(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20230301BHJP
C08G 73/08 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G03F7/023
C08G73/08
(21)【出願番号】P 2021544662
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2021006410
(87)【国際公開番号】W WO2021167077
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2020026930
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】広澤 竜二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 咲子
(72)【発明者】
【氏名】北畑 太郎
(72)【発明者】
【氏名】堀井 誠
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-037129(JP,A)
【文献】特開2019-085431(JP,A)
【文献】特開2009-276795(JP,A)
【文献】特開2014-136708(JP,A)
【文献】特開2013-105165(JP,A)
【文献】特開2011-186248(JP,A)
【文献】特開2014-202969(JP,A)
【文献】特開2011-053567(JP,A)
【文献】特開2010-053567(JP,A)
【文献】国際公開第2014/115233(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/217293(WO,A1)
【文献】特開2017-125210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/023
C08G 73/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)により示される繰り返し単位を有するアミド結合を有する前駆体を含む感光性樹脂組成物の製造方法であって、
当該方法は、
下記一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を活性化し、カルボン酸活性化物を得る工程と、
前記カルボン酸活性化物に対して、下記一般式(3)で表されるアミン化合物を作用させ、前記アミド結合を有する前駆体を得る工程と、を含み、
カルボン酸活性化物を得る前記工程と、アミド結合を有する前駆体を得る前記工程の少なくとも一方は
、3-メチル-2-オキサゾリドン
と、任意の3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、γ-ブチロラクト
ンおよびジメチルスルホキシドの中から選ばれる1種または2種以上
と、からなる溶媒中で行われる、感光性樹脂組成物の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、XおよびYは、有機基である。R
1は、水酸基、-O-R
3、アルキル基、アシルオキシ基、またはシクロアルキル基であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
2は、水酸基、カルボキシル基、-O-R
3、または-COO-R
3であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
1およびR
2におけるR
3は、炭素数1~15の有機基である。R
1として水酸基がない場合、R
2の少なくとも1つはカルボキシル基である。R
2としてカルボキシル基がない場合は、R
1の少なくとも1つは水酸基である。mは0~8の整数であり、nは0~8の整数である。)
【化2】
(一般式(2)中におけるYおよびR
2、nは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【化3】
(一般式(3)中におけるXおよびR
1、mは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
カルボン酸活性化物を得る前記工程は、一般式(2)で表される前記カルボン酸化合物に対して、ハロゲン化処理をし、酸ハロゲン化物を得るものである、感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ハロゲン化処理は塩素化処理である、感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
カルボン酸活性化物を得る前記工程は、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を、水酸基を有する化合物と反応させて、エステル化合物を得ることで行われる、感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
水酸基を有する前記化合物は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1-ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体である、感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
カルボン酸活性化物を得る前記工程と、アミド結合を有する前駆体を得る前記工程の双方が、前記溶媒中で行われることを特徴とする、感光性樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子の表面保護膜や、層間絶縁膜として、耐熱性や電気特性、機械特性の高さから、特定構造を有するポリアミド樹脂が好ましく用いられてきた。ここで、このようなポリアミド樹脂を半導体素子の保護膜、層間絶縁膜として用いる場合においては、プロセスの効率化の観点から、このポリアミド樹脂を有機溶媒に溶解し、ワニス状にして用いることが一般的であった。
【0003】
これに関連して、特許文献1に開示された技術が知られている。この文献においては、ポリイミド前駆体又はポリベンゾオキサゾール前駆体と、特定構造を有する極性溶媒とを組み合わせた感光性樹脂組成物が開示されており、また、感光性樹脂組成物中のN-メチル-2-ピロリドンの含有量を0.1質量%以下に調整することで、時間の変化とともにゲル化せず、感度、機械特性について満足する樹脂組成物が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1においては、環境への負荷を減らす観点から、樹脂組成物中のN-メチル-2-ピロリドンの含有量を低減させるべく、適切な溶媒等の選択がなされている。
しかしながら、特許文献1の合成例1等として記載されている樹脂を作製する段階においては、このN-メチル-2-ピロリドンがいわゆる合成溶媒として用いられている。また、このような事情もあり、反応後にN-メチル-2-ピロリドンを低減するための、有機層の洗浄を行う操作がなされている。
このような操作はプロセスの煩雑化を招き、また、スケールアップを行った際ではN-メチル-2-ピロリドンが残存してしまうことが懸念される。
【0006】
このような事情を鑑み、本発明は、環境への負荷が低減される感光性樹脂組成物を安定的に得る製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
下記一般式(1)により示される繰り返し単位を有するアミド結合を有する前駆体を含む感光性樹脂組成物の製造方法であって、
当該方法は、
下記一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を活性化し、カルボン酸活性化物を得る工程と、
前記カルボン酸活性化物に対して、下記一般式(3)で表されるアミン化合物を作用させ、前記アミド結合を有する前駆体を得る工程と、を含み、
カルボン酸活性化物を得る前記工程と、アミド結合を有する前駆体を得る前記工程の少なくとも一方は、3-メチル-2-オキサゾリドンと、任意の3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、γ-ブチロラクトン、2,6-ルチジンおよびジメチルスルホキシドの中から選ばれる1種または2種以上と、からなる溶媒中で行われる、感光性樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0008】
【化1】
(一般式(1)中、XおよびYは、有機基である。R
1は、水酸基、-O-R
3、アルキル基、アシルオキシ基、またはシクロアルキル基であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
2は、水酸基、カルボキシル基、-O-R
3、または-COO-R
3であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
1およびR
2におけるR
3は、炭素数1~15の有機基である。R
1として水酸基がない場合、R
2の少なくとも1つはカルボキシル基である。R
2としてカルボキシル基がない場合は、R
1の少なくとも1つは水酸基である。mは0~8の整数であり、nは0~8の整数である。)
【0009】
【化2】
(一般式(2)中におけるYおよびR
2、nは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【0010】
【化3】
(一般式(3)中におけるXおよびR
1、mは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、環境への負荷が低減される感光性樹脂組成物を安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、適宜図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
【0014】
[感光性樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る感光性樹脂組成物の製造方法は以下に示されるものである。
下記一般式(1)により示される繰り返し単位を有するアミド結合を有する前駆体を含む感光性樹脂組成物の製造方法であって、
当該方法は、
下記一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を活性化し、カルボン酸活性化物を得る工程と、
前記カルボン酸活性化物に対して、下記一般式(3)で表されるアミン化合物を作用させ、前記アミド結合を有する前駆体を得る工程と、を含み、
カルボン酸活性化物を得る前記工程と、アミド結合を有する前駆体を得る前記工程の少なくとも一方は、カルボニル基を有する複素環化合物を含む溶媒中で行われることを特徴とする、感光性樹脂組成物の製造方法。
【0015】
【化4】
(一般式(1)中、XおよびYは、有機基である。R
1は、水酸基、-O-R
3、アルキル基、アシルオキシ基、またはシクロアルキル基であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
2は、水酸基、カルボキシル基、-O-R
3、または-COO-R
3であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
1およびR
2におけるR
3は、炭素数1~15の有機基である。R
1として水酸基がない場合、R
2の少なくとも1つはカルボキシル基である。R
2としてカルボキシル基がない場合は、R
1の少なくとも1つは水酸基である。mは0~8の整数であり、nは0~8の整数である。)
【0016】
【化5】
(一般式(2)中におけるYおよびR
2、nは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【0017】
【化6】
(一般式(3)中におけるXおよびR
1、mは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【0018】
(アミド結合を有する前駆体)
まず、本実施形態の製造方法において製造される感光性樹脂組成物に含まれるアミド結合を有する前駆体について説明する。
【0019】
本実施形態におけるアミド結合を有する前駆体は上記一般式(1)で表される構造を有する(以下、この前駆体を「ポリアミド樹脂」ともいう。)。一般式(1)において、R1及びR2としては、ポリアミド樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解性を調節する上で、水酸基及びカルボキシル基を保護基R3で保護された基を用いることができ、具体的には、R1としての-O-R3、R2としての-O-R3及び-COO-R3を用いることができる。このようなR3としての炭素数1~15の有機基としては、ホルミル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、ターシャリーブトキシカルボニル基、フェニル基、ベンジル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等が挙げられる。
【0020】
上記一般式(1)のXとしての有機基は、特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びビスフェノール構造等の構造からなる芳香族基;ピロール環及びフラン環等の構造からなる複素環式有機基;シロキサン基等が挙げられる。より具体的には下記式(12)で表されるものが好ましい。これらは、必要により1種類または2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
【化7】
(式(12)中、*は、一般式(1)におけるNH基に結合することを示す。Zは、アルキレン基、置換アルキレン基、-O-C
6H
4-O-、-O-、-S-、-SO
2-、-C(=O)-、-NHC(=O)-または単結合である。R
5は、アルキル基、アルキルエステル基及びハロゲン原子から選ばれた1つを示し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。R
6は、水素原子、アルキル基、アルキルエステル基及びハロゲン原子から選ばれた1つを示す。uは0~4の整数である。R
7~R
10はそれぞれ1価または2価の有機基である。
なお、上記式(12)において、上記一般式(1)におけるXの置換基R
1は省略している。)
【0022】
上記式(12)で表わされる基の中で特に好ましいものとしては、下記式(13)で表されるもの(一般式(1)中のR1を有するものもあり)が挙げられる。
【0023】
【化8】
(式(13)中、*は一般式(1)におけるNH基に結合することを示す。式中Zは、アルキレン基、置換アルキレン基、-O-、-S-、-SO
2-、-C(=O)-、-NHC(=O)-、-CH
3-、-C(CH
3)H-、-C(CH
3)
2-、-C(CF
3)
2-、又は単結合である。R
11は、アルキル基、アルコキシ基、アシルオキシ基及びシクロアルキル基から選ばれる1つであり、R
11が複数ある場合、それぞれ同じでも異なってもよい。vは0以上3以下の整数である。)
【0024】
上記式(13)で表わされる基の中で特に好ましいものとしては、下記式(14)で表されるもの(一般式(1)中のR1を有するものもあり)が挙げられる。
【0025】
【化9】
(式(14)中、*は一般式(1)におけるNH基に結合することを示す。R
12はアルキレン基、置換アルキレン基、-O-、-S-、-SO
2-、-C(=O)-、-NHC(=O)-、―C(CF
3)
2―、単結合から選ばれる有機基である。)
【0026】
上記式(12)及び式(13)におけるZ及び上記式(14)におけるR12としてのアルキレン基、置換アルキレン基の具体的な例としては、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH(CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH3)-、-C(CH2CH3)(CH2CH3)-、-CH(CH2CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH3)-、-CH(CH(CH3)2)-、-C(CH3)(CH(CH3)2)-、-CH(CH2CH2CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH2CH3)-、-CH(CH2CH(CH3)2)-、-C(CH3)(CH2CH(CH3)2)-、-CH(CH2CH2CH2CH2CH3)-、-C(CH3)(CH2CH2CH2CH2CH3)-、-CH(CH2CH2CH2CH2CH2CH3)-及び-C(CH3)(CH2CH2CH2CH2CH2CH3)-等が挙げられる。これらの中でも、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-が、アルカリ水溶液だけでなく、溶剤に対しても十分な溶解性を持つ、よりバランスに優れる樹脂膜を得ることができるため好ましい。
【0027】
また、上記一般式(1)におけるYは有機基であり、このような有機基としては上記Xと同様のものが挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びビスフェノール構造等の構造からなる芳香族基;ピロール環、ピリジン環及びフラン環等の構造からなる複素環式有機基;シロキサン基等が挙げられ、より具体的には下記式(15)で示されるものを好ましく挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
【化10】
(式(15)中、*は、一般式(1)におけるC=O基に結合することを示す。Jは、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、-S-、-SO
2-、-C(=O)-、-NHC(=O)-、-C(CF
3)
2-または単結合である。R
13は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基及びハロゲン原子から選ばれた1つを示し、それぞれ同じでも異なってもよい。R
14は、水素原子、アルキル基、アルキルエステル基及びハロゲン原子から選ばれた1つを示す。wは0以上2以下の整数である。R
15~R
18はそれぞれ1価または2価の有機基である。
なお、上記式(15)において、上記一般式(1)におけるYの置換基R
2は省略している。)
【0029】
これら式(15)で表わされる基の中で特に好ましいものとしては、下記式(16)で表されるもの(一般式(1)中のR2を有するものもあり)が挙げられる。
下記式(16)中のテトラカルボン酸二無水物由来の構造については、一般式(1)におけるC=O基に結合する位置が両方メタ位であるもの、両方パラ位であるものを挙げているが、メタ位とパラ位をそれぞれ含む構造でもよい。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
(式(16)中、*は一般式(1)におけるC=O基に結合することを示す。R19は、アルキル基、アルキルエステル基、アルキルエーテル基、ベンジルエーテル基及びハロゲン原子の内から選ばれた1つを表し、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R20は、水素原子又は炭素数1以上15以下の有機基から選ばれた1つを示し、一部が置換されていてもよい。xは0以上2以下の整数である。)
【0034】
本実施形態において、上記のアミド結合を有する前駆体は以下の工程を経て作製されるものである。
(工程1)一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を活性化し、カルボン酸活性化物を得る工程。
(工程2)カルボン酸活性化物に対して、一般式(3)で表されるアミン化合物を作用させ、アミド結合を有する前駆体を得る工程。
すなわち、本実施形態においては、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を適切に分子変換した上で、一般式(3)で表されるアミン化合物と縮合し、所望のアミド結合を有する前駆体を得るものである。
【0035】
【化14】
(一般式(2)中におけるYおよびR
2、nは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【0036】
【化15】
(一般式(3)中におけるXおよびR
1、mは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【0037】
以下、各工程について説明する。
【0038】
(工程1)
本工程においては、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を活性化し、カルボン酸活性化物を得る。
すなわち、本工程では、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物について、備えられるカルボキシル基を活性化することにより、アミン化合物との反応性を向上させる。
【0039】
本工程の一態様としては、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物に対して、ハロゲン化処理をし、酸ハロゲン化物を得る態様が挙げられる。
すなわち、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物に対して、フッ素化処理、塩素化処理、臭素化処理、ヨウ素化処理のいずれかを行うことにより、カルボン酸化合物を酸フッ化物(酸フルオリド)、酸塩化物(酸クロリド)、酸臭化物(酸ブロミド)、酸ヨウ化物(酸ヨージド)のいずれかへと変換する。
これらのうち、用いる反応剤の入手容易性等を鑑み、塩素化処理を行うことを好ましい態様として挙げることができる。
【0040】
フッ素化処理を行う際に用いる反応剤としては、公知のものを採用することができ、たとえばフッ素、フッ化カリウム、フッ化リチウム等のアルカリ金属フッ化物、フッ化カルシウム等のアルカリ土類金属フッ化物、テトラブチルアンモニウムフロリド等の4級アンモニウムフロリド類を採用することができる。
塩素化処理を行う際に用いる反応剤としては、公知のものを採用することができ、たとえば塩素、塩化チオニル、オキザリルクロリド、三塩化リン等を採用することができる。
臭素化処理を行う際に用いる反応剤としては、公知のものを採用することができ、たとえば臭素および三臭化アルミニウムを採用することができる。
ヨウ素化処理を行う際に用いる反応剤としては、公知のものを採用することができ、たとえばヨウ素、ヨウ化カリウム等のアルカリ金属ヨウ化物、[ビス(トリフルオロアセトキシ)ヨード]ベンゼンを採用することができる。
これらの反応剤を用いる際の条件は、採用される反応剤に応じて任意であるが、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の90%以上を酸ハロゲン化物へと変換することのできる条件を採用することが好ましい。
【0041】
また、工程1のもうひとつの態様としては、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を、水酸基を有する化合物と反応させて、エステル化合物を得る態様が挙げられる。
【0042】
この水酸基を有する化合物としては、公知のアルコール化合物を採用することができ、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、t-ブチルアルコール、n-ペンタノールなどの化合物を採用することができる。
また、この水酸基を有する化合物としては、たとえば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールまたはこの1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの誘導体等も用いることができる。
【0043】
なお、このエステル化合物を得る際には、たとえばジシクロヘキシルカルボジイミド等の、通常のエステル合成の際に用いられる縮合剤を用いることができる。
その他、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の酸触媒を加えた上で、加熱し、アルコール化合物とカルボン酸化合物から発生する水を除去させつつ反応を進行させ、エステル化を進めて、上記のエステル化合物を得ることができる。
エステル化の条件は、採用される反応剤等に応じて任意であるが、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物の90%以上をエステル化合物へと変換することのできる条件を採用することが好ましい。
【0044】
(工程2)
続いて、工程1で得られたカルボン酸活性化物(酸ハロゲン化物あるいはエステル化合物)に対して、一般式(3)で表されるアミン化合物を作用させ、アミド結合を有する前駆体を得る。
【0045】
このアミド結合を有する前駆体への変換の温度条件や時間条件は、カルボン酸活性化物やアミン化合物の種類に応じて適宜設定することができる。
また、反応を促進させる観点から適宜公知の触媒を加えることもできる。
【0046】
(溶媒)
本実施形態の感光性樹脂組成物の製造方法においては、上述の工程1および工程2の少なくとも一方は、カルボニル基を有する複素環化合物を含む溶媒中で行われる。
【0047】
カルボニル基を有する複素環化合物を有する溶媒と、従来の非環状化合物からなる溶媒とではモノマー分子の反応性が異なることが推測される。詳細は、未だ明らかではないが、通常、感光性樹脂の合成過程においては、反応を終了させるための酸無水物のエンドキャップ化合物を末端のアミド基に反応させている。これに対し、本実施形態のカルボニル基を有する複素環化合物を含む溶媒を用いることにより、酸無水物のエンドキャップ化合物が末端のアミド基に反応することを適度に制御し、末端の反応率が向上する。
また、カルボニル基を有する5員環の複素環を有する溶媒を使用した場合、感光性樹脂のモノマー分子同士の反応性も同様に適度に制御され、分子量を増加しやすくできると考えられる。
なかでも、カルボニル基を有する複素環化合物として、5員環の複素環を選択したとき、かかる作用効果が顕著に得られる。
【0048】
カルボニル基を有する複素環化合物は、アミド結合を有する前駆体や、その他樹脂成分に対しての溶解性が高く、また、適度な極性を有しているため、上述の工程1または工程2において、その反応を円滑に進行させることができる。
また、工程1および工程2において、同じ溶媒を用いてもよく、異なる溶媒を用いてもよいが、生産性・反応効率を向上させる観点から、同じ溶媒であることが好ましい。
【0049】
カルボニル基を有する複素環化合物としては、4員環、5員環、6員環、7員環等が挙げられるが、なかでも5員環であることが好ましい。これら、カルボニル基を有する複素環化合物は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭化水素基により一部が置換されていてもよい。
また、カルボニル基を有する複素環化合物としては、当該複素環以外にさらに窒素原子を含む化合物(以下、「窒素原子を有するカルボニル基含有複素環化合物(i)」とする。)が挙げられる。本実施形態の感光性樹脂組成物は、上記の窒素原子を有するカルボニル基含有複素環化合物(i)を用いることで、より良好な反応性が得られ、適度な溶解性により、開口部残渣を低減できる。
【0050】
また、上記のカルボニル基を有する5員環の複素環における複素環としては、フラン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、およびピラゾールの中から選ばれる1種または2種以上であることが好ましく、反応効率を向上させる観点から、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、およびピラゾールの中から選ばれる1種または2種以上であることがより好ましい。また、異なる種類の複素環を組み合わせてもよい。
【0051】
具体的には、カルボニル基を有する上記フランとしては、例えばγ-ブチロラクトンが挙げられ、カルボニル基を有する上記ピロールとしては、例えばN-エチル-2-ピロリドンが挙げられ、カルボニル基を有する上記イミダゾールとしては、例えば1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられ、カルボニル基を有する上記オキサゾールとしては、例えば3-メチル-2-オキサゾリドンが挙げられる。
なかでも、N-エチル-2-ピロリドン、3-メチル-2-オキサゾリドン等は、上記の窒素原子を有するカルボニル基含有複素環化合物(i)の一例として、挙げられる。
なお、感光性樹脂の分子量が増加する観点及び感光性樹脂のエンドキャップとの反応性が促進される観点から、γ-ブチロラクトンまたは3-メチル-2-オキサゾリドンの少なくとも一方を選択することが好ましい。
【0052】
また、本実施形態の溶媒は、異なる種類の溶媒を併用してもよい。例えば、異なる種類のカルボニル基を有する複素環化合物を併用してもよく、異なる種類の上記の窒素原子を有するカルボニル基含有複素環化合物(i)を併用してもよく、カルボニル基を有する複素環化合物以外の溶媒を用いてもよい。
【0053】
すなわち、工程1または工程2のいずれかに用いられる溶媒として、上述のカルボニル基を有する複素環化合物以外にも、通常溶媒として用いられる化合物を併用することもできる。
併用される溶媒としては、公知の溶媒を用いることができるが、反応性が促進され、良好な溶解性を得る観点から、カルボニル基を有さないが、当該複素環以外に窒素原子を含む複素環化合物(ii)、および、窒素原子およびカルボニル基を有する化合物(iii)を用いることが好適である。
また、良好な溶解性を保持する観点から、例えば、上記の窒素原子を有するカルボニル基含有複素環化合物(i)と、上記のカルボニル基を有さないが、当該複素環以外に窒素原子を含む複素環化合物(ii)とを併用すること、または、上記の窒素原子を有するカルボニル基含有複素環化合物(i)と、窒素原子およびカルボニル基を有する化合物(iii)とを併用してもよい。
【0054】
溶媒を混合する場合の混合割合としては、本実施形態のカルボニル基を有する複素環化合物100重量部に対して、当該カルボニル基を有する複素環化合物以外の化合物が、1~40重量部が好ましく、1~30重量部がより好ましい。
【0055】
このような化合物として具体的には、2,6-ルチジン,ピルビン酸N,N-ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、およびピルビン酸エチル及びメチル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。
【0056】
また、本実施形態では、工程1または工程2において、上述のカルボニル基を有する複素環化合物を溶媒として用いるものであるが、発明の目的を損なわない範囲であれば、N-メチル-2-ピロリドンをこの溶媒に対して含ませることができる。
このN-メチル-2-ピロリドンの含有量は溶媒全体に対して80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることが殊更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。さらに、N-メチル-2-ピロリドンは溶媒に対して実質的に含まれていないことがとりわけ好ましい。
なお、この「実質的に含まれていない」とは、この溶媒に対してN-メチル-2-ピロリドンを意図的に添加する態様を排除する趣旨で用いており、製造プロセス上、このN-メチル-2-ピロリドンの混入を避けることが不可避である態様は許容するものである。
【0057】
なお、本実施形態において、先述の工程1と工程2の双方について、カルボニル基を有する複素環化合物を含む溶媒中にて行うことが好ましい。
これによりプロセスの簡略化が可能となり、また、場合によっては、工程1と工程2の双方についてワンポットで行うことも可能となる。
【0058】
本実施形態においては、前述の工程2を終えた段階でアミド結合を有する前駆体が得られる。
これに対し、工程2で用いた溶媒を他の溶媒で置換するか、または、工程2で用いた溶媒をそのまま用いる、あるいはこれを別途希釈することにより、感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0059】
(その他の成分)
本実施形態では、上述した成分以外にも、感光性樹脂組成物として用いられる各種成分を配合することができる。
例えば、アルカリ可溶性樹脂として、前述のアミド結合を有する前駆体以外の成分を併用することができる。
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、メタクリル酸樹脂、メタクリル酸エステル樹脂等のアクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂等が挙げられる。
また、感光性樹脂組成物をいわゆるポジ型として用いる場合には、たとえば感光性ジアゾキノン化合物、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩もしくはスルホニウム・ボレート塩などのオニウム塩、2-ニトロベンジルエステル化合物、N-イミノスルホネート化合物、イミドスルホネート化合物、2,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン化合物、またはジヒドロピリジン化合物等の光酸発生剤を配合することができる。
その他、必要に応じて酸化防止剤、フィラー、界面活性剤、光重合開始剤、末端封止剤および増感剤等の添加物を添加してもよい。
なお、これらを添加する量は任意である。
【0060】
(用途)
本実施形態によって得られる感光性樹脂組成物は硬化することにより樹脂膜を与えることができる。得られる樹脂膜は、たとえば保護膜、層間膜、またはダム材等の永久膜を構成することができる。これにより、当該樹脂膜を永久膜として備える電子装置について、耐久性等の向上を図ることができる。
【0061】
次に、本実施形態の感光性樹脂組成物を適用した電子装置100の一例について説明する。
図1に示す電子装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば電子装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。電子装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層と、を備えている(図示せず)。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえばAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0062】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
本実施形態においては、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44のうちの一つ以上を、たとえば上述の感光性樹脂組成物を硬化することにより形成される樹脂膜により構成することができる。この場合、たとえば感光性樹脂材料により形成される塗布膜に対し紫外線を露光し、現像を行うことによりパターニングした後、これを加熱硬化することにより、パッシベーション膜32、絶縁層42または絶縁層44が形成される。
【0063】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。電子装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
【0064】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
<1>
下記一般式(1)により示される繰り返し単位を有するアミド結合を有する前駆体を含む感光性樹脂組成物の製造方法であって、
当該方法は、
下記一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を活性化し、カルボン酸活性化物を得る工程と、
前記カルボン酸活性化物に対して、下記一般式(3)で表されるアミン化合物を作用させ、前記アミド結合を有する前駆体を得る工程と、を含み、
カルボン酸活性化物を得る前記工程と、アミド結合を有する前駆体を得る前記工程の少なくとも一方は、カルボニル基を有する複素環化合物を含む溶媒中で行われることを特徴とする、感光性樹脂組成物の製造方法。
【化1】
(一般式(1)中、XおよびYは、有機基である。R
1
は、水酸基、-O-R
3
、アルキル基、アシルオキシ基、またはシクロアルキル基であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
2
は、水酸基、カルボキシル基、-O-R
3
、または-COO-R
3
であり、複数有する場合にはそれぞれ同一であっても異なっても良い。R
1
およびR
2
におけるR
3
は、炭素数1~15の有機基である。R
1
として水酸基がない場合、R
2
の少なくとも1つはカルボキシル基である。R
2
としてカルボキシル基がない場合は、R
1
の少なくとも1つは水酸基である。mは0~8の整数であり、nは0~8の整数である。)
【化2】
(一般式(2)中におけるYおよびR
2
、nは一般式(1)に示されたものと同義である。)
【化3】
(一般式(3)中におけるXおよびR
1
、mは一般式(1)に示されたものと同義である。)
<2>
<1>に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
カルボン酸活性化物を得る前記工程は、一般式(2)で表される前記カルボン酸化合物に対して、ハロゲン化処理をし、酸ハロゲン化物を得るものである、感光性樹脂組成物の製造方法。
<3>
<2>に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
前記ハロゲン化処理は塩素化処理である、感光性樹脂組成物の製造方法。
<4>
<1>に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
カルボン酸活性化物を得る前記工程は、一般式(2)で表されるカルボン酸化合物を、水酸基を有する化合物と反応させて、エステル化合物を得ることで行われる、感光性樹脂組成物の製造方法。
<5>
<4>に記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
水酸基を有する前記化合物は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールまたは1-ヒドロキシベンゾトリアゾール誘導体である、感光性樹脂組成物の製造方法。
<6>
<1>ないし<5>いずれか一つに記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
カルボン酸活性化物を得る前記工程と、アミド結合を有する前駆体を得る前記工程の双方が、前記カルボニル基を有する複素環化合物を含む溶媒中で行われることを特徴とする、感光性樹脂組成物の製造方法。
<7>
<1>ないし<6>いずれか一つに記載の感光性樹脂組成物の製造方法であって、
前記カルボニル基を有する前記複素環は、フラン、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、およびピラゾールの中から選ばれる1種または2種以上である、感光性樹脂組成物の製造方法。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0066】
(実施例1)
以下に示す手順で、表1に示される割合で溶媒1を用いて、アミド結合を有する前駆体を得た。具体的には、以下の通りである。また、得られたアミド結合を有する前駆体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定し、結果を表1に示した。
ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸258.2g(1モル)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール270.3g(2モル)とを溶媒1(1500g)に溶解した後、溶媒1(412g)に溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド412.7g(2モル)を内温0~5℃に保ちながら2時間かけて滴下した。滴下終了後、内温を室温に戻し更に12時間撹拌して反応させた。反応終了後、析出したジシクロヘキシルカルボジウレアを濾過によって取り除き、得られた濾液に純水4000gを滴下し、結晶を析出させた。この結晶を濾過によって採取し、イソプロピルアルコール8000mlを用いて洗浄した後、真空乾燥し、ジカルボン酸誘導体467gを得た。
得られたジカルボン酸誘導体40.87g(0.083モル)と、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン36.63g(0.1モル)とを温度計、攪拌機、原料投入口、乾燥窒素ガス導入管を備えた4つ口のセパラブルフラスコに入れ、溶媒1(180.8g)を加えて溶解させた。その後窒素を流しながら、オイルバスを用いて75℃まで昇温し、75℃にて12時間反応させた。次に、溶媒1(13.0g)に溶解させた3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物5.58g(0.034モル)を加え、さらに3時間攪拌した後、室温まで冷却し反応を終了した。
次に、反応混合物をろ過した後、反応混合物を水/イソプロピルアルコール=3/1の溶液に投入、沈殿物を濾集し水で充分洗浄した後、真空下で乾燥し、一般式(A-1)の繰り返し単位をもつアミド結合を有する前駆体(300~400℃で加熱すると脱水閉環し、ポリベンゾオキサゾールとなる樹脂)を得た。
【0067】
得られたアミド結合を有する前駆体は以下に示す繰り返し単位(A-1)を有するものであった。
【0068】
【0069】
上記で得られたアミド結合を有する前駆体を、再度、溶媒1に溶解し、光酸発生剤を加え、感光性樹脂組成物を得た。なお、光酸発生剤はアミド結合を有する前駆体100質量部に対して15質量部となるように調整し、また、溶媒1はアミド結合を有する前駆体(A-1)100質量部に対して120質量部となるように調整した。
【0070】
(実施例2~12)
実施例1で用いた溶媒1を、表1に示される割合で溶媒1~6に変更した以外は、実施例1と同様にして、アミド結合を有する前駆体を得、そのMn、Mwをそれぞれ求めた。
さらに、その後、実施例1と同様の操作を行い、感光性樹脂組成物を得た。
【0071】
【0072】
なお、溶媒1~6はそれぞれ以下の通りである。
溶媒1:N-エチル-2-ピロリドン
溶媒2:3-メチル-2-オキサゾリドン
溶媒3:3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド
溶媒4:γ-ブチロラクトン
溶媒5:2,6-ルチジン
溶媒6:ジメチルスルホキシド
【0073】
実施例1~12の各感光性樹脂組成物についてパターン性を確認したが、いずれにおいても、従来存在していた感光性樹脂組成物と同様に良好なパターン性を発揮した。
【0074】
本実施例に示されるように、特定の溶媒を用いることで、所望のアミド結合を有する前駆体が得られた。また、この前駆体により感光性樹脂組成物を作製することで、環境への負荷が低減される感光性樹脂組成物を安定的に得ることができた。
【0075】
この出願は、2020年2月20日に出願された日本出願特願2020-026930号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0076】
100 電子装置
30 層間絶縁膜
32 パッシベーション膜
34 最上層配線
40 再配線層
42 絶縁層
44 絶縁層
46 再配線
50 UBM層
52 バンプ