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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20230301BHJP
   A01G 25/09 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A01C11/02 302C
A01G25/09 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020119339
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022016068
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】大久保 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田崎 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
【審査官】大塚 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-030434(JP,A)
【文献】特開2020-065517(JP,A)
【文献】特開2013-090608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00-14/00
A01G 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前進走行方向に対する左右に左右一対の駆動輪(11L,11R)を有する走行車体(2)と、
前記走行車体(2)に設けられ、苗を圃場に植え付ける複数の苗植付装置(4A,4B)と、
前記走行車体(2)に設けられ、前記複数の苗植付装置(4A,4B)に苗を左右方向に長い楕円状の循環移動経路内で搬送して供給する苗供給装置(3)と、
前記走行車体(2)の前記苗供給装置(3)を挟んで前後の位置に設けられる前側のフロアステップ(15A)および後側のフロアステップ(15B)と、
前記前側のフロアステップ(15A)および後側のフロアステップ(15B)上に設けられ、前記苗供給装置(3)に苗を補給する作業を行う作業者が座る2つの作業座席(6A,6B)と、
を備え、
前記複数の苗植付装置(4A,4B)は、前記苗供給装置(3)の下方において前後方向および左右方向にそれぞれずらした位置に分けて配置する前方の苗植付装置(4A)および後方の苗植付装置(4B)として構成されており、
前記2つの作業座席(6A,6B)は、前記苗供給装置(3)を挟んだ前後の位置に分けて配置するとともに互いに前記苗供給装置(3)に向いて座るようにした前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)として構成されており、
前記前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)は、左右方向の相反する方向にずらした位置に配置されていることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記前方の苗植付装置(4A)は、前記前側の作業座席(6A)よりも前記苗供給装置(3)の循環移動方向(Tr)の下手側に配置されており、
前記後方の苗植付装置(4B)は、前記後側の作業座席(6B)よりも前記苗供給装置(3)の循環移動方向(Tr)の下手側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記前側のフロアステップ(15A)および後側のフロアステップ(15B)の上方であって前記前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)の左右方向にずらした方向とは反対側になる側方位置に、前記苗供給装置(3)に補給する苗を置く前側の苗置き台(7A)および後側の苗置き台(7B)を、前記側方位置を開放させるよう退避する位置に変位可能に配置し、
前記前側のフロアステップ(15A)のうち前記側方位置に相当する前端部分(15Aa)と前記後側のフロアステップ(15B)のうち前記側方位置に相当する後端部分(15Bb)に、前記作業者が乗降するときに用いる前側の乗降ステップ(20A)と後側の乗降ステップ(20B)を設けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の移植機。
【請求項4】
前記走行車体(2)における前記駆動輪(11L,11R)は、その軸線(J)が、前記前方の苗植付装置(4A)および後方の苗植付装置(4B)の前後方向における中央位置を通過するように配置されており、
前記走行車体(2)における前記駆動輪(11L,11R)の前後の位置でかつ前記前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)の各下方の近い位置に、圃場に接触して転動する左右一対の前側の転輪(21L,21R)および後側の転輪(22L,22R)を設けていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項5】
前記前側の転輪(21L,21R)は、前記走行車体(2)に対して走行伝動ケース(18L,18R)を介して上下方向に回動可能に設けられる前記駆動輪(11L,11R)の上下動に連動して上下方向に回動する前側転輪支持アーム(23)を介して設けられており、
前記後側の転輪(22L,22R)は、上下方向に伸縮する後側転輪支持アーム(25)と前記後側転輪支持アーム(25)を下方に付勢する付勢部材(26)とを介して設けられていることを特徴とする請求項に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の苗を圃場に移植する移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用型の移植機としては、例えば、以下の特許文献に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、圃場に接地して転動する転輪と走行伝動ケースから伝動される動力により回転駆動する駆動輪とを有する走行車体の後部に、苗供給装置とその下方に苗植付装置を設ける一方で、その走行車体の前側に作業者が苗供給装置に向くよう後ろ向きで座る1つの作業座席を設けた移植機が記載されている。
また特許文献2には、前輪と駆動輪の後輪とを有する走行車体の後部に左右の苗供給装置と左右の苗植付装置を設け、また左右の苗供給装置の各前側で且つ一部が走行車体の外側になる位置に作業者が左右の苗供給装置を互いに斜め後ろ向きでかつ内側を向いてそれぞれ座る左右一対の2つの作業座席を設けた移植機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-122999号公報
【文献】特開2011-36266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の移植機は、1つの作業座席に座る一人の作業者が前進走行方向に背を向けて後方を向いて作業することになるので、前方の移植先になる畝の状態(崩れや障害物の有無、畝の終端:畝端までの残り距離等)を確認するためには作業者が背後に(前方に)振り向いた姿勢になる必要がある。このため、その振り向いたときの作業者がタイミングを逃して苗供給装置に苗を苗収容カップ内に投入して補給することができない補給(投入)ミスが生じて苗の植え付けが行われない欠株が発生しやすくなるという問題がある。
また、この移植機は、一人乗りのタイプであって一人の作業者が作業を行う必要があるので、苗の確実な植え付けを行う観点から作業速度を抑制せざるを得ず、移植の作業能率の向上を図りにくいという問題もある。
【0006】
これに対して、特許文献2に記載の移植機は、2人乗りのタイプであって二人の作業者が作業をすることになるので、一人の作業者が作業を行う場合に比べると作業者一人当たりの作業量を減らすことが可能になって、苗を植える条数を多くする多条化や植え付け時の作業速度の高速化を図ることも可能になり、その結果、移植の作業能率の向上を図ることができる。
【0007】
ところが、特許文献2に記載の移植機においては、左右一対の2つの作業座席にそれぞれ座る左右の作業者がいずれも内側の斜め後方を向くことになるので、互いに後方の状態を確認することは大幅に振り向いた姿勢で見る必要がないものの、例えば左右一方の作業者が振り向いて前方を見る確認を行った場合、その前方を振り向いて見た作業者は、もう一方の作業者に比べると、苗の補給ミスを生じる可能性が高くなり欠株を誘発させるおそれがあるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、作業中に前進走行方向の前方および後方の確認を行う必要があるときでも作業者が振り向いた姿勢で確認を行う必要がなく、苗の補給作業や移植作業等の作業を効率よく行うことができる移植機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、
前進走行方向に対する左右に左右一対の駆動輪(11L,11R)を有する走行車体(2)と、
前記走行車体(2)に設けられ、苗を圃場に植え付ける複数の苗植付装置(4A,4B)と、
前記走行車体(2)に設けられ、前記複数の苗植付装置(4A,4B)に苗を左右方向に長い楕円状の循環移動経路内で搬送して供給する苗供給装置(3)と、
前記走行車体(2)の前記苗供給装置(3)を挟んで前後の位置に設けられる前側のフロアステップ(15A)および後側のフロアステップ(15B)と、
前記前側のフロアステップ(15A)および後側のフロアステップ(15B)上に設けられ、前記苗供給装置(3)に苗を補給する作業を行う作業者が座る2つの作業座席(6A,6B)と、
を備え、
前記複数の苗植付装置(4A,4B)は、前記苗供給装置(3)の下方において前後方向および左右方向にそれぞれずらした位置に分けて配置する前方の苗植付装置(4A)および後方の苗植付装置(4B)として構成されており、
前記2つの作業座席(6A,6B)は、前記苗供給装置(3)を挟んだ前後の位置に分けて配置するとともに互いに前記苗供給装置(3)に向いて座るようにした前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)として構成されており、
前記前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)は、左右方向の相反する方向にずらした位置に配置されていることを特徴とする移植機である。
【0011】
請求項に記載の発明は、上記請求項1に記載の移植機において、前記前方の苗植付装置(4A)は、前記前側の作業座席(6A)よりも前記苗供給装置(3)の循環移動方向(Tr)の下手側に配置されており、前記後方の苗植付装置(4B)は、前記後側の作業座席(6B)よりも前記苗供給装置(3)の循環移動方向(Tr)の下手側に配置されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項に記載の発明は、上記請求項1又は2に記載の移植機において、前記前側のフロアステップ(15A)および後側のフロアステップ(15B)の上方であって前記前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)の左右方向にずらした方向とは反対側になる側方位置に、前記苗供給装置(3)に補給する苗を置く前側の苗置き台(7A)および後側の苗置き台(7B)を、前記側方位置を開放させるよう退避する位置に変位可能に配置し、前記前側のフロアステップ(15A)のうち前記側方位置に相当する前端部分(15Aa)と前記後側のフロアステップ(15B)のうち前記側方位置に相当する後端部分(15Bb)に、前記作業者が乗降するときに用いる前側の乗降ステップ(20A)と後側の乗降ステップ(20B)を設けていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項に記載の発明は、上記請求項1ないしのいずれか1項に記載の移植機において、前記走行車体(2)における前記駆動輪(11L,11R)は、その軸線(J)が、前記前方の苗植付装置(4A)および後方の苗植付装置(4B)の前後方向における中央位置を通過するように配置されており、前記走行車体(2)における前記駆動輪(11L,11R)の前後の位置でかつ前記前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)の各下方の近い位置に、圃場に接触して転動する左右一対の前側の転輪(21L,21R)および後側の転輪(22L,22R)を設けていることを特徴とするものである。
【0016】
請求項に記載の発明は、上記請求項に記載の移植機において、前記前側の転輪(21L,21R)は、前記走行車体(2)に対して走行伝動ケース(18L,18R)を介して上下方向に回動可能に設けられる前記駆動輪(11L,11R)の上下動に連動して上下方向に回動する前側転輪支持アーム(23)を介して設けられており、前記後側の転輪(22L,22R)は、上下方向に伸縮する後側転輪支持アーム(25)と前記後側転輪支持アーム(25)を下方に付勢する付勢部材(26)とを介して設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、前側の作業座席(6A)に座る作業者は後方を向いた姿勢で作業することになりかつ後側の作業座席(6B)に座る作業者は前方を向いた姿勢で作業することになるので、作業中に前進走行方向の前方および後方の確認を行う必要があるときでも作業者が振り向いた姿勢で確認を行う必要がない。
これにより、この発明によれば、例えば、振り向いた姿勢になることに起因した補給ミスや欠株の発生が抑制され、また作業中における前側および後側の確認で得られる情報に基づく必要な対処が適切に行われるようになり、その結果として、苗の補給作業や移植作業等の作業を効率よく行うことができる。
また、請求項1に記載の発明によれば、例えば前側の作業座席(6A)に座る前側の作業者と後側の作業座席(6B)に座る後側の作業者どうしの視界が相手の存在により塞がれるおそれがなくなり、後方の確認と前方の確認をそれぞれ支障なく容易に行えるようになり、これにより、苗の補給作業や移植作業等の作業をより効率よく行うことができる。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、例えば前側の作業座席(6A)における苗の補給開始可能位置から前方の苗植付装置(4A)に対する苗の供給位置までの苗の移動距離と後側の作業座席(6B)における苗の補給開始位置から後方の苗植付装置(4B)に対する苗の供給位置までの苗の移動距離とが確保されるようになり、これにより、苗の投入等の補給作業を余裕をもって行うことができ、補給ミスによる欠株の発生を確実に抑制することができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、例えば前側の作業座席(6A)や後側の作業座席(6B)への乗り降りをする場合、前側の苗置き台(7A)や後側の苗置き台(7B)を前側の作業座席(6A)又は後側の作業座席(6B)の各側方位置を開放するように退避する位置に変位させると、前側の作業座席(6A)と前側の乗降ステップ(20A)の間や後側の作業座席(6B)と後側の乗降ステップ(20B)との間に作業者が移動する通路(空間)がそれぞれ確保されるようになり、これにより、作業者が前側の作業座席や後側の作業座席に対する乗り降りがしやすくなり、作業効率の向上の一助になる。
【0023】
請求項に記載の発明によれば、例えば走行車体が左右一対の駆動輪(11L,11R)、前側の転輪(21L,21R)および後側の転輪(22L,22R)による計6輪で圃場に接触して支えられるようになり、これにより、走行車体(2)の前側や後側に重量負荷がかかっても対抗して走行車体(2)の前後方向や左右方向に傾斜することが抑制され、苗の植付姿勢が安定しやすくなる。
【0024】
請求項に記載の発明によれば、例えば前側の転輪(21L,21R)の上下位置が駆動輪(11L,11R)の上下位置に連動して調整されるようになり、これにより、前側の転輪(21L,21R)と駆動輪(11L,11R)を下方に移動させてその4輪で走行車体(2)を支える状態にすれば旋回操作を容易に行うことができ、次の植付作業に効率よく移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態に係る移植機を示す左側面図である。
図2図1の移植機を示す上面図である。
図3図1の移植機の使用状態の一例を示す左側面図である。
図4図1の移植機の使用状態の一例を示す上面図である。
図5図1の移植機の作業準備段階や乗降時の状態の一例を示す上面図である。
図6図1の移植機の旋回時等における状態の一例を示す左側面図である。
図7】(A)は作業座席の構造を示す側面図、(B)は(A)の作業座席の背面図である。
図8】(A)は作業座席の引っ掛け止めプレートによる非固定時の状態の一例を示す背面図、(B)は(A)の作業座席の引っ掛け止めプレートによる固定時の状態の一例を示す背面図である。
図9】(A)は引っ掛け止めプレートの他の構成例を示す要部概要図、(B)は(A)の引っ掛け止めプレートの別の構成例を示す要部概要図である。
図10】(A)は間隙保持部材の非使用時の状態の一例を示す側面図、(B)は(A)の間隙保持部材の使用時の状態の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
本実施の形態に係る移植機1は、図1に示されるように、野菜等の苗を圃場100に移して植え付ける乗用型の移植機である。
この移植機1は、図1図2に示されるように、左右一対の駆動輪11L,11Rを有する走行車体2と、苗200を圃場100の畝102に植え付ける複数(本例では2つ)の苗植付装置4A,4Bと、2つの苗植付装置4A,4Bに苗200を搬送して供給する苗供給装置3と、苗供給装置3に苗200を補給する作業を行う作業者が座る2つの作業座席6A,6Bとを備えている。
【0028】
実際、移植機1は、左右の駆動輪11L,11R等によって圃場100の畝102を跨いで畝溝101上を前進走行しながら、苗供給装置3および苗植付装置4A,4Bを作動させるとともに2つの作業座席6A,6Bに座る二人の作業者が苗補給等の作業を行うことによって苗を畝102に植え付けるようになっている。図2等では便宜上、駆動輪11L,11Rが一部断面で示されている。
本明細書等においては、移植機1が前進走行する方向に向かったときの左右の方向を左(L)、右(R)といい、また移植機1の前進する方向を前、その前進する方向とは逆の方向を後という。
【0029】
走行車体2は、前後方向に所要の形状をなして延びるフレーム10の前端部にエンジン12が搭載され、そのフレーム10の後端部に操縦ハンドル13が設けられている。
エンジン12は、2つの作業座席6A,6Bのうち前側にある(前側の)作業座席6Aの下方に存在するよう配置されている。これにより、エンジン12は、走行車体2の前側寄りに配置されることになって、走行車体2の前方や側方等の空きスペースからエンジン12に接近しやすくなるので、エンジン12のメンテナンス作業が行いやすくなる。
【0030】
また、操縦ハンドル13は、例えば左右の後方に延びる左右一対のハンドル部13a,13bで構成されており、移植機1の操作者(通常、上記作業者になる)が走行車体2の後方を歩きながらハンドル部13a,13bのグリップ部をそれぞれ握って走行車体2の操向操作を行うように使用される。この操縦ハンドル13は、後述する後側の作業座席6Bよりも走行車体2の後方側(最後尾)で突出する状態で設けられている。
さらに、操縦ハンドル13は、ハンドル部13a,13bの間に挟まれた位置に、各種の操作レバーやスイッチ、制御装置、表示部等の部品が配置されて構成された操作ユニット14が設けられている。また、ハンドル部13a,13bのグリップ部には、主に旋回(信地旋回)操縦時に使用するサイドクラッチ切りレバー14rが設けられている。
【0031】
また、走行車体2は、フレーム10の上側で駆動輪11(又は苗供給装置3)を挟んだ前後の位置に、前側のフロアステップ15Aと後側のフロアステップ15Bが設けられている。
2つのフロアステップ15A,15Bは、例えば板状の部材からなるものである。前側のフロアステップ15Aは、その一部からエンジン12の上部を突出させた状態で搭載するため、その一部になる部分が開口部として形成されている。
【0032】
さらに、走行車体2は、フレーム10の下側で前側のフロアステップ15Aの下方になる位置に、エンジン12の回動動力を所要の回転速度、回転方向等の条件に変換する変速機、クラッチ機構等の伝動機構が内部に配置されたミッションケース16が設けられている。
ミッションケース16の左右の側面部には、左右方向に向けて2つのフロアステップ15A,15Bの左右の各端部よりも外側の位置までそれぞれ突出する左右の駆動軸が内蔵された左右のアクスルケース17L,17Rが設けられている。左右のアクスルケース17L,17Rは、畝102の畝幅に対応して左右に伸縮調整可能に設けられている。左右のアクスルケース17L,17Rの外側になる各端部には、左右の駆動輪11L,11Rに回転動力をチェーン式の伝動機構により伝達する前後に長い左右の走行伝動ケース18L,18Rが回動可能に取り付けられている。また、左右の走行伝動ケース18L,18Rは、前側の端部が左右のアクスルケース17L,17Rを回動支点にして回動可能になっており、また、その後側の端部には車軸11aを介して駆動輪11L,11Rがそれぞれ取り付けられている。
【0033】
また、移植機1は、図1に示されるように、左右の走行伝動ケース18L,18Rを上下回動させて左右の駆動輪11L,11Rを上下動させて所要の高さに調節する上下動機構19が設けられている。また、移植機1は、圃場100の畝102に接触して畝102の高低を検出する図示しないセンサ板等の検出具を備えている。
【0034】
このうち上下動機構19は、従来公知の機構が採用されるが、例えば、走行伝動ケース18L,18Rの前側の端部に突出させて設ける左右の揺動ロッド19aを連結材19bで連結するとともに、その連結材19bの左右の中央部分に一端部をフレーム10に回動可能に設けた昇降用油圧シリンダ19cのピストンロッドを回動可能に連結してなる機構である。上下動機構19には、連結材19bを左右方向において前後方向に位置の微調整をする図示しない左右水平制御用油圧シリンダが設けられている。
【0035】
移植機1では、上下動機構19の昇降用油圧シリンダ19cが伸縮して作動することにより、昇降用油圧シリンダ19cの伸縮に応じて動く連結材19bから動力を得て左右の走行伝動ケース18L,18Rが左右のアクスルケース17L,17Rを回動支点にして上下動するよう回動し、左右の駆動輪11L,11Rが同じ方向に同じ量だけ走行車体2に対して昇降する状態になる。これにより、移植機1の車高が調整される。
また移植機1では、そのセンサ板等の検出具の検出結果に応じて上下動機構19における図示しない左右水平制御用油圧シリンダの作動が自動で制御されて、走行車体2が畝102の面に対してほぼ水平の姿勢に保たれる。これにより、苗の植付け深さが一定に保たれるようになっている。
【0036】
苗供給装置3は、図1図2に示されるように、苗200を上方から受け入れて内側に苗200を収容する複数の苗収容カップ31と、その複数の苗収容カップ31を左右の苗植付装置4A,4Bにおける各苗受け入れ位置の上方を通過するように循環移動させる移動機構32と、左右の苗植付装置4A,4Bにおける供給位置(苗受け入れ位置)で苗収容カップ31の底部を開放して収容している苗200を落下させて各苗植付装置4A,4Bに供給する図示しない苗落下解放機構とを備えている。
【0037】
苗収容カップ31は、底部(底蓋)が下方に回動して開閉する構造からなる円筒状の容器である。苗収容カップ31の個数は、任意に選定される。
移動機構32は、走行車体2のフレーム10の前後のほぼ中央になる位置で上方に立ち上がる支持フレーム33に、無端状の搬送チェーン34を左右方向に長い楕円状の循環移動経路をなす状態で周回するように配置し、その無端状の搬送チェーン34に複数の苗収容カップ31を一列状にほぼ等間隔で並べるよう保持している。
搬送チェーン34は、例えば2つの苗収容カップ31を保持する複数の保持体を互いに回動可能に連結してチェーン形態にしてなるものであり、複数のスプロケット35に回転可能に掛け回されている。また、そのスプロケット35は、ミッションケース16から出力される回転動力を伝動する駆動伝動軸36を介して回転動力が直接又は間接的に伝達されて回転駆動する。
苗供給装置3では、搬送チェーン34がスプロケット35から回転動力を得て所定の循環移動方向Trに所要の速度で回転し、これにより複数の苗収容カップ31を左右方向に長い楕円状の循環移動経路に沿って周回するよう移動させる。
【0038】
苗落下解放機構は、例えば、移動機構32で移動させられる苗収容カップ31が左右の苗植付装置4A,4Bにおける各苗受け入れ位置を通過する際に、苗収容カップ31の底部を閉じた状態に保持して案内する図示しない閉じガイド部から下方に回動させて開けるよう案内する図示しない開放ガイド部を作用させて、その各苗受け入れ位置を通過している間だけ開けた状態にさせる構造になっている。
【0039】
この苗供給装置3では、作業座席6A,6Bに座る作業者によって、後述する苗置き台(7A,7B)にある苗200が循環移動するよう搬送チェーン34によって周回する空の苗収容カップ31に移し替えるよう次々に投入されて補給される。また、苗供給装置3では、搬送チェーン34で搬送される苗収容カップ31が苗植付装置4A,4Bの上方の位置である各供給位置を通過する際に、その通過する苗収容カップ31の底部が開いた状態にされる。
これにより、苗供給装置3は、複数の苗収容カップ31に収容される苗200を、苗植付装置4A,4Bにそれぞれ落下させて供給する。
【0040】
2つの苗植付装置4A,4Bは、図1図2に示されるように、苗供給装置3の下方において前後方向および左右方向にそれぞれずらした位置に分けて配置した前方の苗植付装置4Aおよび後方の苗植付装置4Bとして構成されている。
【0041】
本実施形態では、前方の苗植付装置4Aが苗供給装置3における楕円状の循環移動経路の前側の経路内でかつその循環移動経路(又は走行車体2)の左右方向の中央よりも左側になる位置に配置されており、後方の苗植付装置4Bが苗供給装置3における楕円状の循環移動経路の後側の経路内でかつその循環移動経路(又は走行車体2)の左右方向の中央よりも右側になる位置に配置されている。
また、前方の苗植付装置4Aと後方の苗植付装置4Bは、左右方向の中央からほぼ同じ所要の間隔をあけた位置にそれぞれ配置されている。
【0042】
これにより、移植機1は、前方の苗植付装置4Aと後方の苗植付装置4Bの植え付け動作により、畝102に対して苗200を2条で植え付けることができる2条植えの構成になっている。
なお、前方の苗植付装置4Aと後方の苗植付装置4Bについては、前方の苗植付装置4Aを上記右側になる位置に配置する一方で、後方の苗植付装置4Bを上記左側になる位置に配置するよう構成することも可能である。
【0043】
苗植付装置4A,4Bはいずれも、苗200の受け入れと植え付けを行う先端が下方に向かうくちばし状の筒状体であって下端部が前後に開閉する構造からなる苗200の植付け体41と、その苗植付け体41の下端部が圃場100の畝102の表面よりも上方となる位置(供給位置又は苗の受け入れ位置)と畝102の表面よりも下方となる位置(苗の植え付け位置)とに苗植付け体41を通過させるよう上下動させる上下動機構42と、苗植付け体41の下端部が閉じて苗の受け入れる閉状態と苗植付け体41の下端部が前後に開いて苗を下方に放出する開状態にする図示しない開閉機構とを備えている。
【0044】
苗植付け体41は、下方が先細り状になる逆円錐形のごとき形状の部材を縦方向に沿って2分割したものを1組の部材として用い、その1組の部材をその下端が互いに離間および接近するよう左右に開閉動するよう支持フレームに取り付けたものである。この苗植付け体41は、前方の苗植付装置4Aの供給位置と後方の苗植付装置4Bの供給位置にほぼ相当する位置に上下動機構42によって配置される。
【0045】
上下動機構42は、走行車体2のフレーム10に取り付けられミッションケース16から回転動力が伝達される植付伝動ケース44の左右側部から苗植付装置4A,4Bにむけてそれぞれ延びて上記各位置を通過するよう曲線軌道を描いて動くよう設けられる駆動アームやリンクアームで構成されている。苗植付け体41は、その各リンクアームの自由端に取り付けられている。
開閉機構は、苗植付け体41の開閉支持部を開閉作動させる図示しない作動アームが連結されており、その作動アームが上下動機構42の動作と連動して所要のタイミングで開閉のために動くようカム機構を組み合わせて構成されている。
【0046】
この移植機1では、図2に示されるように、苗植付装置4A,4Bを前後左右にずらした位置に配置しているので、植付伝動ケース44を走行車体2の左右方向におけるほぼ中央部にまとめて配置することが可能になり、これにより、走行車体2の左右方向における重量バランスを向上させることに寄与することができる。
また、この移植機1では、そのほぼ中央部にまとめて配置する植付伝動ケース44では、左右方向に対の状態で複数台配置する植付伝動ケースに比べて走行車体2の左右方向における植付伝動ケースが占める面積を抑えることができ、移植機1全体の大型化が避けられる。さらに、植付伝動ケース44では、左右側部からの苗植付装置4A,4Bの各出代をほぼ同じにでき、例えば植付の条間の設定を単純化できる。
【0047】
苗植付装置4A,4Bでは、はじめに苗200の植え付け時期に合わせて、苗植付け体41を苗供給装置3における苗受け入れ位置でもある供給位置に接近させるよう上下動機構42により上昇移動させ、その供給位置で苗収容カップ31から落下される苗200を苗植付け体41の内部に受け入れる。
【0048】
続いて、苗植付装置4A,4Bでは、苗植付け体41を畝102にむけて下降するよう下方となる位置である苗の植え付け位置に達するまで上下動機構42により移動させて、苗植付け体41の下端部を畝102に所定の深さで突入させた後、その下端部を開閉機構により離間させて開いた状態にすることで苗200を畝102の土壌内に落下させて着地させる。これにより、苗200が畝102に植え付けられる。
しかる後、苗植付装置4A,4Bでは、植付作業が終了した苗植付け体41を、その下端部を接近させて閉じた状態にしながら上下動機構42により再び上昇するように開閉機構により移動させて元の位置に戻す。これ以後は、上記した一連の動作が同様に繰り返される。
【0049】
また、この苗植付装置4A,4Bには、図1に示されるように、苗植付け体41でそれぞれ植え付けられた各苗200の周辺における畝102の土壌をそれぞれ鎮圧する鎮圧装置48A,48Bが併設されている。
鎮圧装置48A,48Bは、苗植付装置4A,4Bにおける各苗植付け体41をそれぞれ左右から挟むように並んで設けられる一対の鎮圧輪で構成されている。鎮圧輪は、その下方で互いが接近するよう傾斜した姿勢で畝102に接触して従動回転するよう図示しない支持フレームに取り付けられている。
苗植付装置4A,4Bでは、この鎮圧装置48A,48Bにより苗周辺の土壌の鎮圧が行われ、これにより、植え付けられた各苗200が安定した状態に保たれる。
【0050】
2つの作業座席6A,6Bは、苗供給装置3を挟んだ前後の位置に分けて配置するとともに互いに苗供給装置3に向いて向かい合う状態で座るようにした前側の作業座席6Aおよび後側の作業座席6Bとして構成されている。
また、この作業座席6A,6Bについては、互いに走行車体2の左右方向における中央部になる位置に配置することもできるが、好ましくは、前側の作業座席(6A)および後側の作業座席(6B)が走行車体2の左右方向の相反する方向にずらした位置に配置している。
【0051】
本実施形態では、前側の作業座席6Aが苗供給装置3および前方の苗植付装置4Aよりも前側でかつ走行車体2の左右方向における中央部よりも右側になる位置に配置されており、後側の作業座席6Bが苗供給装置3および後方の苗植付装置4Bよりも後側でかつ走行車体2の左右方向における中央部よりも左側になる位置に配置されている。
また、前側の作業座席6Aと後側の作業座席6Bは、走行車体2の左右方向における中央部からほぼ同じ所要の間隔をあけた位置にそれぞれ配置されている。このときの前側の作業座席6Aと後側の作業座席6Bは、苗供給装置3を挟んで対角線上に配置されているともいえる。
【0052】
これにより、この移植機1では、図4に示されるように、前側の作業座席6Aに座る作業者300Aが後方を向いた姿勢で作業することになりかつ後側の作業座席6Bに座る作業者300Bが前方を向いた姿勢で作業することになるので、作業中に前進走行方向の前方および後方の確認を行う必要があるときでも作業者が振り向いた姿勢で確認を行う必要がなくなる。
しかも、この移植機1では、前側の作業座席6Aに座る前側の作業者と後側の作業座席6Bに座る後側の作業者どうしの視界が相手の存在により塞がれるおそれがなくなり、移植機1よりも後方の確認と移植機1よりも前方の確認をそれぞれ視認上の支障がなく容易に行えるようになる。
なお、前側の作業座席6Aと後側の作業座席6Bについては、前側の作業座席6Aを上記左側になる位置に配置する一方で、後側の作業座席6Bを上記右側になる位置に配置するよう構成することも可能である。
【0053】
作業座席6A,6Bはいずれも、座面部60の後部に背もたれ部61が設けられた構造の椅子で構成されている。前側の作業座席6Aは、背もたれ部61が前側に存在するよう配置されており、作業者が後方を向いた状態で座る座席になっている。また、後側の作業座席6Bは、背もたれ部61が後側に存在するよう配置されており、作業者が前方を向いた状態で座る座席になっている。
また、作業座席6A,6Bは、下端部が走行車体2のフレーム10に固定されてフロアステップ15A,15Bの上方にそれぞれ立ち上げられた各支持フレーム62A,62Bの上端部に取り付けられている。
【0054】
さらに、作業座席6A,6Bはいずれも、作業者の足元の空間を確保するために苗供給装置3と所要の間隔をあけた位置に配置されている。また、作業座席6A,6Bは、その足元となるフロアステップ15A,15Bに移植機1に関する必要最低限の操作を行うことができる図示しない操作ペダルが設けられており、また作業者の手が届く位置に図示しない操作レバー、操作スイッチ等の操作機器が配置されている。必要最低限の操作としては、例えば、移植機1の走行動作や植付作業の動作を開始および停止させる等の操作である。
作業座席6A,6Bの構造の詳細については、後述する。
【0055】
また、前側の作業座席6Aは、図2に示されるように、前方の苗植付装置4Aよりも苗供給装置3の循環移動方向Trの上手側に所要の距離をおいて配置されており、後側の作業座席6Bは、後方の苗植付装置4Bよりも苗供給装置3の循環移動方向Trの上手側に所要の距離をおいて配置されている。
これは、苗植付装置4A,4Bを基準にしてみると、前方の苗植付装置4Aが前側の作業座席6Aよりも苗供給装置3の循環移動方向Trの下手側に所要の距離をおいて配置されており、後方の苗植付装置4Bが後側の作業座席6Bよりも苗供給装置3の循環移動方向Trの下手側に所要の距離をおいて配置されていると言い換えることができる。
【0056】
これにより、この移植機1では、前側の作業座席6Aにおける苗200の苗収容カップ31内に投入による補給開始可能位置から前方の苗植付装置4Aに対する苗の供給位置までの苗の移動距離と後側の作業座席6Bにおける苗の補給開始位置から後方の苗植付装置4Bに対する苗の供給位置までの苗の移動距離とが確保されるようになる。
【0057】
また、移植機1においては、図1図2に示されるように、前側のフロアステップ15Aおよび後側のフロアステップ15Bの上方であって前側の作業座席6Aおよび後側の作業座席6Bの左右方向にずらした方向とは反対側になる側方位置に、苗供給装置3に補給する苗200を収容して置く前側の苗置き台7Aおよび後側の苗置き台7Bが配置されている。
【0058】
苗置き台7A,7Bは、苗を適宜並べて収容した苗収容箱又はトレイを置く1段又は複数段の棚を有する構造物である。これにより、苗置き台7A,7Bは、その棚に苗収容箱又はトレイが必要な数だけ置かれ、また必要なときに補充される。苗置き台7A,7Bは、作業座席6A,6Bに座る作業者が、苗置き台7A,7Bから苗200を取り出して苗供給装置3における苗収容カップ31に投入する苗200の補給作業がしやすい程度に要求される高さに配置される。
また、苗置き台7A,7Bは、図1図2に二点鎖線で例示されるように、作業座席6A,6Bの上記側方位置を開放させるよう退避する位置に変位可能に配置している。この苗置き台7A,7Bは、例えば、作業座席6A,6Bの支持フレーム62A,62Bに回動可能に設けた支持アーム73A,73Bの上端部に取り付けられており、作業者が手で回動操作することにより所望の位置に変位させることが可能な構造になっている。
【0059】
また、移植機1においては、図1図2に示されるように、前側のフロアステップ15Aおよび後側のフロアステップ15Bのうち前側の苗置き台7Aおよび後側の苗置き台7Bの上記側方位置に相当する前端部分15Aaおよび後端部分15Bbに、作業者が乗降するときに用いる前側の乗降ステップ20Aおよび後側の乗降ステップ20Bが設けられている。
本実施の形態では、前側の乗降ステップ20Aが前側の作業座席6Aの配置されている右側とは反対の左側になる位置に設けられており、後側の乗降ステップ20Bが後側の作業座席6Bの配置されている左側とは反対の右側になる位置に設けている。
この乗降ステップ20A,20Bは、例えば、作業者が足を載せて乗降を補助して安全性を確保できるものであれば、その形状等について特に制約されない。乗降ステップ20A,20Bは、フロアステップ15A,15Bが圃場100(畝溝101等)からの高低差が大きくなる場合であれば、その高低差を抑制することができるステップ構造にするとよい。
【0060】
この移植機1では、前側の作業座席6Aや後側の作業座席6Bへの乗り降りをする際、図1図2に二点鎖線で例示又は図5に示されるように、前側の苗置き台7Aや後側の苗置き台7Bを前側の作業座席6A又は後側の作業座席6Bの各側方位置を開放させるよう退避する位置に変位させることができる。また、そのように苗置き台7A,7Bを退避する位置に変位させると、前側の作業座席6Aと前側の乗降ステップ20Aの間や後側の作業座席6Bと後側の乗降ステップ20Bとの間に作業者が移動する通路(空間)がそれぞれ確保されるようになる。
【0061】
また、この移植機1においては、図2図4図5等に示されるとおり、前側の作業座席6Aの側方、即ち走行車体2の前寄りの右側と、後側の作業座席6Bの側方、即ち走行車体2の後寄りの左側にも、乗り降りが可能な空間部が形成されている。これにより、ぬかるみがある等のように圃場100の状態が悪く走行車体2の前後から乗り降りがし難い場所では、前後の作業座席6A,6Bの各側方からそれぞれ乗り降りすることも可能である。
この場合、前側の作業座席6Aの右側方の外側には走行伝動ケース18Rが配置されているが、標準的な移植機1では作業者が跨げる程度の左右幅であり、乗り降りに支障は生じない。また、走行伝動ケース18は機体の荷重や駆動輪11L,11Rの接地抵抗に耐えるべく強度の高い設計がなされているので、作業者が走行伝動ケース18を踏んで乗り降りしても走行伝動ケース18等に何ら支障はない。
【0062】
さらに、移植機1においては、図1図2に示されるように、前側の作業座席6Aおよび後側の作業座席6Bの左右方向にずらした方向とは反対側になる位置に、前方の苗植付装置4Aおよび後方の苗植付装置4Bで植え付けるときの各苗に灌水する水を溜めた水タンク85を載せ置く前側の水タンク載置台8Aおよび後側の水タンク載置台8Bが設けられている。
本実施の形態における水タンク載置台8A,8Bは、前側の水タンク載置台8Aが前側の作業座席6Aのずれた右側とは反対側になる左側の位置に配置され、後側の水タンク載置台8Bが後側の作業座席6Bのずれた左側とは反対側になる右側の位置に配置されている。
【0063】
水タンク載置台8A,8Bは、例えば、水タンク85を置いて保持するに足りる寸法および形状からなる載置収容部82を所要の数だけ設けた枠材ステーで構成されている。本実施の形態では、2つの載置収容部82を前後に並べた構成の水タンク載置台8A,8Bを採用している。また、前側の水タンク載置台8Aは前側のフロアステップ15Aの左側の端部に配置されており、後側の水タンク載置台8Bは後側のフロアステップ15Bの右側の端部に配置されている。
水タンク85としては、例えばポリエチレン製の容器であるポリタンク等が使用される。図1図2では、水タンク85を水タンク載置台8A,8Bに置いていない状態を示している。
【0064】
前側の水タンク載置台8Aと後側の水タンク載置台8Bは、図2図4に示されるように、前側の苗置き台7Aおよび後側の苗置き台8Bの前側の作業座席6Aおよび後側の作業座席6Bがある側とは反対側になる位置に設けられている。
【0065】
これにより、移植機1では、走行車体2の左右方向における重量バランスを、前側の作業座席6Aに座る作業者と前側の水タンク載置台8Aに載せ置く水タンク85Aとの間で高めることと、後側の作業座席6Bに座る作業者と後側の水タンク載置台8Bに載せ置く水タンク85Bとの間で高めることが可能になる。
【0066】
また、移植機1においては、苗植付装置4A,4Bによる苗の植え付け動作に連動させて、前側の水タンク載置台8Aと後側の水タンク載置台8Bに載せ置く水タンク85A,85Bの水を苗植付装置4A,4Bにおける各苗植付け体41内に受け入れた苗に所要の量ずつ供給する図示しない灌水装置が設けられている。灌水装置は、図示しないポンプ、必要な個所を接続する図示しないホースや放水ノズル等で構成されている。
【0067】
また、移植機1においては、図1図2に示されるように、走行車体2における駆動輪11L,11Rは、その軸線Jが前方の苗植付装置4Aおよび後方の苗植付装置4Bの前後方向における中央位置を通過するように配置されており、走行車体2における駆動輪11L,11Rの前後の位置でかつ前側の作業座席6Aおよび後側の作業座席6Bの各下方の近い位置に、圃場100に接触して転動する左右一対の前側の転輪21L,21Rおよび後側の転輪22L,22Rが設けられている。
【0068】
移植機1では、上記の構成を有することにより、走行車体2が左右一対の駆動輪11L,11R、前側の転輪21L,21Rおよび後側の転輪22L,22Rによる計6輪で圃場100(の畝溝101)に接触して支えられるようになる。これにより、走行車体2の前側や後側に重量負荷がかかっても対抗して走行車体2の前後方向や左右方向に傾斜することが抑制され、苗200の植付姿勢が安定しやすくなる。
【0069】
前側の転輪21L,21Rは、走行車体2に対して走行伝動ケース18L,18Rを介して上下方向に回動可能に設けられる駆動輪11L,11Rの上下動に連動して上下方向に回動する左右の前側転輪支持アーム23L,23Rを介して設けられている。前側転輪支持アーム23L,23Rは、走行車体2のフレーム10の一部に設ける軸部23aに上端部が回動可能に装着され、その下端部に車軸21aを介して前側の転輪21L,21Rが回転可能に取り付けられている。前側転輪支持アーム23L,23Rは、走行伝動ケース18L,18Rとリンク機構等の連動機構24L,24Rで接続されている。
これにより、前側の転輪21L,21Rは、その上下位置が駆動輪11L,11Rの上下位置の調整に連動して調整される。このため、前側の転輪21L,21Rを駆動輪11L,11Rの上下位置の調整に応じて別途調整する作業が不要になり、植付作業やその能率が向上する。
【0070】
後側の転輪22L,22Rは、上下方向に伸縮する後側転輪支持アーム25と後側転輪支持アーム25を下方に付勢するコイルスプリング等の付勢部材26とを介して設けられている。
これにより、後側の転輪22L,22Rは、圃場100の畝溝101に接触している間は、畝溝101の凹凸に追従して上下動することに加えて駆動輪11L,11Rの上下動の調節の動きに追従して上下動することができる。
【0071】
前側の転輪21L,21Rは、左右の側方から見たとき、可能な限り、前側の作業座席6A(の支持フレーム62A)のほぼ真下の位置に配置することが好ましい。また、後側の転輪22L,22Rは、左右の側方から見たとき、本実施の形態で採用しているように後側の作業座席6B(の支持フレーム62B)のほぼ真下の位置に配置することが好ましい。
前側の転輪21L,21Rと後側の転輪22L,22Rは、このような位置に配置すると、前側の作業座席6Aや後側の作業座席6Bからの荷重を受けやすくなり、圃場100の畝溝101に接地しやすくなって不要な浮き上がりが防止されるようになる。
【0072】
そして、このような構成からなる移植機1では、作業予定の圃場100に移動して移植の作業を始めるのに先立っては、図5に示されるように、前側の苗置き台7Aと後側の苗置き台7Bを回動させて前側の作業座席6Aの背面側と後側の作業座席6Bの背面側にそれぞれ退避させた状態にする。
【0073】
これにより、移植機1では、前側のフロアステップ15Aにおいて前側の乗降ステップ20Aから前側の作業座席6Aまで移動する通路(空間)が確保され、また後側のフロアステップ15Bにおいて後側の乗降ステップ20Bから後側の作業座席6Bまで移動する通路が確保され、苗置き台7A,7Bが乗降の移動の際に邪魔になることがない。この結果、作業者が圃場100からフロアステップ15A,15Bに上って各作業座席6A,6Bまで移動することや、各作業座席6A,6Bからフロアステップ15A,15Bの乗降ステップ20A,20Bまで移動することが容易にでき、効率のよい移動が可能になる。
【0074】
また乗降する作業者は、乗降ステップ20A,20Bが走行車体2の左右方向の端部に偏って配置されているので、走行車体2の前方又は後方の斜め方向に移動すれば、畝溝101に降りることができ、畝102を踏み崩すことがないようにすることができる。このことは、例えば、苗置き台7A,7Bへの苗200の補充や水タンク85への水の補充等の作業を行う必要があって植付作業の途中で降車しなければならないときに有効である。
【0075】
さらに、作業者は、図3から図5に示されるように、この状態において苗置き台7A,7Bに対して移植する苗の収容箱等をそれぞれ置いてセットすることや、水タンク載置台8A,8Bに対して灌水用の水タンク85を水タンク載置台8A,8Bにおける各載置収容部82にそれぞれ置いてセットすることを行うことができ、移植作業の準備作業を効率よく行うことができる。
【0076】
移植作業の準備作業が終了した後は、図3等に示されるように、前側の作業座席6Aや後側の作業座席6Bに二人の作業者300A,300Bがそれぞれ乗り込んで座った後、苗置き台7A,7Bを回動させて作業座席6A,6Bの各側方位置に変位させて苗の補給作業が可能な位置にセットされる(図3図4)。これにより、移植機1では、上記通路が苗置き台7A,7Bで塞がれた状態になり、作業者300A,300Bの不要な移動が制限されて安全性が確保される。
【0077】
準備作業が終了すると、苗200の植え付け作業が開始される。この際、移植機1は、図4等に示されるように、駆動輪11L,11Rをはじめ前側の転輪21L,21Rや後側の転輪22L,22Rを含む計6つの車輪が圃場100の畝溝101に接地して進むよう前進走行を開始するとともに、苗供給装置3や苗植付装置4A,4Bが所定のタイミングで始動する。
【0078】
この移植機1では、作業座席6A,6Bに座った二人の作業者300A,300Bが、その各作業座席6A,6Bにおいて苗置き台7A,7Bにある苗200を取り出した後に苗供給装置3の循環移動している複数の苗収容カップ31に投入して苗200の補給作業を行い、2つの苗植付装置4A,4Bにより苗供給装置3で搬送される苗200が各供給位置でそれぞれ供給された後、その苗200が圃場100の畝102に植え付けられる。
この際、各作業座席6A,6Bの一方の横(側方)に苗置き台7A,7Bがそれぞれ存在しているので、その各苗置き台7A,7Bから苗200を容易に取り出して目の前にある苗供給装置3における苗収容カップ31に効率よく次々と投入して補給することができる。
【0079】
また、この移植機1では、この苗200の各植え付けの際、苗植付装置4A,4Bの苗植付け体41において図示しない灌水装置から水タンク85A,85Bの水が送り出されて植え付け直前の苗200に所要の量ずつ灌水される。
この際、移植機1においては、水タンク載置台8A,8Bに置かれている水を蓄えた各水タンク85A,85Bが作業者300A,300Bのカウンターウエイトとして機能するので、走行車体2の左右方向における重量バランスの向上に寄与する。この結果、2条植えの各苗200の植付姿勢が左右に傾斜して乱れることが抑制される。
【0080】
そして、この移植機1においては、前側の作業座席6Aに座る作業者300Aが走行車体2の後方側を向いて作業することになるので、苗200の補給作業をしながらでも畝102に植え付けた苗200の植付状態を振り向いた姿勢になることなく自然かつ容易に確認することができ、しかも、後側の作業座席6Bに座る作業者300Bが走行車体2の前方側を向いて作業することになるので、苗200の補給作業をしながらでも移植機1の前方の様子(障害物の有無、畝の終端102eまでの残り距離等)を振り向いた姿勢になることなく自然かつ容易に確認することができる。
つまり、二人の作業者300A,300Bはいずれも、作業中に前進走行方向における前方および後方の確認を行う必要があるときでも振り向いた姿勢で確認を行う必要がないことになる。
【0081】
したがって、この移植機1では、二人の作業者300A,300Bが苗の補給作業に集中することができるので振り向いた姿勢になることに起因した補給ミスや欠株の発生が抑制され、また作業中における前側および後側の確認で得られる情報に基づく必要な対処が適切に行われるようになり、結果として、苗200の補給作業や移植作業等の作業を効率よく行うことができる。
【0082】
例えば、前側の作業座席6Aに座る作業者300Aは、畝102に対する苗200の植付状態を容易に確認することが可能になり、その植付状態に異常があればすぐに移植機1を止めて対応することができる。これによって、植付状態の乱れや欠株が発生することを抑制できるうえに、手作業による植え直しを減らすこともできる。
【0083】
一方、後側の作業座席6Bに座る作業者300Bは、前方における障害物の有無、畝の終端102eまでの残り距離等の前方の様子を容易に確認することが可能になり、前方の状況によってすぐに移植機を的確に止めて対応することができる。これによって、移植機1が畝102の植付可能な範囲を超えて無駄に走行することを防止することができ、畝の終端102eを超えた圃場100部分に苗200が空植えされて圃場100に落下して無駄になることを回避することができる。また、畝の終端102eに到着する前に植付作業を止めてしまうことが発生することも防止することができ、植付可能な残った畝部分への苗200の植付を手作業で別途行うことを回避することもできる。
【0084】
また、この移植機1では、前側の作業座席6Aと後側の作業座席6Bが走行車体2の前後方向のみでなく左右方向においてもずれた位置に配置されているので、前側の作業者300Aと後側の作業者300Bどうしの視界が相手の存在により塞がれるおそれがなくなり、後方の確認と前方の確認をそれぞれ支障なく容易に行えるようになる。このことによっても、苗200の補給作業や移植作業等の作業をより効率よく行うことができる。
【0085】
ちなみに、この移植機1においては、補給ミスが発生しそうになった場合でも、2つの作業座席6A,6Bに座った各作業者300A,300Bから苗供給装置3における各供給位置まで多少の距離があって余裕があるので、供給位置に達するまでに苗200を補足するよう投入するチャンスがあり苗200の投入ミスを挽回することができ、補給ミスと欠株の発生が抑制される。
【0086】
また、この移植機1では、走行車体2が、左右一対の駆動輪11L,11R、前側の転輪21L,21Rおよび後側の転輪22L,22Rによる計6輪で圃場100に接触して支えられるようになる。これにより、走行車体2の前側や後側に重量負荷がかかっても対抗して走行車体2の前後方向や左右方向に傾斜することが抑制され、苗200の植付姿勢が安定しやすくなる。
【0087】
さらに、この移植機1においては、1つの畝102の植え付け作業が終了して隣の畝102への植え付け作業を行うために旋回するに際しては、図6に示されるように、駆動輪11L,11Rを上下動機構19の作動により走行伝動ケース18L,18Rの下方に回動させることで最下位まで下げる。また、この駆動輪11L,11Rの最下位までに下げることに連動して前側の転輪21L,21Rも前側転輪支持アーム23L,23Rを介して下方に回動して下がる。
【0088】
この結果、移植機1は、図6に示されるように、駆動輪11L,11Rと前側の転輪21L,21Rの計4つの車輪で圃場100に接地した状態になる。この際、後側の転輪22L,22Rは、圃場100に対して浮いて非接触の状態になる。
しかる後、走行車体2の最後尾から突出する操縦ハンドル13を握って下方に押し下げると、走行車体2の全体が駆動輪11L,11Rを支点にして前側の転輪21L,21Rをてこの原理で容易に圃場100から浮き上がらせた状態にすることができ、これにより移植機1の安定した旋回を行うことができる。
このときの旋回は、操縦ハンドル13にある一方のサイドクラッチ切りレバー14rを握って左右一方のクラッチを切って駆動輪11の一方を非駆動の状態にして残りの他方の駆動輪11の駆動力を発揮させることで信地旋回を行えばよい。
【0089】
この移植機1における2つの作業座席6A,6Bは、以下の構造を採用している。
【0090】
作業座席6A,6Bはいずれも、図7に示されるように、座面部60の下面の前方寄りに設けた固定フレーム63が、各支持フレーム62A,62Bの上端部に固定して設けた2つの座席取付けステー64A,64Bの前端部に回動軸65を介して連結されているとともに、その回動軸65を回動支点にして可動可能に取り付けられている。
また、作業座席6A,6Bは、その使用時には作業者が座ることで、作業座席6A,6B全体が回動軸65を回動支点にして下方に下降し、座面部60の下面の後方端に設けた2つの脚66が座席取付けステー64A,64Bの各上面64aに突き当たることで最深の着座状態(位置)が定まるようになっている。
さらに、作業座席6A,6Bは、座面部60の下面の後方側部分に下方に向くよう設けた2本の固定ロッド67A,67Bを移動可能に貫通させる貫通孔を有するとともに座席取付けステー64の上面64aに突き当たるように移動し得る可動プレート68の上面と座面部60の下面との間に、クッション用のコイルスプリング69を介在させて座面部60が回動軸65を中心にして弾性的に上下動可能になって座席のクッション性を確保する構造になっている。
【0091】
そして、作業座席6A,6Bは、図7図8に示されるように、移植機1をトラック等の運搬車両に積載して移動する際に作業座席6A,6Bを固定した状態にするためのストッパとしての引っ掛け止めプレート9が設けられている。
【0092】
引っ掛け止めプレート9は、可動プレート68の左右方向におけるほぼ中央部に貫通孔を上下方向に通した可動ロッド93の下端部にナット94等の手段にて固定されている。また、可動ロッド93は、その上端部にコイルスプリング95を可動プレート68の上面に接触させた状態で嵌め入れた後に上端にスプリング抜け止め具(止めピン、止めピンの一端部に差し込むRピン等)96を取り付けられている。
これにより、引っ掛け止めプレート9は、可動ロッド93と共にコイルスプリング95のばね力に抗して下方に引き下げることが可能になっており、また可動ロッド93を中心にして回動可能にもなっている。
【0093】
また、引っ掛け止めプレート9は、図8(B)に示されるように、例えば、片側の座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eに接触して引っ掛ける引っ掛け部分91sを有する、片側の端部を上側に折り曲げた断面L字状の形状からなる板材91Aで構成されている。
特にこの板材91Aからなる板材91Aで引っ掛け止めプレート9を構成した場合は、部品を比較的小さくすることができるので、材料コストの低減化を図ることができる。また、この板材91Aからなる引っ掛け止めプレート9は、例えば、可動ロッド93の長さを短くする場合にも有効な形状の引っ掛け止めプレートとすることが可能であり、また板材の曲げ加工の工数を減らすことも可能になる。
【0094】
また、引っ掛け止めプレート9は、その引っ掛け部分91sと座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eとが接触する部分に緩衝部材97を設けている。緩衝部材97は、引っ掛け部分91sに固着するよう取り付けられるが、座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eに取り付けるようにしてもよい。緩衝部材97としては、例えば、ゴム、発泡体等の弾性部材が使用される。
【0095】
引っ掛け止めプレート9は、作業座席6A,6Bの使用時には、図8(A)に示されるように、引っ掛け部分91sを座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eに引っ掛けない状態にされる。これにより、作業座席6A,6Bの回動軸65を中心にした回動が可能な状態にする。
また、引っ掛け止めプレート9は、移植機1を運搬車両で移動して作業座席6A,6Bの非使用時には、図8(B)に示されるように引っ掛け部分91sを座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eに接触させて引っ掛けた状態にする。これにより、作業座席6A,6Bの回動軸65を中心にした回動ができない状態にする。
【0096】
この引っ掛ける際、引っ掛け止めプレート9は、手でつかんで図8(A)に示される状態からコイルスプリング95のバネ力に抗して下方に下げてから、可動ロッド93を中心にして例えば90°回転させて引っ掛け部分91sを座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eに向き合わせた状態にした後、手を離すように操作する。これにより、引っ掛け止めプレート9は、図8(B)に示されるように、コイルスプリング95のバネ力(白抜き矢印)により可動ロッド93とともに上方に移動させられるので、引っ掛け部分91sが座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eに緩衝部材97を介して強く押し当てられた状態で引っ掛けられる。
【0097】
この結果、作業座席6A,6Bは、回動軸65を回動支点にして回動することなく、固定された状態になる。また、作業座席6A,6Bが固定された状態で移植機1が運搬車両に積載されて移動する際に発生する振動が移植機1全体や作業座席6A,6Bにも伝わって不規則に動くことになる。このとき、引っ掛け止めプレート9の引っ掛け部分91sと座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eとの間は、緩衝部材97が介在することにより、その緩衝部材97がなく両者が直接接触し合う場合に比べて、摩耗や騒音の発生が防止もしくは抑制される。
したがって、緩衝部材97を設けていない場合には、運搬時の振動を受けて引っ掛け止めプレート9や可動ロッド93が破損する等の不具合が発生することがあったが、緩衝部材97を設けたことにより、その不具合の発生を回避することができる。
【0098】
ストッパとしての引っ掛け止めプレート9としては、図9に例示されるような形状のものを採用することができる。
【0099】
図9(A)に示す引っ掛け止めプレート9は、引っ掛け部分91sを凹部状の形状にした板材91Bで構成されたものである。この板材91Bからなる引っ掛け止めプレート9を採用した場合は、凹部状の引っ掛け部分91sが引っ掛ける対象の座席取付けステー64Bの内側の垂下板64dの下端部64eを2方向から囲む状態で引っ掛かることにより、運搬時の振動を受けても引っ掛け部分91sが座席取付けステー64Bの下端部64eから外れるおそれがなく、引っ掛かり状態を安定化させることができる。
図9(B)に示す引っ掛け止めプレート9は、図9(A)に示す引っ掛け止めプレート9における引っ掛け部分91sの反対側に、もう片方の座席取付けステー64Aにおける上部下面64kに接触させて引っ掛ける第2の引っ掛け部分91s2を増設したような形状からなる板材91Cで構成されたものである。この板材91Cからなる引っ掛け止めプレート9を採用した場合は、引っ掛け止めプレート9を2つの座席取付けステー64A,64Bに引っ掛けることができ、その引っ掛け状態をより強固に安定したものにすることができる。また、この場合も、図9(B)に示されるように、第2の引っ掛け部分91s2と座席取付けステー64Aにおける上部下面64kとの間に緩衝部材97を設けるようにするとよい。
【0100】
また、引っ掛け止めプレート9は、可動ロッド93への取り付けを溶接によって直接組み付けるようにしてもよい。この組み付けを採用した場合は、可動ロッド93下端部へのネジ切りやナット94が不要となり、部品点数と加工工数の低減化を図ることができる。
【0101】
この他、作業座席6A,6Bにおいては、図7(A)や図10に示されるように、作業者が着座すると、例えば片側の座席取付けステー64Bの内側に取り付けた押込み式のリミッタスイッチ27を、作業座席6A,6Bの固定フレーム63の後方部に下方に向けて突出させた状態で取り付けた接触プレート28の内側に屈曲させた形状の下端部により押す仕組みが採用されている。移植機1においては、このリミッタスイッチ27が押されて入り状態になると、作業者が着座したことを認識し、苗供給装置3や苗植付装置4A,4Bの作動が可能な状態に移行させるようになっている。
しかし、移植機1の運搬移動時には、上記したように作業座席6A,6Bが最下位まで下げられた状態で上記引っ掛け止めプレート9により固定された状態にされるので、接触プレート28がリミッタスイッチ27を押し続けることになり、また、その押す状態が続くことや運搬時に振動が加わることに伴い必要以上の負荷がかかり続けることでリミッタスイッチ27自体が破損してしまうことがある。
図7(A)や図10における符号64cは、接触プレート28の下端部が座席取付けステー64Bの内側に入り込んでリミッタスイッチ27と接触および離間するときの移動を可能にするために形成した開口部を示す。
【0102】
そこで、この移植機1においては、図10に示されるように、移植機1の運搬移動時に接触プレート28がリミッタスイッチ27を押し続けることを回避するための間隙保持部材29を採用している。
間隙保持部材29は、接触プレート28とリミッタスイッチ27が配置される側の座席取付けステー64Bに取り付けられるとともに座席取付けステー64Bの上面64aに載るよう内側に曲げられた上端曲げ部29aを有するL字形状の板材で構成されているものであって、作業座席6A,6Bの非使用時に、図10(B)に示されるように作業座席6A,6Bの脚66が突き当たる座席取付けステー64Bの上面64a部分に相当する位置に上端曲げ部29aを存在させるよう取り付けて使用するものである。この際、間隙保持部材29は、座席取付けステー64Bの側面に形成されるネジ孔64gに固定ネジ29nで締結することにより固定される。
【0103】
そして、この間隙保持部材29は、移植機1の運搬移動に伴う作業座席6A,6Bの非使用時に、間隙保持部材29を上記位置に取り付けられることにより、図10(B)に示されるように、その上端曲げ部29aが座席取付けステー64Bの上面64aと脚66の下面部との間に介在することになり、作業座席6A,6Bが上端曲げ部29aの厚みにほぼ相当する量だけ浮き上がった状態になる。これにより、作業座席6A,6Bは、その背もたれ部61がある後方部が回動軸65を中心にして持ち上げられた状態になるので、接触プレート28がリミッタスイッチ27から少し離れた状態(間隙が形成される状態)に保持される。
この結果、移植機1では、作業座席6A,6Bの非使用時に、接触プレート28がリミッタスイッチ27を押し続ける状態が発生することを防ぐことができる。
【0104】
また、間隙保持部材29は、作業座席6A,6Bの使用時には、図10(A)に示されるように、座席取付けステー64Bのうち脚66が突き当たらない退避位置に移動させるようになっている。この退避位置に移動した際、間隙保持部材29は、座席取付けステー64Bの側面の退避位置に形成される第2のネジ孔64gに固定ネジ29nで締結することにより固定された状態におかれる。
間隙保持部材29の上端曲げ部29aの厚さについては、移植機1の運搬移動に伴う作業座席6A,6Bの非使用時に、接触プレート28をリミッタスイッチ27から離すために要求される量に適合する値に設定される。また、上記引っ掛け止めプレート9の引っ掛け部分91sの寸法又は形状については、間隙保持部材29の上端曲げ部29aの厚さに応じて調整するとよい。
【0105】
なお、本発明は、上記実施の形態に係る移植機1の構成例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することが可能であることは言うまでもない。
例えば、移植機1は、2人乗りで4条植えの移植機として構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、例えば玉ねぎやレタスの野菜の苗の移植を行う苗移植機として有用であるが、他の種類の苗の移植に適した移植機として構成して適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 移植機
2 走行車体
3 苗供給装置
4A 前方の苗植付装置(複数の苗植付装置の一例)
4B 後方の苗植付装置(複数の苗植付装置の一例)
6A 前側の作業座席
6B 後側の作業座席
7A 前側の苗置き台
7B 後側の苗置き台
8A 前側の水タンク載置台
8B 後側の水タンク載置台
11L,11R 左右一対の駆動輪
15A 前側のフロアステップ
15B 後側のフロアステップ
18L,18R 走行伝動ケース
20A 前側の乗降ステップ
20B 後側の乗降ステップ
21L,21R 左右一対の前側の転輪
22L,22R 左右一対の後側の転輪
23 前側転輪支持アーム
25 後側転輪支持アーム
26 付勢部材
27 コイルスプリング(付勢部材の一例)
Tr 循環移動方向
J 軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10