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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ウレタン基を有するアミン官能性化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20230301BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230301BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20230301BHJP
   C09K 23/00 20220101ALI20230301BHJP
【FI】
C08G18/32 050
C08G18/42 044
C08G18/79 080
C09K23/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021538903
(86)(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019073125
(87)【国際公開番号】W WO2020057933
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】18195271.4
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンキー ギヨーム ヴォイチェフ
(72)【発明者】
【氏名】オケル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ギーベルハウス イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンズ マルクス
(72)【発明者】
【氏名】トイフセン ハンス-ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ベーマ イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォゲル アン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-031471(JP,A)
【文献】国際公開第2008/047562(WO,A1)
【文献】株式会社日本触媒,ポリエチレンイミン(エポミン(R))概要,2022年05月23日,インターネット: <URL: https://www.shokubai.co.jp/ja/products/detail/epomin1.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.少なくとも1つのエーテル単位および少なくとも1つのエステル単位からなり、前記エーテル単位および前記エステル単位がエーテル連結またはエステル連結によって接続され、前記エーテル単位および前記エステル単位の数の合計が少なくとも3つであり、前記エーテル単位および前記エステル単位がランダムな順序で配置されている、少なくとも1つのセグメントと、
ii.第三級アミン基、第三級アミン基の塩、および第四級アンモニウム基から選択される少なくとも1つのアミン基iiと、
を含み、ここで、各セグメントiは、前記少なくとも1つのアミン基iiに、ウレタン基と、ビウレット基およびアロファネート基から選択される別の基とを含む連結を介して共有結合で連結されている、アミン官能性化合物。
【請求項2】
各セグメントは、2つのエステル連結間の最も大きな部分により画定され、前記エーテル単位および前記エステル単位の数の合計が少なくとも3つであり、前記少なくとも1つのセグメントは、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数およびエーテル単位Eの平均数を有し、ここで、式(I):L/(E-1)に従って比率Rが規定され、Eは1.0より大きく、かつRは1.0より小さい、請求項1に記載のアミン官能性化合物。
【請求項3】
前記比率Rは0.9よりも小さい、請求項2に記載のアミン官能性化合物。
【請求項4】
前記比率Rは0.0に等しい、請求項2または3に記載のアミン官能性化合物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの(各)セグメントは、19:1~1:1の範囲内の前記エステル単位と前記エーテル単位との間のモル比を有する、請求項1~のいずれか一項に記載のアミン官能性化合物。
【請求項6】
前記エーテル単位は、式(IV)-[CR30 -O-(式中、nは、2または3の整数であり、R30は、互いに独立して、1個~25個の炭素原子を有する有機基または水素を表す)からなる群から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載のアミン官能性化合物。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載のアミン官能性化合物の、分散剤としての使用。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載のアミン官能性化合物の、湿潤剤としての使用。
【請求項9】
粒子と、請求項1~のいずれか一項に記載のアミン官能性化合物とを含む組成物。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載のアミン官能性化合物を製造する方法であって、
a)環状エステルと環状エーテルとを一緒に開環重合反応において反応させることによってセグメントを作製する工程と、
ここで、前記開環重合反応は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、および第二級アミン基から選択される少なくとも1つの官能基を含む重合開始化合物によって開始され、
b)工程a)の前記セグメントをカップリング剤で転化させて、少なくとも1つのアミン基iiを前記セグメントに共有結合で連結させる工程と、
を含み、
前記カップリング剤は、ウレトジオン基を含む1つ以上の多官能性イソシアネートであり、
工程b)は、
前記1つ以上の多官能性イソシアネートを、工程a)の前記セグメントと反応させる工程b1)と、
少なくとも1つの第三級アミン基を含むアミン化合物を反応させて、前記アミン基iiを、工程a)の前記セグメントに共有結合で連結させる工程b2)とを含む、
方法。
【請求項11】
前記アミン化合物は、第一級アミン基および第二級アミン基から選択される少なくとも1つの反応性基を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応工程b1)は工程b2)の前に実施され、工程b2)は前記アミン化合物を前記反応工程b1)の生成物にカップリングさせることを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
工程a)において、前記環状エステルおよび前記環状エーテルは、反応条件で維持されている反応混合物中に同時に添加される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程a)において、前記重合開始化合物は、反応条件で維持されている前記環状エステルおよび前記環状エーテルを含む反応混合物に添加される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン官能性化合物、アミン官能性化合物の使用、アミン官能性化合物を含む組成物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶解形または分散形で液体中に存在する湿潤剤は、表面張力または界面張力を低下させるため、その液体の湿潤能力を高める。このように、湿潤剤は、表面を液体によって濡れ易くさせる。
【0003】
分散剤は一般に、バインダー、塗料、コーティング、顔料ペースト、プラスチックおよびプラスチックブレンド、接着剤、ならびにシーリングコンパウンド中で固体粒子を安定化するため、対応する系の粘度を下げるため、ならびに流動特性を改善するために適している。
【0004】
固体を液体媒体中に導入し得るようにするには、高い機械的力が必要である。分散剤を使用して分散力を減らし、固体粒子の解膠に必要な系への総エネルギー入力を最小限に抑え、こうしてまた分散時間を最小限に抑えることは通例である。この種の分散剤は、アニオン性構造、カチオン性構造、および/または中性構造の界面活性物質である。これらの物質は少量で固体に直接適用されるか、または分散媒に添加される。凝集された固体を分散操作後に一次粒子に完全に解膠した後に、再凝集することによって、分散の労力が完全にまたは部分的に無効化される場合があることも知られている。
【0005】
不十分な分散および/または再凝集の結果として、典型的には、色違い、液体系における粘度の増加、塗料およびコーティングにおける光沢の喪失、ならびにプラスチックにおける機械的強度および材料均一性の低下などの不所望な効果が生ずる。
【0006】
実際には、湿潤剤および/または分散剤として使用するために、様々な種類の化合物が検討され得る。これは特に、多岐にわたるバインダーと顔料、充填剤および繊維などの種々の被分散粒子とを基礎とする多くの様々な種類の系が存在するということに起因している。顔料および充填剤の分散に関しては、分散剤は、カチオン官能性の分散剤を得るために官能基として第三級アミン基またはその誘導体を含み得る。
【0007】
特許文献1は、ポリアミン付加化合物、それらの製造方法、湿潤剤および分散剤としてのそれらの使用、ならびに上記付加化合物を含有する塗料およびプラスチック材料を記載している。
【0008】
現在使用されている有機顔料または無機顔料の多様性の点から、十分な安定化が十分に保証されていないため、分散剤の性能をさらに改善することが依然として求められている。特に、ポリエステルセグメントを含む分散剤は、低温、例えば10℃以下で結晶化する傾向に悩まされる場合がある。特に、ポリカプロラクトンセグメントは、低温で結晶化する傾向が強い。分散剤の分散能力は、分散剤の結晶化のせいで悪影響を受ける可能性があり、得られた分散液は不十分な分散および/または再凝集を起こし易い場合がある。これは、色ずれ、光沢の喪失、および/または分散系の粘度の増加を引き起こす場合がある。さらに、分散剤の結晶化によって、分散剤自体の添加などの取り扱いに悪影響が及ぼされる可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2017/0190840号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、既知の技術水準の分散剤の上記の欠点を排除すること、すなわち、粒子の効果的な安定化をもたらす分散剤、特に顔料を分散させる分散剤を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、
i.少なくとも1つのエーテル単位および少なくとも1つのエステル単位からなり、エーテル単位およびエステル単位がエーテル連結またはエステル連結によって接続され、エーテル単位およびエステル単位の数の合計が少なくとも3であり、エーテル単位およびエステル単位がランダムな順序で配置されている、少なくとも1つのセグメントと、
ii.第三級アミン基、第三級アミン基の塩、および第四級アンモニウム基から選択される少なくとも1つのアミン基iiと、
を含み、各セグメントiは、少なくとも1つのアミン基iiに、ウレタン基ならびにウレタン基、尿素基、ビウレット基およびアロファネート基から選択される別の基を含む連結を介して共有結合で連結されている、アミン官能性化合物を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、
i.少なくとも1つのエーテル単位および少なくとも1つのエステル単位からなり、エーテル単位およびエステル単位がエーテル連結またはエステル連結によって接続され、各セグメントは2つのエステル連結間の最も大きな部分により画定され、エーテル単位およびエステル単位の数の合計が少なくとも3であり、少なくとも1つのセグメントは、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数およびエーテル単位Eの平均数を有し、式(I):L/(E-1)により比率Rが規定され、Eが1.0より大きい場合にRは1.0より小さく、かつEが1.0と等しい場合にLは0.0より大きい、少なくとも1つのセグメントと、
ii.第三級アミン基、第三級アミン基の塩、および第四級アンモニウム基から選択される少なくとも1つのアミン基iiと、
を含み、各セグメントiは、少なくとも1つのアミン基iiにウレタン基ならびにウレタン基、尿素基、ビウレット基およびアロファネート基から選択される別の基を含む連結を介して共有結合で連結されている、アミン官能性化合物を提供する。
【0013】
各セグメントのエーテル単位(ia)およびエステル単位(ib)は、エーテル連結またはエステル連結によって互いに接続されている。エーテル単位(ia)は、オキシランモノマーまたはオキセタンモノマーなどの環状エーテルモノマーの開環重合反応によって形成され得る。エステル単位(ib)は、ラクトンモノマー、例えばε-カプロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合反応によって形成され得る。
【0014】
エーテル連結は、オキシ結合、すなわち-O-として規定される。エーテル連結は、2つの隣接するエーテル単位間に形成され得て、エーテル単位とエステルモノマーのヒドロキシル末端位置のエステル単位との間に形成され得る。
【0015】
エステル連結は、カルボン酸エステル結合:
【化1】

として規定される。
【0016】
エステル連結は、2つの隣接するエステル単位間に形成され得て、エーテル単位とエステルモノマーのカルボン酸末端位置のエステル単位との間に形成され得る。
【0017】
少なくとも1つのセグメントiは、少なくとも1つのエーテル単位(ia)および少なくとも1つのエステル単位(ib)からなる。少なくとも1つのセグメントiのそれぞれは、エーテル単位iaおよびエステル単位ibから構成される少なくとも3つの単位を合計で有する。したがって、少なくとも1つのセグメントのエーテル単位Eの平均数は少なくとも1.0である。Eが1.0と等しい場合に、Lは0.0より大きい必要がある。Eが1.0より大きい場合に、式(I)による比率Rは1.0より小さい。
【0018】
セグメント内のエーテル単位およびエステル単位の配列は、本発明の基本的な態様である。一方では、エーテル単位またはエステル単位のいずれかの対応するブロック構造を提供することが一般的に可能である。他方では、構造単位が多かれ少なかれランダムにセグメントへと共重合される構造(ランダムコポリマー型など)を作製することが可能である。本発明によれば、各セグメントは、エステル単位およびエーテル単位の配列を提供し、ここで、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数および比率Rは、エステル単位およびエーテル単位がセグメント内でどれほどランダムに配置されているかの定量的な尺度として提供される。
【0019】
式(I)による比率Rは、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結として規定されるエーテル連結Lの平均数が、エーテル単位とエステル単位とが配列に沿って交番する(統計的または非統計的な)確率に関連しているという理解に基づいている。例えば、配列がポリエーテルブロックおよびポリエステルブロックの2ブロック構造によって形成されている場合に、2つの隣接するエーテル単位L間のエーテル連結の平均数は、セグメント内のエーテル単位Eの平均数の合計から1つのエーテル単位を引いたもの(すなわち、E-1)に等しくなる。したがって、ポリエーテルブロックおよびポリエステルブロックの2ブロック構造の場合に、Lは(E-1)に等しいため、式(I)は1.0に等しい。
【0020】
セグメントが1つ以上のエステル単位によって中断されているエーテル単位の幾つかの配列を有する場合に、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数は相応して減少するのに対して、セグメント内のエーテル単位Eの平均数は一定に保持され得る。結果として、比率Rは相応して1.0未満であり、すなわち、
R=L/(E-1)<1.0
である。
【0021】
比率Rが1.0より小さい場合に、アミン官能性化合物は、分散剤としての分散能力の向上などの特性の向上をもたらす。特に、より低い温度でアミン官能性化合物によってもたらされる分散安定性は、結晶化への傾向がより少ないため改善され得る。アミン官能性化合物を分散剤として使用する場合に、アミン官能性化合物の特性の向上は、鮮明な色、増強された光沢、および/または分散液の粘度の低下であり得る。さらに、結晶化に対する傾向が低いため、添加剤組成物中でのアミン官能性化合物は、より取り扱い易い。
【0022】
アミン基ii
本発明では、アミン官能性化合物は、少なくとも1つのアミン基iiを含む。
【0023】
第三級アミン基、第三級アミン基の塩、および第四級アンモニウム基から適切に選択されるアミン官能性化合物の少なくとも1つのアミン基iiは、分散液の粒子または繊維に親和性結合する官能基を提供する。さらに、アミン官能性化合物の少なくとも1つのアミン基iiは、第一級アミン基および第二級アミン基と比較して、エポキシド系などの求核性硬化可能な系の硬化反応に対して実質的に加速効果を有しないか、または少なくとも低減された効果を有する。
【0024】
第三級アミンの塩誘導体および第四級アンモニウム基
本発明によるアミン官能性化合物の塩形成生成物は、米国特許出願公開第2005/0250927号明細書の、特に段落[0078]~[0079](引用することにより本明細書に援用する)に記載されるように、第三級アミン基の塩形成方法の従来技術と同様に実施することができる。
【0025】
アミン官能性化合物は、第四級アンモニウム基を含み得る。上記第四級アンモニウム基は、アミン官能性化合物の第三級アミン基の第四級化反応によって得ることができる。
【0026】
適切な第四級化剤は、ハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アラルキル、または酸の存在下でのエポキシド、例えばグリシジルエーテルから選択され得る。典型的には、塩化ベンジル、2-ビニルベンジルクロリドもしくは4-ビニルベンジルクロリド、塩化メチルまたはヨウ化メチルのようなハロゲン化アルキルおよびハロゲン化アラルキルを使用することができる。さらに、トシル酸メチルのようなトシレートを使用することができる。適切なグリシジルエーテルの例は、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルおよびC13/C15-アルキルグリシジルエーテルのようなアルキルグリシジルエーテル、またはクレシルグリシジルエーテルのようなアリールグリシジルエーテル、ならびにメタクリル酸グリシジルである。この第四級化反応で使用される酸の例は、安息香酸、酢酸、または乳酸のようなカルボン酸である。さらなる酸は、1つまたは2つのエステル置換基を有するリン酸エステルである。塩化ベンジル、4-ビニルベンジルクロリドおよびメタクリル酸グリシジルとカルボン酸との組み合わせが好ましい。
【0027】
さらなる実施形態では、第四級化は、式(V)
【化2】

(式中、
Xは、第三級アミン基との求核置換反応を受けることができるハロゲン化物、トリフレート、またはトシレートのような、いわゆる脱離基であり、かつ
は、1個~8個の炭素原子を有する線状または分岐状の炭化水素基である)の第四級化剤を用いて実施される。
【0028】
一般式(V)の好ましい化合物は、モノクロロ酢酸、トシル化乳酸などの乳酸の誘導体、モノクロロプロピオン酸、および脱離基で置換されたより高級の同族カルボン酸である。
【0029】
1つ以上の種類の第四級化剤を、同時にまたは続けて使用することができる。
【0030】
連結
各セグメントiは、少なくとも1つのアミン基iiに、ウレタン基ならびにウレタン基、尿素基、ビウレット基およびアロファネート基から選択される別の基を含む連結を介して共有結合で連結されている。
【0031】
連結は、カップリング剤の2つのイソシアネート基のカップリング反応により形成される。カップリング剤は、1つ以上の多官能性イソシアネートである。カップリング剤のイソシアネート基は、封鎖されていない状態で入手可能であり得る。
【0032】
実施形態では、連結は、モノマージイソシアネート化合物などの1つのモノマーの多官能性イソシアネートによって提供される。例えば、カップリング剤は、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物である。封鎖されていないイソシアネート基のみを有するカップリング剤としてジイソシアネート化合物が使用される場合に、カップリング反応により形成される連結は、ウレタン基とウレタン基および尿素基から選択される別の基とを含む。
【0033】
少なくとも2つのイソシアネート基を含む化合物の例は、脂肪族、脂環式、および芳香族のポリイソシアネート、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、α,α’-ジプロピルエーテルジイソシアネート、1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,2-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシレンジイソシアネートメタン、m-フェニレンジイソシアネートおよびp-フェニレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼンおよび1,4-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,5-ジメチル-2,4-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4-トルエンジイソシアネートおよび2,6-トルエンジイソシアネート、2,4,6-トルエントリイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルo-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、およびp-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニレンジイソシアネートメタン、4,4’-ジフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジフェニルレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびトランスビニリデンジイソシアネート、ならびに上述のポリイソシアネートの混合物である。
【0034】
代替的な実施形態では、連結は、少なくとも2つのモノマーの多官能性イソシアネートから構成されるポリイソシアネート構造を含むカップリング剤を使用して作製される。ポリイソシアネート構造は、2つのモノマーの多官能性イソシアネートから構成される二量体構造であってもよく、3つのモノマーの多官能性イソシアネートから構成される三量体構造であってもよく、そして4つ以上のモノマーの多官能性イソシアネートから構成されるオリゴマー構造であってもよい。
【0035】
実施形態では、ポリイソシアネート構造は、少なくとも1つのイソシアネート基を有してよく、そして少なくとも1つの封鎖されたイソシアネート基を有してよい。少なくとも1つのイソシアネート基および封鎖されたイソシアネート基を有する多官能性イソシアネートの既知の例は、ウレトジオン基を含む多官能性イソシアネートである。
【0036】
ポリイソシアネート構造を有する化合物は、ポリイソシアネートの付加物、例えば、ビウレット、イソシアヌレート、アロフォネート、ウレトジオン、およびそれらの混合物であり得る。そのような付加物の例は、2分子のヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートおよびエチレングリコールなどのジオールの付加物、3分子のヘキサメチレンジイソシアネートおよび1分子の水の付加物、1分子のトリメチロールプロパンおよび3分子のイソホロンジイソシアネートの付加物、1分子のペンタエリトリトールおよび4分子のトルエンジイソシアネートの付加物、商品名「DESMODUR(登録商標)」N3390としてCovestro社から入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート、商品名「DESMODUR(登録商標)」N3400としてCovestro社から入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオン、商品名「DESMODUR(登録商標)」LS2101としてCovestro社から入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート、ならびに商品名「VESTANATE(登録商標)」T1890としてEvonik社から入手可能なイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレートである。さらに、α,α’-ジメチル-m-イソプロペニルベンジルイソシアネートなどのイソシアネート官能性モノマーの(コ)ポリマーが使用に適している。最後に、上述のイソシアネートおよびそれらの付加物は、当業者に知られる封鎖されたイソシアネートの形で存在し得る。
【0037】
例示的な実施形態では、カップリング剤は、少なくとも1つのイソシアネート基および少なくとも1つのウレトジオン基を含む多官能性イソシアネートである。(封鎖されていない)イソシアネート基は、本発明によるセグメントのヒドロキシル官能基との反応によってウレタン基を形成する。さらに、カップリング剤のウレトジオン基は、二量体化された2つのイソシアネート基から構成されている。ウレトジオン基の二量体構造は、2つのイソシアネート基に封鎖された状態をもたらす。ウレトジオン基は、適切な反応条件下で他の化合物の第一級アミン基、第二級アミン基、またはヒドロキシル基などの反応性基と反応し、それによりビウレット基またはアロファネート基を形成し得る。
【0038】
カップリング剤としてウレトジオン基を含む多官能性イソシアネートが使用される場合に、形成される連結は、ウレタン基とビウレット基およびアロファネート基から選択される別の基とを含む。
【0039】
さらなる実施形態では、ポリイソシアネート構造は、多官能性イソシアネートの三量体またはより高級のオリゴマーを含み得る。上記三量体およびより高級のオリゴマーは、少なくとも1つのイソシアヌレート環を含む。ポリイソシアネート構造は、3つのモノマージイソシアネートから構成される1つのイソシアヌレート環を含んでもよく、5つ以上のモノマージイソシアネートから構成される2つのイソシアヌレート環を含んでもよく、そして3つ以上のイソシアヌレート環を含んでもよい。1つのイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート構造の例は、Covestro社から入手可能なDesmodur ILポリイソシアネートである。
【0040】
実施形態では、カップリング剤は、少なくとも1つのイソシアヌレート環を含み、少なくとも2つのイソシアネート基を含む多官能性イソシアネートである。上記実施形態では、連結は、多官能性イソシアネートの2つのイソシアネート基を反応させることによって形成され、ここで、形成された連結は、少なくとも1つのイソシアヌレート環と、ウレタン基と、ウレタン基および尿素基から選択される別の基とを含む。
【0041】
実施形態では、カップリング剤は、ウレトジオン基を含む多官能性イソシアネートである。上記実施形態では、連結は、少なくとも1つのウレトジオン基を含む1つ以上の多官能性イソシアネートを使用することによって形成される。例示的な実施形態では、アミン官能性化合物は、付加反応において、
a)ウレトジオン基を含む1つ以上の多官能性イソシアネートと、
b)式(II)
Y-(OH) (II)
(式中、
OHは、イソシアネートに対して反応性であるヒドロキシル基であり、nは、少なくとも1の整数であり、かつ
Yは、イソシアネートに対して反応性ではない直鎖または分岐鎖であるモノマー基またはポリマー基である)を有する1つ以上の化合物(ここで、式(II)を有する化合物の少なくとも1つは、本発明によるセグメントiを含む)、および
c)式(III)
Z-(X-H) (III)
の1つ以上のアミン化合物と、
を反応させることによって形成される。
【0042】
式中、Xは、O、NH、および/またはNRによって表され、かつmは、1~100である。通常、Rは、独立して選択され、Zの炭素原子への化学結合および/または1個~20個の炭素原子を含む独立して選択された有機基によって表され、mは、少なくとも1の整数であり、かつZは、脂肪族、環状脂肪族、および/または芳香族の塩基性基であり、ここで、Zは、少なくとも1つの第三級アミン基を含む。
【0043】
したがって、反応性基(X-H)は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、または第二級アミン基である。式(III)のアミン化合物c)は、少なくとも1つの第三級アミン基を含む。
【0044】
反応の生成物はまた、それらの塩形成生成物の形で使用され得る。特に、第三級アミン基iiからの塩が使用され得る。
【0045】
連結のウレタン基は、1つ以上の多官能性イソシアネートa)のイソシアネート基と、式(II)を有する1つ以上の化合物b)のヒドロキシル基との反応により形成される。
【0046】
さらに、1つ以上の多官能性イソシアネートのウレトジオン基a)と、式(III)の1つ以上のアミン化合物c)の反応性基との反応により、1つ以上のアミン化合物c)の反応性基(X-H)に応じて、ビウレット基およびアロファネート基の少なくとも1つが形成される。
【0047】
本発明によるアミン官能性化合物の調製のために、米国特許出願公開第2005/0250927号明細書の、特に段落[0029]~[0031](引用することにより本明細書に援用する)に記載されるような、従来技術のウレトジオン基を含む多官能性イソシアネートが、本発明による多官能性イソシアネートa)の例示的実施形態として使用され得る。
【0048】
式(II)を有する化合物の少なくとも1つは、本発明によるセグメントiを含む。セグメントiを含む式(II)を有する適切な化合物は、本明細書に記載される方法に従って調製され得る。さらに、ランダムな順序のエーテル単位およびエステル単位を有するセグメントiを作製する従来技術の作製方法は知られている。
【0049】
本発明によるアミン官能性化合物の調製のために、さらに、すなわち式(II)を有し、本発明によるセグメントiを含む化合物に加えて、式(II)を有する従来技術の化合物が使用され得る。本発明による化合物(II)の例示的実施形態として、セグメントiを有しない式(II)を有する適切な化合物が、米国特許出願公開第2005/0250927号明細書の、特に段落[0033]~[0058](引用することにより本明細書に援用する)に記載されている。
【0050】
式(II)を有する適切な従来技術の化合物の例は、少なくとも1つのヒドロキシル末端基を有するポリエーテルである。これらのポリエーテル化合物を、本発明によるセグメントiを有する化合物(II)と組み合わせて使用することで、組成物に対する所望の相溶性を有する本発明によるアミン官能性化合物が調製され得る。
【0051】
式(II)を有する化合物は、該化合物がイソシアネートに対して反応性であるヒドロキシル基を1つだけしか有しない(すなわち、n=1)場合には非架橋性である。式(II)を有する化合物は、該化合物がイソシアネートに対して反応性であるヒドロキシル基を2つ以上有する(すなわち、n>1)場合には架橋性化合物である。
【0052】
好ましい実施形態では、成分c)は、式(IIIa)
Z-(NHR) (IIIa)
の1つ以上のアミン化合物である。
【0053】
式中、Rは、水素または1個~4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、ここで、Zおよびmは、上記定義の通りである。
【0054】
第一級アミン-NHおよび第二級アミン基-NHRは、多官能性イソシアネートa)のウレトジオン基に対する反応性の向上をもたらす。
【0055】
本発明によるアミン官能性化合物の調製のために、米国特許出願公開第2005/0250927号明細書の、特に段落[0059]~[0075](引用することにより本明細書に援用する)に記載されるような、従来技術の式(IIIa)のアミン化合物が、本発明によるアミン化合物c)の例示的実施形態として使用され得る。
【0056】
本発明の付加化合物の調製のために、多官能性イソシアネートの混合物および/または式(II)による化合物の混合物および/または式(III)による化合物の混合物などの種々の出発物質の混合物を使用することも可能である。
【0057】
式(II)の置換基、その部分および/または分子量を変えることによって、本発明による付加化合物が使用されるコーティングおよび成形材料中に存在する非常に多岐にわたる溶剤、キャリア媒体、バインダー、樹脂、固体、および適宜さらなるポリマー化合物に即して、本発明の付加化合物の相溶性を調整することが可能である。
【0058】
例えば、水系コーティング材料およびエレクトロコートなどの極性の高い系で使用される場合には、基Yは、例えば、特定の使用領域に十分な水溶性のレベルを達成するために、ポリエチレンオキシドなどの極性基を十分に高い割合で含むべきである。親水性基のこの割合はまた、特定の用途でこれが水に対する感受性を不所望に高めるのであれば、高すぎないほうがよい。
【0059】
長油性アルキド塗料、PVCプラスチゾル、またはポリオレフィンなどの非極性の系で使用される場合に、適切な割合の非極性基が存在するべきであり、例えば、顔料濃縮物などの幅広い相溶性が重要となる系で使用される場合には、極性基と非極性基とのバランスの取れた組み合わせが有利である。
【0060】
付加化合物が、例えば、ポリウレタン樹脂またはバインダーがポリウレタンであるコーティング材料中で使用される場合に、式(II)の出発化合物中に存在する基のおかげで、当業者に知られるようにポリウレタンと相溶性であるウレタン基または同様の基も分子に含まれる本発明のそれらの付加化合物を使用することが有利である。例えば、ポリアクリレート、ポリエステル、アルキド樹脂などにも、必要な変更を加えて、同じことが当てはまる。
【0061】
これは、必要な変更を加えて、使用される被分散固体に対する本発明の付加化合物の親和性に特定の影響を及ぼす式(II)の置換基にも当てはまる。
【0062】
セグメントiのセグメント単位の順序
一般に、エーテル単位およびエステル単位の交番がセグメントに沿ってより多く配置されるほど、比率Rは1.0より小さくなり、比率Rは0.0に近づく。
【0063】
典型的には、アミン官能性化合物中にセグメントの混合物が存在し、各セグメントにおいて、エーテル単位Eの平均数が互いに等しく(例えば、4.0個のエーテル単位)、かつ2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの数がセグメント中に統計的に分布している場合に(すなわち、4.0個のエーテル単位が使用される場合に0.0~3.0)、比率Rは、実質的に0.5に等しくなる。
【0064】
最終的に、各セグメントがエーテル単位およびエステル単位の完全な交番配列構造(例えば、ia-ib-ia-ib配列構造)を有する場合に、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数は0.0に等しい(エーテル連結Lが存在しないため)。したがって、完全な交番構造の場合の比率Rは0.0に等しい。
【0065】
例示的な実施形態では、比率Rは0.9よりも小さく、好ましくはRは0.8よりも小さく、より好ましくはRは0.7よりも小さい。比率Rがより低いほど、エーテル単位およびエステル単位の順序はより交番が多くなる。
【0066】
例示的な実施形態では、比率Rは実質的に0.5に等しい。この実施形態では、少なくとも1つのセグメントのエーテル単位およびエステル単位は、ランダムな順序で配置されている。少なくとも1つのセグメントのエーテル単位およびエステル単位がランダムな順序で配置されている場合に、比率Rは実質的に0.5に等しくなる。エーテル単位とエステル単位との間のモル比が1.0:1.0に等しく、かつエステル単位をエーテル単位に接続する確率がセグメントの付加重合反応の間にエーテル単位をエーテル単位に接続する確率に実質的に等しい場合に、得られたセグメントの比率Rは約0.5である。特にこの例では、エステル単位をエーテル単位に接続する反応速度は、付加重合反応の間にエーテル単位をエーテル単位に接続する反応速度に実質的に等しい。例としては、セグメントの付加重合反応のためにエーテル単位とエステル単位との間のモル比を調整することによって、セグメントの比率Rは、相応して0.5よりも低くまたはそれより高くなるように調整され得る。
【0067】
一例では、比率Rは0.3~0.7であり、好ましくは比率Rは0.4~0.6である。
【0068】
例示的な実施形態では、比率Rは実質的に0.0に等しい。この実施形態では、少なくとも1つのセグメントのエーテル単位およびエステル単位は、実質的に交番した順序で配置されている。比率Rは少なくとも0.0である。エーテル単位とエステル単位との間のモル比が1:1であり、かつ少なくとも1つのセグメントのエーテル単位およびエステル単位が完全に交番した順序で配置されている場合に、比率Rは0.0に等しい。さらに、エーテル単位とエステル単位との間のモル比とは独立して、エーテル単位が常に1つ以上のエステル単位と交番している場合にも、比率Rは0.0に等しい。これらの実施形態のすべてにおいて、少なくとも1つのセグメントの2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの数は0.0に等しい。
【0069】
一例では、比率Rは0.0~0.1である。
【0070】
例示的な実施形態では、少なくとも1つのセグメントは、19:1~1:1の範囲内のエステル単位とエーテル単位との間のモル比を有する。エステル単位の量がより多いと、粒子を含む分散系に対するアミン官能性化合物の良好な相溶性がもたらされる。さらに、より多くの量のエステル単位を有し、かつ式(I)により規定される特定の比率Rを有するセグメント構造の場合に、本発明の利点はより明白になる。特に、上記セグメントは、アミン官能性化合物のセグメントの結晶化に対する傾向の減少をもたらし得る。好ましくは、少なくとも1つのセグメントは、9:1~1:1の範囲内のエステル単位とエーテル単位との間のモル比を有する。
【0071】
エーテル単位ia
例示的な実施形態では、エーテル単位は、式(IV)-[CR30 -O-(式中、nは、2または3の整数であり、R30は、互いに独立して、1個~25個の炭素原子を有する有機基または水素を表す)からなる群から選択される。
【0072】
30の有機基は、1個~25個の炭素原子を含む接続基~R101-CH-O~(式中、R101は、独立して選択され、かつ1個~25個の炭素原子を含む有機基によって表される任意の基である)であり得る。
【0073】
30が接続基~R101-CH-O~である場合に、エーテル単位は、他のエステル単位および/またはエーテル単位に対して3つの連結を有し得る。実際、接続基は、式(IV)によるエーテル単位の両端にあるエーテル単位の2つの可能な連結に加えて、エーテル単位またはエステル単位への第3の連結の可能性をもたらす。例えば、接続基~R101-CH-O~が別のエーテル単位と連結されると、~R101-CH-O-[CR30 -O-による構造要素が形成され得る。
【0074】
nが2に等しい場合に、エーテル単位は、対応するエポキシ官能性モノマーの重合によって作製される。適切な種類または化学種は、例えば、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、および/または芳香脂肪族のグリシジルエーテル、グリシジルエステル、およびオレフィンオキシド、例えば、C~C20-アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert.-ブチル-フェニルグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、C12~C14-グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2,3-エポキシプロピルネオデカノエート(Cardura(登録商標)E10、Resolution Performance Products社)、C~C20-オレフィンオキシド、例えば、1,2-オクテンオキシド、1,2-ノネンオキシド、1,2-ウンデセンオキシド、1,2-ドデセンオキシド、1,2-オクタデセンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、1,2-ブテンオキシド、プロペンオキシド、エチレンオキシド、スチレンオキシド、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、シクロペンテンオキシド、および/または2-エチル-1,2-ブテンオキシドである。
【0075】
エーテル単位が接続基~R101-CH-O~を含む場合に、この構造単位は、例えば、グリシドールのような、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する対応するエポキシ官能性モノマーに由来する。
【0076】
特定の実施形態では、nが2に等しい場合に、R30の少なくとも1つは、式-R31-O-R32を有するエーテル基を表し、式中、R31およびR32は、互いに独立して、1個~30個の炭素原子を有する有機基を表す。適切な種類または化学種は、例えば、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、および/または芳香脂肪族のグリシジルエーテル、例えば、C~C20-アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert.-ブチル-フェニルグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、C12~C14-グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルである。これらの実施形態によるエーテル単位は、セグメントの結晶化に対する傾向をさらに低下させる。
【0077】
nが3に等しい場合に、エーテル単位は、対応するオキセタンモノマーの重合によって作製される。適切な種類または化学種は、例えば、非置換オキセタンならびにその脂肪族、環状脂肪族、芳香族、および/または芳香脂肪族の誘導体、例えば、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタンおよび、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3-ジプロピルオキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、3-エチル-3-ブチルオキセタン、3-ブチル-3-メチルオキセタン、3-エチル-3-メチルオキセタン、およびエチルヘキシルオキセタンである。
【0078】
エーテル単位が接続基~R101-CH-O~を含む場合に、この構造単位は、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する対応するオキセタン官能性モノマー、例えば、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-メチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、ならびに統計的構造、ブロック構造、またはグラジエント構造で配置され得る1個~10個のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドによるエトキシル化またはプロポキシル化によって得られるその誘導体に由来する。
【0079】
エステル単位ib
エステル単位ibは、環状エステル、例えば、プロピオラクトン、バレロラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、例えば、ε-カプロラクトンおよびδ-バレロラクトンの開環重合反応によって形成され得る。ε-カプロラクトンは、容易に入手可能なカプロラクトンであり、それ自体および環状エーテルの両方と開環重合反応において反応し得る。上記エステル単位ibは、エーテル単位と一緒にランダムな順序の配置にて容易に入手可能である。
【0080】
好ましい実施形態では、セグメントiは、ε-カプロラクトンおよび環状エーテルの開環重合反応によって形成される。
【0081】
セグメントiの作製のために、環状エステルの混合物および/または環状エーテルの混合物を使用することも可能である。
【0082】
本発明のさらなる態様では、本発明によるアミン官能性化合物を製造する方法であって、
a)環状エステルと環状エーテルとを一緒に開環重合反応において反応させることによってセグメントiを作製する工程と、
ここで、開環重合反応は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、および第二級アミン基から選択される少なくとも1つの官能基を含む重合開始化合物によって開始され、
b)工程a)のセグメントiをカップリング剤で転化させて、少なくとも1つのアミン基iiをセグメントに共有結合で連結させる工程と、
を含む、方法が提供される。
【0083】
重合開始化合物は、環状エステルおよび環状エーテルの開環重合反応を開始し、それによりセグメントiが形成される。重合開始化合物は、1つのセグメントの形成を開始するのに適した単官能性であってもよく、または少なくとも2つのセグメントの形成を開始するのに適した多官能性であってもよい。セグメントiの形成後に、該セグメントは少なくとも1つのヒドロキシル末端基を有する。工程a)で作製されるセグメントは線状である場合も、または分岐状である場合もある。
【0084】
工程a)によって作製されるセグメントiは、上記のように式(II)Y-(OH)(式中、Yは、重合開始部を含むセグメントiを表す)を有し得る。工程a)で作製されるセグメントiは、中間生成物である。重合開始化合物は、本発明の記載においては連鎖開始物質とも呼ばれ得る。
【0085】
ステップb)において、少なくとも1つのアミン基iiは、工程a)のセグメントiにカップリング剤によって連結される。カップリング剤は、セグメントiと少なくとも1つのアミン基iiとの間の連結をもたらすカップリング剤である。該連結は、ウレタン基とウレタン基、尿素基、ビウレット基およびアロファネート基から選択される別の基とを含む。
【0086】
工程b)の間に、セグメントiの少なくとも1つの末端ヒドロキシル基は、カップリング剤のイソシアネート基との反応によってウレタン基に転化される。セグメントが1つのヒドロキシル末端基を有する場合に、1つのウレタン基が形成される。セグメントが2つ以上のヒドロキシル末端基を有する場合に、工程b)の間に2つ以上のウレタン基が形成され得る。一例は、2つ以上のヒドロキシル末端基を有する分岐状セグメントである。
【0087】
例示的な実施形態では、工程b)におけるカップリング剤は、ウレトジオン基を含む1つ以上の多官能性イソシアネートであり、工程b)は、上記1つ以上の多官能性イソシアネートを工程a)のセグメントと反応させる工程b1)と、少なくとも1つの第三級アミン基を含むアミン化合物を反応させて、アミン基iiをセグメントa)に共有結合で連結させる工程b2)とを含む。
【0088】
適切なアミン化合物は、ヒドロキシル基、第一級アミン基、および第二級アミン基から選択される反応性基を含み得る。上記アミン化合物は、上記の式(III)Z-(X-H)(式中、Xは、O、NHおよび/またはNRによって表され、かつm=1~100である)を有する。通常、Rは、独立して選択され、Zの炭素原子への化学結合および/または1個~20個の炭素原子を含む独立して選択された有機基によって表され、mは、少なくとも1の整数であり、かつZは、脂肪族、環状脂肪族、および/または芳香族の塩基性基であり、ここで、Zは、少なくとも1つの第三級アミン基を含む。
【0089】
好ましくは、反応性基(X-H)は、第一級アミン基または第二級アミン基である。特定の実施形態では、アミン化合物は、式(IIIa)Z-(NHR)(式中、Rは、水素または1個~4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であり、ここで、Zおよびmは、上記定義の通りである)を有する。
【0090】
工程b)の反応条件
反応工程b1)およびb2)の順序は、所望の付加生成物に応じて適切に制御され得る。
【0091】
例示的な実施形態では、反応工程b1)は工程b2)の前に実施され、工程b2)はアミン化合物を反応工程b1)の生成物にカップリングさせることを含む。好ましくは、ウレトジオン基を含むポリイソシアネートの遊離NCO基を式(II)の化合物(ここで、少なくとも1つ以上の化合物(II)がセグメントiを含む)と反応させた後に、例えば、式(III)Z-(X-H)の1つ以上のアミン化合物を、反応性基(X-H)とウレトジオン基との反応の経路によって付加反応させる。
【0092】
例示的な実施形態では、反応工程b1)および反応工程b2)は同時に(すなわち、単一の反応混合物中で)行われる。
【0093】
本発明の付加化合物の調製は、従来技術と同様に、粘度に応じてバルクでまたは適切な溶剤、溶剤混合物もしくはその他の適切なキャリア媒体の存在下で実施され得る。適切な溶剤またはキャリア媒体は、非反応性であるか、または反応物に対する反応性がごくわずかであり、かつ反応物および反応生成物が少なくとも部分的に可溶性であるすべてのものであり、例えば、トルエン、キシレン、脂肪族および/または環状脂肪族のベンジン画分などの炭化水素、クロロホルム、トリクロロエタンなどの塩素化炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ポリアルキレングリコールジアルキルエーテルなどの環状エーテルおよび非環状エーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチロラクトンなどのエステル、フタレートまたは他の可塑剤、ジカルボン酸エステルまたはポリカルボン酸エステル、 「二塩基性エステル」と呼ばれるC~Cジカルボン酸のジアルキルエステル、エチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテートなどのアルキルグリコールエステル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトンなどのケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドンなどの酸アミドなどである。1つ以上の溶剤および/またはキャリア媒体は、意図される使用分野を考慮して有利に選択される。例えば、水希釈性コーティング系で使用するための、または顔料合成後に水性懸濁液でのコーティング用顔料のための本発明の付加化合物については、完全にまたは部分的に水希釈可能である溶剤を使用することが有利である。例えば、VOC(揮発性有機化合物)の存在が望ましくない用途において製品が使用される場合に、配合は、可能な限り溶剤不含にすべきであるか、または適切な高さの沸点のキャリア媒体中で行うべきである。
【0094】
利用分野に応じて、合成に使用される溶剤が反応混合物中に残ることが可能であり、またはそれらを完全にもしくは部分的に除去して、適宜、他の溶剤またはキャリア媒体によって置き換えることも可能である。相溶性に応じて、本発明の付加化合物を、樹脂、樹脂溶液、反応性希釈剤、バインダー、または他の従来技術の添加剤、例えば、他の湿潤剤および分散剤、沈降防止剤、表面活性添加剤、例えばシリコーンなどと組み合わせることもできる。
【0095】
溶剤を、例えば、適宜減圧下での蒸留によって、および/または水の添加により共沸的に除去することができ、そのような除去は完全または部分的である。あるいは、活性物質を、沈殿によって、脂肪族炭化水素、例えばヘキサンなどの非溶媒の添加の後に濾過により分離し、所望であれば乾燥させることによって単離することができる。次に、これらの方法の1つによって得られた活性物質を、特定の適用分野に適した溶剤中に希釈することができ、または適宜、例えば粉体コーティング材料の場合にはそのまま使用することもできる。所望であれば、適切な高沸点溶剤の添加に続いて、付加生成物が溶解される溶剤を、適宜減圧下で、および/または水を添加して共沸的に留去することができる。こうして、付加生成物を、それぞれの適用分野に適したキャリア媒体に移すことができる。
【0096】
慣例的な触媒、例えば、ジブチルスズジラウレートなどの有機スズ化合物、鉄アセチルアセトネートなどの他の有機金属化合物、トリエチレンジアミンなどの第三級アミン、酵素などの存在下で、反応を実施することができる。
【0097】
工程a)の反応条件
例示的な実施形態では、工程a)において、環状エステルおよび環状エーテルは、反応条件で維持されている反応混合物中に実質的に同時に添加される。開環重合反応において環状エステルと環状エーテルとを一緒に反応させることによるセグメントの作製は、セグメントのエーテル単位およびエステル単位がランダムな順序で配置されるように実施され得る。一実施形態では、環状エステルおよび環状エーテルを、反応条件にもたらす前に一緒に混合することができる。一例では、環状エステルおよび環状エーテルの混合物を、セグメントのエーテル単位およびエステル単位がランダムな順序で重合されるように反応混合物に制御可能に添加、例えば滴加することができる。
【0098】
例示的な実施形態では、工程a)において、重合開始化合物は、反応条件で維持されている環状エステルおよび環状エーテルを含む反応混合物に添加される。この実施形態では、工程a)は、環状エステルおよび環状エーテルを含む反応混合物を形成することと、反応混合物を付加反応に適した温度および適した雰囲気などの反応条件にもたらすことと、重合開始化合物を反応混合物に添加することとを含む。反応条件に適した雰囲気は、酸素不含の雰囲気であり得る。
【0099】
一例では、重合開始化合物は、液体形で反応混合物に滴加される。重合開始化合物を溶剤中に溶解させることができ、溶解された重合開始化合物を反応混合物に滴加することができる。
【0100】
記載されたモノマーの開環重合を促進するあらゆる触媒が使用され得る。代表的な触媒としては、ブレンステッド酸/ルイス酸(CFSOCH/AlCl、BF、ZnCl、希土類トリフレート(Sc(OTf))、グアニジンおよびアミジン、例えば(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、N-メチル-1,5,7-トリアザビシクロドデセン(MTBD)、および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ホスファゼン、チオ尿素-アミン、NH-カルベン、および酵素が挙げられる(H.サルドン(H. Sardon),A.パスクアル(A. Pascual),D.メセレイェス(D. Mecerreyes),D.タトン(D. Taton),H.クラメイル(H. Cramail),J.ヘドリック(J. Hedrick)著,マクロモレキュールズ(Macromolecules)2015年,第48巻,第3153頁~第3165頁)。
【0101】
好ましい触媒型は、環状エステルと環状エーテルの両方の同様の反応性をもたらすAlCl/DBUのような二元触媒系などの触媒である(S.ナウマン(S. Naumann),P.ショルテン(P. Scholten),J.ウィルソン(J. Wilson),A.ダヴ(A. Dove)著,米国化学会誌(J. Am. Chem. Soc.)2015年,第137巻,第14439頁~第14445頁)。
【0102】
触媒は、反応物の性質および量、温度および混合に依存する触媒上重要な量で使用される。0.001重量パーセント~5重量パーセントの触媒濃度が典型的であり、0.01重量パーセント~2重量パーセントの濃度が好ましい。
【0103】
より多くの反応性モノマーが重合反応の間に添加される半回分式の製造は、関連するランダムポリマーを作製するためのさらなる可能性であり得る。
【0104】
ブロック型およびランダム型の両方の型のポリマーの特性評価には、種々の分析方法、例えば、元素分析、H NMR、13C NMR、UVおよびIR分光法、GPCならびにDSCが使用され得る。対応するホモポリマー(それぞれは1つの関連するモノマー型を基礎とする)のガラス転移温度が十分に異なる場合に、DSC(示差走査熱量測定)測定によって対応するホモポリマーとランダムポリマーとを区別することが可能である。ブロックポリマーとランダムポリマーとを区別する分析方法の厳密な説明は、文献に記載されている(ポリメーレ,シンテーゼ,アイゲンシャフテン ウント アンヴェンドゥング(Polymere, Synthese, Eigenschaften und Anwendung),S.コルツェンブルク(S. Koltzenburg),M.マスコス(M. Maskos),O.ヌイケン(O. Nuyken),シュプリンガー-フェアラーク・ベルリン・ハイデルベルク(Springer-Verlag Berlin Heidelberg),2014年,第397頁~第399頁)。
【0105】
特定の例では、両方の型のポリマー(ブロック型およびランダム型)の特性評価は、最初に少なくとも1つのセグメントのエステル連結を加水分解し、それによりエステル基不含の少なくとも1つのセグメントの配列を得る工程を含む方法によって実施され得る。これらの配列は様々な配列長を有し得て、隣接するエーテル単位間の多くのエーテル連結Lから構成され、任意に、エステル単位とエーテル単位とのエーテル連結を含む。エーテル単位の配列の平均数長さは、例えば、LC-MS技術および/またはGPC技術に基づいて決定され得る。これらの測定から、隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数を決定することができ、エーテル単位Eの平均数を決定することができる。
【0106】
任意に、隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lの平均数および/またはエーテル単位Eの平均数は、他の技術を使用して、例えばNMRを用いて決定され得る。
【0107】
例示的な実施形態では、工程a)における環状エステルと環状エーテルとの間のモル比は、19:1~1:1の範囲内である。好ましくは、工程a)におけるエステル単位とエーテル単位との間のモル比は、9:1~1:1の範囲内である。
【0108】
例示的な実施形態では、工程a)において、環状エーテルはヒドロキシル基を含む。一例では、環状エーテルは、1つのヒドロキシル基を有するトリメチロールプロパンオキセタンモノマーである。環状エーテルの官能基は、別の環状エーテルまたは環状エステルとさらに反応して、セグメントの他の単位への少なくとも3つの連結を有するエーテル単位が形成され得る。このようにして、分岐状セグメントが形成される。作製される分岐状セグメントは、少なくとも2つのヒドロキシル末端基を有する。このように、分岐状セグメントは、式(II)Y-(OH)(式中、OHは、イソシアネートに対して反応性であるヒドロキシル基であり、nは、少なくとも2の整数である)による構造を有する。
【0109】
例示的な実施形態では、工程a)において、重合開始化合物は、1分子あたり少なくとも2つの開環重合反応を開始する多官能性開始物質であり、ここで、重合開始化合物の少なくとも1つの官能基は、2つのヒドロキシル基、2つの第二級アミン基、および第一級アミン基からなる群の少なくとも1つを含む。この実施形態では、重合開始化合物は、同じ重合開始化合物からの少なくとも2つの鎖の形成を開始することによって多官能性である。したがって、多官能性重合開始化合物は、少なくとも2つのセグメントが工程a)の間に同じ重合開始化合物から形成されることを可能にする。
【0110】
本発明の別の態様では、本発明によるアミン官能性化合物は、分散剤として使用される。
【0111】
本発明の別の態様では、本発明によるアミン官能性化合物は、湿潤剤として使用される。
【0112】
本発明の別の態様では、粒子および本発明によるアミン官能性化合物を含む組成物が提供される。
【0113】
アミン官能性化合物が含まれることで、この化合物は、粒子のために分散剤および/または湿潤剤として機能し得る。
【0114】
例示的な実施形態では、組成物中のアミン官能性化合物の量は、組成物の総重量を基準に0.1重量%~50.0重量%である。好ましくは、組成物中のアミン官能性化合物の量は、組成物の総重量を基準に0.1重量%~10.0重量%である。特に、アミン官能性化合物を分散剤として使用する場合に、上記量は、組成物中の粒子の分散安定性を高める。
【0115】
安定化するのが困難な固体が使用される場合に、本発明による湿潤剤および分散剤の量ははるかにより多くなり得る。必要な分散剤の濃度は一般に、分散させる固体の比表面積に依存する。したがって、例えば、どの顔料が含まれているかを知ることが重要であり得る。一般に、無機顔料の安定化は、有機顔料の安定化に必要とされるよりも一般により少ない分散剤しか必要としないと述べることができる。それというのも、有機顔料はより高い比表面積を有する傾向があるため、より大量の分散剤を必要とするからである。無機顔料のための湿潤剤および分散剤の典型的な添加量は、それぞれ分散させる固体、特に顔料を基準に、1重量%~30重量%、有機顔料の場合に10重量%~50重量%である。非常に微細な顔料、例えば一部のカーボンブラックの場合には、30%~100%またはそれより多くの添加量が必要とされる。
【0116】
例示的な実施形態では、組成物中の粒子とアミン官能性化合物との間の重量比は、1:1~20:1の範囲内である。特に、アミン官能性化合物を分散剤として使用する場合に、上記量は、組成物中の粒子の分散安定性を高める。
【0117】
例示的な実施形態では、組成物は、少なくとも1つの有機バインダーをさらに含む。有機バインダーは、ポリウレタン、硝酸セルロース、アセト酪酸セルロース、アルキド、メラミン、ポリエステル、塩化ゴム、エポキシド、およびアクリレートを基礎とするいずれか1つの樹脂であり得る。
【0118】
本発明の別の態様では、上記少なくとも1つのセグメントiのエーテル単位およびエステル単位がランダムな順序で配置されており、かつアミン官能性化合物が、第三級アミン基、第三級アミン基の塩、および第四級アンモニウム基から選択される少なくとも1つのアミン基iiを含む、本発明によるアミン官能性化合物を製造する方法から得ることできるアミン官能性化合物が提供される。
【0119】
適用例
本発明のアミン官能性化合物は、特に分散剤の既知の使用分野、例えば、塗料およびワニス、印刷インキ、紙用コーティング、皮革の色およびテキスタイルの色、ペースト、顔料濃縮物、セラミックまたは化粧料の製造または加工において、特にこれらの製品が顔料および/または充填剤などの固体を含む場合に使用される。
【0120】
本発明のアミン官能性化合物はまた、合成高分子物質、半合成高分子物質または天然高分子物質、例えば、ポリ塩化ビニル、飽和または不飽和のポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンを基礎とする注型用コンパウンドおよび/または成形用コンパウンドの製造または加工においても使用され得る。対応するポリマーは、例えば、注型用コンパウンド、PVCプラスチゾル、ゲルコート、ポリマーコンクリート、プリント回路基板、工業用塗料、木材用ワニスおよび家具用ワニス、車両仕上げ剤、船舶用塗料、防食塗料、缶コーティングおよびコイルコーティング、装飾用塗料、ならびに建築用塗料の製造に使用され得る。慣用のバインダーの例は、ポリウレタン、硝酸セルロース、アセト酪酸セルロース、アルキド、メラミン、ポリエステル、塩化ゴム、エポキシド、およびアクリレートを基礎とする樹脂である。水系コーティングの例は、例えば、自動車車体用の陰極電着用または陽極電着用コーティング系である。さらなる例は、レンダリング剤、シリケート塗料、エマルジョン塗料、水希釈性アルキドを基礎とする水性塗料、アルキドエマルジョン、ハイブリッド系、2成分系、ポリウレタン分散液およびアクリレート分散液である。
【0121】
本発明のアミン官能性化合物は、顔料濃縮物などの固体濃縮物を製造するための分散剤としても特に適している。このために、例えば、アミン官能性化合物を、有機溶剤、可塑剤および/または水などのキャリア媒体中に導入し、分散させる固体を撹拌しながら添加する。これらの濃縮物は、バインダーおよび/または他の助剤をさらに含み得る。しかしながら、本発明のアミン官能性化合物を用いて、特に、安定したバインダー不含の顔料濃縮物を製造することが可能である。該ポリマーを使用して、顔料プレスケーキから流動性のある固体濃縮物を製造することも可能である。この場合に、本発明のポリマーを有機溶剤、可塑剤および/または水を依然として含み得るプレスケーキに混加し、得られた混合物を分散させる。次いで、様々な方法で製造された固体濃縮物を、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂などの様々な基材中に導入することができる。しかしながら、顔料を溶剤を用いずに無溶剤で本発明のアミン官能性化合物中に直接分散させることもできるため、特に熱可塑性プラスチック配合物および熱硬化性プラスチック配合物の顔料着色に適している。
【0122】
本発明のアミン官能性化合物を、「サーマルインクジェット」および「バブルジェット(登録商標)プロセス」などの「ノンインパクト」印刷プロセス用のインキの製造においても有利に使用することができる。これらのインキは、例えば、水性インキ配合物、溶剤系インキ配合物、UV用途の無溶剤インキまたは低溶剤インキ、およびワックス状インキであり得る。
【0123】
本発明のアミン官能性化合物は、液晶ディスプレイ、液晶スクリーン、色分解装置、センサー、プラズマスクリーン、SED(Surface conduction Electron emitter Display(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ))およびMLCC(Multi Layer Ceramic Compounds(積層セラミック化合物))に基づくディスプレイ用のカラーフィルターの製造においても有利に使用され得る。この場合、カラーレジストとも呼ばれる液体カラーフィルターワニスを、スピンコーティング、ナイフコーティング、これら2つの組み合わせなどの多岐にわたる塗布方法のいずれかによって、または例えばインクジェットプロセスのような「ノンインパクト」印刷プロセスを介して塗布することができる。MLCC技術はマイクロチップおよびプリント回路基板の製造において使用される。
【0124】
本発明のアミン官能性化合物を、例えば、メーキャップ、パウダー、口紅、染毛剤、クリーム、マニキュア、および日焼け止め製品などの化粧料の製造に使用することもできる。これらの製品は、例えば、W/O型エマルジョンまたはO/W型エマルジョン、溶液、ゲル、クリーム、ローションまたはスプレーなどの通常の形で存在し得る。これらの化粧料を製造するために使用される分散液において、本発明のポリマーを有利に使用することができる。これらの分散液は、水、ヒマシ油、またはシリコーン油などのこれらの目的で美容術において慣例であるキャリア媒体と、固体、例えば有機顔料および無機顔料、例えば、二酸化チタンまたは酸化鉄とを含み得る。
【0125】
最後に、基材上に顔料着色されたコーティングを製造するために、この種の分散剤を使用することもでき、この場合に、顔料着色された塗料を基材に塗布し、基材に塗布された顔料着色された塗料を乾燥させ、焼き付けもしくは硬化させ、または架橋させる。
【0126】
本発明のアミン官能性化合物は、単独でまたは慣用のバインダーと一緒に使用され得る。ポリオレフィン中で使用される場合に、例えば、対応する低分子量のポリオレフィンをキャリア材料としてアミン官能性化合物と一緒に使用することが有利であり得る。
【0127】
本発明のアミン官能性化合物の別の可能な用途は、粉末粒子形および/または繊維粒子形の分散性固体、より具体的には分散性顔料または高分子充填剤の製造にあり、この場合に、該粒子はアミン官能性化合物でコーティングされる。この種の有機固体および無機固体のコーティングは、既知の様式で実施される。この場合の溶媒または乳化媒は除去されてもよく、またはペーストの形成のために混合物中に残留してもよい。これらのペーストは通常の市販製品であり、バインダー含分と、またさらなる助剤および佐剤とをさらに含み得る。特に顔料の場合に、顔料表面のコーティングは、顔料の合成の間もしくはその後に、例えば、顔料懸濁液にアミン官能性化合物を添加することによって行うことができ、または顔料のコンディショニングの間もしくはその後に行うことができる。このように前処理された顔料は、より導入しやすいこと、粘度、凝集および光沢に関する改善された特性、ならびに未処理の顔料と比較してより優れた色強度について注目に値する。
【0128】
顔料の例は、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、トリアゾ顔料、およびポリアゾ顔料、オキサジン顔料、ジオキサジン顔料、およびチアジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、フタロシアニン顔料、ウルトラマリン顔料、および他の金属錯体顔料、インジゴイド顔料、ジフェニルメタン顔料、トリアリールメタン顔料、キサンテン顔料、アクリジン顔料、キナクリドン顔料、メチン顔料、アントラキノン顔料、ピラントロン顔料、ペリレン顔料、ならびにその他の多環式カルボニル顔料である。有機顔料のさらなる例は、以下のモノグラフ:W.ヘルプスト(W. Herbst),K.フンガー(K. Hunger)著の「インダストリアル・オーガニック・ピグメンツ(Industrial Organic Pigments)」,1997年(出版社:Wiley-VCH,ISBN:3-527-288368)に記載されている。無機顔料の例は、カーボンブラック、黒鉛、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リトポン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛、ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム、アルミニウムを基礎とする混合金属酸化物を基礎とする顔料(例えば、ニッケルチタンイエロー、バナジン酸モリブデン酸ビスマスイエロー、またはクロムチタンイエロー)である。さらなる例は、以下のモノグラフ:G.ブックスバウム(G. Buxbaum)著,「インダストリアル・イノーガニック・ピグメンツ(Industrial Inorganic Pigments)」,1998年(出版社:Wiley-VCH,ISBN:3-527-28878-3)で引用されている。無機顔料はまた、純鉄、酸化鉄および酸化クロムまたは混合酸化物を基礎とする磁性顔料、アルミニウム、亜鉛、銅または真鍮から構成されるメタリック効果顔料および真珠光沢顔料、蛍光顔料および蛍光発光顔料であり得る。さらなる例は、100nm未満の粒子サイズを有するナノスケールの有機固体または無機固体、例えば特定の種類のカーボンブラックまたは金属もしくは半金属の酸化物および/もしくは水酸化物からなる粒子、そしてまた混合型の金属および/もしくは半金属の酸化物および/もしくは水酸化物からなる粒子である。例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタンなどの酸化物および/または酸化物水酸化物を、この種の非常に微細な固体を製造するために使用することができる。これらの酸化物粒子および/または水酸化物粒子および/または酸化物水酸化物粒子を製造する方法は、例えば、イオン交換操作、プラズマ操作、ゾル-ゲルプロセス、沈殿、細砕(例えば、粉砕による)または火炎加水分解などの多岐にわたる方法のいずれかを介して行うことができる。これらのナノスケールの固体は、無機コアおよび有機シェルからなる、またはその逆のハイブリッド粒子と呼ばれるものであってもよい。粉末形または繊維形の充填剤の例は、例えば、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、キーゼルグール、珪藻土、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、マイカ、パーライト、長石、微粉砕されたスレート/硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、方解石、ドロマイト、ガラス、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)または炭素の粉末形または繊維形の粒子から構成される充填剤である。顔料または充填剤のさらなる例は、例えば、欧州特許出願公開第0270126号明細書に記載されている。水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムなどの難燃剤、および例えばシリカなどの艶消し剤も同様に、効果的な分散性および安定化へと改善することができる。
【0129】
さらに、本発明のアミン官能性化合物を、乳化剤、相媒介剤(液体/液体相溶化剤)または接着促進剤として使用することもできる。
【0130】
本発明を、実施例によって以下でより詳細に説明する。
【実施例
【0131】
総説
分子均一性を有しない物質の場合に、示される分子量(以下、既に上記と同様)は、数値平均の平均値を表す。分子量または数平均分子量Mは、滴定可能なヒドロキシル基またはアミノ基が存在する場合に、それぞれOH価またはアミン価の定量を介した末端基定量によって決定される。末端基定量を適用することができない化合物の場合に、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィーによって数平均分子量が決定される。
【0132】
特段の注釈がない限り、パーセンテージは重量基準のパーセンテージである。
【0133】
不揮発性成分の測定
試料(2.0±0.1gの被試験物質)を、事前に乾燥させたアルミニウムるつぼ内で秤量し、炉内で150℃にて20分間乾燥させ、デシケーター内で冷却した後に再秤量した。残留物は、試料中の固形分に相当する(ISO 3251)。
【0134】
酸価の測定
酸価は、規定された条件下で1gの物質を中和するのに必要とされるKOH量(mg)である。DIN EN ISO 2114に従って、エタノール中の0.1NのKOHによる中和反応によって酸価を定量した。
【0135】
【化3】
【0136】
ヒドロキシル価の測定
アルコール性ヒドロキシル基を、アセチル化によって過剰の無水酢酸と反応させた。過剰の無水酢酸を、水の添加により酢酸に分解し、エタノール性KOHを使用して逆滴定した。ヒドロキシル価は、1gの物質をアセチル化した場合に結合される酢酸量に相当するKOH量(mg)であると解釈された(DIN ISO 4629に準拠)。
【0137】
アミン価の測定
酢酸中の過塩素酸(HClO)は、窒素だけでなく第一級アミン基、第二級アミン基および第三級アミン基を含む有機塩基に適した滴定剤であることが分かっている。酢酸などの酸性溶剤は、弱い有機塩基(良好な溶解特性、プロトン供与性酸性溶剤)を定量する試験に有効であった。シクロヘキサン、ジオキサン、クロロベンゼン、アセトン、およびメチルエチルケトンなどの不活性溶媒を添加して、非常に弱い塩基の滴定を改善することができる(DIN 16945に準拠)。
【0138】
R-NH+HClO→R-NH +ClO
【0139】
NCO値の測定
EN ISO 9369に従って、ジブチルアミンとの反応に続いてアミン過剰を滴定することによって、使用されるポリイソシアネートの遊離NCO含有量、そしてまたNCO付加反応の経過を調べる。
【0140】
NMR測定
NMR測定を、Bruker社のDPX 300において300MHZ(H)または75MHZ(13C)で実施した。使用された溶剤は、重水素化クロロホルム(CDCl)および重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d)であった。
【0141】
中間生成物の調製:第1工程
調製方法1
凝縮器、KPG撹拌機、サーモスタットおよび窒素導管を備えた清浄で乾燥した四ツ口フラスコ(500ml)に連鎖開始物質(回転蒸発器中で100℃にて2時間乾燥させた)および触媒を装入し、80℃まで加熱した。さらに、ラクトンおよびエポキシドの混合物を、温度が85℃を超過しないように添加した。添加が完了した後に、反応混合物をその温度で、エポキシドが完全に反応し(NMRの手段によって制御)、不揮発性成分の含有量が98%超になるまで(ISO 3251に準じた不揮発性成分の測定)撹拌した。完全に反応した後に、触媒をジブチルエタノールアミン(10mol%過剰のアミンで)で中和した。
【0142】
【表1】
【0143】
比較用中間生成物の調製:第1工程
調製方法2
凝縮器、KPG撹拌機、サーモスタットおよび窒素導管を備えた清浄で乾燥した四ツ口フラスコ(500ml)に連鎖開始物質(回転蒸発器中で100℃にて2時間乾燥させた)、ラクトンおよび触媒を装入し、160℃まで加熱した。反応混合物をこの温度で、不揮発性成分の含有量が98%超になるまで(ISO 3251に準じた不揮発性成分の測定)撹拌した。
【0144】
【表2】
【0145】
生成物の調製:第2工程
調製方法3
凝縮器、KPG撹拌機、サーモスタットおよび窒素導管を備えた清浄で乾燥した四ツ口フラスコ(500mL)にイソシアネートP3、中間生成物(例N2、N3、M2またはM3)および(溶融)ポリエーテルを装入し、均質化した。次いで、触媒(DBTL)を添加し、混合物を80℃まで加熱した。該混合物をこの温度で、NCO値が0.1%未満のNCOに達するまで(DIN EN ISO 9369)撹拌した。次いで、アミン化合物を添加し、混合物を100℃まで加熱し、この温度で、ウレトジオンの反応が完了するまで(これはNMRの手段によって制御した)撹拌した。
【0146】
【表3】
【0147】
調製方法4
凝縮器、KPG撹拌機、サーモスタットおよび窒素導管を備えた清浄で乾燥した四ツ口フラスコ(500mL)にイソシアネートP4および安定剤を装入し、80℃まで加熱した。次いで、混合物に中間生成物(N4またはM4)をゆっくり添加した。添加が完了した後に、反応混合物を、NCOが名目上の値に達するまで(DIN EN ISO 9369)撹拌した。
【0148】
次いで、アミンをゆっくりと添加し(発熱性)、混合物を80℃で、NCO値が0.1%未満のNCOに達するまで(DIN EN ISO 9369)撹拌した。
【0149】
【表4】
【0150】
適用例
)で印された試料は比較例である。
【0151】
適用例1
適用試験の間に、添加剤K4をK3と比較し、添加剤K6をK5と比較した。本発明に従って調製された試料(K4およびK6)は流動性があり、取り扱い易く、高い結晶化の傾向を示す比較例(K3およびK5)よりも結晶性が低い。
【0152】
作業方法1

万能な錬磨型樹脂の分散溶液
熱可塑性アクリレート(TPA)を基礎とするクリアコートを基礎とする顔料着色されたコーティング組成物
【0153】
適用試験に使用される原材料
Laropal A81:(メトキシプロピルアセテート(PMA)中60%)-BASF社製のアルデヒド錬磨型樹脂
Paraloid B66:Dow Chemicals社製の熱可塑性アクリレート(TPA)
Novoperm F3RK70:Clariant社製の非常に不透明な有機顔料
【0154】
ミルベースの調製
ミルベース配合物中の顔料/バインダー比および添加剤添加量などのパラメーターの変動は、顔料分散液の品質および安定化に多大な影響を及ぼす。樹脂の量は、例えば、流動挙動/粘度、顔料の濡れ、ミルベースおよび最終塗料の貯蔵安定性に影響を及ぼし得る。錬磨段階で利用可能な湿潤および分散用添加剤の至適量が存在する場合にのみ、最良の顔料分散を達成することができる。したがって、試験のために、湿潤および分散(W&D)用添加剤の変動によって系を調整する(表5を参照)。
【0155】
【表5】
【0156】
ミルベースの調製のために、バインダー、湿潤および分散用添加剤(K3、K4、K5またはK6)ならびに溶剤をガラス瓶(100ml)中に充填し、スパチュラで均質化した。この手順の後に、混合物に顔料およびガラスビーズ(1mm)を添加し、高速シェーカー(冷却システムを備えたDisperser DAS A 200-K(SYSTEM LAU社))によって最大エネルギー入力で180分間分散させた。その後に、ガラスビーズを濾過により除去した(240μmのペーパーフィルターを使用)。
【0157】
【表6】
【0158】
クリアコートの調製のために、Paraloid B-66をキシレン中に溶解させた。次いで、混合物に溶剤(キシレン、PMA)、DIDP(フタル酸ジイソデシル)およびBYK-306をゆっくりと添加し、溶解機(Getzmann社)を用いて20分間混合した。
【0159】
熱可塑性アクリレート(TPA)を基礎とするクリアコートを使用した顔料着色されたコーティング組成物を、表7による組成物を使用して各ミルベース(K3、K4、K5、またはK6)につき配合した。試料をコントラストチャート上に100μmのスパイラルバーコーターを使用して塗布した。
【0160】
【表7】
【0161】
光沢の測定
光沢(表9)を、BYK社製のマイクロヘイズプラス装置を用いて測定した。
【0162】
TPAトップコート中のミルベースの評価
湿潤および分散用添加剤を使用した場合と使用しない場合の塗料の色比較
顔料(不透明および透明)の分散状態は、カラーシフトによって判断することができる。被試験試料は、低い剪断力(流し込みまたはドローダウン)で塗布されるべきであり、標準に対して比較する必要がある。より良好に分散された顔料は、コントロールと比較して、CIElab色空間に基づいてその色を「反時計回り」に変えることとなる。CIELAB色空間(CIE Lとしても知られ、または時には、単に「Lab」色空間と略される)は、1976年に国際照明委員会(CIE)によって規定された色空間である。赤色顔料の場合に、これは、b軸に沿ったプラスのシフトによって反映される。
【0163】
この試験方法は、すべての有色顔料の場合に機能するが、白および黒の場合には機能しない。色の測定(L,a,b値)を、スペクトロガイドスフィア(45/0)(BYK-Gardner社)を用いて行った。
【0164】
既知のCIElab色空間では、Lは常にプラスであり、明るさを表し、a>0は赤の成分を表し、a<0は緑の成分を表し、b>0は黄色の成分を表し、b<0は青の成分を表す。
【0165】
結果
K4およびK6は顔料の分散を改善し、TPA系中でのより良好な顔料の安定化もたらす。これは所望のカラーシフトによって反映される。比較試料K3およびK5と比較して、添加剤K4およびK6は、b軸に沿ったプラスのシフトをもたらした(表7を参照)。さらに、添加剤K4およびK6は、光沢値の大幅な改善と、より良好な表面外観を示す(表9を参照)。
【0166】
【表8】
【0167】
比較例K3およびK5は、大幅により低いb値を示した。
【0168】
【表9】
【0169】
適用例2
)で印された試料は比較用試料である。
【0170】
作業方法2
適用試験の間に、添加剤K8を添加剤K7と比較した。
【0171】

溶剤系TPAトップコート
適用試験に使用される原材料
Paraloid B66(キシレン中50%):Dow Chemicals Company社製の熱可塑性アクリレート
CAB 551.01:Eastman社製の酢酸酪酸セルロース
Paliogen Maroon L3920:BASF社製の透明有機顔料PR 179(ペリレン)
【0172】
ミルベースの調製
表10によるミルベースの調製のために、バインダー、湿潤および分散用添加剤ならびに溶剤をガラス瓶(100ml)中に充填し、スパチュラで均質化した。この手順の後に、混合物に顔料およびガラスビーズ(1mm)を添加し、高速シェーカー(冷却システムを備えたDisperser DAS A 200-K(SYSTEM LAU社))によって最大エネルギー入力で180分間分散させた。引き続き、ガラスビーズ(1mm)を濾過により除去した(240μmのペーパーフィルターを使用)。
【0173】
【表10】
【0174】
ミルベースの粘度
TPA系は、ミルベースの粘度の大幅な増大をもたらす非常に速乾性の系である。分散過程は塗料の製造の間の最も費用のかかる工程であるため、ミルベースの粘度はコストおよびエネルギーを節約するための決定的なパラメーターである。顔料の分散が良好であるほど、粒子間の引力が低くなり、その結果、ミルベースの粘度は低くなり、流動挙動はよりニュートン流動となる。
【0175】
Stresstech社のレオメーターReologica(1/10/100/500 1/s、コーン/プレート、23℃)で粘度を測定した。
【0176】
結果
測定により、添加剤K8を用いて調製されたミルベースの粘度は、比較試料K7を用いて調製されたものよりもはるかに低いことが分かった。この効果は低い剪断速度で明白となり、これは、添加剤K8による顔料の安定化に成功したことに起因する粒子間の引力の低下を反映している(表11を参照)。
【0177】
【表11】