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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】移送システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20230301BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B01D21/24 G
B01D21/00 C
B01D21/24 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019048133
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020146657
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】米山 和彦
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-036795(JP,A)
【文献】実開昭58-048309(JP,U)
【文献】特開2016-140793(JP,A)
【文献】特開2015-000361(JP,A)
【文献】特開2017-039134(JP,A)
【文献】特開2018-051461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
C02F 1/00
B65G 53/30
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた汚水に含まれている砂、汚泥、または工業排水に含まれる金属粉からなる混入物が沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムであって、
前記移送方向に沿って延在し、前記底面から離間した開口が下部に設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、開口幅が狭いことを特徴とする移送システム。
【請求項2】
前記底部に形成され、前記移送方向に延在するトラフを備え、
前記開口は、前記トラフによって画定された溝に配置されていることを特徴とする請求項1記載の移送システム。
【請求項3】
前記内部空間は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、前記移送方向と直交する断面積が大きいものであることを特徴とする請求項1記載の移送システム。
【請求項4】
前記底部に形成され、前記移送方向に延在するトラフを備え、
前記空間形成部材は、前記トラフによって画定された溝に配置されて該トラフとは距離をあけて該トラフに対向した対向部分を有するものであり、
前記対向部分と前記トラフとの間の最短距離は、前記移送方向にわたって略一定であることを特徴とする請求項3記載の移送システム。
【請求項5】
前記開口は、前記移送方向にわたって前記底面と略一定の離間距離をあけ、該底面に対向していることを特徴とする請求項3または4記載の移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた液体に含まれている混入物が沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理施設には、沈砂池および沈殿池等の固液分離設備が配置されている。沈砂池は、下水または雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に含まれている砂を沈降させ、底面に堆積した砂を集砂ピットまで移送し、集砂ピットに集まった砂を揚砂ポンプによって除去するものである。また、沈殿池は、沈砂池で砂が除去された汚水を受入れ、受け入れた汚水に含まれている汚泥を沈降させ、底面に堆積した汚泥を汚泥ピットまで移送し、汚泥ピットに集まった汚泥を汚泥ポンプによって除去するものである。さらに、下水処理施設以外においても様々な固液分離設備が用いられている。例えば、工場排水に含まれている金属粉等を所定の集積部まで移送し、集めた金属粉をポンプ等によって除去する設備や、ダム湖等の貯水池に流入した土砂等を所定の集積部まで移送し、集めた土砂等をポンプ等によって除去する設備などもある。以下、汚水等に含まれている砂や汚泥、工業排水に含まれている金属粉、あるいは貯水池に水とともに流入する土砂等、固液分離設備によって液体から分けられる固体を混入物と称することがある。
【0003】
固液分離設備において混入物を集積部に向けて移送する移送システムとして、移送方向上流側に設けた吐出口から、堆積した混入物に向けて流体を吐出することによって混入物を移送しようとするものが知られている。この移送システムでは、せっかく堆積した混入物が、吐出した流体によって巻き上がってしまうことがある。一方、混入物の巻き上がりを抑えるため、吐出口から吐出する流体の量を減少させると、混入物を十分に移送することができない虞が生じてしまう。これに対し、下方に開口が設けられた空間形成部材と、その空間形成部材によって形成された空間内に流体を吐出する吐出口とを備えることで、巻き上がりを抑えつつ混入物を移送する移送システムが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。この移送システムにおいて、吐出口から空間形成部材の内部空間内に流体を吐出すると、空間形成部材の内と外とで圧力差が生じ、底面に堆積した混入物が、開口から内部空間内に吸い込まれる。さらに、その内部空間内では、吸い込まれた混入物が、流体の流れによって移送方向下流側に移動し、集積部まで移送される。内部空間内を移動する混入物は、圧力差が生じている部分では、空間形成部材の外に出にくいので、空間形成部材の外に漏れ出て混入物が巻き上がってしまうことが抑制される。したがって、混入物の巻き上がりを抑えながら混入物を移送することができる。集積部まで移送された混入物は、例えばポンプなどの除去手段によって集積部から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-024055公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、移送方向の下流側では、移送方向の上流側と比較して内部空間内の流体の流れが弱まりやすいため、空間形成部材の内と外の間の圧力差が減少してしまうことがある。このため、開口から内部空間に吸い込まれた混入物が、下流側では開口から空間形成部材の外に漏れ出やすい。特許文献1に開示された移送システムは、内部空間内の流体の流れを移送方向の下流まで維持するために、移送方向の上流端に設けられた上流吐出口とは別に、空間形成部材の途中に2つの中間吐出口を設けている。中間吐出口を設けた場合、上流吐出口まで流体を送るための配管に加え、中間吐出口まで流体を送るための配管が中間吐出口の数に応じた分だけ必要になるため、移送システムが高価になってしてしまうという問題があった。また、上流吐出口と中間吐出口の両方から同時に流体を供給する場合には、吐出口に流体を供給するためのポンプを複数設けるかポンプを大型化する必要が生じるため、移送システムがさらに高価になってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、移送性能の高い安価な移送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明の移送システムは、受け入れた汚水に含まれている砂、汚泥、または工業排水に含まれる金属粉からなる混入物が沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムであって、
前記移送方向に沿って延在し、前記底面から離間した開口が下部に設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、開口幅が狭いことを特徴とする。
【0008】
この移送システムによれば、前記下流側において、前記空間形成部材の内と外の間の圧力差が減少したとしても、前記開口幅が狭くなっているので、前記内部空間内にある混入物は、該開口から漏れ出にくくなる。これにより、前記吐出口の数が少なくても、混入物を長い距離移送できるようになるので、移送システムを安価に構築することができるようになる。
【0009】
この移送システムにおいて、前記底部に形成され、前記移送方向に延在するトラフを備え、
前記開口は、前記トラフによって画定された溝に配置されていてもよい。
【0010】
前記溝には、沈降した混入物が堆積しやすいので、沈降した混入物の多くを前記内部空間内に吸い込んで移送できるようになる。
【0011】
さらに、前記トラフは、該トラフの縁に向かうに従って下方に向かう底部傾斜面が接続されたものであってもよい。前記底部傾斜面に向かって沈降してくる混入物は、該底部傾斜面を滑り落ちて前記溝に堆積するので、前記底部に沈降してくる混入物を、この移送システムによってより多く移送することができる。
【0012】
また、この移送システムにおいて、前記内部空間は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、前記移送方向と直交する断面積が大きいものであってもよい。
【0013】
前記移送方向の下流側における前記内部空間の断面積が大きいため、該下流側では該内部空間内に受容できる混入物の量が増加する。その結果、前記下流側において前記空間形成部材の内と外の間の圧力差が減少したとしても、多くの混入物を該内部空間に保持したままにできる。また、前記下流側では、前記吐出口から吐出された流体によって生じた流れの中心から前記空間形成部材の内周面が離間し、該流れが該内周面によって阻害されにくくなるので、前記内部空間内の流体の流れが弱まりにくなる。これにより、前記空間形成部材の内と外の間の圧力差が減少しにくくなり、前記空間内にある混入物が前記開口から漏れ出てしまうことが抑制される。これらにより、混入物を長い距離移送できるようになるので、前記吐出口の数を増加する必要が少なくなり、移送システムを安価に構築することができるようになる。
【0014】
さらに、この移送システムにおいて、前記底部に形成され、前記移送方向に延在するトラフを備え、
前記空間形成部材は、前記トラフによって画定された溝に配置されて該トラフとは距離をあけて該トラフに対向した対向部分を有するものであり、
前記対向部分と前記トラフとの間の最短距離は、前記移送方向にわたって略一定であってもよい。
【0015】
前記下流側において、前記対向部分と前記トラフの内周面の距離が短くなってしまうと、そこに混入物が詰まってしまう虞がある。前記対向部分と前記トラフの間の最短距離を略一定にすることで、混入物が詰まってしまうことを抑制できる。なお、前記対向部分と前記トラフの間の距離が長くなりすぎてしまうと、大きな混入物が溝に入り込んでしまい、溝よりも移送方向下流側にある集積部まで移動することがあり、その大きな混入物によって集積部に設置されたポンプなどの混入物吸込口が詰まってしまう虞があるため好ましくない。
【0016】
また、この移送システムにおいて、前記開口は、前記移送方向にわたって前記底面と略一定の離間距離をあけ、該底面に対向していてもよい。
【0017】
前記開口と前記底面の離間距離が長くなりすぎると、混入物を該開口から吸い込む作用が該底面まで届かなくなってしまい、前記吐出口から流体を吐出しても該底面近傍の混入物が残留しやすくなる。逆に、前記底面と前記開口の離間距離が短くなりすぎると、該底面と該開口の間に該開口に向かう混入物の流れに対する抵抗が生じてしまい、混入物を該開口から吸い込む作用が弱まってしまう。前記底面と前記開口の離間距離を略一定にすることで、前記移送方向全長にわたって安定して前記底面に堆積した混入物を該開口から吸い込むことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、移送性能の高い安価な移送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に相当する移送システムが配置された沈砂池を上方から見た平面図である。
図2図1に示す沈砂池のA-A断面図である。
図3】(a)は、図2におけるB-B断面図であり、(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
図4】移送装置を下方から見た下面図である。
図5】(a)は、第2実施形態の移送システムが配置された沈砂池を上方から見た、図1と同様の平面図であり、(b)は、同図(a)に示す沈砂池のD-D断面図である。
図6】第2実施形態の移送装置を下方から見た下面図である。
図7】第2実施形態の空間形成部材の上流端と下流端とを重ねて示した左側面図である。
図8】第3実施形態の移送装置を下方から見た図6と同様の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施形態の説明では、本発明の移送システムを沈砂池に設けた例を用いる。沈砂池は、下水処理施設の上流側に配置され、下水または雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に相当する移送システムが配置された沈砂池を上方から見た平面図である。また、図2は、図1に示す沈砂池のA-A断面図である。
【0022】
図1に示すように、沈砂池1は、除塵機2と、トラフ3と、集砂ピット4と、ポンプ井5と、移送装置10とを備えた平面視長方形状の池である。このトラフ3と移送装置10とが移送システムの一例に相当する。以下、沈砂池1の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を幅方向と称することがある。図1に示す沈砂池1は、図の右側から汚水を受け入れる。この汚水は、液体の一例に相当する。受け入れた汚水は図の左側に向かってゆっくりと流れていく(図1および図2に示す直線の矢印参照)。すなわち、沈砂池の長手方向が汚水の流れの方向になり、図1および図2では図の右側が上流側になり左側が下流側になる。また、図1および図2における左方向が移送装置10による砂の移送方向になる。
【0023】
除塵機2は、沈砂池1に流れ込んできた汚水に混入している大きなし渣を除去するためのものであり、トラフ3よりも上流側に設置されている。除塵機2は、無端チェーン21と、その無端チェーン21に間隔をあけて取り付けられた複数のレーキ22と、下方部分が水中に没した濾過スクリーン23とを有する。無端チェーン21は、沈砂池1の幅方向両側それぞれに斜めに起立した状態で設けられたものであり、図2に示すように、地上側スプロケット211と池底側スプロケット212に巻きかけられている。地上側スプロケット211は不図示のモータに接続されている。そのモータを駆動することで無端チェーン21は、地上側スプロケット211と池底側スプロケット212の間を回動する。無端チェーン21が回動すると、レーキ22は水中を出入りする。濾過スクリーン23は、無端チェーン21の下流側に配置されている。この濾過スクリーン23は、上下方向に延びるバーが所定間隔(例えば、75mm)で並べられたものであり、所定間隔以上の大きさのし渣の通過を遮る。濾過スクリーン23で遮られたし渣は、レーキ22によって掻き揚げられ、掻き揚げられたし渣は、地上側で不図示のベルトコンベア等の運搬手段に載せられる。
【0024】
集砂ピット4は、沈砂池1の下流側に設けられている。この集砂ピット4には、沈砂池1の底部1aに沈降した砂が集められる。本実施形態における砂は、混入物の一例に相当し、集砂ピット4は集積部の一例に相当する。集砂ピット4の内部には、揚砂ポンプ41が設けられている。この揚砂ポンプ41は、集砂ピット4の底近傍に配置されており、集砂ピット4に集められた砂を沈砂池1の外部に搬送するものである。揚砂ポンプ41には揚砂管42が接続されている。揚砂ポンプ41によって吸引された砂は、この揚砂管42を通して沈砂池1の外部に送られる。
【0025】
ポンプ井5は、砂が取り除かれた汚水が貯留されるものである。ポンプ井5は、沈砂池1の最も下流側に配置されている。また、図2に示すように、ポンプ井5の底が沈砂池1における最深部となっている。ポンプ井5の内部には、揚水ポンプ51が設けられている。この揚水ポンプ51は、ポンプ井5に貯留された汚水を沈砂池1の外部に排出するものである。揚水ポンプ51には揚水管52が接続されている。揚水ポンプ51によって吸引された汚水は、この揚水管52を通して不図示の沈殿池に送られる。図2には汚水の水面WLも示されている。なお、この水面WLの位置は、沈砂池1へ流れ込む汚水の量によって、トラフ3の底面3c(図3(a)参照)からの高さが例えば1m以上5m以下の範囲で変化する。
【0026】
トラフ3は、除塵機2と集砂ピット4の間に設けられている。すなわち、トラフ3は、除塵機2よりも下流側であって、集砂ピット4よりも上流側に設けられている。このトラフ3は、沈砂池1の底部1a(図2参照)に設けられている。底部1aには、底部傾斜面6が設けられ、底部傾斜面6につながるようにトラフ3が設けられている。沈砂池1に流れ込んだ汚水中の砂は、底部1aに向かって沈降する。
【0027】
図1に示すように、トラフ3は、沈砂池1の幅方向中央に設けられ、除塵機2よりも下流側となる位置から所定方向に延在している。すなわち集砂ピット4に向かって延在したものである。本実施形態のトラフ3の全長は20mである。トラフ3の下流端は集砂ピット4に接続されている。沈砂池1の底部1aに向かって沈降してきた砂は、吐出口102から吐出される水の流れによって集砂ピット4まで移送される。
【0028】
移送装置10は、空間形成部材101と吐出口102とを備えている。空間形成部材101と吐出口102は、トラフ3によって画定された溝S1(図3参照)に配置されている。空間形成部材101は、トラフ3に沿って延在したものである。空間形成部材101の全長はトラフ3の全長とほぼ同じであるが、トラフ3に対し下流側にずらして配置されているため、空間形成部材101の下流端は集砂ピット4に少し突出している。空間形成部材101の延在方向は、砂の移送方向でもある。空間形成部材101は、その延在方向における7mおきにトラフ3の幅方向に架け渡された支持板部材91によって支持されている。この支持板部材91の幅方向両端は底部傾斜面6に固定されており、幅方向の中央部分には空間形成部材101が固定されている。
【0029】
図2に示すように、給水管111は、沈砂池1よりも上方から沈砂池1の底部1aに向かって延在し、先端部分が下流に向かって折れ曲がっている。給水管111の先端は、内部空間S2内に入り込んでいる。吐出口102は、給水管111の先端に形成されている。移送装置10の構成については後に詳述する。
【0030】
図3(a)は、図2におけるB-B断面図である。この図3(a)では図の左右方向が幅方向になり、図の奥側から図の手前側に向かう方向が移送方向になる。
【0031】
図3(a)には、底部1aに設けられた、底部傾斜面6の下部、トラフ3、移送装置10、および給水管111が示されている。図3(a)に示すように、底部傾斜面6は、トラフ3の幅方向両側に設けられている。底部傾斜面6は、トラフ3の縁に接続し、そのトラフ3の縁に向かうに従って下方に向かって傾斜している。本実施形態における底部傾斜面6の傾斜角度は35度である。この底部傾斜面6は、コンクリート製のものであり、集砂ピット4(図1参照)と除塵機2(図1参照)の間で長手方向に延在している。なお、底部傾斜面6の傾斜角度は、30度以上60度以下が好ましい。底部傾斜面6を30度以上にすることで、底部傾斜面6に向かって沈降してくる砂は、底部傾斜面6を滑り落ちやすくなり、滑り落ちた砂はトラフ3の底面3cに堆積する。その底面3cに堆積した砂は、後述するように移送装置10によって集砂ピット4に向かって移送される。従って、底部1aに向かって沈降した砂の殆どを移送装置10で移送することができる。一方、60度を超える角度では、沈砂池1の容積が小さくなり、沈砂池1が受け入れ可能な汚水が少なくなってしまう。
【0032】
トラフ3は、図3(a)に示すように、3/4円弧の断面形状をしている。このトラフ3は、ステンレス製の板材を曲げ加工することによって形成されたものである。ただし、トラフ3は、他の材質の板材を加工したものであってもよく、射出成形や押出成形して作製したものであってもよく、底部傾斜面6と一体にコンクリートで形成されたものであってもよい。また、トラフ3の断面形状は円弧状に限られず、U字状やV字状等であってもよい。図3(a)に示すトラフ3は、内径356mmの円筒体の上方(水面WL側)1/4を切り欠いた形状のものであり、上方に向かって開口している。以下、上方に向かって開口している部分をトラフ3の上方開口3aと称する。トラフ3によって画定された溝S1のうち、上端の上方開口3aにつながる上側部分は、上方開口3aに近づくほど狭くなっている。すなわち、トラフ3の上方開口3aは、トラフ3の延在方向に直交する幅方向に絞られた開口である。
【0033】
沈砂池1に流れ込んだ汚水に含まれている砂は、汚水が下流側へ流れていく課程において底部1aに向かって沈降していく。底部1aに沈降してきた砂のうち、底部傾斜面6に沈降した砂は、底部傾斜面6に沿ってトラフ3に向かって滑り落ち、トラフ3の上方開口3aから溝S1に入り込んでトラフ3の底面3cに堆積する。つまり、底部1aに沈降してきた砂は、まずは溝S1に集められる。
【0034】
図3(a)に示す空間形成部材101は、円弧の断面形状をしたものである。この空間形成部材101は、下底の長さが上底の長さよりほんの少し長く、高さの高い台形をした板厚4mmのステンレス製の平板材を、断面が円弧状になるように成形したものである。なお、成形前に下底であった部分が空間形成部材101の下流端になり、成形前に上底だった部分は空間形成部材101の上流端になる。ただし、空間形成部材101は、他の材質の板材を加工したものであってもよく、射出成形や押出成形して作製したものであってもよい。また、空間形成部材101の断面形状は、下辺幅方向中央部が開口した矩形状等であってもよい。本実施形態の空間形成部材101は、内径156mmの円筒体の下方(底面3c側)を切り欠いた形状のものであり、下部に開口101aが設けられている。すなわち、空間形成部材101に形成された開口101aは、溝S1に配置され、トラフ3の底面3cに対向している。この開口101aは、溝S1に集められた砂を、空間形成部材101の内周面101bによって画定された内部空間S2に吸い込む吸込口として機能する。図3(a)には、開口幅Lを有する開口101aが示されている。開口幅Lは、移送方向の上流側よりも下流側の方が狭くなっている。この開口幅Lについては後述する。開口101aは、トラフ3の底面3cから離間している。空間形成部材101は、溝S1内を仕切るものであって、下端にある開口101aより上の部分が閉塞した内部空間S2を形成するものである。空間形成部材101の上端は閉じている。また、空間形成部材101は、円弧状であるので、上側部分の外周面は下方へ向かって傾斜している。この空間形成部材101の上側部分の外周面にも砂が沈降してくるが、円弧状であるため砂が堆積しにくい。空間形成部材101に向かって沈降してきた砂は、円弧状の外周面をつたって、トラフ3の底面3c側に流れ落ちやすくなる。また、空間形成部材101の内周面101bも円弧状をしているので、内部空間S2は、開口101aにつながる下側部分が、その開口101aに近づくほど狭くなっている。
【0035】
空間形成部材101の径方向の中心位置は、トラフ3の径方向の中心位置とほぼ一致している。したがって、トラフ3の内周面3bと空間形成部材101の外周面の隙間Wは、96mm以上が確保されている。ただし、空間形成部材101の径方向の中心位置とトラフ3の径方向の中心位置を異ならせてもよい。異ならせる場合、上述の濾過スクリーン23(図1参照)を通過してしまう混入物の最大長(ここでは濾過スクリーン23の目幅であって75mm)よりも、トラフ3と空間形成部材101の隙間Wが広くなるように配置することが好ましい。上流側の濾過スクリーン23の目幅よりも隙間Wを広くすることで、濾過スクリーン23を通過した混入物が、隙間Wを通れずにトラフ3と空間形成部材101の間に詰まってしまうことを防止できる。
【0036】
内部空間S2には、その内部空間S2に流体を吐出する吐出口102が配置されている。この吐出口102は、直径50mmのパイプ状の給水管111の先端を扁平につぶして形成された長孔形状のものである。吐出口102の横方向(トラフ幅方向)の最大開口長は60mmである。吐出口102をこのような扁平な形状にすることで、真円の形状のものよりも、吐出される水の流速を高めることができる。
【0037】
図3(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。この図3(b)では図の左右方向がトラフ3の延在方向になり、図の右側が上流側(除塵機2側)になり左側が下流側(集砂ピット4側)になる。
【0038】
図3(b)に示すように、給水管111の先端部分は、空間形成部材101と平行に延びている。また、給水管111の先端は、内部空間S2内に入り込んでいる。給水管111には、沈殿池に貯留された水を不図示のポンプでくみ上げたものが供給される。この供給される水は、流体の一例に相当する。なお、この水は、沈殿池以外の池から汲み上げられたものでもよく、水道水であってもよい。また、この水に気体を混合したものを給水管111に供給してもよい。ただし、気体の割合が多すぎると吐出した気体混合水の流れが弱まりやすいので、気体混合水を用いる場合でも気体の割合は少ない方が好ましい。本実施形態では、吐出口102から吐出される水の吐出圧力は0.09MPaで、噴射水量は毎分1500リットルである。吐出圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下であればよく、噴射水量は空間形成部材101の長さに応じて適宜調整すればよい。また、水の吐出流速は、8m/sec以上が好ましい。給水管111に供給された水は、給水管111の先端にある吐出口102から、移送方向に向かって吐出される。すなわち、吐出口102からは、略水平方向に水が吐出される。なお、吐出口102は、内部空間S2に水を吐出できる範囲であれば内部空間S2の外に配置されていてもよく、例えば空間形成部材101の上流端を含む面上に配置されていてもよい。
【0039】
吐出口102から内部空間S2に水が吐出されることで、空間形成部材101の内(内部空間S2)と外とで圧力差が生じ、底面3cに堆積した砂は、図3(a)に示す曲線の矢印のように、開口101aから空間S2内に吸い込まれる。さらに、その内部空間S2内では、吸い込まれた砂が、吐出口102から吐出された水の流れによって集砂ピット4側に向かって移動する。従って、空間形成部材101は、内部空間S2に吸い込まれた砂が、吐出口102から流体が吐出されることで水の吐出方向下流側に向かって移動する経路として機能する。図3(a)に示すように、開口101aは、空間形成部材101の延在方向に直交する方向(トラフ幅方向)に絞られた開口であって、内部空間S2はその開口101aから拡がった空間である。このように開口101aが絞られた開口であることによって、内部空間S2内において移送されている砂が、内部空間S2内から外に出にくくなる。また、内部空間S2内における水の流れを維持しやすくなり、砂を遠くまで移動させることができる。
【0040】
図4は、移送装置を下方から見た下面図である。この図4では、図の右側が上流側になり、図の左側が下流側になる。
【0041】
図4に示すように、空間形成部材101の下方には、移送方向と直交する方向に開口幅Lを有する開口101aが形成されている。開口101aの開口幅Lは、移送方向の上流端では幅広のL1であり、移送方向の下流端ではL1よりも狭いL2である。本実施形態では、上流端における開口101aの開口幅L2は80mmであり、下流端における開口101aの開口幅L1は40mmである。本実施形態の開口101aは、移送方向下流側に向かうに従って徐々に開口幅Lが狭くなっている。換言すれば、開口101aは、吐出口102から移送方向に沿って離れるに従って徐々に開口幅Lが狭くなっている。ただし、開口幅Lは、段階的に狭くなっていてもよい。すなわち、開口101aが階段状をしていてもよい。また、開口幅Lは、移送方向に沿って離れるに従って徐々に間隔が狭くなる部分と、段階的に狭くなる部分とが混在していてもよい。
【0042】
上述したように、吐出口102から内部空間S2に水が吐出されることで、空間形成部材101の内と外の間で圧力差が生じるが、吐出口102から移送方向に沿って離れるにしたがって、吐出された水の流速は弱まりやすく、それにともない圧力差も減少しやすい。本実施形態の移送装置10によれば、移送方向の下流側において、空間形成部材101の内と外の間の圧力差が減少したとしても、その下流側では開口幅Lが狭くなっているので、内部空間S2内にある混入物は、開口101aから漏れ出にくい。これにより、一つの吐出口102によって砂を長い距離移送できるので、空間形成部材101の延在方向の長さが長い場合であっても吐出口102の数を増加する必要性が減少し、移送システムを安価に構築することができるようになる。なお、上流側の開口幅L1に対して下流側の開口幅L2は、0.8倍以下0.3倍以上にすることが望ましい。0.8倍を超えると、下流側で圧力差が減少したときに開口101aから砂が漏れ出やすくなる。一方、0.3倍よりも小さいと、開口101aが狭くなりすぎて、沈砂池1の下流側において底面3c(図3参照)に堆積している砂を吸い込めなくなる虞がある。
【0043】
また、沈砂池1では、受け入れた汚水に含まれている砂の多くは、沈砂池1の上流側で沈降していく。本実施形態では、移送装置10における移送方向が沈砂池1における汚水の流れ方向と一致しているので、開口幅Lが広い上流側では多くの砂が溝S1に沈降し、逆に下流側では溝S1に沈降する砂は少ない。すなわち、沈降する砂の量が多い上流側では、開口幅Lが広いので短時間で多くの砂を吸い込める。これにより、砂の移送を短時間で完了できるといった効果もある。なお、移送装置10における移送方向と沈砂池1における汚水の流れ方向は多少異なっていてもよい。
【0044】
以上説明した沈砂池1からは、受け入れた液体に含まれている混入物が所定の流下方向に流下している間に沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムであって、
前記移送方向に沿って延在し、前記底面から離間した開口が下部に設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、開口幅が狭いものであり、
前記移送方向は、前記流下方向に沿った方向であることを特徴とする移送システムといった概念を導き出すことができる。
【0045】
また、以上説明した沈砂池1からは、受け入れた液体に含まれている混入物が所定の流下方向に流下している間に沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムであって、
前記移送方向に沿って延在し、前記底面から離間した開口が下部に設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記流下方向の上流側よりも該流下方向の下流側の方が、開口幅が狭いものであることを特徴とする移送システムといった概念も導き出すことができる。
【0046】
次に、第2実施形態の移送システムについて説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0047】
図5(a)は、第2実施形態の移送システムが配置された沈砂池を上方から見た、図1と同様の平面図であり、図5(b)は、同図(a)に示す沈砂池のD-D断面図である。これらの図5(a)および図5(b)でも図の右側が上流側になり左側が下流側になる。なお、除塵機およびポンプ井は、先の実施形態と同一の構成であるため図示省略している。
【0048】
図5に示す沈砂池1は、図1に示す沈砂池1とはトラフ3および空間形成部材101の形状が異なる。トラフ3は、ステンレス製の板材を曲げ加工することによって形成した断面が円弧状をしたものである。ただし、先の実施形態と同様に、トラフ3は、他の材質を用いたものであってもよく、他の方法で作製されたものであってもよく、円弧以外の断面形状をしたものであってもよい。図5(a)に示すように、第2実施形態のトラフ3は、移送方向の下流側に向かうに従って内径が大きくなっている。このトラフ3の内径は、最も小径の部分(上流端)で356mmであり、最も大径の部分(下流端)では512mmである。なお、トラフ3の内径は、後述する空間形成部材101の外周面の径に合わせて適宜設定すればよい。
【0049】
空間形成部材101は、板厚4mmのステンレス製の板材を、断面が円弧状になるように成形したものである。ただし、先の実施形態と同様に、空間形成部材101は、他の材質を用いたものであってもよく、他の方法で作製されたものであってもよく、円弧以外の断面形状をしたものであってもよい。空間形成部材101は、移送方向の下流側に向かうに従って内径が大きくなっている。従って、内部空間S2(図7参照)は、移送方向の上流側よりも移送方向の下流側の方が、移送方向と直交する断面積が大きくなっている。この第2実施形態の空間形成部材101は、移送方向の下流側に向かうに従って径方向全体が拡がっていく形状をしているが、幅方向を維持したまま高さ方向のみに拡がっていく形状であってもよく、高さ方向を維持したまま幅方向のみに拡がっていく形状であってもよい。さらに、空間形成部材101は、段階的に断面積が大きくなっていくものであってもよい。加えて、空間形成部材101は、移送方向の下流側に向かうに従って断面積が大きくなっていく部分と、段階的に断面積が大きくなっていく部分とが混在したものであってもよい。移送方向の下流側の断面積を大きくすることで、その下流側における内部空間S2の容積が大きくなり、多くの混入物を内部空間S2に保持することができる。従って、移送方向の下流側において内部空間S2にある砂が開口101a(図7参照)から漏れ出てしまうことを抑制できる。また、移送方向の下流側では、吐出口102から吐出された流体によって生じた流れの中心から空間形成部材101の内周面3b(図7参照)が離間し、その流れが内周面3bによって阻害されにくくなるので、内部空間S2の流体の流れが弱まりにくなる。このため、内部空間S2にある砂が開口101aから漏れ出てしまうことがより抑制される。この実施形態における空間形成部材101の内径は、最も小径の部分(上流端)で156mmであり、最も大径の部分(下流端)では312mmである。上流側の断面積に対して下流側の内径は、1.2倍以上3倍以下にすることが望ましい。1.2倍よりも少ないと、開口101aから砂が漏れ出てしまうこと抑制する作用が十分に得られない。一方、3倍を超えると材料費が高くなる上に空間形成部材101の作製が困難になる。
【0050】
この空間形成部材101は、この空間形成部材101は、高さの高い台形をした板厚4mmのステンレス製の平板材を、断面が円弧状になるように成形したものである。ただし、先の実施形態と同様に、空間形成部材101は、他の材質を用いたものであってもよく、他の方法で作製したものであってもよい。空間形成部材101の径方向の中心101cは、下流側にむかうに従ってトラフ3の底面3c(図7参照)から離間するように少し上方に傾斜している。こうすることで、後述するように、空間形成部材101の開口101a(図7参照)とトラフ3の底面3cとの離間距離を、移送方向にわたって略一定にすることができる。
【0051】
図6は、第2実施形態の移送装置を下方から見た下面図である。この図6でも、図の右側が上流側になり、図の左側が下流側になる。
【0052】
図6に示すように、空間形成部材101の下方には、移送方向と直交する方向に開口幅Lを有する開口101aが形成されている。先の実施形態と同様に、開口101aの開口幅Lは、移送方向の上流端では幅広のL1であり、移送方向の下流端ではL1よりも狭いL2である。空間形成部材101の上流端における開口101aの開口幅L2は、80mmであり、下流端における開口101aの開口幅L1は40mmである。この開口101aは、先の実施形態と同様に、移送方向下流側に向かうに従って徐々に開口幅Lが狭くなっているが、段階的に狭くなっていてもよく、徐々に狭くなっていく部分と段階的に狭くなっていく部分とが混在していてもよい。この開口101aによって、第2実施形態においても先の実施形態と同様の効果が生じる。
【0053】
図7は、第2実施形態の空間形成部材の上流端と下流端とを重ねて示した左側面図である。この図7では、空間形成部材の上流端は実線で示されており、空間形成部材の下流端は細い二点鎖線で示されている。また、図7では、図の左右方向が幅方向になり、図の奥側から図の手前側に向かう方向が移送方向になる。
【0054】
空間形成部材101のうち、溝S1にある部分は、トラフ3とは距離をあけてトラフ3に対向している。以下、空間形成部材101のうち、トラフ3に対向している部分を対向部分101dと称する。なお、この第2実施形態では、対向部分101dは、空間形成部材101のうち、トラフ3の上方開口3aよりも下方に位置する部分である。図7に示すように、空間形成部材101の上流端では、対向部分101dとトラフ3との隙間Wにおける最短距離はW1である。また、下流端では、対向部分101dとトラフ3との隙間Wにおける最短距離はW2である。この第2実施形態では、これらのW1とW2の距離は同一である。空間形成部材101の外周面の径とトラフ3の内径は、隙間Wが移送方向にわたって(空間形成部材101の全長で)同一になるように設定されている。なお、対向部分101dとトラフ3の間の最短距離は、移送方向にわたって完全に同一でなくともよい。換言すれば、対向部分101dとトラフ3の間の最短距離は、移送方向にわたって略同一であればよい。仮に、空間形成部材101の外周面の径が下流側で大きくなり、トラフ3の内径は上流側から下流側まで一定であったとすると、対向部分101dとトラフ3の内周面3bの隙間Wは下流側で狭くなっていき、下流端近傍では接触してしまう。隙間Wが狭いと、そこに混入物が詰まってしまう虞がある。対向部分101dとトラフ3との最短距離を一定にすることで、混入物が詰まってしまうことを抑制できる。一方、隙間Wが広くなりすぎてしまうと、大きな混入物が溝S1に入り込んで、図1に示した集砂ピット4まで移動し、揚砂ポンプ41の吸込口が詰まってしまう虞がある。
【0055】
また、図7に示すように、空間形成部材101の上流端における、トラフ3の底面3cと空間形成部材101の開口101aの離間距離はH1であり、空間形成部材101の下流端における、底面3cとの開口101aの離間距離はH2である。離間距離H1と離間距離H2は同一の距離である。この第2実施形態では、空間形成部材101の中心101c(図5参照)が、下流側にむかうに従って底面3cから離間するように、中心101cを少し上方に傾斜させている。この傾斜角度は、底面3cと開口101aの離間距離が移送方向にわたって同一になるように設定されている。従って、開口101aは、移送方向にわたって底面3cと一定の距離をあけ、底面3cに対向している。なお、底面3cと開口101aの離間距離は、移送方向にわたって完全に同一でなくともよい。換言すれば、底面3cと開口101aの離間距離は、移送方向にわたって略同一であればよい。底面3cと開口101aの離間距離が長くなりすぎると、底面3cに堆積した砂を開口101aから吸い込む作用が底面3cまで届かなくなってしまうことがある。吸い込む作用が底面3cまで届かないと、空間形成部材101の内と外の間で圧力差が生じても、底面3cに堆積した砂のうちの少なくとも一部は内部空間S2に吸い込めずに残留してしまう。逆に、底面3cと開口101aの離間距離が短くなりすぎると、底面3cと開口101aの間に、開口101aに向かう砂の流れに対する抵抗が生じてしまい、砂を開口101aから内部空間S2に吸い込む作用が弱まってしまう。底面3cと開口101aの離間距離を一定にすることで、底面3cに堆積した砂を開口101aから吸い込む作用を移送方向にわたって安定して発生させることができる。
【0056】
以上説明した第2実施形態の空間形成部材101では、下流側に向かう従って、開口幅Lは狭くなり、内部空間S2の断面積は大きくなる。これにより、移送方向下流側において内部空間S2にある砂が開口101aからよりさらに漏れ出にくくなる。従って、砂をより長い距離移送できるようになるので、移送距離が長い場合であっても吐出口102の数を増加する必要性がさらに減少し、移送システムを安価に構築することができるようになる。
【0057】
次に、第3実施形態の移送システムについて説明する。第3実施形態の説明では、第2実施形態との違いを主に説明し、第2実施形態と重複する説明は省略することがある。
【0058】
図8は、第3実施形態の移送装置を下方から見た図6と同様の下面図である。この図8でも、図の右側が上流側になり、図の左側が下流側になる。
【0059】
図8に示す移送装置10は、第2実施形態に示す移送装置10とは空間形成部材101の形状が異なる。なお、この第3実施形態の沈砂池1は、移送装置10を除いて、第2実施形態の沈砂池1と同一の構成をしているので移送装置10以外の図面は省略する。図8に示すように、空間形成部材101の開口101aは、移送方向にわたって同一の開口幅Lに形成されている。この空間形成部材101によって形成される内部空間S2は、第2実施形態と同様に、移送方向の上流側よりも移送方向の下流側の方が、移送方向と直交する断面積が大きくなっている。下流側の断面積を大きくすることで、断面積が移送方向にわたって同一の場合と比較して下流側における内部空間S2の容積が大きくなるので、下流側において多くの混入物を内部空間S2に保持したままにできる。これにより、内部空間S2にある砂が漏れ出にくくなり、一つの吐出口102によって砂を長い距離移送できるので、移送距離が長い場合であっても吐出口102の数を増加する必要性が減少する。従って、移送システムを安価に構築することができるようになる。
【0060】
この第3実施形態からは、受け入れた液体に含まれている混入物が沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムであって、
前記移送方向に沿って延在し、前記底面から離間した開口が下部に設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記内部空間は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、前記移送方向と直交する断面積が大きいものであることを特徴とする移送システムといった概念を導き出すことができる。
【0061】
また、この移送システムにおいて、前記底部に形成され、前記移送方向に延在するトラフを備え、
前記空間形成部材は、前記トラフによって画定された溝に配置されて該トラフとは距離をあけて該トラフに対向した対向部分を有するものであり、
前記対向部分と前記トラフとの間の最短距離は、前記移送方向にわたって略一定であってもよい。
【0062】
さらに、この移送システムにおいて、前記開口は、前記移送方向にわたって前記底面と略一定の離間距離をあけ、該底面に対向していてもよい。
【0063】
本発明は上述の実施の形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、上記実施形態では、トラフ3を有する沈砂池1に移送装置10を設置した例で説明したが、トラフ3の無い沈砂池1に移送装置10を設置してもよい。トラフ3の無い沈砂池1に設置する場合、池底面が底面の一例に相当し、移送装置10が移送システムの一例に相当する。また、上記実施形態では、移送装置10を沈砂池1に設けているが、移送装置10は沈殿池に設けてもよく、ダム湖等の貯水池に設けてもよい。貯水池に設ける場合、移送装置10は、ダム湖等の底に沈降した土砂を移送するものであってもよい。また、移送装置10は、工場等に設けられ、工場等で生じた金属粉等を移送して所定の集積場所に集めるものであってもよい。
【0064】
なお、以上説明した実施形態や変更例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を他の、実施形態や変更例に適用してもよい。
また、これまでに説明した移送システムは、受け入れた液体に含まれている混入物が沈降する底部において、底面に堆積した混入物を移送方向に移送する移送システムであって、
前記移送方向に沿って延在し、前記底面から離間した開口が下部に設けられた中空状の空間形成部材と、
前記空間形成部材の内周面によって画定された内部空間に流体を吐出する吐出口とを備え、
前記開口は、前記移送方向の上流側よりも該移送方向の下流側の方が、開口幅が狭いことを特徴とする。
【符号の説明】
【0065】
1 沈砂池
1a 底部
3 トラフ
101b 内周面
3c 底面
10 移送装置
101 空間形成部材
101a 開口
102 吐出口
L 開口幅
S1 溝
S2 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8