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特許7235032電力変換装置、駆動装置およびパワーステアリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電力変換装置、駆動装置およびパワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230301BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20230301BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/493
H02P27/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020500453
(86)(22)【出願日】2019-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2019004595
(87)【国際公開番号】W WO2019159834
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2018024654
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鍋師 香織
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104753382(CN,A)
【文献】特開2016-181948(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183656(WO,A1)
【文献】特表2013-529055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0181219(US,A1)
【文献】特開2008-228398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/493
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上アーム素子および下アーム素子を備えてモータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、上アーム素子および下アーム素子を備えて前記一端に対する他端に接続される第2インバータと、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第1電源と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第2電源と、を備え、前記第1電源および前記第2電源の一方が作動不良を起こした場合、他方を用いて前記第1インバータおよび前記第2インバータを駆動させる制御部を備え、前記制御部は、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子を制御する第1制御部と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子を制御する第2制御部と、を備え、前記第1制御部は、前記第2電源および前記第2制御部を含む第2側駆動系の動作が正常であるか否かに応じた制御を行い、前記第2制御部は、前記第1電源および前記第1制御部を含む第1側駆動系の動作が正常であるか否かに応じた制御を行う電力変換装置。
【請求項2】
上アーム素子および下アーム素子を備えてモータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、上アーム素子および下アーム素子を備えて前記一端に対する他端に接続される第2インバータと、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第1電源と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第2電源と、を備え、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子が実装された第1実装基板と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子が実装された第2実装基板と、を備える電力変換装置。
【請求項3】
上アーム素子および下アーム素子を備えてモータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、上アーム素子および下アーム素子を備えて前記一端に対する他端に接続される第2インバータと、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第1電源と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第2電源と、を備え、表裏両面のうち一方の面に前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子が実装され、前記一方の面に対する他方の面に前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子が実装された両面実装基板を備える電力変換装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の電力変換装置と、前記電力変換装置に接続され、前記電力変換装置によって変換された電力が供給されるモータと、を備える駆動装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子が実装された第1実装基板と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子が実装された第2実装基板とを備え、
前記モータは、前記巻線の前記一端と前記他端との双方が、前記第1実装基板および前記第2実装基板の一方に接続されると共に、前記双方が前記一方を貫通して他方に接続される請求項に記載の駆動装置。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の電力変換装置と、前記電力変換装置に接続され、前記電力変換装置によって変換された電力が供給されるモータと、
前記モータにより駆動されるパワーステアリング機構と、を備えるパワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置、駆動装置およびパワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのインバータによりモータの電力を変換するインバータ駆動システムが知られている。また、モータの各巻線の両端それぞれにインバータが接続され各巻線について独立に電力を供給するタイプのインバータ駆動システムも知られている。
【0003】
例えば特許文献1には2つのインバータ部を有する電力変換装置が開示されている。特許文献1では、故障検出手段によりスイッチング素子の故障が検出される。そして、スイッチング素子に故障が生じた場合、回転電機(モータ)の駆動継続のため、スイッチング素子のオンオフ作動制御が正常時制御から故障時制御に切り替えられて回転電機が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-192950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、電力変換装置、駆動装置およびパワーステアリング装置における電力供給について、電源および制御回路を含んだ駆動系の全部あるいは一部の冗長化による電力供給の継続性の向上が求められる。特に、モータの各巻線について独立に電力を供給する上述したシステムで、冗長化された電源の一方における異常時に他方の電源で電力供給を継続する仕組みが求められる。
【0006】
そこで本発明は、電源の一方における異常時に他方の電源で電力供給を継続することが可能な電力変換装置、駆動装置およびパワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電力変換装置の一態様は、上アーム素子および下アーム素子を備えてモータの各相の巻線の一端に接続される第1インバータと、上アーム素子および下アーム素子を備えて前記一端に対する他端に接続される第2インバータと、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第1電源と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子に電力を供給する第2電源と、を備え、前記第1電源および前記第2電源の一方が作動不良を起こした場合、他方を用いて前記第1インバータおよび前記第2インバータを駆動させる制御部を備え、前記制御部は、前記第1インバータの前記上アーム素子および前記第2インバータの前記下アーム素子を制御する第1制御部と、前記第2インバータの前記上アーム素子および前記第1インバータの前記下アーム素子を制御する第2制御部と、を備え、前記第1制御部は、前記第2電源および前記第2制御部を含む第2側駆動系の動作が正常であるか否かに応じた制御を行い、前記第2制御部は、前記第1電源および前記第1制御部を含む第1側駆動系の動作が正常であるか否かに応じた制御を行う。
【0008】
また、本発明に係る駆動装置の一態様は、上記電力変換装置と、上記電力変換装置に接続され、上記電力変換装置によって変換された電力が供給されるモータと、を備える。
【0009】
また、本発明に係るパワーステアリング装置の一態様は、上記電力変換装置と、上記電力変換装置に接続され、上記電力変換装置によって変換された電力が供給されるモータと、上記モータにより駆動されるパワーステアリング機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電源の一方における異常時に他方の電源で電力供給を継続することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態によるモータ駆動ユニットのブロック構成を模式的に示す図である。
図2図2は、本実施形態によるモータ駆動ユニットの回路構成を模式的に示す図である。
図3図3は、正常時におけるモータの各相の各コイルに流れる電流値を示す図である。
図4a図4aは、異常時におけるモータの各相の各コイルに流れる電流値の例を示す図である。
図4b図4bは、異常時におけるモータの各相の各コイルに流れる電流値の変形例を示す図である。
図5図5は、モータ駆動ユニットのハードウェア構成を模式的に示す図である。
図6図6は、第1実装基板および第2実装基板のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図7図7は、本実施形態の変形例による実装基板のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図8図8は、本実施形態の別の変形例による実装基板のハードウェア構成を模式的に示す図である。
図9図9は、本実施形態によるパワーステアリング装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら、本開示の電力変換装置、駆動装置およびパワーステアリング装置の実施形態を詳細に説明する。但し、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするため、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
【0013】
本明細書において、電源からの電力を、三相(U相、V相、W相)の巻線(「コイル」と表記する場合がある。)を有する三相モータに供給する電力に変換する電力変換装置を例にして、本開示の実施形態を説明する。ただし、電源からの電力を、四相または五相などのn相(nは4以上の整数)の巻線を有するn相モータに供給する電力に変換する電力変換装置も本開示の範疇である。

(モータ駆動ユニット1000の構造)

図1は、本実施形態によるモータ駆動ユニット1000のブロック構成を模式的に示す図である。 モータ駆動ユニット1000は、電力供給装置101、102、モータ200および制御回路301、302を備える。
【0014】
本明細書では、構成要素としてモータ200を備えるモータ駆動ユニット1000を説明する。モータ200を備えるモータ駆動ユニット1000は、本発明の駆動装置の一例に相当する。ただし、モータ駆動ユニット1000は、構成要素としてモータ200が省かれた、モータ200を駆動するための装置であってもよい。モータ200が省かれたモータ駆動ユニット1000は、本発明の電力変換装置の一例に相当する。
【0015】
第1の電力供給装置101は、第1インバータ111、電流センサ401および電圧センサ411を備える。第2の電力供給装置102は、第2インバータ112、電流センサ402および電圧センサ412を備える。
【0016】
モータ駆動ユニット1000は、2つの電力供給装置101、102によって、電源(図2の符号403,404)からの電力をモータ200に供給する電力に変換することが可能である。例えば、第1および第2インバータ111、112は、直流電力を、U相、V相およびW相の擬似正弦波である三相交流電力に変換することが可能である。
【0017】
各インバータ111、112は上アーム131、132と下アーム141、142を備える。第1インバータ111は、モータ200の各相のコイルの一端210に接続され、第2インバータ112は、モータ200の各相のコイルの他端220に接続される。本明細書において、部品(構成要素)同士の「接続」とは、特に断らない限り電気的な接続を意味する。
【0018】
モータ200は、例えば三相交流モータである。モータ200は、U相、V相およびW相のコイルを有する。コイルの巻き方は、例えば集中巻きまたは分布巻きである。
【0019】
制御回路301、302は、後で詳述するようにマイクロコントローラ341、342などを備える。第1の制御回路301は、電流センサ401および角度センサ321からの入力信号に基づいて第1インバータ111の上アーム131と第2インバータ112の下アーム142を制御する。また、第2の制御回路302は、電流センサ402および角度センサ322からの入力信号に基づいて第2インバータ112の上アーム132と第1インバータ111の下アーム141を制御する。制御回路301、302における電力供給装置101、102の制御手法として、例えばベクトル制御および直接トルク制御(DTC)から選択された制御手法が用いられる。 図2を参照して、モータ駆動ユニット1000の具体的な回路構成を説明する。 図2は、本実施形態によるモータ駆動ユニット1000の回路構成を模式的に示す図である。
【0020】
モータ駆動ユニット1000は、電源403、404、コイル103、104、コンデンサ105、第1インバータ111、第2インバータ112、モータ200および制御回路301、302を備える。
【0021】
第1電源403と第2電源404は互いに独立の電源である。電源403、404は所定の電源電圧(例えば12V)を生成する。電源403、404として、例えば直流電源が用いられる。ただし、電源403、404は、AC-DCコンバータまたはDC―DCコンバータであってもよいし、バッテリー(蓄電池)であってもよい。
【0022】
電源403、404とインバータ111、112との間にはコイル103、104が備えられる。コイル103、104は、ノイズフィルタとして機能し、各インバータ111、112に供給される電圧波形に含まれる高周波ノイズを平滑化する。また、コイル103、104は、インバータ111、112で発生する高周波ノイズが電源403、404側に流出することを防ぐため高周波ノイズを平滑化する。また、各インバータ111、112の電源端子には、コンデンサ105が接続される。コンデンサ105は、いわゆるバイパスコンデンサであり、電圧リプルを抑制する。コンデンサ105は、例えば電解コンデンサであり、容量および使用する個数は設計仕様などによって適宜決定される。
【0023】
第1インバータ111は、上アーム131および下アーム141を備えてモータ200の各相のコイルの一端210に接続される。上アーム131は、各々が電源とモータ200との間に接続された3つのハイサイドスイッチ素子を備える。下アーム141は、各々がモータ200とグランドとの間に接続された3つのローサイドスイッチ素子を備える。
【0024】
具体的には、U相のコイルの一端210には、ハイサイドスイッチ素子113Hおよびローサイドスイッチ素子113Lが接続される。V相のコイルの一端210には、ハイサイドスイッチ素子114Hおよびローサイドスイッチ素子114Lが接続される。W相のコイルの一端210には、ハイサイドスイッチ素子115Hおよびローサイドスイッチ素子115Lが接続される。スイッチ素子としては、例えば電界効果トランジスタ(MOSFETなど)または絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)が用いられる。なお、スイッチ素子がIGBTである場合には、スイッチ素子と逆並列にダイオード(フリーホイール)が接続される。
【0025】
第1インバータ111は、例えば、U相、V相およびW相の各相の巻線に流れる電流を検出するための電流センサ401(図1を参照)として、シャント抵抗113R、114Rおよび115Rをそれぞれ各レグに備える。電流センサ401は、各シャント抵抗に流れる電流を検出する電流検出回路(不図示)を備える。例えば、シャント抵抗は、ローサイドスイッチ素子113L、114Lおよび115Lとグランドとの間に接続され得る。シャント抵抗の抵抗値は、例えば0.5mΩ~1.0mΩ程度である。
【0026】
シャント抵抗の数は3つ以外でもよい。例えば、U相、V相用の2つのシャント抵抗113R、114R、V相、W相用の2つのシャント抵抗114R、115R、または、U相、W相用の2つのシャント抵抗113R、115Rが用いられてもよい。使用されるシャント抵抗の数およびシャント抵抗の配置は、製品コストおよび設計仕様などが考慮されて適宜決定される。
【0027】
第2インバータ112は、上アーム132および下アーム142を備えてモータ200の各相のコイルの他端220に接続される。上アーム132は、各々が電源とモータ200との間に接続された3つのハイサイドスイッチ素子を備える。下アーム142は、各々がモータ200とグランドとの間に接続された3つのローサイドスイッチ素子を備える。
【0028】
具体的には、U相のコイルの他端220には、ハイサイドスイッチ素子116Hおよびローサイドスイッチ素子116Lが接続される。V相のコイルの他端220には、ハイサイドスイッチ素子117Hおよびローサイドスイッチ素子117Lが接続される。W相のコイルの他端220には、ハイサイドスイッチ素子118Hおよびローサイドスイッチ素子118Lが接続される。第1インバータ111と同様に、第2インバータ112は、例えば、シャント抵抗116R、117Rおよび118Rを備える。
【0029】
モータ駆動ユニット1000は、モータ200のコイル(巻線)の一端210側に対応した第1系統と、モータ200のコイル(巻線)の他端220側に対応した第2系統とを備える。第1系統には、第1電源403と第1インバータ111と第1制御回路301が含まれる。第2系統には、第2電源404第2インバータ112と第2制御回路302が含まれる。 電源403、404による電力供給の対象と制御回路301、302による制御の対象は、上述した2つの系統に跨がる。
【0030】
第1電源403は、第1インバータ111の上アーム131および第2インバータ112の下アーム142に電力を供給する。第2電源404は、第2インバータ112の上アーム132および第1インバータ111の下アーム141に電力を供給する。
【0031】
第1制御回路301は、第1インバータ111の上アーム131および第2インバータ112の下アーム142を制御する。第2制御回路302第2インバータ112の上アーム132および第1インバータ111の下アーム141を制御する。
【0032】
再び図1を参照する。制御回路301、302は、例えば、電源回路311、312と、角度センサ321、322と、入力回路331、332と、マイクロコントローラ341、342と、駆動回路351、352と、ROM361、362とを備える。制御回路301、302は電力供給装置101、102に接続される。そして、制御回路301、302は上述したように第1インバータ111および第2インバータ112を制御する。
【0033】
制御回路301、302は、目的とするロータの位置(回転角)、回転速度、および電流などを制御してクローズドループ制御を実現することができる。回転速度は、例えば、回転角(rad)を時間微分することにより得られ、単位時間(例えば1分間)にロータが回転する回転数(rpm)で表される。制御回路301、302は、目的とするモータトルクを制御することも可能である。制御回路301、302は、トルク制御のためにトルクセンサを備えてもよいがトルクセンサが省かれていてもトルク制御は可能である。また、角度センサに替えてセンサレスアルゴリズムを備えてもよい。また、2つの制御回路301、302は、各々がモータの回転に同期して制御を行うことで相互の制御動作を同期させる。 電源回路311、312は、回路内の各ブロックに必要なDC電圧(例えば3V、5V)を生成する。
【0034】
角度センサ321、322は、例えばレゾルバまたはホールICである。角度センサ321、322は、磁気抵抗(MR)素子を有するMRセンサとセンサマグネットとの組み合わせによっても実現される。角度センサ321、322は、モータ200のロータの回転角を検出し、検出した回転角を表した回転信号をマイクロコントローラ341、342に出力する。モータ制御手法(例えばセンサレス制御)によっては、角度センサ321、322は省かれる場合がある。 電圧センサ411、412は、モータ200のコイルの各相間における電圧を検出し、検出した電圧値を入力回路331、332に出力する。
【0035】
入力回路331、332は、電流センサ401、402によって検出されたモータ電流値(以下、「実電流値」と表記する。)と電圧センサ411、412によって検出された電圧値を受け取る。入力回路331、332は、マイクロコントローラ341、342の入力レベルに実電流値および電圧値のレベルを必要に応じて変換し、実電流値および電圧値をマイクロコントローラ341、342に出力する。入力回路331、332は、アナログデジタル変換回路である。
【0036】
マイクロコントローラ341、342は、角度センサ321、322によって検出されたロータの回転信号を受信するとともに、入力回路331、332から出力された実電流値および電圧値を受信する。マイクロコントローラ341、342は、実電流値およびロータの回転信号などに従って目標電流値を設定してPWM信号を生成し、生成したPWM信号を駆動回路351、352に出力する。例えば、マイクロコントローラ341、342は、電力供給装置101、102のインバータ111、112における各スイッチ素子のスイッチング動作(ターンオンまたはターンオフ)を制御するためのPWM信号を生成する。
【0037】
また、マイクロコントローラ341、342は、第1インバータ111および第2インバータ112を制御する制御方式を、受信した電圧値に従って決定することが可能である。
【0038】
駆動回路351、352は、例えばゲートドライバである。駆動回路351、352は、第1インバータ111および第2インバータ112における各スイッチ素子のスイッチング動作を制御する制御信号(
例えば、ゲート制御信号)をPWM信号に従って生成し、生成した制御信号を各スイッチ素子に与える。 マイクロコントローラ341、342は、駆動回路351、352の機能を有していてもよい。その場合、駆動回路351、352は省かれる。
【0039】
ROM361、362は、例えば書き込み可能なメモリ(例えばPROM)、書き換え可能なメモリ(例えばフラッシュメモリ)または読み出し専用のメモリである。ROM361、362は、マイクロコントローラ341、342に電力供給装置101、102(主としてインバータ111、112)を制御させるための命令群を含む制御プログラムを格納する。例えば、制御プログラムはブート時にRAM(不図示)に一旦展開される。 制御回路301、302(主としてマイクロコントローラ341、342)によるインバータ111、112の制御には正常時および異常時の制御がある。 以下、モータ駆動ユニット1000の動作の具体例を説明し、主としてインバータ111、112の動作の具体例を説明する。

(正常時の制御)
【0040】
先ず、インバータ111、112の正常時の制御方法の具体例を説明する。正常とは、2つの電源403、404と、2つのインバータ111、112と、2つの制御回路301、302のいずれもが正しく動作する状態を指す。
【0041】
正常時において、制御回路301、302は、第1インバータ111および第2インバータ112における上アーム131、132と下アーム141、142との両方を用いて三相通電制御することによってモータ200を駆動する。一例として、制御回路301、302は、第1インバータ111のスイッチ素子と第2インバータ112のスイッチ素子とを、周期変動するデューティでスイッチング制御することにより三相通電制御を行うことができる。第1インバータ111と第2インバータ112とのそれぞれにおけるデューティの周期変動は制御回路301、302によって切り替え可能である。制御回路301、302は、例えば第1インバータ111と第2インバータ112とで逆位相(位相差=180°)となる周期変動に切り替えてもよい。 図3は、正常時におけるモータ200の各相の各コイルに流れる電流値を示す図である。
【0042】
図3には、正常時の三相通電制御に従って第1インバータ111および第2インバータ112が制御されたときにモータ200のU相、V相およびW相の各コイルに流れる電流値をプロットして得られる電流波形(正弦波)が例示される。図3の横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。Ipkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。なお、電力供給装置101、102は、図3に例示した正弦波以外に、例えば矩形波を用いてモータ200を駆動することも可能である。
【0043】
表1は、図3の正弦波において電気角毎に各インバータの端子に流れる電流値を示す。表1は、具体的に、第1インバータ111とU相、V相およびW相それぞれのコイルの一端210との接続点に流れる電気角30°毎の電流値を示す。また、表1は、第2インバータ112とU相、V相およびW相それぞれのコイルの他端220との接続点に流れる、電気角30°毎の電流値を示す。ここで、第1インバータ111に対しては、モータ200の一端210から他端220に流れる電流方向を正の方向と定義する。また、第2インバータ112に対しては、モータ200の他端220から一端210に流れる電流方向を正の方向と定義する。従って、第1インバータ111の電流と第2インバータ112の電流との位相差は180°となる。表1において、電流値I1の大きさは〔(3)1/2/2〕*Ipkであり、電流値I2の大きさはIpk/2である。
【0044】
【表1】
【0045】
電気角0°において、U相のコイルは電流が「0」となる。電気角0°において、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI1の電流が流れる。
【0046】
電気角30°において、U相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI2の電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、W相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI2の電流が流れる。
【0047】
電気角60°において、U相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI1の電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れる。電気角60°において、W相のコイルは電流が「0」となる。
【0048】
電気角90°において、U相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさIpkの電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れる。
【0049】
電気角120°において、U相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れる。電気角120°において、V相のコイルは電流が「0」となる。
【0050】
電気角150°において、U相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI2の電流が流れ、V相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れる。
【0051】
電気角180°において、U相のコイルは電流が「0」となる。電気角180°において、V相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れる。
【0052】
電気角210°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、V相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさIpkの電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れる。
【0053】
電気角240°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、V相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI1の電流が流れる。電気角240°において、W相のコイルは電流が「0」となる。
【0054】
電気角270°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、V相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI2の電流が流れる。
【0055】
電気角300°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさI1の電流が流れる。電気角300°において、V相のコイルは電流が「0」となる。
【0056】
電気角330°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルには第1インバータ111から第2インバータ112に大きさIpkの電流が流れる。
【0057】
図3に示される電流波形において、電流の向きを考慮した三相のコイルに流れる電流の総和は電気角毎に「0」となる。ただし、電力供給装置101、102の回路構成によれば、三相のコイルに流れる電流は独立に制御される。このため、制御回路301、302は電流の総和が「0」以外の値となる制御を行うことも可能である。

(異常時の制御)

異常時における第1インバータ111および第2インバータ112の制御方法の具体例を説明する。
【0058】
異常とは、2つの電源403、404と、2つのインバータ111、112と、2つの制御回路301、302の1つ以上に故障が生じた状態を指す。異常には、大きく分けて第1系統の異常と第2系統の異常とがある。また、各系統の異常としては、インバータ111、112の故障による異常と、電源403、404および制御回路301、302を含む駆動系の異常がある。また、インバータ111、112の故障は、インバータ回路内における断線、ショート、スイッチ素子の故障などを含む。
【0059】
「駆動系の異常」は、電源403、404のみの異常、制御回路301、302のみの異常、電源403、404と制御回路301、302との両方における異常、電源403、404の異常に伴い制御回路301、302も動作停止した状態などといった各種の異常状態を含む。
【0060】
インバータ111、112の故障による異常時における制御方法としては、例えば特開2014-192950号公報に記載された制御方法などが用いられる。以下では、駆動系の異常時における制御方法について説明する。
【0061】
異常検知の一例として、制御回路301、302(主としてマイクロコントローラ341、342)は、電圧センサ411、412によって検出された電圧値を解析することで、2つの系統のうち自己が所属した系統に対する相手側の系統における異常を検知する。制御回路301、302は、自分の制御下にある上アーム131、132および下アーム141、142を介して相手側の制御回路301、302の制御下にある上アーム131、132および下アーム141、142における電圧を確認することができる。具体的には、1つのインバータ111、112に備えられ互いに接続された上アーム131、132と下アーム141、142が別々の制御回路301、302の制御対象となる。そして、電圧センサ411、412は上アーム131、132と下アーム141、142とを接続した配線の電圧を検出する。
【0062】
異常検知の他の一例として、マイクロコントローラ341、342は、モータの実電流値と目標電流値との差などを解析することで異常を検知することも可能である。ただし、制御回路301、302は、これらの手法に限られず、異常検知に関する公知の手法を広く用いることができる。
【0063】
制御回路301、302は、マイクロコントローラ341、342で異常を検知すると、インバータ111、112の制御を正常時の制御から異常時の制御に切替える。例えば、正常時から異常時に制御を切替えるタイミングは、異常が検知されてから10msec~30msec程度である。
【0064】
制御回路301、302は、異常時には、インバータ111、112について半波駆動制御を行う。半波駆動制御では、インバータ111、112が備えた上アーム131、132および下アーム141、142のうち、正常な制御回路301、302が制御対象とする上アーム131、132および下アーム141、142のみが駆動される。
【0065】
例えば、制御回路301、302は、第1電源403および第2電源404の一方が作動不良を起こした場合、他方を用いて第1インバータ111および第2インバータ112を駆動させる。この結果、モータ駆動ユニット1000は、電源403、404の一方における異常時に他方の電源で電力供給を継続することが可能となる。
【0066】
具体的には、第1系統の制御回路301が第2系統の駆動系の異常を検知した場合には、第1系統の制御回路301による、第1インバータ111の上アーム131および第2インバータ112の下アーム142のみの駆動制御でモータ200に電力が供給される。第1系統の制御回路301は、第2電源404および第2制御回路302を含む第2系統側の駆動系の動作が正常であるか否かに応じた制御を行う。
【0067】
また、第2系統の制御回路302が第1系統の駆動系の異常を検知した場合には、第2系統の制御回路302による、第2インバータ112の上アーム132および第1インバータ111の下アーム141のみの駆動制御でモータ200に電力が供給される。第2系統の制御回路302は、第1電源403および第1制御回路301を含む第1系統側の駆動系の動作が正常であるか否かに応じた制御を行う。
【0068】
第1系統と第2系統とで制御回路301、302が互いに相手側の状態に応じた制御を行うことで、第1系統と第2系統とのどちらで異常が生じた場合であっても、電力供給のために適切な駆動制御が行われる。図4aは、異常時におけるモータ200の各相の各コイルに流れる電流値を示す図である。
【0069】
図4aには、異常時の半波駆動制御に従って第1インバータ111および第2インバータ112が制御されたときにモータ200のU相、V相およびW相の各コイルに流れる電流値をプロットして得られる電流波形が例示される。図4aの横軸は、モータ電気角(deg)を示し、縦軸は電流値(A)を示す。Ipkは各相の最大電流値(ピーク電流値)を表す。
【0070】
図4aに例示された電流波形によれば、モータの出力トルクが一定値となる。なお、電力供給装置101、102は、図4aに例示された電流波形以外の電流波形を用いてモータ200を駆動することも可能である。例えば電力供給装置101、102は、図4bに例示された台形波の電流波形を用いてモータ200を駆動することも可能である。
【0071】
表2は、図4aに示される電流波形が得られるような通電制御で第1インバータ111および第2インバータ112が制御された場合にモータ200のU相、V相およびW相の各コイルに流れる電流値を電気角毎に例示する。表2は具体的に、例えば第1系統側で異常が生じた場合に第2インバータ112とU相、V相およびW相それぞれのコイルの他端220との接続点に流れる、電気角30°毎の電流値を示す。電流方向の定義は上述したとおりである。
【0072】
【表2】
【0073】
電気角0°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、V相のコイルは電流が「0」となる。
【0074】
電気角30°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、V相のコイルコイルは電流が「0」となる。
【0075】
電気角60°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、V相のコイルコイルは電流が「0」となる。
【0076】
電気角90°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、V相およびW相のコイルは電流が「0」となる。
【0077】
電気角120°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルは電流が「0」となる。
【0078】
電気角150°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルは電流が「0」となる。
【0079】
電気角180°において、U相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、W相のコイルは電流が「0」となる。
【0080】
電気角210°において、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、U相およびW相のコイルは電流が「0」となる。
【0081】
電気角240°において、U相のコイルは電流が「0」となり、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れる。
【0082】
電気角270°において、U相のコイルは電流が「0」となり、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れる。
【0083】
電気角300°において、U相のコイルは電流が「0」となり、V相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI2の電流が流れ、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさIpkの電流が流れる。
【0084】
電気角330°において、U相およびV相のコイルは電流が「0」となり、W相のコイルには第2インバータ112から第1インバータ111に大きさI1の電流が流れる。

(モータ駆動ユニット1000のハードウェア構成)

次に、モータ駆動ユニット1000のハードウェア構成について説明する。 図5は、モータ駆動ユニット1000のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【0085】
モータ駆動ユニット1000は、ハードウェア構成として、上述したモータ200と、第1実装基板1001と、第2実装基板1002と、ハウジング1003と、コネクタ1004、1005とを備える。
【0086】
モータ200からは、コイルの一端210と他端220が突き出して実装基板1001、1002に向かって延びる。コイルの一端210と他端220との双方は、第1実装基板1001および第2実装基板1002の一方に接続されると共に、一端210と他端220との双方が第1実装基板1001および第2実装基板1002の当該一方を貫通して他方に接続される。具体的には、コイルの一端210と他端220との双方が例えば第2実装基板1002に接続される。また、コイルの一端210と他端220との双方が、第2実装基板1002を貫通して第1実装基板1001に接続される。
【0087】
第1実装基板1001と第2実装基板1002とは基板面が互いに対向する。基板面が対向した方向に、モータ200の回転軸が延びる。第1実装基板1001と第2実装基板1002とモータ200は、ハウジング1003内に収容されることで互いの位置が固定される。
【0088】
第1実装基板1001には、第1電源403からの電源コードが接続されるコネクタ1004が取り付けられる。第2実装基板1002には、第2電源404からの電源コードが接続されるコネクタ1005が取り付けられる。 図6は、第1実装基板1001および第2実装基板1002のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【0089】
第1実装基板1001には、第1インバータ111の上アーム131および第2インバータ112の下アーム142が実装される。また、第2実装基板1002には、第2インバータ112の上アーム132および第1インバータ111の下アーム141が実装される。2枚の実装基板1001、1002に対するこのような素子の振り分けによってコイルの一端210および他端220に対する上アーム131、132および下アーム141、142の配線が簡略化されて効率的な素子配置が可能となる。
【0090】
第1実装基板1001には、第1の制御回路301も実装されてもよい。第2実装基板1002には、第2の制御回路302も実装されてもよい。各制御回路301、302が、各制御回路301、302による制御対象の素子と同一の実装基板上に実装されると、制御のための配線が基板内に納まる。よって効率的な素子配置が可能である。
【0091】
第1実装基板1001上の上アーム131と第2実装基板1002上の下アーム141は、第1実装基板1001と第2実装基板1002との対向方向で見た場合に互いに重なり合う位置に実装されてもよい。また、第1実装基板1001上の下アーム142と第2実装基板1002上の上アーム132は、第1実装基板1001と第2実装基板1002との対向方向で見た場合に互いに重なり合う位置に実装されてもよい。このような回路配置により、実装基板1001、1002上の配置面積が有効に活用された効率的な素子配置が可能となる。
【0092】
第1実装基板1001と第2実装基板1002との対向方向で見た場合に、第1実装基板1001上の上アーム131と第2実装基板1002上の上アーム132とが互いに対称な配置でもよい。また、第1実装基板1001と第2実装基板1002との対向方向で見た場合に、第1実装基板1001上の下アーム142と第2実装基板1002上の下アーム141とが互いに対称な配置でもよい。このような対称な配置により、2枚の実装基板1001、1002について基板設計が共通化できる。

(変形例)

図7は、本実施形態の変形例による実装基板のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【0093】
図7に示された変形例では、1枚の両面実装基板1006が備えられる。両面実装基板1006の表裏両面のうち一方の面に第1インバータ111の上アーム131および第2インバータ112の下アーム142が実装される。一方の面に対する他方の面に第2インバータ112の上アーム132および第1インバータ111の下アーム141が実装される。両面実装基板1006の表裏両面に対するこのような素子の振り分けによってコイルの一端210および他端220に対する上アーム131、132および下アーム141、142の配線が簡略化されて効率的な素子配置が可能となる。
【0094】
表裏両面のうち一方の面には、第1の制御回路301も実装されてもよい。他方の面には第2の制御回路302も実装されてもよい。各制御回路301、302が、各制御回路301、302による制御対象の素子と同一の基板面に実装されると、制御のための配線が一方の面側と他方の面側とに分けられて効率的な素子配置が可能となる。
【0095】
両面実装基板1006の表裏両面における具体的な回路配置は、一方の面における回路配置が、例えば図6に示された第1実装基板1001上の回路配置と同様であり、他方の面における回路配置が、例えば図6に示された第2実装基板1002上の回路配置と同様である。このため、コイルの一端210と他端220に対する配線経路が簡素化された効率的な素子配置が可能であるとともに、両面実装基板1006の表裏両面について基板設計が共通化できる。 図8は、本実施形態の別の変形例による実装基板のハードウェア構成を模式的に示す図である。
【0096】
図8に示されたハードウェア構成では、第1実装基板1001と第2実装基板1002とに加えて第3実装基板1007が備えられる。第3実装基板1007は、例えば第1実装基板1001と第2実装基板1002の間に位置する。そして、例えば、制御回路301、302が第3実装基板1007上に実装されるとともに、インバータ111、112の上アーム131、132および下アーム141、142は、例えば図6に示されたハードウェア構成と同様に第1実装基板1001と第2実装基板1002に実装される。このようなハードウェア構成により、パワー回路と制御回路とが分離されるので安全性の向上、および電源配線の簡素化が可能となる。

(パワーステアリング装置の実施形態)
【0097】
自動車等の車両は一般的に、パワーステアリング装置を備える。パワーステアリング装置は、運転者がステアリングハンドルを操作することによって発生するステアリング系の操舵トルクを補助するための補助トルクを生成する。補助トルクは、補助トルク機構によって生成され、運転者の操作の負担を軽減することができる。例えば、補助トルク機構は、操舵トルクセンサ、ECU、モータおよび減速機構などから構成される。操舵トルクセンサは、ステアリング系における操舵トルクを検出する。ECUは、操舵トルクセンサの検出信号に基づいて駆動信号を生成する。モータは、駆動信号に基づいて操舵トルクに応じた補助トルクを生成し、減速機構を介してステアリング系に補助トルクを伝達する。
【0098】
上記実施形態のモータ駆動ユニット1000は、パワーステアリング装置に好適に利用される。図9は、本実施形態によるパワーステアリング装置2000の構成を模式的に示す図である。 電動パワーステアリング装置2000は、ステアリング系520および補助トルク機構540を備える。
【0099】
ステアリング系520は、例えば、ステアリングハンドル521、ステアリングシャフト522(「ステアリングコラム」とも称される。)、自在軸継手523A、523B、および回転軸524(「ピニオン軸」または「入力軸」とも称される。)を備える。
【0100】
また、ステアリング系520は、例えば、ラックアンドピニオン機構525、ラック軸526、左右のボールジョイント552A、552B、タイロッド527A、527B、ナックル528A、528B、および左右の操舵車輪(例えば左右の前輪)529A、529Bを備える。
【0101】
ステアリングハンドル521は、ステアリングシャフト522と自在軸継手523A、523Bとを介して回転軸524に連結される。回転軸524にはラックアンドピニオン機構525を介してラック軸526が連結される。ラックアンドピニオン機構525は、回転軸524に設けられたピニオン531と、ラック軸526に設けられたラック532とを有する。ラック軸526の右端には、ボールジョイント552A、タイロッド527Aおよびナックル528Aをこの順番で介して右の操舵車輪529Aが連結される。右側と同様に、ラック軸526の左端には、ボールジョイント552B、タイロッド527Bおよびナックル528Bをこの順番で介して左の操舵車輪529Bが連結される。ここで、右側および左側は、座席に座った運転者から見た右側および左側にそれぞれ一致する。
【0102】
ステアリング系520によれば、運転者がステアリングハンドル521を操作することによって操舵トルクが発生し、ラックアンドピニオン機構525を介して左右の操舵車輪529A、529Bに伝わる。これにより、運転者は左右の操舵車輪529A、529Bを操作することができる。
【0103】
補助トルク機構540は、例えば、操舵トルクセンサ541、ECU542、モータ543、減速機構544および電力供給装置545を備える。補助トルク機構540は、ステアリングハンドル521から左右の操舵車輪529A、529Bに至るステアリング系520に補助トルクを与える。なお、補助トルクは「付加トルク」と称されることがある。
【0104】
ECU542としては、例えば図1などに示された制御回路301、302が用いられる。また、電力供給装置545としては、例えば図1などに示された電力供給装置101、102が用いられる。また、モータ543としては、例えば図1などに示されたモータ200が用いられる。ECU542、モータ543および電力供給装置545が、一般的に「機電一体型モータ」と称されるユニットを構成する場合には、当該ユニットとしては、例えば図5に示されたハードウェア構成のモータ駆動ユニット1000が好適に用いられる。図9に示された各要素のうち、ECU542、モータ543および電力供給装置545を除いた要素で構成された機構は、モータ543によって駆動されるパワーステアリング機構の一例に相当する。
【0105】
操舵トルクセンサ541は、ステアリングハンドル521によって付与されたステアリング系520の操舵トルクを検出する。ECU542は、操舵トルクセンサ541からの検出信号(以下「トルク信号」と表記する。)に基づいてモータ543を駆動するための駆動信号を生成する。モータ543は、操舵トルクに応じた補助トルクを駆動信号に基づいて発生する。補助トルクは、減速機構544を介してステアリング系520の回転軸524に伝達される。減速機構544は例えばウォームギヤ機構である。補助トルクはさらに、回転軸524からラックアンドピニオン機構525に伝達される。
【0106】
パワーステアリング装置2000は、補助トルクがステアリング系520に付与される箇所によって、ピニオンアシスト型、ラックアシスト型、およびコラムアシスト型等に分類される。図9には、ピニオンアシスト型のパワーステアリング装置2000が示される。ただし、パワーステアリング装置2000は、ラックアシスト型、コラムアシスト型等にも適用される。
【0107】
ECU542には、トルク信号だけでなく、例えば車速信号も入力され得る。ECU542のマイクロコントローラは、トルク信号や車速信号などに基づいてモータ543をベクトル制御することができる。
【0108】
ECU542は、少なくともトルク信号に基づいて目標電流値を設定する。ECU542は、車速センサによって検出された車速信号を考慮し、さらに角度センサによって検出されたロータの回転信号を考慮して、目標電流値を設定することが好ましい。ECU542は、電流センサ(図1参照)によって検出された実電流値が目標電流値に一致するように、モータ543の駆動信号、つまり、駆動電流を制御することができる。
【0109】
パワーステアリング装置2000によれば、運転者の操舵トルクにモータ543の補助トルクを加えた複合トルクを利用してラック軸526によって左右の操舵車輪529A、529Bを操作することができる。特に、上述した機電一体型モータに、上記実施形態のモータ駆動ユニット1000が利用されることにより、正常時および異常時のいずれにおいても適切な電流制御が可能となる。この結果、正常時および異常時のいずれにおいてもパワーステアリング装置におけるパワーアシストが継続される。
【符号の説明】
【0110】
101、102 :電力供給装置111 :第1インバータ112 :第2インバータ131、132 :上アーム141、142 :下アーム200 :モータ301、302 :制御回路311,312 :電源回路321、322 :角度センサ331、332 :入力回路341、342 :マイクロコントローラ351、352 :駆動回路361、362 :ROM401、402 :電流センサ403、404 :電源411、412 :電圧センサ1000 :モータ駆動ユニット1001、1002、1007 :実装基板1006 :両面実装基板2000 :パワーステアリング装置
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7
図8
図9