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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/22 20060101AFI20230301BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B60T13/22
B60T17/22 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019234409
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102392
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真佑
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-172670(JP,U)
【文献】実開昭53-141606(JP,U)
【文献】特開2006-007849(JP,A)
【文献】特開2018-172027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12- 8/1769
B60T 8/32- 8/96
B60T 13/00-13/74
B60T 15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ブレーキシリンダの伸縮量の制御によりブレーキを作用させるブレーキ制御機構を備え、
前記ブレーキ制御機構は、前記油圧ブレーキシリンダと連結された油路に、エンジン停止時に逆止弁として作用し、エンジン駆動時にパイロット圧を得て連通するパイロットチェック弁が設けられ、
エンジンの停止時において、前記パイロットチェック弁によって前記油圧ブレーキシリンダと連結された油路を閉回路とするよう構成され、さらに、
前記ブレーキ制御機構は、エンジンの駆動時に蓄圧するアキュムレータと、エンジンの駆動時に遮断状態となり、エンジンの停止時に連通するパイロット式方向切換弁とを備え、
エンジンの停止時、前記閉回路内において、前記アキュムレータは、前記パイロット式方向切換弁を介して前記油圧ブレーキシリンダに圧油を供給するよう構成されたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記油圧ブレーキシリンダは、左ブレーキを作動させる左ブレーキシリンダと、右ブレーキを作動させる右ブレーキシリンダによって構成され、
前記パイロット式方向切換弁の入口側に前記アキュムレータを連結し、出口側に、左ブレーキシリンダ及び右ブレーキシリンダをそれぞれ連結したことを特徴とする請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業を行う作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、農作業を行う作業機を備えるトラクタ等の作業車両において、ブレーキペダルの操作によりブレーキを作動させて車輪を制動するブレーキ機構を備え、さらに、このブレーキ機構を、ストローク量が制御可能な油圧ブレーキシリンダにより、ブレーキペダルの操作と独立してブレーキを作動可能に構成した作業車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、測位衛星を利用して圃場を自律走行する所謂ロボットトラクタと呼ばれる作業車両の利用が増加しており、この自律走行可能な作業車両においては、自律走行時において、上記ブレーキ機構の油圧ブレーキシリンダのストローク量を制御することにより、自動で車輪の制動を行うよう構成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-172027号公報
【文献】特開2018-191620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の作業車両によれば、油圧ブレーキシリンダのストロークによりブレーキを作動させて停車した場合、経時的に発生するブレーキ油圧の内部リークに起因して、車輪への制動力を長時間持続することができず、その結果、作業車両が意図せず停車位置から移動してしまうおそれがあった。
【0006】
特に、自律走行可能に構成された作業車両においては、無人状態でエンジンを自動停止した際、その停車位置を維持するために、車輪への十分な制動力を長時間にわたって持続できることが作業効率や安全性の面からも望ましく、この問題はより重要である。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題を解消し、停車時に、長時間にわたって良好に車輪を制動できる作業車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
油圧ブレーキシリンダの伸縮量の制御によりブレーキを作用させるブレーキ制御機構を備え、前記ブレーキ制御機構は、前記油圧ブレーキシリンダと連結された油路に、エンジン停止時に逆止弁として作用し、エンジン駆動時にパイロット圧を得て連通するパイロットチェック弁が設けられ、
エンジンの停止時において、前記パイロットチェック弁によって前記油圧ブレーキシリンダと連結された油路を閉回路とすることを特徴とする作業車両を提供する。
【0009】
さらに、請求項の発明は、上記構成に加え、
前記ブレーキ制御機構は、エンジンの駆動時に蓄圧するアキュムレータと、エンジンの駆動時に遮断状態となり、エンジンの停止時に連通するパイロット式方向切換弁とを備え、
エンジンの停止時、前記閉回路内において、前記アキュムレータは、前記パイロット式方向切換弁を介して前記油圧ブレーキシリンダに圧油を供給するよう構成されたことを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の作業車両において、
前記油圧ブレーキシリンダは、左ブレーキを作動させる左ブレーキシリンダと、右ブレーキを作動させる右ブレーキシリンダによって構成され、
前記パイロット式方向切換弁の入口側に前記アキュムレータを連結し、出口側に、左ブレーキシリンダ及び右ブレーキシリンダをそれぞれ連結したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンの停止時において、パイロットチェック弁によって油圧ブレーキシリンダと連結された油路を閉回路とすることによって、停車時に、エンジンが停止した状態においても、長時間にわたって良好に車輪を制動できる。
【0012】
加えて、エンジン停止時において、アキュムレータが、閉回路内で、パイロット式方向切換弁を介して油圧ブレーキシリンダに圧油を供給するため、さらに長時間にわたって良好に車輪を制動できる。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、請求項に記載の発明の効果に加え、パイロット式方向切換弁の入口側に前記アキュムレータを連結し、出口側に、左ブレーキシリンダ及び右ブレーキシリンダをそれぞれ連結したことで、1つのアキュムレータで、2つのブレーキシリンダに圧油を供給できるため、効率よく圧油を供給できるとともに製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施形態に係る作業車両の左側面図である。
図2図2は、図1の作業車両の操作部の説明図である。
図3図3は、図1の作業車両の制御装置の構成を示すブロック図である。
図4図4(A)は、図1の作業車両の制動装置の概略平面図であり、図4(B)は、図1の作業車両の制動装置の概略右側面図である。
図5図5は、ブレーキ制御機構BLの油圧回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、作業車両Aの前進方向を前とし、その逆方向を後とし、前方を向いて右方を右、左方を左とする。
【0016】
<1.作業車両の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る作業車両Aの左側面図である。
作業車両Aは、自律走行手段を備えた走行車体a1の後部に、農作業を行う作業機WMが装着された、所謂ロボットトラクタの構成を有するものである。
【0017】
図1に示されるように、走行車体a1は、ボンネットa11内に、駆動源となるエンジンEN及び燃料タンク(図示せず)が配設され、このエンジンENからの動力が、ミッションケースa12の変速装置TRにより変速され、前輪a13及び後輪a14にそれぞれ伝達されて走行する。
【0018】
ボンネットa11後部には、作業者が乗車可能なキャビンa15が配設されている。
キャビンa15は、室内の後部に操縦席a16が設けられており、キャビンa15の底部には、作業車両Aの車体の傾斜を検知する傾斜センサs1が配置されている。
【0019】
図2は、図1の作業車両の操作部の説明図である。
この操縦席a16正面のダッシュボード上には、図2に示されるように、ステアリングハンドルa17、メインキーa18、前後進レバーa19、変速レバーa20等の操作部材と車速や燃料残量等を表示するメータパネルMPと、エンジンENの回転数の設定値を増減させるための回転数増減スイッチやブレーキの圧力を調整するためのブレーキ調整ダイヤル等を備えた操作パネルSPが配設されている。また、ステアリングハンドルa17の下方には、クラッチペダルp1、左ブレーキペダルp2及び右ブレーキペダルp3の3つの操作ペダルが配置されている。
【0020】
ステアリングハンドルa17を回動操作すると、操舵装置(図示せず)を介し、その回動方向及び操作量に応じて、前輪a13が回動されるよう構成されており、これにより、作業車両Aの進行方向の操舵が可能となっている。図示しないが、このステアリングハンドルa17の回動基部には、ステアリングハンドルa17の操舵角(回転角度)を検出可能な操舵角検出手段が設けられている。この操舵角検出手段は、例えば、ロータリエンコーダ等の角度センサによって構成される。
【0021】
また、ステアリングハンドルa17の回転軸(ステアリングシャフト)には、ステアリングハンドルa17を回転制御して自動操作を可能とする操舵アクチュエータAC(図示せず)が設けられている。これにより、作業車両Aは、ステアリングハンドルa17の操舵角を判断し、操舵アクチュエータによって、ステアリングハンドルa17を回転制御することで、作業車両Aの自律走行時における進行方向の制御が可能となっている。
【0022】
また、図示しないが、ミッションケースa12内には、PTOクラッチやPTO変速装置や制動装置が収容され、PTO軸への動力の伝達を制御するように構成されている。これにより、作業車両Aは、作業機WMの駆動制御が可能となっている。
【0023】
作業機WMは、走行車体a1の後部と連結されており、PTO軸を介して、エンジンENから動力の伝達を受けて駆動し、圃場に対して耕耘等の農作業を行う。なお、本実施形態においては、この作業機WMとして、圃場を耕耘する耕耘機が装着されているが、これに限られず、走行車体a1には、施肥機、草刈機、播種機等の種々のものを選択して装着可能となっている。
【0024】
キャビンa15の上面には、作業車両Aの現在位置を算出するGPS装置ANが設けられている。このGPS装置ANは、測位アンテナを用いて受信したGPS衛星からの電波信号を基に走行車両Aの現在位置を示す位置情報を算出する装置であり、算出した位置情報を後述の通信ユニットCDに出力するよう構成されている。
【0025】
<2.作業車両の制御装置>
図3は、図1の作業車両Aの制御装置Cの構成を示すブロック図である。制御装置Cは、作業者の操舵による走行及び自律走行、自律走行時の農作業に係る作業機WMの動作等を制御する。
【0026】
制御装置Cは、図2に示されるように、複数のECU(Electronic Control Unit)を含んで構成されており、それぞれのECUは、演算処理を行うCPUと、演算処理に必要な情報を読み書き可能なメモリとを備えて構成され、メモリに記憶された各種制御プログラムに従ってCPUが動作することにより、各種の機能が実現される。
【0027】
詳細には、制御装置Cは、作業車両Aの走行等を制御する車両ECU(C1)、エンジンENを制御するエンジンECU(C2)、作業機WMの駆動や停止等の動作を制御する作業機ECU(C3)と、インターネット又は公衆回線網等の外部ネットワークに接続して情報端末IAと通信可能とする通信ユニットCDを備え、これらは通信バスBAを介して相互に各種情報を送受可能に構成されており、さらに、通信バスBAを介して、操作パネルSPの入力情報を取得し、メータパネルMPに各種情報を出力可能となっている。
【0028】
エンジンECU(C2)は、車両ECU(C1)からの制御指令に基づき、スタータモータなどを作動させてエンジンENを始動させ、あるいは駆動中のエンジンENを停止させ、また、エンジンENの駆動中は、エンジン駆動用の制御プログラムなどに基づいてエンジンENの出力回転数を制御する。エンジンECU(C2)の入力側には、エンジンENの回転数を検出するエンジン回転センサs2が接続されている。
【0029】
通信ユニットCDは、無線通信が可能な通信機能を備え、これにより、GPS装置から位置情報を取得可能となっており、また、インターネット又は公衆回線網等の外部ネットワークに接続して情報端末Bと通信可能となっている。
【0030】
作業機ECU(C3)は、作業機WMと接続され、車両ECU(C1)からの制御指令に基づいて、作業機WMの駆動や停止等の動作を制御する。
【0031】
車両ECU(C1)は、エンジンECU(C2)、作業機ECU(C1)及びブレーキ系統に制御指令を送り、これにより、作業車両Aの自律走行を含む各種走行や作業機WMによる農作業に係る制御を行う。
【0032】
車両ECU(C1)の入力側には、左ブレーキペダルp2及び右ブレーキペダルp3の 各々の踏込量を検出するブレーキペダルスイッチs3と、車速を検出する車速センサs4と、右ブレーキのブレーキ圧を検出する右ブレーキ圧力センサs5と、左ブレーキのブレーキ圧を検出する左ブレーキ圧力センサs6と、作業車両Aの機体前後方向の傾斜(ピッチ)、機体左右方向の傾斜(ロール)及び旋回(ヨー)の角速度を検出する加速度センサ
s7と、作業車両Aの車体の水平に対する傾斜角を検出する傾斜センサs1が電気的に接続されている。
【0033】
車両ECU(C1)の出力側には、油圧回路を備え、左右のブレーキシリンダBS,BSに供給する圧油を制御するブレーキ制御機構BLが接続されている。
【0034】
このブレーキ制御機構BLは、左ブレーキソレノイドb1と、右ブレーキソレノイドb2とを有する電磁方向切換弁である左右ブレーキ切換弁b3と、ブレーキ昇圧ソレノイドb4を有する比例弁b5を備えており、左ブレーキソレノイドb1、右ブレーキソレノイドb2、ブレーキ昇圧ソレノイドb4は、それぞれ、車両ECU(C1)からの制御信号に応じて作動する。
【0035】
この左ブレーキソレノイドb1及び右ブレーキソレノイドb2の作動により、左右ブレーキ切換弁b3によって、左右のブレーキシリンダBS(左ブレーキシリンダBS1,右ブレーキシリンダBS2)に供給される圧油がそれぞれ制御され、左右のブレーキBK(左ブレーキBK1,右ブレーキBK2)をそれぞれ独立に作動させることが可能となっている。また、ブレーキ昇圧ソレノイドb4の作動により、比例弁b5によって左右のブレーキシリンダBSに供給される圧油の量及び圧力が制御される。
【0036】
なお、作業車両Aの自律走行時における後輪a14の制動については、これらの左ブレーキソレノイドb1、右ブレーキソレノイドb2及びブレーキ昇圧ソレノイドb4の制御によって、後述する制動装置D中のブレーキシリンダBSの伸縮量(ストローク量)が制御されることにより行われる。
【0037】
<3.制動装置>
図4(A)は、図1の作業車両の制動装置Dの概略平面図であり、図4(B)は、図1の作業車両Aの制動装置の概略右側面図である。
制動装置(ブレーキ装置)Dは、ミッションケースa12の左右両側に、左ブレーキ機構d1と右ブレーキ機構d2がそれぞれ設けられている。なお、左右ブレーキ機構d1,d2は、左右共通の構成であるから、以下においては、主に左ブレーキ機構d1について説明を行い、右ブレーキ機構d2については詳細な説明を省略する。
【0038】
左ブレーキ機構d1は、左ブレーキペダルp2と、左ブレーキペダルp2の踏み込み操作と連動して上下動する上下長手のリンクロッドd11と、このリンクロッドd11の下端と接続された前後長手の第1ブレーキリンクd12とを有し、この第1ブレーキリンクd12の後端は、ミッションケースa12の側方に、第1回動軸d13を中心として回動可能に支持されている。
【0039】
第1回動軸d13には、第1ブレーキリンクd12とともに上下長手の第2ブレーキリンクd14の上端が回動可能に支持されており、この第2ブレーキリンクd14は、第1ブレーキリンク46の回動と連動して、第1ブレーキリンクd12の回動方向と同一方向に回動する構成となっている。この第2ブレーキリンクd14の下端には、前後長手のブレーキ作動ロッドd15の前端が、回動自在に連結されている。
【0040】
ブレーキ作動ロッドd15の後端には、油圧により伸縮するブレーキシリンダBS(BS1)が接続され、さらに、このブレーキシリンダBS(BS1)の後端には、上下長手のブレーキ作動リンクd16の上端が回動自在に連結されている。また、ブレーキ作動リンクd16の下端は、第2回動軸d17を中心として回動可能にミッションケース23の側方に支持されている。
【0041】
このブレーキ作動リンク51の上端が前方に引き操作されると、ブレーキ作動リンクd16が図4(B)の反時計回り(制動方向)に回動し、このブレーキ作動リンクd16の回動量に応じて第2回動軸d17も回動する。この第2回動軸d17の回動量に応じて、左ブレーキBK1に内蔵されているブレーキパッド(図示せず)が作用して後輪a14を制動する。なお、第2回動軸d17の回動量に比例するブレーキ圧で後輪a14が制動されるよう構成されている。
【0042】
このように構成された左ブレーキ機構d1は、左ブレーキペダルp2が踏み込まれると、上下長手のリンクロッドd11が引き上げられて第1ブレーキリンクd12の前端が上方に移動し、これと連動して、第2ブレーキリンクd14が図4(B)中の時計回りに回動し、ブレーキ作動ロッドd15が前方に引き操作される。すると、ブレーキ作動リンクd16の上端も前方に引き操作され、これにより、ブレーキ作動リンクd16が図4(B)中の反時計回りに回動して第2回転軸d17が制動側に回動し、左ブレーキBK1により左側の後輪a14が制動される。右ブレーキ機構d2についても、右ブレーキペダルp3が踏み込まれると、同様の構成により、右ブレーキBK2により右側の後輪a14が制動される。
【0043】
なお、左右のブレーキペダルスイッチs3,s3は、第1回動軸d13の回動量を検出することにより、左右のブレーキペダルp2,p3の踏込量をそれぞれ検出するよう構成されている。また、左右のブレーキ圧力センサs5,s6は、第2回転軸d17の回動量を検出することによって、左ブレーキBK1及び右ブレーキBK2のブレーキ圧をそれぞれ検出するよう構成されている。
【0044】
また、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)には、ミッションケースa12の左側に支持された油圧制御機構BLが配管d18,d19を介して接続されている。この油圧制御機構BLの油圧の制御によって、左右のブレーキシリンダBSの伸縮量(ストローク量)が制御されるよう構成されている。これにより、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)は、それぞれが前後方向に短縮すると、左右それぞれのブレーキ作動リンクd16,d16の上端が前方に引き操作され、左右の各ブレーキ作動リンクd16,d16をそれぞれ制動方向に回動して、左右の後輪a14,a14をそれぞれ制動することが可能となっている。
【0045】
一方で、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)は、それぞれが前後方向に伸長すると、左右それぞれのブレーキ作動リンクd16,d16の上端が後方に押し操作され、これにより、左右の各ブレーキ作動リンクd16,d16をそれぞれ制動方向と反対方向に回動して、左右の後輪a14,a14の制動をそれぞれ解除することが可能となっている。このようにして、作業車両Aの自律走行時においては、ブレーキシリンダBS(BS1,BS2)の伸縮制御によって、左右のブレーキペダルp2,p3の操作を要することなく、左右の後輪a14,a14の制動がそれぞれ可能となっている。
【0046】
<4.ブレーキ制御機構>
【0047】
図5は、ブレーキ制御機構BLの油圧回路を示す回路図である。
このブレーキ制御機構BLは、車両ECU(C1)の制御信号に基づき、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)のピストン側室bs1,bs2への作動油の供給、及び、ピストン側室bs1,bs1からの作動油の排出を制御し、これにより、ブレーキシリンダBS(BS1,BS2)の伸縮を制御する油圧制御ユニットである。
【0048】
ブレーキ制御機構BLは、エンジンENにより駆動される油圧ポンプPと、油圧ポンプPの吐出油を受けてブレーキシリンダBS(BS1,BS2)の伸縮を制御する油圧回路Bcirとを備えている。
【0049】
図5に示されるように、ブレーキ制御機構BLの油圧回路Bcirは、主たる構成要素として、筐体(バルブケース)BX内に配設された、比例弁b5と、左右ブレーキ切換弁b3と、アキュムレータAQと、パイロット式方向切換弁PLと、第1パイロットチェック弁PC1と、第2パイロットチェック弁PC2と、を備えている。まず、各構成要素について以下に説明する。
【0050】
筐体(バルブケース)BXは、油圧ポンプPと接続するポンプポートp1、ブレーキシリンダBS(BS1,BS2)と接続するシリンダポートp2,p3、トランスミッション内のタンクTと接続するタンクポートp4,p5,p6が設けられている。
【0051】
油圧ポンプPは、エンジンENの動力によって駆動される定容量型のギヤポンプによって構成されている。
【0052】
比例弁b5は、ブレーキ昇圧ソレノイドb5の作動により、開口面積を変化させ、通過流量を制御する。
【0053】
左右ブレーキ切換弁b3は、5ポート3位置の方向切換弁であり、左ブレーキソレノイドb1及び右ブレーキソレノイドb2の作動により、圧油を右ブレーキシリンダBS2へと流す右側連通ポジション(g)と、ブレーキシリンダBSの作動油をタンクTへと返送する返送ポジション(h)と、圧油を左ブレーキシリンダBS1へと流す左側連通ポジション(i)と、をそれぞれ切換可能となっている。
【0054】
アキュムレータAQは、図示しないシリンダと、該シリンダ内を摺動可能なピストンと、圧縮コイルばねとを備えて蓄圧可能に構成された蓄圧装置である。
【0055】
パイロット式方向切換弁PLは、3ポート2位置の方向切換弁であり、パイロット圧により操作され、入口側と出口側とを連通する連通ポジション(a)と、これを遮断する遮断ポジション(b)とを切換可能となっている。
【0056】
第1パイロットチェック弁PC1は、パイロット圧により操作され、入口側と出口側とを連通する連通ポジション(c)と、出口側から入口側への圧油流出を阻止する逆止ポジション(d)とを切換可能となっている。
【0057】
第2パイロットチェック弁PC2は、第1パイロットチェック弁PC1と同様、入口側と出口側とを連通する連通ポジション(e)と、出口側から入口側への圧油流出を阻止する逆止ポジション(f)とを切換可能となっている。
【0058】
次に、上記構成要素を有する油圧回路Bcirについて以下説明する。まず、油圧回路Bcirのうち、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)の伸縮に係る回路について詳述する。
【0059】
油圧ポンプPは、第1油路L1によって減圧弁GNと接続され、減圧弁GNによって一定の圧力に制御された油圧ポンプPの吐出油がポンプポートp1を介して第2油路L2に供給される。
【0060】
第2油路L2から分岐する第3油路L3は、油を濾過するラインフィルタFLの先に 比例弁b5が接続され、この比例弁b5によって左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)に供給される圧油の量及び圧力が制御される。なお、比例弁b5には、不要な作動油をタンクTに返送する返送油路T1が接続されている。
【0061】
比例弁b5の下流には、第4油路L4によって左右ブレーキ切換弁b3が接続されており、この左右ブレーキ切換弁b3によって、作動油となる圧油の流れが制御され、左右のいずれのブレーキシリンダBS(BS1,BS2)に供給されるかが決定される。これにより、左右ブレーキ切換弁b3から左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)のピストン側室bs1,bs2に圧油を供給し、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)の伸縮量(ストローク量)をそれぞれ制御可能となっている。なお、左右ブレーキ切換弁b3には、不要な作動油をタンクTに返送する返送油路T2,T3が接続されている。
【0062】
次に、油圧回路Bcirのうち、後輪a14の制動の維持に係る回路について詳述する。第2油路L2は、逆止弁GSを介して第9油路L9と接続され、この第9油路L9の下流側は分岐してアキュムレータAQとパイロット式方向切換弁PLにそれぞれ接続されている。また、第9油路L9には、パイロット式方向切換弁PLにパイロット圧を導くパイロット油路L10が設けられている。
【0063】
さらに、左右ブレーキ切換弁b3から左ブレーキシリンダBS1へと延びる第5油路L5及び第7油路L7との間に、第1パイロットチェック弁PC1が介在され、左ブレーキシリンダBS1へと延びる第6油路L6及び第8油路L8との間に、第2パイロットチェック弁PC2が介在されるとともに、第2油路L2に、第1パイロットチェック弁PC1及び第2パイロットチェック弁PC2にパイロット圧を導くパイロット油路L11が設けられる。
【0064】
パイロット式方向切換弁PLは、入り口側が、アキュムレータAQと連通し、出口側が、連通ポジション(a)のとき、第7油路L7及び第8油路L8と連通するよう設けられている。これにより、1つのアキュムレータAQで、2つのブレーキシリンダBS(BS1,BS2)に圧油を供給できるよう構成されている。これにより、効率よく圧油を供給できるとともに製造コストを低減できる。
【0065】
このような構成によって、エンジンENの駆動時には、パイロット油路L11のパイロット圧によって、パイロット式方向切換弁PLが遮断ポジション(b)、第1パイロットチェック弁PC1が連通ポジション(c)、第2パイロットチェック弁PC2が連通ポジション(e)となる。これにより、比例弁b5及び左右ブレーキ切換弁b3の作動により、左右のブレーキシリンダBS(BS1,BS2)の伸縮量(ストローク量)の制御が可能となる一方で、油圧ポンプPからの圧油が、第1油路L1、第2油路L2、第9油路L9を介してアキュムレータAQに貯蔵されて蓄圧され、充填状態が維持される。
【0066】
エンジンENが停止すると、パイロット式方向切換弁PLが連通ポジション(a)、第1パイロットチェック弁PC1が逆止ポジション(d)、第2パイロットチェック弁PC2が逆止ポジション(f)となる。その結果、第9油路L9、第7油路L7、第8油路L8で閉回路が形成され、アキュムレータAQに蓄積された油圧によって、閉回路内の油圧が維持されるため、ブレーキシリンダBS(BS1,BS2)のピストン側室bs1,bs2内の油圧も維持される。その結果、作業車両Aの停車時に、エンジンENを停止した場合においても、後輪a14,a14を制動できる。また、エンジンENの始動後には、通常のブレーキ操作が可能となる。
【0067】
このように、エンジンENの駆動時に、アキュムレータAQを蓄圧し、エンジンENの停止時に、自動的にパイロット式方向切換弁PLが連通ポジション(a)とし、アキュムレータAQに蓄積された油圧をブレーキシリンダBS(BS1,BS2)のピストン側室bs1,bs2に供給して、後輪a14,a14を制動する構成によれば、例えば、エンストによりエンジンENが停止した場合においても、良好に後輪a14,a14を制動でき、これにより安全性を向上することができる。
【0068】
また、左右ブレーキ切換弁b3とブレーキシリンダBSとの間に、第1パイロットチェック弁PC1及び第2パイロットチェック弁PC2を配設したことにより、ブレーキシリンダBSのブレーキ油圧の内部リークを低減し、長時間にわたって良好に後輪a14,a14を制動できる。
【0069】
加えて、アキュムレータAQと減圧弁GNとの間に、逆止弁GSを配置したことにより、エンスト時にアキュムレータAQに充填された油が逆流することを防止できる。また、パイロット式方向切換弁PLの切換えに必要な差圧を発生させることができる。
【符号の説明】
【0070】
A 作業車両
a1 走行車体
a11 ボンネット
a12 ミッションケース
a13 前輪
a14 後輪
a15 キャビン
a16 操縦席
a17 ステアリングハンドル
a18 メインキー
a19 前後進レバー
a20 変速レバー

b1 左ブレーキソレノイド
b2 右ブレーキソレノイド
b3 左右ブレーキ切換弁
b4 ブレーキ昇圧ソレノイド
b5 比例弁

s1 傾斜センサ
s2 エンジン回転センサ
s3 ブレーキペダルスイッチ
s4 車速センサ
s5 左ブレーキ圧力センサ
s6 左ブレーキ圧力センサ
s7 加速度センサ

C1 車両ECU
C2 エンジンECU
C3 作業機ECU

D 制動装置(ブレーキ装置)
d1 左ブレーキ機構
d2 右ブレーキ機構
d11 リンクロッド
d12 第1ブレーキリンク
d13 第1回動軸
d14 第2ブレーキリンク
d15 ブレーキ作動ロッド
d16 ブレーキ作動リンク
d17 第2回動軸
d18 配管
d19 配管

AQ アキュムレータ
BS ブレーキシリンダ
BX 筐体(バルブケース)
Bcir 油圧回路
CD 通信部
EN エンジン
MP メータパネル
MS 電動モータ
PL パイロット式方向切換弁
PC1 第1パイロットチェック弁
PC2 第2パイロットチェック弁
SA 制動装置
SP 操作パネル
WM 作業機
図1
図2
図3
図4
図5