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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】識別装置、識別方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230301BHJP
   G06V 10/74 20220101ALI20230301BHJP
【FI】
G06T7/00 300E
G06V10/74
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022559196
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 JP2021039642
(87)【国際公開番号】W WO2022092147
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2020181789
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】福田 多一郎
【審査官】山田 辰美
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138975(JP,A)
【文献】特開2014-44479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G06V 10/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を識別する識別装置であって、
前記物品に表示されている情報である第1の情報を含む領域の1または2以上の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された撮像画像に基づいて、少なくとも1つの前記第1の情報を認識する認識部と、
前記認識部により認識された前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合する照合部と、
前記照合部による照合の結果に基づいて、前記物品の少なくとも1つの候補を特定する特定部と、を有し、
前記照合部は、前記第1の認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として記憶媒体に予め記憶されている記憶情報とを照合することが可能であり、
前記照合部は、前記第1の認識情報のうち、認識の正確性についての条件を満たす情報と、前記第1の記憶情報のうち、前記認識の正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合することを特徴とする識別装置。
【請求項2】
前記物品に表示されていない情報である第2の情報を第2の認識情報として取得する情報取得部を有し、
前記第2の情報である第2の記憶情報が、記憶情報として前記第1の記憶情報と関連付けられて記憶媒体に予め記憶されており、
前記照合部は、前記情報取得部により取得された第2の認識情報と、前記第2の記憶情報とを照合することを特徴とする請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記第2の情報は、前記物品に表示されている情報の物品の所定の位置を基準とした位置である物品内位置と、前記物品の重量と、前記物品のサイズと、前記物品が置かれている位置である置場位置と、前記物品が現在の位置に置かれた時刻である登録時刻と、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の識別装置。
【請求項4】
前記第1の情報を含む領域の撮像画像が、記憶情報として前記第1の記憶情報と関連付けられて記憶媒体に予め記憶されており、
前記照合部は、前記画像取得部により取得された前記撮像画像の少なくとも一部の領域と、前記記憶情報として記憶されている撮像画像の少なくとも一部の領域とを照合することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の識別装置。
【請求項5】
前記第1の情報は、複数あり、
前記照合部は、前記認識部により認識された前記第1の情報のうち、未照合の前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合することを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の識別装置。
【請求項6】
物品を識別する識別方法であって、
前記物品に表示されている情報である第1の情報を含む領域の1または2以上の撮像画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程により取得された撮像画像に基づいて、少なくとも1つの前記第1の情報を認識する認識工程と、
前記認識工程により認識された前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合する照合工程と、
前記照合工程による照合の結果に基づいて、前記物品の少なくとも1つの候補を特定する特定工程と、を有し、
前記照合工程は、前記第1の認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として記憶媒体に予め記憶されている記憶情報とを照合することが可能であり、
前記照合工程は、前記第1の認識情報のうち、認識の正確性についての条件を満たす情報と、前記第1の記憶情報のうち、前記認識の正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合することを特徴とする識別方法。
【請求項7】
物品を識別するための処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記物品に表示されている情報である第1の情報を含む領域の1または2以上の撮像画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程により取得された撮像画像に基づいて、少なくとも1つの前記第1の情報を認識する認識工程と、
前記認識工程により認識された前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合する照合工程と、
前記照合工程による照合の結果に基づいて、前記物品の少なくとも1つの候補を特定する特定工程と、をコンピュータに実行させ、
前記照合工程は、前記第1の認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として記憶媒体に予め記憶されている記憶情報とを照合することが可能であり、
前記照合工程は、前記第1の認識情報のうち、認識の正確性についての条件を満たす情報と、前記第1の記憶情報のうち、前記認識の正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別装置、識別方法、およびプログラムに関し、特に、物品を識別するために用いて好適なものである。本願は、2020年10月29日に日本に出願された特願2020-181789号に基づき優先権を主張し、それらの内容を全てここに援用する。
【背景技術】
【0002】
厚板等の鉄鋼製品の表面には、現品管理等のために各種の情報が、ステンシルやラベル等を用いて表示される。このような製造物に表示される情報を識別する技術として、特許文献1に記載されている技術がある。
【0003】
特許文献1には、クレーン機上に画面表示した製品に関する製品番号の一部または全部をマスキングした後、クレーン操作者が目視で製品の製造番号を確認し、確認した製品番号を音声または文字入力することが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、クレーン操作者が目視で製品の製造番号を認識することができることが前提となっている。従って、製品に表示されている情報の一部が、擦れや汚れ等により識別不能または困難になっている場合に、クレーン操作者が、製品の製造番号を認識することができない虞がある。また、クレーン操作者が製品の近くにいないと、製品に表示されている情報を識別することができない。
【0004】
従って、製造物に表示されている情報を撮像し、撮像した画像における当該情報の識別精度を向上させることが望まれる。この種の技術として、特許文献2~6に記載されている技術がある。
特許文献2に記載の技術では、照合先の文字列を記憶しておき、照合元画像から照合元の文字列を認識し、照合元の文字列と照合先の文字列とを照合する。また、特許文献2に記載の技術では、時間的に連続する複数の照合元画像を用いて、前記認識の処理と前記照合の処理とを複数回実行する。
【0005】
特許文献3に記載の技術では、種類の異なる複数の物品について、物品ごとに各物品の全体的な外観を表す全体画像情報を予め対応付けた物品情報を記憶しておく。そして、複数の照合対象物品を撮像した画像と物品情報との照合を行う。この照合の結果、照合対象物品に対して抽出された複数の物品候補からなる物品候補群が、複数の照合対象物品について抽出された場合に、物品候補群に含まれる複数の物品候補を群単位で照合する。この照合における照合条件は、物品候補群が抽出された照合対象物品の数と、複数の物品候補群に含まれる各物品候補数とが相互に一致するという条件である。また、特許文献3に記載の技術では、物品ごとに物品に関連する所定の種類の数値を表す属性情報が物品情報に対応付けられており、物品候補ごとに属性情報を抽出して照合する。
【0006】
特許文献4に記載の技術では、複数の物品について、各物品の全体的な外観を表す全体画像情報と、各物品の外観の一部分の位置情報および当該一部分に含まれる各物品の属性情報を含む部分特徴情報と、を対応付けて記憶しておく。そして、照合対象物品を撮像した画像と、各物品の全体画像情報と、の照合を行う。当該照合において複数の物品の候補が抽出された場合、当該複数の物品の候補の部分特徴情報に含まれる属性情報と、部分特徴情報に含まれる位置情報に対応する照合対象物品の画像の一部と、を比較する。
【0007】
特許文献5に記載の技術では、複数の物品について、各物品の全体的な外観を表す全体画像情報と、各物品の外観の一部分の位置情報および当該一部分に含まれる各物品の属性情報を含む部分特徴情報と、を対応付けて記憶しておく。そして、照合対象物品を撮像した画像内における文字情報が、部分特徴情報に含まれる属性情報の内容を表す文字情報と一致し、且つ照合対象物品を撮像した画像内における文字情報の画像内における位置情報が、部分特徴情報に含まれる位置情報と一致する物品を対象物品候補として抽出する。そして、抽出した対象物品候補の中から、部分特徴情報に予め設定された属性情報の種類を含む属性限定対象物品候補を抽出する。そして、抽出した属性限定対象物品候補の全体画像情報と、撮像した画像と、に基づいて全体照合を行う。
【0008】
特許文献6に記載の技術では、物品ごとに各物品の全体的な外観を表す全体画像情報と、複数の照合対象物品を撮像した画像との照合を行う。この照合の結果、複数の物品候補が抽出された場合には、複数の物品候補の部分特徴情報に含まれる位置情報および属性情報と、撮像した画像に含まれる照合対象物品内の情報と、を照合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6003918号公報
【文献】特許第6505937号公報
【文献】特許第5869987号公報
【文献】特許第5869988号公報
【文献】特許第5869989号公報
【文献】特許第5891143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の技術では、照合元の文字列と照合先の文字列とが全て一致していないと正しく照合されたことにならない。従って、特許文献2に記載の技術において、物品に表示されている情報の撮像画像を照合元画像とすると、特許文献1に記載の技術と同様に、物品に表示されている情報(の一部または全部)が、剥がれ、破れ、擦れ、および/または汚れ等によって、所期の状態になっていない場合、当該情報の照合の結果はNGとなる。
【0011】
また、特許文献3~6に記載の技術では、物品に表示されている情報が撮像画像から正しく抽出されることを前提としている。従って、特許文献3~6に記載の技術を用いて物品を識別する場合、物品に表示されている情報(の一部または全部)が、剥がれ、破れ、擦れ、および/または汚れ等によって、所期の状態になっていない場合、当該物品を識別することは容易でない。
以上のように特許文献2~6に記載の技術では、物品に表示されている情報が所期の状態になっていない場合に、当該物品を識別することができない虞がある。
従って、特許文献1~6に記載の技術では、物品に表示されている情報を撮像した撮像画像に基づいて当該物品を識別する際に、当該物品に示されている情報が正しく抽出できない場合には、当該物品を識別することができない虞がある。
【0012】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、物品に表示されている情報を撮像した撮像画像に基づいて当該物品を識別する際、当該物品に示されている情報が正しく抽出できなくても、当該物品の識別を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の識別装置は、物品を識別する識別装置であって、前記物品に表示されている情報である第1の情報を含む領域の1または2以上の撮像画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部により取得された撮像画像に基づいて、少なくとも1つの前記第1の情報を認識する認識部と、前記認識部により認識された前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合する照合部と、前記照合部による照合の結果に基づいて、前記物品の少なくとも1つの候補を特定する特定部と、を有し、前記照合部は、前記第1の認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として記憶媒体に予め記憶されている記憶情報とを照合することが可能であり、前記照合部は、前記第1の認識情報のうち、認識の正確性についての条件を満たす情報と、前記第1の記憶情報のうち、前記認識の正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合することを特徴とする。
【0014】
本発明の識別方法は、物品を識別する識別方法であって、前記物品に表示されている情報である第1の情報を含む領域の1または2以上の撮像画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により取得された撮像画像に基づいて、少なくとも1つの前記第1の情報を認識する認識工程と、前記認識工程により認識された前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合する照合工程と、前記照合工程による照合の結果に基づいて、前記物品の少なくとも1つの候補を特定する特定工程と、を有し、前記照合工程は、前記第1の認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として記憶媒体に予め記憶されている記憶情報とを照合することが可能であり、前記照合工程は、前記第1の認識情報のうち、認識の正確性についての条件を満たす情報と、前記第1の記憶情報のうち、前記認識の正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合することを特徴とする。
【0015】
本発明のプログラムは、物品を識別するための処理をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記物品に表示されている情報である第1の情報を含む領域の1または2以上の撮像画像を取得する画像取得工程と、前記画像取得工程により取得された撮像画像に基づいて、少なくとも1つの前記第1の情報を認識する認識工程と、前記認識工程により認識された前記第1の情報である第1の認識情報の少なくとも一部の情報と、記憶情報の1つとして記憶媒体に予め記憶されている第1の情報である第1の記憶情報とを照合する照合工程と、前記照合工程による照合の結果に基づいて、前記物品の少なくとも1つの候補を特定する特定工程と、をコンピュータに実行させ、前記照合工程は、前記第1の認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として記憶媒体に予め記憶されている記憶情報とを照合することが可能であり、前記照合工程は、前記第1の認識情報のうち、認識の正確性についての条件を満たす情報と、前記第1の記憶情報のうち、前記認識の正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは、厚板に対する表示領域および表示形態の第1の例を示す図である。
図1B図1Bは、厚板に対する表示領域および表示形態の第2の例を示す図である。
図1C図1Cは、複数の厚板が積み重ねられた様子の一例を示す図である。
図2A図2Aは、ステンシルおよび刻印による表示内容の第1の例を示す図である。
図2B図2Bは、ステンシルおよび刻印による表示内容の第2の例を示す図である。
図3図3は、ラベルによる表示内容の一例を示す図である。
図4図4は、識別装置の機能的な構成の一例を示す図である。
図5図5は、管理テーブルの一例を示す図である。
図6図6は、元の厚板と、切断後の厚板の一例を示す図である。
図7図7は、ステンシルおよび刻印の物品内位置と、ステンシルおよび刻印による表示における各表示項目の構成要素の位置の一例を示す図である。
図8図8は、ラベルの物品内位置と、ラベルによる表示における各表示項目の構成要素の位置の一例を示す図である。
図9A図9Aは、管理テーブルに記憶される情報の第1の例を示す図である。
図9B図9Bは、管理テーブルに記憶される情報の第2の例を示す図である。
図10図10は、管理テーブルを作成および更新する際の識別装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
図11図11は、厚板を識別する際の識別装置の処理の一例を説明するフローチャートである。
図12図12は、識別装置のハードウェアの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
尚、長さ、位置、大きさ、間隔等、比較対象が同じであることは、厳密に同じである場合の他、発明の主旨を逸脱しない範囲で異なるもの(例えば、設計時に定められる公差の範囲内で異なるもの)も含むものとする。
本実施形態では、複数の製鉄所で製造された各種の厚板(例えば厚鋼板)に対して、熱処理や切断等の各種の処理を行う工場において、当該厚板が当該厚板の需要家に出荷される前に当該厚板を識別する場合を例示する。例えば、製鉄所で製造された厚板は輸送船に荷積みされる。その後輸送船は、工場の近くの岸壁に着岸する。厚板は、輸送船から荷下ろしされ、輸送車両(トラック等)に荷積みされる。輸送車両により輸送された厚板は、工場に入荷すると、工場内の置場に置かれる。置場に置かれた厚板は、熱処理や切断(ガス切断)等の処理が施された後、倉庫に置かれる。その後、厚板は、工場から需要家に向けて出荷される。このような場合、製鉄所で厚板が製造された後から、工場において需要家に向けて厚板が出荷される前までの間の任意のタイミングで、当該厚板を識別することができる。
【0018】
図1A図1Bは、厚板に対する表示領域および表示形態の一例を示す図である。尚、図1に示すx軸、y軸、z軸は、図1と、後述する図7および図8との向きの関係を示すものである。
図1Aは、厚板に対する表示領域および表示形態の第1の例を示す図である。図1Aにおいて、表示領域101は、ステンシルによる表示領域である。表示領域102は、刻印による表示領域である。表示領域101、102は、厚板の板面に存在する。尚、図1A図1Cに示す破線は仮想線であり、実際には表示されない。ラベル(サイドラベル)103は、厚板の側面(板厚部分)に貼り付けられる。
【0019】
図1Bは、厚板に対する表示領域および表示形態の第2の例を示す図である。図1Bにおいて、表示領域111は、ステンシルによる表示領域である。表示領域112は、刻印による表示領域である。表示領域111、112は、厚板の板面に存在する。ラベル113は、厚板の側面(板厚部分)に貼り付けられる。
【0020】
図1Aおよび図1Bに示すように、ステンシルによる表示領域101、111、刻印による表示領域102、112、およびラベル103、113による表示領域の配置は、厚板を製造する製鉄所等によって異なる。
図1Aおよび図1Bに示す例では、ステンシルによる表示、刻印による表示、およびラベル103、113による表示の少なくとも1つに基づいて、現品管理(各厚板の位置の管理)が行われる。
尚、厚板に対する表示領域および表示形態は、図1Aおよび図1Bに示すものに限定されない。例えば、ステンシルによる表示領域と刻印による表示領域とが離れていたり、刻印による表示がなかったりしてもよい。
【0021】
図1Cは、複数の厚板が積み重ねられた様子の一例を示す図である。図1Cに示すように、積み重ねられた複数の厚板のうち下に位置する厚板については、ステンシルによる表示および刻印による表示を視認することができない場合がある。この場合には、ラベル123、133による表示に基づいて、現品管理を行うことができる。尚、図1Cでは、厚板の板面が、厚板が置かれる面と平行となるように複数の厚板を重ねて置く場合を例示する。ただし、厚板を重ねて置く方法は、このような方法に限定されない。例えば、厚板の板面が、厚板が置かれる面と垂直または垂直に近い角度となるように複数の厚板を重ねて置く場合もある。
【0022】
図2Aは、ステンシルおよび刻印による表示内容の第1の例を示す図である。図2Bは、ステンシルおよび刻印による表示内容の第2の例を示す図である。
図2Aおよび図2Bに示す例では、ステンシルによる表示には、マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、需要家コード206、216、注文番号207、217、および識別用情報208、218が含まれる。刻印による表示には、ID209、219が含まれる。
【0023】
マーク201、211は、厚板の製造メーカを表すマークである。需要家名202、212は、厚板の需要家(購入者)を示す情報である。規格203、213は、厚板の規格を示す情報である。サイズ204、214は、厚板のサイズ(厚み×幅×長さ)を示す情報である。ID205、215、209、219は、厚板を一意に識別するための情報であり、図2Aおよび図2Bに示す例では、板番号(厚板の識別番号)である。従って、同じIDが異なる厚板に付されることはない。需要家コード206、216は、厚板の製造メーカが需要家から厚板に対して付すことが指定された情報である。注文番号207、217は、需要家からの厚板の注文を識別するための番号の一部である。
【0024】
マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、および注文番号207、217は、厚板に対して一般的に表示され得る情報である。尚、ID205、215、209、219以外の情報は、ステンシルによる表示および刻印による表示に含まれていなくてもよい。また、前述した情報以外の情報が、ステンシルによる表示および刻印による表示に含まれていてもよい。例えば、刻印による表示として、ステンシルによる表示項目と同等の表示項目(例えば、マーク、需要家名、規格、サイズ、需要家コード、注文情報、識別用情報の少なくとも1つ)が表示されることがある。
【0025】
本実施形態では、マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、需要家コード206、216、および注文番号207、217に加えて、識別用情報208、218が、ステンシルによる表示に含まれる場合を例示する。識別用情報208、218は、後述する識別装置400による厚板(厚板のID)の識別のための専用の情報である。本実施形態では、識別用情報208、218として、文字認識処理による識別率が高い情報を用いる場合を例示する。文字認識処理による識別率が高い情報として、例えば、A、B、D、E、F、G、H、K、M、N、S、W、X、Y、Z、2、3、4、5、6、8が挙げられる。ただし、後述するように識別用情報は文字認識処理による識別率が高い情報のみから構成されている必要はない。このことについては、後述する(<<第2の変形例>>を参照)。また、識別用情報208、218の内容は、厚板毎に異なることが好ましい。
【0026】
図2Aおよび図2Bでは、マーク201、211の位置が異なり、且つ、需要家名202、212の大きさが異なる場合を例示する。また、例えば、需要家によって需要家コード206、216の桁数が異なったり、厚板を製造する製鉄所によって規格203、213の表記方法が異なったりする。また、例えば、注文番号207、217は、需要家によって付される場合と付されない場合とがある。このように、ステンシルおよび刻印による表示の内容、位置、および大きさは、厚板を製造する製鉄所および需要家等によって異なる。ただし、同一の厚板に対する同一の表示項目が意味する内容は、ステンシルによる表示と、刻印による表示と、で同じにする。従って、ステンシルにより表示されるID205、215と、刻印により表示されるID209、219とは同じ内容を意味するものとなる。
【0027】
マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、注文番号207、217、および識別用情報208、218は、厚板の製造メーカで管理される情報である。また、マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、注文番号207、217、および識別用情報208、218は、人が識別可能な情報である。人が識別可能な情報とは、人が当該情報を見た場合に当該情報の意味を理解できることを指す。バーコードおよび2次元コードのように、情報の作成および読み取りに、機械によるエンコードおよびデコードが必要となる情報は、人が識別可能な情報ではない。具体的に、マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、注文番号207、217、および識別用情報208、218は、読み取りに機械によるデコードが不要な情報として、文字、数字、および記号の少なくとも何れか1つを含み、読み取りに機械によるデコードが必要な情報を含まない。
【0028】
図3は、ラベルによる表示内容の一例を示す図である。
図3に示す例では、ラベルによる表示には、規格301、ID302、サイズ303、納期304、需要家コード305、および識別用情報306が含まれる。納期304は、厚板の納期を示す情報である。規格301、ID302、サイズ303、需要家コード305、識別用情報306は、それぞれ、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、識別用情報208、218と同じものである。尚、ID302以外の情報は、ラベルによる表示に含まれていなくてもよい。また、前述した情報以外の情報が、ラベルによる表示に含まれていてもよい。ラベルによる表示の内容、位置、および大きさも、ステンシルおよび刻印による表示と同様に、厚板を製造する製鉄所および需要家等によって異なる。
【0029】
ただし、同一の厚板に対する同一の表示項目が意味する内容は、ステンシルによる表示と、刻印による表示と、ラベルによる表示とで同じにする。従って、図2Aおよび図2Bに示すステンシルおよび刻印による表示と、図3に示すラベルによる表示とが同じ厚板に対して行われる場合、ステンシルにより表示されるID205、215と、刻印により表示されるID209、219と、ラベルにより表示されるID302と、は同じ内容を意味するものとなる。また、ステンシルにより表示される規格203、213と、ラベルに表示される規格301とは同じ内容を意味するものとなる。サイズ303、需要家コード305についても、それぞれ、サイズ204、214、需要家コード206、216と同じ内容を意味するものになる。前述したように、規格203、213、ID205、215、209、219、サイズ204、214、需要家コード206、216、および識別用情報208、218は、厚板の製造メーカで管理される情報である。従って、規格301、ID302、サイズ303、需要家コード305、および識別用情報306も、厚板の製造メーカで管理される情報である。また、厚板の納期304も、厚板の製造メーカで管理される情報である。また、規格301、ID302、サイズ303、納期304、需要家コード305、および、識別用情報306は、人が識別可能な情報である。
【0030】
マーク201、211、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、需要家コード206、216、および注文番号207、217が厚板に付された後に、識別用情報208、218が別途厚板に付されることがある。この場合、識別用情報208、218は、ステンシルにより厚板に付されても、ステンシル以外の方法(例えば手書き)で厚板に付されてもよい。
【0031】
本実施形態では、以上のような表示がなされている厚板(厚板のID)を、識別装置400を用いて自動的に認識する。図4は、識別装置400の機能的な構成の一例を示す図である。識別装置400のハードウェアは、例えば、CPU、ROM、RAM、HDD、および各種のインターフェースを備える情報処理装置、または専用のハードウェアを用いることにより実現される。図5は、識別装置400により管理される管理テーブル500の一例を示す図である。識別装置400の機能の一例を説明する前に、管理テーブル500について説明する。
【0032】
管理テーブル500には、識別装置400が厚板(厚板のID)を識別するために用いる情報が記憶情報として記憶される。管理テーブル500に記憶される記憶情報には、厚板の製造メーカで管理される情報が含まれる。ただし、管理テーブル500に記憶される記憶情報の一部は、流通等においても活用できる情報であってもよい。ここで、厚板の製造メーカで管理される情報とは厚板の製造メーカが設定または取得した情報である。厚板の製造メーカで管理される情報には、厚板の製造メーカの従業員であるオペレータが当該情報の意味を理解できる情報が含まれる。より具体的には、厚板の製造メーカで管理される情報は、例えば、厚板の製造メーカによって作成され、管理テーブル500に記憶された情報である。
図5において、同一の列における情報が同一の厚板に対する情報になる(同一のNo.の下の欄は、同一の厚板に対する情報が記憶される欄になる)。
図5において、現品表示の欄には、ステンシルによる表示、刻印による表示、およびラベルによる表示の各表示項目に関する情報が記憶される。非現品表示の欄には、ステンシルによる表示、刻印による表示、およびラベルによる表示の各表示項目に関する情報以外の情報が記憶される。
【0033】
管理テーブル500の現品表示の欄に記憶される情報の一例について説明する。
現品表示の欄において、ステンシルの欄には、ステンシルに関する記憶情報が記憶される。
ステンシルの欄のIDの欄には、ステンシルによる表示に含まれるID205、215の構成要素の内容および位置を示す記憶情報と、当該構成要素のその他の属性を示す記憶情報とが記憶される。尚、ステンシルによる表示に含まれるID205、215の構成要素とは、文字、数字、記号、マーク等、表示項目を構成する個々の情報を指す。また、構成要素のその他の属性を示す記憶情報は、識別装置400(記憶部403)または識別装置400と通信可能な外部装置において、当該構成要素の内容および位置と関連付けられて記憶されていてもよい。
ステンシルの欄の需要家名の欄には、ステンシルによる表示に含まれる需要家名202、212の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
【0034】
ステンシルの欄のサイズの欄には、ステンシルによる表示に含まれるサイズ204、214の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
ステンシルの欄の規格の欄には、ステンシルによる表示に含まれる規格203、213の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
ステンシルの欄の需要家コードの欄には、ステンシルによる表示に含まれる需要家コード206、216の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
【0035】
ステンシルの欄の注文番号の欄には、ステンシルによる表示に含まれる注文番号207、217の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
ステンシルの欄の識別用情報の欄には、ステンシルによる表示に含まれる識別用情報208、218の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
以上のステンシルによる表示における表示項目の他に、ステンシルによる表示の表示項目として表示される可能性のある表示項目の内容も、管理テーブル500に記憶される。図5のステンシルの欄の識別用情報の欄の下の「・・・」は、このことを示す。また、表示項目自体は追加および/または削除されてもよい。
【0036】
現品表示の欄において、刻印の欄には、刻印に関する記憶情報が記憶される。
刻印の欄のIDの欄には、刻印による表示に含まれるID209、219の構成要素の内容および位置を示す記憶情報と、当該構成要素のその他の属性を示す記憶情報とが記憶される。尚、構成要素のその他の属性を示す記憶情報は、識別装置400(記憶部403)または識別装置400と通信可能な外部装置に、当該構成要素の内容および位置と関連付けられていてもよい。
以上の刻印による表示における表示項目の他に、刻印による表示の表示項目として表示される可能性のある表示項目の内容も、管理テーブル500に記憶される。図5の刻印の欄のIDの欄の下の「・・・」は、このことを示す。また、表示項目自体は追加および/または削除されてもよい。
【0037】
現品表示の欄において、ラベルの欄には、ラベルに関する記憶情報が記憶される。
ラベルの欄のIDの欄には、ラベルによる表示に含まれるID302の構成要素の内容および位置を示す記憶情報と、当該構成要素のその他の属性を示す記憶情報とが記憶される。尚、構成要素のその他の属性を示す記憶情報は、識別装置400(記憶部403)または識別装置400と通信可能な外部装置において、当該構成要素の内容および位置と関連付けられて記憶されていてもよい。
ラベルの欄のサイズの欄には、ラベルによる表示に含まれるサイズ303の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
【0038】
ラベルの欄の規格の欄には、ラベルによる表示に含まれる規格301の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
ラベルの欄の納期の欄には、ラベルによる表示に含まれる納期304の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
ラベルの欄の需要家コードの欄には、ラベルによる表示に含まれる需要家コード305の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
ラベルの欄の識別用情報の欄には、ラベルによる表示に含まれる識別用情報306の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。
【0039】
以上のラベルによる表示における表示項目の他に、ラベルによる表示の表示項目として表示される可能性のある表示項目の内容も、記憶情報として管理テーブル500に記憶される。図5のラベルの欄の需要家コードの欄の下の「・・・」は、このことを示す。また、表示項目自体は追加および/または削除されてもよい。
【0040】
次に、管理テーブル500の非現品表示の欄に記憶される記憶情報の一例について説明する。
物品内位置の欄には、厚板における所定の位置を原点(基準)とした場合の表示領域の位置を示す記憶情報が記憶される。
物品内位置の欄のステンシルの欄には、厚板における所定の位置を原点(基準)とした場合の、ステンシルによる表示領域の位置を示す記憶情報が記憶される。
物品内位置の欄の刻印の欄には、厚板における所定の位置を原点(基準)とした場合の、刻印による表示領域の位置を示す記憶情報が記憶される。
物品内位置の欄のラベルの欄には、厚板における所定の位置を原点(基準)とした場合の、ラベルによる表示領域の位置を示す記憶情報が記憶される。
【0041】
重量の欄には、厚板の重量を示す記憶情報が記憶される。
サイズの欄には、厚板のサイズ(例えば、厚み×幅×長さ)を示す記憶情報が記憶される。現品表示の欄のサイズの欄に記憶されるサイズは、後述するようにして文字認識処理により認識されるサイズ204、214、303との照合のために用いられる。これに対し、非現品表示の欄のサイズの欄に記憶されるサイズは、厚板の重量等の測定値との照合のために用いられる。具体的には、非現品表示の欄のサイズの欄に記憶されるサイズと実寸法との比較が実施されることもある。
【0042】
置場位置の欄には、厚板の位置を示す記憶情報が記憶される。例えば、オペレータが現品管理を行うことにより把握される厚板の位置や、在荷センサ等の各種のセンサを用いて把握される厚板の位置を示す記憶情報が、置場位置の欄に記憶される。
登録時刻の欄には、厚板が現在の置場位置に置かれた日時(日付と時刻とから定まるタイミング)を示す記憶情報が記憶される。
【0043】
親IDの欄には、元の厚板のIDを示す記憶情報が記憶される。工場において厚板が切断されることがある。元の厚板とは、切断前の厚板を指す。従って、親IDの欄に、元の厚板のIDを示す記憶情報が記憶されている場合、当該親IDの欄と同一の列の欄に記憶されている記憶情報は、切断後の厚板に対する記憶情報になる。
【0044】
図6は、元の厚板と、切断後の厚板の一例を示す図である。図6では、厚板600が切断されて、厚板610、620、630、640が製造された場合を例示する。このようにして厚板610、620、630、640の切断前または切断後に、それぞれの厚板610、620、630、640に対して表示が施される。図6では、厚板610、620、630、640に対する表示領域611、621、631、641を示す。表示領域611、621、631、641には、厚板610、620、630、640のIDを含む情報が表示される。表示領域611、621、631、641には、例えば、ステンシルによる表示が行われる。ステンシルによる表示に加えて、刻印による表示およびラベルによる表示の少なくとも一方が行われてもよい。また、表示領域611、621、631、641における表示は、手書きによる表示であってもよい。このように厚板610、620、630、640が製造された場合、管理テーブル500において、当該厚板610、620、630、640に対する現品表示の欄には、表示領域611、621、631、641に表示される表示項目の構成要素の内容および位置を示す記憶情報が記憶される。また、当該厚板610、620、630、640に対する親IDの欄には、厚板600のIDを示す記憶情報が記憶される。このように、本実施形態では、切断後の厚板の情報については、図5に示す管理テーブル500において、新たな列(No.)として管理される場合を例示する。管理テーブル500において、現品表示および非現品表示の欄に、切断後の厚板に対する情報が記憶される。切断後の厚板に対する情報は、例えば、切断前または切断後に施された表示の撮像画像を、後述する画像取得部411が取得して、撮像画像を、後述する認識部412が認識することにより取得される。切断後の厚板に対する情報は、必ずしもこのようにして取得される必要はない。例えば、オペレータは、製造条件から切断後の厚板に対する情報を特定し、識別装置400のユーザインターフェースを操作して、特定した情報を、識別装置400に入力してもよい。また、両者を組み合わせることにより、切断後の厚板に対する情報が取得されてもよい。
【0045】
ここで、例えば、厚板610が切断されて更に別の複数の厚板が製造される場合がある。この場合、当該別の複数の厚板に対する親IDの欄には、厚板610のIDを示す情報が記憶される。厚板610に対する親IDの欄には、厚板600のIDを示す記憶情報が記憶されている。このように、親IDの欄に記憶されている情報をたどることにより、各厚板の変遷を特定することができる。このようにして或る厚板について、親IDの欄に記憶されている情報をたどることにより得られる厚板の並びを、当該厚板の切り板系列と称することとする。例えば、厚板610の切り板系列は、厚板600、610となる。また、各厚板の親IDの欄には、例えば、その切り板系列が分かるように、直近の厚板のIDを示す情報だけでなく、その切り系列に属する全ての厚板のIDを示す記憶情報が記憶されていてもよい。この場合、何れのIDも製造メーカにおいて定義されたものが用いられる。
【0046】
このように、厚板610、620、630、640の表示領域611、621、631、641に追加して表示される当該厚板610、620、630、640のIDの情報と、当該IDの親IDの情報と、を管理テーブル500に記憶させることで、厚板610、620、630、640の情報と、元の厚板600の情報と、の連関をとることができる。厚板610、620、630、640に追加される情報は、厚板の識別のためだけでなく、各厚板(ID)の変遷を行うためにも使用される。
【0047】
尚、非現品表示の欄の項目について、当該項目の情報が取得されている場合に限り、当該項目の欄に情報が記憶情報として記憶され、当該項目の情報が取得されていない場合には、当該項目の欄に情報は記憶されない。また、同一の位置において登録時刻が先の厚板が、登録時刻が後の厚板よりも先に移動することはない(即ち、板の重なりがある場合、下にある板が突然なくなることはない)。厚板が新たな置場に移動されると、その置場位置を示す記憶情報が置場位置の欄に記憶され、その置場位置に置かれた日時を示す記憶情報が登録時刻の欄に記憶される。
【0048】
画像IDの欄には、ステンシルによる表示領域101、111と、刻印による表示領域102、112と、を含む撮像画像のIDと、ラベル103、113による表示領域を含む撮像画像のIDと、を示す記憶情報が記憶される。識別装置400(記憶部403)または識別装置400と通信可能な外部装置には、当該IDに関連付けられて、当該IDで特定される撮像画像と、当該撮像画像から文字認識処理等により認識された各表示項目の構成要素を示す記憶情報とが予め記憶される。このようにして記憶される撮像画像は、後述する画像取得部411により取得される撮像画像と照合されるものであるので、撮像条件が可及的に良好な状態で撮像されるものであるのが好ましい。具体的には、ステンシルによる表示領域101、111、刻印による表示領域102、112、およびラベル103、113による表示領域の表示内容が可及的に明確に視認することができ、且つ、厚板の表面の汚損が可及的に少なく、且つ、撮像時の照明条件が撮像に可及的に適した状態で、撮像画像が撮像されるのが好ましい。
【0049】
次に、管理テーブル500の現品表示の欄に記憶される内容と、非現品表示の欄の物品内位置の欄に記憶される内容の一例を、より具体的に説明する。
図7は、ステンシルおよび刻印の物品内位置と、ステンシルおよび刻印による表示における各表示項目の構成要素の位置の一例を示す図である。図7では、図1Aに示す表示位置および図2Aに示す内容で、ステンシルおよび刻印による表示がなされている場合を例示する。
図7では、直方体の厚板の8つの頂点のうち、図1Aに示す頂点104を原点とし、当該頂点104から、厚板の幅方向に沿う方向をx軸の正の方向、厚板の長さ方向に沿う方向をy軸の正の方向とするx-y座標で、ステンシルおよび刻印の物品内位置と、ステンシルおよび刻印による各表示項目の構成要素の位置とを表す。
【0050】
本実施形態では、ステンシルによる表示における各表示項目の構成要素の位置のうち、x軸の最大値、x軸の最小値、y軸の最大値、およびy軸の最小値となる位置により定まる外接矩形701の4つ頂点のうち、対角線上にある2つの頂点のx-y座標を、ステンシルの物品内位置とする。図7では、外接矩形701の2つの頂点701a、701bのx-y座標(Ws10,Ls10)、(Ws11,Ls11)が、ステンシルの物品内位置であることを示す。尚、ここでは説明を簡単にするため、外接矩形は、物品内位置を表現する座標軸(図7に示す例ではx軸およびy軸)に平行な矩形であるものとする。
【0051】
また、ステンシルによる表示おける各表示項目の構成要素(文字、数字、記号、マーク)の重心(または図心)の位置のx-y座標を、当該構成要素の位置とする。図7では、ステンシルによる表示に含まれるID205の構成要素である5、6、3、4、9、7、-、0、1のx軸座標が、それぞれ、Ws1、Ws2、Ws3、Ws4、Ws5、Ws6、Ws7、Ws8、Ws9であり、y軸座標が、何れもLs1であることを示す。
以上のようにしてステンシルによる表示の各表示項目の各構成要素の位置がx-y座標で表される。
【0052】
刻印による表示についてもステンシルによる表示と同様に、刻印による表示における各表示項目の構成要素の位置のうち、x軸の最大値、x軸の最小値、y軸の最大値、およびy軸の最小値となる位置により定まる外接矩形711の4つ頂点のうち、対角線上にある2つの頂点711a、711bのx-y座標を、ステンシルの物品内位置とする。また、刻印による表示おける各表示項目の構成要素の重心(または図心)の位置のx-y座標を、当該構成要素の位置とする。
【0053】
図8は、ラベルの物品内位置と、ラベルによる表示における各表示項目の構成要素の位置の一例を示す図である。図8では、図1Aに示す表示位置および図3に示す表示内容で、ラベルによる表示が行われている場合を例示する。
図8では、直方体の厚板の8つの頂点のうち、図1Aに示す頂点105を原点とし、当該頂点105から、厚板の幅方向に沿う方向をx軸の正の方向、厚板の板厚方向に沿う方向をz軸の正の方向とするx-z座標で、ラベルの物品内位置と、ラベルによる各表示項目の構成要素の位置とを表す。
【0054】
本実施形態では、ラベルが矩形状であるものとする。ラベルの4つの頂点のうち、対角線上にある2つの頂点のx-z座標を、ラベルの物品内位置とする。また、ラベルによる表示おける各表示項目の構成要素の重心(または図心)の位置のx-z座標を、当該構成要素の位置とする。図8では、ラベルの2つの頂点801a、801bのx-z座標が、ラベルの物品内位置であることを示す。
【0055】
前述したように、図5に示す管理テーブル500において、現品表示の欄のステンシルの欄のIDの欄には、ステンシルによる表示に含まれるID205、215の構成要素の内容、位置、およびその他の属性を示す情報が記憶される。従って、図9Aに示すように、図7に示す例では、現品表示の欄のステンシルの欄のIDの欄には、ステンシルによる表示に含まれるID205の構成要素の内容として、「5」、「6」、「3」、「4」、「9」、「7」、「-」、「0」、「1」が記憶される。また、現品表示の欄のステンシルの欄のIDの欄には、当該構成要素の位置として、(Ws1,Ls1)、(Ws2,Ls1)、(Ws3,Ls1)、(Ws4,Ls1)、(Ws5,Ls1)、(Ws6,Ls1)、(Ws7,Ls1)、(Ws8,Ls1)、(Ws9,Ls1)が記憶される。
【0056】
図9Aでは、ステンシルによる表示に含まれるID205、215の構成要素のその他の属性として、識別対象除外区分、大きさ、ドット数、および識別限界画素数が含まれる場合を例示する。識別対象除外区分は、識別の対象から除外される一部の構成要素を特定するための情報であり、Yは、識別の対象から除外されないことを示し、Nは、識別の対象から除外されることを示す。識別の対象から除外される構成要素は、例えば、後述する照合部413で照合の対象から除外される構成要素である。この場合、認識部412で認識された構成要素が、照合部413において照合の対象から除外される。ただし、識別の対象から除外される構成要素は、このような構成要素に限定されない。識別の対象から除外される構成要素は、例えば、認識部412で認識の対象から除外される構成要素であってもよい。
【0057】
大きさは、構成要素の大きさを示す情報であり、Lは、構成要素の大きさが相対的に大きいことを示し、Mは、構成要素の大きさが中程度であることを示し、Sは、構成要素の大きさが相対的に小さいことを示す。ドット数は、構成要素を構成するドット数を示す情報である。例えば、ドット数がD5とは構成要素の内容「5」を構成するドットの数を示す。識別限界画素数は、撮像画像に対して識別可能な画素数の範囲を示す情報である。例えば、識別限界画素数がN5とは構成要素の内容「5」を識別可能な画素数の範囲を示す。撮像画像において構成要素を構成する画素数が識別限界画素数から外れる場合、当該構成要素は後述する照合部413における照合の対象から除外されることを示す。これら識別対象除外区分等の情報は、構成要素の属性の情報であり、ステンシルによる表示に関与した当事者でない者には知り得ない情報である。これら識別対象除外区分等の情報は、厚板の識別のために用いる記憶情報として、管理テーブル500に記憶される。これら厚板の識別のために利用される識別対象除外区分等の情報は、例えば、後述する図10のフローチャートにおいて追加・訂正することができる。本実施形態では、例えば、識別対象除外区分がYであることと、識別限界画素数以上であることとが、認識の正確性についての条件の一例である。また、識別対象除外区分がYである構成要素と、撮像画像の画素数が識別限界画素数の範囲内である構成要素とが、認識の正確性についての条件を満たす情報の一例である。図9Aに示す例では、識別対象除外区分がYである構成要素(5、6、3、4、-)のうち、撮像画像の画素数が識別限界画素数の欄の値(N5、N6、N3、N4、N-)の範囲内である構成要素が、認識の正確性についての条件を満たす情報である。
【0058】
現品表示の欄のその他の表示項目の欄にも、ステンシルの欄のIDの欄と同様に、当該表示項目の構成要素の内容、位置、および構成要素のその他の属性を示す情報が記憶される。尚、前述したように、刻印の欄の各表示項目の構成要素の位置を示す情報は、ステンシルの欄の各表示項目の構成要素の位置を示す情報と同様に、x-y座標である。これに対し、ラベルの欄の各表示項目の構成要素の位置を示す情報は、x-y座標ではなく、x-z座標となる。
【0059】
また、図9Bに示すように、図7に示す例では、非現品表示の欄の物品内位置の欄のステンシルの欄には、ステンシルの物品内位置を示す情報として、(Ws10,Ls10)、(Ws11,Ls11)が記憶される。
物品内位置の欄の刻印の欄およびラベルの欄にも、物品内位置の欄のステンシルの欄と同様に、刻印の物品内位置を示す情報およびラベルの物品内位置を示す情報がそれぞれ記憶される。このため、ステンシルによる表示、刻印による表示、およびラベルによる表示のうちの1つまたは2つにおいて文字等の構成要素が欠落した場合であっても、残りの表示により厚板の識別が可能になる。
尚、前述したように、刻印の物品内位置を示す情報は、ステンシルの物品内位置を示す情報と同様に、x-y座標である。これに対し、ラベルの物品内位置を示す情報は、x-y座標ではなく、x-z座標となる。
【0060】
管理テーブル500を新規に作成または更新するに際し、例えば、オペレータは、識別装置400のユーザインターフェースを操作して、管理テーブル500の各欄に記憶すべき情報を、識別装置400に入力してもよい。また、識別装置400は、工場の操業を管理するコンピュータ等の外部装置から、管理テーブル500の各欄に記憶すべき情報を受信してもよい。
【0061】
管理テーブル500の現品表示の欄に記憶される情報と、非現品表示の欄の物品内位置、重量、サイズ、および親IDの欄に記憶される情報は、厚板に対する表示が行われた後に定められる場合もあれば、厚板に対する表示が行われる前に定められている場合もある。従って、当該欄に記憶すべき情報が厚板に対する表示が行われる前に定められている場合には、識別装置400は、例えば、前述したようにして当該欄に記憶すべき情報を取得して、管理テーブル500の各欄に記憶する。
【0062】
一方、非現品表示の欄の置場位置、登録時刻、および画像IDの欄に記憶される情報は、厚板に対する表示が行われる前に定めることができない場合がある。従って、識別装置400は、例えば、当該欄に記憶すべき情報が得られたタイミングで、当該欄に記憶すべき情報を取得して、管理テーブル500の各欄に記憶する。
【0063】
次に、識別装置400の機能の一例を説明する。図10は、管理テーブル500を作成および更新する際の識別装置400の処理の一例を説明するフローチャートである。図11は、厚板を識別する際の識別装置400の処理の一例を説明するフローチャートである。図10および図11を参照しながら、識別装置400の機能の一例を説明する。
【0064】
図10のステップS1001において、情報取得部401は、管理テーブル500に記憶すべき情報が識別装置400に入力されたか否かを判定する。図10のステップS1001で識別装置400に入力される情報には、厚板を識別するために管理テーブル500に記憶すべき情報の全てが含まれ、図11のフローチャートを実行する前に得られる情報、図11のフローチャートの実行中に得られる情報、および図11のフローチャートを実行した後に得られる情報の何れもが含まれる。
【0065】
例えば、現品表示の欄に記憶される情報と、非現品表示の物品内位置・重量・サイズの欄の情報は、図11のフローチャートを実行する前に識別装置400に入力されることがある。ただし、これらの情報は、図11のフローチャートの実行が開始された後に識別装置400に入力されてもよい。例えば、識別用情報208、218、306は、当該識別用情報208、218、306が得られた後のタイミングであれば何れのタイミングで識別装置400に入力されてもよい。
【0066】
また、非現品表示の欄の置場位置、登録時刻、画像ID、親IDの欄の情報は、当該情報が得られた後に識別装置400に入力される。また、親IDの欄に情報が記憶される場合には、当該情報は、切断後の厚板の情報となるので、図5の管理テーブル500において新たな列(No.)が追加され、該当する情報が当該列に記憶される。
以上のように図10のフローチャートによる処理は、図11のフローチャートが実行中であっても実行されるものとする。
【0067】
ステップS1001の判定の結果、管理テーブル500に記憶すべき情報が識別装置400に入力されていない場合、図10のフローチャートによる処理が終了する。一方、管理テーブル500に記憶すべき情報が識別装置400に入力された場合、ステップS1002の処理が実行される。ステップS1002において、更新部402は、ステップS1001で識別装置400に入力されたと判定された情報を、記憶部403に記憶されている管理テーブル500の該当する欄に記憶情報として記憶する。該当する欄に情報が記憶されていない場合、ステップS1001で識別装置400に入力されたと判定された情報は、管理テーブル500に新規に登録される。一方、該当する欄に情報が記憶されている場合、ステップS1001で識別装置400に入力されたと判定された情報は、当該欄において更新される。このとき、更新部402は、該当する欄に既に記憶されている情報を残しておいても削除してもよい。そして、図10のフローチャートによる処理が終了する。また、管理テーブル500における記憶情報の更新は、図10のフローチャートだけではなく、図11のフローチャートによる処理においても実行される(図11のステップS1110を参照)。
【0068】
図11のステップS1101において、画像取得部411は、撮像画像を取得する。本実施形態では、ステップS1101において、第1の撮像画像と、第2の撮像画像と、が取得される。第1の撮像画像は、ステンシルによる表示領域101、111と、刻印による表示領域102、112と、を含む撮像画像である。第2の撮像画像は、ラベル103、113による表示領域を含む撮像画像である。
【0069】
ステップS1101で取得される撮像画像は、例えば、工場内に設置された撮像装置、オペレータ(作業員)の手持ちの撮像装置、または無人航空機(ドローン)に設けられた撮像装置を用いて撮像される。尚、オペレータ(作業員)の手持ちの撮像装置は、例えば、撮像装置を備える情報端末装置(タブレット端末やスマートフォン等)であってもよい。また、工場内に設置された撮像装置が所期の領域を撮像することができない場合、ステップS1101の処理に先立って、オペレータ(作業員)により、撮像装置の位置および撮像条件(画角等)が調整される。
【0070】
次に、ステップS1102において、認識部412は、ステップS1101で取得された撮像画像から、厚板に表示されている表示情報を認識する。本実施形態では、表示情報は、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素と、刻印による表示における表示項目の構成要素と、ラベルによる表示における表示項目の構成要素と、を含む。本実施形態では、表示情報が第1の情報の一例である。尚、第1の情報は、物品(本実施形態の例では厚板)に表示されている情報である。
【0071】
従って、認識部412は、ステップS1101で取得された撮像画像(第1の撮像画像または第2の撮像画像)に含まれている表示情報として、ステンシルおよび刻印による表示における表示項目の構成要素、または、ラベルによる表示における表示項目の構成要素を認識する。
表示項目の構成要素の内容を認識する処理は、例えば、公知のOCR(Optical character recognition)を用いた技術で実現することができるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。尚、NN(Neural Network)等のAI(Artificial Intelligence)を用いた技術や、AIとOCRとを組み合わせた技術(いわゆるAI OCR)を用いて、ステップS1102の処理を実現してもよい。NNは、例えば、NNの入力層に撮像画像を入力すると、NNの出力層から構成要素を示す情報が出力されるように構成される。尚、本実施形態では、認識部412は、表示項目の構成要素の内容を認識することができない場合(構成要素が、予め定められている、文字、数字、記号、およびマークの何れでもないと認識された場合)、当該構成要素については認識できないことを認識結果とする。また、認識部412は、認識結果の信頼度を算出してもよい。
【0072】
認識部412は、認識された構成要素の内容により、表示のフォーマットを特定する。例えば、図2Aでは、マーク201が左上にあり、続く文字列である需要家名202の文字サイズは他の文字と同じ大きさである。一方、図2Bでは、マーク211が右上であり1行目の文字列である需要家名212の文字サイズは他の文字の半分程度である。認識部412は、このような特徴を用いて、取りうるフォーマットの中から表示のフォーマットを特定でき、表示項目を特定できる。
【0073】
尚、ステップS1101の処理が開始してから所定の時間が経過しても、画像取得部411において撮像画像が取得されない場合、ステップS1101、S1102の処理が実行されることなくステップS1103の処理が実行される。以下の説明では、ステップS1102で認識された表示情報を、認識情報とも称する。本実施形態では、ステップS1102で認識された表示情報が第1の認識情報の一例である。
【0074】
次に、ステップS1103において、情報取得部401は、厚板に表示されていない非表示情報を取得して認識する。非表示情報は、図5に示す管理テーブル500の非現品表示の各欄および画像IDの欄に記憶されている情報と照合される情報である。以下に、非表示情報の具体例について説明する。尚、以下の説明では、ステップS1103で認識された非表示情報を、認識情報とも称する。本実施形態では、非表示情報が第2の情報の一例である。尚、第2の情報は、物品(本実施形態では厚板)に表示されていない情報である。また、ステップS1103で認識された非表示情報が第2の認識情報の一例である。
【0075】
<<物品内位置の認識情報>>
まず、情報取得部401は、表示項目の位置を導出する。情報取得部401が表示項目の位置を導出する手法の一例を説明する。
まず、情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像に基づいてエッジ検出処理を行い、厚板のエッジを検出し、検出した結果に基づいて、厚板の領域を特定する。そして、情報取得部401は、特定した領域が、厚板の板面部分と厚板の側面(板厚)部分との何れであるかを判定する。この判定は、例えば、特定した領域の縦横比に基づいて実現される。この判定の結果、特定した領域が、厚板の板面部分である場合、情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像が第1の撮像画像であると判定する。一方、特定した領域が、厚板の側面(板厚)部分である場合、情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像が第2の撮像画像であると判定する。
【0076】
そして、情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像が第1の撮像画像である場合、第1の撮像画像における物品内位置の原点(厚板における所定の位置)を検出する。
情報取得部401は、例えば、直方体の厚板の8つの頂点のうち、ステンシルによる表示領域と物品内位置の原点との位置関係として予め設定された位置関係に基づいて、第1の撮像画像における物品内位置の原点(厚板における所定の位置)を導出する。ステンシルによる表示領域と物品内位置の原点との位置関係として、例えば、以下のような情報が識別装置400に予め設定されていてもよい。即ち、ステンシルによる表示の表示項目の構成要素を、当該構成要素の頂部が上側に位置するように見た場合に、ステンシルによる表示と同一面において、ステンシルによる表示の左下側にある頂点が、物品内位置の原点であるという情報が識別装置400に予め設定されていてもよい。情報取得部401は、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素の位置および刻印による表示における表示項目の構成要素の位置として、第1の撮像画像における物品内位置の原点を基準とする位置を導出する。
【0077】
また、識別装置400は、例えば、表示項目の構成要素の輝度値と、相互に隣接する構成要素の距離と、のうち少なくとも一方を含む情報に基づいて、表示項目の構成要素が、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素と、刻印による表示における表示項目の構成要素と、の何れであるのかを判定する。
【0078】
また、識別装置400は、例えば、表示項目の構成要素が、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素と、刻印による表示における表示項目の構成要素と、の何れであるかを、以下のようにして判定してもよい。即ち、識別装置400は、以上のようにして認識した構成要素の位置が、管理テーブル500の非現品表示の欄の物品内位置の欄のステンシルの欄に記憶されている情報により特定される矩形領域と、管理テーブル500の非現品表示の欄の物品内位置の欄の刻印の欄に記憶されている情報により特定される矩形領域の何れの矩形領域と、のうち何れの矩形領域に近いのかを、厚板ごと(管理テーブル500の列ごと)に特定する。このようにする場合、識別装置400は、以上のようにして認識した構成要素の位置が、管理テーブル500の非現品表示の欄の物品内位置の欄のステンシルの欄に記憶されている情報により特定される矩形領域に近い場合、表示項目の構成要素が、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素であると判定する。一方、以上のようにして認識した構成要素の位置が、管理テーブル500の非現品表示の欄の物品内位置の欄の刻印の欄に記憶されている情報により特定される矩形領域に近い場合、識別装置400は、表示項目の構成要素が、刻印による表示における表示項目の構成要素であると判定する。
【0079】
尚、ステンシルによる表示領域101、111を含む領域に対する撮像と、刻印による表示領域102、112を含む領域に対する撮像と、が別々に行われる場合、表示項目の構成要素が、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素と、刻印による表示における表示項目の構成要素と、の何れであるのかの判定は不要である。
【0080】
情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像が第2の撮像画像である場合、第2の撮像画像における物品内位置の原点(厚板における所定の位置)を検出する。そして、情報取得部401は、ラベルによる表示における表示項目の構成要素の位置として、第2の撮像画像における物品内位置の原点を基準とする位置を導出する。ラベルによる表示における表示項目の構成要素の位置も、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素の位置と同様にして導出される。
【0081】
そして、情報取得部401は、ステンシルによる表示における表示項目の構成要素の位置のうち、x軸の最大値、x軸の最小値、y軸の最大値、およびy軸の最小値となる位置により定まる外接矩形の位置を導出する。情報取得部401は、導出した外接矩形の4つの頂点のうち、対角線上にある2つの頂点のx-y座標を、ステンシルの物品内位置の認識情報とする。
【0082】
また、情報取得部401は、刻印による表示における表示項目の構成要素の位置のうち、x軸の最大値、x軸の最小値、y軸の最大値、およびy軸の最小値となる位置により定まる外接矩形の位置を導出する。情報取得部401は、導出した外接矩形の4つ頂点のうち、対角線上にある2つの頂点のx-y座標を、刻印の物品内位置の認識情報とする。また、情報取得部401は、ラベルによる表示における表示項目の構成要素の位置のうち、x軸の最大値、x軸の最小値、z軸の最大値、およびz軸の最小値となる位置により定まる外接矩形の位置を導出する。情報取得部401は、導出した外接矩形の4つ頂点のうち、対角線上にある2つの頂点のx-z座標を、ラベルの物品内位置の認識情報とする。
【0083】
<<重量の認識情報>>
情報取得部401は、厚板のIDおよび当該IDの厚板の重量の実測値を、厚板の重量の認識情報として取得する。
【0084】
<<サイズの認識情報>>
情報取得部401は、厚板のIDおよび当該IDの厚板のサイズの実測値を、厚板のサイズの認識情報として取得する。
【0085】
<<置場位置の認識情報>>
情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像(第1の撮像画像または第2の撮像画像)を撮像した撮像装置の位置を示す情報を、置場位置の認識情報として取得する。
【0086】
<<親IDの認識情報>>
図6に示すように、元の厚板600が切断されて別の厚板610~640が製造される場合、切断後の厚板610~640の親IDは、元の厚板600のIDであることが加工条件から自動的に特定される。インクジェットやレーザーマーキングなどで、切断後の厚板610~640のIDを含む表示が表示領域611~641になされる。IDを含む表示は手書きによる表示でもよい。また、情報取得部401は、表示領域611~641の撮像画像を画像取得部411が取得して、撮像画像を認識部412が認識することで元の厚板600と同様に厚板610~640のID等を取得してもよい。厚板610~640のID等と、元の厚板600のIDである親IDとの紐づけが、自動または手動で行われてもよい。さらに、元の厚板600に対する表示が切断後の厚板610、620に残ることがある。情報取得部401は、このような元の厚板600に対する表示に含まれるIDを、親IDの認識情報として取得することもできる。尚、このようなIDは、例えば、ステップS1102で認識された構成要素のうち、管理テーブル500の非現品表示の欄の物品内位置の欄(ステンシルの欄および刻印の欄)に記憶されている情報により特定される矩形領域の何れの矩形領域にも含まれない構成要素に基づいて特定される。
【0087】
<<画像IDの認識情報>>
情報取得部401は、ステップS1101で取得された撮像画像(第1の撮像画像または第2の撮像画像)のIDを画像IDの認識情報として取得する。情報取得部401は、例えば、画像取得部411により取得された撮像画像に付加されたIDを当該撮像画像の画像IDの認識情報として取得する。
【0088】
ステップS1103において認識された非表示情報(認識情報)は、後述するステップS1106において、図5に示す管理テーブル500の非現品表示の各欄に記憶されている記憶情報と照合される。また、ステップS1101で取得された撮像画像(第1撮像画像および第2撮像画像)は、後述するステップS1106において、図5に示す管理テーブル500の画像IDの欄に記憶されているIDのうち、当該撮像画像と共に取得されるIDと同じIDと関連付けられて記憶されている撮像画像と照合される。
ステップS1103の処理が終了すると、ステップS1104の処理が実行される。尚、ステップS1103の処理が開始してから所定の時間が経過しても、情報取得部401において非表示情報が取得されない場合、ステップS1103の処理が実行されることなくステップS1104の処理が実行される。
【0089】
ステップS1104において、照合部413は、照合対象のうち未選択の照合対象を1つ選択する。ステップS1104で選択される照合対象は、図5に示す管理テーブル500の各欄(各項目)の情報である。最初に選択される照合対象は、現品表示の欄の情報とする。また、最初に選択される照合対象は、1つの厚板ごとに定められている情報(それぞれの厚板に固有の情報)であるのが好ましい。このような照合対象の認識情報が管理テーブル500に記憶されている記憶情報と一致していれば、当該照合対象の認識情報は、当該記憶情報が記憶されている列(No.)の厚板の情報であることが、その他の認識情報を用いることなく特定されるからである。そこで、本実施形態では、ステンシルの欄のID(ステンシルによる表示に含まれるID)が、最初に選択される照合対象である場合を例示する。ただし、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、刻印の欄のIDまたはラベルの欄のIDが、最初に選択される照合対象であってもよい。また、照合対象の選択順は特に限定されない。本実施形態では、管理テーブル500の上の欄から順に照合対象が1つずつ選択される場合を例示する。
【0090】
<<照合対象が表示情報である場合>>
次に、ステップS1105において、照合部413は、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報を取得する。正確性が保証されている情報は、図9Aに示す識別対象除外区分および識別限界画素数によって照合の対象から除外されていない構成要素の情報等である。
【0091】
尚、認識の正確性についての条件を満たす情報の一例である正確性が保証されている情報は、図9Aに示す識別対象除外区分および識別限界画素数によって照合の対象から除外されていない構成要素の情報に限定されない。例えば、識別対象除外区分および識別限界画素数とは別に、1、7、9、0、C、I、L、O、P、Q、R、T、U、V等、文字認識処理による識別率が低いとされている構成要素が予め定められている場合がある。この場合、文字認識処理による識別率が低いとされている構成要素以外の構成要素が、正確性が保証されている情報になる。識別対象除外区分および識別限界画素数によって照合の対象から除外されていない構成要素と、文字認識処理による識別率が低いとされている構成要素以外の構成要素との双方が、正確性が保証されている情報であってもよい。また、照合部413は、ステップS1102の処理において認識できなかった構成要素も、正確性が保証されている情報ではないとして取り扱ってもよい。
【0092】
次に、ステップS1106において、照合部413は、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報と、当該照合対象の記憶情報とを照合する。照合対象の記憶情報は、管理テーブル500の各列(No.1,2,3・・・)から1つずつ選択される。即ち、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報と照合される記憶情報は、管理テーブル500の各列に記憶されている記憶情報のそれぞれである。このように、照合対象の認識情報は、いずれのステップS1106においても、同一の物品(本実施形態では厚板)に対する認識情報である。これに対し、照合対象の記憶情報は、管理テーブル500に記憶されている複数の物品(本実施形態では厚板)に対する記憶情報である。
【0093】
また、ステップS1105で正確性が保証された情報が取得された場合、照合部413は、選択された照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報のみを、照合対象の記憶情報と照合する。
【0094】
照合部413は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報と一致する記憶情報が記憶されている列を抽出し、抽出した列を示す情報を特定部414に出力する。
【0095】
以上のように照合部413は、照合対象の認識情報と、当該照合対象の記憶情報とが一致するか否かを判定する。照合対象の認識情報は、ステップS1102またはS1103の処理で認識された情報である。照合対象の記憶情報は、管理テーブル500に記憶されている情報である。
照合対象がIDである場合、一致とは、照合対象の認識情報の構成要素と、照合対象の記憶情報の構成要素との、内容および並び順が完全に一致している部分があることを指す。ただし、照合対象がIDの一部である場合には、その照合対象の認識情報の構成要素と、照合対象の記憶情報の構成要素との、内容および並び順が完全に一致している部分があれば、一致しているものとする。
【0096】
図2Aに示す例では、ステンシルによる表示におけるIDの構成要素の内容は、5、6、3、4、9、7、-、0、1であり、並び順は、左から、5、6、3、4、9、7、-、0、1の順である。このような情報が、管理テーブル500のステンシルの欄のIDの欄に記憶されているものとする。また、正確性が保証されていない情報が0、1、7、9であるとする。このような場合を例に挙げて、照合対象がIDの全てである場合(IDの全ての正確性が保証されている場合)と、照合対象がIDの一部である場合(IDの一部のみ正確性が保証されている場合)の具体例について説明する。
【0097】
照合対象がIDの全てである場合には、5、6、3、4、9、7、-、0、1が左からこの順で並んでいる情報がステンシルによる表示におけるIDの認識情報である場合に、ステンシルによる表示におけるIDの認識情報と記憶情報とが一致することになる。これらの構成要素の一部が欠けている場合だけでなく、これらの構成要素以外の構成要素が並んでいる場合にも、ステンシルによる表示におけるIDの認識情報と記憶情報の、内容および並び順は一致しているものではないとする。その他の表示情報および非表示情報においても、同様に認識情報と記憶情報との一致または不一致が判定される。
【0098】
照合対象がIDの一部である場合、現品表示の欄のステンシルの欄のIDの欄に記憶されている構成要素のうち正確性が保証されている構成要素の内容は、5、6、3、4、-であり、並び順は、左から、5、6、3、4、-の順である。従って、ステンシルによる表示におけるIDの認識情報において、5、6、3、4、-が左からこの順で並んでおり、且つ、4と-との間に2つの構成要素が存在し、且つ、-の右に2つの構成要素が存在することが示されている場合に、ステンシルによる表示におけるIDの一部の認識情報と記憶情報とが一致することになる。
【0099】
また、認識部412は、ステップS1102の処理で認識ができない構成要素、および、認識の結果の信頼度が閾値以下の構成要素(例えば、“0”、“1”、“7”、“9”)を、ブランクとして、ステップS1102において認識された結果を示す情報を構成してもよい。このようにする場合、ブランクが照合の対象外であることを示す情報となる。このようにすれば、照合部413は、構成要素の並び順に構成要素毎の照合を実行することができる。出力部415が構成要素毎の照合の結果を出力することで、オペレータは、照合が正しく行われていることを容易に確認することができる。ここでの例では、IDが9桁であることが管理テーブル500に記憶されている。従って、出力部415が構成要素毎の照合の結果を出力することで、どの構成要素が一致し、どの構成要素が一致していないかをオペレータに把握させることが可能となる。尚、正確性が保証されていない構成要素が存在すべき領域の大きさ、または、正確性が保証されていない構成要素の数は、例えば、管理テーブル500のステンシルの欄のサイズの欄に記憶されている情報と、管理テーブル500のラベルの欄のサイズの欄に記憶されている情報とに基づいて特定される。
<<照合対象が表示情報である場合>>の項で説明した内容は、照合対象がID以外の表示情報である場合も同様である。
【0100】
本実施形態では、管理テーブル500の現品表示の各欄(各項目)の記憶情報が第1の記憶情報の一例である。また、管理テーブル500の非現品表示の各欄(各項目)の記憶情報が第2の記憶情報の一例である。
【0101】
ステップS1104において選択された照合対象が、管理テーブル500の非現品表示の各欄(各項目)の情報および管理テーブル500の画像IDの欄の情報である場合には、正確性が保証されている情報の取得は実行されない(ステップS1105の処理は省略される)。この場合、ステップS1106において、照合部413は、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報の全てと、当該照合対象の記憶情報の全てとを照合する。ただし、ステップS1104において選択された照合対象が、管理テーブル500の非現品表示の各欄の情報および管理テーブル500の画像IDの欄の情報に対しても、正確性が保証されている情報が設定されていてもよい。このようにする場合、例えば、正確性が保証されている情報は、各欄の情報の値として想定される範囲内の値である。このようにする場合には、ステップS1104において選択された照合対象が、管理テーブル500の非現品表示の各欄(の情報および管理テーブル500の画像IDの欄の情報である場合にも、正確性が保証されている情報の取得は実行される。
【0102】
<<照合対象が置場位置である場合>>
置場位置の認識情報は、ステップS1101で取得された撮像画像(第1の撮像画像または第2の撮像画像)を撮像した撮像装置の位置を示す情報である。置場位置の記憶情報は、厚板の位置を示す情報である。そこで、照合部413は、非現品表示の欄の置場位置の欄に記憶されている厚板の位置を示す情報から特定される厚板の位置と、ステップS1101で取得された撮像画像を撮像した撮像装置の位置との間の距離が閾値以下であるか否かを判定する。照合部413は、当該距離が閾値以下である場合に、置場位置の認識情報と記憶情報は一致していると判定し、そうでない場合、置場位置の認識情報と記憶情報は一致していないと判定する。
【0103】
識別装置400は、例えば、撮像装置の位置を示す情報を予め記憶している。撮像装置の位置が変わり得る場合、識別装置400は、撮像装置またはオペレータ(作業員)の手持ちの情報処理端末が有するGPS(Global Positioning System)を用いて検出された位置情報を撮像装置の位置として取得して更新してもよい。また、無人航空機(ドローン)に設けられた撮像装置を用いる場合、識別装置400は、例えば、無人航空機に設けられたGPSを用いて検出された位置情報を撮像装置の位置として取得してもよい。
【0104】
<<照合対象が登録時刻である場合>>
前述したように、照合対象が登録時刻である場合には、登録時刻の認識情報はない。本実施形態では、以下のようにして登録時刻の照合が実行される。
図1Cに示すように複数の厚板が積み重ねられる場合、x-y座標の位置が同じである厚板のうち経過時間が最も短い厚板が1番上に積まれているため、ステンシルによる表示領域101、111の撮像が可能であると見なせる。そこで、照合部413は、ステップS1101で取得された撮像画像が第1の撮像画像である場合(即ち、当該撮像画像がステンシルによる表示領域101、111を含む場合)、以下の照合を実行する。即ち、照合部413は、ステップS1106が開始する時点で特定されている厚板の候補のうち、非現品表示の欄の置場位置の欄に記憶されている厚板の位置を示す情報(x-y座標)が同じである複数の厚板の候補に対する非現品表示の欄の登録時刻の欄に記憶されている登録時刻同士を照合する。このようにすれば、登録時刻が最も遅い厚板が、ステップS1101で取得された第1の撮像画像で撮像されている厚板であると特定される。このようにする場合、非現品表示の欄の置場位置の欄に記憶されている厚板の位置を示す情報(x-y座標)が同じである複数の厚板の候補のうち、登録時刻が最も遅い厚板の候補以外は、厚板の候補から除外される。尚、厚板の候補の特定の方法の具体例については、ステップS1107の処理の説明の際に示す。
【0105】
<<照合対象が撮像画像である場合>>
照合部413は、ステップS1103で取得された画像IDの認識情報により特定されるIDと同じIDを管理テーブル500の画像IDの欄から抽出し、抽出したIDに関連付けられて記憶されている撮像画像を取得する。照合部413は、このようにして取得した撮像画像と、ステップS1101で取得された撮像画像とを照合する。例えば、照合部413は、それぞれの撮像画像から、1もしくは2以上の特徴点を抽出し、抽出した特徴点として共通する特徴点があるか否か、またはどの程度の割合で特徴点が共通しているか(近似しているか)等に基づいて、それぞれの撮像画像の一致、不一致を判別する。このような判別は、公知の顔認証、指紋認証等の画像識別処理技術によって実施することができる。
【0106】
照合対象が非現品表示の欄の情報である場合、一致とは、照合対象の認識情報が示す意味と、照合対象の記憶情報が示す意味とが同じであることを指す。例えば、重量の認識情報が10000gであり、重量の記憶情報が10kgである場合、重量の認識情報が示す意味と、重量の記憶情報が示す意味とは同じであり、重量の認識情報と、重量の記憶情報とは一致することになる。照合部413は、例えば、重量の認識情報が示す単位を、重量の記憶情報が示す単位に換算する換算式を用いることにより、重量の認識情報と重量の記憶情報とが一致しているか否かを判定する。
【0107】
以上のようにして実行されるステップS1106において、照合部413は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報と一致する記憶情報が記憶されている列を示す情報を特定部414に出力する。
【0108】
次に、ステップS1107において、特定部414は、ステップS1106において照合部413から出力された情報に基づいて、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されたか否かを判定する。ステップS1107の判定の結果、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されない場合、ステップS1108の処理が実行される。ステップS1108において、照合部413は、全ての照合対象を選択したか否かを判定する。ステップS1108の判定の結果、全ての照合対象を選択していないと判定された場合、ステップS1101の処理が再び実行される。そして、ステップS1101~S1107の処理が再び実行される。このように、ステップS1101~S1108の処理は繰り返し実行される。以下にステップS1107以降の処理について詳細に説明する。
【0109】
ステップS1107の判定の結果、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されない場合、特定部414は、ステップS1106において照合部413から出力された情報により特定される列(No.)を、識別すべき厚板の候補として特定して記憶する。そして、ステップS1108の処理が実行される。
【0110】
管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されたか否かは、例えば、以下のようにして判定される。
特定部414は、本ステップの直前のステップS1106において出力された情報により特定される列の数が1つである場合、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されたと判定してもよい。この場合に特定される厚板は、当該列に対応する厚板である。
【0111】
また、特定部414は、過去の複数回のステップS1106において同じ列を特定する情報が2回以上の所定の回数出力された場合に、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されたと判定してもよい。この場合、1回のステップS1106において出力された情報により特定される列の数は、1であっても2以上であってもよい。また、この場合に特定される厚板は、当該列に対応する厚板である。
【0112】
また、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されない場合、特定部414は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報と一部のみが一致する記憶情報が記憶されている列を、識別すべき厚板の候補として特定して記憶してもよい。このようにする場合、ステップS1106において、照合部413は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報と一部のみが一致する記憶情報が記憶されている列を示す情報を特定部414に出力する。
【0113】
また、特定部414は、識別すべき厚板の候補を絞り込んでもよい。例えば、特定部414は、識別すべき厚板の候補として記憶されている列(No.)のうち、識別すべき厚板の候補として記憶されている列の総数に対する割合が閾値以上の列のみを、識別すべき厚板の候補としてもよい。尚、列の総数の計数に際し、同じNo.の列が複数ある場合、当該列の数は1とする。また、特定部414は、識別すべき厚板の候補として本ステップの開始時に既に記憶されている列(No.)のうち、本ステップの直前のステップS1106(最新のステップS1106)において出力された情報により特定される列と同じ列以外の列を、識別すべき厚板の候補から除外してもよい。
以上のような識別すべき厚板の候補を特定する手法の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0114】
前述したようにステップS1107の判定の結果、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定されない場合、ステップS1108の処理が実行される。ステップS1108において、照合部413は、全ての照合対象を選択したか否かを判定する。例えば、照合部413は、管理テーブル500の全ての欄(項目)を選択した場合に、全ての照合対象を選択したと判定してもよい。また、照合部413は、管理テーブル500の全ての欄(項目)のうち、照合対象として予め設定された1または2以上の欄を選択した場合に、全ての照合対象を選択したと判定してもよい。
【0115】
また、照合部413は、厚板の置場位置によって、照合対象を限定してもよい。例えば、実照合は、各工程の置場位置において行われる。このため、照合部413は、ステンシル、刻印、およびラベルにより表示されるIDの少なくとも1つを照合対象とした場合であって、厚板が1つに特定されなかった場合(ステップS1107でNOとなる場合)に、管理テーブル500の置場位置のみを照合対象としてもよい。また、工場から出荷後の厚板を特定する場合、照合部413は、管理テーブル500の置場位置等の非表示情報を、表示情報よりも先に照合対象として選択してもよい。
【0116】
前述したようにステップS1108の判定の結果、全ての照合対象を選択していないと判定された場合、ステップS1101の処理が再び実行される。そして、ステップS1101~S1107の処理が再び実行される。尚、ステップS1108の判定の結果、全ての照合対象を選択していないと判定された場合に実行される最初の処理は、ステップS1101の処理に限定されない。例えば、全ての選択対象の認識情報を得るためにステップS1001、S1003で取得する必要がある情報(撮像画像および非表示情報)を、ステップS1001、S1003で一度に取得する場合、ステップS1108の判定の結果、全ての照合対象を選択していないと判定された場合に実行される最初の処理は、ステップS1104でもよい。前述したようにステップS1104では、照合対象が1つ選択される。従って、1つの照合対象の認識情報と、当該1つの照合対象の記憶情報とが一致する場合に、少なくとも1つの識別すべき厚板の候補が特定される。
【0117】
ステップS1107の判定の結果、管理テーブル500において管理されている厚板から1つの厚板のみが特定された場合、ステップS1109の処理が実行される。ステップS1109において、出力部415は、物品特定情報を出力する。物品特定情報には、例えば、ステップS1107で特定されたと判定された厚板の情報(例えばID)が含まれる。出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、識別装置400の内部または外部の記憶媒体への記憶、および識別装置400の外部装置への送信のうち、少なくとも1つである。
【0118】
オペレータ(作業員)が、出力部415により出力された厚板の情報(例えばID)を確認することもできるようにしてもよい。オペレータは、出力部415により出力された厚板の情報が、現物の情報と異なる情報であるか否かを、撮像画像等に基づいて判定する、この判定の結果、出力部415により出力された厚板の情報が、現物の情報と異なる情報である場合、オペレータは、識別装置400のユーザインターフェースを操作して、実際の厚板の表示情報を識別装置400に入力する。認識部412においてAIを用いて文字認識処理が実行される場合、識別装置400は、入力した厚板の表示情報を正解データとして用いて、AIの学習を実行する。これにより、認識部412における認識精度を向上させることができる。尚、ステップS1109の処理は、例えば、識別装置400のユーザインターフェースに対して本ステップで出力された厚板の情報(例えばID)を確認したことに対応する操作をオペレータが行ったとき、または、ステップS1109の処理が開始してから一定時間が経過したときに終了する。
【0119】
次に、ステップS1110において、更新部402は、管理テーブル500を更新する。例えば、更新部402は、ステップS1107において1つの厚板のみが特定されたと判定されたときの照合対象が現品表示の欄の情報である場合に、管理テーブル500の画像IDの欄を更新する。
【0120】
具体的には、ステップS1107において1つの厚板のみが特定されたと判定されたときの照合対象が現品表示の欄のステンシルまたは刻印の欄の情報であるものとする。この場合、更新部402は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1107において特定された厚板に対応する列の画像IDの記憶情報を、ステップS1101で取得された第1の撮像画像のIDに更新する。また、更新部402は、当該画像IDに関連付けられて記憶されている撮像画像を当該第1の撮像画像に更新する。また、更新部402は、当該画像IDに関連付けられて記憶されている各表示項目の構成要素を、当該第1の撮像画像の各表示項目の構成要素に更新する。当該第1の撮像画像の各表示項目の構成要素は、例えば、ステップS1102の処理の結果から特定される。
【0121】
また、ステップS1107において1つの厚板のみが特定されたと判定されたときの照合対象が現品表示の欄のラベルの欄の情報であるものとする。この場合、更新部402は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1107において特定された厚板に対応する列の画像IDの記憶情報を、ステップS1101で取得された第2の撮像画像のIDに更新する。また、更新部402は、当該画像IDに関連付けられて記憶されている撮像画像を当該第2の撮像画像に更新する。また、更新部402は、当該画像IDに関連付けられて記憶されている各表示項目の構成要素を、当該第2の撮像画像の各表示項目の構成要素に更新する。当該第2の撮像画像の各表示項目の構成要素は、例えば、ステップS1102の処理の結果から特定される。
【0122】
以上のようにすれば、その後のステップS1101において取得される撮像画像と照合する撮像画像を、実際の表示に近い撮像画像とすることができる。
尚、管理テーブル500の更新の欄は、画像IDの欄に限定されない。例えば、ステップS1107において1つの厚板のみが特定されたと判定されたときの照合対象が重量であるものとする。この場合、更新部402は、管理テーブル500の列(No.)のうち、ステップS1107において特定された厚板に対応する列の重量の記憶情報を、ステップS1103で取得された重量の測定値に更新してもよい。
ステップS1110の処理が終了すると、図11のフローチャートによる処理は終了する。尚、ステップS1110の処理において更新すべき情報がない場合、ステップS1110の処理は省略される。
【0123】
ステップS1108の判定の結果、全ての照合対象を選択したと判定された場合、ステップS1111の処理が実行される。この場合、全ての照合対象を選択しても、ステップS1107において1つの厚板のみが特定されなかったことになる。そこで、ステップS1111において、出力部415は、物品候補情報を出力する。物品候補情報には、例えば、ステップS1111が開始する時点で特定部414により特定されている厚板の候補の情報(例えばID)が含まれる。出力の形態は、例えば、コンピュータディスプレイへの表示、識別装置400の内部または外部の記憶媒体への記憶、および識別装置400の外部装置への送信のうち、少なくとも1つである。オペレータ(作業員)は、出力部415により出力された厚板の候補の情報(例えばID)を確認し、厚板を特定する。厚板の複数の候補の情報をオペレータに提示することにより、厚板を特定する際のオペレータの負担を軽減することができる。ステップS1111の処理が終了すると、図11のフローチャートによる処理は終了する。
【0124】
<まとめ>
以上のように本実施形態では、識別装置400は、厚板に対して表示されている表示情報を含む領域の撮像画像を取得し、取得した撮像画像に基づいて、少なくとも1つの表示情報を認識する。識別装置400は、当該認識した情報である認識情報の少なくとも一部の情報と、当該認識情報に対応して管理テーブル500に記憶されている記憶情報とを照合する。識別装置400は、当該照合の結果に基づいて、厚板の少なくとも1つの候補を特定する。この際、識別装置400は、認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として管理テーブル500に記憶されている記憶情報とを照合する。従って、厚板に表示されている情報を撮像した撮像画像に基づいて当該厚板を識別する際、当該厚板に示されている情報の全てを正しく抽出できなくても、当該厚板の識別が可能となる。
【0125】
ここで、当該認識情報(記憶情報と一致しない認識情報)と、当該認識情報と一部が異なる認識情報は、同一の物品(本実施形態の例では同一の厚板)に対する情報である。したがって、図11の繰り返し処理で実行されるステップS1102、S1103、S1106では、同一の物品(本実施形態の例では同一の厚板)に表示されている表示情報を認識することになる。また、当該認識情報(記憶情報と一致しない認識情報)に対し一部が異なる認識情報のそれぞれに、当該認識情報(記憶情報と一致しない認識情報)の1つと完全に一致するものはない。当該認識情報と一部が異なる認識情報とは、当該認識情報の構成要素の一部を含むが、当該認識情報の構成要素の全部を含まない情報である。
【0126】
また、従来の技術においては、製造者側において既知としている表示情報(構成要素)であっても、当該表示情報の認識が正しく行われることが前提となっている。即ち、従来の技術においては、表示が鮮明であり、表示に擦れや汚れがないことが前提となっている。このため、表示に擦れや汚れがある場合であっても、表示情報は正しく認識されているとの誤謬を含む情報となる。従って、表示されている表示情報が所期の状態になっていない場合には、正しく表示情報を認識することができない。即ち、従来の技術においては、物品に表示情報が正しく表示されているとしているため、誤認識に対する処理ができないことになる。また、従来の技術においては、照合対象を構成する全ての表示情報が正しく照合されないと、照合は失敗したと判定される。
【0127】
これに対して、本実施形態では、管理テーブル500に記憶されている情報は、厚板の製造メーカで管理される情報である。従って、認識情報と記憶情報とが完全に一致しない場合であっても、当該認識情報と一部が異なる認識情報と、当該認識情報に対応する情報として管理テーブル500に記憶されている記憶情報と、を照合することにより、厚板の候補を絞り込むことができる。従って、製造過程において厚板に表示されている表示情報が所期の状態になっていない場合でも、照合が失敗となることを抑制することができ、当該厚板の識別精度を向上させることができる。
【0128】
また、本実施形態では、識別装置400は、認識情報のうち正確性についての条件を満たす情報と、記憶情報のうち当該正確性についての条件を満たす情報に対応する情報とを照合する。従って、全ての認識情報を照合すると照合が失敗とされる場合であっても、厚板の識別を可及的に正確に実行することができる。
【0129】
また、本実施形態では、識別装置400は、厚板に表示されていない非表示情報と、当該非表示情報に対応する情報として管理テーブル500に記憶されている記憶情報とを照合する。従って、厚板に示されている情報が正しく抽出できない場合に、厚板に示されていない情報を活用して厚板を識別することができる。厚板に表示されていない非表示情報の好ましい例として、物品内位置と、厚板の重量と、厚板のサイズと、置場位置と、登録時刻と、のうち少なくとも1つが挙げられる。
【0130】
また、本実施形態では、識別装置400は、取得した撮像画像と、管理テーブル500の画像IDの欄に記憶されているIDのうち、当該撮像画像のIDと同じIDに関連付けられて記憶されている撮像画像と、を総合する。従って、厚板に示されている情報が正しく抽出できない場合に、厚板の撮像画像を活用して厚板を識別することができる。
【0131】
また、本実施形態では、識別装置400は、照合に失敗した表示情報とは別の表示情報の認識情報と、当該認識情報に対応する情報として管理テーブル500に記憶されている記憶情報とを照合する。従って、厚板に示されている情報が正しく抽出できない場合に、厚板に表示されている別の情報を活用して厚板を識別することができる。
【0132】
<変形例>
<<第1の変形例>>
本実施形態のように、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、注文番号207、217、識別用情報208、218、規格301、ID302、サイズ303、納期304、および需要家コード305を、人が識別可能な情報とすれば、識別装置400による現品管理だけでなく、オペレータ(作業員)による現品管理も容易になるので好ましい。しかしながら、需要家名202、212、規格203、213、サイズ204、214、ID205、215、209、219、需要家コード206、216、注文番号207、217、識別用情報208、218、規格301、ID302、サイズ303、納期304、および需要家コード305の少なくとも1つを、バーコードや2次元コードのように、人が識別可能でない情報に変換(エンコード)された情報としてもよい。
【0133】
<<第2の変形例>>
本実施形態では、文字認識処理による識別率が高い情報を用いて識別用情報208、218を構成する場合を例示した。しかしながら、識別用情報は、文字認識処理による識別率が高い情報を用いる場合に限定されない。
【0134】
例えば、人が識別用情報の意味を理解できるように、四則演算および関数等の所定の規則に従って、識別用情報の構成要素を決定してもよい。
例えば、厚板のIDの構成要素が数字を含む場合、厚板のIDを構成する各桁の数字と、当該数字と同じ桁の数字と、を加算した値が、所定値の倍数のうち最小の値になるように、識別用情報を構成する数字を決定してもよい。例えば、ステンシルにより表示されるID205、215は、「563497-01」である。所定値を5とする場合、識別用情報は「042113-54」となる(5+0=5、6+4=10、3+2=5、4+1=5、9+1=10、7+3=10、0+5=5、1+4=5)。
【0135】
また、厚板のIDの下一桁の構成要素が数字である場合、当該数字の補数(10進法における基数の補数)を構成要素に含む情報を識別用情報としてもよい。例えば、ステンシルにより表示されるID205、215は、「563497-01」である。従って、9(1+9=10)を含む情報を識別用情報とする。例えば、厚板のIDの下一桁の次の桁に、このような補数を追加した情報を識別用情報としてもよい。この他、厚板のIDの下一桁の数字を所定値で割ったときの余りの値を構成要素に含む情報を識別用情報としてもよい。例えば、ステンシルにより表示されるID205、215は、「563497-01」である。従って、所定値を5とする場合、1(1÷5の余りは1)を含む情報を識別用情報とする。例えば、厚板のIDの下一桁の次の桁に、このような余りの値を追加した情報を識別用情報としてもよい。
【0136】
また、文字認識処理による識別率が高い情報を用いる場合でも、所定の規則に従って、識別用情報の構成要素を決定してもよい。例えば、厚板のIDの構成要素のうち、文字認識処理による識別率が低い構成要素を、識別率が高い構成要素に変更したものを、識別用情報としてもよい。例えば、1、7、9、0、C、I、L、O、P、Q、R、T、U、Vを、文字認識処理による識別率が高い文字、数字、または記号に置き換えてもよい。
この他、識別用情報を、他の情報と異なる形態で表示してもよい。例えば、識別用情報の、色、文字の種類、文字のサイズ、および文字のドット数のうち、少なくとも一つを他の情報と異ならせてもよい。また、このようにすることに代えてまたは加えて、識別用情報を近接撮影することにより、識別用情報の撮像画素数を他の情報の撮像画素数と異ならせてもよい。例えば、厚板のIDと色違いの情報を識別用情報とてもよい。また、厚板のIDの文字の種類を変更したものを識別用情報としてもよい。例えば、厚板のIDが数字である場合、当該数字をアルファベットに変更したものを識別用情報としてもよい。
【0137】
<<第3の変形例>>
本実施形態では、図2A図2B図3に示すように、ステンシルにより表示されるID205と、刻印により表示されるID209と、ラベルにより表示されるID302と、が同じである場合を例示した。しかしながら、これらのIDの表現および記載内容が異なる場合がある。例えば、IDにおいて“ハイフン”がない形式もある。このような場合、これらのID(ステンシルにより表示されるID、刻印により表示されるID、ラベルにより表示されるID)が同一の厚板に対するものであることを示す情報を管理テーブル500に記憶させる。ID以外の表示項目についても、同一の表示項目の表現および記載内容が、ステンシルによる表示、刻印による表示、およびラベルによる表示で異なる場合がある。例えば、ステンシルおよびラベルの双方に規格が表示される場合、例えば、ラベルには規格の略称が表示される場合がある。また、ステンシルによる表示とラベルによる表示とで需要者コードの桁数が異なる場合があるが、需要者コードは製造メーカで管理されている。また、サイズについても、寸法の全ての桁を示さない場合がある。このような場合にも、それら異なる表現および記載内容が同等の意味であることを示す情報を管理テーブル500に記憶させる。
【0138】
<<第4の変形例>>
本実施形態のように、非表示情報を用いれば、厚板の識別をより確実に行うことができるので好ましい。しかしながら、厚板の識別に際し、必ずしも非表示情報を用いる必要はない。このようにする場合には、図5に示す管理テーブル500の非現品表示の各欄は不要にあると共に、図11のステップS1103の処理は不要になる。
【0139】
<<第5の変形例>>
本実施形態では、工場において需要家に向けて厚板が出荷される前までの間の任意のタイミングで、当該厚板を識別する場合を例示した。しかしながら、厚板の識別は、厚板の出荷後に実行されてもよい。また、厚板の識別のために厚板に対して表示される情報は、厚板が需要家に対して出荷された後に付与されてもよい。
【0140】
<<第6の変形例>>
本実施形態では、ステップS1104において選択された照合対象が、管理テーブル500の現品表示の各欄(各項目)の情報である場合には、ステップS1106において、ステップS1104で選択された照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報のみを用いて照合が実行される場合を例示した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。
【0141】
例えば、以下のようにしてもよい。
照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報の数が所定数未満である場合、ステップS1104において、照合部413は、正確性が保証されている情報の数と、正確性が保証されていない情報との数との和が前記所定数になるように、照合対象の認識情報から正確性が保証されていない情報を抽出する。照合部413は、正確性が保証されている情報が保証されている情報と、当該抽出した正確性が保証されていない情報とを用いて照合を実行する。例えば、前記所定数として10が設定されているとする。また、照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報の数が6であるとする。この場合、正確性が保証されている情報の数と、正確性が保証されていない情報との数との和が10になるように、照合対象の認識情報から正確性が保証されていない情報が4つ抽出される。なお、照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報の数が10以上である場合、当該正確性が保証されている情報の全て(すなわち、10以上の情報)を用いて照合が行われる。
【0142】
また、以下のようにしてもよい。
管理テーブル500の現品表示の各欄(各項目)の情報については、同一の項目の情報(照合対象)を連続して2回選択してもよい。このようにする場合、照合部413は、照合対象のうち未選択の照合対象を1つ選択する。その後、ステップS1106において、照合部413は、当該照合対象の認識情報の全てを用いて照合を実行する。その後、ステップS1107およびステップS1108においてNOと判定された場合、ステップS1104において、照合部413は、前回のステップS1104で選択した照合対象と同一の照合対象を選択する。その後、ステップS1106において、照合部413は、当該照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報のみを用いて照合を実行する。
【0143】
以上のように、本実施形態は、照合部413が、照合対象の認識情報のうち、正確性が保証されている情報のみを用いて照合を実行する場合に限定されない。すなわち、照合部413は、照合対象の認識情報のうち、当該認識情報の一部の情報(本実施形態の例では、正確性が保証されている情報)のみを用いた照合を実行し得るようにしていればよい。
【0144】
<<第7の変形例>>
本実施形態では、管理テーブル500が識別装置400に記憶されている場合を例示した。しかしながら、管理テーブル500は識別装置400の外部にあってもよい。
【0145】
<<第8の変形例>>
本実施形態では、物品が厚板である場合を例示した。しかしながら、物品は、厚板に限定されない。例えば、物品は、厚板以外の製造物であってもよい。物品は、製造者等の管理者によって管理されている情報が表示されている製造物であってもよい。製造物は、例えば、スラブ、ビレット、薄板コイル、または鋼管であってもよい。また、製造物以外の物品であってもよい。物品は、例えば、コンテナであってもよい。
【0146】
<<その他の変形例>>
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体及び前記プログラム等のコンピュータプログラムプロダクトも本発明の実施形態として適用することができる。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。また、本発明の実施形態は、PLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用のハードウェアにより実現されてもよい。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0147】
<ハードウェア>
識別装置400のハードウェアの一例について説明する。図12において、識別装置400は、CPU1201、主記憶装置1202、補助記憶装置1203、通信回路1204、信号処理回路1205、画像処理回路1206、I/F回路1207、ユーザインターフェース1208、ディスプレイ1209、およびバス1210を有する。
【0148】
CPU1201は、識別装置400の全体を統括制御する。CPU1201は、主記憶装置1202をワークエリアとして用いて、補助記憶装置1203に記憶されているプログラムを実行する。主記憶装置1202は、データを一時的に格納する。補助記憶装置1203は、CPU1201によって実行されるプログラムの他、各種のデータを記憶する。
【0149】
通信回路1204は、識別装置400の外部との通信を行うための回路である。通信回路1204は、識別装置400の外部と無線通信を行っても有線通信を行ってもよい。
【0150】
信号処理回路1205は、通信回路1204で受信された信号や、CPU1201による制御に従って入力した信号に対し、各種の信号処理を行う。
画像処理回路1206は、CPU1201による制御に従って入力した信号に対し、各種の画像処理を行う。この画像処理が行われた信号は、例えば、ディスプレイ1209に出力される。
ユーザインターフェース1208は、オペレータが識別装置400に対して指示を行う部分である。ユーザインターフェース1208は、例えば、ボタン、スイッチ、およびダイヤル等を有する。また、ユーザインターフェース1208は、ディスプレイ1209を用いたグラフィカルユーザインターフェースを有していてもよい。
【0151】
ディスプレイ1209は、画像処理回路1206から出力された信号に基づく画像を表示する。I/F回路1207は、I/F回路1207に接続される装置との間でデータのやり取りを行う。図12では、I/F回路1207に接続される装置として、ユーザインターフェース1208およびディスプレイ1209を示す。しかしながら、I/F回路1207に接続される装置は、これらに限定されない。例えば、可搬型の記憶媒体がI/F回路1207に接続されてもよい。また、ユーザインターフェース1208の少なくとも一部およびディスプレイ1209は、識別装置400の外部にあってもよい。
出力部415は、例えば、通信回路1204および信号処理回路1205と、画像処理回路1206、I/F回路1207、およびディスプレイ1209との少なくとも何れか一方を用いることにより実現される。
【0152】
尚、CPU1201、主記憶装置1202、補助記憶装置1203、信号処理回路1205、画像処理回路1206、およびI/F回路1207は、バス1210に接続される。これらの構成要素間の通信は、バス1210を介して行われる。また、識別装置400のハードウェアは、前述した識別装置400の機能を実現することができれば、図12に示すものに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明は、例えば、物品を識別することに利用することができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12