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7235034エピハロヒドリンゴム組成物、エピハロヒドリンゴム架橋物及びエアダクトホース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】エピハロヒドリンゴム組成物、エピハロヒドリンゴム架橋物及びエアダクトホース
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/03 20060101AFI20230301BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 5/37 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08L71/03
C08K3/36
C08K3/26
C08K5/37
C08K5/09
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020502083
(86)(22)【出願日】2019-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2019001679
(87)【国際公開番号】W WO2019163362
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2018029157
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】榊田 宏
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025017(JP,A)
【文献】特開2009-001663(JP,A)
【文献】特開2011-046151(JP,A)
【文献】特開平07-188495(JP,A)
【文献】特開2002-173569(JP,A)
【文献】特開2005-097414(JP,A)
【文献】特開2014-189607(JP,A)
【文献】特開2000-248167(JP,A)
【文献】特開平02-196837(JP,A)
【文献】国際公開第2008/050859(WO,A1)
【文献】特開2000-204237(JP,A)
【文献】特開2010-144014(JP,A)
【文献】特開2001-002408(JP,A)
【文献】特開2003-226864(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199387(WO,A1)
【文献】特開2015-140366(JP,A)
【文献】DHT-4A 安全データシート(SDS),協和化学工業株式会社,https://kyowa-chem.jp/support/sds/sds_dht4a.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピハロヒドリンゴムと、
シリカと、
ハイドロタルサイトと、
トリアジンチオール系架橋剤を含み、
前記ハイドロタルサイトは、180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率が5%以下である、エピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項2】
ステアリン酸をさらに含む、請求項1に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカの含有量が15~45質量%である、請求項1又は2に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項4】
カーボンブラックをさらに含み、
前記カーボンブラックの含有量が3~20質量%である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項5】
可塑剤をさらに含み、
前記可塑剤の含有量が6~20質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエピハロヒドリンゴム組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエピハロヒドリンゴム組成物が架橋している、エピハロヒドリンゴム架橋物。
【請求項7】
請求項6に記載のエピハロヒドリンゴム架橋物を有する、エアダクトホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピハロヒドリンゴム組成物、エピハロヒドリンゴム架橋物及びエアダクトホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エピクロロヒドリンゴム、トリアジンチオール系架橋剤及び受酸剤を含むエピクロロヒドリンゴム組成物が知られている。このようなエピクロロヒドリンゴム組成物を架橋することにより得られるエピクロロヒドリンゴム架橋物は、自動車用の燃料ホース等に適用されている。
【0003】
また、エピクロロヒドリンゴム組成物に添加する受酸剤として、ハイドロタルサイトが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-25017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のエピクロロヒドリンゴム架橋物は、耐金属腐食性と耐圧縮永久歪み性を両立させることができなかった。
【0006】
本発明の一態様は、エピクロロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性と耐圧縮永久歪み性に優れるエピハロヒドリンゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、エピハロヒドリンゴム組成物において、エピハロヒドリンゴムと、シリカと、ハイドロタルサイトと、トリアジンチオール系架橋剤を含み、前記ハイドロタルサイトは、180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率が5%以下である。
【0008】
上記エピハロヒドリンゴム組成物は、ステアリン酸をさらに含むことが好ましい。
【0009】
上記エピハロヒドリンゴム組成物は、前記シリカの含有量が15~45質量%であることが好ましい。
【0010】
上記エピハロヒドリンゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含み、前記カーボンブラックの含有量が3~20質量%であることが好ましい。
【0011】
上記エピハロヒドリンゴム組成物は、可塑剤をさらに含み、前記可塑剤の含有量が6~20質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の他の態様は、エピハロヒドリンゴム架橋物において、上記エピハロヒドリンゴム組成物が架橋している。
【0013】
本発明の他の態様は、エアダクトホースにおいて、上記エピハロヒドリンゴム架橋物を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、エピクロロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性と耐圧縮永久歪み性に優れるエピハロヒドリンゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
<エピハロヒドリンゴム組成物>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、エピハロヒドリンゴムと、シリカと、ハイドロタルサイトと、トリアジンチオール系架橋剤を含む。
【0017】
<エピハロヒドリンゴム>
エピハロヒドリンゴムは、エピハロヒドリン(単量体)の単独重合体又は共重合体である。具体的には、エピハロヒドリンゴムは、エピハロヒドリンの単独重合体、二種以上のエピハロヒドリンの共重合体、又は、一種以上のエピハロヒドリンと、一種以上のエピハロヒドリンと共重合することが可能な単量体との共重合体である。
【0018】
エピハロヒドリンとしては、例えば、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン、2-メチルエピクロロヒドリン、2-メチルエピブロモヒドリン、2-エチルエピクロロヒドリン等が挙げられる。これらの中でも、エピクロロヒドリンが好ましい。
【0019】
エピハロヒドリンゴムの全構成単位に対するエピハロヒドリン由来の構成単位の割合は、好ましくは20~100mol%であり、より好ましくは25~90mol%であり、特に好ましくは30~85mol%である。エピハロヒドリンゴムの全構成単位に対するエピハロヒドリン由来の構成単位の割合が20mol%以上であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が向上する。
【0020】
エピハロヒドリンと共重合することが可能な単量体としては、エポキシド等が挙げられる。
【0021】
なお、エポキシドは、飽和エポキシド及び不飽和エポキシドのいずれであってもよい。
【0022】
また、エポキシドは、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。
【0023】
飽和エポキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、2,3-エポキシブタン、1,2-エポキシ-4-クロロペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシテトラデカン、1,2-エポキシヘキサデカン、1,2-エポキシオクタデカン、1,2-エポキシエイコサン、1,2-エポキシイソブタン、2,3-エポキシイソブタン等の、直鎖状エポキシド又は分岐鎖状エポキシド;1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシシクロドデカン等の環状エポキシド等が挙げられる。これらの中でも、直鎖状エポキシドが好ましく、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドがより好ましい。
【0024】
エピハロヒドリンゴムの全構成単位に対する飽和エポキシド由来の構成単位の割合は、好ましくは0~80mol%であり、より好ましくは10~75mol%であり、特に好ましくは15~70mol%である。エピハロヒドリンゴムの全構成単位に対する飽和エポキシド由来の構成単位の割合が80mol%以下であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の吸湿性を低くすることができる。
【0025】
不飽和エポキシドとしては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、o-アリルフェニルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルクロトネート、グリシジル-4-ヘプテノエート、グリシジルソルベート、グリシジルリノレート、3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、4-メチル-3-シクロヘキセンカルボン酸のグリシジルエステル、グリシジル-4-メチル-3-ペンテノエート等のグリシジルエステル;3,4-エポキシ-1-ブテン、1,2-エポキシ-3-ペンテン、1,2-エポキシ-5,9-シクロドデカジエン等が挙げられる。これらの中でも、アリルグリシジルエーテルが好ましい。
【0026】
エピハロヒドリンゴムの全構成単位に対する不飽和エポキシド由来の構成単位の割合は、好ましくは15mol%以下であり、より好ましくは10mol%以下である。エピハロヒドリンゴムの全構成単位に対する不飽和エポキシド由来の構成単位の割合が15mol%以下であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の破断伸びが大きくなる。
【0027】
エピハロヒドリンゴムのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、通常、30~160であり、好ましくは40~120である。これにより、エピハロヒドリンゴム組成物の加工性が向上する。
【0028】
エピハロヒドリンゴムは、公知の開環重合法により、合成することができる。
【0029】
<シリカ>
シリカは、充填剤として機能するが、エピハロヒドリンゴム架橋物の導電性を低下させるため、エピハロヒドリンゴム架橋物が金属と接触しても、金属の腐食を抑制することができる。その結果、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性を向上させることができる。
【0030】
シリカとしては、特に限定されないが、石英粉末、珪石粉末等の天然シリカ粉末;無水珪酸粉末(例えば、シリカゲル粉末、アエロジル(登録商標))、含水珪酸粉末等の合成シリカ粉末等を用いることができる。これらの中でも、pHの範囲が広いシリカを合成することができるため、いわゆる湿式法により合成されている含水珪酸粉末が好ましい。また、pHが低いシリカを使用する場合は、乾式法により合成されている無水珪酸が好ましい。
【0031】
シリカのpHは、好ましくは4.5~8.0であり、より好ましくは5.0~7.0である。シリカのpHが4.5以上であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が向上し、8.0以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の加工安定性が向上する。
【0032】
なお、シリカのpHは、ガラス電極pH計を用いて測定される、炭酸を含まない蒸留水100mlにシリカ4gが懸濁している懸濁液の20℃におけるpHである。
【0033】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のシリカの含有量は、好ましくは15~45質量%であり、より好ましくは20~30質量%である。本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のシリカの含有量が15質量%以上であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性が向上し、45質量%以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の加工性が向上する。
【0034】
<ハイドロタルサイト>
ハイドロタルサイトは、受酸剤として機能する。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲において、ハイドロタルサイトとは、一般式
[(Mg2+(M 2+(1-y)1-x 3+ (OH)(CO 2-x/2・mH
(ただし、M 2+は、1種以上の2価金属を示し、M 3+は、1種以上の3価金属を示し、x、y、mは、式
0<x<0.5
0<y≦1
0≦m<2
を満たす。)
で表される化合物を意味する。
【0036】
ここで、0<m<2である場合、ハイドロタルサイトは、結晶水を有する。また、m=0である場合は、ハイドロタルサイトは、結晶水を有しないが、通常、付着水を含有している。
【0037】
m=0である場合のハイドロタルサイトの組成式としては、例えば、Mg4.5Al(OH)13CO(マグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート)が挙げられる。
【0038】
本実施形態において、ハイドロタルサイトの180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率(減少率)は、5%以下であり、好ましくは3.0%以下であり、より好ましくは2.5%以下であり、さらに好ましくは2.0%以下である。ハイドロタルサイトの180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率が5%を超えると、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が低下する。
【0039】
なお、ハイドロタルサイトの180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率は、以下の通りである。まず、約5gのハイドロタルサイトの質量を測定する。次に、ハイドロタルサイトを180℃±2℃の空気循環式乾燥炉で1時間加熱した後、デシケーター内で室温まで冷却する。次に、ハイドロタルサイトの質量を測定し、加熱する前後の質量の変化率を算出する。
【0040】
ここで、ハイドロタルサイトを180℃で1時間加熱することによる質量の減少に寄与する成分としては、付着水、結晶水等が挙げられる。このため、ハイドロタルサイトを吸湿させたり、加熱処理したりすることで、ハイドロタルサイトの180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率を調整することができる。
【0041】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のハイドロタルサイトの含有量は、好ましくは2.5~7.5質量%であり、より好ましくは3.0~6.0質量%である。本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のハイドロタルサイトの含有量が2.5質量%以上であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性が向上し、7.5質量%以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の加工性が向上する。
【0042】
<トリアジンチオール系架橋剤>
トリアジンチオール系架橋剤としては、エピハロヒドリンゴム架橋物を架橋することが可能であれば、特に限定されないが、1,3,5-トリアジントリチオール、6-アニリノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-メチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジメチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-エチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジエチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-プロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジプロピルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ジブチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-ヘキシルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-オクチルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール、6-デシルアミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジチオール等が挙げられる。
【0043】
なお、トリアジンチオール系架橋剤は、単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0044】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のトリアジンチオール系架橋剤の含有量は、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.2~3質量%である。本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のトリアジンチオール系架橋剤の含有量が0.1質量%以上であると、エピハロヒドリンゴム組成物の架橋速度やエピハロヒドリンゴム架橋物の架橋密度が向上し、5質量%以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の貯蔵安定性やエピハロヒドリンゴム架橋物の耐脆性が向上する。
【0045】
<ステアリン酸>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、加工助剤として機能する、ステアリン酸をさらに含むことが好ましい。これにより、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性がさらに向上する。
【0046】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のステアリン酸の含有量は、好ましくは0.5~2.5質量%であり、より好ましくは1.0~2.0質量%である。本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のステアリン酸の含有量が0.5質量%以上であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性が向上し、2.5質量%以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の加工性が向上する。
【0047】
<カーボンブラック>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、カーボンブラックをさらに含むことが好ましい。
【0048】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、好ましくは3.0~20質量%であり、より好ましくは7.0~15質量%である。本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラックの含有量が3.0質量%以上であると、エピハロヒドリンゴム架橋物の機械的強度が向上し、20質量%以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の加工性やエピハロヒドリンゴム架橋物の金属腐食性が向上する。
【0049】
<可塑剤>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、可塑剤をさらに含むことが好ましい。
【0050】
可塑剤としては、特に限定されないが、ビス(ブトキシエトキシエチル)アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ビス(2-エチルヘキシル)フタレート、ポリエーテルエステル系化合物等が挙げられる。
【0051】
可塑剤の分子量は、耐熱性の観点から、500以上であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中の可塑剤の含有量は、好ましくは6~20質量%であり、より好ましくは7~17質量%である。本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中の可塑剤の含有量が6質量%以上20質量%以下であると、エピハロヒドリンゴム組成物の加工性が向上する。
【0053】
<ハイドロタルサイト以外の受酸剤>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、ハイドロタルサイト以外の受酸剤をさらに含んでいてもよい。
【0054】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のハイドロタルサイト以外の受酸剤の含有量は、好ましくは7.5質量%以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
【0055】
ハイドロタルサイト以外の受酸剤としては、特に限定されないが、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0056】
<架橋促進剤>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、架橋促進剤をさらに含むことが好ましい。
【0057】
架橋促進剤としては、特に限定されないが、脂肪族1価2級アミン化合物、脂肪族1価3級アミン化合物、グアニジン化合物、第4級オニウム塩、第3級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩、ジアザビシクロアルケン化合物等が挙げられる。これらの中でも、グアニジン化合物が好ましく、ジアリールグアニジンがより好ましい。
【0058】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中の架橋促進剤の含有量は、好ましくは0.1~2.0質量%である。
【0059】
<架橋遅延剤>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、架橋遅延剤をさらに含むことが好ましい。
【0060】
架橋遅延剤としては、特に限定されないが、チオイミド化合物、スルホンアミド化合物等が挙げられる。これらの中でも、チオイミド化合物が好ましく、N-シクロヘキシルチオフタルイミドがより好ましい。
【0061】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中の架橋遅延剤の含有量は、好ましくは0.2~2.0質量%である。
【0062】
<シランカップリング剤>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことが好ましい。
【0063】
シランカップリング剤としては、公知のシランカップリング剤を用いることができるが、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。これらの中でも、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0064】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量は、好ましくは0.2~2.0質量%であり、より好ましくは0.3~3.0質量%である。
【0065】
<配合剤>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、必要に応じて、ゴム加工分野において、通常使用される配合剤をさらに含んでいてもよい。
【0066】
配合剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック以外の充填剤、老化防止剤、ステアリン酸以外の加工助剤等が挙げられる。
【0067】
シリカ、カーボンブラック以外の充填剤としては、公知の充填剤を用いることができるが、例えば、黒鉛(グラファイト)等の炭素系材料;アルミニウム粉末等の金属粉;ハードクレー、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機粉末;デンプン、ポリスチレン粉末等の有機粉末等の粉体;ガラス繊維(ミルドファイバー)、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウムウィスカー等の短繊維;マイカ等が挙げられる。
【0068】
老化防止剤としては、公知の老化防止剤を用いることができるが、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、リン酸系化合物、硫黄系化合物等が挙げられる。
【0069】
ステアリン酸以外の加工助剤としては、公知の加工助剤を用いることができるが、例えば、脂肪酸系ワックス、脂肪酸アミド系ワックス、脂肪酸エステルワックス、脂肪アルコール系ワックス、脂肪酸と多価アルコールとの部分エステル系ワックス等が挙げられる。
【0070】
<ゴム、エラストマー、樹脂>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物は、必要に応じて、エピハロヒドリンゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂等をさらに含んでいてもよい。
【0071】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物中のエピハロヒドリンゴムに対する、エピハロヒドリンゴム以外のゴム、エラストマー、樹脂の質量比は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは10%以下である。
【0072】
エピハロヒドリンゴム以外のゴムとしては、例えば、天然ゴム、アクリルゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0073】
エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリシロキサン系エラストマー等が挙げられる。
【0074】
樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。
【0075】
<エピハロヒドリンゴム組成物の製造方法>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物を製造する際には、ロール、バンバリーミキサー、スクリュー混合機等の混合機を適宜使用することができる。
【0076】
<エピハロヒドリンゴム架橋物>
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム架橋物は、本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物が架橋している。
【0077】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム架橋物は、本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム組成物を成形することにより製造することができる。ここで、エピハロヒドリンゴム組成物を成形する際に加熱する、又は、エピハロヒドリンゴム組成物を成形した後に加熱することにより、エピハロヒドリンゴム組成物を架橋させることができる。
【0078】
エピハロヒドリンゴム組成物の成形法としては、押出成形法、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法等の公知の成形法を用いることができる。これらの中でも、射出成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法等の型を使用する成形法が好ましく、射出成形法がより好ましい。
【0079】
なお、エピハロヒドリンゴム架橋物を製造する際に、エピハロヒドリンゴム組成物を一次架橋させて一次架橋物とした後、一次架橋物を二次架橋させてもよい。
【0080】
エピハロヒドリンゴム組成物の架橋条件としては、特に限定されない。
【0081】
例えば、エピハロヒドリンゴム組成物を140~180℃で2~60分間一次架橋させて一次架橋物とした後、一次架橋物を140~180℃で1.0~5.0時間二次架橋させる。
【0082】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム架橋物の形状としては、特に限定されないが、板状、球状、棒状、円柱状、筒状、フィルム状、シート状、繊維状等が挙げられる。
【0083】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム架橋物は、必要に応じて、積層、ワニス塗布、塗料塗布、化学メッキ、真空メッキ等の二次加工が施されていてもよい。
【0084】
本実施形態に係るエピハロヒドリンゴム架橋物の用途としては、特に限定されないが、ホース、チューブ、ダイヤフラム、パッキン、ガスケット等が挙げられる。これらの中でも、エアダクトホース、VSV(バキュームスイッチングバルブ)ホース、燃料ホース、エバポホース、パージホース、PCV(ポジティブクランクケースベンチレーション)ホースなどの自動車用ホース、チューブが好ましく、自動車用のエアダクトホースが特に好ましい。
【実施例
【0085】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。なお、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、質量基準である。
【0086】
後述する方法により調製したエピクロロヒドリンゴム組成物を用いて、以下の方法により、架橋試験、加工性試験を実施した。また、エピクロロヒドリンゴム架橋物の常態物性を評価すると共に、エピクロロヒドリンゴム架橋物の圧縮永久歪み試験、金属腐食試験を実施した。
【0087】
(1)エピクロロヒドリンゴム組成物の架橋試験(MDR試験)
23℃、55%RHの環境下、エピクロロヒドリンゴム組成物を24時間放置した後、JIS K6300-2:2001に準拠して、レオメーターMDR2000(アルファテクノロジーズ社製)を用いて、160℃で30分間架橋させ、最大トルク(MH)を測定した。
【0088】
(2)エピクロロヒドリンゴム組成物の加工性試験
23℃、55%RHの環境下、エピクロロヒドリンゴム組成物を24時間放置した後、
JIS K6300-1:2013のムーニースコーチ試験に準拠して、L型ロータを用いて、125℃でムーニー粘度の最低値Vmを測定し、以下の基準で判定した。
【0089】
1:Vmが50以上70以下である場合
2:Vmが45以上50未満、または、70を超え、75以下である場合
3:Vmが40以上45未満、または、75を超え、80以下である場合
4:Vmが40未満、または、80を超える場合
なお、エピクロロヒドリンゴム組成物の加工性は、基準が3以下であると、許容範囲であるが、基準が2以下であることが好ましい。
【0090】
(3)エピクロロヒドリンゴム架橋物の常態物性
エピクロロヒドリンゴム組成物を160℃で20分間プレス成形することにより、一次架橋させ、縦15cm×横15cm×厚さ2mmの一次架橋物(シート)を得た。次に、オーブンを用いて、一次架橋物を150℃で4時間加熱することにより、二次架橋させ、二次架橋物(シート)を得た。次に、二次架橋物から、JIS3号ダンベル形状の試験片を切り出した。次に、JIS 6251に準拠して、引張強さ、破断伸び及び100%引張応力を測定した。また、JIS K6253に準拠して、3秒後の硬さ(Duro A)を測定した。
【0091】
(4)エピクロロヒドリンゴム架橋物の圧縮永久歪み試験
(3)と同一の架橋条件で、直径29.0mm、厚さ12.5mmの二次架橋物を得た。次に、JIS K6262に準拠して、135℃、70時間の条件で、二次架橋物の圧縮永久歪み(Cs)を測定した。
【0092】
(5)エピクロロヒドリンゴム架橋物の金属腐食試験
(3)と同様にして、二次架橋物を得た。二次架橋物から、縦20mm×横10mm×厚さ2mmのサイズで切り出した後、縦40mm×横15mm×厚さ3mmの軟鉄(SPCC-SB)板の間に挟み、試料を得た。次に、40℃、90%RHの環境下、試料を7日間放置し、試料を剥離した後、軟鉄の腐食面積率(二次架橋物と接触していた面積に対する腐食している面積の割合)を測定し、軟鉄の腐食度を評価した。なお、軟鉄の腐食度は、以下の基準で判定した。
【0093】
0:軟鉄の腐食面積率が1%未満である場合
1:軟鉄の腐食面積率が1%以上5%未満である場合
2:軟鉄の腐食面積率が5%以上20%未満である場合
3:軟鉄の腐食面積率が20%以上60%未満である場合
4:軟鉄の腐食面積率が60%以上90%未満である場合
5:軟鉄の腐食面積率が90%以上である場合
なお、軟鉄の腐食度は、基準が3以下であると、許容範囲であるが、基準が2以下であることが好ましい。
【0094】
[実施例1]
エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合体)「Hydrin(登録商標) T3105」(日本ゼオン社製)100部に、充填剤(カーボンブラック)「シーストSO(登録商標)(FEF)」(東海カーボン社製)20部、充填剤(湿式シリカ)「ニプシル(登録商標)VN-3」(東ソー・シリカ社製)55部、可塑剤(ポリエーテルエステル系化合物)「アデカサイザー(登録商標)RS735」(ADEKA社製)20部、加工助剤(脂肪酸エステル)「スプレンダーR300V」(花王社製)3.0部、受酸剤(ハイドロタルサイト)「DHT-4C」(協和化学工業社製)10部を添加した後、バンバリーミキサーを用いて、50℃で5分間混練し、混練物を得た。ここで、ハイドロタルサイトは、180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率(HL)が1.2%であった。また、湿式シリカは、pHが6.0であった。
【0095】
得られた混練物に、架橋剤(2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン)「ZISNET(登録商標)-F」(三協化成社製)1.4部、架橋促進剤(ジフェニルグアニジン)「ノクセラー(登録商標)D」(大内新興化学工業社製)0.8部、老化防止剤(ジブチルチオカルバミン酸ニッケル)「ノクラック(登録商標)NBC」(大内新興化学工業社製)1.0部、老化防止剤(4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン)「ノクラック(登録商標)CD」(大内新興化学工業社製)1.0部、架橋遅延剤(N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド)「リターダーCTP」(大内新興化学工業社製)1.0部、シランカップリング剤(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)「KBM803」(信越シリコーン社製)1.0部を添加した後、オープンロールを用いて、50℃で混練し、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.7質量%、9.3質量%である。
【0096】
[実施例2]
ハイドロタルサイトのHLを4.7%に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、ハイドロタルサイトのHLは、吸湿させることにより調整した。また、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.7質量%、9.3質量%である。
【0097】
[実施例3]
ハイドロタルサイト10部の代わりに、ハイドロタルサイト7.5部及び加工助剤(ステアリン酸)3.0部を用い、架橋剤の添加量を1.5部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.6質量%、9.3質量%である。
【0098】
[実施例4]
ハイドロタルサイト「DHT-4C」(協和化学工業社製)の代わりに、ステアリン酸で表面処理されているハイドロタルサイト「DHT-4A-2」(協和化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、ステアリン酸で表面処理されているハイドロタルサイトは、HLが1.6%であった。また、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.7質量%、9.3質量%である。
【0099】
[実施例5]
カーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の添加量を、それぞれ14部、60部、17部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ6.7質量%、28.5質量%、8.1質量%である。
【0100】
[実施例6]
カーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の添加量を、それぞれ40部、35部、20部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ18.7質量%、16.3質量%、9.3質量%である。
【0101】
[実施例7]
カーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の添加量を、それぞれ22部、50部、13部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ10.8質量%、24.5質量%、6.4質量%である。
【0102】
[実施例8]
カーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の添加量を、それぞれ30部、70部、50部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ11.1質量%、26.0質量%、18.6質量%である。
【0103】
[実施例9]
カーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の添加量を、それぞれ33部、58部、38部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ13.3質量%、23.4質量%、15.3質量%である。
【0104】
[実施例10]
カーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の添加量を、それぞれ8部、90部、45部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ3.1質量%、34.3質量%、17.2質量%である。
【0105】
[比較例1]
ハイドロタルサイトのHLを8.1%に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、ハイドロタルサイトのHLは、吸湿させることにより調整した。また、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.7質量%、9.3質量%である。
【0106】
[比較例2]
ハイドロタルサイトのHLを13.8%に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、ハイドロタルサイトのHLは、吸湿させることにより調整した。また、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.7質量%、9.3質量%である。
【0107】
[比較例3]
エピクロロヒドリンゴム(エピクロロヒドリン-エチレンオキサイド-アリルグリシジルエーテル共重合体)「Hydrin(登録商標) T3105」(日本ゼオン社製)100部に、充填剤(カーボンブラック)「シーストSO(登録商標)(FEF)」(東海カーボン社製)70部、充填剤(炭酸カルシウム)「白艶華CC」(白石カルシウム社製)5部、可塑剤(ポリエーテルエステル系化合物)「アデカサイザー(登録商標)RS735」(ADEKA社製)20部、加工助剤(脂肪酸エステル)「スプレンダーR300V」(花王社製)3.0部、受酸剤(ハイドロタルサイト)「DHT-4C」(協和化学工業社製)10部を添加した後、バンバリーミキサーを用いて、50℃で5分間混練し、混練物を得た。ここで、ハイドロタルサイトは、180℃で1時間加熱する前後の質量の変化率(HL)が1.2%であった。
【0108】
得られた混練物に、架橋剤(2,4,6-トリメルカプト-s-トリアジン)「ZISNET(登録商標)-F」(三協化成社製)1.2部、架橋促進剤(ジフェニルグアニジン)「ノクセラー(登録商標)D」(大内新興化学工業社製)0.8部、老化防止剤(ジブチルチオカルバミン酸ニッケル)「ノクラック(登録商標)NBC」(大内新興化学工業社製)1.0部、架橋遅延剤(N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド)「リターダーCTP」(大内新興化学工業社製)1.0部を添加した後、オープンロールを用いて、50℃で混練することにより、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ33.0質量%、0質量%、9.4質量%である。
【0109】
[比較例4]
受酸剤として、水酸化アルミニウム「キョウワード(登録商標)200」(協和化学工業社製)を用い、架橋剤、架橋遅延剤の添加量を0.9部、0.8部に変更した以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.4質量%、25.8質量%、9.4質量%である。
【0110】
[比較例5]
受酸剤として、酸化マグネシウム「キョウワマグ#150」(協和化学工業社製)を用いた以外は、比較例4と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.6質量%、26.4質量%、9.6質量%である。
【0111】
[比較例6]
受酸剤として、ハイドロタルサイト「DHT-4A」(協和化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして、エピクロロヒドリンゴム組成物を調製した。ここで、ハイドロタルサイトは、HLが12.5%であった。また、エピクロロヒドリンゴム組成物中のカーボンブラック、湿式シリカ、ポリエーテルエステル系化合物の含有量は、それぞれ9.3質量%、25.7質量%、9.3質量%である。
【0112】
表1に、エピクロロヒドリンゴム組成物の最大トルク(MH)、加工性と、エピクロロヒドリンゴム架橋物の常態物性、圧縮永久歪み(Cs)、腐食度の評価結果を示す。
【0113】
【表1】
表1から、実施例1~10のエピクロロヒドリンゴム組成物は、エピクロロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性と耐圧縮永久歪み性に優れることがわかる。
【0114】
これに対して、比較例1、2、6のエピクロロヒドリンゴム組成物は、ハイドロタルサイトのHLが8.1%、13.8%、12.5%であるため、エピクロロヒドリンゴム架橋物の耐圧縮永久歪み性が低い。
【0115】
また、比較例3のエピクロロヒドリンゴム組成物は、充填剤として、シリカが用いられていないため、エピクロロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性が低い。
【0116】
さらに、比較例4、5のエピクロロヒドリンゴム組成物は、受酸剤として、ハイドロタルサイトが用いられていないため、エピクロロヒドリンゴム架橋物の耐金属腐食性が低い。
【0117】
以上、本発明の実施形態、実施例を説明したが、本発明は、特定の実施形態、実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0118】
本願は、日本特許庁に2018年2月21日に出願された基礎出願2018-029157号の優先権を主張するものであり、その全内容を参照によりここに援用する。