(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】固形化透湿構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08K 3/04 20060101AFI20230301BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20230301BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230301BHJP
C08L 5/08 20060101ALI20230301BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20230301BHJP
C08L 93/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C08K3/04
C08K5/09
C08L1/00
C08L5/08
C08L93/04
C08L93/00
(21)【出願番号】P 2018218943
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2017230187
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517418965
【氏名又は名称】株式会社セルロンジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】押田 豊
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099177(WO,A1)
【文献】特開2017-178697(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138477(WO,A1)
【文献】特開2002-018280(JP,A)
【文献】特表2017-529230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
JSTPlus/JMEDPlus/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化物粒子と、
前記炭化物粒子を担持する担持体と、
前記炭化物粒子と前記担持体との間に定着剤成分と
を含有し、
前記担持体は、ナノセルロース(セルロースナノファイバー及び/またはセルロースナノクリスタル)、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、及びカルボキシルメチルセルロース(CMC)ナノファイバーの少なく
とも1つであり、
前記定着剤成分の基となる定着剤は酢液を主剤とする固形化透湿構造体。
【請求項2】
炭化物粒子と、
前記炭化物粒子を担持する担持体と、
前記炭化物粒子と前記炭化物粒子との間に固着付与剤成分と
を含有し、
前記担持体は、ナノセルロース(セルロースナノファイバー及び/またはセルロースナノクリスタル)、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、及びカルボキシルメチルセルロース(CMC)ナノファイバーの少なく
とも1つであり、
前記固着付与剤成分または前記固着付与剤成分の基となる固着付与剤はロジンエステル又はうるしである固形化透湿構造体。
【請求項3】
前記固形化透湿構造の表面に、前記担持体、固着付与剤または水溶性高分子を溶解した溶液をスプレー照射し、乾燥させた請求項1又は2に記載の固形化透湿構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の固形化透湿構造体の製造方法であって、
前記炭化物粒子、前記担持体及び前記定着剤を水に分散するための分散工程と、
前記分散された水を加熱するための加熱工程と、
前記加熱された水を脱水するための脱水工程と、
前記脱水された物質を乾燥するための乾燥工程と
を具備する固形化透湿構造体の製造方法。
【請求項5】
請求項2に記載の固形化透湿構造体の製造方法であって、
前記炭化物粒子、前記担持体及び前記固着付与剤を水に分散するための分散工程と、
前記分散された水を加熱するための加熱工程と、
前記加熱された水を脱水するための脱水工程と、
前記脱水された物質を乾燥するための乾燥工程と
を具備する固形化透湿構造体の製造方法。
【請求項6】
前記担持体及び前記定着剤の分散を前記分散工程で行い、かつ前記分散を前記加熱工程でも行う請求項4に記載の固形化透湿構造体の製造方法。
【請求項7】
前記担持体及び前記固着付与剤の分散を前記分散工程で行い、かつ前記分散を前記加熱工程でも行う請求項5に記載の固形化透湿構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化物粒子を用いた固形化透湿構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木材、野菜、果物、生薬を対象とした低温乾燥方式において、乾燥機の躯体を形成する壁、天井、扉、床に透湿構造体が用いられる。この場合、炭化物粒子は水蒸気の吸湿性、内部拡散性及び脱湿性を有するので、透湿構造体に用いられる。
【0003】
図10は従来の非固形化透湿構造
体を示す断面図である(参照:特許文献1)。
【0004】
図10に示すごとく、非固形化透湿構造
体は、直径0.1μm~10mmの炭化物粒子101aよりなる炭化物粒子層101と、炭化物粒子層101を挟んだ直径0.1μm~100μmの孔102aを有する2つの透湿性シート102-1、102-2とによって構成されている。この場合、炭化物粒子101aの表面が他の物質によって覆われていない。従って、0.4nm程度の水蒸気粒子よりなる水蒸気Vは拡散現象で透湿性シート102-1によって透湿され、さらに炭化物粒子層101によって吸湿及び内部拡散され、透湿性シート102-2から透湿され、高い水蒸気透湿性を呈する。
【0005】
図11は従来の固形化透湿構造
体を示し、(A)は全体斜視図、(B)は内部拡大断面図である(参照:特許文献2)。
【0006】
図11に示すごとく、
固形化透湿構造
体は平均粒径1~600μmの炭化物粒子201と5~60重量%含有する熱可塑性樹脂よりなる発泡担持体202とによって構成されている。従って、炭化物粒子201は発泡担持体202によって担持されているので、炭化物粒子201の飛散はなく、使用時間の経過と共に炭化物粒子が沈降することはない。つまり、振動に対する耐振動性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5963101号公報
【文献】特開2001-181431号公報(特許第4571723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図10に示す従来の非固形化透湿構造
体においては、炭化物粒子層101の炭化物粒子101aの飛散防止のために透湿性シート102-1、102-2の網目を細かくする必要があるという課題がある。また、使用時間の経過と共に炭化物粒子101aが振動によって沈降するので、振動に対する耐振動性が低いという課題もある。
【0009】
他方、
図11に示す従来の固形化透湿構造
体においては、発泡担持体202によって覆われている炭化物粒子201の表面積が大きいので、炭化物粒子201の露出表面積は小さくなり、この結果、炭化物粒子201の水蒸気透湿機能を十分発揮できないという課題がある。
【0010】
さらに、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、ロジンエステル、うるし、リグニン、リグノフェノール等のナノメートルレベルよりサイズの小さな高分子サイズレベルの結合体による担持では、高分子サイズレベルの担持力に依存することになり、十分な担持力を得るためには、炭化物粒子の表面積の大きな部分を覆う必要がありうる。従って、炭化物粒子の水蒸気透湿機能を低下させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、本発明に係る固形化透湿構造体は、炭化物粒子と、炭化物粒子を担持する担持体と、炭化物粒子と担持体との間に定着剤成分とを含有し、担持体は、ナノセルロース(セルロースナノファイバー及び/またはセルロースナノクリスタル)、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、及びカルボキシルメチルセルロース(CMC)ナノファイバーの少なくとも1つであり、定着剤成分の基となる定着剤は酢液を主剤とするものである。
【0012】
また、本発明に係る固形化透湿構造体の製造方法は、上述の固形化透湿構造体を製造するために、炭化物粒子、担持体及び定着剤を水に分散するための分散工程と、分散された水を加熱するための加熱工程と、加熱された水を脱水するための脱水工程と、脱水された物質を乾燥するための乾燥工程とを具備するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭化物粒子は担持体によって担持されるので、炭化物粒子の飛散を防止できると共に炭化物粒子の沈降を防止できる。従って、振動に対する耐振動性を向上できる。また、ナノメートルレベルの担持体によって覆われる炭化物粒子の表面積は非常に小さいので、炭化物粒子による水蒸気透湿機能を最大限に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る固形化透湿構造
体の第1の実施の形態を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【
図2】
図1の固形化透湿構造
体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明に係る固形化透湿構造
体の第2の実施の形態を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【
図4】
図3の固形化透湿構造
体の製造方法を説明するためのフローチャートである。尚、ここでは加熱工程を伴う例を示す。
【
図5】透湿速度測定装置を示し、(A)は横断面図、(B)は透湿容器の上面図である。
【
図8】本発明に係る固形化透湿構造
体の第3の実施の形態を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【
図9】
図8の固形化透湿構造
体の製造方法を説明するためのフローチャートである。尚、ここでは加熱工程を伴う例を示す。
【
図10】従来の非固形化透湿構造
体を示す断面図である。
【
図11】従来の固形化透湿構造
体を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る固形化透湿構造
体の第1の実施の形態を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【0016】
図1に示すように、炭化物粒子1は担持体2によって担持される。この場合、炭化物粒子1はたとえば直径0.1μm~100μm程度であるのに対し、担持体2はナノセルロース(セルロースナノファイバー及び/又はセルロースナノクリスタル)、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバー、カルボキシルメチルセルロース(CMC)ナノファイバーの少なくとも1つであり、直径は非常に小さい。たとえば、ナノセルロースファイバーは長さ5μm以上、径は4~100nmであり、セルロースナノクリスタルは長さ100~500nm、径100~500nmである。厚さtはたとえば10~30mmである。従って、
図11の従来の固形化透湿構造
体と同様に、炭化物粒子1は飛散されず、しかも振動による沈降もなく、この結果、振動に対する耐振動性を向上できる。また、炭化物粒子1の担持体2によって覆われる表面積は非常に小さいので、炭化物粒子1による水蒸気Vの透湿機能を十分発揮できる。
【0017】
次に、
図1の固形化透湿構造
体の製造方法を
図2を参照して説明する。
【0018】
始めに、炭化物粒子準備工程21において、炭化物粒子1として破砕機で粒子径を小さくした炭(出雲カーボン株式会社、「炭八」、炭化温度800度、炭化度90%以上)20gを準備する。尚、この場合の炭化物粒子1の粒径分布は、一定量をステンレス篩で分級した結果、
125μm-90μm:3.1g
125μm以上:7.6g
90μm以下:なし
であった。
【0019】
次に、ナノセルロース準備工程22において、ナノセルロースを含む溶液を準備する。たとえば、ナノセルロースファイバーであれば、植物細胞壁を機械的解織等によって製造され、セルロースナノクリスタルであれば、酸加水分解によって製造される。ここでは、セルロースナノファイバーを含む水溶液(BiNFi-sシリーズ、WMa-10002、スギノマシン製、2wt.%)を10g準備する。
【0020】
次に、炭化物粒子/ナノセルロース分散工程23において、上述の炭化物粒子20g及びセルロースナノファイバーを含む水溶液10gに1リットルの水道水に加え、20分撹拌した(LAB. STIRRER 社、MS3040、Max.3000rpm、AC100W)。撹拌機の回転速度を約300rpmとした。
【0021】
次に、脱水工程24において、炭化物粒子/ナノセルロース分散工程23における水道水を1リットルポリ瓶に移し、直径0.1μm~100μmの孔を有する透湿性シートを敷いた吸引ろ過器で濾過することによって脱水した。
【0022】
次に、乾燥工程25において、乾燥機内に移し、上面側に直径0.1μm~100μmの孔を有する透湿性シートを載置し、温度45度として、減圧ポンプ(1 Stage Vacuum Pump CE, Model A68N05, 最低実現圧力:10Pa)で乾燥機内を減圧して乾燥した。
【0023】
最後に、切断工程26において、所望の大きさに切断した。
【0024】
尚、ナノセルロース準備工程22、炭化物粒子/ナノセルロース分散工程23では、ナノセルロースの代りに、キチンナノファイバー、キトサンナノファイバーあるいはカルボキシルメチルセルロース(CMC)ナノファイバー又はこれらの組合せを用いてもよい。
【0025】
また、
図1に示す第1の実施の形態は固定化構造
体をなしているので、必要に応じて1つ又は2つの透湿性シート(参照:
図10)を省略することもできる。
【0026】
図3は本発明に係る固形化透湿構造
体の第2の実施の形態を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【0027】
図3に示すように、
図1の炭化物粒子1及び担持体2に加えて炭化物粒子1と担持体2との間に定着剤成分3が設けられている。定着剤成分3の基となる定着剤は竹酢液等の酢液を主剤とする。この場合、
図3の固形化透湿構造
体は
図1の固形化透湿構造
体に比較して定着剤成分3によって振動に対する耐振動性を向上させることができた。
【0028】
次に、
図3の固形化透湿構造
体の製造方法を
図4を参照して説明する。
【0029】
図4においては、
図2の工程に対して酢液準備工程71、加熱工程72を付加すると共に、炭化物粒子/ナノセルロース分散工程23を炭化物粒子/ナノセルロース/酢液分散工程23’とした。
【0030】
酢液準備工程71では、竹酢液(カインズホーム製)を15cc準備する。
【0031】
次に、炭化物粒子/ナノセルロース/酢酸分散工程23’において、上述の炭化物粒子20g、セルロースナノファイバーを含む水溶液10g(2wt%)及び酢液15ccに1リットルの水道水に加え、20分撹拌した(LAB. STIRRER 社、MS3040、Max.3000rpm、AC100W)。撹拌機の回転速度を約300rpmとした。
【0032】
次に、加熱工程では、加熱しながら撹拌し、77℃に到達した約2分後に、撹拌を止める。この時点で撹拌を止めて容器に蓋をして加熱を続けた。撹拌停止後5分経過したら煮沸が始まった。煮沸を15分続け加熱を停止した。尚、竹酢液の投入は加熱開始から煮沸中でよく、セルロースナノファイバーを含む水溶液の投入も加熱開始から煮沸開始まででよい。
【0033】
その後、脱水工程24、乾燥工程25、切断工程26が行われる。
【0034】
また、
図3に示す第2の実施の形態も固定化構造
体をなしているので、必要に応じて1つ又は2つの透湿性シート(参照:
図10)を省略することもできる。
【0035】
次に、
図3の固形化透湿構造
体Aの透湿性(透湿速度)と
図10に示す従来の非固形化透湿構造
体Bの透湿性(透湿速度)との比較を行った。
【0036】
カップ法透湿速度測定を
図5の透湿速度測定装置を用いて行った。
【0037】
図5において、インキュベータ30(INCUBATOR SIB-35 株式会社三商製)内に
図3の固形化透湿構造
体A用のポリエチレン製の透湿容器31a及び
図10の非固形化透湿構造
体B用のポリエチレン製の透湿容器31b(図示せず)を設ける。各透湿容器31a、31bのサイズは縦100mm×横80mm×高さ50mmであり、各透湿容器31a、31bの上部にサイズ97mm×65mmの開口部32a、32b(図示せず)を設ける各透湿容器31a、31b(図示せず)の底部には115gの塩化カルシウム顆粒(DCMホールディングス(株)発売の湿気とり)よりなる吸湿剤33a、33b(図示せず)を入れる。面積110mm×80mmで加工した
図3の固形化透湿構造
体A及び
図10の非固形化透湿構造
体Bをゴム製のクッションラバー対34a、34bで上下に挟み、さらに、サイズ縦110mm×横180mm×高さ5mmの合板対35a、35b(図示せず)で透湿容器31a、31bとクッションラバー対34a、34bとを挟み、4隅を直径5.5mm×高さ100mm鋼製のボルトねじ36a、36b、ワッシャ、ナットで締めた。尚、インキュベータ30内下部に恒温槽(Water Bath BM100、ヤマト科学株式会社製)を設ける。
【0038】
次に、
図5の透湿速度測定装置の動作を説明する。インキュベータ30内を恒温槽で50℃に設定し、恒温槽内の2.5Lの水を50℃に加温した。インキュベータ30内の蒸気圧は飽和蒸気圧(相対湿度100%)にほぼ等しいと想定した。水蒸気Vはインキュベータ30内に収納した固形化透湿構造
体A及び非固形化透湿構造
体Bを透過し、21時間後の吸湿剤33a、33bに吸水された量を電子天秤(FA-200、精度0.01g、研精工業株式会社製)で重量測定した。この結果、固形化透湿構造
体Aを設置した吸湿剤33aは7.06gの水蒸気を吸収し、非固形化透湿構造
体Bを設置した吸湿剤33bは7.10gの水蒸気を吸収した。従って、固形化透湿構造
体A(第2の実施の形態)、非固形化透湿構造
体B(従来)の透湿速度は以下のように計算される。
A:7.06/0.0063×(24/21)=1281(g/m
2/day)
B:7.10/0.0063×(24/21)=1288(g/m
2/day)
【0039】
このように、
図3の固形化透湿構造
体Aと
図10の非固形化透湿構造
体Bとを比較すると、透湿速度はほぼ同じで、水蒸気透湿機能の低下は見られなかった。
【0040】
次に、
図3の固形化透湿構造
体Aの耐振動性と
図10の非固形化透湿構造
体Bの耐振動性との比較を行った。
【0041】
【0042】
図6において、縦16cm×横12cm×高さ11cmのポリエチレン製の蓋なし容器41の中に縦11cm×横8cm×高さ4.7cmのポリエチレン製の蓋あり容器42を収納する。容器41の下部には、振動発生ユニット43(NISSOミューμ-1000(観賞魚飼育用エアポンプ)、AC100V/25W/(50/60Hz)、 日本水槽工業株式会社)を設ける。
【0043】
次に、
図6の振動測定装置の動作を説明する。容器41内の底面に紙44を1枚敷き、その上に容器42を置き、その上に固形化透湿構造
体A又は非固形化透湿構造
体Bを載せ、3分間振動させた後に、固形化透湿構造
体A又は非固形化透湿構造
体Bを取出し、紙44及び容器41内に落下した炭化物粒子の重量を上述の電子天秤で測定した。測定結果を
図7に示す。
【0044】
このように、
図10の非固形化透湿構造
体Bに比べ、
図3の固形化透湿構造
体Aにおいては、落下炭重量が少ないことから炭化物粒子の耐振動性が向上したことが分かった。
【0045】
図8は本発明に係る固形化透湿構造
体の第3の実施の形態を示し、(A)は全体断面図、(B)は内部拡大断面図である。
【0046】
図8に示すように、
図1の炭化物粒子1及び担持体2に加えて炭化物粒子1と炭化物粒子1との間に固着付与剤成分4が設けられている。固着付与剤成分4または固着付与成分4の基となる固着付与剤はロジンエステル
又はうるしである。この場合、
図8の固形化透湿構造
体は
図1の固形化透湿構造
体に比較して固着付与剤成分4によって振動に対する耐振動性を向上させることができる。
【0047】
次に、加熱工程を含む
図8の固形化透湿構造
体の製造方法の例を
図9を参照して説明する。但し、加熱工程を省略できる場合は省略してもよい。
【0048】
図9においては、
図2の工程に対してロジンエステル準備工程91、加熱工程92を付加すると共に、炭化物粒子/ナノセルロース分散工程23を炭化物粒子/ナノセルロース/ロジンエステル分散工程23”とする。
【0049】
ロジンエステル準備工程91では、ロジンエステルを10g準備する。
【0050】
次に、炭化物粒子/ナノセルロース/ロジンエステル分散工程23”において、上述の炭化物粒子20g、セルロースナノファイバーを含む水溶液10g及びロジンエステル10gに1リットルの水道水に加え、20分撹拌する(LAB. STIRRER 社、MS3040、Max.3000rpm、AC100W)。撹拌機の回転速度を約300rpmとする。
【0051】
次に、加熱工程92では、加熱しながら撹拌し、77℃に到達した約2分後に、撹拌を止める。この時点で撹拌を止めて容器に蓋をして加熱を続ける。撹拌停止後煮沸が始まったら、煮沸を15分続け加熱を停止する。尚、竹酢液の投入は加熱開始から煮沸中でよく、セルロースナノファイバーを含む水溶液の投入も加熱開始から煮沸開始まででよい。
【0052】
その後、脱水工程24、乾燥工程25、切断工程26が行われる。
【0053】
また、
図8に示す第3の実施の形態も固定化構造
体をなしているので、必要に応じて1つ又は2つの透湿性シート(参照:
図10)を省略することもできる。
【0054】
さらに、上述の実施の形態においては、固形化透湿構造体の表面に、担持体、固着付与剤または水溶性高分子(ポリマー)を溶解した溶液をスプレー照射し、乾燥させることにより、固形化透湿構造体の透湿機能を大きく落とさず、固形化透湿構造体の固化の程度を増大することができる。水溶性ポリマーとしては、天然由来のデンプン、ゼラチン、半合成のカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸系ポリマー、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンオキシド(PEO)等の合成系ポリマーのうち、透湿機能を有するものが適する。
【0055】
本発明は上述の実施の形態の自明の範囲でいかなる変更にも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1:炭化物粒子
2:担持体
3:定着剤成分
4:固着付与剤成分