(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】制御装置及び触感付与装置
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
F03G7/06 E
(21)【出願番号】P 2019023343
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】川上 智
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-293621(JP,A)
【文献】特開2006-183564(JP,A)
【文献】特開2006-333310(JP,A)
【文献】特開2017-191398(JP,A)
【文献】特開2018-019501(JP,A)
【文献】特開2019-002373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0227943(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 7/06
G06F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータの制御に用いられる制御装置であって、
前記アクチュエータは、温度変化により伸縮可能な形状記憶合金製の伸縮部材を有し、前記伸縮部材の縮み変形により駆動対象を駆動可能であ
り、
前記駆動対象は、電気機器の機器本体に移動可能に支持され、
前記電気機器は、前記アクチュエータとは異なる前記電気機器の構成要素の加速度を検出するための加速度センサを備
え、
本制御装置は、
指令値を設定する指令値設定部と、
前記指令値を用いて前記アクチュエータを制御する制御部と
、
前記加速度センサの出力値に基づいて前記駆動対象の実加速度を取得する加速度取得部
と、
前記加速度センサの出力値と前記駆動対象の実加速度との相関関係を記憶する記憶部
と、を備え、
前記加速度取得部は、前記加速度センサの出力値と前記相関関係に基づいて、前記実加速度を取得
し、
前記指令値設定部は、
前記加速度取得部が取得した前記実加速度をフィードバックして、その実加速度が目標加速度に近づくように前記指令値を補
正する制御装置。
【請求項2】
制御装置と、
ユーザによ
る駆動対象に対するタッチ操作を検出可能なタッチ検出部と
、
温度変化により伸縮可能な形状記憶合金製の伸縮部材を有し、前記伸縮部材の縮み変形により
前記駆動対象を駆動可能なアクチュエータと、を備える触感付与装置
であって、
前記制御装置は、
指令値を設定する指令値設定部と、
前記指令値を用いて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、
前記指令値設定部は、前
記駆動対象の実加速度をフィードバックして、その実加速度が目標加速度に近づくように前記指令値を補正
する触感付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金を用いたアクチュエータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、形状記憶合金(SMA:Shape memory Alloy)を用いたアクチュエータ(以下、SMAアクチュエータともいう)が知られる。これは、形状記憶合金製の伸縮部材を備え、その伸縮部材の温度変化による伸縮を利用して駆動対象を駆動可能である。特許文献1には、伸縮部材に対する通電を制御することで伸縮部材を駆動する通電制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、SMAアクチュエータを検討したところ、次の知見を得た。SMAアクチュエータは、種々の要因によって、SMAアクチュエータにより駆動される駆動対象の実加速度が変動してしまう。この対策を講じた技術は未だ提案されておらず、その改善が望まれる。
【0005】
本発明のある態様は、このような課題に鑑みてなされ、その目的の1つは、アクチュエータにより駆動される駆動対象の実加速度の変動を抑えられる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は制御装置である。第1態様の制御装置は、アクチュエータの制御に用いられる制御装置であって、前記アクチュエータは、温度変化により伸縮可能な形状記憶合金製の伸縮部材を備え、前記伸縮部材の縮み変形により駆動対象を駆動可能であり、本制御装置は、指令値を設定する指令値設定部と、前記指令値を用いて前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、前記指令値設定部は、前記アクチュエータにより駆動される駆動対象の実加速度をフィードバックして、その実加速度が目標加速度に近づくように前記指令値を補正する。
【0007】
この態様によれば、アクチュエータにより駆動される駆動対象の実加速度の変動を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1実施形態の電気機器の要部を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態のアクチュエータの一例を示す側面断面図である。
【
図4】第1実施形態の制御装置の要部を示す構成図である。
【
図5】第1実施形態のテストモードでの制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の技術を想到するに至った背景を説明する。アクチュエータにより駆動される駆動対象の実加速度は、伸縮部材の周囲の環境温度が低温になるほど小さくなり、その環境温度が高温になるほど大きくなる傾向がある。
【0010】
また、駆動対象の実加速度は、アクチュエータの各構成部材の組み付け誤差、寸法誤差等の誤差の影響や、経年劣化の影響によっても大きく変動し得る。たとえば、伸縮部材の配置位置のばらつきによって、固定子や可動子に対する伸縮部材の接触面積が変動し、伸縮部材に対する摩擦抵抗が変動する。このような変動が生じると、伸縮部材の縮み変形により駆動される可動子の動き方に影響し、駆動対象の実加速度が変動する。この他にも、たとえば、伸縮部材の経年劣化により伸縮部材の自然長が変動すると、伸縮部材の縮み変形により駆動される可動子の動き方に影響し、駆動対象の実加速度が変動する。
【0011】
この対策として、本実施形態の制御装置では、駆動対象の実加速度をフィードバックして、その実加速度が目標加速度に近づくように、アクチュエータの制御に用いられる指令値を補正している。これにより、アクチュエータにより駆動される駆動対象の実加速度に変動が生じ得る場合でも、その実加速度を目標加速度に追従させることができ、その実加速度の変動を抑えられる。
【0012】
以下、本発明の実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1~
図3を参照する。アクチュエータ10は、電気機器12の機器本体14に搭載される。アクチュエータ10は、機器本体14に移動可能に支持される駆動対象16を駆動可能である。本実施形態の電気機器12はタッチパネル装置であり、駆動対象16はタッチパネルである。電気機器12は、アクチュエータ10等の電気機器12の他の構成要素を支持する機器本体14の他に、アクチュエータ10とは異なる電気機器12の構成要素の加速度を検出するための加速度センサ18を備える。ここでの「電気機器12の構成要素」とは、本実施形態では、電気機器12の機器本体14をいうが、アクチュエータ10の駆動対象16でもよい。
【0014】
加速度センサ18は、3軸加速度センサを例に説明するが、1軸加速度センサ、2軸加速度センサでもよい。加速度センサ18は、たとえば、ピエゾ抵抗型、静電容量型、熱検知型の種々のセンサを用いてもよい。加速度センサ18の出力値は、アクチュエータ10の制御とは別の用途のために用いられる。本実施形態の加速度センサ18の出力値は、機器本体14の加速度を示し、その姿勢の検出のために用いられる。機器本体14の姿勢の検出は、電気機器12の上位制御装置(不図示)により加速度センサ18の出力値を処理することで行われる。
【0015】
アクチュエータ10が用いられる触感付与装置20を説明する。触感付与装置20は、ユーザUのタッチ操作に連動してアクチュエータ10により駆動対象16を振動させることで、駆動対象16に触れているユーザUに触感を付与可能である。触感付与装置20は、アクチュエータ10の他に、主に、タッチ検出部22と、付勢部24と、制御装置26と、を備える。制御装置26は後述する。
【0016】
アクチュエータ10は、駆動対象16を特定の駆動方向Paに駆動可能である。駆動方向Paは、たとえば、タッチパネルの面内方向又は面外方向である。
【0017】
タッチ検出部22は、駆動対象16に対するタッチ操作を検出可能である。タッチ検出部22は、たとえば、タッチパネルに組み込まれる静電容量式タッチセンサ等である。
【0018】
付勢部24は、駆動対象16を駆動方向Paとは反対側の反駆動方向Pbに付勢する。付勢部24は、コイルスプリング等の弾性体である。
【0019】
本実施形態のアクチュエータ10は、固定子28と、可動子30と、伸縮部材32を備える。
【0020】
固定子28は、電気機器12の機器本体14に取り付けられ、機器本体14に対する位置が固定される。可動子30は、固定子28と対向するとともに、固定子28と対向する方向を可動方向として移動可能である。可動子30は、可動方向の一方側を駆動方向Paとして、その駆動方向Paの動きを駆動対象16に伝達可能である。
【0021】
伸縮部材32は、線状のワイヤーを例示するが、帯状のベルト等でもよい。伸縮部材32は、温度変化により伸縮可能な形状記憶合金製である。本実施形態の形状記憶合金は、Ni-Ti系合金である。形状記憶合金製の伸縮部材32は、加熱による逆変態(オーステナイト変態)により縮み変形可能であるとともに、冷却によるマルテンサイト変態により伸び変形可能である。伸縮部材32は、縮み変形によって、可動子30を駆動方向Paに駆動可能となるように張り渡され、その両端部は固定子28に固定される。伸縮部材32の両端部は、制御装置26の制御部38(後述する)に電気的に接続される。
【0022】
以上の触感付与装置20の動作の一例を説明する。制御装置26の制御部38(後述する)による制御のもと伸縮部材32に通電すると伸縮部材32が縮み変形する。伸縮部材32が縮み変形すると、可動子30が駆動方向Paに駆動され、その可動子30の動きが駆動対象16に伝達されることで、駆動対象16も駆動方向Paに駆動される。このとき、駆動対象16は付勢部24の付勢力に抗して駆動方向Paに駆動される。
【0023】
制御部38による伸縮部材32に対する通電が停止すると、伸縮部材32が放熱冷却により元の形状に復元するように伸び変形する。これに伴い、伸縮部材32から駆動対象16への力の伝達が解除され、駆動対象16が付勢部24の付勢力により反駆動方向Pbに押し戻される。触感付与装置20は、この駆動方向Paと反駆動方向Pbの動きを瞬間的に行わせることで駆動対象16を振動させる。これにより、駆動対象16に触れているユーザに駆動対象16の振動が伝達され、ユーザに触感が付与される。
【0024】
図2、
図4を参照する。制御装置26は、アクチュエータ10の制御に用いられる。制御装置26は、加速度取得部34と、指令値設定部36と、制御部38と、記憶部40と、を備える。制御装置26の各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする種々の電子部品や機械部品等により実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等により実現される。ここでは、それらの連携により実現される機能ブロックを描く。これらの機能ブロックは、ハードウェア要素とソフトウェア要素の組み合わせ、または、ハードウェア要素のみにより実現される。
【0025】
加速度取得部34は、加速度センサ18の出力値Voutに基づいて駆動対象16の実加速度Aactを取得する。本実施形態の加速度センサ18は、駆動対象16とは異なる電気機器12の構成要素(機器本体14)の加速度を検出している。この場合、加速度取得部34は、次の考えに基づき、駆動対象16の実加速度Aactを取得する。
【0026】
駆動対象16の実加速度Aactと加速度センサ18の出力値Voutの間には一定の相関関係αがある。この相関関係αは、たとえば、駆動対象16の実加速度Aactが大きくなるほど加速度センサ18の出力値Voutが大きくなるような正の相関関係である。記憶部40は、このような予め定められた相関関係αを記憶している。この相関関係αは、式、テーブル又はマップ等の態様で記憶される。この相関関係αでは、たとえば、出力値Voutに対して実加速度Aactが一意に定められる。この相関関係αは、実験、解析等により求められる。加速度取得部34は、加速度センサ18の出力値Voutと記憶部40に記憶されている相関関係αに基づいて、駆動対象16の実加速度Aactを取得する。詳しくは、加速度取得部34は、記憶部40から読み込んだ相関関係αを参照することで、加速度センサ18の出力値Voutに対応する駆動対象16の実加速度Aactを取得する。
【0027】
本実施形態では、駆動対象16の実加速度Aactとして、アクチュエータ10により駆動対象16を所定の回数(本例では1回)だけ振動させたときの駆動対象16の加速度の最大値と最小値の差分値(ピークピーク値)を用いる。この実加速度Aactとして、駆動対象16を単振動させたときの駆動対象16の加速度のピークピーク値を用いることになる。
【0028】
指令値設定部36は、アクチュエータ10の制御に用いられる指令値Vcを設定する。この指令値Vcは、アクチュエータ10の動作条件を定めるものである。本実施形態では、このような指令値Vcとして、伸縮部材32に印加される印加電圧の電圧値が用いられる。この印加電圧は、アクチュエータ10により駆動される駆動対象16の実加速度Aactを制御量と捉えたとき、その制御量に影響を及ぼす操作量としての役割を持つ。指令値設定部36は、伸縮部材32を逆変態により縮み変形可能となるように指令値Vcを設定する。
【0029】
制御部38は、指令値設定部36が設定した指令値Vcを用いてアクチュエータ10の動作を制御する。このようにアクチュエータ10を制御するうえで、本実施形態の制御部38は、指令値設定部36が設定した指令値Vc(電圧値)によって、所定の通電時間に亘り伸縮部材32に通電した後に通電を停止する。
【0030】
ここで、本実施形態の指令値設定部36は、アクチュエータ10により駆動される駆動対象16の実加速度Aactをフィードバックして、その実加速度Aactが目標加速度Arefに近づくように、指令値Vcを補正する。詳しくは、指令値設定部36は、駆動対象16の実加速度Aactと目標加速度Arefに基づいて偏差を算出し、その偏差に基づいて、実加速度Aactが目標加速度Arefに近づくように指令値Vcを補正する。このとき、指令値設定部36は、P制御、PI制御、PID制御等の制御アルゴリズムに従って、偏差に基づいて指令値Vcを補正する。目標加速度Arefは、予め定められる固定値でもよいし、ユーザの入力操作部(不図示)に対する操作により入力される可変値でもよい。
【0031】
本実施形態の制御装置26は、テストモードと通常動作モードを行うことができる。テストモードは、通常動作モードでのアクチュエータ10の動作に先立ってアクチュエータ10の指令値Vcを調整するためのモードである。通常動作モードは、テストモードで調整された指令値Vcを用いてアクチュエータ10を動作させるためのモードである。
【0032】
テストモードは、予め定められたテスト開始条件を満たしたときに行われる。テスト開始条件とは、たとえば、電気機器12の電源を投入したときや、テストモードを開始するためのユーザの入力操作部(不図示)に対する操作があったときである。通常動作モードは、予め定められた通常動作開始条件を満たしたときに行われる。通常動作開始条件とは、本実施形態では、駆動対象16によるタッチ操作がタッチ検出部22により検出された場合である。
【0033】
テストモードでは、まず、指令値設定部36が設定した初期指令値を用いて、制御部38による制御のもとでアクチュエータ10により駆動対象16を単発的に駆動し、そのときの駆動対象16の実加速度Aactを加速度取得部34により取得する。この後、加速度取得部34により取得した実加速度Aactをフィードバックして、実加速度Aactが目標加速度Arefの近づくようにアクチュエータ10の指令値Vcを指令値設定部36により補正する。このように駆動対象16を単発的に駆動したときの駆動対象16の実加速度Aactを取得し、その実加速度をフィードバックして指令値Vcを補正する一連の流れを繰り返す。この一連の流れは、駆動対象16の実加速度Aactが予め定められた目標範囲内に収まるまで繰り返す。これにより、駆動対象16の実加速度Aactが目標範囲に収まるときのアクチュエータ10の指令値Vcを特定できる。
【0034】
通常動作モードでは、テストモードによって特定された指令値Vcを用いて、制御部38によりアクチュエータ10の動作を制御する。通常動作モードでは、実加速度Aactが目標範囲内に収まるときの指令値Vcを用いてアクチュエータ10を制御する。
【0035】
以上の制御装置26を用いた触感付与装置20の動作の一例を説明する。
【0036】
まず、テストモードを行う場合の動作の一例を説明する。
図5を参照する。テストモードでは、まず、アクチュエータ10を制御部38によって制御することで、アクチュエータ10により駆動対象16を駆動させる(S10)。初回の駆動対象16の駆動時には、予め定められた初期指令値を用いてアクチュエータ10を制御する。加速度取得部34は、加速度センサ18の出力値Voutに基づいて、このときの駆動対象16の実加速度Aactを取得する(S12)。
【0037】
駆動対象16の実加速度Aactが予め定められた目標範囲内に収まらない場合(S14のN)を考える。この場合、指令値設定部36は、駆動対象16の実加速度Aactをフィードバックして、その実加速度Aactが目標加速度Arefに近づくように、アクチュエータ10の指令値Vc(印加電圧の電圧値)を補正する(S16)。この後、再び、アクチュエータ10を制御部38によって制御することで、アクチュエータ10により駆動対象16を駆動させる(S10)。この二回目以降の駆動対象16の駆動時には、補正後の指令値Vcを用いてアクチュエータ10を制御する。
【0038】
駆動対象16の実加速度Aactが予め定められた目標範囲内に収まる場合(S14のY)、指令値設定部36は、その実加速度Aactが得られたときの指令値Vcを記憶部40に記憶する(S18)。この後、テストモードを終了する。
【0039】
次に、通常動作モードを行う場合の動作の一例を説明する。通常動作モードでは、前述のS18において記憶した指令値Vcを記憶部40から読み出し、その読み出した指令値Vcでアクチュエータ10を制御することで、アクチュエータ10により駆動対象16を駆動させる。駆動対象16の実加速度Aactが目標範囲内に収まるときに得られた指令値Vcでアクチュエータ10を制御することになる。
【0040】
以上の技術による効果を説明する。本実施形態の制御装置26は、アクチュエータ10とは異なる電気機器12の構成要素の加速度を検出するための加速度センサ18の出力値Voutに基づいて、駆動対象16の実加速度Aactを取得する加速度取得部34を備える。よって、アクチュエータ10の組み込み相手となる電気機器12で元々に用いられている加速度センサ18を共用して、アクチュエータ10の指令値Vcを補正できるようになる。このため、アクチュエータ10に専用の加速度センサ18を用いずともよくなり、その分、アクチュエータ10の製品コストの軽減を図れる。
【0041】
制御装置26の指令値設定部36は、加速度センサ18の出力値Voutと相関関係αに基づいて、駆動対象16の実加速度Aactを取得する。よって、加速度センサ18により駆動対象16の実加速度Aactを検出しない場合でも、加速度センサ18の出力値Voutを用いて、駆動対象16の実加速度Aactを得られる。このため、電気機器12で元々に用いられている加速度センサ18を共用して、アクチュエータ10の指令値Vcの補正がより容易となる。
【0042】
アクチュエータ10を触感付与装置20に組み込む場合、アクチュエータ10により駆動される駆動対象16の実加速度Aactの変動により、ユーザに付与される触感が大きく変化してしまう。この点、本実施形態によれば、駆動対象16の実加速度Aactの変動を抑えられるため、ユーザに付与される触感の変化を抑えられる。
【0043】
駆動対象16の実加速度Aactの変動に対応するうえでは、たとえば、アクチュエータ10の周囲の環境温度を用いてアクチュエータ10の指令値Vcを補正する手法も考えられる。しかしながら、この手法を用いた場合、アクチュエータ10の各構成部材の誤差の影響が考慮されない。このため、環境温度との関係で最適な指令値Vcに補正したとしても、駆動対象16の実加速度Aactが目標加速度Arefより大幅に増加してしまうケースもあり得る。このように駆動対象16の実加速度Aactが大幅に大きくなると、伸縮部材32に対する負荷の増大が懸念される。この点、本実施形態によれば、駆動対象16の実加速度Aactをフィードバックしてアクチュエータ10の指令値Vcを補正している。よって、駆動対象16の実加速度Aactが目標加速度Arefより大幅に増加する事態を避けられ、伸縮部材32に対して過大な負荷が付与される事態を避けられる。
【0044】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0045】
アクチュエータ10は、伸縮部材32の縮み変形により可動子30を駆動方向Paに駆動可能であれば、その具体的な構造は特に限定されない。伸縮部材32を構成する形状記憶合金の組成は特に限定されず、Ni-Ti-Cu系合金が用いられてもよい。
【0046】
駆動対象16はタッチパネルである例を説明したが、これに限定されない。たとえば、オンオフスイッチ等のスイッチでもよい。
【0047】
駆動対象16の実加速度Aactは、駆動対象16の加速度を示すものであればよく、ピークピーク値に限られない。たとえば、実加速度Aactは、駆動対象16を所定の回数だけ振動させたときの駆動対象16の加速度の最大値や最小値の何れかを用いてもよい。
【0048】
駆動対象16とは異なる電気機器12の構成要素の加速度を加速度センサ18が検出し、加速度取得部34は、加速度センサ18の出力値Voutと相関関係αを用いて、駆動対象16の実加速度Aactを取得する例を説明した。加速度センサ18が駆動対象16の加速度を検出する場合、加速度取得部34は、前述の相関関係αを用いずに、加速度センサ18の出力値Voutに基づき駆動対象16の実加速度Aactを取得してもよい。いずれにしても、加速度取得部34は、加速度センサ18の出力値Voutに基づいて、駆動対象16の実加速度Aactを取得すればよい。この他にも、アクチュエータ10の可動子30の加速度を加速度センサ18により検出し、加速度センサ18の出力値Voutに基づいて駆動対象16の実加速度Aactを取得してもよい。
【0049】
指令値設定部36により補正される指令値Vcは、伸縮部材32に印加される印加電圧を例に説明したが、これに限られない。たとえば、伸縮部材32に通電される電流の電流値や通電時間等でもよいし、これらの任意の組み合わせでもよい。
【0050】
制御部38による印加電圧の制御方法は特に限定されない。制御部38は、たとえば、パルス幅変調回路を用いて、電源電圧をもとに所望の印加電圧を生成することで、伸縮部材32に印加する印加電圧を制御してもよい。この他にも、たとえば、ドロッパ回路により電源電圧を所望の印加電圧まで降圧させることで実現してもよい。この他にも、静電容量の異なる複数のコンデンサを用いて印加電圧を制御してもよい。詳しくは、コンデンサは、静電容量が大きくなるほど、放電による電圧の降下速度が遅くなり、放電電流の電圧が高くなる特性がある。これを利用して、静電容量の異なる複数のコンデンサの何れかの放電電流を伸縮部材32に供給可能とし、供給元のコンデンサを切り替えることで印加電圧を制御してもよい。このコンデンサは、たとえば、電解コンデンサ等である。
【0051】
通常動作モードでは、テストモードにより特定された指令値Vcを用いてアクチュエータ10を制御する例を説明した。この通常動作モードでも、駆動対象16の実加速度Aactをフィードバックして、アクチュエータ10の指令値Vcを補正するフィードバック制御を行ってもよい。また、このようなフィードバック制御を通常動作モードで行う場合、テストモードはなくともよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【符号の説明】
【0053】
10…アクチュエータ、12…電気機器、14…機器本体、16…駆動対象、18…加速度センサ、20…触感付与装置、22…タッチ検出部、26…制御装置、32…伸縮部材、34…加速度取得部、36…指令値設定部、38…制御部、40…記憶部。