孔膜全量に対して90質量%以上含む微多孔膜をいう。また微多孔膜とは、膜内部に多数の微細孔を有し、これら微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体及び液体の少なくとも一方が通過可能となっている膜を言う。
【0020】
[ポリオレフィン樹脂]
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を好ましく用いることができる。
【0021】
[ポリエチレン系樹脂]
ポリエチレン系樹脂は、(a)超高分子量ポリエチレン、(b)超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレン、(c)超高分子量ポリエチレンとそれ以外のポリエチレンとの混合物(ポリエチレン組成物)、又は(d)これらの(a)~(c)のいずれかと、ポリエチレン以外のポリオレフィンとの混合物(ポリオレフィン組成物)である。いずれの場合も、ポリエチレン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくは1×10~1×10であり、より好ましくは1×10~5×10であり、特に好ましくは1×10~4×10である。
【0022】
(a)超高分子量ポリエチレンからなる場合
超高分子量ポリエチレンは5×10以上のMwを有する。超高分子量ポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを少量含有するエチレン・α-オレフィン共重合体でもよい。エチレン以外のα-オレフィンとしては、プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1,4-メチルペンテン-1、オクテン-1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、及びスチレンが好ましい。超高分子量ポリエチレンのMwは1×10~15×10が好ましく、1×10~5×10がより好ましい。超高分子量ポリエチレンは単独物に限定されず、二種以上の超高分子量ポリエチレン同士の混合物であってもよい。混合物として、例えばMwの異なる二種以上の超高分子量ポリエチレン同士の混合物が挙げられる。
【0023】
(b)超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレンからなる場合
超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレンは1×10以上~5×10未満のMwを有し、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン及び鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。Mwが1×10以上5×10未満のポリエチレンは、エチレンの単独重合体のみならず、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1等の他のα-オレフィンを少量含有する共重合体でも良い。このような共重合体としてシングルサイト触媒により製造されたものが好ましい。超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレンは単独物に限定されず、二種以上の超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレンの混合物であってもよい。混合物として、例えばMwの異なる二種以上の高密度ポリエチレン同士の混合物、同様な中密度ポリエチレン同士の混合物、同様な低密度ポリエチレン同士の混合物等が挙げられる。
【0024】
(c)ポリエチレン組成物からなる場合
ポリエチレン組成物は、Mwが5×10以上の超高分子量ポリエチレンと、その他のポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、及び鎖状低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた少なくとも一種)とからなる混合物である。超高分子量ポリエチレン及びそれ以外のポリエチレンは上記と同じで良い。その他のポリエチレンは1×10以上~5×10未満のMwを有するのが好ましい。このポリエチレン組成物は、用途に応じて分子量分布[質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)]を容易に制御することができる。ポリエチレン組成物としては、上記超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの組成物が好ましい。ポリエチレン組成物中の超高分子量ポリエチレンの含有量は、ポリエチレン組成物全体を100質量%として、1質量%以上が好ましく、10~80質量%がより好ましい。
【0025】
(d)ポリエチレン以外のポリオレフィンとの混合物(ポリオレフィン組成物)からなる場合
ポリエチレン以外のポリオレフィンとして、各々のMwが1×10~4×10のポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリメチルペンテン、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びエチレン・α-オレフィン共重合体、並びにMwが1×10~1×10のポリエチレンワックスからなる群から選ばれた少なくとも一種を用いることができる。ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリペンテン-1、ポリメチルペンテン、ポリヘキセン-1、ポリオクテン-1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル及びポリスチレンは単独重合体のみならず、他のα-オレフィンを含有する共重合体であってもよい。ポリエチレン以外のポリオレフィンの割合は、ポリオレフィン組成物全体を100質量%として50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0026】
[ポリプロピレン系樹脂]
ポリプロピレンの種類は特に限定されず、プロピレンの単独重合体、プロピレンと他のオレフィン及び/又はジオレフィンとの共重合体、あるいはこれらの混合物のいずれでも良いが、単独重合体が好ましい。共重合体としてはランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれも用いることができる。プロピレン以外のオレフィンとしてはエチレン又は炭素数4~8のα-オレフィンが好ましい。炭素数4~8のα-オレフィンとして、例えばブテン-1、ペンテン-1、へキセン-1、4-メチル-1-ペンテン、オクテン-1等が挙げられる。
【0027】
ジオレフィンの炭素数は4~14が好ましい。炭素数4~14のジオレフィンとして、例えばブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、1,9-デカジエン等が挙げられる。ポリプロピレンのMwとしては、1×10以上~1×10以下であるのが好ましく、1×10以上~5×10以下であるのが特に好ましい。
【0028】
また、ポリオレフィン微多孔膜は、本発明の効果を損なわない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤や充填剤、結晶造核剤、結晶化遅延剤等の各種添加剤を含有させてもよい。また、本発明では、結晶造核剤を含有してもよい。結晶造核剤としては、特に限定されず、公知の化合物系、微粒子系結晶造核剤等が使用できる。核剤としては、核剤を予めポリオレフィン樹脂に混合、分散したマスターバッチであってもよい。
【0029】
[可塑剤]
可塑剤はポリオレフィン樹脂に対して良溶媒であれば制限されないが、室温で液体であることが好ましい。可塑剤としては、例えばノナン、デカン、デカリン、p-キシレン、ウンデカン、ドデカン、流動パラフィン等の脂肪族又は環式の炭化水素、或いは沸点がこれらに対応する鉱油留分等を用いることができる。前述した可塑剤としては、25℃における粘度が0.03~0.5Pa・s、特に0.05~0.2Pa・sであるのが好ましい。
【0030】
25℃における粘度が0.03Pa・s未満では、不均一吐出を生じ、混練が困難である場合があり、一方0.5Pa・sを超えると、後工程での脱可塑剤が容易でなくなる場合がある。可塑剤の中では、ポリオレフィンとの相溶性の観点から、流動パラフィン、デカリン、p-キシレンが好ましい。ポリオレフィン樹脂と可塑剤(総量)との配合割合は、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との合計を100質量%として、ポリオレフィン樹脂が10~50質量%、好ましくは15~40質量%であり、可塑剤が90~50質量%、好ましくは85~60質量%である。ポリオレフィンが10質量%未満では(可塑剤が90質量%を超えると)、シート状に成形する際に、口金出口で、スウェルやネックインが大きくシートの成形が困難となる傾向にある。一方、ポリオレフィン樹脂が50質量%を超えると(可塑剤が50質量%未満では)、均一な溶液の調製が困難となる傾向にある。
【0031】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、下記の工程を含むことが好ましい。
(1)ポリオレフィン樹脂を押出機内へ投入する工程。
(2)押出機内へ不活性ガスを供給する工程。
(3)ポリオレフィン樹脂を加熱する工程。
(4)加熱された前記ポリオレフィン樹脂に可塑剤を添加し混合・混練する工程。
【0032】
(5)前記ポリオレフィン溶液を調製後、前記押出機内のガス(空気、不活性ガス)を吸引し排気する工程。
【0033】
(6)混練後の前記ポリオレフィン溶液を押出機から押し出し、口金からシート状に吐出する工程。
(7)シート状に押出された前記ポリオレフィン溶液を冷却してゲル状シートを形成する工程。
(8)前記ゲル状シートを加熱、延伸する工程。
(9)延伸後のゲル状シートから可塑剤を除去して微多孔膜(フィルム)を形成する工程。
(10)前記フィルムを乾燥させる工程。
【0034】
以下、各工程順に説明する。
【0035】
(1)ポリオレフィン樹脂を押出機内へ投入する工程
本工程ではポリオレフィン樹脂を、押出機の原料投入部より押出機内に供給する。この樹脂投入の際に、ポリオレフィン溶液の酸化の原因となる空気が混入する場合がある。空気の混入を防止するため後述する工程(2)、(5)にて、空気混入、それに伴う酸化劣化を抑制している。
【0036】
(2)押出機内へ不活性ガスを供給する工程
本工程では、不活性ガスを押出機のガス注入部より押出機内へ供給する。前記不活性ガスとは化学反応性が低いガスを指し、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガス、窒素ガス等が挙げられる。一般的には窒素ガスを使用することが好ましい。不活性ガスを供給する方法としては、押出機の原料投入部より一定距離以上離した箇所より押出機内樹脂流路へ不活性ガスを供給する方法が、原料の吹き上がりを抑制する観点で好ましく、供給位置としては押出機原料投入口より押出機スクリュー長の5~20%下流、より好ましくは5~10%下流の位置より供給することが効果的に酸化劣化を抑制する観点で好ましい。
【0037】
また、不活性ガス供給のタイミングとしては、押出機内で加熱される樹脂原料の温度が、劣化開始温度以下(通常、ポリエチレンであれば250℃以下)の時に供給することが好ましい。また、不活性ガス注入によるポリオレフィン溶液中への気泡発生、それに伴う外観不良を抑制する観点より、ポリオレフィン樹脂に可塑剤を添加する前に、不活性ガスを供給することが好ましい。不活性ガスの供給量としては、不活性ガス供給安定性、原料吹き上がり抑制、フィルムにした際の強度バラつき低減の観点より、1~50L/分が好ましく、より好ましくは10~20L/分である。不活性ガスの供給流速としては、不活性ガス供給部ノズル内の流速として、1~20m/sが好ましく、5~10m/sがより好ましい。
【0038】
(3)ポリオレフィン樹脂を加熱する工程
本工程では、供給されたポリオレフィン樹脂が押出機内部で加熱される。具体的な加熱温度は、使用するポリオレフィンの種類によって異なるが、例えば、ポリエチレンの場合は140~250℃、特に150~250℃であるのが好ましく、ポリプロピレンの場合は160~250℃、特に180~250℃であることが好ましい。250℃以上の場合、ポリオレフィン樹脂の酸化劣化開始温度以上となるため、劣化が促進される傾向にある。
【0039】
(4)加熱された前記ポリオレフィン樹脂に可塑剤を添加し混合・混練する工程
本工程では、加熱されたポリオレフィン樹脂に可塑剤を添加し、押出機にて混合、溶融混練しポリオレフィン溶液を調製する。ポリオレフィン溶液の調製は特に限定されないが、二軸押出機中で行うのが好ましい。二軸押出機のスクリューの長さ(L)と直径(D)の比(L/D)は20~100の範囲が好ましく、35~70の範囲がより好ましい。L/Dを20未満にすると、溶融混練が不十分となる場合がある。L/Dを100超にすると、ポリオレフィン溶液の滞留時間が増大し劣化を促進する場合がある。
【0040】
(5)前記ポリオレフィン溶液を調製後、前記押出機内のガス(空気、不活性ガス)を吸引し排気する工程
ポリオレフィン樹脂と可塑剤の混練完了時、調製されたポリオレフィン溶液は、押出機内のガス(空気、不活性ガス)が溶存しており、溶液に加わる圧力および温度変化により気泡が発生することがある。本工程では、樹脂の性状異常や外観不良の元となる気泡を吸引し排気することが好ましい。押出機内のガスは、原料の混練開始とともに、原料である樹脂と混在する状態になるが、混練が進むにつれて、押出機内の圧力により気泡同士が徐々に凝集し、混練完了時(押出機の最終段)には、一か所に集まる。このため、空気の排気は、押出機内にて気泡が集まる場所、即ち、混練が完了する最終段に、ベント孔を形成し、排気筒を介して真空ポンプで押出機内を排気する。このようにして、ポリオレフィン溶液に含まれていたガスが排気される。さらに、ガスの吸引は、好ましくは-10~-300kPa、より好ましくは-50~-200kPa、特に好ましくは-50~-100kPaの範囲の吸引圧で吸引し排気することが好ましい。このような範囲の吸引圧で吸引することにより、ポリオレフィン樹脂溶液に含まれる気泡が除去され外観に影響を及ぼさないポリオレフィン溶液が得られる。
【0041】
(6)混練後の前記ポリオレフィン溶液を押出機から押出し、口金からシート状に吐出する工程
本工程では、ポリオレフィン溶液が前記押出機から押出された後、配管を経由し口金からシート状に吐出される。このときの配管の温度は150~300℃、特に180~250℃の範囲であることが好ましい。配管の温度を150℃以上に設定することにより、ポリオレフィン溶液の溶融状態を維持できる。また配管の温度を300℃以下に設定することにより、ポリオレフィン溶液の劣化が最小限に抑制できる。またポリオレフィン溶液の配管内での滞留時間は10~120分、特に10~90分の範囲に設定されていることが好ましい。滞留時間を10分以上に設定することにより、ポリオレフィン溶液が配管を滞留する過程において、ポリオレフィン溶液の不純物を除く処理等を十分に行うことができる。また滞留時間を120分以下にすることによりポリオレフィン溶液の劣化を最小限度に抑制できる。押出機からポリオレフィン樹脂を押し出す時の押し出し速度は、1~10m/分である。口金としては、通常長方形の口金形状をしたシート口金が用いられる。シート口金を用いた場合の口金ギャップは通常0.1~5mmであり、押出し成形時には140~250℃に加熱される。
【0042】
(7)シート状に押出された前記ポリオレフィン溶液を冷却してゲル状シートを形成する工程
口金からシート状に押出された押出成形体を冷却することによりゲル状シートを形成する。冷却は少なくともゲル化温度以下まで50℃/分以上の速度で行うのが好ましい。このような冷却を行うことによりポリオレフィン系樹脂相が可塑剤によりミクロ相分離された構造を固定化できる。冷却は25℃以下まで行うのが好ましい。冷却速度が前記範囲内であると結晶化度が適度な範囲に保たれ、延伸に適したゲル状シートとなる。冷却方法としては冷風、冷却水等の冷媒に接触させる方法、冷却ロールに接触させる方法等を用いることができるが、冷媒で冷却したロールに接触させて冷却させることが好ましい。
【0043】
(8)前記ゲル状シートを加熱、延伸する工程
次いで、ゲル状シートを延伸する。ゲル状シートの延伸は、湿式延伸ともいう。湿式延伸は、少なくとも一軸方向に行う。ゲル状シートは可塑剤を含むので、均一に延伸できる。ゲル状シートは、加熱後、テンター法、ロール法、インフレーション法、又はこれらの組合せにより所定の倍率で延伸するのが好ましい。延伸は一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸及び多段延伸(例えば同時二軸延伸及び逐次延伸の組合せ)のいずれでもよい。
【0044】
湿式延伸における、最終的な面積延伸倍率(面倍率)は、例えば、一軸延伸の場合、3倍以上が好ましく、4倍以上30倍以下がより好ましい。また、二軸延伸の場合、最終的な面積延伸倍率は9倍以上が好ましく、16倍以上がより好ましく、25倍以上がさらに好ましい。湿式延伸における最終的な面積延伸倍率の上限は100倍以下が好ましく、64倍以下がより好ましい。また、湿式延伸における最終的な延伸倍率はMD方向(機械方向:長手方向)及びTD方向(幅方向:横手方向)のいずれでも3倍以上が好ましく、MD方向とTD方向とで互いに同じでも異なってもよい。延伸倍率を5倍以上とすると、突刺強度の向上が期待できる。なお、本ステップにおける延伸倍率とは、本ステップ直前のゲル状シートを基準として、次ステップに供される直前のゲル状シートの延伸倍率のことをいう。また、TD方向は、微多孔膜を平面でみたときにMD方向に直交(交差)する方向である。
【0045】
延伸温度は、ポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)~(Tcd)+30℃の範囲内にすることが好ましく、結晶分散温度(Tcd)+5℃~結晶分散温度(Tcd)+28℃の範囲内にすることがより好ましく、(Tcd)+10℃~(Tcd)+26℃の範囲内にすることが特に好ましい。延伸温度が前記範囲内であるとポリオレフィン樹脂延伸による破膜が抑制され、高倍率の延伸が可能となる。ここで結晶分散温度(Tcd)とは、ASTM D4065に基づいて動的粘弾性の温度特性測定により求められる値をいう。前記の超高分子量ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン以外のポリエチレン及びポリエチレン組成物は、約90~100℃の結晶分散温度を有する。従って、ポチエチレンを原料として用いた場合の延伸温度は、例えば、90℃以上130℃以下とすることができる。
【0046】
以上のような延伸によりポリエチレンラメラ間に開裂が起こり、ポリエチレン相が微細化し、多数のフィブリルが形成される。フィブリルは三次元的に不規則に連結した網目構造を形成する。延伸により機械的強度が向上するとともに細孔が拡大するが、適切な条件で延伸を行うと、貫通孔径を制御し、さらに薄い膜厚でも高い空孔率を有する事が可能となる。このため、より安全で高性能な電池用セパレータに好適である。
【0047】
(9)延伸後のゲル状シートから可塑剤を除去して微多孔膜(フィルム)を形成する工程
次いで、前記延伸後のゲル状シートから可塑剤を除去して微多孔膜(フィルム)とする。可塑剤の除去は、洗浄溶媒を用いた洗浄により行う。ポリオレフィン相は成膜用溶剤相と相分離しているので、可塑剤を除去すると、微細な三次元網目構造を形成するフィブリルからなり、三次元的に不規則に連通する孔(空隙)を有する多孔質の膜が得られる。洗浄溶媒及びこれを用いた可塑剤の除去方法は公知であるので説明を省略する。例えば特公平6-104736号公報や特開2002-256099号公報に開示の方法を利用することができる。
【0048】
(10)前記フィルムを乾燥させる工程
次いで、可塑剤を除去した微多孔膜を、加熱乾燥法又は風乾法により乾燥する。乾燥温度はポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)以下であるのが好ましく、特にTcdより5℃以上低いのが好ましい。乾燥は、微多孔膜フィルムを100質量%(乾燥重量)として、残存洗浄溶媒が5質量%以下になるまで行うのが好ましく、3質量%以下になるまで行うのがより好ましい。残存洗浄溶媒が前記範囲内であると、後段の微多孔膜フィルムの延伸工程及び熱処理工程を行ったときにポリオレフィン微多孔膜の空孔率が維持され、透過性の悪化が抑制される。
【0049】
また、乾燥後のフィルムポリオレフィン微多孔膜は、熱処理が行われてもよい。熱処理によって結晶が安定化し、ラメラが均一化される。熱処理方法としては、熱固定処理及び熱緩和処理の少なくとも一方を用いることができる。熱固定処理とは、膜のTD方向の寸法が変わらないように膜のTD方向両端部を保持しながら加熱する熱処理である。熱固定処理は、テンター方式又はロール方式により行うのが好ましい。熱緩和処理とは、膜を加熱中にMD方向やTD方向に熱収縮させる熱処理である。例えば、熱緩和処理方法としては特開2002-256099号公報に開示の方法があげられる。熱処理温度はポリオレフィン樹脂の結晶分散温度(Tcd)~融点(Tm)の範囲内が好ましい。
【0050】
また、熱処理後のポリオレフィン微多孔膜に対して、さらに、架橋処理及び親水化処理を行うこともできる。例えば、微多孔膜に対して、α線、β線、γ線、電子線等の電離放射線を照射することにより、架橋処理を行う。電子線の照射の場合、0.1~100Mradの電子線量が好ましく、100~300kVの加速電圧が好ましい。架橋処理により微多孔膜のメルトダウン温度が上昇する。また、親水化処理は、モノマーグラフト、界面活性剤処理、コロナ放電等により行うことができる。モノマーグラフトは架橋処理後に行うのが好ましい。
【0051】
なお、下記条件等を採用することにより、突刺強度が400g/20μm以上1500g/20μm以下、かつ突刺強度の変動偏差が1%以下であるポリオレフィン微多孔膜を製造することができる。
【0052】
窒素供給位置:押出機原料投入口より押出機スクリュー長の10%下流位置
窒素供給量:10~50L/min
供給流速:10~20m/sec
面積延伸倍率:25~64倍。
【0053】
以上説明した本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法により得られたポリオレフィン微多孔膜は、樹脂の性状異常がなく品質に優れ、二次電池用セパレータとして好適に使用できる。
【0054】
[電池用セパレータ]
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、水系電解液を使用する電池、非水系電解質を使用する電池のいずれにも好適に使用できる。具体的には、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-亜鉛電池、銀-亜鉛電池、リチウム二次電池、リチウムポリマー二次電池等の二次電池のセパレータとして好ましく用いることができる。中でも、非水系電解質を使用するリチウムイオン二次電池のセパレータとして用いることが好ましい。
【0055】
リチウムイオン二次電池は、正極と負極がセパレータを介して積層されており、セパレータが電解液(電解質)を含有している。電極の構造は特に限定されず、従来公知の構造を用いることができ、例えば、円盤状の正極および負極が対向するように配設された電極構造(コイン型)、平板状の正極および負極が交互に積層された電極構造(積層型)、積層された帯状の正極および負極が巻回された電極構造(捲回型)等にすることができる。
【0056】
リチウムイオン二次電池に使用される、集電体、正極、正極活物質、負極、負極活物質および電解液は、特に限定されず、従来公知の材料を適宜組み合わせて用いることができる。
【0057】
以下、本発明を実施例等によりさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0058】
測定方法および評価方法は次の通りである。
【0059】
(1)メルトフローレイト(MI)
JIS K 7210-1(2014)のA法に準じて、試験温度及び荷重をそれぞれ230℃、2.16kgf(21.18N)に設定して測定した(単位:g/10min)。
【0060】
(2)重量平均分子量(Mw)
Mwは以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
測定装置:Waters Corporation製GPC-150C
カラム:昭和電工株式会社製Shodex UT806M
カラム温度:145℃
溶媒(移動相):1,2,4-トリクロロベンゼン
溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:0.1質量%(溶解条件:145℃/1h)
インジェクション量:500μl
検出器:Waters Corporation製ディファレンシャルリフラクトメーター
検量線:単分散ポリスチレン標準試料を用いて得られた検量線から、所定の換算定数を用いて作成した。
【0061】
(3)フィルム外観
微多孔膜を95mm×95mmに切り出し、照明付き拡大鏡ルーペ(PEAK社製、ILLUMINATING LUPE)の上に皺なく広げ、透過光で微多孔膜を観察した。長径0.3cm以上の透明な斑点を数え、斑点の数が3個以内の物をS(優)、3個を超え5個以内のものをA(良)、5個を超え10個以内のものをB(可)、10個を超えたものをC(不可)と評価した。
【0062】
(4)投入原料の吹き上がり
所定の条件にて押出機へ不活性ガスを供給した状態で、パウダー原料をフィーダーから押出機投入口へ投入し、ホッパー内部の不活性ガスによる原料の吹き上がり状態を目視にて観察した。原料が吹き上がらない状態をA(良)、1~10cm程度原料の吹き上がりが発生した状態をB(可)、10cm以上原料の吹き上がりが発生した状態をC(不可)と評価した。
【0063】
(5)不活性ガスの供給安定性評価
所定の条件にて押出機へ不活性ガスを供給した状態で、24時間押出機連続運転を行い、ガス流量の供給安定性を評価した。運転開始時の供給流量に対して、24時間後の供給流量の変化率が1%以下のものをA(良)、2%以上5%未満のものをB(可)、5%以上のものをC(不可)とした。
【0064】
(6)吐出変動量
規定量の原料を押出機へ投入し、混合、混練したポリオレフィン溶液を押出機より押出し、1分毎に押出されるポリオレフィン溶液の重量を計量し、10回測定した後に、1分当りの押出量の平均値、標準偏差を算出した。押出量の標準偏差を平均値で除した割合を押出変動量として算出、評価した。押出変動量が1%以下のものをS(優)、1%を超えて2%以下のものをA(良)、2%を超えて5%未満のものをB(可)、5%以上のものをC(不可)とした。
【0065】
(7)突刺強度および変動量
先端が球面(曲率半径R:0.5mm)の直径1mmの針で、膜厚T1の多層微多孔膜を2mm/秒の速度で突刺したときの最大荷重を測定した。最大荷重の測定値L1を、式:L2=(L1×20)/T1により、膜厚を20μmとしたときの最大荷重L2に換算し、突刺強度とした。10回測定を行い、平均値、標準偏差を算出した。標準偏差を平均値で除した割合を強度変動量として算出、評価した。強度変動量が1%以下のものをA(良)、1%を超えて4%以下のものをB(可)、5%以上のものをC(不可)とした。
【0066】
[実施例1、2]
表1に示す組成及び条件にて、ポリオレフィン樹脂と可塑剤である流動パラフィンと酸化防止剤としてのテトラキス[メチレン-3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート]メタン(ポリオレフィン樹脂100質量部当たり0.3質量部)を、図1に示す不活性ガス供給口A(押出機原料投入口より押出機スクリュー長の10%下流位置)より窒素を供給する二軸押出機にて、溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を調製し、二軸押出機からT形状の口金に供給し、押出した。その後、押出し成形体を、冷却ロールで引き取りながら冷却し、ゲル状シートを形成した。形成したゲル状シートを、表1に記載の延伸条件にてテンター延伸機により同時二軸延伸(湿式延伸)した。延伸したゲル状シートは20cm×20cmのアルミニウム枠板に固定し、25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し、100rpmで3分間揺動しながら流動パラフィンを除去し、室温で風乾し、乾燥膜を得た。乾燥膜を、バッチ式延伸機を用いて、126℃で表1に記載の乾式延伸倍率にてMD方向、TD方向に乾式延伸した。次に、この膜をテンター法により、126℃で8%収縮させながら熱緩和処理を行った。得られたポリオレフィン微多孔質膜の評価結果を表1に併せて記載した。なお、表1中、UHMwPEは、Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレンを示し、HDPEは、Mwが6.0×10の高密度ポリエチレンを示し、PPは、Mwが3.0×10のポリプロピレンを示す。溶融混練物(樹脂組成物)中の樹脂濃度(質量%)とは、ポリオレフィン樹脂と可塑剤の合計に対するポリオレフィン樹脂の含有量を示す。溶融混練物(樹脂組成物)中の樹脂濃度(質量%)とは、ポリオレフィン樹脂と可塑剤の合計に対するポリオレフィン樹脂の含有量を示す。滞留時間(分)は、押出機より押出されてから口金に到達するまでの時間とし、「ポリマーラインの総体積/吐出量」にて算出する。延伸倍率は、湿式延伸前のゲル状シートを基準として、延伸後(熱固定処理前)のポリオレフィン微多孔膜の面積延伸倍率を示す。
【0067】
[比較例1、2]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素を供給しなかったこと以外は実施例1、2と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0068】
[比較例3]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素の供給量を50L/min、窒素供給流速を20m/sとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0069】
[比較例4]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素の供給量を5L/min、窒素供給流速を2m/sとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0070】
[比較例5]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素の供給量を15L/min、窒素供給流速を20m/sとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0071】
[比較例6]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素の供給位置を図1に示す供給位置B(押出機原料投入口位置)にしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0072】
[比較例7]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素の供給位置を図1に示す供給位置C(押出機原料投入口より押出機スクリュー長の30%下流位置)にしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0073】
[比較例8]
原料を二軸押出機に供給する際に、窒素の供給量を20L/min、窒素供給流速を30m/sとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0074】
[比較例9]
原料を二軸押出機に供給する際に、押出機ベント部での吸引圧を0kPaとしたこと以外は実施例1と同様にしてポリオレフィン微多孔膜を作成した。
【0075】
比較例で得られたポリオレフィン微多孔質膜の評価結果を表1に記載した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1の結果から明らかなように、本実施形態の製造方法は、製造工程におけるポリオレフィン溶液の性状異常を抑制し、押出機での吐出精度が優れるため、ポリオレフィン微多孔膜を歩留まり、品質及び収率が改善された工程にて製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のポリオレフィン微多孔膜の製造方法は、製造工程におけるポリオレフィン溶液の性状異常が抑制されているため、ポリオレフィン微多孔膜を、歩留まり、品質及び収率が向上した工程にて製造することができ、二次電池用セパレータ用のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法として好適である。
図1