(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】車両荷箱の補強構造
(51)【国際特許分類】
B62D 33/02 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
B62D33/02 S
(21)【出願番号】P 2022579073
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2022011361
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】青木 美香
(72)【発明者】
【氏名】黒木 崇史
(72)【発明者】
【氏名】古橋 美重
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-137426(JP,A)
【文献】実公昭54-17215(JP,Y2)
【文献】実公昭63-42697(JP,Y2)
【文献】特開2000-255461(JP,A)
【文献】実公昭62-4063(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 33/02-33/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両荷箱における車両前方の壁面を構成するヘッダーボードと、
前記ヘッダーボードに交差して配置されるサイドゲートと、
前記ヘッダーボードと、前記サイドゲートと、を連結する板状の固定部材と、
を備える車両荷箱の補強構造であって、
前記固定部材は、
前記固定部材の一方側に設けられ、前記ヘッダーボードの上部に固定される第1固定部分と、
前記固定部材の他方側に設けられ、前記ヘッダーボードよりも車両前方に位置する前記サイドゲートの所定箇所に固定される第2固定部分と、
を有する、
車両荷箱の補強構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記固定部材は、第1固定部分と第2固定部分とを接続し、車幅方向に向かうにつれて車両上下方向に傾斜する接続部を有する、
車両荷箱の補強構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記固定部材の前記第1固定部分と前記ヘッダーボードの前記上部とが固定される第1固定点と、前記固定部材の前記第2固定部分と前記サイドゲートの前記所定箇所とが固定される第2固定点とが、車両前後方向にオフセットしている、
車両荷箱の補強構造。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記ヘッダーボードの前記上部には、横断面形状が屈曲形状をなす第1補強部材が、車幅方向に沿って設けられ、
前記固定部材の前記第1固定部分は、前記第1補強部材に固定される、
車両荷箱の補強構造。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記サイドゲートの前記所定箇所には、第2補強部材が設けられ、
前記固定部材の前記第2固定部分は、前記第2補強部材に固定される、
車両荷箱の補強構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記サイドゲートには、前記ヘッダーボードよりも車両後方に、第3補強部材が設けられる、
車両荷箱の補強構造。
【請求項7】
請求項1~3の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記ヘッダーボードの前記上部には、横断面形状が屈曲形状をなす第1補強部材が、車幅方向に沿って設けられ、
前記固定部材の前記第1固定部分は、前記第1補強部材に固定され、
前記サイドゲートの前記所定箇所には、第2補強部材が設けられ、
前記固定部材の前記第2固定部分は、前記第2補強部材に固定され、
前記サイドゲートには、前記ヘッダーボードよりも車両後方に、第3補強部材が設けられ、
前記第2補強部材は、車幅方向内側に延びる突片を有し、
前記突片は、前記第1補強部材と前記第3補強部材とで挟み込まれている、
車両荷箱の補強構造。
【請求項8】
請求項7に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記第2補強部材の前記突片と前記第3補強部材とが固定される第3固定点は、車両上下方向において前記第1固定部分と前記第2固定部分との間に位置する、
車両荷箱の補強構造。
【請求項9】
請求項2に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記接続部には、前記固定部材の厚み方向への屈曲による稜線が形成されている、
車両荷箱の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両荷箱の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員が乗車するキャブ後方に箱型の車両荷箱を備える車両がある。この種の車両においては、車両荷箱の補強を図る技術が開示されている。例えば、特許文献1には、荷台の側壁の前縁に沿って該荷台の床よりも下方にまで延びて該側壁が結合されるデッキフロントピラーと、デッキフロントピラーのうち荷台の床よりも上側でキャビンと結合する上側結合部と、デッキフロントピラーのうち荷台の床よりも下側でキャビンと結合する下側結合部と、を備える車両用荷台結合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術においては、荷台の床に交差して上下に延びるデッキフロントピラーを利用して、荷台の側壁のキャビンへの結合剛性を向上させる、というものである。このように剛性向上のための結合部が上側及び下側の両方に設けられた構成では、重量が増大してしまう問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、重量の増大が回避でき且つ効果的な補強が可能な車両荷箱構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、例えば以下の構成を有する。
(1) 車両荷箱における車両前方の壁面を構成するヘッダーボードと、
前記ヘッダーボードに交差して配置されるサイドゲートと、
前記ヘッダーボードと、前記サイドゲートと、を連結する板状の固定部材と、
を備える車両荷箱の補強構造であって、
前記固定部材は、
前記固定部材の一方側に設けられ、前記ヘッダーボードの上部に固定される第1固定部分と、
前記固定部材の他方側に設けられ、前記ヘッダーボードよりも車両前方に位置する前記サイドゲートの所定箇所に固定される第2固定部分と、
を有する、
車両荷箱の補強構造。
(2) (1)に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記固定部材は、第1固定部分と第2固定部分とを接続し、車幅方向に向かうにつれて車両上下方向に傾斜する接続部を有する、
車両荷箱の補強構造。
(3) (1)又は(2)に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記固定部材の前記第1固定部分と前記ヘッダーボードの前記上部とが固定される第1固定点と、前記固定部材の前記第2固定部分と前記サイドゲートの前記所定箇所とが固定される第2固定点とが、車両前後方向にオフセットしている、
車両荷箱の補強構造。
(4) (1)~(3)の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記ヘッダーボードの前記上部には、横断面形状が屈曲形状をなす第1補強部材が、車幅方向に沿って設けられ、
前記固定部材の前記第1固定部分は、前記第1補強部材に固定される、
車両荷箱の補強構造。
(5) (1)~(4)の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記サイドゲートの前記所定箇所には、第2補強部材が設けられ、
前記固定部材の前記第2固定部分は、前記第2補強部材に固定される、
車両荷箱の補強構造。
(6) (1)~(5)の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記サイドゲートには、前記ヘッダーボードよりも車両後方に、第3補強部材が設けられる、
車両荷箱の補強構造。
(7) (1)~(3)の何れか一項に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記ヘッダーボードの前記上部には、横断面形状が屈曲形状をなす第1補強部材が、車幅方向に沿って設けられ、
前記固定部材の前記第1固定部分は、前記第1補強部材に固定され、
前記サイドゲートの前記所定箇所には、第2補強部材が設けられ、
前記固定部材の前記第2固定部分は、前記第2補強部材に固定され、
前記サイドゲートには、前記ヘッダーボードよりも車両後方に、第3補強部材が設けられ、
前記第2補強部材は、車幅方向内側に延びる突片を有し、
前記突片は、前記第1補強部材と前記第3補強部材とで挟み込まれている、
車両荷箱の補強構造。
(8) (7)に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記第2補強部材の前記突片と前記第3補強部材とが固定される第3固定点は、車両上下方向において前記第1固定部分と前記第2固定部分との間に位置する、
車両荷箱の補強構造。
(9) (2)に記載の車両荷箱の補強構造であって、
前記接続部には、前記固定部材の厚み方向への屈曲による稜線が形成されている、
車両荷箱の補強構造。
【発明の効果】
【0007】
本発明の荷箱構造車によれば、重量の増大が回避でき且つ効果的な補強が可能な車両荷箱構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の車両荷箱の補強構造が適用され得る、車両荷箱の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の車両荷箱の補強構造が適用され得る、車両荷箱の斜視図である。
【
図3】
図3は、ヘッダーボードとサイドゲートとの連結固定部分の周辺を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、ヘッダーボードとサイドゲートとの連結固定部分の周辺を、ヘッダーボード2を省略して示す斜視図である。
【
図6】
図6は、ヘッダーボードとサイドゲートとの連結固定部分の周辺を示す上面図である。
【
図8】
図8は、ヘッダーボードとサイドゲートとの連結固定部分の周辺を後方から見た図である。
【
図13】
図13は、連結固定部分を車幅方向から見て、一部破断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る車両荷箱の補強構造について、図面を参照して説明する。なお、各図には、車両の運転手(乗員)から見た方向である、車両前後方向、車両左右方向(車幅方向)、車両上下方向の向きが矢印にて記載されている。また、
図9~
図12に示すブラケットについては、車両に取付けられた状態の向きを表示する。また、本実施形態の車両荷箱の補強構造が適用される車両の種類は特に限定されず、例えば、ガソリン車、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)等に適用できる。
【0010】
図1及び
図2は、本発明の車両荷箱の補強構造が適用され得る、車両荷箱1の斜視図である。
図1及び
図2の車両荷箱1は、細部が異なるが、概要は同様の構成であるので同一の符号を付す。
【0011】
車両荷箱1は、車両のキャビン後方に配置される。車両荷箱1は、前方のヘッダーボード2と、左右の一対のサイドゲート3,3と、後方のテールゲート4と、下方のフロアパネル5と、を有する。
【0012】
ヘッダーボード2は、車両荷箱1における前方側の壁面を構成し、左右方向(車幅方向)に延びる。
一対のサイドゲート3,3は、ヘッダーボード2に交差して配置される。具体的には、一対のサイドゲート3,3は、ヘッダーボード2の左右両端部に接続され、主に車両後方に延びて、車両荷箱1の左右両側の壁面を構成する。それぞれのサイドゲート3の下端部には、ホイールアーチ3aが形成される。
テールゲート4は、一対のサイドゲート3,3の後方端部に接続され、左右方向に延びる。
フロアパネル5は、ヘッダーボード2と、一対のサイドゲート3,3と、テールゲート4と、で囲まれた空間の下方側を閉じる。
【0013】
このように、車両荷箱1は、ヘッダーボード2と、一対のサイドゲート3,3と、テールゲート4と、フロアパネル5と、によって構成された上面視矩形状の収容空間である。
【0014】
ヘッダーボード2の上部には、車幅方向に沿ってアッパーレール30が溶接等によって固定される。
図1の例では、アッパーレール30の上部に、ガードフレーム60が固定される。
【0015】
ヘッダーボード2、一対のサイドゲート3、及びテールゲート4は、フロアパネル5に立脚するように取り付けられている。なお、テールゲート4の下端部は、フロアパネル5に対して
図1のように回動可能に設けられており、荷物を車両荷箱1に出し入れし易いように構成されている。
【0016】
図2に示すように、テールゲート4が閉じられた状態で、車両荷箱1内に多くの荷物を積んだ場合、ヘッダーボード2、サイドゲート3、及びテールゲート4には、荷箱内側から荷箱外側に向うような外向きの力F1(車両荷箱1の中央から4辺に対して略直角に外側に向く力を想定)が加わる。この外向きの力F1によって、ヘッダーボード2の車幅方向両端部と、一対のサイドゲート3,3の車幅方向内側面と、の連結部分には、当該連結部分を開くように荷重が負荷される。
【0017】
また、例えば、一対のサイドゲート3,3間にロープを掛けて車幅方向に結束したり、またはヘッダーボード2とテールゲート4間にロープを掛けて前後方向に結束した場合には、荷箱外側から荷箱内側に向うような内向きの力F2が加わる。この内向きの力F2によって、ヘッダーボード2の車幅方向両端部と、一対のサイドゲート3,3の車幅方向内側面と、の連結部分には、当該連結部分を閉じるように荷重が負荷される。
【0018】
このように、ヘッダーボード2と一対のサイドゲート3,3との連結部分には、荷重が負荷されやすく、特に当該連結部分のうち上端部が弱部となりやすい。そこで、本実施形態の車両荷箱1においては、ヘッダーボード2と一対のサイドゲート3,3とが、これらとは別体の板状のブラケット10(固定部材)によって連結されて補強される。より具体的には、ヘッダーボード2の車幅方向両端部の上端部と一対のサイドゲート3,3とは、後述するブラケット10(
図3~
図8参照)を含む連結固定部分A,Aを介して連結されて補強されている。なお、
図1及び
図2にはブラケット10は不図示である。
【0019】
図3は、ヘッダーボード2とサイドゲート3との連結固定部分Aの周辺を示す斜視図である。
図4は、
図3の要部拡大図である。
図5は、ヘッダーボード2とサイドゲート3との連結固定部分Aの周辺を、ヘッダーボード2を省略して示す斜視図である。
図6は、ヘッダーボード2とサイドゲート3との連結固定部分Aの周辺を示す上面図である。
図7は、
図6の要部拡大図である。
図8は、ヘッダーボード2とサイドゲート3との連結固定部分Aの周辺を後方から見た図である。
【0020】
ヘッダーボード2と一対のサイドゲート3,3との左右の連結固定部分A,Aは、車幅方向において対称である。したがって、以下の説明では、右側の連結固定部分Aのみを図示して説明する。
【0021】
図3~
図8に示すように、連結固定部分Aにおいては、ヘッダーボード2とサイドゲート3とを連結する板状の固定部材としてのブラケット10が設けられている。ブラケット10の詳細については、後述する。
【0022】
ヘッダーボード2の上端部2a(上部)には、横断面形状が屈曲形状をなす第1補強部材としてのアッパーレール30が、車幅方向に沿って設けられる。アッパーレール30は、ヘッダーボード2に溶接等によって固定される。アッパーレール30は、ヘッダーボード2の前面に沿うように上下方向に延びる基部30aと、基部30aの上端部から前方に延びる延在部30bと、を備える。延在部30bの前端部は下方及び後方に屈曲したフック形状とされており、車両荷箱1に載置した荷物を固定するためのロープ等を固定可能である。このように、アッパーレール30は、概ね断面逆L字形状とされている。第1補強部材としてのアッパーレール30が設けられることで、アッパーレールがヘッダーボード2の上端部2aが補強される。
【0023】
また、サイドゲート3は、全体として車幅方向外側に膨出するように湾曲しており、ヘッダーボード2よりも車両前方に位置する前側部分3bと、ヘッダーボード2よりも車両後方に位置する後側部分3cと、を有する。サイドゲート3の所定箇所としての前側部分3bの車幅方向内側面には、第2補強部材としての前側リンフォース40が固定される。また、サイドゲート3には、ヘッダーボード2よりも車両後方に、第3補強部材としての後側リンフォース50が固定される。
【0024】
前側リンフォース40の後端部は、ブラケット10よりも車両後方に位置し、さらにアッパーレール30よりも僅かに車両後方に位置する。そして、前側リンフォース40の後端部の上端部には、車幅方向内側に延びる突片41が形成される。突片41は、車両前後方向に略垂直(車両上下方向及び車幅方向に略平行)に延びる平板状である。突片41は、ヘッダーボード2と車両前後において略同一位置に配置され、且つ、ヘッダーボード2よりも上方に配置される。突片41の前面は、アッパーレール30の基部30aの後面に当接する。
【0025】
後側リンフォース50の前端部の上端部には、車幅方向内側に延びる突壁51が形成される。突壁51は、車両前後方向に略垂直(車両上下方向及び車幅方向に略平行)に延びる平板状である。突壁51の前面は、突片41の後面と当接する。
【0026】
このように、前側リンフォース40の突片41は、アッパーレール30の基部30aの後面と、後側リンフォース50の突壁51の前面と、で前後方向に挟み込まれている。ここで、突片41には、突片41を前後方向に貫通する突片孔41aが形成されており、突壁51には、突壁51を前後方向に貫通する突壁孔51aが設けられている。そして、アッパーレール30の基部30aと突片孔41a及び突壁孔51aを合わせるようにした状態で、突片孔41a及び突壁孔51aの部分が溶接されることで、アッパーレール30と前側リンフォース40と後側リンフォース50とが固定される。このように、アッパーレール30と前側リンフォース40と後側リンフォース50とが固定される点を、第3固定点P3と呼ぶ。なお、第3固定点P3における固定方法は、溶接に限らず、ボルト固定等を採用してもよい。
【0027】
図9は、ブラケット10の斜視図である。
図10は、ブラケット10を車両後方から見た図である。
図11は、ブラケット10を車幅方向から見た図である。
図12は、ブラケット10を車両上方から見た図である。
【0028】
図3~
図8並びに
図9~
図12に示すように、ブラケット10は、ブラケット10の一方側に設けられ、ヘッダーボード2の上部に固定される第1固定部分11と、ブラケット10の他方側に設けられ、ヘッダーボード2よりも車両前方に位置するサイドゲート3の所定箇所に固定される第2固定部分12と、第1固定部分11と第2固定部分12とを接続する接続部13と、を有する板状の固定部材である。
【0029】
第1固定部分11は、取付状態において、ブラケット10の上端側に位置し、上下方向に略垂直(車幅方向及び前後方向に略平行)に延びる。第1固定部分11の略中央には、上下方向に延びる貫通孔11aが形成される。第1固定部分11の上面は、ヘッダーボード2の上部、より具体的にはアッパーレール30の延在部30bの下面に当接する。そして、第1固定部分11は、アッパーレール30の延在部30bの下面に対して貫通孔11aを介して溶接等により固定される。このように、ブラケット10の第1固定部分11と、アッパーレール30の延在部30b(ヘッダーボード2の上部)と、が固定される点を、第1固定点P1と呼ぶ。なお、第1固定点P1における固定方法は、溶接に限らず、ボルト固定等を採用してもよい。
【0030】
第2固定部分12は、取付状態において、ブラケット10の下端側に位置し、車幅方向に略垂直(上下方向及び前後方向に略平行)に延びる。厳密には図示の第2固定部分12は、下方に向かうにしたがって、車幅方向外側に僅かに傾斜しており、応力分散効果が高められている。第2固定部分12の略中央には、車幅方向に延びる貫通孔12aが形成される。第2固定部分12の車幅方向外側面は、ヘッダーボード2よりも前方に位置するサイドゲート3の所定箇所、より具体的にはサイドゲート3の上記所定箇所に設けられた前側リンフォース40の車幅方向内側面に当接する。そして、第2固定部分12は、前側リンフォース40の車幅方向内側面に対して貫通孔12aを介して溶接等によって固定される。このように、ブラケット10の第2固定部分12と、第2補強部材としての前側リンフォース40と、が固定される点を、第2固定点P2と呼ぶ。なお、第2固定点P2における固定方法は、溶接に限らず、ボルト固定等を採用してもよい。
【0031】
接続部13は、第1固定部分11と第2固定部分12との間において、車幅方向に向かうにつれて、車両上下方向に傾斜する。本実施形態では、接続部13は、車幅方向外側に向かうにつれて、下方に傾斜する。
図11に示すように、接続部13の前後方向幅は、下方に向かうしたがって大きくなるように形成される。より詳細には、接続部13は、下方に向かうにしたがって主に前方に膨出する。
【0032】
したがって、接続部13の下端と接続する第2固定部分12は、全体として、第1固定部分11よりも前方に膨出する。これにより、第2固定部分12の略中央に設けられた貫通孔12a及び貫通孔12aが構成する第2固定点P2は、第1固定部分11の略中央に設けられた貫通孔11a及び貫通孔11aが構成する第1固定点P1よりも下方且つ前方に位置する。すなわち、
図11に示すように、第1固定点P1と、第2固定点P2とは、前後方向に距離L1だけオフセットし、上下方向に距離L2だけオフセットする。
【0033】
なお、
図8等に示すように、アッパーレール30と前側リンフォース40と後側リンフォース50とが固定される点である第3固定点P3は、車両上下方向において、ブラケット10の第1固定部分11と第2固定部分12との間に位置する。これにより、第3固定点P3は、車両上下方向において、第1固定点P1と第2固定点P2との間に位置する。
【0034】
接続部13は、上方に配置された第1接続部14と、下方に配置された第2接続部15と、を含む。
【0035】
第1接続部14は、第1固定部分11と接続する。第1接続部14は、第1固定部分11から車幅方向外側に向かうにしたがって下方に傾斜する、略平板状である。
【0036】
第2接続部15は、第1接続部14及び第2固定部分12を互いに接続する。第2接続部15は、第1接続部14と同様に車幅方向外側に向かうにしたがって下方に傾斜するが、第2接続部15には、第1接続部14とは異なり、ブラケット10の厚み方向への屈曲による複数の稜線71~78が形成されている。
【0037】
すなわち、第2接続部15は、複数の稜線71~78によって区画された、概ね同じ方向に傾斜した複数の傾斜部21~25を備える。複数の傾斜部21~25は、傾斜角度、傾斜向き、形状等が互いに異なった多面構造であり、第1傾斜部21、第2傾斜部22、第3傾斜部23、第4傾斜部24、及び第5傾斜部25を含む。
【0038】
第1傾斜部21は、第2接続部15の上部に位置し、第1接続部14の下端と接続する。
第2傾斜部22は、第2接続部15の中央に位置する。
第3傾斜部23は、第2傾斜部22の前方に位置する。
第4傾斜部24は、第2傾斜部22の後方に位置する。
第5傾斜部25は、第2接続部15の下部に位置し、第2固定部分12の上端と接続する。
【0039】
第1稜線71は、車両前後方向に略平行に延び、第1傾斜部21と第2傾斜部22とを区画する。
第2稜線72は、第1稜線71と接続し、前方に向かうにしたがって上方且つ車幅方向内側に延びる。第2稜線72は、第1傾斜部21と第3傾斜部23とを区画する。
第3稜線73は、第1稜線71と接続し、後方に向かうにしたがって上方且つ車幅方向内側に延びる。第3稜線73は、第1傾斜部21と第4傾斜部24とを区画する。
第4稜線74は、第1稜線71及び第2稜線72と接続し、下方に向かうにしたがって車幅方向外側に延びる。第4稜線74は、第2傾斜部22と第3傾斜部23とを区画する。
第5稜線75は、第1稜線71及び第3稜線73と接続し、下方に向かうにしたがって車幅方向外側に延びる。第5稜線75は、第4稜線74と略平行である。第5稜線75は、第2傾斜部22と第4傾斜部24とを区画する。
第6稜線76は、車両前後方向に略平行に延び、第2傾斜部22と第5傾斜部25とを区画する。第6稜線76は、第1稜線71と略平行である。
第7稜線77は、第4稜線74及び第6稜線76と接続し、前方に向かうにしたがって下方且つ車幅方向外側に延びる。第7稜線77は、第3傾斜部23と第5傾斜部25とを区画する。
第8稜線78は、第5稜線75及び第6稜線76と接続し、後方に向かうにしたがって下方且つ車幅方向外側に延びる。第8稜線78は、第4傾斜部24と第5傾斜部25とを区画する。
【0040】
したがって、第2接続部15には、中央に側面視略矩形の第2傾斜部22が配置され、第2傾斜部22の周囲に側面視略台形の第1,3,4,5傾斜部21,23,24,25が配置される。そして、第1~第5傾斜部21~25のうち中央の第2傾斜部22が、ブラケット10の厚み方向(車幅方向外側)に最も突出した形状となる。このように、接続部13に複数の稜線71~78からなる屈曲構造が設けられているので、ブラケット10の剛性を高めることができる。
【0041】
ここで、
図2を参照して上述したように、車両荷箱1内に多くの荷物を積んだ場合、ヘッダーボード2、一対のサイドゲート3,3及びテールゲート4には、荷箱内側から荷箱外側に向かう外向きの力F1が加わる。この外向きの力F1によって、ヘッダーボード2は車両前方に向かって押され、サイドゲート3は車幅方向外側に押される。この場合、ヘッダーボード2の車幅方向両端部と、一対のサイドゲート3,3の車幅方向内側面と、の連結部分には、当該連結部分を開くような力が加わる。
【0042】
同様に
図2を参照して上述したように、ヘッダーボード2とテールゲート4間にロープを掛けて前後方向に結束した場合には、荷箱外側から荷箱内側に向うような内向きの力F2が加わる。この内向きの力F2によって、ヘッダーボード2の車幅方向両端部と、一対のサイドゲート3,3の車幅方向内側面と、の連結部分には、当該連結部分を閉じるような力が加わる。
図13は、連結固定部分Aを車幅方向から見て、一部破断して示す側面図である。上述のような内向きの力F2が加わる際には、
図13に矢印で示すように、特にロープのフック等が掛けられるアッパーレール30の延在部30bに、浮き上がるような変形を生じさせる力F3が作用する
【0043】
そこで、本実施形態では、ヘッダーボード2とサイドゲート3とを連結するブラケット10を設け、上記連結部分を補強している。
特に、本実施形態のブラケット10は、ブラケット10の一方側に設けられ、ヘッダーボード2の上部(アッパーレール30)に固定される第1固定部分11と、ブラケット10の他方側に設けられ、ヘッダーボード2よりも車両前方に位置するサイドゲート3の所定箇所(前側リンフォース40)に固定される第2固定部分12と、を有する。すなわち、ブラケット10の第1固定部分11と第2固定部分12とが車両前後方向にオフセットしている。したがって、第1固定部分11及び第2固定部分12において、外力の一部を剪断力として受けることができ、ブラケット10への負荷を軽減することができる。
また、第2固定部分12がヘッダーボード2よりも車両前方に位置するので、ブラケット10は車両荷箱1の収容領域外に位置され、車両荷箱1の収容容積を大きくできる。
また、ブラケット10が板状であることで、軽量化ができる。
【0044】
さらに、ブラケット10は、第1固定部分11と第2固定部分12とを接続し、車幅方向に向かうにつれて車両上下方向に傾斜する接続部13を有する。したがって、ブラケット10への負荷を分散させることができる。なお、
図8に破線Dで示したように、仮にブラケット10が傾斜する接続部13を備えず、第1固定部分11と第2固定部分12とが垂直に接続する形状とした場合、第1固定部分11と第2固定部分12とを連結する角部に負荷が集中してしまう。この場合、ブラケット10自体の強度を増す必要が生じ、板厚の増加やビード形状を追加する等によって重量アップやコストアップの要因となってしまうので好ましくない。
また、接続部13で接続された第1固定部分11と第2固定部分12は、車両前後方向のオフセットに加え、車両上下方向及び車幅方向にもオフセットするので、第1固定部分11(第1固定点P1)と第2固定部分12(第2固定点P2)との位置関係が三次元となる。したがって、第1固定部分11(第1固定点P1)と第2固定部分12(第2固定点P2)に生じる応力は、前後方向、上下方向、車幅方向に分散し易くなる。この結果、ブラケット10の応力分散の機能がより高まり、変形防止効果を高めることができる。
【0045】
ブラケット10の第1固定部分11とヘッダーボード2の上部(アッパーレール30)とが固定される第1固定点P1と、ブラケット10の第2固定部分12とサイドゲート3の所定箇所(前側リンフォース40)とが固定される第2固定点P2とが、車両前後方向にオフセットしている。したがって、外力を効率よく受けることができる。
特に、
図13で示したように、アッパーレール30の延在部30bに浮き上がるような変形を生じさせる力F3が作用する場合に、ブラケット10への負荷を軽減することができる。仮に、第1固定点P1と第2固定点P2とが、車両前後方向に同一位置である場合、第1固定点P1と第2固定点P2とを結んだ線と、車両後方に向かう力F3と、が垂直になってしまい、効率良く負荷を受けることが困難である。
【0046】
ヘッダーボード2の上部には、横断面形状が屈曲形状をなすアッパーレール30(第1補強部材)が、車幅方向に沿って設けられ、ブラケット10の第1固定部分11は、アッパーレール30に固定される。したがって、弱部となりやすいヘッダーボード2の上部を、ブラケット10に加えてアッパーレール30によって補強することができる。
【0047】
サイドゲート3の所定箇所には、前側リンフォース40(第2補強部材)が設けられ、ブラケット10の第2固定部分12は、前側リンフォース40に固定される。したがって、弱部となりやすいヘッダーボード2の所定箇所を、ブラケット10に加えて前側リンフォース40によって補強することができる
【0048】
サイドゲート3には、ヘッダーボード2よりも車両後方に、後側リンフォース50(第3補強部材)が設けられる。したがって、サイドゲート3を更に補強することができる。
【0049】
前側リンフォース40は、車幅方向内側に延びる突片41を有し、突片41は、アッパーレール30と後側リンフォース50とで挟み込まれている、したがって、前側リンフォース40は、ブラケット10によるアッパーレール30への固定に加え、挟み込まれることによってアッパーレール30及び後側リンフォース50に固定されるので、ブラケット10への負荷を分散することができる。
【0050】
前側リンフォース40の突片41と後側リンフォース50とが固定される第3固定点P3は、車両上下方向においてブラケット10の第1固定部分11(第1固定点P1)と第2固定部分12(第2固定点P2)との間に位置する。したがって、三点固定となって負荷を分散できるとともに、3つの固定点P1,P2,P3がコンパクトに配置される。そして、この3つの固定点P1,P2,P3は、ブラケット10と三つの補強部材(アッパーレール30、前側リンフォース40、後側リンフォース50)とで直接連結されているので、連結固定部分A全体としての剛性を高めることができる。
【0051】
上述の本実施形態の補強構造においては、3つの固定点P1,P2,P3は、前後方向、上下方向、及び車幅方向にオフセットした立体的配置となっているので、あらゆる方向の外力に対応して分散機能を高め、変形抑制の効果を向上できる。
【0052】
ブラケット10の接続部13には、ブラケット10の厚み方向への屈曲による稜線71~78が形成されている。これにより、ブラケット10の剛性が向上する。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその技術思想の範囲で適宜変更することができる。例えば、上記実施形態においては、ブラケット10の接続部13に第1~第5傾斜部21~25を設けた構造としたが、傾斜部の数については、これに何ら制限されるものではなく、また、各傾斜部の傾斜角度、形状等についても図示のものに制限されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 車両荷箱
2 ヘッダーボード
2a 上端部
3 サイドゲート
3a ホイールアーチ
3b 前側部分
4 テールゲート
5 フロアパネル
10 ブラケット(固定部材)
11 第1固定部分
11a 貫通孔
12 第2固定部分
12a 貫通孔
13 接続部
14 第1接続部
15 第2接続部
21 第1傾斜部
22 第2傾斜部
23 第3傾斜部
24 第4傾斜部
25 第5傾斜部
30 アッパーレール(第1補強部材)
30a 基部
30b 延在部
40 前側リンフォース(第2補強部材)
41 突片
41a 突片孔
50 後側リンフォース(第3補強部材)
51 突壁
51a 突壁孔
60 ガードフレーム
71 第1稜線
72 第2稜線
73 第3稜線
74 第4稜線
75 第5稜線
76 第6稜線
77 第7稜線
78 第8稜線
A 連結固定部分
F1 外向きの力
F2 内向きの力
P1 第1固定点
P2 第2固定点
P3 第3固定点
【要約】
車両荷箱の補強構造は、車両荷箱における車両前方側の壁面を構成するヘッダーボードと、ヘッダーボードに交差して配置されるサイドゲートと、ヘッダーボードと、サイドゲートと、を連結する板状の固定部材と、を備える。固定部材は、固定部材の一方側に設けられ、ヘッダーボードの上部に固定される第1固定部分と、固定部材の他方側に設けられ、ヘッダーボードよりも車両前方に位置するサイドゲートの所定箇所に固定される第2固定部分と、を有する。