(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】車載用インバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230301BHJP
【FI】
H02M7/48 M ZHV
(21)【出願番号】P 2020021611
(22)【出願日】2020-02-12
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】舩渡 基伸
(72)【発明者】
【氏名】八代 圭司
(72)【発明者】
【氏名】白石 和洋
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-166364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0167063(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動コンプレッサのモータを制御する車載用インバータが電源に対しコネクタを介して接続された車載用インバータの制御装置であって、
前記制御装置は、ハイサイド半導体素子及びローサイド半導体素子を有するアーム回路の駆動に用いられる半導体素子の駆動装置を有し、
前記駆動装置は、前記ハイサイド半導体素子を駆動するハイサイド駆動回路と、前記ローサイド半導体素子を駆動するローサイド駆動回路と、前記ハイサイド半導体素子のゲート駆動用のブートストラップコンデンサと、を有し、
前記車載用インバータは平滑コンデンサを有し、
前記平滑コンデンサは、前記制御装置が有する内部電源により前記ブートストラップコンデンサ及び前記ハイサイド半導体素子を介してリーク電流が供給され、
前記制御装置は、前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部によって検出された前記平滑コンデンサの両端電圧の変化によって前記コネクタの挿抜を判定する挿抜判定部と、を備えたことを特徴とする車載用インバータの制御装置。
【請求項2】
前記挿抜判定部は、前記内部電源から前記平滑コンデンサに前記リーク電流の供給が開始されてから一定時間が経過したときにおける、前記電圧検出部によって検出された前記平滑コンデンサの両端電圧が閾値以上か否かにより前記コネクタの挿抜を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用インバータの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用インバータの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コネクタを介して高電圧電源が接続されている電動コンプレッサにおいてコネクタの挿抜を判定する技術して、例えば特許文献1においては、電流検出手段と負荷抵抗を用いて、電流検出手段によって検出された電流がパワー素子から電源の方向へ流れた場合、電源接続手段から電源の接続が解除されたと検知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、高電圧コネクタの挿抜を判定するためには電流検出手段と負荷抵抗が必要となる。
本発明の目的は、簡単な構成にて電源に接続するコネクタの挿抜を判定することができる車載用インバータの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための車載用インバータの制御装置は、電動コンプレッサのモータを制御する車載用インバータが電源に対しコネクタを介して接続された車載用インバータの制御装置であって、前記制御装置は、ハイサイド半導体素子及びローサイド半導体素子を有するアーム回路の駆動に用いられる半導体素子の駆動装置を有し、前記駆動装置は、前記ハイサイド半導体素子を駆動するハイサイド駆動回路と、前記ローサイド半導体素子を駆動するローサイド駆動回路と、前記ハイサイド半導体素子のゲート駆動用のブートストラップコンデンサと、を有し、前記車載用インバータは平滑コンデンサを有し、前記平滑コンデンサは、前記制御装置が有する内部電源により前記ブートストラップコンデンサ及び前記ハイサイド半導体素子を介してリーク電流が供給され、前記制御装置は、前記平滑コンデンサの両端電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部によって検出された前記平滑コンデンサの両端電圧の変化によって前記コネクタの挿抜を判定する挿抜判定部と、を備えたことを要旨とする。
【0006】
これによれば、平滑コンデンサには、内部電源によりブートストラップコンデンサ及びハイサイド半導体素子を介してリーク電流が供給され、電圧検出部によって検出された平滑コンデンサの両端電圧の変化によってコネクタの挿抜が判定される。よって、電流検出手段と負荷抵抗を用いることなく簡単な構成にて電源に接続するコネクタの挿抜を判定することができる。
【0007】
また、車載用インバータの制御装置において、前記挿抜判定部は、前記内部電源から前記平滑コンデンサに前記リーク電流の供給が開始されてから一定時間が経過したときにおける、前記電圧検出部によって検出された前記平滑コンデンサの両端電圧が閾値以上か否かにより前記コネクタの挿抜を判定するとよい。
【0008】
この場合、容易にコネクタの挿抜を判定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な構成にて電源に接続するコネクタの挿抜を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態における電動コンプレッサの電気的構成を示す回路図。
【
図2】電動コンプレッサの電気的構成を示す回路図。
【
図3】電動コンプレッサの電気的構成を示す回路図。
【
図4】電動コンプレッサの電気的構成を示す回路図。
【
図5】電動コンプレッサの電気的構成を示す回路図。
【
図7】平滑コンデンサの両端電圧の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、車載用の電動コンプレッサ10はモータ20を備え、モータ20の駆動により圧縮機(図示略)が駆動される。電動コンプレッサ10は電気自動車、ハイブリッド車等に搭載される。
【0012】
電動コンプレッサ10は、モータ20を制御する車載用インバータ21を備えている。車載用インバータ21は、正極母線Lpと負極母線Lnを有する。
車載用インバータ21の正極母線Lp及び負極母線Lnがコネクタ210を介して高電圧電源200の正極及び負極と接続される。高電圧電源200は、例えば400V電源であり、高電圧電源200により車両の走行モータ等が駆動される。コネクタ210は、雄雌一対の接続部211,212を有する。接続部211,212が差し込まれて結合されると、高電圧電源200から車載用インバータ21に電力供給可能となる。この状態から接続部211,212が抜かれて非結合状態になると、高電圧電源200から車載用インバータ21に電力供給できなくなる。
【0013】
車載用インバータの制御装置22は、u相アーム回路30、v相アーム回路40、w相アーム回路50を有する。正極母線Lpと負極母線Lnとの間においてu相アーム回路30、v相アーム回路40、w相アーム回路50が並列に接続されている。
【0014】
u相アーム回路30は、ハイサイド半導体素子31及びローサイド半導体素子32を有する。v相アーム回路40は、ハイサイド半導体素子41及びローサイド半導体素子42を有する。w相アーム回路50は、ハイサイド半導体素子51及びローサイド半導体素子52を有する。
【0015】
ハイサイド半導体素子31は、IGBT33と、IGBT33に対し逆並列接続されたダイオード34とからなる。ローサイド半導体素子32は、IGBT35と、IGBT35に対し逆並列接続されたダイオード36とからなる。ハイサイド半導体素子31とローサイド半導体素子32とが直列に接続され、この直列接続回路におけるハイサイド半導体素子31とローサイド半導体素子32との間がモータ20のu相端子に接続されている。
【0016】
ハイサイド半導体素子41は、IGBT43と、IGBT43に対し逆並列接続されたダイオード44とからなる。ローサイド半導体素子42は、IGBT45と、IGBT45に対し逆並列接続されたダイオード46とからなる。ハイサイド半導体素子41とローサイド半導体素子42とが直列に接続され、この直列接続回路におけるハイサイド半導体素子41とローサイド半導体素子42との間がモータ20のv相端子に接続されている。
【0017】
ハイサイド半導体素子51は、IGBT53と、IGBT53に対し逆並列接続されたダイオード54とからなる。ローサイド半導体素子52は、IGBT55と、IGBT55に対し逆並列接続されたダイオード56とからなる。ハイサイド半導体素子51とローサイド半導体素子52とが直列に接続され、この直列接続回路におけるハイサイド半導体素子51とローサイド半導体素子52との間がモータ20のw相端子に接続されている。
【0018】
u相アーム回路30は、半導体素子の駆動装置60により駆動される。v相アーム回路40は、半導体素子の駆動装置70により駆動される。w相アーム回路50は、半導体素子の駆動装置80により駆動される。
【0019】
u相用の駆動装置60は、ハイサイド半導体素子31を駆動するハイサイド駆動回路61と、ローサイド半導体素子32を駆動するローサイド駆動回路62と、ハイサイド半導体素子31のゲート駆動用のブートストラップコンデンサ63と、を有する。v相用の駆動装置70は、ハイサイド半導体素子41を駆動するハイサイド駆動回路71と、ローサイド半導体素子42を駆動するローサイド駆動回路72と、ハイサイド半導体素子41のゲート駆動用のブートストラップコンデンサ73と、を有する。w相用の駆動装置80は、ハイサイド半導体素子51を駆動するハイサイド駆動回路81と、ローサイド半導体素子52を駆動するローサイド駆動回路82と、ハイサイド半導体素子51のゲート駆動用のブートストラップコンデンサ83と、を有する。
【0020】
制御装置22は、DC/DCコンバータ66を有する。DC/DCコンバータ66は内部電源65と接続され、車両の低電圧電源である内部電源65から12Vを入力して駆動回路の電源電圧としての15Vに昇圧して出力する。
【0021】
DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は抵抗67とダイオード68を介してブートストラップコンデンサ63の一端と接続されている。ブートストラップコンデンサ63の他端は抵抗69を介してIGBT33のエミッタと接続されている。DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は、ハイサイド駆動回路61と接続され、ハイサイド駆動回路61はIGBT33のゲートと接続されている。ハイサイド駆動回路61はDC/DCコンバータ66から15V電源の供給を受けるとともにIGBT33をオンオフ制御する。同様に、DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は、ローサイド駆動回路62と接続され、ローサイド駆動回路62はIGBT35のゲートと接続されている。ローサイド駆動回路62はDC/DCコンバータ66から15V電源の供給を受けるとともにIGBT35をオンオフ制御する。ブートストラップコンデンサ63の一端及び他端はハイサイド駆動回路61と接続されている。
【0022】
DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は抵抗77とダイオード78を介してブートストラップコンデンサ73の一端と接続されている。ブートストラップコンデンサ73の他端は抵抗79を介してIGBT43のエミッタと接続されている。DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は、ハイサイド駆動回路71と接続され、ハイサイド駆動回路71はIGBT43のゲートと接続されている。ハイサイド駆動回路71はDC/DCコンバータ66から15V電源の供給を受けるとともにIGBT43をオンオフ制御する。同様に、DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は、ローサイド駆動回路72と接続され、ローサイド駆動回路72はIGBT45のゲートと接続されている。ローサイド駆動回路72はDC/DCコンバータ66から15V電源の供給を受けるとともにIGBT45をオンオフ制御する。ブートストラップコンデンサ73の一端及び他端はハイサイド駆動回路71と接続されている。
【0023】
DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は抵抗87とダイオード88を介してブートストラップコンデンサ83の一端と接続されている。ブートストラップコンデンサ83の他端は抵抗89を介してIGBT53のエミッタと接続されている。DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は、ハイサイド駆動回路81と接続され、ハイサイド駆動回路81はIGBT53のゲートと接続されている。ハイサイド駆動回路81はDC/DCコンバータ66から15V電源の供給を受けるとともにIGBT53をオンオフ制御する。同様に、DC/DCコンバータ66の15Vの出力端子は、ローサイド駆動回路82と接続され、ローサイド駆動回路82はIGBT55のゲートと接続されている。ローサイド駆動回路82はDC/DCコンバータ66から15V電源の供給を受けるとともにIGBT55をオンオフ制御する。ブートストラップコンデンサ83の一端及び他端はハイサイド駆動回路81と接続されている。
【0024】
車載用インバータ21は、平滑コンデンサ90を有する。平滑コンデンサ90は、正極母線Lpと負極母線Lnとの間における、アーム回路30,40,50とコネクタ210との間に接続されている。
【0025】
システムメインリレー250が高電圧電源200の正極とコネクタ210との電源ラインに設けられている。高電圧電源200の正極と負極との間におけるシステムメインリレー250とコネクタ210との間に車両側のコンデンサ240が接続されている。
【0026】
車両ECU220によりシステムメインリレー250が開閉される。車両ECU220には車両のパワースイッチ230が接続され、パワースイッチ230がオン操作されると、車両ECU220はシステムメインリレー250を閉じる。また、パワースイッチ230がオフ操作されると、車両ECU220はシステムメインリレー250を開く。
【0027】
車載用インバータの制御装置22は、マイコン110を備えている。マイコン110によりDC/DCコンバータ66の起動と停止が指示される。マイコン110には車両ECU220からパワースイッチ230のオン操作に伴う信号が送られ、この信号の入力に伴いマイコン110からDC/DCコンバータ66に起動指令が送られる。DC/DCコンバータ66は、マイコン110の起動指令により内部電源65から12Vを入力して15Vに昇圧して出力する。また、マイコン110には車両ECU220からパワースイッチ230のオフ操作に伴う信号が送られて、この信号の入力に伴いマイコン110からDC/DCコンバータ66に停止指令が送られる。DC/DCコンバータ66は、マイコン110の停止指令により昇圧動作を停止する。
【0028】
制御装置22は、平滑コンデンサ90の両端電圧Voを検出する電圧検出部としての電圧センサ100を備える。マイコン110は電圧センサ100と接続されており、マイコン110は電圧センサ100からの信号により平滑コンデンサ90の両端電圧Voを検知できる。電圧センサ100による平滑コンデンサ90の両端電圧Voにより入力電圧が検知されて、入力電圧はモータ20をベクトル制御する際に用いられる。
【0029】
次に、作用について説明する。
まず、モータ20をベクトル制御するときの動作を
図2、
図3を用いて説明する。
図2に示すように、車載用インバータ21にコネクタ210を介して高電圧電源200が接続されている場合において、パワースイッチ230がオンされるとシステムメインリレー250がオン(閉路)する。そして、u相アーム回路30のハイサイド半導体素子31とローサイド半導体素子32が交互にオンされる際において、ローサイド半導体素子32がオンすることにより
図2に矢印のような経路で電流が流れハイサイド半導体素子の駆動装置60においてブートストラップコンデンサ63が充電される。その後、
図3に示すように、ハイサイド半導体素子31がオンする際にハイサイド半導体素子の駆動装置60において充電されているブートストラップコンデンサ63の電荷でハイサイド半導体素子31(IGBT33)を駆動することができる。
【0030】
ハイサイド半導体素子41についても同様であり、v相アーム回路40のハイサイド半導体素子41とローサイド半導体素子42が交互にオンされる際において、ローサイド半導体素子42がオンすることによりハイサイド半導体素子の駆動装置70においてブートストラップコンデンサ73が充電される。その後、ハイサイド半導体素子41がオンする際にハイサイド半導体素子の駆動装置70において充電されているブートストラップコンデンサ73の電荷でハイサイド半導体素子41(IGBT43)を駆動することができる。
【0031】
ハイサイド半導体素子51についても同様であり、w相アーム回路50のハイサイド半導体素子51とローサイド半導体素子52が交互にオンされる際において、ローサイド半導体素子52がオンすることによりハイサイド半導体素子の駆動装置80においてブートストラップコンデンサ83が充電される。その後、ハイサイド半導体素子51がオンする際にハイサイド半導体素子の駆動装置80において充電されているブートストラップコンデンサ83の電荷でハイサイド半導体素子51(IGBT53)を駆動することができる。
【0032】
次に、パワースイッチ230がオン操作されたタイミングで行われるコネクタ210の挿抜、即ち、コネクタ210を構成する一対の接続部211,212が差し込まれた状態なのか抜かれた状態なのかの判定処理について説明する。
【0033】
図4に示すように、車載用インバータ21にコネクタ210を介して高電圧電源200が接続されている場合において、システムメインリレー250がオフ(開路)されている。パワースイッチ230のオンに伴いマイコン110はDC/DCコンバータ66を起動して12Vを15Vにして送出させる。
【0034】
これにより、内部電源65からDC/DCコンバータ66を介して
図4に矢印のような経路で電流が流れ、平滑コンデンサ90には、ブートストラップコンデンサ63,73,83及びハイサイド半導体素子31,41,51を介してリーク電流が供給される。また、コネクタ210を介して車両側のコンデンサ240にもリーク電流が供給される。
【0035】
マイコン110は、電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voの変化によってコネクタ210の結合の有無であるコネクタ210の挿抜を判定する。
【0036】
詳しくは、マイコン110は、内部電源65からDC/DCコンバータ66を介して平滑コンデンサ90にリーク電流の供給が開始されてから、即ち、内部電源65からDC/DCコンバータ66を介した平滑コンデンサ90への電流の供給が開始されてから、一定時間T1(後述する
図7参照)が経過したときにおける、電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否かによりコネクタ210の挿抜を判定する。
【0037】
図5に示すように、コネクタ210がオープンしている場合において、パワースイッチ230のオン操作に伴いマイコン110はDC/DCコンバータ66を起動して12Vを15Vにして送出すると、
図5に矢印で示すように、平滑コンデンサ90にのみ、ブートストラップコンデンサ63,73,83及びハイサイド半導体素子31,41,51を介してリーク電流が供給される。マイコン110は、電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否かによりコネクタ210の挿抜を判定する。
【0038】
マイコン110は、
図6に示す処理を実行する。
図6の処理は、パワースイッチ230のオン操作で起動される。
マイコン110はステップS100で起動してステップS101で初期化処理し、ステップS102で車両ECU220との通信によりシステムメインリレー250が開いていることを確認した上でステップS103で一定時間T1(
図7参照)が経過すると、ステップS104で電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否か判定し、平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上であるとステップS105でコネクタ210がオープンと判定して車両ECU220にその旨を通知する。車両ECU220は、コネクタ210がオープンであると、警告を行う。例えば、警告灯を点灯させてその旨をユーザ(例えば運転者等の乗員)に知らせる。
【0039】
また、ステップS104において、電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値未満であるとコネクタ210に抜けがなく正常であるとして通常のインバータ制御(ベクトル制御)が行われる。
【0040】
図7において、横軸に時間をとり、縦軸に平滑コンデンサ90の両端電圧Voをとっている。パワースイッチ230のオンから一定時間T1(例えば1秒)が経過したときの平滑コンデンサ90の両端電圧Voの検知によりコネクタ接続とコネクタオープンとを区別できる。
【0041】
図8には、コネクタオープン時のブートストラップコンデンサ63,73,83の静電容量C1(
図5参照)と、平滑コンデンサ90の静電容量C2(
図5参照)と、の関係を示しており、並列接続されたブートストラップコンデンサ63,73,83と、平滑コンデンサ90とは、直列接続される。
【0042】
これにより、平滑コンデンサ90の両端電圧Voは、DC/DCコンバータ66からの入力電圧をVinとすると、次のようになる。
Vo={3・C1/(3・C1+C2)}・Vin
図9には、コネクタ接続時のブートストラップコンデンサ63,73,83の静電容量C1(
図4参照)と、平滑コンデンサ90の静電容量C2(
図4参照)と、車両側のコンデンサ240の静電容量C3(
図4参照)と、の関係を示しており、並列接続されたブートストラップコンデンサ63,73,83と、平滑コンデンサ90とは直列接続されるとともに、平滑コンデンサ90と車両側のコンデンサ240とは並列接続される。
【0043】
これにより、平滑コンデンサ90の両端電圧Voは、DC/DCコンバータ66からの入力電圧をVinとすると、次のようになる。
Vo={3・C1/(3・C1+C2+C3)}・Vin
このように、高電圧コネクタの脱着を確認するための回路を追加することなく、また、電流センサを使用することなく高電圧コネクタ210の脱着を確認することができる。
【0044】
つまり、
図8、
図9でのグランドと入力電圧Vinとの間における平滑コンデンサ90の両端電圧Voをモニタして、平滑コンデンサ90の両端電圧Voが、接続される静電容量によって変化することを利用することにより、コネクタの挿抜を判定するための専用のセンサ等が不要になる。
【0045】
詳しくは、
図4、
図5に示すように、DC/DCコンバータ66の出力端子(15V)→ブートストラップコンデンサ63,73,83→ハイサイド半導体素子31,41,51のダイオード34,44,54の経由で、フィルタ用の平滑コンデンサ90に充電する際に、コネクタオープン時は、内部電源65のDC/DCコンバータ66を介したリーク電流によって平滑コンデンサ90に充電される。このときの挙動がコネクタ接続時とは異なることを利用して判定できる。
【0046】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)車載用インバータ21の制御装置22の構成として、電動コンプレッサ10のモータ20を制御する車載用インバータ21が電源としての高電圧電源200に対しコネクタ210を介して接続されている。制御装置22は、ハイサイド半導体素子31,41,51及びローサイド半導体素子32,42,52を有するアーム回路30,40,50の駆動に用いられる半導体素子の駆動装置60,70,80を有する。駆動装置60,70,80は、ハイサイド半導体素子31,41,51を駆動するハイサイド駆動回路61,71,81と、ローサイド半導体素子32,42,52を駆動するローサイド駆動回路62,72,82と、ハイサイド半導体素子31,41,51のゲート駆動用のブートストラップコンデンサ63,73,83と、を有する。車載用インバータ21は平滑コンデンサ90を有し、平滑コンデンサ90は、制御装置22が有する内部電源65によりブートストラップコンデンサ63,73,83及びハイサイド半導体素子31,41,51を介してリーク電流が供給される。制御装置22は、平滑コンデンサ90の両端電圧Voを検出する電圧センサ100と、電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voの変化によってコネクタ210の挿抜を判定する挿抜判定部としてのマイコン110と、を備える。よって、電流検出手段と負荷抵抗を用いることなく簡単な構成にて高電圧電源200に接続するコネクタ210の挿抜を判定することができる。
【0047】
(2)挿抜判定部としてのマイコン110は、内部電源65からDC/DCコンバータ66を介して平滑コンデンサ90にリーク電流の供給が開始されてから一定時間T1が経過したときにおける、電圧センサ100によって検出された平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否かによりコネクタ210の挿抜を判定する。よって、容易にコネクタ210の挿抜を判定することができる。
【0048】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 上記実施形態では
図7に示すように内部電源65から平滑コンデンサ90にリーク電流の供給が開始されてから一定時間が経過したときにおける平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否かでコネクタ210の挿抜を判定した。これに代わり、内部電源65からDC/DCコンバータ66を介してリーク電流が平滑コンデンサ90に供給されることによる
図7に示すように平滑コンデンサ90の両端電圧Voの上昇の際の傾きθの大きさが閾値以上か否かでコネクタ210の挿抜を判定してもよい。つまり、平滑コンデンサ90の両端電圧Voの上昇の際の傾きθが閾値よりも小さければ正常であり、平滑コンデンサ90の両端電圧Voの上昇の際の傾きθが閾値よりも大きいと抜けが発生したと判定する。
【0049】
内部電源65から平滑コンデンサ90にリーク電流の供給が開始されてから一定時間が経過したときにおける平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否かでコネクタ210の挿抜を判定する場合と、内部電源65からリーク電流が平滑コンデンサ90に供給されることによる平滑コンデンサ90の両端電圧Voの上昇の際の傾きθの大きさが閾値以上か否かでコネクタ210の挿抜を判定する場合とを対比する。内部電源65から平滑コンデンサ90にリーク電流の供給が開始されてから一定時間が経過したときにおける平滑コンデンサ90の両端電圧Voが閾値以上か否かでコネクタ210の挿抜を判定する場合においては、判定のための処理負荷を軽くでき、容易に判定することができる。内部電源65からリーク電流が平滑コンデンサ90に供給されることによる平滑コンデンサ90の両端電圧Voの上昇の際の傾きθの大きさが閾値以上か否かでコネクタ210の挿抜を判定する場合においては、短時間にコネクタ210の挿抜を判定することができる。
【0050】
○ ハイサイド半導体素子及びローサイド半導体素子は、IGBTと、IGBTに対し逆並列接続されたダイオードで構成したが、これに代わり、ハイサイド半導体素子及びローサイド半導体素子は、例えば、MOSトランジスタと寄生ダイオードで構成してもよい。この場合には、MOSトランジスタのソースにブートストラップコンデンサが接続されることになる。
【符号の説明】
【0051】
10…電動コンプレッサ、20…モータ、21…車載用インバータ、22…制御装置、30,40,50…アーム回路、31,41,51…ハイサイド半導体素子、32,42,52…ローサイド半導体素子、60,70,80…半導体素子の駆動装置、61,71,81…ハイサイド駆動回路、62,72,82…ローサイド駆動回路、63,73,83…ブートストラップコンデンサ、65…内部電源、90…平滑コンデンサ、100…電圧センサ、110…マイコン、200…高電圧電源、210…コネクタ、T1…一定時間、Vo…平滑コンデンサの両端電圧。