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特許7235177ガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、およびガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法、およびガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/08 20060101AFI20230301BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20230301BHJP
   C08J 11/00 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20230301BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20230301BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08J5/08 CEZ
B29B17/04 ZAB
C08J11/00
C08K5/54
C08K7/14
C08L81/02
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022544343
(86)(22)【出願日】2022-07-14
(86)【国際出願番号】 JP2022027656
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2021118378
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山中 悠司
(72)【発明者】
【氏名】鎗水 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】井砂 宏之
(72)【発明者】
【氏名】東原 武志
(72)【発明者】
【氏名】堀内 俊輔
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-116428(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099234(WO,A1)
【文献】特開平07-080834(JP,A)
【文献】特開2017-171731(JP,A)
【文献】特開2015-009436(JP,A)
【文献】特開2015-081321(JP,A)
【文献】特開2001-026719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/08
B29B 17/04
C08J 11/00
C08K 5/54
C08K 7/14
C08L 81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある)樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物(以下、「(B)PPS樹脂組成物」ということがある)とを、混合することを特徴とするガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(B)PPS樹脂組成物が、カルボキシル基を20~400μmol/g含有するPPS樹脂を配合してなることを特徴とする請求項1に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(A)成形品破砕物が、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記(A)成形品破砕物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなり、かつ前記(B)PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(A)成形品破砕物が、成形品を破砕した後、さらに押出機で溶融混練して得られた成形品破砕物ペレットであることを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記(A)成形品破砕物が、製品として使用後に回収された成形品を破砕して得られたことを特徴とする請求項1または2に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記(A)成形品破砕物が、製品として使用後に回収された成形品を溶媒で洗浄した後、破砕して得られたことを特徴とする請求項6に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(以下、「(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物」ということがある)を使用する、請求項1に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維束10~60重量%を含有することを特徴とする請求項8に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることを特徴とする請求項8に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の相構造において、PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が、数平均分散粒子径500m以下で分散した分散相を形成することを特徴とする請求項10に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法
【請求項12】
前記(A)成形品破砕物と、(B)PPS樹脂組成物と(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、実質的に同一組成であることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、前記ガラス繊維束の周囲を被覆するようにPPS樹脂が配置されている芯鞘構造であることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有する有機シラン化合物を0.01~5重量%配合してなることを特徴とする請求項8~11のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
【請求項15】
Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が1.3以上、4.0以下である成形品。
【請求項16】
前記ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体を1~20重量%配合してなることを特徴とする請求項15に記載の成形品。
【請求項17】
PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が、数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成することを特徴とする請求項16に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックの再生利用に関するものであり、ガラス繊維を含有するポリフェニレンスルフィド樹脂からなる成形品の機械特性の低下が極めて小さいガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法、および得られたガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略すことがある)樹脂は優れた耐熱性、耐薬品性、難燃性、電気特性を有するエンジニアリングプラスチックであり、ガラス繊維等で強化されて自動車部品、水廻り部品、電気電子部品を中心に使用されている。
【0003】
近年、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、熱可塑性樹脂のリサイクルが加速しており、特に使用後の製品を同じ製品としてリサイクルするクローズドリサイクルの要求が高まっている。
【0004】
PPSは優れた耐久性により、マテリアルリサイクルに向いているものの、その多くがガラス繊維強化PPS樹脂組成物(以下、GFR-PPSと略すことがある)として用いられる。GFR-PPSは成形および再生の工程でガラス繊維が破損するため、再生利用した樹脂組成物(以下、再生材とする)は再生利用されていない樹脂組成物(以下、未使用材とする)に比べ機械特性が低下する課題があった。
【0005】
また、市場にて使用された後に回収された成形品を用いた再生材は、埃や油状の汚れ成分が付着しているため、機械特性が低下しやすく、更には成形時および成形品使用時に、汚れ成分に由来する臭気が発生し、再生使用が制限される問題があった。
【0006】
これらの問題に対し、PPSの溶融加工時の劣化抑制および再生材の機械特性低下の抑制手法として、直鎖状PPS樹脂及び充填材を含有するPPS樹脂組成物に溶融安定剤として環状PPS化合物を添加する検討が報告されている(例えば、特許文献1参照)。また、ガラス繊維強化樹脂の再生材の強度向上手法として、リサイクル樹脂組成物の成形において発生する回収成形物の粉砕品をペレット化せずに、原料樹脂および樹脂用添加剤とを含む混合物とし、溶融混練したリサイクル樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、リサイクル樹脂と長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットを混合することで、リサイクル樹脂組成物の強度を向上する手法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平10-77408号公報
【文献】特開2001-26719号公報
【文献】特開平11-166054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたPPS樹脂組成物は、PPSの分子鎖切断に起因する物性低下を抑制する手法であり、ガラス繊維が折損することで機械特性が低下する問題を解決できていない。また、特許文献2に記載された製造方法は、回収成形物の熱履歴を減らす手法であり、リサイクル樹脂組成物のガラス繊維が更に折損することは抑制できるが、既にガラス繊維が折損して機械特性が低下したものを再生する技術とは言いがたい。更にPPSの特徴に関する記載はない。また、特許文献3はリサイクル樹脂組成物中のガラス繊維長の再生が可能だが、長繊維強化熱可塑性樹脂ペレットのガラス繊維量や比重がリサイクル樹脂とは異なるため、得られるリサイクル樹脂組成物の組成をリサイクル樹脂とは同組成にできず、クローズドリサイクルには適用できない。更にPPSは官能基量が少ないためガラス繊維との接着性に劣るが、この問題点を解消する方法は開示されておらず、PPSの改質に用いられるオレフィン系共重合体樹脂の配合に関する記載もない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、PPS樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕して得られた成形品破砕物に、特定の重量平均分子量を有するPPS樹脂とガラス繊維からなるPPS樹脂組成物を混合することで、上記課題が解消されることを見出した。さらに、PPS樹脂組成物として、特定のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を混合することで、より効率的に目的が達成されることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
1.ポリフェニレンスルフィド(以下、「PPS」ということがある)樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)重量平均分子量(以下、「Mw」ということがある)が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物(以下、「(B)PPS樹脂組成物」ということがある)とを、混合することを特徴とするガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
2.前記(B)PPS樹脂組成物が、カルボキシル基を20~400μmol/g含有するPPS樹脂を配合してなることを特徴とする1項に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
3.前記(A)成形品破砕物が、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなることを特徴とする1項または2項に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
4.前記(A)成形品破砕物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなり、かつ前記(B)PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることを特徴とする1~3項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
5.前記(A)成形品破砕物が、成形品破砕物を破砕した後、さらに押出機で溶融混練して得た成形品破砕物ペレットであることを特徴とする1~4項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
6.前記(A)成形品破砕物が、製品として使用後に回収された成形品を破砕して得られたことを特徴とする1~5項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
7.前記(A)成形品破砕物が、製品として使用後に回収された成形品を溶媒で洗浄した後、破砕して得られたことを特徴とする1~6項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
8.(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を10~80重量%含有し、かつペレットの長さが3.0~50mmであるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用する、1~7項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
9.前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維束10~60重量%を含有することを特徴とする8項に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
10.前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることを特徴とする8項または9項に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
11.前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の相構造において、PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が、数平均分散粒子径500m以下で分散した分散相を形成することを特徴とする10項に記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
12.前記(A)成形品破砕物と、(B)PPS樹脂組成物と(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、実質的に同一組成であることを特徴とする8~11項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
13.前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、前記ガラス繊維束の周囲を被覆するようにPPS樹脂組成物が配置されている芯鞘構造であることを特徴とする8~12項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
14.前記(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が、エポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有する有機シラン化合物を0.01~5重量%配合してなることを特徴とする8~13項のいずれかに記載のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法。
15.Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品であって、該ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(Lw/Ln)が、1.3以上、4.0以下である成形品。
16.前記ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物が、オレフィン系共重合体を1~20重量%配合してなることを特徴とする15項に記載の成形品。
17.PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が、数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成することを特徴とする16項に記載の成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、リサイクル後であっても、本来の機械的強度、成形加工性を保持しつつ、射出成形用途などの広範な分野での利用が可能となる。これらの特性を有するガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、サーキュラーエコノミーの実現に貢献する材料となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明におけるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法は、PPS樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるPPS樹脂組成物とを混合することが特徴である。
【0014】
本発明における(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物との混合とは、(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物を押出機等で溶融混練することも含まれるが、(A)成形品破砕物のガラス繊維の折損を抑制する観点から溶融混練を伴わない混合、例えば(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物のペレットを、ペレットブレンドすることが好ましい。ここで、(B)PPS樹脂組成物には、(A)成形品破砕物を含まない。
【0015】
(A)成形品破砕物とは、例えばPPS樹脂およびガラス繊維を配合してなるGFR-PPSを射出成形等で成形した成形品の破砕物はもちろんのこと、射出成形した際に回収されたスプルー/ランナー等の破砕物を含む。GFR-PPSは、二種類以上のPPS樹脂を含有するものであってもよく、更に、全成形品破砕物重量の30重量%以下であれば、PPS樹脂以外の樹脂から構成される成形品破砕物が混入していても差し支えない。
【0016】
サーキュラーエコノミー実現の観点で、(A)成形品破砕物は、製品として市場で使用された後回収された成形品を破砕したものであることが好ましく、係る成形品は、本発明の製造方法で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物から構成されることがより好ましい。また、クローズドリサイクル実現の観点で、(A)成形品破砕物は、Mwが20000~60000のPPS樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%から構成されることが好ましい。なお、好ましいPPS樹脂およびガラス繊維については、後述する。
【0017】
優れた靱性を得る観点で、(A)成形品破砕物は、オレフィン系共重合体1~20重量%を配合してなることが好ましい。なお、好ましいオレフィン系共重合体については、後述する。
【0018】
(A)成形品破砕物が製品として市場で使用された後回収された成形品の破砕物である場合は、汚れ成分による機械特性の低下や臭気を抑制する観点で、破砕の前または後のいずれかで溶媒で洗浄し、付着物を除去することが好ましい。溶媒としては、水や有機極性溶媒が挙げられ、コストの観点からは水が好ましく、汚れ成分を効率的に除去する観点からは有機極性溶媒が好ましく、取り扱い性の観点からN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が好ましい。溶媒は複数種を混合して用いてもよく、有機極性溶媒で洗浄後、水で洗浄するなど2段階で洗浄してもよい。洗浄の方法としては、溶媒により付着物を除去することができる方法であれば特に制限はないが、槽に成形品を浸漬し、撹拌後に成形品を取り出すバッチ式洗浄方法や、ベルトコンベアーやロータリースクリーンで成形品を搬送中に溶媒をかける連続式洗浄方法が挙げられる。また、洗浄効率の向上を目的に、洗浄前に予め粗く破砕することも可能である。
【0019】
(A)成形品破砕物は樹脂材料のみからなる製品であれば取り扱いが容易であるが、本発明では金属除去を行えば、樹脂と金属とのインサート成形品でも差し支えない。また、少量の金属部品を含んでいてもよく、その場合、金属部品を回収時に除去することは生産性の低下を伴うため、成形品破砕物の製造工程内に金属除去装置を用いることが好ましい。金属除去装置の具体例としては、マグネットに金属を付着除去させる方法や、磁力式、渦電流式の選別装置が挙げられる。
【0020】
(A)成形品破砕物は、成形品を破砕した後、さらに破砕物を溶融混練して得た成形品破砕物ペレットであってもよく、この場合は、(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物を混合する際に生じる分級や、押出機や成形機への供給不良が解決でき、好ましい。
【0021】
このような成形品破砕物を単独で溶融混練して樹脂ペレット化する手法は、例えば特許文献2の段落[0004]、[0032]等で熱履歴の回数が増えて好ましくないとの記載があるが、本発明におけるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、耐熱性や耐薬品性が高く本質的に熱履歴に対して耐性を有するPPS樹脂をマトリックス樹脂として用い、更に特定の範囲の重量平均分子量を有するPPS樹脂を選定することを特徴とする。係る特徴を有することで、係る手法を用いたとしてもPPS樹脂本来の機械的強度、成形加工性が保持できる。
【0022】
成形品破砕物ペレットを得る際の溶融混練は、単軸または二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロールなど通常公知の溶融混練機に原料を供給し、樹脂温度が280℃~380℃になるように溶融混練する方法などを代表例として挙げることができるが、ガラス繊維の折損およびGFR-PPSの物性低下を招くため、出来る限りガラス繊維の折損を抑制することが好ましく、単軸押出機による溶融混練が好ましい。その際の溶融混練の温度条件としては、ガラス繊維の折損を抑制する目的で、300℃以上、360℃以下の温度とすることが好ましい。なお、ここでの樹脂温度は押出機から吐出される樹脂の温度を直接測定した値である。
【0023】
(A)成形品破砕物は、押出機や成形機に供給し得る大きさであることが好ましく、破片の長軸寸法が1~20mm以下であることがより好ましい。
【0024】
ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物における(A)成形品破砕物の配合量の下限は10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、環境低負荷の観点から50重量%以上が特に好ましく、60重量%以上が殊更に好ましい。また、(A)成形品破砕物の配合量の上限は、未使用材と同等の各種特性を発現させる観点から、90重量%以下がより好ましく、80重量%以下がさらに好ましい。
【0025】
本発明で用いられるPPS樹脂とは、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0026】
【化1】
【0027】
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂は、その繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記式で表される繰り返し単位の内の少なくとも1種で構成されていてもよい。
【0028】
【化2】
【0029】
本発明で用いられる(B)PPS樹脂組成物に配合するPPS樹脂の重量平均分子量は、(A)成形品破砕物と混合して各種成形を行う際のガラス繊維の更なる折損を抑制するために、20000~60000であることが必要である。ガラス繊維の折損をより抑制するためには50000以下が好ましく、45000以下がより好ましい。このような重量平均分子量のPPS樹脂は、後記するポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤のモル比を調整することや、重合助剤の添加量を調整することで得られる。なお、ここでの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で算出した値である。
【0030】
本発明で用いられる(B)PPS樹脂組成物に配合するPPS樹脂のカルボキシル基含有量は、PPS樹脂とガラス繊維との結合を形成し、(A)成形品破砕物と混合して各種成形を行う際のガラス繊維の更なる折損を抑制するために、20~400μmol/gであることが好ましい。20μmol/g以上である場合、折損が抑制され、PPS樹脂組成物の靱性が向上する。400μmol/g以下である場合、溶融混練時のガスの発生を抑制し、成形品内のボイド混入も抑制でき、好ましい。ガラス繊維との結合をより形成させ、靱性を得る観点で40μmol/g以上が好ましく、60μmol/g以上がより好ましい。さらに、耐熱性や耐薬品性を向上させる観点で、100μmol/g以上がさらに好ましく、150μmol/g以上が特に好ましい。成形品内にボイドが混入し機械特性を低下することを抑制するために、上限は、350μmol/g以下が好ましく、300μmol/g以下がより好ましい。このようなカルボキシル基含有量のPPS樹脂は、後記するポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤と重合安定剤のモル比を調整することや、カルボキシル基を含有するポリハロゲン化芳香族化合物やモノハロゲン化化合物を共重合することで得られる。なお、本発明におけるカルボキシル基含有量は、赤外分光光度計(FT-IR)により、ベンゼン環由来の1,900cm-1付近における吸収に対する、カルボキシル基由来の1,730cm-1付近における吸収を比較して算出した値である。
【0031】
(B)PPS樹脂組成物におけるPPS樹脂の配合量は、機械特性と流動性を両立する観点から、40~90重量%が必要であり、これらの特徴を有するのであれば、複数のPPS樹脂を併用してもよい。
【0032】
本発明で用いられるPPS樹脂は、有機極性溶媒中でポリハロゲン化芳香族化合物とスルフィド化剤を用いて脱塩重縮合する方法やジヨードベンゼンと硫黄を用いて溶融条件下で合成する方法など、公知の方法で得られるPPS樹脂を使用することができる。以下に原料およびPPS樹脂の後処理工程について詳細を説明する。
【0033】
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
ポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する芳香族化合物をいう。具体例としては、p-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2,4,5-テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロ-p-キシレン、1,4-ジブロモベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼンなどのジハロ芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp-ジクロロベンゼンが用いられる。
【0034】
ポリハロゲン化芳香族化合物の添加量は、適切な重量平均分子量のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9~2.0モル、好ましくは0.95~1.5モル、更に好ましくは1.005~1.2モルの範囲が例示できる。
【0035】
[モノハロゲン化化合物]
モノハロゲン化化合物は、1分子中にハロゲン原子を1個有する化合物をいう。生成するPPS樹脂の分子量の制御や、末端に反応性官能基を形成させるために、ポリハロゲン化芳香族化合物と併用して用いてもよい。
【0036】
このようなモノハロゲン化化合物の具体例としては、2-クロロ安息香酸、3-クロロ安息香酸、4-クロロ安息香酸、2-アミノ-4-クロロ安息香酸、4-クロロ-3-ニトロ安息香酸、4-クロロベンゾフェノン-2-カルボン酸、2-クロロアニリン、3-クロロアニリン、4-クロロアニリン、2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノールなどのモノハロゲン化化合物を挙げることができる。これらのなかでも重合時の反応性や汎用性などの観点から4-クロロ安息香酸がより好ましく例示できる。また、これらのモノハロゲン化化合物は1種類単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても問題ない。
【0037】
[スルフィド化剤]
スルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物が挙げられる。
【0038】
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0039】
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
【0040】
[重合助剤]
比較的高重合度のPPS樹脂をより短時間で得るために、重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは、得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。
【0041】
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)(式中、Rは、炭素数1~20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1~3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p-トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
【0042】
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル~2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1モル~0.6モルの範囲が好ましく、0.2モル~0.5モルの範囲がより好ましい。
【0043】
[PPS樹脂の後処理工程]
特定量のカルボキシル基含有量を有するPPS樹脂を得るために、重合後、酸処理が施されることが好ましい。
【0044】
PPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられる。
【0045】
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80℃~200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上、例えばpH4~8程度となってもよい。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
【0046】
クローズドリサイクル効率化の観点で、(B)PPS樹脂組成物を構成するPPS樹脂と(A)成形品破砕物を構成するPPS樹脂は、同じPPS樹脂を含むことが好ましい。ここで、「同じPPS樹脂」とは、(A)成形品破砕物を構成するPPS樹脂の重量平均分子量に対する(B)PPS樹脂組成物を構成するPPS樹脂の重量平均分子量の比が0.8~1.2の範囲内にあることをいう。また、(A)成形品破砕物から固液分離等の手法を用いて分離回収したPPS樹脂を用いることも、サーキュラーエコノミー実現の観点で好ましい。適宜2種以上のPPS樹脂を併用して特性を調整してもよい。
【0047】
クローズドリサイクル効率化の観点で、(B)PPS樹脂組成物を構成するガラス繊維と(A)成形品破砕物を構成するガラス繊維は、同じガラス繊維を含むことが好ましい。ここで、「同じガラス繊維」とは、(A)成形品破砕物を構成するガラス繊維と(B)PPS樹脂組成物を構成するガラス繊維が、例えば、Eガラスのように、同じ組成として扱われる範囲内にあるガラス繊維であることをいう。また、2種以上のガラス繊維を併用することも可能である。特に、簡便に全てを同一の原料とするために(B)PPS樹脂組成物は、(A)成形品破砕物の未使用材であることが最も好ましい。なお、「(A)成形品破砕物の未使用材」とは、(A)成形品破砕物の原料となる成形品を構成する樹脂組成物であって、再生利用されていない樹脂組成物のことを指す。
【0048】
本発明における(B)PPS樹脂組成物を構成するガラス繊維は、ガラス繊維の表面をエポキシ化合物等で予備処理し、ガラス繊維の集束性や樹脂配合時の分散性を向上させたガラス繊維であることが好ましく、このようなガラス繊維は、カルボキシル基含有量が20~400μmol/gであるPPS樹脂と併用することで、界面の密着性が向上し、優れた強度向上効果や耐熱性、耐薬品性が得られる。
【0049】
本発明で用いるガラス繊維は、部分的にイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物等のカップリング剤で予備処理することも、分散性や界面の密着性向上の観点から好ましい。
【0050】
また、ガラス繊維と併用して、炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、チタン酸カリウムウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、ならびにアラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、および金属繊維等といった繊維状フィラーを合わせて用いることも、繊維状フィラーの折損が抑制される本発明において有効である。
【0051】
本発明で用いるガラス繊維の形状は、繊維径が1~50μmが好ましく、3~30μmが更に好ましく、5~20μmがより好ましい。繊維長さは30μm~10mmが好ましく、50μm~5mmがより好ましい。繊維径と繊維長さを上記範囲内とすることで、樹脂組成物の機械強度向上効果を得ることができ好ましい。
【0052】
(B)PPS樹脂組成物における上記ガラス繊維の配合量は、強度向上効果と流動性を両立する観点から、10~60重量%の範囲が必要である。優れた強度を得るために20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上が特に好ましいがクローズドリサイクルの観点から(A)成形品破砕物に配合されるガラス繊維と同等の配合量とすることが最も好ましい。
【0053】
本発明における(B)PPS樹脂組成物は、オレフィン系共重合体を配合して樹脂組成物の靱性向上を図ることが好ましい。オレフィン系共重合体の例としては、PPS樹脂との相溶性を高めることができるエポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するオレフィン系共重合体や、靱性を飛躍的に向上させることができる未変性のオレフィン系共重合体が挙げられ、それらの併用も有効である。このようなオレフィン系共重合体は、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の靱性と耐熱性を両立させる観点からPPS樹脂組成物の全重量の1~20重量%配合することが好ましい。特に、(A)成形品破砕物にオレフィン系共重合体が配合されている場合には、(B)PPS樹脂組成物にも、オレフィン系共重合体を配合することが好ましい。クローズドリサイクル効率化の観点で、(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物は、同じオレフィン系共重合体を含むことが好ましい。ここで、「同じオレフィン系共重合体」とは、(A)成形品破砕物を構成するオレフィン系共重合体のモノマー成分と同一のモノマー成分で構成されるオレフィン系共重合体であることをいう。また、2種以上のオレフィン系共重合体を併用することも可能である。
【0054】
本発明の(B)PPS樹脂組成物は、有機シラン化合物を配合することが好ましい。有機シラン化合物としては、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基およびアルコキシ基から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。中でも、PPS樹脂とガラス繊維の結合形成を補助する観点からエポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも一つの官能基を有する有機シラン化合物が好ましい。このような有機シラン化合物の配合量は、反応性と粘度制御を両立させる観点から、(B)PPS樹脂組成物の全重量の内0.01~2重量%配合することが好ましい。
【0055】
本発明におけるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の製造方法において、(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用することが、折損したガラス繊維長を回復させて、機械特性を飛躍的に向上させる観点で特に好ましい。
【0056】
(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物とは、PPS樹脂中にペレットの長さ方向に揃えられたガラス繊維束を含有し、ペレットの長さが実質的にガラス繊維束の繊維長である樹脂組成物である。
【0057】
PPS樹脂中のガラス繊維束の含有量は強度補強効果と繊維束の分散性の観点から10~80重量%が好ましく、(A)成形品破砕物中の折損したガラス繊維を効率よく補填する観点から、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましい。ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の毛羽立ちに伴う押出機への供給不良の観点から70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。
【0058】
クローズドリサイクル効率化の観点で、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を構成するPPS樹脂は、(A)成形品破砕物を構成するPPS樹脂と同じPPS樹脂を含むことが好ましい。一方で、ガラス繊維束により悪化するガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の流動性を確保するため、Mwが20000~60000の範囲内であれば、適宜、(A)成形品破砕物を構成するPPS樹脂より、低分子量のPPS樹脂を用いることが好ましい。また、PPS樹脂はガラス繊維との結合が形成しやすいように、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボジイミド構造、ウレア構造、ウレタン構造等を有していることが好ましく、さらに反応性の観点で、カルボキシル基、エポキシ基、およびカルボジイミド構造から選択される少なくともいずれかを有することがより好ましく、特にカルボキシル基を20~400μmol/g含有するPPS樹脂であることが好ましい。
【0059】
(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を構成するガラス繊維は、その表面をエポキシ化合物等で予備処理し、ガラス繊維の集束性や樹脂配合時の分散性を向上させたガラス繊維が好ましく、このようなガラス繊維は、官能基を有するPPS樹脂との界面の密着性や分散性が向上して、高い強度向上効果や耐熱性、耐薬品性が得られる。(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を構成するガラス繊維は、クローズドリサイクル効率化の観点で、(A)成形品破砕物を構成するガラス繊維と同じガラス繊維を含むことが好ましい。また、ガラス繊維径は1~50μmが好ましく、3~30μmがより好ましく、5~20μmが特に好ましい。ガラス繊維径が小さい程、引張強度や曲げ強度の向上効果を得ることができ、繊維径が大きい程、成形で繊維が折れにくく、衝撃強度の向上効果を得ることができると共に、繊維間の空隙が増えることで樹脂の含浸性が向上する傾向がある。繊維径を上記範囲内とすることで、機械強度と含浸性を両立でき好ましい。
【0060】
(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、(A)成形品破砕物にオレフィン系共重合体が配合されている場合には、オレフィン系共重合体が配合されていることが好ましく、オレフィン系共重合体の例としては、(B)PPS樹脂組成物に配合されるものと同様の化合物が挙げられる。クローズドリサイクル効率化の観点で、オレフィン系共重合体は、(A)成形品破砕物に配合されているものと同じオレフィン系共重合体を含むことが好ましい。(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、オレフィン系共重合体を1~20重量%配合することが好ましく、優れた靱性を得る観点から、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましい。
【0061】
(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物にオレフィン系共重合体が配合されている場合は、PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成することが好ましい。高靱性化の観点で、オレフィン系共重合体の数平均分散粒子径は300nm以下であることがより好ましい。
【0062】
このような数平均分散粒子径を得るためには、PPS樹脂とエポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、アミノ基、水酸基およびメルカプト基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有するオレフィン系共重合体を適切に反応させることが有効となる。適切に反応とは、例えば、官能基量が少なすぎる場合にはPPS樹脂とオレフィン系共重合体の反応が不十分となり、数平均分散粒子径は500nm以上となってしまう。また、PPS樹脂とオレフィン系共重合体を反応させる温度が高すぎる場合、ゲル化が生じ、数平均分散粒子径は500nm以上となってしまう。
【0063】
なお、数平均分散粒子径は、以下の方法により求められる。(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物のペレットから、ウルトラミクロトームを用いて超薄切片を切り出し、その超薄切片について、無染色のサンプルを、透過型電子顕微鏡にて5000~10000倍の倍率にて観察する。得られた画像から任意の異なる分散相を10個選び、それぞれの分散相について長径および短径を求めて平均値を取り、それらの平均値の数平均値を分散相の数平均分散粒子径として算出することができる。分散相を構成する成分の同定は、無染色のサンプルにおける相のコントラスト差で決定することができる。
【0064】
クローズドリサイクル実現の観点で、(A)成形品破砕物と、(B)PPS樹脂組成物と、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、実質的に同一組成であることが好ましい。ここで、「実質的に同一組成」とは、(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物が実質的に同一組成で、かつ(A)成形品破砕物と(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が実質的に同一組成であることをいい、(B)PPS樹脂組成物の全てに(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用する場合は、(A)成形品破砕物と(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物が実質的に同一組成であればよい。また、「(A)成形品破砕物と(B)PPS樹脂組成物が実質的に同一組成」とは、(A)成形品破砕物中の灰分量から(B)PPS樹脂組成物中の灰分量を引いた値を、(B)PPS樹脂組成物中の灰分量で除した値の百分率(%)が、-20%~20%であり、かつ(A)成形品破砕物の密度(単位:g/cm)から(B)PPS樹脂組成物の密度を引いた値を、(B)PPS樹脂組成物の密度で除した値の百分率(%)が-20%~20%であることをいう。ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品の品質の変化を抑制する観点で、それぞれの下限は-15%以上が好ましく、-10%以上がより好ましく、上限は15%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、成形性の変化を抑制する観点で、下限は-5%以上がさらに好ましく、上限は5%以下がさらに好ましい。
【0065】
なお、灰分量は、(A)成形品破砕物または(B)PPS樹脂組成物を、550℃で3時間焼成して得た残渣の重量を焼成前の重量で除して算出した値の百分率(%)である。
【0066】
(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物のペレットの長さは、強度向上効果と取り扱い性の観点から3.0~50mmが好ましく、(A)成形品破砕物や(B)PPS樹脂組成物との混合性から20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、分級を抑制する観点から7mm以下が特に好ましい。
【0067】
このような(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、連続ガラス繊維束を直接押出機に投入するダイレクトロービング法や、連続ガラス繊維束に樹脂を含浸するプルトリュージョン法や連続ガラス繊維束に樹脂を被覆する方法で得られる。マトリックスとなるPPS樹脂は、(A)成形品破砕物を構成するPPS樹脂と同じPPS樹脂か同程度の流動性を有するPPS樹脂を用いることが好ましいため、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、マトリックス樹脂の流動性に制限がかかりにくい方法で製造されること好ましい。
【0068】
特に(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物にオレフィン系共重合体を配合する場合は、連続ガラス繊維束に樹脂を含浸するプルトリュージョン法は好ましくない。その理由は、オレフィン系共重合体は分子量が高く、粘度が高い特性を有するため、含浸性が劣るためである。また、PPS樹脂の流動性を高めるために製造温度を高温にした場合、オレフィン系共重合体の熱劣化やゲル化が生じるためである。
【0069】
(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、ガラス繊維束を芯構造として、その周囲をPPS樹脂、および必要に応じオレフィン系共重合体を配合してなる樹脂組成物で被覆するように配置された芯鞘構造として製造することが好ましい。一般的にこのように電線被覆の要領で製造された芯鞘構造は、連続繊維の分散性が悪いために、各種成形によって得られた成形品に繊維の分散不良が認められることが多い。そのため、繊維の分散性を向上させるために、被覆層であるPPS樹脂、および必要に応じオレフィン系共重合体を配合してなる樹脂組成物に有機シラン化合物を配合することが好ましい。有機シラン化合物としては、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基およびアルコキシ基から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。中でも、PPS樹脂のカルボキシル基を起点としたガラス繊維の結合形成による分散性向上を補助する観点からエポキシ基、アミノ基、およびイソシアネート基から選択される少なくとも1種の官能基を有する有機シラン化合物が好ましく、各種成形の過程で速やかにガラス繊維をPPS樹脂中に分散させる観点で、アミノ基またはイソシアネート基を有することが好ましい。
【0070】
このような有機シラン化合物の配合量は、反応性と流動性を両立させる観点から、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の全重量の内0.01~5重量%配合することが好ましい。その下限は、PPS樹脂とガラス繊維の密着性および分散性を向上させる観点で0.1重量%以上が好ましく。0.5重量%以上がより好ましい。その上限は、過度な粘度増加を抑制して、ガラス繊維の分散性を向上させる観点で3.0重量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましい。
【0071】
芯鞘構造を有し、かつオレフィン系共重合体を含有する(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、ガラス繊維の分散性に優れるばかりか、オレフィン系共重合体の分散性にも優れ、PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成しやすくなるため、ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の特性を飛躍的に向上することができる。
【0072】
本発明の(A)成形品破砕物、(B)PPS樹脂組成物、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、非繊維充填材として、フラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが配合されていてもよく、これらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、電気特性、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。
【0073】
(C)長繊維強化PPS樹脂組成物に上記の非繊維充填材を配合する場合、連続ガラス繊維束に樹脂を含浸するプルトリュージョン法は好ましくない。非繊維充填材を配合することで粘度が高くなり、含浸性が劣るためである。この場合、前記の通り、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は連続ガラス繊維束を芯構造として、その周囲をPPS樹脂と非繊維充填材を配合してなる樹脂組成物で被覆するように配置された芯鞘構造として製造することが好ましく、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の成形時のガラス繊維の分散性を向上させる観点で、被覆層であるPPS樹脂と非繊維充填材からなる樹脂組成物に有機シラン化合物を配合することが好ましい。有機シラン化合物としては、前述の(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物に好ましく使用される化合物が好ましい。
【0074】
本発明の(A)成形品破砕物、(B)PPS樹脂組成物、および(C)長繊維強化PPS樹脂組成物は、フェノール系酸化防止剤や、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、有機リン系化合物などの可塑剤、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、モンタン酸ワックス類、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミ等の金属石鹸、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物、シリコーン系化合物などの離型剤、その他、水、滑剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を配合することができる。このような添加剤は、0.01~5重量%配合することが好ましい。
【0075】
本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、重量平均分子量が20000~60000のPPS樹脂40~90重量%とガラス繊維10~60重量%を配合してなる。また、該ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品は、含有するガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)の比(以下、Lw/Ln)が、1.3以上、4.0以下である特徴を有する。
【0076】
ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物における上記ガラス繊維の配合量は、優れた強度を得るために20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましい。
【0077】
本発明で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品は、(A)成形品破砕物の折損したガラス繊維長を回復して、(A)成形品破砕物の未使用材と比較しても機械特性の低下が少ない特徴を有するだけでなく、一定範囲のLw/Lnの成形品が得られる。Lw/Lnが大きい程、繊維長が長いガラス繊維が短いガラス繊維に対して残存していることを表し、流動性の低下を抑制しながら、ガラス繊維の配向を好ましく変化させることが可能となり、(A)成形品破砕物の未使用材の特性をも凌駕する特性を発現することが可能である。Lw/Lnは、機械特性と流動性を両立させる観点で1.5以上が好ましく、1.7以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。成形品の品質安定性の観点で、Lw/Lnは3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。Lw/Lnは、(A)成形品破砕物と、成形品破砕物とは異なるガラス繊維長分布を有する(B)PPS樹脂組成物の種類や量を調整して混合することで、得られた成形品のガラス繊維の繊維長分布を多峰性に調整することが可能となる。特に(B)PPS樹脂組成物の一部または全てに(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を使用することで、Lw/Lnを大きくすることが可能となる。
【0078】
ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品の、ガラス繊維の重量平均繊維長は、優れた機械特性と流動性確保の観点から50~5000μmであることが好ましい。優れた機械特性を得る観点から100μm以上が好ましく、200μm以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から300μm以上がさらに好ましい。また、Lw/Lnが好ましい範囲である場合は、更に機械特性と流動性の両立が可能であることから、400μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが特に好ましい。また、優れた流動性を得る観点から4000μm以下が好ましく、3000μm以下がより好ましく、2000μm以下が特に好ましい。
【0079】
ここで、ガラス繊維の重量平均繊維長(Lw)および数平均繊維長(Ln)は、樹脂組成物ペレットまたは樹脂組成物ペレットを射出成形して得たISO(1A)成形品を焼成して得たガラス繊維を、光学顕微鏡にて50~100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本のガラス繊維の長さを測定し、その測定値(μm)を用いて以下の式に基づき計算した値である。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:ガラス繊維の繊維長
ni:繊維長Liのガラス繊維の本数。
【0080】
本発明で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、優れた靱性を発現させるために、オレフィン系共重合体が配合されていることが好ましく、オレフィン系共重合体の例としては、(B)PPS樹脂組成物に配合されるものと同様の化合物が挙げられる。また、オレフィン系共重合体は1~20重量%配合されていることが好ましく、その上限は、10重量%以下であることが好ましい。
【0081】
本発明で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物およびガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品の相構造は、PPS樹脂が連続相を形成し、オレフィン系共重合体が数平均分散粒子径500nm以下で分散した分散相を形成することが好ましく、高靱性化の観点で300nm以下であることがより好ましい。
【0082】
このような数平均分散粒子径を得るためには(A)成形品破砕物、(B)PPS樹脂組成物、および(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物それぞれについて、オレフィン系共重合体を配合した場合のその数平均分散粒子径が上記範囲であることが好ましい。特に、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、オレフィン系共重合体のゲル化による数平均分散粒子径の増加を抑制するため、前記した芯鞘構造を有することが特に好ましい。
【0083】
本発明で得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、非繊維充填材として、フラーレン、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが配合されていてもよく、これらの無機フィラーは中空であってもよく、さらに2種類以上併用することも可能である。また、これらの無機フィラーをイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも水酸化マグネシウム、炭酸カルシウムやシリカ、カーボンブラックが、電気特性、防食材、滑材、導電性付与の効果の点から好ましい。
【0084】
本発明のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を構成する(A)成形品破砕物は、上記の特徴を有しているのであれば、複数回再生利用された成形品破砕物であってもよく、サーキュラエコノミー実現の観点から、製品として市場で使用された後回収された成形品であることがより好ましく、本発明のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品で構成されること、すなわち本発明のガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を成形してなる成形品を製品として使用後に回収し、再び(A)成形品破砕物として使用することがより好ましい。
【0085】
本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、優れた機械特性と流動性確保の観点から、ISO178(2010)に従い測定した曲げ強度が150MPa以上、400MPa以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から200MPa以上が好ましく、230MPa以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から250MPa以上が特に好ましく、270MPa以上が殊更に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から350MPa以下が好ましい。曲げ強度はガラス繊維の配合量を増やすことや、ガラス繊維の折損を抑制することで増加させることが可能である。
【0086】
本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、優れた機械特性と流動性確保の観点から、ISO527-1、-2(2012)に従い測定した引張強度が100MPa以上、350MPa以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から150MPa以上が好ましく、160MPa以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から180MPa以上が特に好ましく、200MPa以上が殊更に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から300MPa以下が好ましい。引張強度はガラス繊維の配合量を増やすことや、ガラス繊維の折損を抑制すること、PPS樹脂とガラス繊維の結合を形成させて界面接着性を上げることで増加させることが可能である。
【0087】
本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、組成比や原料種によるため一概には言えないが、優れた機械特性と流動性確保の観点から、ISO179(2010)に従い測定したシャルピー衝撃強さ(ノッチあり)が3kJ/m以上、40kJ/m以下であることが好ましい。より優れた機械特性を得る観点から7kJ/m以上が好ましく、10kJ/m以上がより好ましく、金属代替用途に用いる観点から15kJ/m以上が特に好ましく、20kJ/m以上が殊更に好ましい。また、より優れた流動性を得る観点から35kJ/m以下が好ましい。シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)はガラス繊維の配合量を増やすことや、ガラス繊維の折損を抑制すること、オレフィン系共重合体を配合することで増加させることが可能である。
【0088】
ガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の引張強度、曲げ強度、シャルピー衝撃強さは、(A)成形品破砕物の未使用材の各機械特性の0.80~2.00倍の範囲内にあることが好ましい。再生材の適用範囲を広げるため、0.85倍以上が好ましく、0.90倍以上がより好ましく、未使用材と同等の用途に用いる観点から0.95倍以上が特に好ましく、0.98倍以上が殊更に好ましい。また、未使用材と同等の成形加工性を得る観点から1.80倍以下が好ましく、1.60倍以下がより好ましく、未使用材と同等の用途に用いる観点から1.40倍以下が特に好ましく、1.20倍以下が殊更に好ましい。
【0089】
本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、様々な成形方法に適用可能であり、例えば押出成形、射出成形、中空成形、カレンダ成形、圧縮成形、真空成形、発泡成形、ブロー成形、回転成形等が挙げられる。
【0090】
本発明の製造方法によって得られるガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は優れた耐熱性や機械特性を有するため、PPS樹脂組成物に関する多くの特許に見られる公知の用途へ適用可能であり、特にサーキューラーエコノミーの要求が高まる自動車部材用途への適用が好ましい。
【実施例
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明の効果をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各実施例および比較例における評価は、次の方法により行った。
【0092】
(1)重量平均分子量の分析
PPS樹脂の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で重量平均分子量(Mw)を測定した。GPC測定条件を以下に記す。
装置 : (株)センシュー科学製SSC-7100
カラム名 : (株)センシュー科学製GPC3506
溶離液 : 1-クロロナフタレン
検出器 : 示差屈折率検出器
カラム温度 : 210℃
検出器温度 : 210℃
流量 : 1.0mL/min。
【0093】
(2)官能基(カルボキシル基)含有量の分析
PPS樹脂のカルボキシル基量はPPS樹脂の非晶フィルムを以下の条件で作成し、FT-IR(日本分光(株)製IR-810型赤外分光光度計)測定し、ベンゼン環由来の1,900cm-1付近における吸収に対する、カルボキシル基由来の1,730cm-1付近における吸収を比較することにより見積もった。
【0094】
非晶フィルムの作製条件を下記する。
(a)試料をポリイミドフィルムで挟み、340℃に加熱したプレスの金型に挟む。
(b)1分間滞留させた後、荷重10kgfで加圧し、3分間滞留させた後、荷重40kgfで加圧する。
(c)ポリイミドフィルムごと取出して水で急冷し、厚みが約50~300μmの非晶フィルムを得る。
【0095】
(3)射出成形による試験片作成
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物について、130℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、住友重機械製射出成形機SE75-DUZを用い、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、ISO(1A)ダンベル試験片を射出成形した。また、このときの射出圧を樹脂組成物の流動性指標とした。
【0096】
(4)機械特性
上記(3)項で得たISO(1A)ダンベル試験片について、23℃条件下、オートグラフAG-Xplus20kN試験機を用い、ISO527-1,-2(2012)に従い、支点間距離114mm、引張速度5mm/minの条件で引張特性を評価した。
【0097】
次いで、上記(3)項で得たISO(1A)ダンベル試験片について、ISO178(2010)に従い、支点間距離64mm、速度2mm/minの条件で曲げ特性を評価した。
【0098】
次いで、上記(3)項で得たISO(1A)ダンベルを切削して得た試験片で、ISO179(2010)に従い、シャルピー衝撃強さ(ノッチあり)を評価した。
【0099】
(5)ガラス繊維長分析
上記(3)項で得たISO(1A)ダンベル試験片を切削して中心部から1cm角片を取り出し、サンプルとして秤量後、ルツボに入れ550℃に設定した電気炉内で3時間焼成することにより、ガラス繊維の残渣を得た。この残渣を秤量し、焼成前のサンプル重量に対するガラス繊維の重量割合を算出して灰分量を求めた。その残渣を光学顕微鏡にて50~100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本のガラス繊維の長さを測定し、その測定値(μm)を用いて以下の式に基づき計算した。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数。
【0100】
(6)臭気レベル
130℃熱風乾燥機中で3時間乾燥したガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度310℃に設定した住友重機械製射出成形機SE75-DUZに充填し、スクリュー後退位置が80mmになるまで計量後にパージする操作を3回繰り返し、塊状の溶融樹脂を得た。得られた溶融樹脂を即刻、溶融樹脂と被験者との距離が50cm、1mおよび2mのそれぞれの位置において、成形品破砕物を含まない樹脂ペレット(下記参考例4記載のPPS樹脂組成物(B-1))を用いた場合との臭気の違いを評価した。評価は、5人の被験者に以下の5段階で採点して貰い、5人の採点の平均値を臭気レベルとした。
1:50cmの位置でも未使用材との臭気差を感じない。
2:50cmの位置では臭気差を僅かに感じるが、1mの位置では臭気差を感じない。
3:50cmの位置では臭気差を感じるが、1mの位置では臭気差を感じない。
4:1mの位置では臭気差を感じるが、2mの位置では臭気差を感じない。
5:2mの位置でも未使用材との臭気差を感じる。
【0101】
(7)密度測定
各実施例および比較例により得られた樹脂組成物ペレット、または上記(3)項で得られたISO(1A)ダンベル試験片を用いて、ISO1183(2019)に従い求めた(単位:g/cm)。
【0102】
(8)分散性試験
上記(3)項で得られたISO(1A)ダンベル試験片を目視で評価し、1cm以上のガラス繊維束の分散不良が認められた試験片の本数に応じて、以下の3段階で評価した。
best:試験片50本の内0本
good:試験片50本の内1~3本。
bad:試験片50本の内4本以上。
【0103】
(9)オレフィン系共重合体の数平均分散粒子径(相構造観察)
上記(3)項で得られたISO(1A)ダンベル試験片の中央部を樹脂の流れ方向に対して垂直方向に切断し、その断面の中心部から、温度-20℃の条件下で厚さ0.1μm以下の薄片を、ウルトラミクロトームを用いて切削した。日立製作所製H-7100型透過型電子顕微鏡(分解能(粒子像)0.38nm、倍率50~60万倍)を用いて、これらのサンプルの任意の異なる10箇所を1000~10000倍に拡大して写真撮影を行った。Scion Corporation製画像解析ソフト「Scion Image」を用いて、電子顕微鏡写真中に存在するオレフィン系共重合体の分散粒子について、任意の異なる分散粒子を10個選び、それぞれの分散粒子について長径および短径を求めて平均値を取ったものをその分散粒子の粒子径とし、それらの分散粒子10個の粒子径の数平均値を数平均分散粒子径とした。なお、分散相を構成する成分の同定は、無染色のサンプルにおける相のコントラストで決定した。
【0104】
各実施例および比較例に用いた原材料について、以下に示す。
【0105】
[参考例1](b-1)ポリフェニレンスルフィド樹脂
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.94kg(70.63モル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、酢酸ナトリウム0.513kg(6.25モル)、及びイオン交換水3.82kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水8.09kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
【0106】
その後200℃まで冷却し、p-ジクロロベンゼン10.34kg(70.32モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温し、270℃で140分反応した。その後、270℃から250℃まで15分かけて冷却しながら水2.67kg(148.4モル)を圧入した。ついで250℃から220℃まで75分かけて徐々に冷却した後、室温近傍まで急冷し内容物を取り出した。
【0107】
内容物を約35リットルのNMPで希釈しスラリーとして85℃で30分撹拌後、80メッシュ金網(目開き0.175mm)で濾別して固形物を得た。得られた固形物を同様にNMP約35リットルで洗浄濾別した。得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収する操作を合計3回繰り返した。得られた固形物および酢酸32gを70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過し、更に得られた固形物を70リットルのイオン交換水で希釈し、70℃で30分撹拌後、80メッシュ金網で濾過して固形物を回収した。このようにして得られた固形物を窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。
【0108】
得られたPPS樹脂(b-1)は重量平均分子量が40000、カルボキシル基含有量が40μmol/gであった。
【0109】
[参考例2](b-2)ポリフェニレンスルフィド樹脂
洗浄に酢酸を用いなかったこと以外は参考例1と同様にしてPPSを得た。
【0110】
得られたPPS樹脂(b-2)は重量平均分子量が40000、カルボキシル基含有量が0μmol/gであった。
【0111】
[参考例3](b-3)ポリフェニレンスルフィド樹脂
用いる酢酸ナトリウムを2.24kg(27.3モル)としたこと以外は参考例1と同様にしてPPSを得た。
【0112】
得られたPPS樹脂(b-3)は重量平均分子量が75000、カルボキシル基含有量が30μmol/gであった。
【0113】
(c-1)ガラス繊維:繊維長3mm、平均繊維径10.5μmのノボラックエポキシ系化合物で集束されたチョップドガラスを用いた(日本電気硝子社製、T-747H)
(c-2)ガラス繊維束:平均繊維径17μmのエポキシ系化合物で集束されたロービングガラスを用いた(日本電気硝子社製T-739N)。
【0114】
(d-1)エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体:エチレン・グリシジルメタクリレート共重合体を用いた(住友化学製“ボンドファースト”E)
(d-2)未変性オレフィン系共重合体:エチレン・1-ブテン共重合体を用いた(三井化学製“タフマー”A4085)。
【0115】
(e-1)エポキシ基を含有する有機シラン化合物:2-(3,4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランを用いた(信越シリコーン製:KBM303)
(e-2)アミノ基を含有する有機シラン化合物:3-アミノプロピルトリエトキシシランを用いた(信越シリコーン製:KBE903)
(e-3)イソシアネート基を含有する有機シラン化合物:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを用いた(信越シリコーン製:KBE9007)。
【0116】
[参考例4](B-1)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)
PPS樹脂(b-1)60重量%、ガラス繊維(c-1)40重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)およびガラス繊維(c-1)の合計を100重量部としてエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.3重量部を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、PPS樹脂組成物(B-1)を得た。
【0117】
[参考例5](B-2)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)
PPS樹脂(b-1)65重量%、ガラス繊維(c-1)30重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)2.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)2.5重量、ならびにPPS樹脂(b-1)、ガラス繊維(c-1)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)の合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.3重量部を混合したこと以外は参考例4と同様にして、PPS樹脂組成物(B-2)を得た。
【0118】
[参考例6](B-3)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)
用いるPPS樹脂をb-2としたこと以外は参考例4と同様にしてPPS樹脂組成物(B-3)を得た。
【0119】
[参考例7](B-4)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)
用いるPPS樹脂をb-3としたこと以外は参考例4と同様にして樹脂組成物(B-4)を得た。
【0120】
[参考例8](A-1)成形品破砕物
(B-1)PPS樹脂組成物を130℃熱風乾燥機中で3時間乾燥し、住友重機械製射出成形機SE75-DUZを用い、シリンダー温度310℃、金型温度140℃、スクリュー回転数100rpmの条件で、ISO(1A)ダンベル試験片を射出成形した。その際に発生したスプルー/ランナー(成形品に相当する)を長軸寸法が20mm以下になるように破砕機で破砕して成形品破砕物(A-1)を得た。
【0121】
[参考例9](A-2)成形品破砕物
用いるPPS樹脂組成物を(B-2)としたこと以外は参考例8と同様にして成形品破砕物(A-2)を得た。
【0122】
[参考例10](A-3)成形品破砕物
用いるPPS樹脂組成物を(B-3)としたこと以外は参考例8と同様にして成形品破砕物(A-3)を得た。
【0123】
[参考例11](A-4)成形品破砕物
用いるPPS樹脂組成物を(B-4)としたこと以外は参考例8と同様にして成形品破砕物(A-4)を得た。
【0124】
[実施例1~3、比較例1、参考例4~7]
各原料を表1に示す割合でドライブレンドした。次いで得られた樹脂組成物を上記(3)項に記載の条件で射出成形し、ISO(1A)ダンベル試験片を得た。得られたISO(1A)ダンベル試験片について、ガラス繊維長(成形品のガラス繊維長)、機械特性を測定した。
【0125】
【表1】
【0126】
上記表1の実施例と比較例の比較により以下が明らかである。
実施例1は参考例4の未使用材に対して機械特性の低下が抑制されている。一方、比較例1は参考例7の未使用材に対して機械特性が低下しており、特定のMwのPPS樹脂を用いた樹脂組成物が有効であることがわかる。また、実施例3は参考例6の未使用材に対して、実施例1と比較して、機械特性の低下が抑制されておらず、特定のカルボキシル基含有量のPPS樹脂を用いた樹脂組成物が有効であることがわかる。
【0127】
[参考例12](A-5)使用後の成形品破砕物
PPS樹脂組成物(B-1)で構成された樹脂部を有する自動車用金属インサート部品について、市場での使用後に回収された自動車用金属インサート部品から樹脂部を粉砕して取り外した後、長軸寸法が100mm以下になるよう破砕機で粗く破砕し、洗浄せずに、長軸寸法が10mm以下になるように破砕機で破砕して得た成形品破砕物(A-5)を得た。
【0128】
[参考例13](A-6)使用後の成形品破砕物
樹脂部を長軸寸法が100mm以下になるよう破砕機で粗く破砕し、得られた破砕品をメッシュドラム式洗浄装置内にて50℃の温水を用いて洗浄し、エアブローにより水切りを行った後、長軸寸法が10mm以下になるようにさらに破砕機で破砕したこと以外は参考例12同様にして成形品破砕物(A-6)を得た。
【0129】
[参考例14](A-7)使用後の成形品破砕物
樹脂部を長軸寸法が100mm以下になるよう破砕機で粗く破砕し、破砕品をメッシュドラム式洗浄装置内にて100℃のNMPを用いて洗浄した後、続けて50℃の温水を用いて洗浄し、エアブローにより水切りを行った後、長軸寸法が10mm以下になるように破砕機で破砕したこと以外は参考例12と同様にして成形品破砕物(A-7)を得た。
【0130】
[実施例4~6]
各原料を表2に示す割合でドライブレンドし、次いで樹脂組成物を射出成形し、得られたISO(1A)ダンベル試験片について、ガラス繊維長(成形品のガラス繊維長)、機械特性および臭気レベルを測定、評価した。
【0131】
【表2】
【0132】
上記表2の実施例により以下が明らかである。
【0133】
実施例4は参考例4の未使用材と比較して機械特性が低下し臭気も発生しており、市場での使用により再生使用が難しいことがわかる。対して、実施例5~6は機械特性の低下や臭気が改善されており、成形品破砕物の溶媒洗浄が有効であることが示された。
【0134】
[参考例15](A’-1)成形品破砕物ペレット
参考例8で得られた成形品破砕物(A-1)を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し、成形品破砕物ペレット(A’-1)を得た。
【0135】
[参考例16](C-1)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(含浸法)
PPS樹脂(b-1)を320℃で単軸押出機にて溶融混練して、溶融状態とし、これを押出機の先端に取り付けた含浸槽に供給した。さらに、ガラス繊維束(c-2)を連続的に引き取り、前記含浸槽内を通過させることで、ガラス繊維束の単位長さあたりに一定量のPPS樹脂を含浸させた含浸ストランドを得た。前記含浸ストランドを、水冷バスで冷却して5mmの長さに切断することでガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-1)を得た。配合量はガラス繊維が40重量%、PPS樹脂が60重量%となるように調整した。
【0136】
[参考例17](C-2)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
PPS樹脂(b-1)とエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用いて、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練しPPS樹脂組成物ペレットを得た。次いで得られたペレットを、300℃で単軸押出機にて溶融混練して溶融状態とし、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、連続したガラス繊維束(c-2)をクロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、電線被覆法の要領で、ガラス繊維束の単位長さあたりに一定量のPPS樹脂組成物をガラス繊維束の周囲に被覆したストランドを得た。前記被覆ストランドを、水冷バスで冷却して、5mmの長さに切断することで芯鞘構造のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-2)のペレットを得た。配合量はガラス繊維が40重量%、PPS樹脂が60重量%、ならびにガラス繊維およびPPS樹脂の合計を100重量部に対し有機シラン化合物0.2重量部となるように、PPS樹脂組成物ペレットの配合量と、被覆層の厚みを調整した。
【0137】
[参考例18](C-3)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
用いるPPS樹脂を(b-2)としたこと以外は参考例17と同様にして芯鞘構造のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-3)のペレットを得た。
【0138】
[参考例19](C-4)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
有機シラン化合物を配合しなかったこと以外は参考例17と同様にして芯鞘構造のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-4)のペレットを得た。
【0139】
[実施例7~11]
各原料を表3に示す割合でドライブレンドし、次いで得られた樹脂組成物を上記(3)項に記載の条件で射出成形し、ISO(1A)ダンベル試験片を得た。得られたISO(1A)ダンベル試験片について、分散性試験、密度測定、ガラス繊維長(成形品のガラス繊維長)、機械特性を測定した。
【0140】
【表3】
【0141】
実施例7と比較して、実施例8~11は、同一の密度を保ちながら、ガラス繊維の平均繊維長が増加する共にガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の物性が向上しており、ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を添加が有効であることが示された。一方、実施例10~11は、実施例8~9と比較して成形品にガラス繊維の分散不良がわずかに散見された。被覆法で得られるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、カルボキシル基を含有するPPS樹脂と有機シラン化合物を併用することでガラス繊維の分散性が向上することが示された。
【0142】
[参考例20](A’-2)成形品破砕物ペレット
用いる成形品破砕物を(A-2)としたこと以外は、参考例15と同様にして成形品破砕物ペレット(A’-2)を得た。
【0143】
[参考例21](C’-5)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(含浸法)
PPS樹脂(b-1)93重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)3.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)3.5重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)の合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.43重量部を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練して得たPPS樹脂組成物ペレットを得た。次いで得られたペレットを、320℃で単軸押出機にて溶融混練して、溶融状態とし、これを押出機の先端に取り付けた含浸槽に供給した。さらに、ガラス繊維束(c-2)を連続的に引き取り、前記含浸槽内を通過させることで、ガラス繊維束の単位長さあたりに一定量のPPS樹脂を含浸させてガラス繊維束を30重量%含有した含浸ストランドを水冷バスで冷却して5mmの長さに切断して得ようとしたが、PPS樹脂組成物はガラス繊維束に含浸できなかった。
【0144】
[参考例22](C-5)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(含浸法)
PPS樹脂組成物を単軸押出機で溶融混練する温度を360℃としたこと以外は、参考例21と同様にしてガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-5)のペレットを得た。(C-5)の組成は、PPS樹脂(b-1)65重量%、ガラス繊維束(c-2)30重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)2.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)2.5重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、ガラス繊維束(c-2)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)の合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.3重量部であり、参考例5で得られた(B-2)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)と同様の組成であった。
【0145】
[参考例23](C-6)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
PPS樹脂(b-1)93重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)3.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)3.5重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)の合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.43重量部を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練して得たPPS樹脂組成物ペレットを得た。次いで得られたペレットを、300℃で単軸押出機にて溶融混練して溶融状態とし、押出機の先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、連続したガラス繊維束をクロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、電線被覆法の要領で、ガラス繊維束の単位長さあたりに一定量のPPS樹脂組成物をガラス繊維束の周囲に被覆させて、ガラス繊維束を30重量%含有した被覆ストランドを水冷バスで冷却して5mmの長さに切断することで芯鞘構造のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-6)のペレットを得た。(C-6)の組成は、PPS樹脂(b-1)65重量%、ガラス繊維束(c-2)30重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)2.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)2.5重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、ガラス繊維束(c-2)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)の合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.3重量部であり、参考例5で得られた(B-2)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)と同様の組成であった。
【0146】
[参考例24](C-7)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
用いる有機シラン化合物を(e-2)としたこと以外は、参考例23と同様にしてガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-7)のペレットを得た。
【0147】
[参考例25](C-8)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
用いる有機シラン化合物を(e-3)としたこと以外は、参考例23と同様にしてガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-8)のペレットを得た。
【0148】
[参考例26](C-9)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
有機シラン化合物を配合しなかったこと以外は、参考例23と同様にしてガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-9)のペレットを得た。
【0149】
[実施例12~20]
各原料を表4に示す割合でドライブレンドし、次いで得られた樹脂組成物を上記(3)項に記載の条件で射出成形し、ISO(1A)ダンベル試験片を得た。得られたISO(1A)ダンベル試験片について、分散性試験、密度測定、相構造観察、ガラス繊維長(成形品のガラス繊維長)、機械特性を測定した。
【0150】
【表4】
【0151】
上記表4の実施例により以下が明らかである。
【0152】
実施例12と比較して、実施例13~17は、同一の密度を保ちながら、ガラス繊維の平均繊維長が増加すると共にガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の物性が向上しており、ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物を添加することが有効であることが示された。一方、実施例13はオレフィン系共重合体の数平均分散粒子径が大きく、物性の低下が認められた。高粘度のPPS樹脂組成物を高温で無理にガラス繊維束に含浸させた結果、オレフィン共重合体がゲル化したことがわかる。実施例17は、実施例14~16と比較して成形品にガラス繊維の分散不良がわずかに散見された。被覆法で得られるガラス長繊維強化PPS樹脂組成物は、有機シラン化合物を添加することでガラス繊維の分散性が向上することが示された。
【0153】
また、実施例18~20より、(C)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物の配合量が増えるにつれて、Lw/Lnや機械特性の増加が認められた。
【0154】
[参考例27](B-5)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)
PPS樹脂(b-1)45重量%、ガラス繊維(c-1)30重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)2.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)2.5重量%、炭酸カルシウム(カルファイン社製、KSS-1000)20重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、ガラス繊維(c-1)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、未変性オレフィン系共重合体(d-2)、および炭酸カルシウムの合計100重量部に対し(e-1)エポキシ基を含有する有機シラン化合物0.3重量部を混合したこと以外は参考例4と同様にして、PPS樹脂組成物(B-5)を得た。
【0155】
[参考例28](A-8)成形品破砕物および(A’-8)成形品破砕物ペレット
用いるPPS樹脂組成物を(B-5)としたこと以外は、参考例8と同様にして(A-8)成形品破砕物を得た。次いで得られた成形品破砕物(A-8)を使用して、参考例15と同様にして(A’-8)成形品破砕物ペレットを得た。
【0156】
[参考例29](C-10)ガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(被覆法)
PPS樹脂(b-1)65重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)3.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)3.5重量%、炭酸カルシウム(カルファイン社製、KSS-1000)28重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)、炭酸カルシウムの合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.43重量部を、真空ベントを具備した日本製鋼所製TEX30α型二軸押出機(L/D=45、ニーディング部3箇所)を用い、シリンダー温度300℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練して得たPPS樹脂組成物ペレットを得た。次いで得られたペレットを用いたこと以外は、参考例23と同様に、芯鞘構造のガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-10)のペレットを得た。(C-10)の組成は、PPS樹脂(b-1)45重量%、ガラス繊維束(c-2)30重量%、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)2.5重量%、未変性オレフィン系共重合体(d-2)2.5重量%、炭酸カルシウム20重量%、ならびにPPS樹脂(b-1)、ガラス繊維束(c-2)、エポキシ基を含有するオレフィン系共重合体(d-1)、および未変性オレフィン系共重合体(d-2)、炭酸カルシウムの合計100重量部に対しエポキシ基を含有する有機シラン化合物(e-1)0.3重量部であった。あり、参考例27で得られた(B-5)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物(未使用材)と同様の組成であった。
【0157】
[実施例21~22、参考例27]
各原料を表5に示す割合でドライブレンドし、次いで得られた樹脂組成物を上記(3)項に記載の条件で射出成形し、ISO(1A)ダンベル試験片を得た。得られたISO(1A)ダンベル試験片について、分散性試験、密度測定、相構造観察、ガラス繊維長(成形品のガラス繊維長)、機械特性を測定した。
【0158】
【表5】
【0159】
実施例21~22の結果から非繊維状フィラーを含む樹脂組成物に対しても、機械特性の回復が認められた。
【0160】
[参考例30](A-9)組成比が不明な使用後の成形品破砕物
市場での使用後に回収された自動車用金属インサート部品から、成形品にPPS-GFと印字された組成比が不明なPPS樹脂組成物を粉砕して取り外した後、長軸寸法が100mm以下になるよう破砕機で粗く破砕し、破砕品をメッシュドラム式洗浄装置内にて50℃の温水を用いて洗浄し、エアブローにより水切りを行った後、長軸寸法が10mm以下になるように破砕機で破砕して得た成形品破砕物を得た(A-9)。A-9の灰分量は、38重量%で、密度は1.62g/cmであった。
【0161】
[実施例23~24、参考例30]
参考例4で得られたPPS樹脂組成物(B-1)(密度1.67g/cm:A-9との密度の差は-3.0%である。灰分量40%:A-9との灰分量の差は-6.3%である。)、参考例17で得られたガラス長繊維強化PPS樹脂組成物(C-2)(密度1.67g/cm:A-9との密度の差は-3.0%である。灰分量:40%で、A-9との灰分量の差は-6.3%である。)、および成形品破砕物(A-9)を表6に示す割合でドライブレンドし、次いで得られた樹脂組成物を上記(3)項に記載の条件で射出成形し、ISO(1A)ダンベル試験片を得た。得られたISO(1A)ダンベル試験片について、密度測定、ガラス繊維長(成形品のガラス繊維長)、機械特性を測定した。
【0162】
【表6】
【0163】
実施例23~24の結果から、組成比が不明な使用後の成形品破砕物を用いても、ガラス繊維の平均繊維長が増加すると共にガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物の物性が向上した。得られたガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物は、成形品破砕物と同等の密度であることから、クローズドリサイクルが可能であることがわかる。
【要約】
ポリフェニレンスルフィド樹脂およびガラス繊維を配合してなる成形品を破砕し、(A)成形品破砕物を得て、該(A)成形品破砕物と、(B)重量平均分子量が20000~60000のポリフェニレンスルフィド樹脂40~90重量%およびガラス繊維10~60重量%を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物とを、混合することを特徴とするガラス繊維強化再生ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。本発明は、ガラス繊維強化PPS樹脂組成物のリサイクル時にガラス繊維の折損を抑制して優れた機械特性を有するガラス繊維強化再生PPS樹脂組成物を得ることができる。