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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】吐出容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230301BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230301BHJP
   B65D 1/32 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B65D1/02 111
B65D83/00 G
B65D1/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018093072
(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公開番号】P2019199261
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000206185
【氏名又は名称】大成化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100107593
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 太郎
(72)【発明者】
【氏名】三橋 博一
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-143133(JP,A)
【文献】特開2004-262470(JP,A)
【文献】特開2013-147295(JP,A)
【文献】特開2015-037967(JP,A)
【文献】特開2002-240862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 83/00
B65D 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口部と弾性的にスクイズ変形可能な胴部とを有する外層ボトルと、
前記外層ボトルの前記胴部内に設けられ、揮発性成分を含有する流動性を有する内容物が内部に充填され、且つ、収縮可能な内層袋と、
前記外層ボトルの前記口部に取り付けられ、前記内層袋内の前記内容物を外部に吐出するための吐出路を有するノズル部材と、を備え、
前記外層ボトルには、前記外層ボトルと前記内層袋との間に外気を導入する外気導入孔が設けられ、
前記外気導入孔が塞がれた状態で前記外層ボトルをスクイズ変形させることによって外層ボトルと内層袋との間の空間内の空気が加圧されると、この加圧空気により前記内層袋が圧縮されてノズル部材の吐出路から内容物が吐出される、吐出容器において、
前記内層袋は、前記外層ボトルの前記胴部内に収容されている部分において、その前後側部が比較的厚肉とされ且つ左右側部が比較的薄肉とされており、前記前後側部の比較的厚肉の部分は、前記内層袋の上下方向幅の50%を超える領域にわたって設けられている、吐出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の吐出容器において、
前記外層ボトルの前記胴部は、前後側壁部と左右側壁部とを有し且つ左右幅より前後幅が小さい断面扁平筒状に構成されるとともに、前記前後側壁部を前後方向内方に押圧することにより当該前後側壁部により前後内方に押し込まれる前記内層袋の前後側部同士が接触するまでスクイズ変形可能である、吐出容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吐出容器において、
前記外気導入孔は、前記内層袋の前後側部の少なくともいずれか一方の左右方向及び上下方向の略中央に対応する位置に設けられている、吐出容器。
【請求項4】
請求項1,2又は3に記載の吐出容器において、
前記内層袋には、出荷時の前記内層袋の満容積に対して80容積%未満の内容物が充填され、残りの容積は気体で満たされており、
さらに、前記内層袋の前後側部の肉厚及び左右側部の肉厚は、
保存条件を40℃±2℃/25%RH±5%RHとする試験期間3ヶ月の加速試験を行った場合の内容物の蒸散量が5重量%以下となるよう設定されているとともに、
前記内層袋内に出荷時の5重量%の内容物が残存しているときに前記外層ボトルの胴部の前後側壁部を1.0kgfの力で押圧すると前記内容物が吐出されるまで前記内層袋が収縮するよう設定されている、
吐出容器。
【請求項5】
請求項1,2又は3に記載の吐出容器において、
前記内層袋には、出荷時の前記内層袋の満容積に対して80容積%未満の内容物が充填され、残りの容積は気体で満たされており、
さらに、前記内層袋の前後側部の肉厚及び左右側部の肉厚は、
保存条件を40℃±2℃/25%RH±5%RHとする試験期間3ヶ月の加速試験を行った場合の内容物の蒸散量が5重量%以下となるよう設定されているとともに、
前記内層袋内に出荷時の5重量%の内容物が残存しているときに外層ボトルと内層袋との間の空間が200kPaまで加圧されると前記内容物が吐出されるまで前記内層袋が収縮するよう設定されている、
吐出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外層ボトル内に設けた内層袋内に揮発性成分を含有する内容物を充填しておき、外層ボトルのスクイズ変形によって外層ボトルと内層袋との間の空気を加圧すると、この加圧空気により内層袋が圧縮されて内容物が吐出されるように構成された吐出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、従前より、積層ボトルを用いた吐出容器の開発を行っており、その開発成果を例えば下記の特許文献1~8に開示している。
【0003】
この従来の吐出容器は、スクイズ変形可能な胴部の上端に口部が設けられた外層ボトルと、外層ボトルの内部に設けられるとともに外層ボトルの口部に接続される開口部を有する内層袋と、外層ボトルの口部に取付けられたノズル部材(口栓)とを備えている。外層ボトルには、外層ボトルと内層袋との間に外気を導入するための導入孔が形成されている。
【0004】
ノズル部材には内層袋の内部に収容された流動性を有する内容物を吐出するための吐出路が設けられ、該吐出路にフィルターと逆止弁とを設けている。フィルターとしては、濡れた状態で気体の通過を遮断するメンブレンフィルターなどが用いられ、これにより、外気が吐出路を介して内層袋内に流入することを阻止し、外気中に浮遊するウィルスや細菌類の侵入を阻止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-233971号公報
【文献】特開2009-291326号公報
【文献】特開2009-179403号公報
【文献】特開2005-111094号公報
【文献】特開2004-262470号公報
【文献】特開2002-080055号公報
【文献】特開2001-114328号公報
【文献】特開2001-001389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内容物の吐出操作は、外層ボトルのピンチングによって行うことができる。より詳細には、内容物の満充填時は、内層袋が外層ボトル内面に密着しているので、外層ボトルの押圧力が、直接、内層袋に作用して内層袋が収縮変形し、これにより内圧が上昇し、内容物が吐出路を介して外部に吐出される。内容物が減少するにつれて内層袋が収縮し、元の形状に復元した外層ボトルの内周面と収縮状態で維持される内層袋の外周面との間に空間が生じる。この空間が生じた状態で外層ボトルをピンチングによりスクイズ変形させると、当該空間内の空気が加圧され、この加圧空気によって内層袋が圧搾され、その結果内容物が吐出される。
【0007】
加圧空気による内層袋の収縮性は、主として内層袋の肉厚に依存する。したがって、より低い加圧空気圧力で内容物を吐出可能にするには、内層袋の肉厚は小さい方が好ましい。
【0008】
一方、上述の積層ボトルの水蒸気バリア性も、主として内層袋の肉厚に依存している。外層ボトルには外気導入孔が形成されており、内層袋が外気に晒されているものと同視できるからである。したがって、内容物に含有される揮発性成分、例えば溶媒としての水分の透過を抑制し、長期保管時の内容物の安定性を向上するには、内層袋の肉厚は大きい方が好ましい。
【0009】
特に、近年、日米欧医薬品規制調和国際会議(ICH)での合意に基づく安定性ガイドラインにおいて、長期保管時の安定性が従前より高い水準で求められており、上述の積層ボトルにおいても内容物の全量吐出を可能としつつ安定性(言い換えれば水蒸気バリア性)を向上する必要がある。
【0010】
本願出願人の現行製品では、成形誤差等による多少の肉厚差が生じるものの、設計上は内層袋の肉厚は約0.1mm程度の均一肉厚としているが、ICH規格対応品とするためには、内層袋の収縮性を同程度に維持しつつバリア性を一層向上する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の吐出容器は、外層ボトルと、内層袋と、ノズル部材とを備えている。
【0012】
外層ボトルは、口部と、弾性的にスクイズ変形可能な胴部と、を有している。典型的には、胴部上端に口部が肩部を介して一体的に設けられる。また、好ましくは、胴部の下端には底部が一体的に設けられ、外層ボトル全体としては有底筒状のボトルとして構成される。好ましくは、口部は剛性を有するように比較的厚肉の円筒状に構成する。好ましくは、胴部は、前後側壁部と左右側壁部とを有し、左右幅より前後幅が小さい断面扁平筒状に構成する。より好ましくは、前後側壁部は比較的厚肉に構成し、左右側壁部は比較的薄肉に構成する。
【0013】
外層ボトルには、外層ボトルと内層袋との間に外気を導入する外気導入孔が設けられる。この外気導入孔は、胴部に設けられていてもよく、口部に設けられていてもよく、底部に設けられていてもよい。また外気導入孔の形状乃至構造は適宜のものであってよく、例えば丸孔であってもよいし、スリットであってもよい。好ましくは、外気導入孔は、前後側壁部の少なくともいずれか一方の中央部分に設けることができる。外気導入孔は、スクイズ時に使用者の指で塞いでもよいし、外気導入孔に、外層ボトル内への外気の導入は許容するが外層ボトル内からの気体の流出は阻止する逆止弁を設けてもよい。
【0014】
内層袋は、前記外層ボトルの前記胴部内に設けられる。内層袋及び外層ボトルは積層パリソンのブロー成形によって同時に成形してもよいし、内層袋と外層ボトルとを個別に成形した後に内層袋を外層袋内に挿入してもよい。好ましくは内層袋は開口部を有し、この開口部が外層ボトルの口部に適宜の手段によって固定される。また、内層袋の下端部が、外層ボトルの底部に適宜の手段によって固定されていてもよい。
【0015】
内層袋の内部には、揮発性成分を含有する流動性を有する内容物が充填される。その充填量は、出荷時の内層袋の満容積の80容積%未満であることが好ましく、より好ましくは70容積%未満であり、残りの容積は気体で満たされている。内層袋は、内容物の減少に伴って収縮可能である。
【0016】
ノズル部材は、外層ボトルの口部に取り付けられるとともに、内層袋内の内容物を外部に吐出するための吐出路を有する。好ましくは、ノズル部材の吐出路に、濡れた状態で気体の通過を遮断するフィルターを設けて、内層袋内の内容物の吐出は許容するが内層袋内の気体の流出を阻止し、これにより内層袋が収縮する過程で内層袋内の気体が減少しないようにするのが良い。
【0017】
前記外気導入孔が塞がれた状態で前記外層ボトルをスクイズ変形させることによって外層ボトルと内層袋との間の空間内の空気が加圧されると、この加圧空気により前記内層袋が圧縮されてノズル部材の吐出路から内容物が吐出される。なお、内容物が出荷時からさほど減少していないときには、外層ボトルの胴部の前後側壁部によって内層袋が直接圧縮されるように構成されていてもよい。
【0018】
また、内容物の残量が僅かになったときでも、外層ボトルの胴部の前後側壁部を前後方向内方に押圧すると、当該前後側壁部により内層袋の前後側部が前後内方に押し込まれて、内層袋の前後側部同士が接触するまで、外層ボトルの胴部をスクイズ変形可能に構成することもできる。この場合、吐出容器の左右側部における外層ボトルと内層袋との間の空間内の気体が外層ボトルのスクイズ変形により加圧されて、この加圧空気により内層袋の左右側部にも圧縮力が作用して、内層袋内が加圧される。
【0019】
前記内層袋は、その前後側部が比較的厚肉とされ且つ左右側部が比較的薄肉とされている。なお、「前後側部が比較的厚肉とされ」とは、左右側部との対比において前後側部が比較的厚肉であることを意味し、内層袋の前後側部のすべてが比較的厚肉の部分である必要はないが、内層袋の上下方向幅の50%を超える領域にわたって比較的厚肉部分が設けられていることが好ましい。また、「左右側部が比較的薄肉とされ」とは、前後側部との対比において左右側部が比較的薄肉であることを意味し、内層袋の左右側部のすべてが比較的薄肉の部分である必要はないが、好ましくは、外層ボトルの口部や肩部や底部に対向し又は接触する部位や、それらへの接続部分を除き、比較的薄肉となるよう成形することが好ましい。また、前後側部が左右側部に比して比較的厚肉とは、平均して比較的厚肉であればよく、同等の厚肉の部位が多少存在していてもよい。
【0020】
好ましい肉厚は、内容物に含まれる揮発性成分の種類、内層袋の材質や形状や大きさ、求められる収縮性並びに安定性によっても異なってくる。例えば、内層袋がPP製であって、内容物が揮発性成分として水分を含有し、12ヶ月の長期保管時の安定性が要求される場合には、左右側部の平均肉厚は0.06~0.10mm、前後側部の平均肉厚は0.10~0.20mmとすることができる。より好ましくは、左右側部の平均肉厚は0.08~0.10mm、前後側部の平均肉厚は0.15~0.17mmとすることができる。
【0021】
比較的厚肉の前後側部は、主として内容物に含まれる揮発性成分の蒸散防止に寄与する。一方、比較的薄肉の左右側部は、内層袋の収縮変形性の向上に寄与する。
【0022】
本発明における解決原理について簡単な例を挙げて説明すると、内層袋の内表面の全面積から揮発性成分が透過蒸散するとともに、揮発性成分の透過度は内層の肉厚に反比例するものとし、内表面積をS、肉厚0.1mmのときの単位面積・単位時間あたりの透過度をPとする。この場合、内層袋の内表面全体からの単位時間あたりの蒸散量はS・Pとなる。内層袋の前後側部の厚肉部分の占める面積を0.7S、厚肉部分の肉厚を(1/1.5)・P、左右側部の薄肉部分の占める面積を0.3S、薄肉部分の肉厚を1.5Pであるとすると、内層袋の内表面全体からの単位時間あたりの蒸散量は0.7S×0.66P+0.3S×1.5P≒0.9S・Pとなり、蒸散量を約1割削減できる。一方、内層袋の前後側部を比較的厚肉とし、左右側部を比較的薄肉とすることで、左右側部を可撓性の良好な折り曲げ部として機能させ、前後側部を前後内方に圧縮させることに対する抵抗が大きくなることを防止し、前後側部を厚肉としつつも収縮性を良好なものとすることができる。したがって、従前の均一肉厚の内層に比して、収縮性を同等なものとしつつ長期保管時の安定性を向上できる。
【0023】
好ましくは、内層袋の前後側部には、その50%以上の領域に亘る平坦な厚肉部位を設けることができ、これにより、前後側部の厚肉部位が略平坦なまま前後方向内方に圧縮させることができる。
【0024】
好ましくは、前記外気導入孔は、前記内層袋の前後側部の少なくともいずれか一方の左右方向及び上下方向の略中央に対応する位置で外層ボトルの前後側壁部に設けられる。外層ボトルの胴部の前後側壁部に比較的厚肉部分が設けられている場合、この比較的厚肉部分の左右方向及び上下方向の略中央に外気導入孔を設けることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、内層袋の前後側部を比較的厚肉とし且つ左右側部を比較的薄肉として、それぞれの肉厚を適切に設定することにより、保存条件を40℃±2℃/25%RH±5%RHとする試験期間3ヶ月の加速試験を行った場合の内容物の蒸散量が5重量%以下であり、且つ、前記内層袋内に出荷時の5重量%の内容物が残存しているときに前記外層ボトルの胴部の前後側壁部を1.0kgfの力で押圧すると前記内容物が吐出されるまで前記内層袋が収縮するよう、吐出容器を構成できる。したがって、外層ボトルのスクイズ変形により内層袋を圧縮して内容物の吐出を行う吐出容器において、長期保管時の内容物の安定性を向上しつつも、ピンチング力の弱い老人であっても内容物を全量吐出可能に構成できる。
【0026】
また、前記内層袋の前後側部の肉厚及び左右側部の肉厚は、保存条件を40℃±2℃/25%RH±5%RHとする試験期間3ヶ月の加速試験を行った場合の内容物の蒸散量が5重量%以下となるよう設定されているとともに、前記内層袋内に出荷時の5重量%の内容物が残存しているときに外層ボトルと内層袋との間の空間が200kPaまで加圧されると前記内容物が吐出されるまで前記内層袋が収縮するよう設定されていてもよい。
【0027】
なお、「内容物の蒸散量」とは、より正確には内容物に含有される揮発性成分の蒸散量のことであり、「内容物の蒸散量が5重量%以下」とは、試験開始時の内容物の全重量に対して揮発性成分の蒸散量が5重量%以下であることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る吐出容器の外層ボトル及び内層袋の出荷時の状態を示しており、図1(a)は正面図、図1(b)は図1(a)のA-A線断面図(縦断面図)である。
図2図1(a)のB-B線断面拡大図(胴部横断面図)である。
図3】内層袋が収縮した状態の胴部横断面図である。
図4】内容物の残量が5重量%となったときの状態を示す縦断面図である。
図5図4に示す状態から外層ボトルをスクイズ変形した状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の基本構成は上記特許文献1~8に開示されており、内層袋の肉厚設定、並びに、出荷時の内容物の充填率を除き同様の構成であってよい。したがって、ノズル部材については図示省略している。以下の説明において、ノズル部材の構成については、特に特許文献1を参照されたい。
【0030】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に係る吐出容器の外層ボトル21及び内層袋22の出荷時の状態を示している。本実施形態に係る吐出容器は、有底筒状の積層パリソンをブロー成形してなる内外二層構造の積層ボトルと、積層ボトルの口部に装着されるノズル部材(口栓)とを備えており、ノズル部材には内容物を吐出するための吐出路が設けられている。また、ノズル部材の吐出路内には、フィルターと、該フィルターの吐出上流側で初回の吐出時まで吐出路を封止する栓体とが設けられている。積層ボトル倒立させて胴部を押圧によりスクイズすることにより、積層ボトル内部の内容物がノズル部材内の吐出路を通って先端ノズル部から滴下されるようになっている。
【0031】
図1では上下反転した状態で図示しているが、上記積層ボトルは、外層を構成する外層ボトル21(スクイズボトル)と、内層を構成する内層袋22(内容物収容袋)との積層構造とされている。外層ボトル21並びに内層袋22は、ブロー成形直後は、共に円筒状の口部と、横断面楕円状の胴部とを有する。外層ボトル21は、例えばPETやSBSなどの合成樹脂材により成形することができ、内層袋22は、外層ボトル21に対して容易に剥離する性質を有する合成樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン)により成形でき、電子線滅菌やγ線滅菌に耐性のある材料であればなお良い。なお、内層袋22の口部は、内容物の放出用開口部を構成し、該内層袋22の開口部は外層ボトル21の口部に固定的に接続されている。
【0032】
外層ボトル21は、弾性的にスクイズ変形可能な断面扁平筒状の胴部21Aの上端に、上方に移行するにしたがって徐々に縮径する肩部21Bを介して円筒状の口部21Cが設けられたものである。また、胴部21Aの下端には底部21Dが設けられており、外層ボトル21全体として有底筒状に構成されている。この外層ボトル21の詳細構造はどのようなものであっても良いが、上記特許文献2に開示したように胴部21Aの前後側壁部21Aaが剛性の大きな厚肉壁部とされ、胴部21Aの左右側壁部21Abが可撓性に富む薄肉壁部とされた構成とすることができる。
【0033】
また、外層ボトル21には、外層ボトル21と内層袋22との間に外気を導入するための導入孔3が形成されている。この導入孔3は、胴部21Aの前後側壁部21Aaの上下方向及び左右方向の中央部分に設けることが好ましいが、ボトル底部や口部に設けることも可能である。
【0034】
内層袋22は、その胴部がフィルム状を呈しており、内容物の減少に伴って容易に収縮変形する一方、内容物を吐出した後にフィルターよりも吐出下流側で吐出路の先端ノズル部内に残留する内容物をフィルターの上流側に吸い戻す程度の復元弾性を有していてよい。
【0035】
図1(b)に示すように、内層袋22内には、出荷時の内層袋22の満容積に対して50%~70容積%程度の内容物を充填することが好ましい。内層袋22の満容積に対する内容物の充填率が大きい程、内容物に含有される揮発性成分の蒸散率においては有利となるが内層袋22内の空間の容積(すなわち内層袋22内の気体の体積)が少なくなって全量吐出性は悪化する。したがって、後述する内層袋22の肉厚条件の最適化にあたっては、内層袋22の満容積に対する内容物の充填率との関係も考慮することが好ましい。
【0036】
図1(b)に示した例では出荷時の内層袋22は外層ボトル21の内面に全体にわたって密着しているが、出荷時に内層袋22をある程度収縮させておくこともでき、その場合には収縮させた状態の内層袋22の内容積が本発明における「満容積」となる。また、「内層袋の満容積」とは、ノズル部材の装着状態における内容物の充填可能な最大容積であり、ノズル部材の装着によって内層袋の内部容積が減少する場合もあり得る。内層袋22の残りの容積は気体で満たされている。かかる気体としては滅菌された空気や窒素などを用いることができる。
【0037】
本実施形態では、図2に示すように、外層ボトル21の胴部21A内に収容されている部分において、内層袋22の前後側部の平均肉厚が左右側部の平均肉厚に比較して大きい。図示例では、主として外層ボトル21の前後側壁部21Aaに対向する部位において内層袋22の前後側部が左右側部に比して比較的厚肉とされている。このような内層袋22の肉厚制御は、例えば、ブロー成形用の積層パリソンの射出成形時に、前後側部となる部位を比較的厚肉に成形しておくことや、ブロー成形時の成形条件の最適化等によって行うことができる。
【0038】
内層袋22の左右側部及び底部は比較的薄肉に成形され、内層袋22の口部は比較的厚肉に成形されていることが好ましい。
【0039】
外層ボトル21の前後側壁部21Aaに対向する内層袋22の前後側部の厚肉部位は、出荷時は図2に示すように平坦であり、内容物の減少によって内層袋22が徐々に収縮していく際も図3に示すように略平坦な状態を保つようになっている。
【0040】
出荷時に内層袋22内に充填された気体の量は、内層袋22が収縮していく際も一定である。図4は、内層袋22内に出荷時の5重量%の内容物が残存している状態を示しているが、内層袋22内には気体が充填されているために、この状態でも内層袋22をさらに圧縮可能である。したがって、図5に示すように外層ボトル21をスクイズ変形させると、まず外層ボトル21と内層袋22との間の空間内の空気が加圧され、この加圧空気により内層袋22が圧縮され、これにより内層袋22の内部圧力が上昇して、この内部圧力によって内容物の全量吐出を可能としている。本実施形態では、内層袋の口部も変形しないため、吐出時に僅かな内容物がすべて口部内に流入してしまう場合には、出荷時の内層袋の満容積に対する内容物の充填率を最大でも80容積%程度に抑え、残りの容積を気体で満たしておくことで、内容物が全量吐出されるまで内層袋を圧縮可能に構成することが好ましい。
【0041】
内層袋がPP製であり、出荷時の満容積10mL、出荷時の内容量5mL、内容物として水を溶媒とする点眼液剤を充填する場合に、保存条件を40℃±2℃/25%RH±5%RHとする試験期間3ヶ月の加速試験を行った場合の内容物の蒸散量を5重量%以下に抑え、且つ、比較的力の弱い老人でも比較的容易にボトルのスクイズによる全量吐出を行えるようにするためには、本願出願人が従前より製造している製品における内層袋の肉厚が0.10mm程度であることを考慮すると、本実施形態の内層袋の前後側部の平均肉厚は0.10~0.20mm、左右側部の平均肉厚は0.06~0.10mmとすることが好ましいと考えられる。左右側部の強度確保のために、左右側部の最低肉厚を0.06mmとすることができる。前後側部の最低肉厚は0.10mmとすることができる。
【0042】
図1に示すボトル胴部形状の長径寸法(すなわち左右幅)に対する短径寸法(すなわち前後幅)の比率(以下、「扁平率」という。)によっても好ましい肉厚条件は異なってくると考えられる。前後側部を平坦に成形することによって楕円輪郭形状の短径側頂部からの前後側部の凹み量Dを一定とした場合、扁平率が大きくなる程、楕円仮想輪郭形状の短径側頂部Xの曲率が大きくなって、平坦な前後側部の左右幅が小さくなるため、設計条件が一層厳しくなると考えられる。本願発明者のコンピュータシミュレーションを用いた解析によれば、扁平率が70%の場合には、内層袋の前後側部が0.15~0.19mmの範囲内の所定の均一肉厚、左右側部が0.06~0.10mmの範囲内の所定の均一肉厚の場合に、長期保管時の内容物の蒸散量及び内層の収縮性の双方において良好な結果が得られた。一方、扁平率75%の場合には、内層袋の前後側部が0.15~0.17mmの範囲内の所定の均一肉厚、左右側部が0.08~0.10mmの範囲内の所定の均一肉厚の場合に、長期保管時の内容物の蒸散量及び内層の収縮性の双方において良好な結果が得られた。
【0043】
なお、ノズル部材には、特許文献1に開示したように、内層袋22内の内容物を外部に吐出するための吐出路が形成される。この吐出路の中途部には、内容物の流出は許容するが外気の流入を阻止するフィルターを設けることが好ましい。また、フィルターよりも上流側(容器内方)で吐出路には、保管時に吐出路を閉塞するための栓体若しくは弁体を設けておくことが好ましい。弁体としては、上記特許文献2に開示された逆止弁など、適宜の弁体を用いることができる。
【0044】
上記フィルターとしては、メンブランフィルター、焼結体フィルターや、親水性多孔質平膜や疎水性多孔質平膜など、フィルターの吐出下流側(容器外)から吐出上流側(容器内)への病原微生物やウィルスの透過を防止し得るものを適宜用いることができる。
【0045】
上記栓体は、吐出路の中途部に設けた嵌合部に液密に嵌合させることができる。栓体を嵌合部に上方から押し込むことによって、ボトル保管時や輸送時におけるボトル内圧の多少の上昇や振動では栓体が嵌合部から離脱しない程度の嵌合力が生じるようにしておくことができる。
【0046】
初回の吐出を行う際は、ノズル部材を覆うキャップを付けたまま容器を正立させた状態で導入孔を指で塞ぐようにしてボトル胴部をスクイズ変形させ、内層袋22の内圧を上昇させることにより、該内圧によって栓体を嵌合部から離脱させることができる。初回吐出時に、フィルターと栓体との間の空気はまだ乾燥状態にあるフィルターから外部へ押し出され、それ以降はフィルターの直下まで内容物で充填されるようになるため、該内容物によってフィルターは常に濡れた状態となる。
【0047】
2回目以降の吐出の際は、内層袋22内からフィルターまで常時連通状態となっていることから、吐出のためのボトル胴部のスクイズ力が軽くなり、円滑な吐出操作を行うことができる。また、濡れたフィルターを外気は通過できないため、2回目以降はフィルターの上流側に外気が導入されることがなく、エアロック状態の発生による吐出不良が生じることがない。さらに、内層袋22の復元性によってフィルターの下流側、すなわち吐出ノズル部内に残留する液剤をフィルターの上流側に吸い戻されるようにすることもでき、これによりノズル部内における細菌類の繁殖を防止できる。
【0048】
このようなフィルターを吐出路に設ける場合には、フィルターによる流動抵抗の上昇分も加味して内層袋22の肉厚設計を行うことが好ましい。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更できる。例えば、外層ボトルの形状、構造、大きさは適宜のものであってよく、単なる円筒状ボトルや、食品用チューブ状ボトルなどであってよい。また、内容物は、水、アルコール、酢などの揮発性成分を含有することができ、揮発性成分は溶媒や分散剤として含有されていてもよいし、有効成分として含有されていてもよい。また、内容物は、液体のみならず、ゲル状やペースト状など、流動性を有する状態であれば良い。さらに、内容物は、液体製剤であってもよいし、マヨネーズや醤油などの食品であってもよいし、保湿クリームや整髪料等の化粧品であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5