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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】画像処理装置及び検査システム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230301BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230301BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06N20/00 130
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018094258
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019200558
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512028116
【氏名又は名称】株式会社アドダイス
(74)【代理人】
【識別番号】100148518
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 純一
(72)【発明者】
【氏名】伊東 大輔
【審査官】佐田 宏史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-028250(JP,A)
【文献】特開2017-162098(JP,A)
【文献】特表2017-516992(JP,A)
【文献】特開2011-145791(JP,A)
【文献】特開2013-182395(JP,A)
【文献】特開2013-164313(JP,A)
【文献】特開2012-084117(JP,A)
【文献】特開平07-230439(JP,A)
【文献】特開2012-038244(JP,A)
【文献】特開2000-057349(JP,A)
【文献】関根 良浩、外2名,“GA・GP+MT法による外観検査性能の向上”,RICOH TECHNICAL REPORT,日本,株式会社リコー,2012年12月25日,No.38,pp.123-130
【文献】池松 大志、外5名,“Deep Learning画像認識エンジン生成作業効率化インターフェースの開発”,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年01月14日,Vol.115, No.415,pp.89-94
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00,7/00-7/90
G06V 10/00-10/98
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の特徴と一致する特徴が検査対象物に存在するか否かを判断して前記検査対象物を検査する検査システムにおいて、
前記対象物が画像として取り込まれた対象物モデル画像を表示する表示部と、
該表示部に表示された前記対象物モデル画像に画像として取り込まれた前記対象物の複数の任意の部分をそれぞれ前記対象物の特徴として選択して重みづけを行いつつアノテーションを付与するアノテーション付与部と、
該アノテーション付与部で前記対象物モデル画像の前記対象物の複数の特徴に前記アノテーションが付与されることによって該対象物モデル画像から生成された学習データにより機械学習をさせた学習済みモデルに基づいて該学習済みモデルとして学習された前記対象物の特徴と一致する特徴が前記検査対象物に存在するか否かを自律的に判断して前記検査対象物を検査する人工知能プログラムと、
該人工知能プログラムによる前記検査対象物の検査の結果を結果データとして出力して、前記対象物モデル画像における前記対象物の特徴と一致する特徴が前記検査対象物に存在する割合が予め設定された表示基準に基づいて前記結果データを前記表示部に表示させる出力部と、
前記表示基準を変更して変更した前記表示基準に対応した前記検査対象物の検査の結果を前記表示部に表示させる表示基準変更部と、を備え、
前記表示部に表示される前記結果データが前記対象物モデル画像と見立てられて前記結果データに基づいて前記アノテーションが付与されて前記学習データが生成されることを特徴とする検査システム。
【請求項2】
前記表示基準変更部は、
前記表示基準の上限及び下限が互いに独立して設定可能に形成されていることを特徴とする請求項に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び検査システム、特に、対象物の特徴と一致する特徴が検査対象物に存在するか否かを自律的に判断する人工知能プログラムに機械学習をさせる学習データを生成する画像処理装置、及び対象物の特徴と一致する特徴が検査対象物に存在するか否かを判断して検査対象物を検査する検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ソフトウェアによって画像処理を行う場合は、処理を行う領域を選択する作業が必要となる。例えば、特許文献1では、画像表示手段に表示された画像データ上の任意の位置を選択する選択手段を備えた画像表示装置が提案されている。
【0003】
この種の画像表示装置では、ユーザが画像データ上の任意の位置を選択する際のユーザインターフェースとして、例えば、処理を行う領域を輪郭で囲むいわゆる投げ縄表示とも称される手法が採用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-306374公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人工知能技術を用いて、対象物の特徴を学習させ、その特徴に基づいた対象物の選別を行わせるような場合は、例えば、対象物の画像データを用いて人工知能プログラムに対象物の特徴を学習させる必要がある。
【0006】
このように、対象物の画像データを用いて人工知能プログラムに対象物の特徴を学習させる場合は、画像データに表示される対象物の特徴のある部分を画像データ上において選択する必要がある。
【0007】
一方で、人工知能プログラムに対象物の特徴を学習させる場合は、一般に、大量の画像データが必要となることから、画像データに表示される対象物の特徴のある部分を選択する作業が煩雑になることが想定される。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、画像データを用いて人工知能プログラムに対象物の特徴を学習させる際に画像データ上において対象物の特徴のある部分を簡易に選択して学習データを生成することができる画像処理装置、及び画像処理装置で生成された学習データに基づいて効率的に機械学習を行うことができる人工知能プログラムを具備した検査システムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための画像処理装置は、対象物の特徴と一致する特徴が検査対象物に存在するか否かを自律的に判断する人工知能プログラムに機械学習をさせる学習データを生成する画像処理装置において、対象物が画像として取り込まれた対象物モデル画像を表示する表示部と、表示部に表示された対象物モデル画像を観察しながら対象物モデル画像に画像として取り込まれた対象物の任意の部分を対象物の特徴として選択して重みづけを行いつつアノテーションを付与することが可能なアノテーション付与部と、を備え、アノテーション付与部で対象物モデル画像にアノテーションが付与されることによって対象物モデル画像から学習データが生成されることを特徴としている。
【0010】
この画像処理装置によれば、アノテーションを付与するという簡易な操作によって、人工知能プログラムに大量に入力される対象物モデル画像に画像として取り込まれた対象物の任意の部分を、対象物の特徴として選択することができる。
【0011】
しかも、対象物モデル画像にアノテーションを付与することによって、対象物モデル画像を学習データとすることができることから、アノテーションを付与するという簡易な操作によって、学習データを容易に生成することができる。
【0012】
上記課題を解決するための検査システムは、対象物の特徴と一致する特徴が検査対象物に存在するか否かを判断して検査対象物を検査する検査システムにおいて、対象物が画像として取り込まれた対象物モデル画像を表示する表示部と、表示部に表示された対象物モデル画像に画像として取り込まれた対象物の任意の部分を対象物の特徴として選択して重みづけを行いつつアノテーションを付与するアノテーション付与部と、アノテーション付与部で対象物モデル画像にアノテーションが付与されることによって対象物モデル画像から生成された学習データにより機械学習をさせた学習済みモデルに基づいて学習済みモデルとして学習された対象物の特徴と一致する特徴が検査対象物に存在するか否かを自律的に判断して検査対象物を検査する人工知能プログラムと、人工知能プログラムによる検査対象物の検査の結果を結果データとして出力して結果データを表示部に表示させる出力部と、を備え、表示部に表示される結果データが対象物モデル画像と見立てられて結果データに基づいてアノテーションが付与されて学習データが生成されることを特徴としている。
【0013】
この検査システムによれば、アノテーションを対象物モデル画像に付与するという簡易な操作で学習データを容易に生成することができることから、人工知能プログラムが効率的に機械学習を行うことができる。したがって、検査対象物の検査を行う際の作業性を向上させることができる。
【0014】
さらに、この検査システムでは、予め設定された表示基準に基づいて人工知能プログラムによる検査対象物の検査の結果が表示部に表示され、表示基準を変更して変更した表示基準に対応した検査対象物の検査の結果を表示部に表示させる表示基準変更部を備えることを特徴としている。
【0015】
このように、予め設定された表示基準を表示基準変更部で変更することができることから、所望の表示基準で検査対象物の検査の結果を表示部に表示させることができる。
【0016】
しかも、この検査システムの表示基準変更部は、表示基準の上限及び下限が互いに独立して設定可能に形成されていることを特徴としていることから、表示基準を変更する際の操作性が向上する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、対象物モデル画像にアノテーションを付与するという簡易な操作によって、学習データを容易に生成することができる。さらに、人工知能プログラムが効率的に機械学習を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る検査システムで用いる対象物及び検査対象物の概略を説明する図である。
図2】本発明の実施の形態に係る検査システムの概略を説明するブロック図である。
図3】同じく、本実施の形態に係る対象物モデル画像の概略及びアノテーション付与部における処理の概略を説明する図である。
図4】同じく、本実施の形態に係る人工知能プログラムの処理の概略を説明するブロック図である。
図5】同じく、本実施の形態に係る表示基準変更部の処理の概略を説明する図である。
図6】同じく、本実施の形態に係る表示基準変更部の処理の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態について、図1図6に基づいて説明する。
【0020】
本実施の形態に係る検査システムの概略の説明に先立って、まず、本実施の形態に係る検査システムで用いる対象物及び検査対象物の概略を説明する。
【0021】
図1(a)は、対象物の概略を説明する図、図1(b)は、検査対象物の概略を説明する図である。図1(a)で示すように、対象物W1は、本実施の形態では人体から採取した組織T1であって、この組織T1をプレパラートによって病理標本としたものが画像として取り込まれることによって、対象物モデル画像D1が構成される。
【0022】
この対象物モデル画像D1は、複数の人体から採取した複数の組織T1に基づいて、複数の画像データとして予め大量に生成されている。
【0023】
この対象物モデル画像D1に画像として取り込まれた病理標本の組織T1には、本実施の形態では、正常な細胞ではない異常細胞Cが組織T1の特徴として複数存在している。
【0024】
一方、図1(b)で示すように、検査対象物W2は、本実施の形態では人体から採取した組織T2であって、この組織T2をプレパラートによって病理標本としたものが画像として取り込まれることによって、検査対象物画像D5が構成される。
【0025】
この検査対象物画像D5に画像として取り込まれた組織T2が、検査システムによる検査の対象となるものであって、例えば、がん診断を行う際に、診断を受ける者の患部から採取した組織によって、組織T2が構成される。
【0026】
本実施の形態では、検査対象物画像D5に画像として取り込まれた病理標本の組織T2に、正常な細胞ではない異常細胞Cが組織T2の特徴として複数存在している。
【0027】
次に、本実施の形態に係る検査システムの概略を説明する。
【0028】
図2は、本実施の形態に係る検査システムの概略を説明するブロック図である。図示のように、検査システム1は、コンピュータ10、コンピュータ10と接続されるスキャナ11、及びコンピュータ10と接続される表示部であるディスプレイ12を備える。
【0029】
コンピュータ10は、後述するスキャナ11を介して対象物モデル画像D1が入力される画像処理装置20、画像処理装置20と接続される人工知能プログラム21、及び人工知能プログラム21と画像処理装置20とが接続されるディスプレイ機能設定部22を備える。
【0030】
画像処理装置20は、本実施の形態では、対象物モデル画像D1を取得してこの対象物モデル画像D1を人工知能プログラム21及びディスプレイ機能設定部22に出力する画像取得部20aを備える。
【0031】
画像取得部20aで取得してディスプレイ機能設定部22に出力された対象物モデル画像D1は、本実施の形態ではディスプレイ12に表示される。
【0032】
さらに、画像処理装置20は、対象物モデル画像D1に画像として予め取り込まれた画像データにおける対象物の任意の部分を対象物の特徴として選択してアノテーションを付与するプログラムであるアノテーション付与部20bを備える。
【0033】
このアノテーション付与部20bは、画像取得部20aから人工知能プログラム21に出力された対象物モデル画像D1にアノテーションを付与するとともに、画像取得部20aで取得してディスプレイ機能設定部22に出力されてディスプレイ12に表示される対象物モデル画像D1にアノテーションを表示する。
【0034】
図3は、アノテーション付与部20bにおける処理の概略を説明する図である。本実施の形態では、図示のように、対象物モデル画像D1に画像として取り込まれた病理標本の組織T1の特徴として存在する複数の異常細胞Cの全てががん細胞であると判断されて、アノテーション付与部20bによってアノテーションD2が付与される。
【0035】
アノテーションD2の付与は、画像取得部20a及びディスプレイ機能設定部22を介してディスプレイ12に表示される対象物モデル画像D1が観察されながら、画像取得部20aから人口知能プログラム21に出力された対象物モデル画像D1に、例えばマウスやポインティングデバイスといった外部入力機器が操作されることによって付与される。
【0036】
アノテーションD2を付与する際には、図示しない重みづけのコマンドを選択することによって、付与するアノテーションD2に重みづけを行うことができる。
【0037】
人工知能プログラム21は、スキャナ11を介して入力される検査対象物画像D5における組織T2を検査するプログラムである。
【0038】
図4は、人工知能プログラム21の処理の概略を説明するブロック図である。図示のように、人工知能プログラム21では、対象物モデル画像D1における組織T1の特徴として存在する複数の異常細胞CにアノテーションD2が付与されることによって、対象物モデル画像D1から学習データD3が生成される。
【0039】
さらに、人工知能プログラム21は、生成した学習データD3で機械学習をすることによって、学習済みモデルD4を生成する。
【0040】
機械学習を行う手法としては、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、SVM(support vector machine)等、各種のアルゴリズムが適宜用いられる。
【0041】
このように、人工知能プログラム21は、学習済みモデルD4に基づいて、学習済みモデルD4として学習された対象物モデル画像D1における組織T1の複数の異常細胞Cと一致する異常細胞Cが、検査対象物画像D5における組織T2に存在するか否かを自律的に判断して、組織T2を検査する。
【0042】
ディスプレイ機能設定部22は、図2で示すように、画像取得部20a及び人工知能プログラム21に接続されてディスプレイ12に接続する出力部22a、出力部22aに接続する表示基準設定部22b、及びこの表示基準設定部22bに接続する表示基準変更部22cを備える。
【0043】
出力部22aは、画像処理装置20の画像取得部20aから出力された対象物モデル画像D1をディスプレイ12に出力して、対象物モデル画像D1をディスプレイ12に表示させる。
【0044】
さらに出力部22aは、人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果を結果データとしてディスプレイ12に出力して、結果データをディスプレイ12に表示させる。
【0045】
表示基準設定部22bには、人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果を結果データとしてディスプレイ12に表示する際の表示基準が予め設定されている。
【0046】
この表示基準は、例えば、対象物モデル画像D1における組織T1の複数の異常細胞Cと一致する異常細胞Cが検査対象物画像D5における組織T2に存在する割合に基づいて定められる。
【0047】
例えば、組織T1の複数の異常細胞Cと一致する異常細胞Cが検査対象物画像D5における組織T2に存在する割合が60%と定められているのであれば、60%の割合で一致する人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果を結果データとしてディスプレイ12に表示する。
【0048】
この場合、結果データには、対象物モデル画像D1における組織T1においてがん細胞であると判断されてアノテーションD2が付与された異常細胞Cと60%の割合で一致すると判断された、検査対象物画像D5における組織T2に存在する異常細胞Cにマーカが付与される。
【0049】
図5及び図6は、表示基準変更部22cの処理の概略を説明する図である。この表示基準変更部22cは、表示基準設定部22bに設定された表示基準を変更するものである。
【0050】
図示のように、表示基準変更部22cは、組織T1の複数の異常細胞Cと組織T2の異常細胞Cとの一致の割合の下限を設定するMinスライダ22ca、及びMinスライダ22caと独立して組織T1の複数の異常細胞Cと組織T2の異常細胞Cとの一致の割合の上限を設定するMaxスライダ22cbを備える。
【0051】
この表示基準変更部22cは、結果データD6とともにディスプレイ12に表示され、図5で示すように、Minスライダ22caが80%に設定され、Maxスライダ22cbが100%に設定されている場合には、80%以上の割合で一致する人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果が結果データD6としてディスプレイ12に表示される。
【0052】
すなわち、対象物モデル画像D1における組織T1においてがん細胞であると判断されてアノテーションD2が付与された異常細胞Cと80%以上の割合で一致する異常細胞Cが、検査対象物画像D5における組織T2に存在すると判断されたこととなり、検査対象物画像D5における組織T2に存在する異常細胞Cに、マーカMが付与されている。
【0053】
一方、図6で示すように、Minスライダ22caが60%に設定され、Maxスライダ22cbが80%に設定されている場合には、60%~80%の割合で一致する人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果が結果データD6としてディスプレイ12に表示される。
【0054】
すなわち、対象物モデル画像D1における組織T1においてがん細胞であると判断されてアノテーションD2が付与された異常細胞Cと60%~80%の割合で一致する異常細胞Cが、検査対象物画像D5における組織T2に存在すると判断されたこととなり、検査対象物画像D5における組織T2に存在する異常細胞Cに、マーカMが付与されている。
【0055】
このように、表示基準変更部22cでは、予め設定された表示基準を変更することによって、組織T1の複数の異常細胞Cと組織T2の異常細胞Cとの一致の割合を所望の割合に変更して、変更した一致の割合に対応した結果データD6をディスプレイ12に表示させることができる。
【0056】
スキャナ11は、本実施の形態では、対象物モデル画像D1を取り込んで画像処理装置20に出力するとともに、検査対象物画像D5を取り込んで人工知能プログラム21に出力する。
【0057】
ディスプレイ12は、本実施の形態では、画像処理装置20の画像取得部20aから出力された対象物モデル画像D1を表示するとともに、人工知能プログラム21による検査対象物画像D5における組織T2の検査の結果を結果データD6として表示する。
【0058】
次に、本実施の形態に係る検査システム1の運用について説明する。
【0059】
ユーザは、まず、複数の対象物モデル画像D1をスキャナ11で取り込んで、取り込んだ複数の対象物モデル画像D1を画像処理装置20に出力させる。
【0060】
画像処理装置20に出力させた複数の対象物モデル画像D1は、ディスプレイ機能設定部22に出力されてディスプレイ12に表示されるとともに、人工知能プログラム21に出力される。
【0061】
ユーザは、ディスプレイ12に表示される複数の対象物モデル画像D1を観察しながら、例えばマウスやポインティングデバイスといった外部入力機器を操作して、人口知能プログラム21に出力された複数の対象物モデル画像D1にアノテーションD2を付与する。
【0062】
本実施の形態では、対象物モデル画像D1に画像として取り込まれた病理標本の組織T1の特徴として存在する複数の異常細胞Cのそれぞれについて、がん細胞であるか否かを判断し、がん細胞であると判断した異常細胞CにアノテーションD2を付与する。
【0063】
このように、人口知能プログラム21に出力された対象物モデル画像D1にアノテーションD2が付与されることによって、人工知能プログラム21において、対象物モデル画像D1から学習データD3が生成される。
【0064】
学習データD3が生成されると、人工知能プログラム21では、生成した学習データD3で機械学習が実行されることによって、学習済みモデルD4が生成される。これにより、検査システム1で検査対象物画像D5における組織T2を検査する準備が完了する。
【0065】
続いて、ユーザは、検査対象物画像D5をスキャナ11で取り込んで、取り込んだ検査対象物画像D5を人工知能プログラム21に出力させる。
【0066】
人工知能プログラム21は、学習済みモデルD4に基づいて、学習済みモデルD4として学習された対象物モデル画像D1における組織T1の複数の異常細胞Cと一致する異常細胞Cが、検査対象物画像D5における組織T2に存在するか否かを自律的に判断して、組織T2を検査する。
【0067】
人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果は、表示基準設定部22bに予め設定された表示基準に基づいて、結果データD6としてディスプレイ12に表示される。
【0068】
例えば、組織T1の複数の異常細胞Cと一致する異常細胞Cが検査対象物画像D5における組織T2に存在する割合が60%であると表示基準に定められているのであれば、60%の割合で一致する人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果が結果データとしてディスプレイ12に表示される。
【0069】
一方、予め設定された表示基準を表示基準変更部22cで変更することによって、組織T1の複数の異常細胞Cと組織T2の異常細胞Cとの一致の割合を所望の割合に変更して、変更した一致の割合に対応した結果データD6をディスプレイ12に表示させることができる。
【0070】
したがって、例えば、80%以上の割合で一致する人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果が結果データD6としてディスプレイ12に表示されると、異常細胞Cではあってもがん細胞ではないものまでマーカMが付されて結果データD6がディスプレイ12に表示されてしまうといった場合が想定される。
【0071】
このような場合には、60%~80%の割合で一致する人工知能プログラム21による組織T2の検査の結果が結果データD6としてディスプレイ12に表示されるように表示基準を変更して、がん細胞ではない異常細胞CにはマーカMが付されていない結果データD6がディスプレイ12に表示されるようにすればよい。
【0072】
一方、ディスプレイ12に表示される結果データD6を見て、人工知能プログラム21が組織T2の異常細胞Cをがん細胞であると判断する一致の割合が高すぎる、あるいは低すぎると判断した場合は、結果データD6を対象物モデル画像D1と見立てて、アノテーションD2の付与を再度行って、人工知能プログラム21の再度の学習に供する。
【0073】
このように、本実施の形態の検査システム1は、画像処理装置20において、アノテーションD2を付与するという簡易な操作によって、人工知能プログラム21に大量に入力される対象物モデル画像D1に、画像として予め取り込まれた組織T2の異常細胞Cを、組織T2の特徴として選択することができる。
【0074】
しかも、対象物モデル画像D1にアノテーションD2を付与することによって、対象物モデル画像D1を学習データD3とすることができることから、アノテーションD2を付与するという簡易な操作によって、学習データD3を容易に生成することができる。
【0075】
本実施の形態の検査システム1は、アノテーションD2を対象物モデル画像D1に付与するという簡易な操作で学習データD3を容易に生成することができることから、人工知能プログラム21が、効率的に機械学習を行うことができる。
【0076】
したがって、検査対象物画像D5における組織T2の検査を行う際の作業性を向上させることができる。
【0077】
しかも、人工知能プログラム21による組織T2の検査を結果データD6としてディスプレイ12に表示させる際に、予め設定された表示基準を表示基準変更部22cで変更することができることから、所望の表示基準で結果データD6をディスプレイ12に表示させることができる。
【0078】
この表示基準変更部22cは、表示基準の下限を設定するMinスライダ22ca、及びMinスライダ22caと独立して表示基準の上限を設定するMaxスライダ22cbを備え、それぞれ独立して操作することができることから、表示基準を変更する際の操作性が向上する。
【0079】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、対象物W1及び検査対象物W2がそれぞれ、人体から採取した組織T1及び組織T2である場合を説明したが、例えば樹脂製品や半導体基板の表面の汚れ、混入した不純物、あるいは成形不良部分といったように、検査システム1で検査可能なものであれば、対象物W1及び検査対象物W2とすることができる。
【0080】
上記実施の形態では、アノテーションD2の付与が、マウスやポインティングデバイスといった外部入力機器が操作されることによって付与される場合を説明したが、例えばタッチパネル型のディスプレイを採用して、画面に接触することでアノテーションD2を付与するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 検査システム
10 コンピュータ
12 ディスプレイ(表示部)
20 画像処理装置
20b アノテーション付与部
21 人工知能プログラム
22 ディスプレイ機能設定部
22b 表示基準設定部
22c 表示基準変更部
D1 対象物モデル画像
D2 アノテーション
D3 学習データ
D4 学習済みモデル
D5 検査対象物画像
D6 結果データ
T1 組織
T2 組織
W1 対象物
W2 検査対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6