(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】化学療法-誘発末梢神経病症と関連した神経病症性痛みの治療
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20230301BHJP
A61K 38/27 20060101ALI20230301BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230301BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230301BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20230301BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K38/27
A61P29/00
A61P43/00 121
C12N15/12
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2020564626
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 KR2019005873
(87)【国際公開番号】W WO2019221528
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-11-17
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518069438
【氏名又は名称】ヘリックスミス カンパニー, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ナ ヨン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0296142(US,A1)
【文献】特開2006-045204(JP,A)
【文献】特表2005-520512(JP,A)
【文献】FASEB Journal,2018年04月16日,Vol.32,pp.5119-5131
【文献】Journal of the American College of Cardiology,Vol.63, No.12,2014年,Suppl.p. A2092
【文献】Ann.Neurol.,2017年,Vol.81, No.6,pp.772-781
【文献】Annals of Clinical and Translational Neurology,2015年,Vol.2, No.5,pp.465-478
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 38/00-38/58
A61P 1/00-43/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法薬物に対する露出と関連した神経病症性痛み(neuropathic pain)を治療するための、ヒト肝細胞成長因子(HGF)蛋白質の2つの異型体(isoform)を発現できる核酸コンストラクトを含む薬剤学的組成物であって、
前記核酸コンストラクトは、
ヒトHGF遺伝子のエクソン1~4を含む第1配列または前記第1配列の縮退性配列、
ヒトHGF遺伝子のイントロン4を含む第2配列または前記第2配列の断片、及び
ヒトHGF遺伝子のエクソン5~18を含む第3配列または前記第3配列の縮退性配列、を含み、
前記ヒトHGF蛋白質の2つの異型体は、
i)配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む全長HGF(full-length HGF、flHGF)、及び
ii)配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む、欠失された変異型HGF(deleted variant HGF、dHGF)を含み、
前記化学療法薬物は、植物アルカロイド、タキサン、プロテアソーム阻害剤、及び白金類似体からなる群より選択され、
前記植物アルカノイドは、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、またはエトポシドであり、
前記タキサンはパクリタキセル、ドセタキセル、またはカバジタキセルであり、
前記プロテアソーム阻害剤はボルテゾミブ、またはカルフィルゾミブであり、
前記白金類似体はシスプラチンまたはオキサリプラチンである、
薬学的組成物。
【請求項2】
前記化学療法薬物は、ビンクリスチン(vincristine)、ボルテゾミブ(bortezomib)、パクリタキセル(paclitaxel)、またはシスプラチン(cisplatin)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記核酸コンストラクトは配列番号13のポリヌクレオチドを含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第1配列及び前記第3配列はイントロンのないものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1配列は配列番号3のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2配列は配列番号6のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドまたはその断片を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第3配列は配列番号4のヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記核酸コンストラクトはpCKベクターをさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項9】
前記核酸コンストラクトはVM202である、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学療法により誘発された末梢神経病症を治療する方法に関するものである。
【0002】
関連出願に対する交差参照
本出願は2018年5月17日付で出願された米国仮出願第62/673,048号に対して利益及び優先権を主張し、これは全ての目的のためにその全文が本願に参照として含まれる。
【0003】
配列目録
本出願はEFS-Webを通じて提出された配列目録を含み、その全文が本願に参照として含まれる。2019年5月14日に作成されたASCII写本の名称は37238US_CRF_sequencelisting.txtであり、大きさは81,920バイトである。
【背景技術】
【0004】
化学療法-誘発末梢神経病症(Chemotherapy-induced peripheral neuropathy、CIPN)は特定癌治療のありふれた副作用であり、患者の長期的な生活の質に相当な影響を及ぼす。CIPNの症状には非正常的な感覚(異常感覚)、無感覚、均衡問題、及び痛みがある。具体的な症状は投与される化学療法の種類によって異なるが、CIPNにより苦痛を受ける患者に神経病症性痛み(neuropathic pain)が発生する危険は一般的に高い。
【0005】
CIPN及び関連痛みを誘発すると知られた化学療法剤は白金類似体(platinum analog)、抗チュブリン(タキサン(taxane)、ビンカアルカロイド(vinca alkaloid)、エリブリン(eribulin))、プロテアソーム阻害剤(ボルテゾミブ(bortezomib)、カルフィルゾミブ(carfilzomib))、免疫調節剤(サリドマイド(thalidomide)、レナリドマイド(lenalidomide)、ポマリドマイド(pomalidomide))及び甚だしくは、通常的に化学療法剤に見なされない新たな生物学的製剤(アレムツズマブ(alemtuzumab)、イピリムマブ(ipilimumab)、ブレンツキシマブ(brentuximab))の一部を含む。このような製剤のうちの一部、例えば、オキサリプラチン(oxaliplatin)、シスプラチン(cisplatin)、及びビンクリスチン(vincristine)は治療が終わった後にも続けて進行される症状を誘発することと知られている。
【0006】
CIPNを管理するに当たって、主要課題の1つは正確な病態生理学がよく知られていないことである。さらに、多様な化学療法剤は相異する病態生理学的機転によりCIPNを誘発する可能性がある。正確な病態生理学を明らかにしようとする持続的な努力にもかかわらず、臨床的に適切な治療的介入は可能でない。
【0007】
CIPNと関連した神経病症性痛みは他の種類の神経病症性痛みと類似の方式で、即ち物理療法、マッサージ及び針術のような補完療法(complementary therapy)及び薬物治療の組合せで管理されてきた。ガバペンチン(gabapentin)、プレガバリン(pregabalin)、カルバマゼピン(carbamazepine)、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepressant)、オキシコドン(oxycodone)、モルヒネ(morphine)、メタドン(methadone)、トラマドール(tramadol)、デュロキセチン(duloxetine)、及びベンラファキシン(venlafaxine)のような多様な薬物が使われるか、または使用に提案された。しかしながら、このような治療法のうち、いずれもCIPNの痛みを減らすことに真の効能が立証されたところがなく、薬物自体に副作用がある。
【0008】
最近、Kesslerと同僚らは糖尿病性末梢神経病症で非ウイルス性HGF遺伝子治療に対する成功的な二重-盲検の偽薬-対照されたヒト2相臨床試験を報告した(Kessler et al., Annals Clin. Transl. Neurology2(5): 4650478 (2015))。ヒトHGFの2つの異型体を発現するプラスミドVM202(pCK-HGF-X7)を糖尿病性末梢神経病症患者のふくらはぎ筋肉に注入すれば痛みが有意に減少し、2日の治療は3ケ月間、生活の質の向上と共に症状緩和を提供することに充分であった。しかしながら、この治療法はまだCIPNの痛みを減らすことに効果的であると見えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、病因機転と病態生理学的機転が十分に知られていないCIPNと関連した痛みを治療することに効果的な薬物の開発が必要である。特に、VM202(pCK-HGF-X7)がCIPNの痛みを減らすことに効果的であるか否かを評価する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一部の態様によれば、本発明はヒトHGF蛋白質をコーディングする核酸コンストラクト(construct)を投与することによって、神経病症-誘発治療剤に対する露出と関連した神経病症性痛みを治療する方法に関するものである。
【0011】
前記方法は、以前に治療剤に露出した対象体(subject)にヒトHGF蛋白質の2つの異型体(isoform)をコーディングする第1治療的有効量(first therapeutically effective amount)の核酸コンストラクト(nucleic acid construct)を投与するステップを含むことができ、前記核酸コンストラクトは次を含む:ヒトHGF遺伝子のエクソン(exon)1~4を含む第1配列または第1配列の縮退性配列(degenerate sequence)、ヒトHGF遺伝子のイントロン(intron)4を含む第2配列または第2配列の断片(fragment)、及びヒトHGF遺伝子のエクソン5~18を含む第3配列または第3配列の縮退性配列。
【0012】
一部の具現例において、前記神経病症-誘発治療剤は化学療法薬物である。前記化学療法薬物は、植物アルカロイド(plant alkaloid)、タキサン(taxane)、エポチロン(epothilone)、プロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor)、免疫調節剤(immunomodulator)、及び抗腫瘍生物学的製剤(antineoplastic biologic)からなる群より選択される。一部の具現例において、化学薬物はビンクリスチン(vincristine)、ボルテゾミブ(bortezomib)、パクリタキセル(paclitaxel)、またはシスプラチン(cisplatin)である。
【0013】
一部の具現例において、前記対象体(subject)はヒト患者である。一部の具現例において、前記対象体(subject)は癌(cancer)を病んでいる。
【0014】
一部の具現例において、前記方法は第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ後、1週以上の後に核酸コンストラクトを対象体に再投与するステップを追加的に含む。一部の具現例において、前記再投与するステップは第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップの後、少なくとも2週、3週、4週、5週、または10週後に遂行される。一部の具現例において、前記再投与するステップは第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ後、少なくとも10日、15日、20日、30日、40日、50日、または100日後に遂行される。一部の具現例において、前記対象体は第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ及び前記再投与するステップの間に核酸コンストラクトの投与を受けない。
【0015】
一部の具現例において、前記第1配列及び前記第3配列にはイントロンがない。一部の具現例において、HGFの2つの異型体は全長HGF(full-length HGF、flHGF)及び欠失された変異型HGF(deleted variant HGF、dHGF)を含む。全長HGF(flHGF)は配列番号1のポリペプチドを含むことができ、欠失された変異型HGF(dHGF)は配列番号2のポリペプチドを含むことができる。
【0016】
一部の具現例において、前記第1配列は配列番号3のポリヌクレオチドを含む。一部の具現例において、前記第2配列は配列番号6のポリヌクレオチドを含む。一部の具現例において、前記第3配列は配列番号4のポリヌクレオチドを含む。
【0017】
一部の具現例において、前記核酸コンストラクトは配列番号13のポリヌクレオチドを含む。一部の具現例において、前記核酸コンストラクトはpCKベクターを追加的に含む。
【0018】
一部の具現例において、前記第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップまたは前記再投与するステップは、核酸コンストラクトの筋肉出注射(intramuscular injection)を1つ以上含む。一部の具現例において、前記核酸コンストラクトの第1治療的有効量は1μg~100mgの間、10μg~50mgの間、100μg~10mgの間、1mg~25mgの間、または1mg~10mgの間である。
【0019】
一部の他の態様によれば、本発明は神経病症-誘発治療剤に対する露出と関連した神経病症性痛みを治療するためのヒトHGFをコーディングする核酸コンストラクトに関するものである。前記核酸コンストラクトは次を含むことができる:ヒトHGF遺伝子のエクソン1~4を含む第1配列または前記第1配列の縮退性配列、ヒトHGF遺伝子のイントロン4を含む第2配列または前記第2配列の断片、及びヒトHGF遺伝子のエクソン5~18を含む第3配列または前記第3配列の縮退性配列。他の態様によれば、本発明は神経病症-誘発治療剤に対する露出と関連した神経病症性痛みを治療するためのヒトHGFをコーディングする核酸コンストラクトを含む薬剤学籍組成物を提供する。
【0020】
詳細な説明
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、核酸コンストラクトである、VM202としても知られたpCK-HGF-X7の構造を示す。pCKベクターは(1)HCMV IE遺伝子から由来したプロモーター/エンハンサー及び5’UTR(エクソン1、イントロンA及び一部分のエクソン2)(“HCMV IEプロモーター”)、(2)ColE1複製原点(“ColE1”)、及び(3)カナマイシン耐性遺伝子(“Kan
r”)を含む。HGF-X7挿入物(“HGF-X7”)はヒトHGFのエクソン1~18及びヒトHGF遺伝子のイントロン4の断片を含むcDNAである。HGF-X7挿入物の3’末端を有するフレーム-内融合された配列要素はポリ-Aテール(poly-A tail、“pA”)をコーディングする。pCK-HGF-X7は選択的スプライシング(alternative splicing)を通じてHGF
723(dHGF)及びHGF
728(flHGF)を全て発現する。
【
図2】
図2aは、パクリタキセル-誘発神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の効果を実験するための実験手続きの概要を示す。具体的に、9週齢のBalb/c雌マウスに1mg/kgパクリタキセルを1週間、毎日腹腔内(intraperitoneal、i. p.)注射を通じて投与した。1週次に200μgのプラスミドDNA、pCK、またはpCK-HGF-X7を筋肉内に注射した。痛み症状の重症度は毎週ボンフレイのフィラメント(Von Frey's filament)を使用して機械的異質痛(mechanical allodynia)を検査して決定した。
図2bは、
図2aで簡略に示した実験から得たデータを提供する。具体的に、
図2bはパクリタキセルを投与したマウスから測定された足撤退(paw withdrawal)反応(頻度(%))データを提供する。足撤退頻度(paw withdrawal frequency)はpCK-HGF-X7を投与した群で有意に減少したが、HGF-X7挿入物のないpCKベクターを投与した対照群では減少しなかった。
【
図3】
図3aは、ビンクリスチン-誘発神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の効果を実験するための実験手続きの概要を示す。具体的に、5週齢のBalb/c雄マウスに200μg/kgビンクリスチンを2週間、毎日、i.p.注射を通じて投与し、1週次に200μg pCK-HGF-X7を投与した。これらの痛み水準は毎週ボンフレイのフィラメントテストにより決定された。
図3bは、
図3aで簡略に示した実験から得たデータを提供する。具体的に、
図3bはビンクリスチンを投与したマウスで測定された足撤退反応(頻度(%))データを提供する。足撤退頻度はpCK-HGF-X7を投与した群で有意に減少したが、HGF-X7挿入物のないpCKベクターを投与した対照群では減少しなかった。
【
図4】
図4aは、ボルテゾミブ-誘発神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の効果を実験するための実験手続きの概要を示す。具体的に、7-週齢のC57BL6雄マウスに0.4mg/kgボルテゾミブを2週間、週3回、i.p.注射を通じて投与し、2週次に200μg pCK-HGF-X7を投与した。これらの痛み水準は毎週ボンフレイのフィラメントテストにより決定された。
図4bは、
図4aで簡略に示した実験から得たデータを提供する。具体的に、
図4bはボルテゾミブを投与したマウスで測定された足撤退反応(頻度(%))データを提供する。足撤退頻度はpCK-HGF-X7を投与した群で有意に減少したが、HGF-X7挿入物のないpCKベクターを投与した対照群では減少しなかった。
【
図5】
図5aは、シスプラチン-誘発神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の効果を実験するための実験手続きの概要を示す。具体的に、9-週齢のC57BL6雄マウスに2.3mg/kgシスプラチンを2週間、2日に1回、i.p.注射を通じて投与し、1週次に200μg pCK-HGF-X7を投与した。これらの痛み水準は毎週ボンフレイのフィラメントテストにより決定された。
図5bは、
図5aで簡略に示した実験から得たデータを提供する。具体的に、
図5bは、シスプラチンを投与したマウスで測定された足撤退反応(頻度(%))データを提供する。足撤退頻度はpCK-HGF-X7を投与した群で有意に減少したが、HGF-X7挿入物のないpCKベクターを投与した対照群では減少しなかった。
【0022】
前記の図面は単に例示の目的に本発明の多様な実施例を示す。当業者は本明細書で説明された本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に例示された構造及び方法の代案的な実施例が使われることができるということを次の説明から容易に認識する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.定義
【0024】
異に定義されない限り、本明細書で使われる全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により一般的に理解される意味を有する。本明細書で使われたように、次の用語は次のような意味を有する。
【0025】
本明細書に使われた用語“HGFの異型体(isoform of HGF)”は動物で自然的に発生するHGFポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。前記用語は任意の全長(full length)野生型HGFポリペプチドと少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み、自然的に発生するHGF対立遺伝子変異型、スプライス変異型、または欠失変異型と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。本発明で使用することに好ましいHGFの異型体は全長HGF(full-length HGF、flHGF)(同義語、fHGF)、欠失された変異型HGF(deleted variant、dHGF)、NK1、NK2、及びNK4からなる群より選択される2つ以上の異型体を含む。本発明のより好ましい具現例によれば、本明細書に記載された方法に使われるHGFの異型体はflHGF及びdHGFを含む。
【0026】
本発明の用語“ヒトflHGF”、“flHGF”、及び“fHGF”はヒトHGF蛋白質のアミノ酸1~728からなる蛋白質を称するために本願で相互交換的に使われる。flHGFの配列は配列番号1に提示されている。
【0027】
本発明の用語“ヒトdHGF”及び“dHGF”はヒトHGF遺伝子の選択的スプライシングにより生成されたHGF蛋白質の欠失された変異型を称するために本願で相互交換的に使われる。具体的に、“ヒトdHGF”または“dHGF”は全長HGF配列からアルファ鎖の最初のクリングルドメイン(kringle domain)で5個のアミノ酸(F、L、P、S、及びS)が欠失されたヒトHGF蛋白質を意味する。ヒトdHGFは723個アミノ酸長さである。ヒトdHGFのアミノ酸配列は配列番号2に提示されている。
【0028】
本明細書に使われた用語“治療”は(a)神経病症性痛みの抑制;(b)神経病症性痛みの緩和;及び(c)神経病症性痛みの除去の全ての行為を意味する。一部の具現例において、本発明の組成物は神経細胞の成長または神経細胞死滅の抑制を通じて神経病症性痛みを治療することができる。
【0029】
本明細書に使われた用語“治療的有効容量(therapeutically effective dose)”または“有効量(effective amount)”は投与されて所望の効果を生成する容量または量を意味する。本発明の方法の脈絡で、治療的有効量はCIPNと関連した神経病症性痛みを減少させることに効果的な量である。
【0030】
本明細書に使われた用語“充分な量”は所望の効果を生成することに十分な量を意味する。
【0031】
本明細書に使われた用語“縮退性配列(degenerate sequence)”は参照核酸配列から翻訳されたことと同一のアミノ酸配列を提供するために翻訳できる核酸配列を意味する。
【0032】
2.他の解析規則(Other interpretational conventions)
【0033】
本明細書に言及された範囲は言及された終点を含んで範囲内の全ての値に対する略称であると理解される。例えば、1~50の範囲は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び50からなる群から任意の数字、数字の組合せ、または下位-範囲を含むことと理解される。
【0034】
異に指示されない限り、1つ以上の立体中心を有する化合物に対する言及は各々の立体異性質体及びその立体異性質体の全ての組合せを意図する。
【0035】
3.CIPNと関連した神経病症性痛みを治療する方法
【0036】
最初の態様によれば、本発明の方法は化学療法-誘発末梢神経病症と関連した神経病症性痛みを治療するために提示される。典型的な具現例において、前記方法は末梢神経病症を誘発する治療剤に露出した対象体にヒトHGF蛋白質の2つの異型体を発現する核酸コンストラクトの治療的有効量を投与するステップを含む。
【0037】
3.1. 2つの肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor、HGF)異型体を発現する核酸コンストラクト
【0038】
本明細書に記載された方法で、核酸コンストラクトはヒトHGF蛋白質の少なくとも2つの異型体を発現する。一部の具現例において、前記核酸コンストラクトは2つの異型体を発現する。典型的な具現例において、前記核酸コンストラクトはflHGF及びdHGFのうち、少なくとも1つを発現する。特定の具現例において、前記核酸コンストラクトはflHGF及びdHGF全てを発現する。
【0039】
flHGF及びdHGFはいろいろな生物学的機能を共有するが、免疫学的特性といろいろな生物学的特性の観点では異なる。例えば、flHGFはヒト臍帯静脈内皮細胞、動脈平滑筋細胞、及びNSF-60(ミューライン骨髄母細胞)でDNA合成を促進するに当たって、dHGFより各々約20倍、10倍、及び2倍より高い活性を示す。一方、dHGFはLLC-PK1(豚腎臓上皮細胞)、及びOK(米国オポッサム腎臓上皮細胞)、及びマウス間質細胞のDNA合成促進において、flHGFより各々約3倍及び2倍より高い活性を示す。また、flHGFはdHGFよりPBSで70倍より高い溶解度を示す。幾つかの抗-dHGF単一クローン抗体はdHGFのみを認識するが、これはflHGFとdHGFの3次元構造が相異するということを意味する。
【0040】
3.1.1.発現配列
【0041】
一部の具現例において、コンストラクトは各々の異型体(isoform)コーディング配列(coding sequence、CDS)に対する発現調節配列を含むことによってHGFの2つ以上の異型体を発現する。一部の具現例において、前記コンストラクトは、例えば(1)発現調節配列-(2)第1アイソマー(isomer)のコーディング配列-(3)IRES(internal ribosomal entry site)-(4)第2アイソマー(isomer)のコーディング配列-(5)転写終結配列の順序で2つのコーディング配列の間にIRESを含む。IRESはIRES配列で翻訳が始まるようにして単一コンストラクトで関心のある2つの遺伝子の発現を許容する。より追加的な具現例において、HGFの単一異型体を各々コーディングする複数のコンストラクトは投与される対象体でHGFの1つ以上の異型体の発現を誘導するために共に使われる。
【0042】
好ましい具現例において、本発明の方法は選択的スプライシング部位を含むことによってHGFの2つ以上の相異する類型の異型体、即ちflHGF及びdHGFを同時に発現するコンストラクトを使用する。本明細書に参照として含まれた米国特許第7,812,146号で選択的スプライシングを通じてHGFの2つの異型体(flHGF及びdHGF)をコーディングするコンストラクトがHGFの1つの異型体(flHGFまたはdHGFのうちの1つ)をコーディングするコンストラクトより発現効率が遥かに高い(ほぼ250倍より高い)ということを既に立証した。典型的な具現例において、前記コンストラクトは(i)ヒトHGF遺伝子のエクソン1~4を含む第1配列または前記第1配列の縮退性配列;(ii)ヒトHGF遺伝子のイントロン4を含む第2配列または前記第2配列の断片;及び(iii)ヒトHGF遺伝子のエクソン5~18を含む第3配列または前記第3配列の縮退性配列を含む。前記コンストラクトからエクソン4とエクソン5との間の選択的スプライシングによりHGFの2つの異型体(flHGF及びdHGF)が生成できる。
【0043】
一部の具現例において、前記コンストラクトはイントロン4の全体配列を含む。一部の具現例において、前記コンストラクトはイントロン4の断片を含む。好ましい具現例において、前記コンストラクトは配列番号7~配列番号14からなる群より選択されるヌクレオチド配列を含む。配列番号7のヌクレオチド配列は7113bpであり、イントロン4の全体配列を含むコンストラクトに相応する。配列番号8~14のヌクレオチド配列はイントロン4の多様な断片を含むコンストラクトに相応する。
【0044】
イントロン4の多様な断片はflHGF及びdHGF全ての発現を誘導するためにエクソン4とエクソン5との間に挿入できる。例えば、(i)配列番号7のヌクレオチド483-2244及びヌクレオチド3168-5438;(ii)配列番号7のヌクレオチド483-2244及びヌクレオチド4168-5438;(iii)配列番号7のヌクレオチド483-2244及びヌクレオチド5117-5438;(iv)配列番号7のヌクレオチド483-728及びヌクレオチド2240-5438;(v)配列番号7のヌクレオチド483-728及びヌクレオチド3168-5438;(vi)配列番号7のヌクレオチド483-728及びヌクレオチド4168-5438、または(vii)配列番号7のヌクレオチド483-728及びヌクレオチド5117-5438が使われることができる。
【0045】
したがって、本発明の方法で使われたコンストラクトは、次を含むことができる:(i)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-5438)-(エクソン5~エクソン18);(ii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-2244ヌクレオチド3168-5438)-(エクソン5~エクソン18);(iii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-2244ヌクレオチド4168-5438)-(エクソン5~エクソン18);(iv)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-2244ヌクレオチド5117-5438)-(エクソン5~エクソン18);(v)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド2240-5438)-(エクソン5~エクソン18);(vi)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド3168-5438)-(エクソン5~エクソン18);(vii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド4168-5438)-(エクソン5~エクソン18);または(viii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド5117-5438)-(エクソン5~エクソン18)。
【0046】
ヒトHGFのエクソン1~18及びヒトHGF遺伝子のイントロン4に相応するcDNAまたはその断片を含む多様な核酸コンストラクトは“HGF-X”と命名され、その後に固有番号が付く。出願人により生成され試験されたHGF-Xは、以下の表1に要約されたように、配列番号7~配列番号14のヌクレオチド配列を有するHGF-X1、HGF-X2、HGF-X3、HGF-X4、HGF-X5、HGF-X6、HGF-X7、及びHGF-X8を含むが、これに制限されない。
【0047】
【0048】
出願人はその全文が本願に参照として含まれている米国特許第7,812,146号に開示されたようにHGF-X7が最も高い発現効率を示したことを以前に立証した。したがって、HGF-X7を含む核酸コンストラクトは本発明の方法の好ましい具現例で使われることができる。
【0049】
本発明で使われるHGF異型体のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は野生型ヒトHGF異型体の配列と実質的に同一のアミノ酸配列及びヌクレオチド配列を追加的に含むことができる。実質的同一性は野生型ヒトHGF異型体のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が1つの配列と最大に整列される時、少なくとも80%同一性、より好ましくは少なくとも90%同一性、そして最も好ましくは少なくとも95%同一性を有する配列を含む。比較のための配列整列方法は当業界によく公知されている。多様なプログラム及び整列アルゴリズムが次に記載されている:Smith及びWaterman, Adv. Appl. Math. 2: 482 (1981); Needleman及びWunsch, J. Mol. Bio. 48: 443 (1970); Pearson及びLipman, Methods in Mol. Biol. 24: 307-31 (1988); Higgins及びSharp, Gene 73: 15237-44 (1988); Higgins及びSharp, CABIOS 5: 151-3 (1989), Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16: 10881-90 (1988); Huang et al., Comp. Appl. BioSci. 8: 155-65 (1992);及びPearson et al., Meth. Mol. Biol. 24: 307-31 (1994). NCBI BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)[Altschul 20 et al., J. Mol. Biol. 215: 403-10 (1990)]は配列分析プログラムblastp、blasm、blastx、tblastn、及びtblastxと連結のためのインターネット上とNCBI(National Center for Biological Information, Bethesda, Md.)を含んだいろいろな出処で利用可能である。BLAST及びプログラムを使用して配列識別を決定する方法に対する説明はNIH(National Institute of Health)傘下NCBI(National Center for Biotechnology Information)の公式ウェブサイトから探すことができる。
【0050】
3.1.2.ベクター(vector)
【0051】
本発明の方法で使われるコンストラクトは発現された配列に作動可能に連結された1つ以上の調節配列(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)を有するベクターを典型的に含む。調節配列はHGFの異型体の発現を調節する。
【0052】
HGF蛋白質の1つ以上の異型体をコーディングするポリヌクレオチドは発現コンストラクトでプロモーターに作動可能に連結されることが好ましい。前記用語“作動可能に連結された(operatively linked)”は核酸発現調節配列(例えば、プロモーター、信号配列、または転写因子結合部位のアレイ)と第2核酸配列との間の機能的連結を意味し、前記発現調節配列は第2配列に相応する核酸の転写及び/又は翻訳に影響を与える。
【0053】
典型的な具現例において、ポリヌクレオチドの転写を調節するためにポリヌクレオチドに連結されたプロモーターは、好ましくは動物で、より好ましくは哺乳動物細胞で作動可能であり、哺乳動物細胞のゲノム(genome)または哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター、例えばCMV(cytomegalovirus)プロモーター、アデノウイルス後期プロモーター、ワクチニアウイルス(vaccinia virus)7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、HSV tkプロモーター、RSVプロモーター、EF1アルファプロモーター、メタロチオネイン(metallothionein)プロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、ヒトIL-2遺伝子プロモーター、ヒトIFN遺伝子プロモーター、ヒトIL-4遺伝子プロモーター、ヒトリンパ毒素遺伝子プロモーター、及びヒトGM-CSF遺伝子プロモーターを含むが、これに制限されない。より好ましくは、本発明に有用なプロモーターはヒトCMV(hCMV)のIE(immediate early)遺伝子またはEF1アルファプロモーター、最も好ましくはATG開始コドン直前の配列に亘ったエクソン1及びエクソン2配列の全体配列を含むhCMV IE遺伝子-由来プロモーター/エンハンサー及び5’-UTR(非翻訳部位、untranslated region)から由来したプロモーターである。
【0054】
本発明で使われる発現カセットはホリアデニル化配列、例えば牛成長ホルモン終結子(Gimmi, ER, et al., Nucleic Acids Res. 17: 6983-6998 (1989))、SV40-由来ホリアデニル化配列(Schek, N, et al., Mol. Cell Biol. 12: 5386-5393 (1992))、HIV-1ポリA(Klasens, BIF, et al., Nucleic Acids Res. 26: 1870-1876 (1998))、β-グロビンポリA(Gil, A. et al., Cell 49: 399-406 (1987))、HSV TKポリA(Cole, CN及びTP Stacy, Mol. Cell. 5 Biol. 5: 2104-2113 (1985))またはポリオーマウイルスポリA(Batt, D. Band GG Carmichael, Mol. Cell. Biol. 15: 4783-4790 (1995))を含むが、これに制限されない。
【0055】
3.1.2.1.比-ウイルスベクター(Non-viral Vector)
【0056】
一部の具現例において、核酸コンストラクトはHGFの2つ以上の異型体を発現することができる比-ウイルスベクター(non-viralvector)である。
【0057】
典型的な具現例において、非-ウイルス性ベクターはプラスミドである。一般に好ましい具現例において、前記プラスミドはpCK、pCP、pVAX1、またはpCYである。特に好ましい具現例において、前記プラスミドはpCKであり、その細部事項はWO2000/040737及び Lee et al. Biochem. Biophys. Res. Comm. 272: 230-235(2000)から探すことができ、その全ては本願にその全文が参照として含まれる。前記pCKベクターは配列番号5のポリヌクレオチドを有している。pCKに形質転換された大腸菌(E.coli)は2003年3月21日ブダペスト条約の条項によって韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に寄託された(受託番号:KCCM-10476)。
【0058】
特に好ましい具現例において、HGF-X7発現配列を含むpCKプラスミドは本発明の方法で核酸コンストラクトとして使われる。好ましい一具現例において、pCK-HGF-X7(VM202ともいう)は受託番号KCCM-10361としてKCCMにブダペスト条約の条項によって寄託された(前記プラスミドに形質転換された大腸菌菌株の形態に)。
【0059】
3.1.2.2.ウイルスベクター(viral vector)
【0060】
他の具現例において、当業界に公知された多様なウイルスベクターは本発明のHGF蛋白質の1つ以上の異型体を伝達し発現することに使われることができる。例えば、レトロウイルス(retrovirus)、レンチウイルス(lentivirus)、アデノウイルス(adenovirus)、またはアデノ-関連ウイルス(adeno-associated virus)を使用して開発されたベクターは本発明の一部の具現例で使われることができる。
【0061】
(a)レトロウイルス
【0062】
比較的大きい外因性遺伝子を運搬することができるレトロウイルスはそのゲノムを宿主ゲノムに統合し、広い宿主スペクトルを有するという点でウイルス遺伝子伝達ベクターに使われてきた。
【0063】
レトロウイルスベクターを構築するために、本発明のポリヌクレオチドは複製-欠陥(replication-defective)があるウイルスを生成するために特定ウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入される。ビリオン(virion)を生産するために、LTR(long terminal repeat)及びW成分無しでgag、pol、及びenv遺伝子を含むパッケージング(packaging)細胞株が構築される(Mann et al., Cell, 33: 153-159 (1983))。本発明のポリヌクレオチドを含む組み換えプラスミドの場合、LTR及びWはこの細胞株に導入され、W配列は組み換えプラスミドのRNA転写体がウイルス粒子にパッケージングされるようにして、その後、培養培地(Nicolas及びRubinstein "Retroviral vectors", In: Vectors: A survey of molecular cloning vectors and their uses, Rodriguez and Denhardt (eds.), Stoneham: Butterworth, 494-513(1988))に分泌される。その後、組み換えレトロウイルスを含む培地は収集され、選択的に濃縮されて遺伝子伝達に使われる。
【0064】
2世代のレトロウイルスベクターを使用した成功的な遺伝子伝達が報告されている。Kasahara et al.(Science, 266: 1373-1376 (1994))はEPO(erythropoietin)配列が外皮(envelope)部位に挿入されて、結果的に新たな結合特性を有するキメラ蛋白質を生成する、モロニーマウス白血病ウイルス(moloney murine leukemia virus)の変異型を製作した。恐らく、本遺伝子伝達システムは2-世代のレトロウイルスベクターに対する構築戦略によって構築できる。
【0065】
(b)レンチウイルス
【0066】
また、レンチウイルスは本発明の一部の具現例で使われることができる。レンチウイルスはレトロウイルスの亜綱(subclass)である。しかしながら、レンチウイルスは非-分裂細胞(non-dividing cell)のゲノムに統合できる一方、レトロウイルスは分裂細胞のみ感染させることができる。
【0067】
レンチウイルスベクターは普通いろいろなプラスミドに形質転換されたパッケージング細胞株、一般的にHEK293で生産される。前記プラスミドには(1)カプシド(capsid)及び逆転写酵素(reverse transcriptase)のようなビリオン(virion)蛋白質をコーディングするパッケージングプラスミドと、(2)標的に伝達される外因性遺伝子を含むプラスミドが含まれる。
【0068】
ウイルスが細胞に入る時、RNA形態のウイルスゲノム(viral genome)が逆転写されてDNAを生成した後、ウイルスインテグレース(integrase)酵素によりゲノムに挿入される。したがって、レンチウイルスベクターと共に伝達された外因性物質はゲノムに残っていることがあり、分裂する時、細胞の子孫に伝達される。
【0069】
(c)アデノウイルス
【0070】
アデノウイルスは中間-サイズのゲノム、操作の容易性、高い力価(titer)、広い標的-細胞範囲及び高い感染性のため、普通遺伝子伝達システムに使われている。ウイルスゲノムの両側末端にはウイルスDNA複製及びパッケージングに必要なシス(cis)要素である100-200bp ITR(inverted terminal repeat)が含まれる。E1領域(E1A及びE1B)はウイルスゲノムの転写調節を担当する蛋白質と幾つの細胞遺伝子をコーディングする。E2領域(E2A及びE2B)の発現はウイルスDNA複製のための蛋白質の合成をもたらす。
【0071】
現在まで開発されたアデノウイルスベクターのうち、E1領域が欠失された複製不能(replication incompetent)アデノウイルスが一般的に使われる。アデノウイルスベクターで欠失されたE3領域は転移遺伝子(transgene)に対する挿入部位を提供することができる(Thimmappaya, B. et al., Cell, 31: 543-551 (1982);及びRiordan, JR et al., Science, 245: 1066-1073 (1989))。したがって、デコリン(decroin)-コーディングヌクレオチド配列は欠失されたE1領域(E1A領域及び/又はE1B 5領域、好ましくはE1B領域)または欠失されたE3領域のうちの1つに挿入されることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは欠失されたE4領域に挿入できる。ウイルスゲノム配列で言及される用語“欠失(deletion)”は全体欠失及び部分欠失も含む。自然でアデノウイルスは野生型ゲノムの約105%をパッケージングすることができるので、約2kbの追加DNAに対する容量を提供することができる(Ghosh-Choudhury et al., EMBO J.' 6: 1733-1739 (1987))。これと関連して、アデノウイルスに挿入された前記外来配列はアデノウイルス野生型ゲノムに追加で挿入できる。
【0072】
前記アデノウイルスは公知された血清型(serotype)または亜群(subgroup)A-Fのうち、任意のものでありうる。亜群Cのアデノウイルス5型は本発明のアデノウイルス遺伝子伝達システムを構築するための最も好ましい出発物質である。アデノウイルス5型に対する多い生化学的及び遺伝的情報が公知されている。アデノウイルス遺伝子伝達システムにより伝達される外来遺伝子はエピソーム(episome)であり、宿主細胞に対して遺伝毒性(genotoxicity)がある。したがって、アデノウイルス遺伝子伝達システムを用いた遺伝子治療はだいぶ安定でありうる。
【0073】
(d)アデノ-関連ウイルス(adeno-associated virus、AAV)
【0074】
アデノ-関連ウイルスは非-分裂細胞及び多様な類型の細胞を感染させることができるので、本発明の遺伝子伝達システムを構築することに有用である。AAVベクターの使用及び製造に対する詳細な説明は米国特許第5,139,941号及び第4,797,368号にある。
【0075】
遺伝子伝達システムとしてAAVに対する研究結果はLaFace et al., Viology, 162: 483486(1988), Zhou et al., Exp. Hematol. (NY), 21: 928-933(1993), Walsh et al, J. Clin. Invest., 94: 1440-1448(1994)及びFlotte et al., Gene Therapy, 2: 29-37(1995)に開示されている。一般に、組み換えAAVウイルスは2つのAAV末端反復(terminal repeat)(McLaughlin et al., 1988; Samulski et al., 1989)が側面にある関心遺伝子(即ち、伝達される関心ヌクレオチド配列及びデコリン遺伝子)を含むプラスミド及び末端反復のない野生型AAVコーディング配列を含む発現プラスミド(McCarty et al., J. Viral., 65: 2936-2945 (1991))を共同形質感染(cotransfection)して作られる。
【0076】
(e)他のウイルスベクター
【0077】
他のウイルスベクターが本発明で遺伝子伝達システムとして使われることができる。ワクチニアウイルス(vaccinia virus)( Puhlmann M. et al., Human Gene Therapy 10: 649-657 (1999); Ridgeway, "Mammalian expression vectors,"In: Vectors: A survey of molecule cloning vector and its uses. Rodriguez及びDenhardt, eds. Stoneham: Butterworth, 467-492 (1988); Baichwal及びSugden, "Vectors for gene transfer derived from animal DNA viruses: Transient and stable expression of transferred genes" In: Kucherlapati R, ed. Gene transfer. New York: Plenum Press, 117-148 (1986)及びCoupar et al., Gene, 68: 1-10 (1988))、レンチウイルス(Wang G. et al., J. Clin. Invest. 104 (11): RS 5-62 (1999))及び単純ヘルペスウイルス(Chamber R., et al., Proc. Natl. 10 15 Acad. Sci USA 92: 1411-1415 (1995))のようなウイルスから由来したベクターは本発明のポリヌクレオチド全てを細胞に伝達するために本発明の伝達システムで使われることができる。
【0078】
3.2.CIPN-誘発治療剤
【0079】
多様な具現例において、哺乳動物が露出した神経病症-誘発治療剤は化学療法薬物である。
【0080】
特定の具現例において、化学療法薬物は白金(platinum)類似体である。特定具現例において、前記薬物はシスプラチン(cisplatin)、カルボプラチン(carboplatin)、またはオキサリプラチン(oxaliplatin)である。特定の具現例において、前記化学療法薬物は抗-有糸分裂剤(anti-mitotic agent)である。特定の具現例において、前記薬物はタキサン(taxane)である。特定の具現例において、前記タキサンはパクリタキセル(paclitaxel、Taxol(R))、ドセタキセル(docetaxel、Taxotere(R))、またはカバジタキセル(cabazitaxel、Jevtana(R))である。特定の具現例において、前記薬物はエリブリン(eribulin、Halaven(R))である。特定の具現例において、前記化学療法薬物は植物アルカロイド(plant alkaloid)である。特定の具現例において、前記薬物はビンブラスチン(vinblastine)、ビンクリスチン(vincristine)、ビノレルビン(vinorelbine)、またはエトポシド(etoposide)(VP-16)である。特定の具現例において、前記化学療法薬物はプロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor)である。特定の具現例において、前記薬物はボルテゾミブ(bortezomib、Velcade(R))またはカルフィルゾミブ(carfilzomib、Kyprolis(R))である。特定の具現例において、前記化学療法薬物は免疫調節剤である。特定の具現例において、前記薬物はサリドマイド(thalidomide、Thalomid(R))、レナリドマイド(lenalidomide、Revlimid(R))、またはポマリドマイド(pomalidomide、Pomalyst(R))である。特定の具現例において、前記化学療法薬物はエポチロン(epothilone)である。特定の具現例において、前記薬物はイクサベピロン(ixabepilone、Ixempra(R))である。特定の具現例において、哺乳動物が以前に露出した神経病症-誘発治療剤は抗腫瘍生物学的製剤(antineoplastic biologic)である。
【0081】
対象体(subject)は化学療法薬物に露出されたか、または露出される非-ヒト哺乳動物及びヒト全てを含む。
【0082】
3.3.投与順序
【0083】
典型的な具現例において、核酸コンストラクトは以前に神経病症-誘発治療剤に露出したことがある対象体(subject)に投与される。一部の具現例において、核酸コンストラクトは神経病症-誘発治療剤と同時に対象体に投与される。一部の具現例において、核酸コンストラクトは対象体が神経病症-誘発治療剤に露出される前に投与される。一部の具現例において、核酸コンストラクトは化学療法薬物に露出される前と後の全てに投与される。
【0084】
一部の具現例において、前記方法は投与するステップの後、1週以上後にDNAを哺乳動物に再投与するステップを追加的に含む。一部の具現例において、再投与するステップは投与するステップの後、少なくとも2週、3週、4週、5週、または10週後に遂行される。一部の具現例において、再投与するステップは投与するステップの後、少なくとも10日、15日、20日、30日、40日、50日、または100日後に遂行される。一部の具現例において、哺乳動物は投与するステップと再投与するステップの間に核酸コンストラクトの投与を受けない。
【0085】
3.4.伝達方法
【0086】
本明細書に記載された方法で、HGFの1つ以上の異型体を発現するポリヌクレオチドコンストラクトを投与するために多様な伝達方法が使われることができる。
【0087】
3.4.1.注射(Injection)
【0088】
典型的な具現例において、核酸コンストラクトは液体薬剤学的組成物の注射により投与される。
【0089】
一般に好ましい具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは筋肉内注射(intramuscular injection)により投与される。典型的に、ポリヌクレオチドコンストラクトは痛み部位または患者が-認知する痛み部位と近い個所に筋肉内注射により投与される。一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは対象体の手、足、脚、または腕の筋肉に投与される。
【0090】
一部の具現例において、コンストラクトは皮下(subcutaneously)または皮内(intradermally)注射される。
【0091】
一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは血管内(intravascular)伝達により投与される。特定の具現例において、コンストラクトは逆行性静脈注射(retrograde intravenous injection)により注射される。
【0092】
3.4.2.電気穿孔法(Electroporation)
【0093】
プラスミドDNAの細胞in vivoへの形質転換効率は一部の場合に注入後電気穿孔(electroporation)を遂行することによって改善できる。したがって、一部の具現例において、ポリヌクレオチドは注射後、電気穿孔により投与される。特定の具現例において、電気穿孔は TriGridTM Delivery System(Ichor Medical Systems, Inc., San Diego, USA)を使用して投与される。
【0094】
3.4.3.超音波穿孔法(Sonoporation)
【0095】
一部の具現例において、超音波穿孔法(sonoporation)は本発明のコンストラクトの形質転換効率を向上させるために使われる。超音波穿孔法は超音波を使用して細胞膜を一時的に透過性に作ってDNAの細胞内の吸収を許容する。ポリヌクレオチドコンストラクトはマイクロバブル内に統合されることができ、全身循環により投与された後、超音波の外部適用が繋がることができる。超音波は標的組織内のマイクロバブルの空洞化(cavitation)を誘導してコンストラクトの放出及び形質感染(transfection)をもたらす。
【0096】
3.4.4.磁気注入法(Magnetofection)
【0097】
一部の具現例において、磁気注入法(magnetofection)は本発明のコンストラクトの形質転換効率を向上させるために使われる。前記コンストラクトは磁性(magnetic)ナノ粒子にカップリングされた後、投与される。高い勾配の外部磁石を適用すれば、複合物がターゲットに捕捉され固定される。ポリヌクレオチドコンストラクトは架橋分子の酵素切断、電荷相互作用、またはマトリックスの分解により放出できる。
【0098】
3.4.5.リポソーム(Liposome)
【0099】
一部の具現例において、本発明のポリヌクレオチドはリポソーム(liposome)により伝達できる。リポソームは燐脂質が過量の水性媒質で懸濁される時、自発的に形成される。リポソーム-媒介核酸伝達はNicolau and Sene, Biochim. Biophys. Acta, 721: 185-190(1982)及びNicolau et al., Methods Enzymol., 149: 157-176(1987) に記述されたように非常に成功的であった。リポソームを使用して動物細胞を形質感染させるための市販する試薬の例にはリポフェクタミン(Lipofectamine、Gibco BRL)が含まれる。本発明のポリヌクレオチドを捕獲するリポソームはエンドサイトシス(endocytosis)、吸着(adsorption)及び融合(fusion)のような機作により細胞と相互作用した後、配列(sequence)を細胞内に伝達する。
【0100】
3.4.6.形質感染(Transfection)
【0101】
HGFをコーディングするポリヌクレオチドを伝達するためにウイルスベクターを使用する場合、ポリヌクレオチド配列は当業界に公知された多様なウイルス感染方法により細胞内に伝達できる。ウイルスベクターを使用した宿主細胞の感染は前述した参照された文献に記述されている。
【0102】
好ましくは、本発明の薬剤学的組成物は非経口的に投与できる。非-経口投与の場合、静脈注射(intravenous injection)、腹腔注射(intraperitoneal injection)、筋肉注射(intramuscular injection)、皮下注射(subcutaneous injection)、または局所注射(local injection)が利用できる。例えば、前記薬剤学的組成物は逆行性静脈注射(retrograde intravenous injection)により注射できる。
【0103】
好ましくは、本発明の薬剤学的組成物は筋肉内に投与できる。一部の具現例において、前記投与は神経病症性痛みにより影響を受ける筋肉をターゲットとする。
【0104】
3.5.容量(Dose)
【0105】
ポリヌクレオチドコンストラクトは治療的有効容量で投与される。本明細書に記載された方法において、前記治療的有効容量は対象体で神経病症性痛みを減少させることに効果的な容量である。
【0106】
本明細書に記載された方法の一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは1μg~200mg、1mg~200mg、1mg~100mg、1mg~50mg、1mg~20mg、または5mg~10mgの総容量で投与される。一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは2mg、4mg、8mg、16mg、32mg、または64mgの総容量で投与される。
【0107】
多様な具現例において、前記総容量は複数の個別注射容量に分割される。一部の具現例において、前記総容量は複数の同一の注射容量に分割される。一部の具現例において、前記総容量は同一でない注射容量に分割される。多様な分割された容量の具現例において、前記総容量は4、8、16、24、32、または64個の相異する注射部位に投与される。一部の具現例において、注射部位当たり注射容量は0.1mg~5mgの間である。特定の具現例において、注射部位当たり注射容量は0.1mg、0.15mg、0.2mg、0.25mg、0.3mg、0.35mg、0.4mg、0.45mg、0.5mg、または1mgである。
【0108】
典型的な分割された容量の具現例において、複数の注射容量全ては互いに1時間以内に投与される。一部の具現例において、複数の注射容量全ては互いに1.5時間、2時間、2.5時間、または3時間以内に投与される。
【0109】
前記方法の多様な具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトの総容量は1つの単一容量で投与されるか、または複数の注射容量に分割されて対象体に1回のみ投与される。他の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは、初期投与後、数日後に再-投与される。一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは、初期投与後、約3、5、10、15、20、25、30、または35日後に再-投与される。一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは初期投与後、1/2、1、2、3、4、5、7、9、または10週後に再投与される。一部の具現例において、ポリヌクレオチドは、初期投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10ケ月後に再-投与される。一部の具現例において、後続総容量は初期総容量と同一である。一部の具現例において、後続容量は初期総容量と相異する。一部の具現例において、薬剤学的組成物は2ケ月に1回、1ケ月に1回、1ケ月に2-4回、週1回、または2週に1回投与される。
【0110】
一部の具現例において、1回、2回、3回、または4回の訪問に亘って総容量のポリヌクレオチドコンストラクトを複数の注射部位に投与するステップは単一周期(cycle)を含むことができる。特に、2回の訪問に亘って32mg、16mg、8mg、または4mgのポリヌクレオチドコンストラクトを複数の注射部位に投与するステップは単一周期を含むことができる。2回の訪問は3日、5日、7日、14日、21日、または28日の間隔でありうる。
【0111】
一部の具現例において、前記周期は反復できる。前記周期は2回、3回、4回、5回、6回、またはその以上反復できる。一部の具現例において、前記の周期は以前の周期後、1ケ月、2ケ月、3ケ月、4ケ月、5ケ月、6ケ月、7ケ月、8ケ月、9ケ月、10ケ月、11ケ月、12ケ月、またはその以上反復できる。
【0112】
一部の具現例において、後続周期に投与される総容量は以前周期に投与された総容量と同一である。一部の具現例において、後続周期に投与される総容量は以前周期に投与された総容量と相異する。
【0113】
一部の具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは患部(affected site)(例えば、影響を受けた四肢(affected limb))当たり8mgの容量で投与され、複数の注射及び複数の訪問に同一に分割され、任意の単一訪問で複数の注射の各々は別途の注射部位で遂行される。特定の具現例において、DNAコンストラクトは患部当たり8mgの容量で投与され、0日に部位当たり4mgの第1容量と14日に部位当たり4mgの第2容量に同等に分割され、各々第1及び第2容量は複数の注射容量に同一に分割される。一部の具現例において、患部当たり8mgの投与は周期を構成することができ、前記周期は1回、2回、3回、またはその以上反復できる。
【0114】
投与される実際量、投与の速度、及び時間-過程は治療される痛みの性質及び重症度によって変わる。典型的な具現例において、ポリヌクレオチドコンストラクトは神経病症性痛みを減少させることに効果的な量(amount)で投与される。一部の具現例において、前記量(amount)は投与1週以内に神経病症性痛みを減少させることに効果的である。一部の具現例において、前記量は投与2週、3週、または4週以内に神経病症性痛みを減少させることに効果的である。
【0115】
一部の具現例において、HGFの2つの異型体、即ちflHGFをコーディングする第1コンストラクト及びdHGFをコーディングする第2コンストラクトの発現を誘導するために2つの相異する類型のコンストラクトが共に投与される。一部の具現例において、flHGF及びdHGF全ての発現を誘導するためにflHGF及びdHGF全てをコーディングする単一コンストラクトが伝達される。
【0116】
当業者に公知された通常的な技術によれば、薬剤学的組成物は前述したように薬剤学的に許容可能な担体及び/又はビヒクル(vehicle)と共に剤形化されることができ、最終的にいろいろな形態の単位容量形態及び多重容量形態を提供することができる。剤形(formulation)の非-制限的な例はオイルまたは水性媒質のうちの溶液(solution)、懸濁液(suspension)、または油剤(emulsion)、抽出物(extract)、エリキシル(elixir)、粉末(powder)、顆粒(granule)、錠剤(tablet)、及びカプセル(capsule)を含むが、これに制限されず、追加で分散剤(dispersion agent)または安定剤(stabilizer)を含むことができる。
【0117】
3.6.変異型(Variation)
【0118】
最適の容量範囲を確認することに助けになるようにin vivo及び/又はin vitro分析を選択的に使用することができる。剤形に使われる正確な容量はまた関連化学療法薬物、投与経路及び状態の深刻度によって変わり、医者の判断と各対象体の状況によって決定されなければならない。効果的な容量はin vitroまたは動物モデルテストシステムから由来した容量-反応曲線から外挿法(extrapolation)により推定できる。
【0119】
一部の具現例において、前記方法はCIPN及び痛み状態を診断する追加的なステップを含む。診断は神経伝導研究を通じての筋電図検査、皮膚神経の神経分布を評価するための皮膚生検、及び組織病理学的評価のための神経及び筋肉生検を含むことができる。
【0120】
ポリヌクレオチドコンストラクトは治療される状態によって同時に、または順次に、単独で、または他の治療と組合せて投与できる。
【0121】
4.薬剤学的組成物
【0122】
典型的な具現例において、核酸コンストラクトは液体薬剤学的組成物で投与される。
【0123】
4.1.注射に適合した薬剤学的組成物及び単位容量形態
【0124】
静脈内(intravenous)、筋肉内(intramuscular)、皮内(intradermal)、または皮下(subcutaneous)注射のために、核酸コンストラクトは発熱源のない(pyrogen-free)適切なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容可能な水溶液の形態である。当業者は、例えば塩化ナトリウム注射剤(Sodium Chloride Injection)、リンゲル注射剤(Ringer’s Injection)、乳酸化リンゲル注射剤(Lactated Ringer’s Injection)のような等張性ビヒクルを使用して適合した溶液を容易に製造することができる。必要によって保存剤(preservative)、安定剤(stabilizer)、緩衝剤(buffer)、抗酸化剤(antioxidant)及び/又はその他の添加剤(additive)が含まれることができる。
【0125】
多様な具現例において、核酸コンストラクトは0.01mg/ml、0.05mg/ml、0.1mg/ml、0.25mg/ml、0.5mg/ml、または1mg/mlの濃度で液体組成物に存在する。一部の具現例において、単位容量形態は0.01mg/ml、0.1mg/ml、0.5mg/ml、または1mg/mlの濃度の2mlの薬剤学的組成物を含むバイアル(vial)である。
【0126】
一部の具現例において、単位容量形態はバイアル、アンプル、瓶、または予め-充填された注射器である。一部の具現例において、単位容量形態は0.01mg、0.1mg、0.2mg、0.25mg、0.5mg、1mg、2.5mg、5mg、8mg、10mg、12.5mg、16mg、24mg、25mg、50mg、75mg、100mg、150mg、または200mgの本発明のポリヌクレオチドを含有する。
【0127】
典型的な具現例において、単位容量形態の薬剤学的組成物は液体形態である。多様な具現例において、単位容量形態は0.1ml~50mlの間の薬剤学的組成物を含有する。一部の具現例において、単位容量形態は0.25ml、0.5ml、1ml、2.5ml、5ml、7.5ml、10ml、25ml、または50mlの薬剤学的組成物を含有する。
【0128】
特定の具現例において、単位容量形態は皮下(subcutaneous)、皮内(intradermal)、または筋肉内(intramuscular)投与に適合した単位容量形態の具現例で1mlの薬剤学的組成物を含有するバイアルであり、予めローディングされた注射器(preloaded syringe)、自動-注射器(auto-injector)及び自動-注射ペン(auto-inject pen)を含み、各々は前記記載された薬剤学的組成物の予め決定された量を含有する。
【0129】
多様な具現例において、単位容量形態は注射器及び予め決定された量の薬剤学的組成物を含む予めローディングされた注射器である。特定の予めローディングされた注射器の具現例において、注射器は皮下投与に適している。特定の具現例において、注射器は自家-投与(self-administration)に適している。特定の具現例において、予めローディングされた注射器は使い捨て注射器である。
【0130】
多様な具現例において、予めローディングされた注射器は約0.1ml~約0.5mlの薬剤学的組成物を含有する。特定の具現例において、注射器は約0.5mlの薬剤学的組成物を含有する。具体的な具現例において、注射器は約1.0mlの薬剤学的組成物を含有する。特定の具現例において、注射器は約2.0mlの薬剤学的組成物を含有する。
【0131】
特定の具現例において、単位容量形態は自動-注射ペンである。自動-注射ペンは本明細書に記載された薬剤学的組成物を含有する自動-注射ペンを含む。一部の具現例において、自動-注射ペンは予め決定された体積の薬剤学的組成物を伝達する。他の具現例において、自動-注射ペンは使用者により設定された体積の薬剤学的組成物を伝達するように構成される。
【0132】
多様な具現例において、自動-注射ペンは約0.1ml~約5.0mlの薬剤学的組成物を含有する。具体的な具現例において、自動-注射ペンは約0.5mlの薬剤学的組成物を含有する。特定の具現例において、自動-注射ペンは約1.0mlの薬剤学的組成物を含有する。他の具現例において、自動-注射ペンは約5.0mlの薬剤学的組成物を含有する。
【0133】
4.2.凍結乾燥されたDNA剤形
【0134】
一部の具現例において、本発明の核酸コンストラクトは凍結乾燥された剤形から再構成された液体組成物として投与される。具体的な具現例において、本願にその全文が参照により含まれている米国特許第8,389,492号に開示された凍結乾燥されたDNA剤形は再構成後に使われる。
【0135】
一部の具現例において、本発明の核酸コンストラクトは凍結乾燥前に炭水化物及び塩を含む特定賦形剤(excipient)と共に剤形化される。診断剤または治療剤に活用されるDNAの凍結乾燥された剤形の安定性は安定化量の炭水化物を含む水溶液で、凍結乾燥前にDNAを剤形化することによって増加できる。
【0136】
本発明のDNA剤形の炭水化物はスクロース(sucrose)、グルコース(glucose)、ラクトース(lactose)、トレハロース(trehalose)、アラビノース(arabinose)、ペントース(pentose)、リボース(ribose)、キシロース(xylose)、ガラクトース(galactose)、ヘキソース(hexose)、アイドース(idose)、マンノース(mannose)、タロース(talose)、ヘプトース(heptose)、果糖(fructose)、グルコン酸 (gluconic acid)、ソルビトール(sorbitol)、マンニトール (mannitol)、メチルα-グルコピラノサイド(methyl a-glucopyranoside)、マルトース(maltose)、イソアスコルブ酸(isoascorbic acid)、アスコルブ酸 (ascorbic acid)、ラクトン(lactone)、ソルボス(sorbose)、グルカル酸(glucaric acid)、エリトロース(erythrose)、トレオース (threose)、アロース (allose)、アルトロース(altrose)、グロース(gulose)、エリトルロース(erythrulose)、リブロース (ribulose)、キシルロース(xylulose)、サイコース(psicose)、タガトース (tagatose)、グルクロン酸 (glucuronic acid)、ガラクツロン酸 (galacturonic acid)、マンヌロン酸(mannuronic acid)、グルコサミン(glucosamine)、ガラクトサミン(galactosamine)、ニュラミン酸(neuraminic acid)、アラビナン(arabinan)、フラクタン(fructan)、フカン(fucan)、ガラクタン (galactan)、ガラクツロナン(galacturonan)、グルカン(glucan)、マンナン(mannan)、キシラン(xylan)、レバン(levan)、フコイダン(fucoidan)、カラギナン(carrageenan)、ガラクトカロロース(galactocarolose)、ペクチン(pectin)、ペクチン酸(pectic acid)、アミロース(amylose)、プルラン(pullulan)、グリコーゲン(glycogen)、アミロペクチン(amylopectin)、セルロース(cellulose)、デキストラン(dextran)、サイクロデキストリン(cyclodextrin)、プスツラン(pustulan)、キチン(chitin)、アガロース(agarose)、ケラチン(keratin)、コンドロイチン(chondroitin)、デルマタン(dermatan)、ヒアルロン酸(hyaluronic acid)、アルギン酸(alginic acid)、ザンサンガム(xantham gum)、または澱粉(starch)のような単糖類、オリゴ糖類、または多糖類である。
【0137】
一連の一具現例において、炭水化物はマンニトールまたはスクロースである。
【0138】
凍結乾燥前の炭水化物溶液は水単独内の炭水化物に相応できるか、または緩衝液が含まれることができる。このような緩衝液の例はPBS、HEPES、TRIS、またはTRIS/EDTAを含む。典型的に、炭水化物溶液は約0.05%~約30%スクロース、典型的に0.1%~約15%スクロース、例えば0.2%~約5%、10%、または15%スクロース、好ましくは約0.5%~10%スクロースの間、1%~5%スクロース、1%~3%スクロース、及び最も好ましくは約1.1%スクロースの最終濃度でDNAと結合される。
【0139】
本発明のDNA剤形の塩はNaClまたはKClである。特定の態様によれば、前記塩はNaClである。追加的な態様によれば、DNA剤形の塩は約0.001%~約10%の間、約0.1%~5%の間、約0.1%~4%の間、約0.5%~約2%の間、約0.8%~1.5%の間、約0.8%~1.2%w/vの間からなる群より選択された量で存在する。特定の具現例において、DNA剤形の塩は約0.9%w/vの量で存在する。
【0140】
凍結乾燥された剤形から再構成された液体組成物の最終濃度は、約1ng/mL~約30mg/mLのプラスミドである。例えば、本発明の剤形は約1ng/mL、約5ng/mL、約10ng/mL、約50ng/mL、約100ng/mL、約200ng/mL、約500ng/mL、約1μg/mL、約5μg/mL、約10μg/mL、約50μg/mL、約100μg/mL、約200μg/mL、約400μg/mL、約500μg/mL、約600μg/mL、約800μg/mL、約1mg/mL、約2mg/mL、約2.5mg/mL、約3mg/mL、約3.5mg/mL、約4mg/mL、約4.5mg/mL、約5mg/mL、約5.5mg/mL、約6mg/mL、約7mg/mL、約8mg/mL、約9mg/mL、約10mg/mL、約20mg/mL、または約30mg/mLのプラスミドの最終濃度を有することができる。本発明の特定の具現例において、DNAの最終濃度は約100μg/mL~約2.5mg/mLである。本発明の特定の具現例において、DNAの最終濃度は約0.5mg/mL~1mg/mLである。
【0141】
本発明のDNA剤形は当業界に公知された標準条件下で凍結乾燥される。本発明のDNA剤形の凍結乾燥方法は、(a)DNA剤形、例えばプラスミドDNA、塩及び炭水化物を含むDNA剤形が盛られた容器(container)、例えばバイアルを凍結乾燥器にローディングするステップであって、前記プラスミドDNAはHGF遺伝子またはその変異体を含み、前記凍結乾燥器は約5℃~約-50℃の開始温度を有することであるステップ;(b)DNA剤形を零下の温度(例:-10℃~-50℃)で冷却させるステップ;及び(c)DNA剤形を実質的に乾燥させるステップを含むことができる。本発明のDNA剤形の凍結乾燥条件、例えば温度及び持続時間は凍結乾燥媒介変数、例えば使われた凍結乾燥機械の類型、使われたDNA量、及び使われた容器のサイズに影響を及ぼす要因を考慮して当業者により調整できる。
【0142】
凍結乾燥されたDNA剤形を盛り込んだ容器は、その後、多様な温度(例えば、室温~約-180℃、好ましくは約2-8℃~約-80℃、より好ましくは約-20℃~約-80℃、及び最も好ましくは約-20℃)で長時間の間封入され保管できる。特定の態様によれば、凍結乾燥されたDNA剤形は有意な活性を失わないで、少なくとも6ケ月の期間の間、約2-8℃から約-80℃までの範囲内で好ましくは安定である。また、プラスミドDNA剤形の安定した貯蔵は研究またはプラスミド-基盤治療のような使用前に長期間安定した形態にプラスミドDNAを貯蔵することに相応することができる。貯蔵期間は数ケ月、1年、5年、10年、15年、または最大20年でありうる。好ましくは、製剤は少なくとも約3年の期間の間、安定である。
【0143】
本発明の方法で再構成された凍結乾燥されたDNAの濃度は伝達される剤形の量、対象体の年齢及び体重、伝達方法及び経路、そして伝達される抗原の免疫原性を含む多い要因によって調整される。
【実施例】
【0144】
次の実施例は本発明を製造し使用する方法に対する完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されたものであり、本発明者らが彼らの発明と見なす範囲を制限しようとする意図でなく、次の実験が全てのまたは唯一の遂行された実験であることを示すための意図でもない。使われた数字(例:量、温度など)と関連して正確性を保証するために努力したが、一部の実験的な誤謬及び偏差が考慮されなければならない。異に表示されない限り、部分(parts)は重量部(parts by weight)であり、分子量(molecular weight)は重量平均分子量(weight average molecular weight)であり、温度は摂氏温度(degrees Celsius)であり、圧力は大気圧または周辺大気圧(near atmospheric)である。標準略語は例えば、bp、塩基対(base pair);kb、キロベース(kilobase);pl、ピコリットル(picoliter);sまたはsec、秒(second);min、分(minute);hまたはhr、時間(hour);aa、アミノ酸(amino acid);nt、ヌクレオチド(nucleotide);などのように使われることができる。
【0145】
異に指示されない限り、本発明の実施は当業界技術内の蛋白質化学、生化学、組み換えDNA技術、及び薬理学の通常的な方法を使用する。
【0146】
実施例1:HGFの異型体をコーディングする核酸コンストラクトの製造
【0147】
米国特許第7,812,146号に記載されたHGFの異型体をコーディングする多様なコンストラクトが使われた。
【0148】
要するに、pCKベクターはHGFの異型体が発現できるベクターに使われた。両方ともその全文が参照により含まれた Lee et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 272: 230 (2000); WO 2000/040737に詳細に開示されたように、遺伝子、例えばHGF遺伝子の発現がHCMV(human cytomegalovirus)のエンハンサー/プロモーター下で調節されるようにpCKベクターは構成される。さらに、VEGFをコーディングするcDNAをpCKベクターにクローニングしてpCK-VEGFを作っており、pCK-VEGFに形質転換された大腸菌は1999年12月27日に韓国微生物貯蔵センター(受託番号:KCCM-10179)に寄託された。pCKベクターは配列番号5のポリヌクレオチドを含む。pCKベクターは人体臨床試験に使われ、その安定性と効能が確認された(Henry et al., Gene Ther. 18:788 (2011))。
【0149】
HGFの異型体をコーディングする多様な配列はHGFコンストラクトを生成するために使われた。特に、ヒトHGFのエクソン1~18及びヒトHGF遺伝子のイントロン4に該当するcDNAまたはその断片を含むコンストラクトが生成された。前記コンストラクトで、イントロン4はcDNAのエクソン4とエクソン5の間に挿入される。
【0150】
一部の場合、コンストラクトはイントロン4の全体配列を含む。一部の場合、コンストラクトはイントロン4の断片を含む。例えば、コンストラクトは配列番号7~配列番号14からなる群より選択されたヌクレオチド配列を含むことができる。配列番号7のヌクレオチド配列は7113bpであり、イントロン4の全体配列を含むコンストラクトに該当する。配列番号8~14のヌクレオチド配列はイントロン4の断片を含むコンストラクトに該当する。
【0151】
したがって、本願で提供される方法で使われることができるコンストラクトは次のような構造を有する:(i)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-5438)-(エクソン5~エクソン18);(ii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-2244ヌクレオチド3168-5438)-(エクソン5~エクソン18);(iii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-2244ヌクレオチド4168-5438)-(エクソン5~エクソン18);(iv)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-2244ヌクレオチド5117-5438 of 8)-(エクソン5~エクソン18);(v)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド2240-5438)-(エクソン5~エクソン18);(vi)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド3168-5438)-(エクソン5~エクソン18);(vii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド4168-5438)-(エクソン5~エクソン18);または(viii)(エクソン1~エクソン4)-(配列番号7のヌクレオチド483-728ヌクレオチド5117-5438)-(エクソン5~エクソン18)。
【0152】
本明細書で、ヒトHGFのイントロン4またはその断片を含むハイブリッドHGF遺伝子は“HGF-X”と命名される。HGF-Xは各々配列番号7~配列番号14のヌクレオチド配列を有するHGF-X1、HGF-X2、HGF-X3、HGF-X4、HGF-X5、HGF-X6、HGF-X7、及びHGF-X8を含む(前記表1参照)。
【0153】
HGFの2つの異型体(即ち、flHGF及びdHGF)は各々のコンストラクトからエクソン4とエクソン5の間の選択的スプライシングにより生成できるということが以前に立証された。また、多様なHGFコンストラクトのうち、HGF-X7はHGFの2つの異型体(即ち、flHGF及びdHGF)の最も高い水準の発現を示した。
【0154】
pCKベクターでクローニングされたHGF-X7は本出願に提供された治療方法の効能をテストするために使われた。米国特許第7,812,146号に開示されたように、pCK-HGF-X7に形質転換された大腸菌(Escherichia coli)Top10F’は2002年3月12日受託番号KCCM-10361で寄託された。
【0155】
実施例2:パクリタキセル(タキサン)により誘発された末梢神経病症のマウスモデルに対するpCK-HGF-X7の治療効果
【0156】
パクリタキセル(paclitaxel、PTX)は特にタキソル(Taxol)というブランド名で販売される化学療法薬物である。パクリタキセルは卵巣癌(ovarian cancer)、乳癌(breast cancer)、肺癌(lung cancer)、カポジ肉腫(Kaposi sarcoma)、子宮頸癌(cervical cancer)及び膵癌(pancreatic cancer)を含んだいろいろな類型の癌を治療することに使われる。パクリタキセルはタキサン(taxane)系列薬物に属し、細胞分裂中に微細小管(microtubule)の正常な機能を妨害して作用する。薬物のありふれた副作用には末梢神経病症(peripheral neuropathy)と神経病症性痛み(neuropathic pain)が含まれる。
【0157】
パクリタキセルにより誘発された神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の治療効果はマウスモデルを使用して研究された。
図2aに示したように、パクリタキセルを9-週齢の雌Balb/cマウスに1週間、毎日、腹腔内注射を通じて投与した。化学療法注射開始後、1週間後、ボンフレイのフィラメントテスト(Von Frey’s filament test)を通じて異質痛(allodynia)水準を評価し、35%以上の足撤退頻度(paw withdrawal frequency)反応を示すマウスを研究の実験対象に選択した。0週次に化学療法剤を受けないsham-処理された動物(sham-treated animal)を対照群に使用した。
【0158】
実験動物に(i)200μgのpCK-HGF-X7または(ii)対照群としてHGF-X7ペイロード(payload)のない200μgのpCKベクター2つのうちの1つを筋肉内注射により投与した。機械的異質痛(mechanical allodynia)は次の5週間、毎週、テストされた。また、本明細書に提供された実験プロトコルは
図2aに要約されている。
【0159】
図2bに示すように、sham-処理された動物(Sham)は実験中ずっと低い水準の痛みを示した。一方、パクリタキセルを処理した動物は1週次に増加した足撤退頻度(paw withdrawal frequency)を示しており、研究期間中ずっと足撤退頻度は高く維持された(データは表示されない)。1週次にパクリタキセルを処理した動物を2群に分けて、一群にはpCK-HGF-X7を注射し、対照群として他の群にはpCKベクターを注射した。
【0160】
pCK-HGF-X7を注射した場合、パクリタキセル-処理された動物の足撤退頻度は有意に減少したが、pCKを注射した場合には足撤退頻度に変化がなかった。この結果はpCK-HGF-X7を処理した動物が対照群動物(ShamまたはpCK)に比べて痛みが減少したことを示唆する。このようなデータはpCK-HGF-X7の筋肉内投与がパクリタキセル-誘発神経病症性痛みで有意な痛み緩和効果を有することができることを示唆した。
【0161】
実施例3:ビンクリスチン(植物アルカロイド)により誘発された末梢神経病症のマウスモデルに対するpCK-HGF-X7の治療効果
【0162】
ロイロクリスチン(leurocristine)とも知られているビンクリスチン(vincristine)は、特にオンコビン(Oncovin)というブランド名で販売される化学療法薬物である。ビンクリスチンは植物アルカロイド(plant alkaloid)に分類される。ビンクリスチンは急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、ホジキン病 (Hodgkin’s disease)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)及び小細胞肺癌(small cell lung cancer)を始めとするいろいろな類型の癌を治療することに使われる。ビンクリスチンは部分的にチューブリン蛋白質に結合して、中期(metaphase)の間、細胞が染色体を分離できないようにする。その後、細胞は細胞死滅(apoptosis)を経る。また、ビンクリスチンは白血球生成と成熟を抑制することと公知されている。薬物のありふれた副作用には神経病症性痛みが含まれる。
【0163】
ビンクリスチンにより誘発された神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の治療効果はマウスモデルを使用して研究された。
図3aに示すように、ビンクリスチンを5-週齢の雄Balb/cマウスに2週間、毎日、腹腔内注射を通じて投与した。化学療法注射開始後、1週間後に、ボンフレイのフィラメントテスト(Von Frey’s filamenttest)を通じて異質痛水準を評価し、35%以上の足撤退頻度反応を示すマウスを研究の実験対象に選択した。0週次に化学療法剤を受けないsham-処理された動物(Sham-treated animal)を対照群に使用した。
【0164】
実験動物に(i)200μgのpCK-HGF-X7または(ii)対照群としてHGF-X7ペイロード(payload)がない200μgのpCKベクター2つのうちの1つを筋肉内注射により投与した。機械的異質痛は次の4週間、毎週、テストされた。また、本明細書で提供された実験プロトコルは
図3aに要約されている。
【0165】
図3bに示すように、sham-処理された動物(Sham)は実験中ずっと低い水準の痛みを示した。一方、ビンクリスチンを処理した動物は1週次に足撤退頻度が増加しており、研究期間中ずっと足撤退頻度が高く維持された(データは表示されないこと)。1週次にビンクリスチンを処理した動物を2群に分けて、一群にはpCK-HGF-X7を注射し、対照群として他の群にはpCKベクターを注射した。
【0166】
ビンクリスチン-処理された動物の足撤退頻度はpCK-HGF-X7を注射した場合、有意に減少したが、pCKを注射した場合には足撤退頻度は変わらなかった。この結果はpCK-HGF-X7を処理した動物が対照群動物(pCKベクターだけ)に比べて痛みが減少したことを示唆する。このようなデータはpCK-HGF-X7の筋肉内投与がビンクリスチン-誘発神経病症性痛みで有意な痛み緩和効果があることを示唆した。
【0167】
実施例4:ボルテゾミブ(プロテアソーム阻害剤)により誘発された末梢神経病症のマウスモデルに対するpCK-HGF-X7の治療効果
【0168】
ボルテゾミブ(Bortezomib)は癌治療のためにヒトに使われる最初の治療用プロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor)である。ボルテゾミブは30%の患者で痛みを伴う末梢神経病症と関連がある。
【0169】
ボルテゾミブにより誘発された神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の治療効果をマウスモデルを使用して研究した。
図4aに示すように、ボルテゾミブを7-週齢の雄C57BL/6マウスに2週間、週3回、i.p.注射した。化学療法注射開始後、1週間後に、ボンフレイのフィラメントテストを通じて異質痛水準を評価し、35%以上の足撤退頻度反応を示すマウスを研究の実験対象に選択した。0週次に化学療法剤を受けないsham-処理された動物(Sham-treated animal)を対照群に使用した。
【0170】
実験動物に(i)200μgのpCK-HGF-X7または(ii)対照群としてHGF-X7ペイロード(payload)のない200μgのpCKベクターのうちの1つを筋肉内注射により投与した。機械的異質痛は化学療法注射開始後、1週間後に始めて毎週テストされた。また、本明細書に提供された実験プロトコルは
図4aに要約されている。
【0171】
図4bに示すように、sham-処理された動物(Sham)は実験中ずっと低い水準の痛みを示した。一方、ボルテゾミブを処理した動物は1週次に増加された足撤退頻度を示し、研究期間中ずっと足撤退頻度は高く維持された(データは表示されない)。2週次にボルテゾミブを処理した動物を2群に分けて、一群にはpCK-HGF-X7を注射し、対照群として他の群にはpCKベクターを注射した。
【0172】
ボルテゾミブ-処理された動物の足撤退頻度はpCK-HGF-X7を注射した場合、有意に減少したが、pCKを注射した場合には足撤退頻度は変わらなかった。このようなデータはpCK-HGF-X7の筋肉内投与がボルテゾミブ-誘発神経病症性痛みで有意な痛み緩和効果を提供することを示唆した。
【0173】
実施例5:シスプラチン(白金類似体)により誘発された末梢神経病症のマウスモデルに対するpCK-HGF-X7の治療効果
【0174】
シスプラチン(Cisplatin)は皐丸癌(testicular cancer)、卵巣癌(ovarian cancer)、子宮頚癌(cervical cancer)、乳癌(breast cancer)、膀胱癌.(bladder cancer)、頭頚部癌(head and neck cancer)、食道癌(esophageal cancer)、肺癌(lung cancer)、中皮腫(mesothelioma)、脳腫瘍(brain tumor)、及び神経芽細胞腫(neuroblastoma)を始めとする多数の癌を治療することに使われる化学療法薬物である。末梢神経病症はシスプラチンの深刻な副作用であるが、他の化学療法薬物に比べてありふれない。
【0175】
シスプラチンにより誘発された神経病症性痛みに対するpCK-HGF-X7の治療効果はマウスモデルを使用して研究された。
図5aに示すように、シスプラチンを9-週齢の雄C57BL/6マウスに2週間、2日に1回、腹腔内注射により投与した。化学療法注射開始後、1週間後にボンフレイのフィラメントテストを通じて異質痛水準を評価し、35%以上の足撤退頻度反応を示すマウスを研究の実験対象に選択した。0週次に化学療法剤を受けないsham-処理された動物(Sham-treated animal)を対照群に使用した。
【0176】
実験動物に(i)200μgのpCK-HGF-X7または(ii)対照群としてHGF-X7ペイロード(payload)のない200μgのpCKベクターのうちの1つを筋肉内注射により投与した。機械的異質痛は次の3週間、毎週、テストされた。また、本明細書に提供された実験プロトコルは
図5aに要約されている。
【0177】
図5bに示すように、sham-処理された動物(Sham)は実験中ずっと低い水準の痛みを示した。一方、シスプラチンを処理した動物は1週次に増加した足撤退頻度を示し、研究期間中ずっと足撤退頻度は高く維持された(データは表示されない)。1週次にシスプラチンを処理した動物を2群に分けて、一群にはpCK-HGF-X7を注射し、対照群として他の群にはpCKベクターを注射した。
【0178】
pCK-HGF-X7を注射した場合、シスプラチン-処理された動物の足撤退頻度は有意に減少したが、pCKを注射した場合には足撤退頻度は変わらなかった。このようなデータはpCK-HGF-X7の筋肉内投与がシスプラチン-誘発神経病症性痛みで有意な痛み緩和効果を有するということを立証する。
【0179】
配列
【0180】
【0181】
文献の援用(INCORPORATION BY REFERENCE)
【0182】
本出願で引用された全ての刊行物、特許、特許出願書、及びその他の文書は、各々の個別刊行物、特許、特許出願書、またはその他の文書が全ての目的で参照により含まれることと個別的に表示されることと同一の程度に、全ての目的でその全文が参照により本願に含まれる。
【0183】
均等物(EQUIVALENTS)
【0184】
多様な具体的な実施例が例示及び説明されたが、前記明細書は制約的でない。本発明の思想(spirit)及び範囲を逸脱することなく多様な変更がなされることができることが理解できる。本明細書を検討すれば、多い変形が当業者に明白である。
(付記)
本開示は以下の態様を含む。
<1>
次のステップを含む化学療法薬物に対する露出と関連した神経病症性痛み(neuropathic pain)を治療する方法:
化学療法薬物に以前に露出した対象体(subject)にヒトHGF蛋白質の2つの異型体(isoform)を発現できる第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップであって、
前記核酸コンストラクトは次を含む:
ヒトHGF遺伝子のエクソン1~4を含む第1配列または前記第1配列の縮退性配列、
ヒトHGF遺伝子のイントロン4を含む第2配列または前記第2配列の断片、及び
ヒトHGF遺伝子のエクソン5~18を含む第3配列または前記第3配列の縮退性配列。
<2>
前記化学療法薬物は、 植物アルカロイド(plant alkaloid)、タキサン(taxane)、エポチロン(epothilone)、プロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor)、免疫調節剤(immunomodulator)、及び抗腫瘍生物学的製剤(antineoplastic biologic)からなる群より選択されるものである、<1>に記載の方法。
<3>
前記化学療法薬物は、ビンクリスチン(vincristine)、ボルテゾミブ(bortezomib)、パクリタキセル(paclitaxel)、またはシスプラチン(cisplatin)である、<2>に記載の方法。
<4>
前記化学療法薬物はパクリタキセル(paclitaxel)である、<3>に記載の方法。
<5>
前記化学療法薬物はビンクリスチン(vincristine)である、<3>に記載の方法。
<6>
前記化学療法薬物はボルテゾミブ(bortezomib)である、<3>に記載の方法。
<7>
前記化学療法薬物はシスプラチン(cisplatin)である、<3>に記載の方法。
<8>
前記対象体(subject)はヒト患者である、<1>~<7>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<9>
前記対象体(subject)は癌(cancer)を病んでいるものである、<1>~<8>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<10>
前記方法は第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ後、1週以上後に核酸コンストラクトを対象体(subject)に再投与するステップを追加的に含むものである、<1>~<9>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<11>
前記再投与するステップは、第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ後、少なくとも2週、3週、4週、5週、または10週後に遂行されるものである、<10>に記載の方法。
<12>
前記再投与するステップは、第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ後、少なくとも10日、15日、20日、30日、40日、50日、または100日後に遂行されるものである、<10>に記載の方法。
<13>
前記対象体(subject)は第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップ及び前記再投与するステップの間に核酸コンストラクトの投与を受けないものである、<10>~<12>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<14>
前記第1配列及び前記第3配列はイントロンのないものである、<1>~<13>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<15>
前記HGFの2つの異型体(isoform)は全長HGF(full-length HGF、flHGF)及び欠失された変異型HGF(deleted variant HGF、dHGF)を含むものである、<1>~<14>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<16>
前記全長HGF(flHGF)は配列番号1のポリペプチドを含み、欠失された変異型HGF(dHGF)は配列番号2のポリペプチドを含むものである、<15>に記載の方法。
<17>
前記第1配列は配列番号3のポリヌクレオチドを含むものである、<1>~<16>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<18>
前記第2配列は配列番号6のポリヌクレオチドまたはその断片を含むものである、<1>~<17>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<19>
前記第3配列は配列番号4のポリヌクレオチドを含むものである、<1>~<18>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<20>
前記核酸コンストラクトは配列番号13のポリヌクレオチドを含むものである、<1>~<19>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<21>
前記核酸コンストラクトはpCKベクターを追加的に含むものである、<20>に記載の方法。
<22>
前記核酸コンストラクトはVM202である、<21>に記載の方法。
<23>
前記第1治療的有効量の核酸コンストラクトを投与するステップまたは前記再投与するステップは、核酸コンストラクトの筋肉内注射を1つ以上含むものである、<1>~<22>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<24>
前記第1治療的有効量の核酸コンストラクトは1μg~100mgの間、10μg~50mgの間、100μg~10mgの間、1mg~25mgの間、または1mg~10mgの間である、<1>~<23>のうち、いずれか一項に記載の方法。
<25>
化学療法薬物に対する露出と関連した神経病症性痛み(neuropathic pain)を治療するためのヒトHGF蛋白質の2つの異型体(isoform)を発現できる核酸コンストラクトを含む薬剤学的組成物であって、
前記核酸コンストラクトは次を含むものである、薬剤学的組成物:
ヒトHGF遺伝子のエクソン1~4を含む第1配列または前記第1配列の縮退性配列、
ヒトHGF遺伝子のイントロン4を含む第2配列または前記第2配列の断片、及び
ヒトHGF遺伝子のエクソン5~18を含む第3配列または前記第3配列の縮退性配列。
<26>
前記化学療法薬物は、 植物アルカロイド(plant alkaloid)、タキサン(taxane)、エポチロン(epothilone)、プロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor)、免疫調節剤(immunomodulator)、及び抗腫瘍生物学的製剤(antineoplastic biologic)からなる群より選択されるものである、<25>に記載の組成物。
<27>
前記化学療法薬物は、ビンクリスチン(vincristine)、ボルテゾミブ(bortezomib)、パクリタキセル(paclitaxel)、またはシスプラチン(cisplatin)である、<26>に記載の組成物。
<28>
前記ヒトHGF蛋白質の2つの異型体(isoform)は全長HGF(full-length HGF、flHGF)及び欠失された変異型HGF(deleted variant HGF、dHGF)を含むものである、<25>~<27>のうち、いずれか一項に記載の組成物。
<29>
前記全長HGF(flHGF)は配列番号1のポリペプチドを含み、欠失された変異型HGF(dHGF)は配列番号2のポリペプチドを含むものである、<28>に記載の方法。
<30>
前記核酸コンストラクトは配列番号13のポリヌクレオチドを含むものである、<25>~<29>のうち、いずれか一項に記載の組成物。
【配列表】