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7235312インスリン抵抗性を治療するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】インスリン抵抗性を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20230301BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230301BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K31/198
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10
A61P9/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019512903
(86)(22)【出願日】2017-09-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017050462
(87)【国際公開番号】W WO2018049019
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-07
(31)【優先権主張番号】62/384,390
(32)【優先日】2016-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591135163
【氏名又は名称】テンプル・ユニバーシティ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイアー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】TEMPLE UNIVERSITY-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サリム・メラリ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・エイ・バレロ
(72)【発明者】
【氏名】ウェイン・イー・チルダーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・シー・モートン
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103833623(CN,A)
【文献】特表2000-506152(JP,A)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,1978年,Vol.21,pp.50-55
【文献】Journal of Biological Chemistry,2010年,Vol.285,pp.39943-39952
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリン感受性を増加させ、インスリン抵抗性を低下させ及び/又はインスリン抵抗性を予防するための医薬組成物であって、次式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を含む医薬組成物:
【化1】
式中、
1は、水素であり;
2は、水素であり;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は、独立して、水素であり;
5及びR6は、独立して、水素であり;
11及びR12は、独立して、水素であり;
mは1、2、3又は4であり;
nは0、1、2、3又は4であり;
oは0、1、2、3又は4であり;
pは1、2、3又は4であり;
qは0、1、2、3又は4であり;及び
rは0、1、2、3又は4であるが、ただし、
m+n+oの合計が3~6の範囲であり、
p+q+rの合計が3又は4である。
【請求項2】
mが3であり、pが4であり、n、o、q及びrのそれぞれがゼロである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記式Iの化合物が(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、又はその薬学的に許容される塩である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記薬学的に許容される塩が(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド:
【化2】
ある、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
mが4であり、nが1又は2であり、pが3又は4であり、o、q及びrのそれぞれがゼロである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸若しくはその薬学的に許容される塩、又は(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸若しくはその薬学的に許容される塩、又は(S)-2-アミノ-6-((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸若しくはその薬学的に許容される塩である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される塩が、
(S)-2-アミノ-6-((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸トリヒドロクロリド、
【化3】
(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド及び
【化4】
(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド
【化5】
よりなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
インスリン抵抗性障害を治療するための医薬組成物であって、次式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の有効量を含む医薬組成物:
【化6】
式中、
1は、水素であり;
2は、水素であり;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は、独立して、水素であり;
5及びR6は、独立して、水素であり;
11及びR12は、独立して、水素であり;
mは1、2、3又は4であり;
nは0、1、2、3又は4であり;
oは0、1、2、3又は4であり;
pは1、2、3又は4であり;
qは0、1、2、3又は4であり;及び
rは0、1、2、3又は4であるが、ただし、
m+n+oの合計が3~6の範囲であり、
p+q+rの合計が3又は4であり、
前記インスリン抵抗性障害が、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性症候群、X症候群、高血圧、高血圧症、高血中コレステロール、高脂血症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、高血糖、高インスリン血症、高プロインスリン血症、耐糖能異常及びインスリン放出遅延よりなる群から選択される。
【請求項11】
前記インスリン抵抗性障害が、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性症候群、高脂血症、脂質異常症、高血糖、高インスリン血症、高プロインスリン血症、耐糖能異常及びインスリン放出遅延よりなる群から選択される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記インスリン抵抗性障害が糖尿病、肥満、高血糖及び高脂血症よりなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記式Iの化合物が(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1012のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記薬学的に許容される塩が(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド:
【化7】
ある、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
mが4であり、nが1又は2であり、pが3又は4であり、o、q及びrのそれぞれがゼロである、請求項1012のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸若しくはその薬学的に許容される塩、又は(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸若しくはその薬学的に許容される塩、又は(S)-2-アミノ-6-((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸若しくはその薬学的に許容される塩である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容される塩が、
(S)-2-アミノ-6-((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸トリヒドロクロリド、
【化8】
(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド及び
【化9】
(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド
【化10】
よりなる群から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府助成金に対する言及
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金番号RO1-DK090588の下で米国政府の支援を受けて行った。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願に対する相互参照
本願は、2016年9月7日に出願された米国仮出願第62/384,390号の利益を主張する。その開示全体は参照により本明細書において援用する。
【0003】
発明の分野
本発明は代謝性疾患の分野に関する。特に、本発明はインスリン抵抗性の治療に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
インスリン依存型糖尿病(IDDM)又は若年糖尿病としても知られる1型糖尿病では、膵臓はインスリンをほとんど又は全く産生しない。1型糖尿病は、膵臓のインスリン産生β細胞に対する自己免疫攻撃から部分的に生じるものと考えられている。
【0005】
非インスリン依存型糖尿病(NIDDM)又は成人発症型糖尿病としても知られる2型糖尿病(T2DM)は、ほとんどがインスリン抵抗性によって生じ、最終的にはβ細胞が枯渇し、β細胞が破壊される。インスリン抵抗性は、インスリンに対する末梢組織の反応障害に関連するものである。T2DMは主として肥満に起因し、遺伝的素因のある人の運動不足に起因するものではない。これは糖尿病の約90%を占める。T2DMの割合は、肥満と並行して1960年以来著しく増加してきた。米国では約1820万人が悩まされていると考えられる。T2DMは中年以上の年齢で始まるのが典型的である。しかしながら、肥満の流行の結果、実質的に若年の患者がこの状態と診断されている。2型糖尿病は10年という短い平均余命に関連する。
【0006】
インスリン抵抗性は、一般に、細胞がホルモンであるインスリンの正常な作用に反応しない病的状態であるとみなされている。身体がインスリン抵抗性の条件下でインスリンを産生すると、体内の細胞はインスリンに対して耐性となり、インスリンを有効に使用することができず、高血糖につながる。
【0007】
T2DMの初期段階では、主な異常はインスリン感受性の低下である。この段階で、高血糖を当該技術分野において知られている様々な手段及び投薬によって回復させることができる。インスリン抵抗性の増加に反応して、β細胞はインスリンをより多く産生させられ、あるいは増殖及び/又は顆粒化するように誘発されることで、さらに多くのインスリンを産生するようになる。その後、インスリンの過剰産生又はβ細胞の過剰活性がβ細胞の枯渇を招き、β細胞集団の破壊に至ることがある。このように、膵臓はもはや適切なレベルのインスリンを与えることができず、その結果血中のグルコースレベルが上昇する。最終的には、明白な高血糖症及び高脂血症が生じ、心血管疾患、腎不全及び失明などの糖尿病に関連する破壊的な長期合併症を引き起こす。
【0008】
インスリン抵抗性は、ほぼ全ての肥満個体に存在する(Paoletti外,Vasc Health Risk Manag 2:145-152)。肥満関連インスリン抵抗性は、T2DM、高血圧、脂質異常症及び非アルコール性脂肪性肝疾患のリスクを大幅に高める。これらはまとめて代謝抵抗性症候群又はインスリン抵抗性症候群として知られている(Reaven,Diabetes,37:1595-1607(1988))。
【0009】
インスリン抵抗性及びT2DMは、心臓発作、脳卒中、切断、糖尿病性網膜症及び腎不全のリスク増加に関連する。極端な場合には、四肢の循環が悪くなり、切断が必要になる可能性がある。聴力、視力及び認知能力の喪失もこれらの状態に関連する。
【0010】
小児及び成人におけるインスリン抵抗性の管理は、本質的には、健康的な食習慣及び運動量の増加など、食事及び生活習慣の変更を基礎とする。これらの方法はインスリン感受性を改善し、かつ、疾患の進行を遅らせるのに非常に効率的なことがあるが、適用するのが難しく、実際にはほとんどの患者が従わない。T2DMは、インスリン感受性を促進する薬物、例えば、チアゾリジンジエステル類で治療できるが、これらが疾患の進行速度を低下させる有効性は極めて低い。インスリン治療は、病気の最も進行した段階で必要となる。
【0011】
トログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾンなどのチアゾリジンジオンは、細胞核内の受容体分子の一群であるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体に結合する。これらの受容体に対する通常のリガンドは、遊離脂肪酸(FFA)及びエイコサノイドである。これらの受容体は、活性化されるとDNAに移動し、多数の特定の遺伝子の転写を活性化する。これらの異なる遺伝子の活性化により、(1)インスリン抵抗性が低下し、(2)脂肪細胞分化が改変し、(3)VEGF誘導血管形成が阻害され、(4)レプチンレベルが低下し(食欲増加につながる)、(5)所定のインターロイキン(例えばIL-6)レベルが低下し、及び(6)アディポネクチンレベルが増加する。しかしながら、チアゾリジンジオンの摂取は、通常、体重増加に関わる。疾患の進行度を低減させる効果は低い。したがって、インスリン抵抗性のための効果の高い治療法が依然として必要である。
【0012】
肥満がどのようにインスリン抵抗性を促進するのかは、依然として完全には理解されていないが、見込みのあるメカニズムがいくつか提案されている。遊離脂肪酸及び炎症誘発性サイトカイン、小胞体(ER)ストレス、及び酸化ストレスの血漿濃度は全て肥満において上昇し、インスリン抵抗性を誘発することが示されている。しかし、これらは、慢性的な過剰栄養素摂取の後にしか発症しない末期の事象である可能性がある。
【0013】
過剰栄養では、過剰のグルコースが消費され、解糖系及びTCAサイクルを介して大量のグルコースが代謝され、ミトコンドリアの電子伝達系におけるNADH及びFADH2産生が増加し、活性酸素種(ROS)が増加する。ROSの生成がそれらの解毒を超えると、酸化ストレスが発生する。酸化ストレスは、タンパク質に可逆的又は不可逆的な変化を引き起こす可能性がある。可逆的変化はシステイン残基で生じ、抗酸化タンパク質により修復され得る。一方、酸化ストレスは、反応性カルボニル基、主としてアルデヒド及びケトンの形成によってタンパク質に不可逆的な損傷を直接的又は間接的に誘導する可能性がある。リジン又はアルギニン残基の直接タンパク質カルボニル化が金属陽イオンと過酸化水素とのフェントン反応を通して生じ、グルタミン酸セミアルデヒドが形成される。間接カルボニル化は、多価不飽和脂肪酸(PUFA)の酸化的修飾生成物である反応性α,β-不飽和アルデヒドによって生じる場合がある。
【0014】
最も一般的な反応性アルデヒドは4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)である。4-HNEは、マイケル付加及びシッフ塩基形成を介して、タンパク質のシステイン、リジン及びヒスチジン残基と反応する。カルボニル誘導体(すなわちアルデヒド及びケトン)の導入はポリペプチド鎖のコンフォメーションを変化させ、タンパク質を部分的又は全体的に不活性化させる。タンパク質のカルボニル化は不可逆的なプロセスであるため、細胞にとって有害である。T2DM及び糖尿病ラットの肝臓において4-HNEの増加が報告されている。
【0015】
2015年に報告された研究では、健康な男性に、1週間にわたって~6000kcal/日の一般的な米国の食事(~50%の炭水化物(CHO)、~35%の脂肪及び~15%のタンパク質)を与えた。この食事により、3.5kgの急速な体重増加と、全身性及び脂肪組織のインスリン抵抗性及び酸化的ストレスの急速な兆候(2~3日後)が生じたが、炎症性又はERストレスは生じなかった(Boden外,Science Translation Medicine,7(304):304re7(2015年9月9日))。脂肪組織では、酸化ストレスは、広範なGLUT4カルボニル化並びにグルコース輸送チャネルに近接したHNE及びグルタミンセミアルデヒドの付加を含めて、いくつかのGLUT4翻訳後修飾と関連していた。GLUT4は脂肪組織における主要なインスリン促進性グルコース輸送体である。カルボニル化は、典型的にはタンパク質架橋及びタンパク質機能の喪失又は改変を引き起こし(Schaur,Mol.Aspects Med.24:149~159(2003))、かつ、26Sプロテアソームによる選択的分解に対して罹患タンパク質を標的とする場合がある(Kastle外,Curr.Pharm.Des.17:4007-4022(2011))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】Paoletti外,Vasc Health Risk Manag 2:145-152
【文献】Boden外,Science Translation Medicine,7(304):304re7(2015年9月9日)
【文献】Schaur,Mol.Aspects Med.24:149~159(2003)
【文献】Kastle外,Curr.Pharm.Des.17:4007-4022(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
これらの進歩にもかかわらず、特に典型的にはインスリン抵抗性に悩まされ又はインスリン抵抗性の発症に最も感受性のある、最終的には2型糖尿病の肥満患者において、インスリン抵抗性の予防及び治療のための治療薬が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一実施形態では、インスリン感受性を増加させ、インスリン抵抗性を低下させ及び/又はインスリン抵抗性を予防するための方法は、それを必要とする対象に、次式Iの化合物又はその製薬上有効な塩の有効量を投与することを含む:
【化1】
式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換(C1-C6)アラルキル、非置換又は置換(C1-C6)ヘテロアラルキルよりなる群から選択され、ここで該置換(C1-C6)アラルキル及び置換(C1-C6)ヘテロアラルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2よりなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換(C1-C6)アラルキル、非置換又は置換(C1-C6)ヘテロアラルキルよりなる群から選択され、ここで該置換(C1-C6)アラルキル及び置換(C1-C6)ヘテロアラルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2よりなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は、独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルよりなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、-(C1-C6)アルキル及び-OHよりなる群から選択されるが、ただし、R5及びR6の両方が-OHであることはできないものとし;
11及びR12は、独立して、水素、-(C1-C6)アルキル及び-OHよりなる群から選択されるが、ただしR11及びR12の両方が-OHであることはできないものとし;
mは1~4の整数であり;
nは0~4の整数であり;
oは0~4の整数であり;
pは1~4の整数であり;
qは0~4の整数であり;及び
rは0~4の整数である。
【0019】
インスリン抵抗性を治療する方法であって、それを必要とする対象に、式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の有効量を投与することを含む方法も提供される。
【0020】
インスリン抵抗性障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の有効量を投与することを含む方法も提供される。
【0021】
インスリン抵抗性障害を軽減する方法であって、それを必要とする対象に、式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の有効量を投与することを含む方法も提供される。インスリン抵抗性障害の例としては、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性症候群、X症候群、高血圧、高血圧症、高血中コレステロール、高脂血症、脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、高血糖、 高インスリン血症、高プロインスリン血症、耐糖能異常、インスリン放出遅延、冠状動脈性心臓病、狭心症、鬱血性心不全、脳卒中、認知機能障害、網膜症、末梢神経障害、腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、妊娠の合併症、月経不順、不妊、不規則な排卵、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、脂肪異栄養症、コレステロール関連障害、痛風、閉塞性睡眠時無呼吸、変形性関節症及び骨粗鬆症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
所定の実施形態では、対象は、インスリン抵抗性、インスリン感受性の低下又はインスリン抵抗性疾患に罹患している。他の実施形態では、対象はこれらの状態を発症する危険性があり、式Iの化合物を予防的に投与して当該状態の発症を遅らせる又は当該状態を経験したときの重症度を軽減させる。
【0023】
また、対象においてインスリン感受性を増加させ、インスリン抵抗性を低下させ、及び/又はインスリン抵抗性を予防するのに使用するための、式Iの化合物及びその薬学的に有効な塩も提供される。また、対象においてインスリン抵抗性を治療するのに使用するための式Iの化合物及びその薬学的に有効な塩も提供される。また、対象においてインスリン抵抗性障害を治療するのに使用するための、式Iの化合物及びその薬学的に有効な塩も提供される。また、対象においてインスリン抵抗性障害を軽減するのに使用するための、式Iの化合物及びその薬学的に有効な塩も提供される。
【0024】
また、式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩を含む、対象においてインスリン感受性を増加させ、インスリン抵抗性を減少させ及び/又はインスリン抵抗性を予防するための薬剤も提供される。また、式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩を含む、対象においてインスリン抵抗性を治療するための薬剤も提供される。また、式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩を含む、対象においてインスリン抵抗性障害を治療するための薬剤も提供される。また、対象においてインスリン抵抗性障害を軽減するための薬剤も提供される。
【0025】
式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の上記方法及び使用の所定の実施形態において、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から選択される。
【0026】
上記方法及び式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の使用の所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のそれぞれは、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。このような所定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14のそれぞれも、独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0027】
上記方法及び式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の使用の特定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13及びR14のそれぞれは、独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0028】
上記方法及び式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の使用の所定の実施形態では、m+n+oの合計は2~10の範囲であり、p+q+rの合計は1~10の範囲である。
【0029】
上記方法及び式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の使用の所定の実施形態では、mは3であり、pは4であり、n、o、q及びrのそれぞれはゼロである。このような所定の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は、独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。このような所定の実施形態では、R1及びR2は水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群より独立して選択される。このような所定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R9及びR10は水素である。
【0030】
所定の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、又はその薬学的に有効な塩である。
【0031】
上記方法及び式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の使用の所定の実施形態では、mは4であり、nは2であり、oはゼロであり、pは3であり、qは1であり、rはゼロである。このような所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。このような所定の実施形態では、R1及びR2は、水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から独立して選択される。このような所定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は水素である。
【0032】
所定の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、又はその薬学的に有効な塩である。
【0033】
上記方法及び式Iの化合物又はその薬学的に有効な塩の使用の所定の実施形態では、mは4であり、nは1であり、oはゼロであり、pは3であり、qは1であり、rはゼロである。このような所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11及びR12は水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。このような所定の実施形態では、R1及びR2は水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から独立して選択される。このような所定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は水素である。
【0034】
所定の実施形態では、式Iの化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、又はその薬学的に有効な塩である。
【0035】
また、次式I’の化合物又はその薬学的に有効な塩も提供される:
【化2】
式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換(C1-C6)アラルキル、非置換又は置換(C1-C6)ヘテロアラルキルよりなる群から選択され、ここで該置換(C1-C6)アラルキル及び置換(C1-C6)ヘテロアラルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2よりなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換(C1-C6)アラルキル、非置換又は置換(C1-C6)ヘテロアラルキルよりなる群から選択され、ここで該置換(C1-C6)アラルキル及び置換(C1-C6)ヘテロアラルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2よりなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は、独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルよりなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、-(C1-C6)アルキル及び-OHよりなる群から選択されるが、ただし、R5及びR6の両方が-OHであることはできないものとし;
11及びR12は、独立して、水素、-(C1-C6)アルキル及び-OHよりなる群から選択されるが、ただしR11及びR12の両方が-OHであることはできないものとし;
mは1~4の整数であり;
nは0~4の整数であり;
oは0~4の整数であり;
pは1~4の整数であり;
qは0~4の整数であり;及び
rは0~4の整数であるが、ただし、
(i)p+q+rの合計が1のときには、m+n+oの合計は5以上であり;
(ii)p+q+rの合計が2のときには、m+n+oの合計は5以上であり;
(iii)p+q+rの合計が3のときには、m+n+oの合計は3又は5以上であり;及び
(iv)p+q+rの合計が4のときには、m+n+oの合計は3又は6以上であるものとする。
【0036】
式I’の化合物の所定の実施形態によれば、R1及びR2は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から選択される。
【0037】
式I’の化合物又はその薬学的に有効な塩の所定の実施形態によれば、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8のそれぞれは独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。このような所定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14のそれぞれは独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0038】
式I’による化合物又はその薬学的に有効な塩の特定の実施形態によれば、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14のそれぞれは独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。
【0039】
式I’の化合物又はその薬学的に有効な塩の特定の実施形態によれば、m+n+oの合計は2~10の範囲内であり、p+q+rの合計は1~10の範囲内である。
【0040】
式I’の化合物又はその薬学的に有効な塩の所定の実施形態によれば、mは3であり、pは4であり、n、o、q及びrのそれぞれはゼロである。このような所定の実施形態によれば、R3、R4、R9、及びR10は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。このような所定の実施形態によれば、R1及びR2は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から選択される。このような所定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R9、及びR10は水素である。
【0041】
所定の実施形態では、式I’の化合物は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、又はその薬学的に有効な塩である。
【0042】
式I’の化合物又はその薬学的に有効な塩の特定の実施形態によれば、mは4であり、nは2であり、oはゼロであり、pは3であり、qは1であり、rはゼロである。このような所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。このような所定の実施形態では、R1及びR2は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から選択される。このような所定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は水素である。
【0043】
所定の実施形態において、式I’の化合物は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、又はその薬学的に有効な塩である。
【0044】
式I’の化合物又はその薬学的に有効な塩の特定の実施形態によれば、mは4であり、nは1であり、oはゼロであり、pは3でり、qは1であり、rはゼロである。このような所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。このような所定の実施形態では、R1及びR2は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から選択される。このような所定の実施形態では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R9、R10、R11、及びR12は水素である。
【0045】
所定の実施形態では、式I’の化合物は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、又はその薬学的に有効な塩である。
【0046】
開示された組成物及び方法に関して本発明において想定されるように、一態様において、本発明の実施形態は、本明細書に開示された構成要素及び/又は工程を含む。別の態様では、本発明の実施形態は、本明細書に開示されている構成要素及び/又は工程から本質的になる。さらに別の態様では、本発明の実施形態は、本明細書に開示されている構成要素及び/又は工程からなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A図1Aは、GLUT4を過剰発現する3T3-L1細胞におけるHNE誘導K264-HNE付加物の転移の増加を示す多重反応モニタリング(MRM)データを示す。細胞を20μMの4-HNEで4時間処理した。次いで、MRMデータを使用してカルボニル化GLUT4の量を算出した。
図1B図1Bは、図1AのMRMデータから算出されたカルボニル化GLUT4データを示す。ヒトにおいて見られるGLUT4ペプチドの4つの転位を定量のために使用した。
図2図2は、3T3-L1脂肪細胞によるインスリン誘導グルコース取り込みに及ぼす4-HNE及びH22の影響を示す。グルコース取り込みは、4-HNE及びH22処理でそれぞれ32%及び66%減少した。4-HNEとH22の両方の組み合わせは、グルコース取り込みを98%減少させた。
図3A図3Aは、痩せ型の個体及び痩せ型の過剰栄養状態インスリン抵抗性個体由来の脂肪組織において、GLUT4アミノ酸247~264(LTGWADVSGVLAELKDEK、配列番号1)からなる付加GLUT4フラグメントLTGWADVSGVLAELKDEK-4HNE(配列番号2)の検出によって決定されるGLUT4カルボニル化レベルのグラフである。HP70-1を内部標準として利用した。
図3B図3Bは、肥満型非糖尿病、肥満型前糖尿病及び肥満型糖尿病個体由来の脂肪組織において、付加GLUT4フラグメントLTGWADVSGVLAELKDEK-4HNE(配列番号2)の検出によって決定されるGLUT4カルボニル化レベルのグラフである。HP70-1を内部標準として利用した。
図3C図3Cは、図3A~3Bの個体の肥満型非糖尿病、肥満型前糖尿病及び肥満型糖尿病群の脂肪組織においてカルボニル化されるGLUT4の割合を示す。
図3D図3Dは、付加GLUT4フラグメントLTGWADVSGVLAELKDEK-4HNE(配列番号2)の検出によって決定されるGLUT4カルボニル化対インスリン抵抗性マーカーHOMA-IRレベルのグラフである。
図4図4は、12時間にわたる6つの経口用量としてモデル化された、10mg/kg/日の経口投与後の血漿中における(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの予測濃度-時間プロファイルを示す。
図5図5は3T3L1脂肪細胞のグルコース取り込みのグラフである。細胞を薬剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)の指示濃度で処理し、100μMの4HNE/H22と共にインキュベートすることによって酸化ストレスに曝露し、その後、136-グルコース取り込みアッセイを行った。この薬剤は、用量依存的に4-HNE及びH22のグルコース取り込み阻害作用を防止した。
図6A図6Aは、4-NHEと共にインキュベートする前のAPLの質量分析データを示す。
図6B図6Bは、4-NHEと共に1時間インキュベートした後のAPLの質量分析データを示す。このデータは、APLが4-NHEとの付加物を形成することを示す。
図7図7は、通常の食餌又は高脂肪食(HFD)のいずれかを与え、続いて(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノヘキサン酸ジヒドロクロリド(10μg/ml)(「APL」)を含まない又はこれを含む水を与えたマウスにおける血糖値のグラフである。
図8A図8Aは、処理個体の脂肪組織における過剰栄養誘導GLUT4カルボニル化の減少における(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)の影響のグラフである。動物に、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)を有する又はこれを有しない高脂肪食(HFD)を与えた。エラーバーは平均値±標準誤差を表す。統計処理を、両側スチューデントt検定を使用して行った。有意水準は**p<0.02である。
図8B図8Bは、高脂肪食を摂取した動物における空腹時血糖値の低下における(S)-2-アミノ-6-(3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)の影響のグラフである。動物に、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)を有する又はこれを有しない高脂肪食(HFD)を与えた。エラーバーは平均値±標準誤差を表す。統計処理を、両側スチューデントt検定を使用して行った。有意水準は*p<0.05である。「未処理」はHFD及びビヒクルを与えた。
図8C図8Cは、次の処理を受けたマウスにおけるグルコース時間試験のグラフである:(i)高脂肪食(HFD)+ポグリタゾン、(ii)HFD+ビヒクル、(iii)HFD+(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド及び(HFD-APL)及び(iv)固形食餌対照。データ点は平均値±標準誤差を表す。
図8D図8Dは、図8Cの曲線から算出された曲線下面積を示す。エラーバーは平均値±標準誤差を表す。統計処理を、両側スチューデントt検定を使用して行った。有意水準は*p<0.05である。
図9図9は、薬剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)での処理中(10mg/kg/日)及び該薬剤なし(「対照」)での処理中における2週間にわたる食餌誘導性(HFD)肥満マウスの体重のグラフである。
図10図10は、(i)50mg/kg1日2回経口投与(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「db/dbAPL」)を受けたdb/dbマウス;(ii)db/dbビヒクル対照処理マウス(「db/dbビヒクル」);又は(iii)メトホルミンヘテロ接合性同腹子対照マウス(「対照同腹子」)における耐糖能試験のグラフである。処理期間は7日間であった。
図11図11は、(i)(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)50mg/kgの1日2回経口投与;(ii)ビヒクル(「ビヒクル」);又は(iii)メトホルミン50mg/kgの1日2回経口投与(「メトホルミン」)で処理した6週齢db/dbマウスにおける耐糖能試験のグラフである。
図12図12は、図11と同様に14日間処理したが、その後さらに14日間にわたって無処理期間を設けた6週齢のdb/dbマウスにおける耐糖能試験のグラフである。耐糖能試験は、無処理期間の終了時に行った:(i)(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド50mg/kgの1日2回経口投与(「APLウオッシュアウト」);(ii)ビヒクル(「ビヒクル」);及び(iii)メトホルミン50mg/kgの1日2回経口投与(データ示さず)。統計処理を、両側スチューデントt検定を使用して行った。有意水準は*p<0.05である。
図13図13は、4-HNE及びH22に曝されたインスリン刺激3T3-L1細胞内でのグルコース取り込みの回復における、薬剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド(MC180351)、及び(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド(MC180352)の影響のグラフである:対照細胞、インスリンなし(C-No Ins);対照細胞、インスリンあり(C+Ins);4HNE+H22処理細胞(4HNE/H22);APL+4HNE+H22で処理された細胞(「APL」);MC180351+4HNE+H22で処理された細胞(「MC180351」);及びMC180352+4HNE+H22で処理された細胞(「MC180352」)。統計処理を、ANOVA分析を使用して行った。有意水準は*p<0.05である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野において通常の知識を有する者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0049】
本明細書に記載された方法及び材料と類似又は均等の任意の方法及び材料を本発明の試験の実施に使用できるが、以下、好ましい材料及び方法を説明する。本発明を説明しかつ特許請求する際に、以下の用語を使用する。また、ここで使用する用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであって、限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0050】
本明細書で使用するときに、冠詞「a」及び「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)をいうために使用する。例えば、「要素(an element)」は、1つの要素又は複数の要素を意味する。したがって、「細胞(a cell)」の記載は、例えば、同じ種類の複数の細胞を包含する。
【0051】
本明細書において、量、持続時間などの測定可能な値を指す「約」は、規定値から±20%又は±10%、より好ましくは±5%、さらに好ましくは±1%、さらに好ましくは±0.1%の変動を包含することを意味する。このようなばらつきは開示された方法を実行するために適切だからである。
【0052】
用語「アルキル」は、特に示さない限り、それ自体で又は他の置換基の一部として、指定数の炭素原子を有する直鎖又は分岐ヒドロカルビルを意味する(すなわち、C1-C6は1~6個の炭素を意味する)。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが挙げられる。最も好ましいのは(C1-C6)アルキル、より好ましくは(C1-C3)アルキル、特にメチル及びエチルである。
【0053】
単独で又は他の用語と組み合わせて用いられる用語「アルケニル」は、特に明記しない限り、指定数の炭素原子を有し、かつ、1個以上の二重結合を含む直鎖又は分岐ヒドロカルビルを意味する。例としては、エテニル(ビニル)、プロペニル(アリル)、クロチル、イソペンテニル、ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル、及び1,4-ペンタジエニルが挙げられる。アルケニルを表す官能基は、-CH2-CH=CH2-によって例示される。
【0054】
単独で又は他の用語と組み合わせて用いられる用語「アルキニル」は、特に明記しない限り、指定数の炭素原子を有し、かつ、1個以上の三重結合を含む直鎖又は分岐ヒドロカルビルを意味する。
【0055】
単独で又は他の用語と組み合わせて使用される用語「アルコキシ」は、特に明記しない限り、上で定義したアルキル基が酸素原子を介してその分子の残りの部分に結合したもの、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)及びそれよりも高級のホモログ及び異性体などを意味する。アルコキシ基のアルキル部分は、上記アルキル基について定義された指定数の炭素原子を有することができる。好ましいのは(C1-C6)アルコキシ、さらに好ましくは(C1-C3)アルコキシ、特にメトキシ及びエトキシである。
【0056】
用語「芳香族」とは、芳香族の特性を有する(すなわち、(4n+2)非局在化π(パイ)電子を有し、ここでnは整数である)1個以上の多価不飽和環を有する炭素環又は複素環をいう。
【0057】
用語「アリール」とは、少なくとも1個の芳香環を含む芳香族炭化水素環系をいう。芳香環は、他の芳香族炭化水素環又は非芳香族炭化水素環に任意に縮合し、そうでなければ結合できる。アリール基の例としては、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン及びビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例としては、フェニル及びナフチルが挙げられる。
【0058】
用語「アラルキル」基とは、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0059】
本明細書で使用するときに、「有効量」は、示された治療的又は予防的利益を与える量、すなわちインスリン抵抗性の治療及び/又は予防及び/又はインスリン感受性の増加を生じさせる量、あるいはインスリン抵抗性障害の場合に治療及び/又は予防を生じさせる量を意味する。ただし、完全な治療効果は必ずしも一用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じる場合があると解される。したがって、有効量を1回以上の投与で投与することができる。治療的適用又は予防的適用の文脈において、対象に投与される活性剤の量は、疾患又は状態の種類及び重症度、並びに一般的な健康状態、年齢、性別、体重及び薬剤に対する耐性などの対象の特徴に依存する。また、これは、疾患又は状態の程度、重症度及び種類にも依存する。当業者であれば、これら及び他の要因に応じて適切な投与量を決定することができる。また、式Iの化合物は、1種以上の追加の治療用化合物と組み合わせて投与できる。
【0060】
用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、それ自体で又は別の置換基の一部として、特に記載しない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。好ましくは、ハロゲンとしては、フッ素、塩素又は臭素、より好ましくはフッ素又は塩素が挙げられる。
【0061】
用語「ヘテロアラルキル」基とは、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0062】
用語「複素環」又は「ヘテロシクリル」又は「複素環式」は、それ自体で又は他の置換基の一部として、特に明記しない限り、炭素原子と、N、O及びSよりなる群から選択される少なくとも1個のヘテロ原子とからなる非置換又は置換単環又は多環複素環式系を意味する。複素環は、典型的には5~10個の環原子を含む。複素環式系は、特に明記しない限り、構造異性体を与える複素環式系の任意のヘテロ原子又は炭素原子において他の原子に結合できる。
【0063】
用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」とは、芳香族の性質を有する複素環をいう。
【0064】
用語「ヒドロカルビル」は、それ自体で又は他の置換基の一部として、特に明記しない限り、指定数の炭素原子を有する直鎖又は分岐炭化水素を意味する(すなわち、C1-C6は1~6個の炭素を意味する)。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、及びヘキシルが挙げられる。最も好ましいのは(C1-C6)アルキル、より好ましくは(C1-C3)、特にメチル及びエチルである。用語「不飽和ヒドロカルビル」は、少なくとも1個の二重又は三重結合を含むヒドロカルビルを意味する。
【0065】
本明細書で使用するときに、「個体」又は「患者」又は「対象」(治療の対象など)は、哺乳動物及び非哺乳動物の両方を意味する。哺乳動物としては、例えばヒト;ヒト以外の霊長類、例えば類人猿及びサル;イヌ;ネコ;ウシ;ウマ;ヒツジ;及びヤギが挙げられる。非哺乳動物としては、例えば魚及び鳥が挙げられる。一実施形態では、個体は人間である。別の実施形態では、個体はイヌである。
【0066】
用語「インスリン抵抗性」は、当該技術分野における一般的な意味を有する。インスリン抵抗性とは、天然ホルモンであるインスリンが血糖値を下げる効果が少なくなる生理学的状態のことである。血糖の上昇が生じることで、そのレベルが正常範囲外に上昇し、そしてメタボリックシンドローム、脂質異常症及びその後の2型糖尿病など、健康に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0067】
「インスリン抵抗性障害」とは、インスリン抵抗性によって引き起こされる又はそれに寄与する任意の疾患又は状態をいう。
【0068】
用語「ハロアルキル」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。用語「ペルハロアルキル」は、全ての水素原子がハロゲン原子で置換されたハロアルキル基を意味する。好ましいペルハロアルキルは、ペルフルオロアルキル、特に(C1-C6)ペルフルオロアルキル、より好ましくは(C1-C3)ペルフルオロアルキル、最も好ましくは-CF3である。
【0069】
用語「ハロアルコキシ」は、少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子によって置換されたアルコキシ基を意味する。用語「ペルハロアルコキシ」は、全ての水素原子がハロゲン原子によって置換されたハロアルコキシ基を意味する。好ましいペルハロアルコキシは、ペルフルオロアルコキシ、特に(C1-C6)ペルフルオロアルコキシであり、より好ましくは(C1-C3)ペルフルオロアルコキシであり、最も好ましくは-OCF3である。
【0070】
本明細書で使用するときに、用語「薬学的に許容される」とは、処方された化合物が患者に投与されたときにその化合物の生物学的活性、薬理活性及び/又は他の特性を有意に抑制しない化合物の処方をいう。所定の実施形態では、薬学的に許容される処方は患者に対して著しい刺激を引き起こさない。
【0071】
用語「置換」とは、1個の原子又は複数の原子の群が別の基に結合した置換基として水素を置き換えたことを意味する。アリール及びヘテロアリール基について、用語「置換」とは、このような置換が許容される場合に、任意のレベルの置換、すなわち一、二、三、四又は五置換をいう。置換基は独立して選択され、そして置換は任意の化学的に接近可能な位置で生じてもよい。置換基としては、例えば、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、アリール及びアミノ基よりなる群からの部分の一つを挙げることができる。炭素鎖を含む置換基は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個、最も好ましくは1~2個の炭素原子を含有する。
【0072】
本明細書で使用される用語として疾患を「治療する」とは、対象が経験する疾患又は障害の少なくとも1つの徴候又は症状の頻度又は重症度を軽減することを意味する。治療には、さらなる疾患の進行の遅延、又は発症すると予想された若しくは予想される症状の重症度の低減、既存の症状の改善及びさらなる症状の予防が含まれる。
【0073】
範囲:本発明を通して、本発明の様々な態様を範囲形式で与えることができる。なお、範囲形式での説明は単に便宜的かつ簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきではない。したがって、範囲の説明は、全ての可能な部分範囲のみならずその範囲内にある個々の数値を具体的に開示しているとみなすべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲並びにその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、及び6を具体的に開示しているとみなすべきである。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0074】
発明の詳細な説明
以下、本発明の実施形態について説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されず、むしろ当業者に明らかな改変及びその均等も含まれることを明示しておく。
【0075】
過栄養などの所定の条件は、酸化ストレスや、マイケル付加及びシッフ塩基形成を介してタンパク質のシステイン、リジン及びヒスチジン残基と反応する4-HNEなどの反応性アルデヒドの生成をもたらす場合がある。4-HNEは、脂肪組織中の主要なインスリン促進グルコーストランスポーターであるGLUT4にHNE-マイケル付加物を形成することができる。図1Aに示すように、GLUT4-SNAPタンパク質を過剰発現するようにレトロウイルスで形質導入された3T3-L1脂肪細胞は、4-HNEで処理するとK264-HNE GLUT4付加物を形成した。カルボニル化タンパク質の量を図1Bに示す。同じK264-HNE GLUT4付加物は、ヒトの前糖尿病患者及び糖尿病患者の脂肪組織において上昇する(図3B、3C)。
【0076】
インスリン刺激時の脂肪細胞グルコース取り込みの減少によって示されるように、HNE付加はGLUT-4機能を喪失させ、脂肪細胞インスリン抵抗性を発症させる。図2に示されるように、3T3-L1脂肪細胞によるグルコース取り込みは、4-HNE及びH22処理、その後のインスリン刺激で減少した。
【0077】
驚くべきことに、式Iの化合物はインスリン感受性を増加させる及び/又はインスリン抵抗性を減少させることに有効であることが分かった。
【0078】
式Iの化合物は、インスリン感受性を回復させることによって脂肪細胞のグルコース取り込み障害を克服することが分かった。任意の理論に束縛されることを望まないが、式Iの化合物は、4-HNEなどの反応性アルデヒドと共に付加物を形成することによって、4-HNEがカルボニル化によりGLUT-4が損傷させないようにする。図6A及び6Bに示すように、式Iの化合物である化合物(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドは、4-HNEと共に付加物を形成することよって、4-HNEがカルボニル化によりGLUT-4を損傷させないようにする。これは過剰栄養によって誘導されたグルコース取り込み障害を回復させる効果を有する。GLUT-4機能の回復は、脂肪細胞インスリン感受性の増強又は回復及びグルコース取り込みの再開又は増強を生じさせる。
【0079】
耐糖能試験によって測定される耐糖能障害は、ピオグリタゾンの中程度に過ぎない耐糖能改善効果と比較して劇的に改善されている(実施例11)。また、この化合物は、メトホルミンよりも耐糖能障害の低減の点で優れている(実施例12~13)。メトホルミンは2型糖尿病治療の第一選択薬である。
【0080】
上記化合物の減少は、前糖尿病段階及び糖尿病段階の両方において耐糖能を損なうところ、これは、この化合物を使用して、前糖尿病(実施例12)と、糖尿病表現型が確立されている糖尿病との両方を治療することができることを示す。
【0081】
以下の研究(実施例13)は、上記化合物が糖尿病を調節するものであり、単に疾患を覆い隠すものではないことを示唆する。
【0082】
式Iの化合物を使用して、前糖尿病と糖尿病表現型が確立されている糖尿病との両方を治療することができる。これらの化合物は、過剰栄養によって誘導された細胞におけるグルコース取り込み障害に対抗するのに有効であると考えられる。
【0083】
式Iの化合物は、このような治療を必要とする対象においてインスリン感受性を増大させるため及び/又はインスリン抵抗性を低下させるために投与される。
【0084】
インスリンは、炭水化物の消化から血流へのグルコース放出が始まったときに体内で産生される。通常の状況下では、体細胞は、エネルギーとして使用するために、グルコースを取り込むことによってインスリンによる刺激に反応する。グルコースを吸収するためにインスリンを必要とする主要な細胞型は脂肪細胞と筋肉細胞である。インスリン抵抗性の条件下において体内でインスリンが産生されると、体内のこれらの細胞はインスリンによる刺激に対して抵抗性となり、高血糖となる。膵臓のβ細胞はインスリン産生を増加させ、さらに高い血中インスリンレベルに寄与する。血中インスリンレベルの上昇は、インスリン感受性の低下につながる可能性がある。特にT2DMはインスリン抵抗性により発症するところ、これは、インスリンの通常分泌用量がもはや血糖値を制御するのに十分ではないことを意味する。
【0085】
本発明によれば、インスリン感受性(又はインスリン抵抗性)の低下によって生じる任意の病状を治療することができる。したがって、式Iの化合物は、関連標的細胞のインスリンによる調節に対する感受性の欠失に関連する任意の状態を治療するのに有用である。そのため、式Iの化合物はインスリン抵抗性障害の治療に有用であると考えられる。「インスリン抵抗性障害」とは、インスリン抵抗性によって引き起こされる又はそれによってもたらされる任意の疾患又は状態をいう。例としては次のものが挙げられる:糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、インスリン抵抗性、インスリン抵抗性症候群、X症候群、高血圧、高血圧症、高血中コレステロール、高脂血症、脂質異常症、高脂血症、卒中、冠動脈疾患又は心筋梗塞を含めたアテローム性動脈硬化症、高血糖、高インスリン血症及び/又は高インスリン血症、耐糖能異常、インスリン放出の遅延、冠状動脈性心臓病を含めた糖尿病性合併症、狭心症、うっ血性心不全、脳卒中、認知症、網膜症、末梢神経障害、腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、ネフローゼ症候群、高血圧性腎硬化症、いくつかのタイプの癌(子宮内膜、乳房、前立腺、結腸など)、妊娠の合併症、生殖器系の健康不良(月経不順、不妊、不規則な排卵、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など)、脂肪異栄養症、コレステロール関連障害、例えば胆石、胆嚢炎及び胆石症、痛風、閉塞性睡眠時無呼吸及び呼吸器系の問題、変形性関節症、並びに骨量減少、例えば骨粗鬆症の予防及び治療が挙げられる。
【0086】
インスリン抵抗性に関連する病理学的状態に加えて、式Iの化合物は、少ない量にもかかわらず、インスリン産生が低い状態、例えば、ある程度の有限レベルのインスリン産生が残るIDDMの場合の治療のために投与することができる。
【0087】
化合物
インスリン抵抗性を治療するための方法において使用するための化合物及びその薬学的に許容される塩は、次式Iの構造を有する:
【化3】
式中、
1は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換(C1-C6)アラルキル、非置換又は置換(C1-C6)ヘテロアラルキルよりなる群から選択され、ここで該置換(C1-C6)アラルキル及び置換(C1-C6)ヘテロアラルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-NH(C1-C6)アルキル、-N[(C1-C6)アルキル)]2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2よりなる群から選択され;
2は、水素、-(C1-C8)アルキル、-(C1-C8)アルケニル、-(C1-C8)アルキニル、非置換又は置換(C1-C6)アラルキル、非置換又は置換(C1-C6)ヘテロアラルキルよりなる群から選択され、ここで該置換(C1-C6)アラルキル及び置換(C1-C6)ヘテロアラルキル上の置換基は、ハロゲン、-CN、-NO2、-NH2、-OH、ハロ(C1-C6)アルキル、-(C1-C6)アルコキシ、ハロ(C1-C6)アルコキシ、-SH、チオ(C1-C6)アルキル、-SONH2、-SO2NH2、-SO-(C1-C6)アルキル、-SO2-(C1-C6)アルキル、-NHSO2(C1-C6)アルキル、及び-NHSO2NH2よりなる群から選択され;
3、R4、R7、R8、R9、R10、R13、及びR14は、独立して、水素及び-(C1-C6)アルキルよりなる群から選択され;
5及びR6は、独立して、水素、-(C1-C6)アルキル及び-OHよりなる群から選択されるが、ただし、R5及びR6の両方が-OHであることはできないものとし;
11及びR12は、独立して、水素、-(C1-C6)アルキル及び-OHよりなる群から選択されるが、ただしR11及びR12の両方が-OHであることはできないものとし;
mは1、2、3又は4であり;
nは0、1、2、3又は4であり;
oは0、1、2、3又は4であり;
pは1、2、3又は4であり;
qは0、1、2、3又は4であり;及び
rは0、1、2、3又は4である。
【0088】
特定の実施形態では、R1及び/又はR2を含むハロ(C1-C6)アルキル及び/又はハロ(C1-C6)アルコキシは、ペルハロ(C1-C6)アルキル及びペルハロ(C1-C6)から選択される。
【0089】
所定の実施形態では、R1は、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。所定の実施形態では、R2は、水素又は-(C1-C8)アルキルから選択される。所定の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。上記実施形態では、-(C1-C8)アルキルは、好ましくは-(C1-C6)アルキル、より好ましくは-(C1-C3)アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチルである。所定の実施形態では、R1及びR2は水素である。
【0090】
所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8のそれぞれは、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。-(C1-C8)アルキルは、好ましくは-(C1-C6)アルキル、より好ましくは-(C1-C3)アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチルである。所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は水素である。
【0091】
所定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14のそれぞれは、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。-(C1-C8)アルキルは、好ましくは-(C1-C6)アルキル、より好ましくは-(C1-C3)アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチルである。所定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14は水素である。
【0092】
所定の実施形態では、上記スキームに従って、R3~R14のそれぞれは、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。所定の実施形態では、R3~R14は水素である。
【0093】
式Iの化合物のいくつかの実施形態では、m+n+oの合計は、2~10、9、8、7、6、5、4又は3の範囲にあり、3~10、9、8、7、6、5又は4の範囲にあり、又は4~10、9、8、7、6又は5の範囲にある。いくつかの実施形態では、m+n+oの合計は12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2である。
【0094】
式Iの化合物のいくつかの実施形態では、p+q+rの合計は、1~10、9、8、7、6、5、4、3又は2の範囲にあり、2~10、9、8、7、6、5、4又は3の範囲にあり、3~10、9、8、7、6、5又は4の範囲にあり、又は4~10、9、8、7、6又は5の範囲にある。いくつかの実施形態では、p+q+rの合計は12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1である。
【0095】
m+n+oの合計及び/又はp+q+rの合計を定義する上記実施形態のいくつかの実施形態では、R3~R14のそれぞれは独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。所定の実施形態では、R3~R14は水素である。
【0096】
式Iの化合物の好ましい実施形態では、mは3であり、pは4であり、n、o、q及びrのそれぞれはゼロである。このような所定の実施形態では、R3、R4、R9及びR10は独立して水素及び-(C1-C8)アルキル、好ましくは水素から選択される。このような所定の実施形態では、R1及びR2は水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択でき、好ましくは水素とすることができる。
【0097】
別の実施形態では、新規化合物及びその製薬上有効な塩は、次式I’に従って提供される:
【化4】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13、R14、m、n、o、p、q、及びrは、式Iについて上で定義した通りであるが、ただし、
(i)p+q+rの合計が1のときには、m+n+oの合計は5以上であり;
(ii)p+q+rの合計が2のときには、m+n+oの合計は5以上であり;
(iii)p+q+rの合計が3のときには、m+n+oの合計は3以上であり;及び
(iv)p+q+rの合計が4のときには、m+n+oの合計は3又は6以上であるものとする。
【0098】
所定の実施形態では、p+q+rの合計が2であるときに、m+n+oの合計は6以上、7以上、8以上、9以上又は10以上である。
【0099】
所定の実施形態では、p+q+rの合計が3であるときに、m+n+oの合計は5以上、6以上、7以上、8以上、9以上又は10以上である。
【0100】
所定の実施形態では、p+q+rの合計が4であるときに、m+n+oの合計は7以上、8以上、9以上又は10以上である。
【0101】
好ましい実施形態では、p+q+rの合計が4であるときに、m+n+oの合計は3である。
【0102】
所定の実施形態では、p+q+rの合計が1である場合に、m+n+oの合計は5以上、6以上、7以上、8以上、9以上又は10以上である。
【0103】
式I’の新規化合物の所定の実施形態では、R1は水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。所定の実施形態では、R2は、水素又は-(C1-C8)アルキルから選択される。所定の実施形態では、R1及びR2は、独立して、水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。上記実施形態では、-(C1-C8)アルキルは、好ましくは-(C1-C6)アルキル、より好ましくは-(C1-C3)アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチルである。所定の実施形態では、R1及びR2は水素である。
【0104】
式I’の新規化合物の所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8のそれぞれは、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。-(C1-C8)アルキルは、好ましくは-(C1-C6)アルキル、より好ましくは-(C1-C3)アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチルである。所定の実施形態では、R3、R4、R5、R6、R7、及びR8は水素である。
【0105】
式I’の新規化合物の所定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14のそれぞれは、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。-(C1-C8)アルキルは、好ましくは-(C1-C6)アルキル、より好ましくは-(C1-C3)アルキル、さらに好ましくはメチル又はエチルである。所定の実施形態では、R9、R10、R11、R12、R13、及びR14は水素である。
【0106】
式I’の新規化合物の所定の実施形態では、R3~R14のそれぞれは、上記スキームに従って、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。所定の実施形態において、R3~R14は水素である。
【0107】
式I’の新規化合物のいくつかの実施形態において、m+n+oの合計は、2~10、9、8、7、6、5、4又は3の範囲にあり、3~10、9、8、7、6、5又は4の範囲にあり、又は4~10、9、8、7、6又は5の範囲にある。いくつかの実施形態において、m+n+oの合計は12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2である。m+n+oの合計の選択は、式I’について、上記条件(i)、(ii)、(iii)及び(iv)に従う。
【0108】
式I’の化合物のいくつかの実施形態において、p+q+rの合計は、1~10、9、8、7、6、5、4又は2の範囲にあり、2~10、9、8、7、6、5、4又は3の範囲にあり、3~10、9、8、7、6、5又は4の範囲にあり、又は4~10、9、8、7、6又は5の範囲にある。いくつかの実施形態では、p+q+rの合計は12、11、10、9、8、7、6、5、4、3又は2である。p+q+rの合計の選択は、上記条件(i)、(ii)、(iii)及び(iv)に従う。
【0109】
m+n+oの合計及び/又はp+q+rの合計を定義する上記実施形態のいくつかにおいて、R3~R14のそれぞれは独立して水素及び-(C1-C8)アルキルから選択される。所定の実施形態において、R3~R14は水素である。
【0110】
式I’の化合物のある好ましい実施形態では、mは3であり、pは4であり、n、o、q及びrのそれぞれはゼロである。従って、上記化合物は次式Icの構造を有する:
【化5】
【0111】
式中、各R3、各R4、各R9、及び各R10は、水素及び-(C1-C8)アルキルから独立して選択される。所定の実施形態では、R3、R4、R9、及びR10は水素である。式Icの化合物の所定の実施形態では、R1及びR2は独立して水素及び-(C1-C8)アルキルよりなる群から選択され、そして好ましくは水素である。特に好ましいのは、化合物(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸、又はその薬学的に有効な塩である。その好ましい塩は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドである。
【0112】
式I’の化合物の好ましい実施形態では、mは4であり、nは2であり、pは3であり、o、q及びrのそれぞれはゼロである。特に好ましいのは、化合物(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸、又はその薬学的に有効な塩である。その好ましい塩は、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドである。
【0113】
式I’の化合物の好ましい実施形態では、mは4であり、nは1であり、pは3であり、o、q及びrのそれぞれはゼロである。特に好ましいのは、化合物(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸、又はその薬学的に有効な塩である。その好ましい塩は、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドである。
【0114】
合成スキーム
式Iの化合物は、Aが
【化6】
であり、Bが
【化7】
であるスキーム1~16に従って製造でき、上記式において、R1及びR2は式Iについて定義した通りである。
【0115】
式Iの化合物は、スキーム4~8及び14~16の一般的方法に従って製造できる。式Iaの構造を有すると同定された式Iの特定の化合物は、スキーム1~3に示される一般的方法を使用して製造できる。同様に、式Ibの構造を有すると同定された式Iの特定の化合物は、スキーム9~13に示される一般的方法を使用して製造できる。式Ia及びIbの化合物は、mが1であり、R3及びR4がそれぞれ水素である式Iの化合物であることが分かる。
【化8】
【0116】
スキーム1によれば、PG1が例えばトリフェニルメチル(トリチル)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基であり、PG2が例えば9-フルオレニルメチル(Fm)、C1-6アルキル及びC3-7分岐アルキルよりなる群から選択される既知の化合物又は既知の手段により製造される化合物である式(1)の化合物と、Xが臭素、塩素、ヨウ素、メタンスルホネート、トリルスルホネートなどの脱離基である既知の化合物又は既知の方法によって製造される化合物である式(2)の化合物とを、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムt-ブトキシド又はナトリウムt-ブトキシドなどの塩基の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、塩化メチレン、メタノール、エタノール、t-ブタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(3)の化合物を得る。
【0117】
スキーム1に従って、式(3)の化合物と水素とを、次いで、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム、炭素担持白金、硫酸バリウム担持白金、セライト担持白金、炭酸カルシウム担持白金、シリカ担持白金、アルミナ担持白金、炭素担持ロジウム、硫酸バリウム担持ロジウム、セライト担持ロジウム、炭酸カルシウム担持ロジウム、炭酸バリウム担持ロジウム、シリカ担持ロジウム、アルミナ担持ロジウムなどの触媒の存在下で、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミドなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて、式(4)の化合物を得る。
【0118】
スキーム1に従って、次いで、式(4)の化合物と、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。あるいは、式(4)の化合物と、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、ピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。あるいは、式(4)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。
【化9】
【0119】
あるいは、スキーム2に従って、式(4)の化合物と、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(4a)の化合物を得る。あるいは、スキーム2に従って、式(4)の化合物と、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、4-ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(4a)の化合物を得る。
【0120】
スキーム2に従って、次いで、式(4a)の化合物と、ピペリジン、ピリジン又は2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール又はメタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。あるいは、スキーム2に従って、式(4a)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなど溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。あるいは、式(4a)の化合物と、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。
【化10】
【0121】
スキーム3に従って、式(4)の化合物と、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(4b)の化合物を得る。あるいは、スキーム3に従って、式(4)の化合物と、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(4b)の化合物を得る。
【0122】
スキーム3に従って、次いで、式(4b)の化合物と、ピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得ることができる。あるいは、スキーム3に従って、式(4b)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、パラジウム担持硫酸バリウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、スキーム3に従って、式(4b)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ia)の化合物を得る。
【化11】
【0123】
スキーム4に従って、PG1が例えばトリフェニルメチル(トリチル)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基であり、PG2が例えば9-フルオレニルメチル(Fm)、C1-6アルキル及びC3-7分岐アルキルよりなる群から選択される既知の化合物又は既知の手段により製造される化合物である式(5)の化合物と、Xが臭素、塩素、ヨウ素、メタンスルホネート、トリルスルホネートなどの脱離基であり、PG3が例えばt-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基である既知化合物又は既知方法によって製造される化合物である式(6)の化合物とを、トリメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシドなどの塩基の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、塩化メチレン、メタノール、エタノール、t-ブタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて、式(7)の化合物を得る。
【0124】
スキーム4に従って、次いで、式(7)の化合物と、酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と、ピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【0125】
あるいは、スキーム4に従って、次いで、式(7)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒の存在下で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【化12】
【0126】
スキーム5に従って、式(7)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7a)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7a)の化合物を得る。
【0127】
スキーム5に従って、次いで、式(7a)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7b)の化合物を得る。あるいは、式(7a)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて、式(7b)の化合物を得る。あるいは、式(7a)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7b)の化合物を得る。式(7b)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7b)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒の存在下で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7b)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【化13】
【0128】
スキーム6に従って、式(7)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7c)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7c)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7c)の化合物を得る。
【0129】
スキーム6に従って、次いで、式(7c)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7d)の化合物を得る。あるいは、式(7c)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7d)の化合物を得る。
【0130】
スキーム6に従って、次いで、式(7d)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7d)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7d)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【化14】
【0131】
スキーム7に従って、式(7)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7e)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、場合によってはマイクロ波照射を用いて反応させて式(7e)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7e)の化合物を得る。
【0132】
スキーム7に従って、式(7e)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7f)の化合物を得る。あるいは、式(7e)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7f)の化合物を得る。
【0133】
スキーム7に従って、次いで、式(7f)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7f)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7f)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのような酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【化15】
【0134】
スキーム8に従って、式(7)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7g)の化合物を得る。あるいは、式(7)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7g)の化合物を得る。
【0135】
スキーム8に従って、次いで、式(7g)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7h)の化合物を得る。あるいは、式(7g)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7h)の化合物を得る。あるいは、式(7g)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(7h)の化合物を得る。
【0136】
スキーム8に従って、式(7h)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7h)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(7h)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【化16】
【0137】
スキーム9に従って、PG1が例えばトリフェニルメチル(トリチル)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基であり、PG2が例えば9-フルオレニルメチル(Fm)、C1-6アルキル及びC3-7分岐アルキルよりなる群から選択される既知の化合物又は既知の手段により製造される化合物である式(9)の化合物と、PG3が例えばトリフェニルメチル(トリチル)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基である既知化合物又は既知方法によって製造される化合物である式(9)の化合物とを、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素リチウムなどの還元剤の存在下で、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、塩化メチレンなどの溶媒の存在下で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて、式(10)の化合物を得る。
【0138】
スキーム9に従って、次いで、式(8)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、ピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応さえて式(Ib)の化合物を得る。
【化17】
【0139】
スキーム10によれば、式(10)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10a)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10a)の化合物を得る。
【0140】
スキーム10に従って、次いで、式(10a)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱し、任意にマイクロ波照射を用いて式(10b)の化合物を得る。あるいは、式(10a)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10b)の化合物を得る。あるいは、式(10a)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10b)の化合物を得る。
【0141】
スキーム10に従って、式(10b)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。あるいは、式(10b)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10b)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。
【化18】
【0142】
スキーム11に従って、式(10)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10c)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10c)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10c)の化合物を得る。
【0143】
スキーム11に従って、次いで、式(10c)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10d)の化合物を得る。あるいは、式(10c)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10d)の化合物を得る。
【0144】
次いで、式(10d)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10d)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10d)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。
【化19】
【0145】
スキーム12に従って、式(10)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10e)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10e)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10e)の化合物を得る。
【0146】
スキーム12に従って、次いで、式(10e)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10f)の化合物を得る。あるいは、式(10e)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10f)の化合物を得る。
【0147】
次に、スキーム12に従って、式(10f)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10f)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10f)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのような酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。
【化20】
【0148】
スキーム13によれば、式(10)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10g)の化合物を得る。あるいは、式(10)の化合物と水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10g)の化合物を得る。
【0149】
続いて、スキーム13に従って、式(10g)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中でおいて、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10h)の化合物を得る。あるいは、式(10g)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10h)の化合物を得る。あるいは、式(10g)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(10h)の化合物を得る。
【0150】
次いで、スキーム13に従って、式(10h)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10h)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。あるいは、式(10h)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(Ib)の化合物を得る。
【化21】
【0151】
スキーム14に従って、PG4が例えばトリフェニルメチル(トリチル)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基である既知の化合物又は既知の方法により製造される化合物である式(11)の化合物と、Xが臭素、塩素、ヨウ素、メタンスルホネート、トリルスルホネートなどの脱離基であり、PG5が例えば、トリフェニルメチル(トリチル)、t-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)及びカルボベンジルオキシ(Cbz)よりなる群から選択される保護基である既知の化合物又は既知の方法によって製造される化合物である式(12)の化合物とを、水素化ナトリウム、水素化カリウム、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシドなどの塩基の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、塩化メチレン、メタノール、エタノール、t-ブタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(13)の化合物を得る。
【0152】
次いで、スキーム14に従って、式(13)の化合物と塩酸、硫酸、リン酸などの酸とを、任意に水の存在下で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式Iの化合物を得る。
【化22】
【0153】
スキーム15に従って、式(13)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(14)の化合物を得る。あるいは、式(13)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(14)の化合物を得る。あるいは、式(13)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(14)の化合物を得る。
【0154】
次いで、スキーム15に従って、式(14)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(15)の化合物を得る。あるいは、式(14)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(15)の化合物を得る。あるいは、式(14)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(15)の化合物を得る。
【0155】
次いで、スキーム15に従って、式(15)の化合物と塩酸、硫酸、リン酸などの酸とを、任意に水の存在下で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式Iの化合物を得る。
【化23】
【0156】
スキーム16に従って、式(13)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(16)の化合物を得る。あるいは、式(13)の化合物と水素を、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(16)の化合物を得る。あるいは、式(13)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(16)の化合物を得る。
【0157】
次いで、スキーム16に従って、式(16)の化合物とピペリジン、ピリジン、2,6-ルチジンなどの塩基とを、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(17)の化合物を得る。あるいは、式(16)の化合物と水素とを、炭素担持パラジウム、硫酸バリウム担持パラジウム、セライト担持パラジウム、炭酸カルシウム担持パラジウム、炭酸バリウム担持パラジウム、シリカ担持パラジウム、アルミナ担持パラジウム、酢酸パラジウム、パラジウムビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド、パラジウムテトラキス(トリフェニルホスフィン)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウムなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(17)の化合物を得る。あるいは、式(16)の化合物と酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの酸とを、任意に塩化メチレン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エタノール、メタノールなどの溶媒中において、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(17)の化合物を得る。
【0158】
次いで、スキーム16に従って、式(17)の化合物と塩酸、硫酸、リン酸などの酸とを、任意に水の存在下で、任意に加熱しながら、任意にマイクロ波照射を用いて反応させて式(I)の化合物を得る。
【0159】
上記の方法において、反応条件に影響を受けやすい所定の官能基は、保護基によって保護できる。保護基は、これがなければ所定の反応を実施するのに必要な条件とは適合しない化学官能基の誘導体であり、反応を実施した後に除去して元の官能基を再生成することができるものであるため、「保護」されているとみなされる。本発明の化合物を合成するために使用される任意の試薬の構造成分である任意の化学官能基は、このような保護基が本発明の化合物の合成に有用である場合には化学保護基で任意に保護されていてよい。保護基を選択及び使用する方法は化学文献に広く開示されているため、当業者であれば、保護基が示されている場合に、当該基を選択する方法、及びそれらを選択的に導入及び選択的に除去するために使用できる方法が分かるであろう。化学的保護基を選択し、導入し、除去するための技術は、例えば、Theodora W. Greene,Peter GM Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons Ltd.に見出すことができる。この全開示を参照により本明細書において援用する。
【0160】
当業者であれば、説明した方法は、式Iの化合物を合成することができる唯一の手段ではなく、本発明の化合物を合成する際に使用することが可能な合成有機反応のレパートリーが利用可能であることが分かるであろう。当業者であれば、適切な合成経路を選択し実施する方法が分かる。好適な合成方法は、次の参考文献を含めて、次の文献を参照することによって特定できる:Comprehensive Organic Synthesis,B.M.Trost及びI.Fleming著(Pergamon Press,1991)、Comprehensive Organic Functional Group Transformations,A.R.Katritzky,O.MethCohn及びC.W.Rees著(Pergamon Press,1996)、Comprehensive Organic Functional Group Transformations II,A.R.Katritzky及びR.J.K.Taylor著(編者)(Elsevier,第2版,2004)、Comprehensive Heterocyclic Chemistry,A.R.Katritzky及びC.W.Rees著(Pergamon Press,1984)、及びComprehensive Heterocyclic Chemistry II,A.R.Katritzky,C.W.Rees及びE.F.V.Scriven著(Pergamon Press,1996).
【0161】
式Iの化合物及び中間体をそれらの反応混合物から単離し、そして濾過、液液抽出、固相抽出、蒸留、再結晶又はクロマトグラフィーなどの標準的な技術により精製することができる。
【0162】
本発明の式Iの化合物が1個以上のキラル中心を含む場合に、当該化合物は純粋なエナンチオマー若しくはジアステレオマーの形態で又はラセミ混合物として存在することができ、また単離できることが分かるであろう。したがって、本発明は、インスリン抵抗性の治療において生物学的に活性である本発明の化合物の任意の可能なエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体又はそれらの混合物を包含する。
【0163】
キラル中心は、式Iの化合物のα-アミノ酸官能基のα-炭素に生じる。式Iの化合物は、カーン・インゴールド・プレローグの法則に従って、含まれるα-アミノ酸官能基のα-炭素についての(S)絶対配置によって特徴付けられる。
【化24】
【0164】
化合物(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸によって例示されるように、式Iの化合物は次の通りである:
【化25】
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸
【0165】
所定の実施形態によれば、式Iの化合物は、含まれるα-アミノ酸官能基のα-炭素の周りの立体配置に関しては単離(S)光学異性体である。「単離光学異性体」とは、同じ式の対応する光学異性体から実質的に精製された化合物を意味する。好ましくは、単離異性体は少なくとも約80%純粋であり、より好ましくは少なくとも85%純粋であり、より好ましくは少なくとも90%純粋であり、より好ましくは少なくとも95%純粋であり、さらにより好ましくは少なくとも98%純粋であり、最も好ましくは少なくとも約99%純粋であり、残部は対応する(R)エナンチオマーからなる。いくつかの実施形態では、単離(S)エナンチオマーは、(R)エナンチオマーのトランス量を除いて、対応する(R)エナンチオマーを含まない。
【0166】

式Iの化合物は、塩を形成することができる基又は原子で適切に置換されている場合には、塩の形態をとることができる。このような基及び原子は、有機化学の技術分野における当業者によく知られている。用語「塩」には、本発明の化合物である遊離酸又は遊離塩基の付加塩が含まれる。用語「薬学的に許容される塩」とは、薬学的用途に有用性をもたらす範囲内の毒性プロフィールを有する塩をいう。これに対し、薬学的に許容されない塩は、例えば、本発明の化合物の合成、精製又は製剤化のプロセスにおける有用性など、本発明の実施において有用性を有する高い結晶化度などの特性を持つ場合がある。
【0167】
好適な薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸又は有機酸から製造できる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が挙げられる。好適な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸のクラスの有機酸から選択でき、その例としては、ギ酸、酢酸、ピバリン酸、プロピオン酸、フロン酸、ムチン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、パモ酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、ガラクタル酸、カンファースルホン酸及びガラクツロン酸が挙げられる。薬学的に許容されない酸付加塩の例としては、例えば、過塩素酸塩及びテトラフルオロホウ酸塩が挙げられる。
【0168】
本発明の化合物の好適な薬学的に許容される塩基付加塩としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属及び遷移金属塩を含めた金属塩、例えばカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛の塩が挙げられる。また、薬学的に許容される塩基付加塩としては、塩基性アミンから製造される有機塩、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、トロメタミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)及びプロカインが挙げられる。薬学的に許容されない塩基付加塩の例としては、リチウム塩及びシアン酸塩が挙げられる。
【0169】
これらの塩の全ては、例えば好適な酸又は塩基と式Iの化合物とを反応させることにより式Iの対応する化合物から従来の手段により製造できる。好ましくは、塩は結晶形態であり、好ましくは好適な溶媒から塩を結晶化するによって製造される。当業者であれば、例えば、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties, Selection, and Use,P.H.Sahl及びC.G.Wermuth Wiley-VCH 2002に記載されているように、好適な塩形態を製造及び選択する方法が分かるであろう。
【0170】
医薬組成物及び治療的投与
医薬組成物は、薬学的に許容されるキャリアと式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩とを含む。
【0171】
上記化合物は、薬学的に許容されるキャリアと共に、医薬組成物の形態で投与できる。このような製剤中の活性成分又は薬剤(すなわち式Iの化合物)は製剤の0.1~99.99重量%を占めることができる。「薬学的に許容されるキャリア」とは、製剤の他の成分と相溶性があり、受容者に対して有害ではない任意のキャリア、希釈剤又は賦形剤を意味する。
【0172】
活性剤は、好ましくは、選択された投与経路及び標準的な薬務に基づいて選択された薬学的に許容されるキャリアと共に投与される。活性剤は、医薬製剤の分野における標準的な慣行に従って剤形に処方できる。Alphonso Gennaro編、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(1990),Mack Publishing Co.,ペンシルベニア州イーストンを参照。好適な剤形は、例えば、錠剤、カプセル剤、液剤、非経口液剤、トローチ剤、坐剤、又は懸濁剤を含むことができる。
【0173】
非経口投与にあたっては、活性剤を好適なキャリア又は希釈剤、例えば、水、油(特に植物油)、エタノール、食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液及び関連糖溶液、グリセロール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールなどのグリコールと混合できる。非経口投与用の液剤は、好ましくは、活性剤の水溶性塩を含有する。また、安定化剤、抗酸化剤及び防腐剤も添加することができる。適切な抗酸化剤としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸、クエン酸及びその塩、並びにEDTAナトリウムが挙げられる。好適な防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン又はプロピルパラベン、及びクロルブタノールが挙げられる。非経口投与用の組成物は、水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液又は乳濁液の形態をとることができる。
【0174】
経口投与にあたって、活性剤は、錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤又は他の好適な経口剤形の調製のために1種以上の固体不活性成分と併用できる。例えば、活性剤は、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収促進剤、湿潤剤吸収剤又は潤滑剤などの少なくとも1種の賦形剤と併用できる。錠剤の一実施形態によれば、活性剤をカルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びデンプンと混合し、次いで従来の錠剤化方法によって錠剤に成形することができる。
【0175】
また、本発明の医薬組成物は、例えば、所望の放出プロファイルを得るための様々な割合でのヒドロプロピルメチルセルロース、他の高分子マトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧系、多層コーティング、微粒子、リポソーム及び/又はミクロスフェアを使用して、内部の活性成分の徐放又は制御放出を与えるように処方できる。
【0176】
一般に、制御放出製剤は、所望の期間にわたって一定の薬理活性を維持するのに必要な速度で活性成分を放出することのできる医薬組成物である。このような剤形は、所定の期間中に身体に薬物を供給するため、従来の非制御製剤よりも長期間にわたって薬物レベルを治療範囲内に維持する。
【0177】
米国特許第5,674,533号には、強力な末梢性鎮咳薬であるモギステインを投与するための液体剤形の放出制御医薬組成物が開示されている。米国特許第5,059,595号には、器質的精神障害の治療のための胃抵抗性錠剤の使用による活性剤の制御放出が記載されている。米国特許第5,591,767号には、制御用の液体貯蔵経皮パッチが記載されている。米国特許第5,120,548号には、膨潤性重合体からなる制御放出薬物送達装置が開示されている。米国特許第5,073,543号には、ガングリオシド・リポソームビヒクルによって捕捉された栄養因子を含有する制御放出製剤が記載されている。米国特許第5,639,476に号は、疎水性アクリル重合体の水性分散液から誘導された被膜を有する安定な固体制御放出製剤が開示されている。生分解性微粒子を制御放出製剤に使用することが知られている。米国特許第5,733,566号には、抗寄生虫組成物を放出する、重合体微粒子の使用が記載されている。
【0178】
活性成分の制御放出は、様々な誘導因子、例えばpH、温度、酵素、水その他の生理学的条件又は化合物により刺激される場合がある。薬物放出の様々なメカニズムが存在する。例えば、一実施形態では、患者への投与後に、放出制御成分が膨潤し、活性成分を放出するのに十分に大きい多孔質開口を形成することがある。本発明において、用語「制御放出成分」は、本明細書では、医薬組成物中の活性成分の制御放出を促進する重合体、重合体マトリックス、ゲル、透過膜、リポソーム及び/又はミクロスフェアなどの1種以上の化合物であると定義される。別の実施形態では、放出制御成分は生分解性であり、体内の水性環境、pH、温度又は酵素への曝露によって誘導される。別の実施形態では、ゾル-ゲルを使用することができ、その際、活性成分は室温で固体であるゾル-ゲルマトリックスに取り込まれる。このマトリックスは、ゾル-ゲルマトリックスのゲル形成を誘導するのに十分に高い体温を有する患者、好ましくは哺乳動物に移植され、それによって活性成分を患者に放出する。
【0179】
医薬組成物を処方するために使用される成分は、高純度のものであり、かつ、潜在的に有害な汚染物質を実質的に含まない(例えば、少なくとも全米食品等級、一般に少なくとも分析等級、典型的には少なくとも医薬等級)。特にヒトの消費のために、組成物は好ましくは米国食品医薬品局の適用可能な規則に定義されている適正製造基準に基づいて製造又は配合される。例えば、適好な製剤は、無菌的であり及び/又は実質的に等張性であり、及び/又は米国食品医薬品局の全ての医薬品製造適正管理規則に完全に準拠することができる。
【0180】
式Iの化合物は便利な方法で投与できる。好適な局所経路としては、経口、直腸、吸入(鼻を含む)、局所(頬及び舌下を含む)、経皮及び膣が挙げられ、好ましくは表皮にわたる。また、式Iの化合物は、非経口投与(皮下、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、髄腔内及び硬膜外を含む)などにも使用できる。好ましい経路は、例えば受容者の状態によって変更する場合があることが分かるであろう。
【0181】
医師は最も適切となる活性剤の投与量を決定し、その投与量は投与形態及び選択された特定の化合物により変動し、さらに投与量は、治療中の患者、患者の年齢、治療されている状態の重症度、投与の経路などを含めて(これらに限定されない)様々な要因に依存して変動することになる。一般に、医師は、化合物の最適用量よりも実質的に少ない少用量で治療を開始し、その状況下で最適な効果に達するまで少しずつ投与量を増やすことを望むであろう。一般に、組成物を経口投与する場合には、非経口投与により与えられる量と同じ効果を生じさせるためには、それよりも多い量の活性剤が必要となることが分かる。当該化合物は、同等の治療剤と同様に有用であり、投与量レベルはこれら他の治療剤と共に一般に使用される投与レベルと同じ桁である。
【0182】
例えば、約0.05~約50mg/kg/日、より好ましくは約0.1~約10mg/kg/日の一日投与量を利用することができる。場合によっては、これらの範囲外の投与量を使用する必要がある場合もあるため、これよりも高い又は低い投与量も意図される。一日投与量は、一日当たりの投与量を一日当たり2~4回に均等に分割するなどして分割できる。組成物は、好ましくは単位剤形で処方され、各投与量は、単位剤形あたり約1~約1000mg、より典型的には約1~約500mg、さらに典型的には約10~約100mgの活性剤を含む。用語「単位剤形」とは、ヒト対象及び他の哺乳動物のための単位投与量として好適な、物理的に別個の単位をいい、各単位は、所望の治療効果を生じさせるように計算された所定量の活性物質を好適な医薬賦形剤と共に含む。
【0183】
治療は、必要な限り長期間にわたって、単一の中断のない期間内、又は別個の期間内に実施できる。治療担当医は、患者の応答に基づいて治療を増減し又は中断する方法が分かるであろう。治療スケジュールは適宜繰り返すことができる。一実施形態によれば、式Iの化合物は1日1回投与される。
【0184】
治療効力は、一般に、インスリン抵抗性の改善、すなわちインスリン感受性の増加によって決定される。インスリン抵抗性は、インスリン抵抗性(HOMA-IR)指数の恒常性モデル評価を用いて治療前、治療中及び治療後に評価できる。HOMA-IR値は、空腹時血糖値(ミリモル/リットル)×空腹時インスリン値(マイクロ単位/ミリリットル)/22.5として算出される。3.0の値は、糖尿病を持たない集団の中で最も高い四分位数を特定する(Ascaso外,Diabetes Care,2003,26:3320)。
【0185】
治療効果はA1Cテストによって評価することもでき、これは、過去3か月間にわたる個人の血糖値の平均を示す。Nathan,Diabetes Care,32(12):e160(2009)を参照。
【0186】
開示された主題の実施について、次の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例
【0187】
例1
次の研究は、GLUT4のカルボニル化による機能障害とインスリン抵抗性との直接的な関連を実証するものである。GLUT4-SNAP融合構築物を作製した。次いで、3T3-L1脂肪細胞に、この構築物をレトロウイルス形質導入してGLUT4-SNAPタンパク質を過剰発現させた。形質導入の24時間後に、細胞を20μMの4-HNEで又はこれなしでさらに4時間処理した。この4-HNE用量は、生理学的レベルと同様でありかつ非毒性であるため選択した。GLUT4カルボニル化(K264 NHE付加物又はR265及びR246グルタミンセミアルデヒド付加物)を同定し定量するために、質量分析に基づく多重反応モニタリング(MRM)法を開発し検証した。このハイスループット方法は抗体を必要とせず、堅牢であり、しかもピコモル以下のレベルでも感度が高い。
【0188】
結果を図1A~1Bに示すところ、これは、4時間にわたる20μMの4-HNEがGLUT4を過剰発現する3T3-L1細胞においてK264-HNE付加物の形成を誘導したことを示す。図1Aに示したMRMデータは、HNE誘導K264-HNE付加物の転移の増加を示す。次に、このデータを使用して、図1Bに示されるカルボニル化GLUT4の量を算出した。ヒトにおいて見られるGLUT4ペプチドのフーリエ変換を定量に使用した。
【0189】
例2
次の研究は、グルコース輸送に及ぼす4-HNE及びH22の影響を実証するものである。3T3-L1脂肪細胞(1×106)を500μMの4-HNE若しくはH22又はその両方の組み合わせで4時間にわたって処理し、次いで100nMのインスリンで60分間にわたって刺激した。グルコース取り込みを特異的MRM法によって測定した。図2に示されるデータは、3T3-L1脂肪細胞によるグルコース取り込みが4-HNE及びH22処理でそれぞれ32%及び66%減少したことを示す。
【0190】
例3
次の研究は、GLUT4カルボニル化(4HNEによる付加)がインスリン抵抗性、前糖尿病及び糖尿病のヒト個体の脂肪組織に存在することを実証するものである。
【0191】
A.脂肪組織サンプルの調製
Mem-PER Plus膜タンパク質抽出キット(Thermo Scientific#89842)及び1Xプロテアーゼ阻害剤(Pierce Halt Protease Inhibitor Cocktail 100X)を使用して、脂肪組織(約200 mg)からタンパク質を抽出した。組織を氷上で10分間インキュベートし、次いで1000rpmで2分間ホモジナイズし、タンパク質を10000gで15分間の遠心分離によって分離した。
【0192】
B.消化
サンプルのそれぞれの30マイクロリットルを10μlのDL-ジチオトレイトール(5mg/ml)で37℃で20分間にわたって変性させ、10μlのヨードアセトアミド(12.5mg/ml)で37℃で20分間にわたってアルキル化した。サンプルを25mMのNH4HCO3で希釈した(タンパク質消化のために450μl及び10μLのトリプシンを添加した)。ギ酸1%の最終濃度を使用して消化を停止し、ペプチドをイオン化した。
【0193】
C.STAGE TIPS処理
消化したペプチドを脱塩し、固定化のためにクロマトグラフィーC18ビーズを使用してSTAGE TIPS(米国フロリダ州ウェストパームビーチThermo Scientific)によって浄化した。簡単に説明すると、固相C18カラムをアセトニトリル100%で活性化し、緩衝液A(水-0.1%ギ酸)で平衡化し、サンプルをチップに2回通し、サンプルを緩衝液Aで2回洗浄することにより脱塩し、そして50μlの溶出緩衝液(85%アセトニトリル、0.1%ギ酸)及び50μLのアセトニトリルで溶出させた。サンプルを高速真空中で30分間にわたり乾燥させ、5MRM分析中に50μlの85%アセトニトリル、15%のギ酸0.1%及び115μLの緩衝液Aで再懸濁した。
【0194】
D.多重反応モニタリング(MRM)
MRM-MSは、対応する前駆体イオンに関連する固有のフラグメントイオンを生成する、定量質量分析ベースのターゲットテクノロジーである。これらのイオンは、複雑なマトリックスサンプルで検出及び定量化できる。フラグメントイオンの強度を測定してペプチドの定量値を得る。カルボニル化GLUT4を検出するために、特定のペプチドを選択した。三重荷電質量を有するカルボニル化GLUT4配列LTGWADVSGVLAELKDEK-4HNE(配列番号2)の親イオンは696.381m/zである。親イオンの断片化後に、相対娘イオン:1101.94、788.4758、917.5138、988.5555、722.4186、及び481.9482m/zを同定し、カルボニル化Glut4ペプチドの定量のために使用した。また、同じペプチドのGLUT4未修飾配列についてのMRM方法も開発した。相対カルボニル化GLUT4は、全GLUT4ペプチドシグナルの合計に対するカルボニル化ペプチドのパーセンテージとして推定した。ヒートショック70kDaタンパク質1A/1B(GLUT4に関連しないタンパク質)からの独立したペプチドを内部標準として選択した。この内部標準ペプチドは、同じサンプル内の各GLUT4ペプチドの強度の正規化に使用されるため、相対的な定量化が可能になる。
【0195】
TSQ QUANTUM(商標)ULTRA(Thermo Scientific)三段四重極と連結したDIONEX UltiMate(商標)3000 SRLCnano HPLCシステム(Thermo Scientific)を用いてMRM分析を行った。方法開発及び質量分析計パラメータの最適化並びにペプチド定量化のためにPINPOINT(商標)ソフトウェアを使用した。ペプチドを液体クロマトグラフィーによって分離し、5μLのサンプルをナノHPLCシステムに注入し、分離をC18カラム(ACCLAIM PepMap(登録商標)RSLC、Thermo Scientific)で実施した。緩衝液A(0.1%(v/v)ギ酸を含む)及び緩衝液B(0.1%(v/v)ギ酸を含有するアセトニトリル)を用いて0.300μl/分の流速の勾配で溶出を行った。5%Bから30%Bまで22.5分で直線勾配を実施し、続いて7分間にわたって90%Bで洗浄工程を行い、14分間にわたってカラムを再平衡化する、50分の長さの全サイクルで行った。質量分析を、2000Vのイオンスプレー電圧及び200℃の温度を使用して、陽イオン化モードで実施した。ネブライザー及びガス流を30psiに設定した。
【0196】
上記MRMプロトコールを利用して、次の群からの脂肪サンプルにおけるGLUT4修飾を比較した:(i)痩せ型インスリン耐性;(ii)過栄養での痩せ型インスリン耐性;(iii)肥満型非糖尿病;(iv)肥満型前糖尿病及び(v)肥満型糖尿病。痩せ型インスリン抵抗性個体と痩せ型過栄養インスリン抵抗性個体の脂肪組織を比較すると、痩せているがインスリン抵抗性であり高カロリー食の被験者ではGLUT4-K264-NHE付加体のレベルが少なくとも2.5倍増加したことが明らかになった(図3A)。肥満型の非糖尿病被験者、肥満型前糖尿病被験者及び肥満型糖尿病被験者における脂肪組織GLUT4 K264 NHE付加物レベルを比較すると、GLUT4カルボニル化が前糖尿病被験者及び糖尿病被験者において増加したことが明らかになった(図3B)。
【0197】
これら5つの研究群においてカルボニル化されているGLUT4の割合を決定するために、MRM法を使用して総GLUT4を検出した。図3Cの結果は、インスリン抵抗性、すなわち前糖尿病及び糖尿病である対象において増加レベルのGLUT4カルボニル化が生じることを示す。約50%のGLUT4カルボニル化は、報告された過剰栄養摂取7日間後のインスリン刺激グルコース取り込み(GIR)の約50%の減少に等しい。
【0198】
図3Dの結果から、GLUT4カルボニル化がインスリン抵抗性マーカーであるインスリン抵抗性マーカーHbA1C(糖化ヘモグロビン)マーカーと共に直線的に増加することが確認される。
【0199】
例4
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド
【化26】
【0200】
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸を次のように製造した。
A.t-ブチル-(S)-(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメートの製造
【化27】
ジ-t-ブチルジカーボネート(733μL、3.189mmol)を、L-(-)-α-アミノ-ε-カプロラクタムヒドロクロリド(500mg、3.037mmol)及びトリエチルアミン(847μL、6.074mmol)の無水テトラヒドロフラン(4mL)への懸濁液に添加した。得られた懸濁液を室温で一晩撹拌し、そして濃縮した。残った白色固体を酢酸エチルと水に分けた。水性層を除去した。有機層を1N塩酸水溶液で2回洗浄し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で2回洗浄し、ブラインで1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濃縮した。純粋な表記化合物を白色固体として得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ6.45(bd,J=5.8Hz,1H)、4.18-4.30(m,1H),3.17-3.30(m,2H)、1.70-2.03(m,4H),1.48-1.57(m,1H),1.45(s,9H),1.28-1.42(m,1H);MS(ESI):m/z250.8(M+Na)+
【0201】
B.t-ブチル-(S)-(1-(3-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメートの製造
【化28】
【0202】
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド(2.524mmol;1.0Mテトラヒドロフラン溶液の2.5mL)をt-ブチル(S)-(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメート(288mg、1.262mmol)の無水テトラヒドロフラン(12mL)溶液に添加した。
【0203】
得られた懸濁液を室温で30分間撹拌した。3-(Boc-アミノ)プロピルブロミド(2.524mmol;470μl)を一度に全部加えて、反応物を室温で28時間撹拌した。反応混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣を酢酸エチルと水に分けた。水性層を除去した。有機層をブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、そして濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中0~100%の酢酸エチルの勾配溶媒系を使用してシリカゲルでカラムクロマトグラフィーすることにより精製して、表記化合物を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ5.96(bd,J=5.0Hz,1H),5.32(bs,1H),4.36(m,1H),3.45-3.62(m,2H),3.33-3.41(m,1H),3.08-3.22(m,2H),2.97-3.06(m,1H),2.02-2.09(m,1H),1.92-2.00(m,1H),1.76-1.87(m,2H),1.61-1.70(m,2H),1.40-1.50(m,19H),1.31-1.38(m,1H);MS(ESI):m/z407.8(M+Na)+
【0204】
C.(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの製造
【化29】
【0205】
t-ブチル-(S)-(1-(3-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメート(100mg、0.2596mmol)を12Nの塩酸水溶液(4mL)に溶解した。得られた溶液を、泡立ちが全て止むまで室温で撹拌した。これをマイクロ波反応バイアルに移し、そして160℃で90分間加熱した。濃縮により、純粋な表記化合物を淡黄色黄褐色の固体として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ4.00(t,J=6.3Hz,1H),3.08-3.20(m,6H),1.90-2.15(m,4H),1.72-1.83(m,2H),1.43-1.62(m,2H);MS(ESI):m/z203.9(M+H)+
【0206】
例5
(S)‐2‐アミノ‐6-((3‐アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの試験管内安定性研究
次の研究は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの溶解度及び溶液安定性を実証するものである。
【0207】
A.溶解度
表記化合物を、少なくとも10mMの濃度で水又はDMSOに可溶であると決定した。リン酸緩衝食塩水(PBS)溶解度アッセイ(PBS:136.9mMのNaCl、2.68mMのKCl、8.1mMのNa2HPO4;1.47mMのKH2PO4;±0.9mMのCaCl2;±0.49mMのMgCl2;pH7.4)、Ca又はMgなし(Ca/Mgはアッセイを妨害する)において、標記化合物は>200μMの溶解度を有していた(標準プロトコルで試験した最大濃度)。
【0208】
B.肝臓ミクロソーム安定性
肝臓ミクロソームの存在下での表記化合物の安定性を、1μMの化合物及び0.5mg/mlラット又はヒトミクロソームタンパク質で、2mMのNADPH(標準的な試験管内スクリーニング濃度)を用いて37℃で試験した。結果は次の通りである:(a)ラット(プールSprague Dawley系;雄):t1/2>60分;クリント<23μL/分/mgタンパク質;(b)ヒト(プール男性及び女性):t1/2>60分;クリント<23μL/分/mgタンパク質。「t1/2」値は、それぞれのアッセイのために使用される最大時間である。これらのアッセイのどの時点においても、この化合物の有意な欠失は見られなかった。
【0209】
C.溶液安定性
標記化合物の安定性を次の濃度の次の培地で試験した:(i)マウス(雄C57BL/6)血漿中1μM;(ii)PBS中1μM(Ca及びMgを含む)(対照処理);(iii)刺激された胃液中5μM(SGF;0.2%のNaCl;84mMのHCl;0.32%のペプシン;pH1.2);(iv)刺激された腸液中5μM(SIF;50mMのKP、pH6.8;10mg/mlパンクレアチン);及び(v)PBS中5μM(+Ca及びMg)(対照処理)。結果は次の通りである:(i)マウス血漿中1μM、37℃でt1/2>6時間;(ii)PBS中1μM、37℃でt1/2>6時間;(iii)SGF中5μM、37℃でt1/2>3時間;(iv)5μMのSIF中、37℃でt1/2>3時間;及び(v)PBS中5μM、37℃でt1/2>3時間。「t1/2」値はそれぞれのアッセイのために使用される最大時間である。これらのアッセイのどの時点においても、この化合物の有意な欠失は見られなかった。
【0210】
例6
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの静脈内及び経口薬物動態学的研究
次の研究は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの静脈内及び経口薬物動態学的挙動を実証するものである。
【0211】
A.方法
薬物動態学的研究を、マウス(Charles river)を用いて実施した(N=3)。動物は、管理された12時間の明暗サイクルの下で水と標準的な実験用飼料に自由にアクセスできた。少なくとも1週間の馴化期間の後、マウスに5mg/kgの用量の標記化合物((S))-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド)を静脈内投与し又は10mg/kg経口投与した。静脈内投与及び経口投与の両方について、化合物を食塩水に溶解させた。静脈内投与後、血液サンプルを10分、30分、1、2、4、8及び24時間目に採取した。経口胃管栄養法のために、血液サンプルを15分、30分、1、2、4、8及び24時間目に採取した。血液サンプルをヘパリンナトリウム100単位/mLでポリエチレンチューブに集め、6000×gで10分間遠心分離して血漿を得、これを分析まで-20℃で保存した。
【0212】
マウス血漿中の表記化合物濃度を、LC/MS/MS(API4000、AB SCIEX)を使用して定量した。簡単に説明すると、50μlのマウス血漿を、内部標準(Diltiazem 10ng/ml)を含む100μlのアセトニトリルに添加した。この混合物をボルテックスして遠心分離し、5μlの上清を分析のためにLC/MS/MSに注入した。分離はWaters C18カラム(2.1×50mm、3.5μM粒径)で行った。移動相は、勾配溶離による0.2%ペンタフルオロプロピオン酸水溶液:アセトニトリルからなるものであった。陽イオン多重反応モニタリング(MRM)モードのエレクトロスプレー源を備えたSciex API4000質量分析システムを検出に使用した。表記化合物及びジルチアゼムについてモニターされたMRM遷移は、それぞれm/z204.4/84.2及びm/z415/178であった。保持時間は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸については12.5分、ジルチアゼムについては14分である。定量は25~1000ng/mlの範囲であった。
【0213】
B.結果-静脈内薬物動態
((S))-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸についての静脈内薬物動態データを表1にまとめる。標記化合物は0.414L/kgの分布容積(Vss)及び2.53時間の半減期(T1/2)を有する。
【0214】
表1:生体内薬物動態学的特性
【表1】
【0215】
C.結果-経口薬物動態学
((S))-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸についての経口薬物動態データを表1にまとめる。経口投与時に、表記化合物のバイオアベイラビリティー(F)は約100%であった。クリアランス(CL)及び半減期は静脈内研究と同様であったが、Vssはより高かった(2.1L/Kg対0.4L/Kg)。
【0216】
D.飲料水での経口投与のための予測用量
飲料水中における10mg/kg、1日(12時間にわたる6回の経口投与としてモデル化)についての予測C-tプロファイルを図4に示す。最大予測濃度は0.82μg/mL、最小濃度は0.1μg/mLである。用量は、所望の濃度を達成するために比例的に調節できる。
【0217】
例7
3T3‐L1脂肪細胞におけるグルコース取り込みの(S)-2-アミノ‐6-((3‐アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドによる阻害
脂肪細胞におけるグルコース取り込み障害に及ぼす(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの影響を次のように決定した。
【0218】
A.3T3-L1細胞の培養:
ATCCガイドラインに従って化学的に誘導された分化を使用して、3T3-L1マウス胚性線維芽細胞のATCC(登録商標)CL-173(商標)を脂肪細胞に分化させた。分化した3T3-L1脂肪細胞4e6細胞を、1%透析ウシ胎児血清(参照番号26400ギブコ)を含む無グルコース培地(RPMI参照番号11879ギブコ)中において37℃で一晩インキュベートした。化合物に曝露する前に、細胞を無グルコース培地で洗浄し、1時間にわたってインキュベートした。細胞を(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(表記化合物)の濃度を増加させながら(0.1、1、10及び100μM)及び増加させることなく、37℃で2時間にわたりインキュベートし、その後、グルコースを含まないリン酸緩衝液で3回洗浄した。次いで、細胞を、グルコースを含まない培地中において37℃で1時間にわたりそれぞれ100μMの4HNE/H22と共にインキュベートすることによって酸化ストレスにさらした。インキュベーション後、細胞を段階的に洗浄し、136-グルコース取り込みアッセイを以前に報告されている通りに行った(Datta外,Cell Cycle.2016年9月;15(17):2288-98、doi:10.1080/15384101.2016.1190054(Epub2016年5月31日)。
【0219】
B.グルコース取り込み
細胞をPBSで洗浄し、続いて20mMの136グルコース、10mMの2-フルオロデオキシグルコース(2-FDG)及びインスリン10pM(Sigma I5500)を含有するグルコースを含まないDMEM培地を添加し、37℃で1時間インキュベートした。2-FDGはグルコース代謝の阻害剤であるため、グルコースの分解を防ぎ、その蓄積をさらに測定及び定量化することができる。細胞を回収し、1×PBSで3回洗浄し、細胞ペレットを、4℃で10分間インキュベートした10μl-PER緩衝液に溶解させ、90μlの緩衝液A(20mM水酸化アンモニウム及び20mM酢酸アンモニウム)を代謝物の抽出及びさらなる分析のために添加した。
【0220】
C.代謝物抽出
上清細胞培地又は細胞溶解物からのタンパク質を3容量のアセトニトリルで沈殿させ、液相を高速真空中で濃縮した(Dietmair外,Anal Biochem.2010,404:155-64)。代謝産物を含む乾燥ペレットを緩衝液Aに再懸濁し、そしてこれを使用して代謝産物を測定した。
【0221】
D.多重反応モニタリング(MRM)
136グルコースの検出を、Waters Xevo(商標)三段四重極タンデム質量分析計(英国マンチェスターWaters Corp.)を使用して実施した。IntelliStartソフトウェアを、13C6グルコース代謝産物の方法開発及び最良の代謝産物転位検出条件のための質量分析計パラメータの最適化に使用した。136グルコース代謝産物を検出するためのUPLC/MS/MS法を、化合物の迅速な溶出及びその後のMRMを含めて、1サンプルあたり6分以内で代謝抽出物を完全に分離及び同定するために開発した。この方法を、0.4mL/分の流量と、20mMの移動相A及びB、すなわち、それぞれアセトニトリル中の水酸化アンモニウム及び20mM酢酸アンモニウムを使用して、40℃に加熱したACQUITY UPLC(登録商標)(100mm×2.1mm、1.7μm)BEHアミドC18カラムにおいて代謝物標準物を用いて、次の勾配:0%B、0~1分;0%B~50%B、1~2.5分;50%B~90%B、2.5~3.2分;90%B~0%B、3.2~4分;合計実施時間5分で確認した。クロマトグラフィー及びマススペクトルデータを収集し、そしてWaters MassLynx v4.1ソフトウェアを用いて分析した。ピーク面積比分析物対濃度の線形回帰分析を使用して定量化を得た。前駆体イオンとフラグメントイオンとの比率により、全ての標的代謝物について正確に定量化することができる。基準検量線を、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、50、及び100μMの濃度の136グルコース代謝物を使用して行った。
【0222】
E.結果
結果を図5に示す。表記化合物(「APL」)は、4-HNE及びH22によって誘導されるグルコース取り込み障害を用量依存的に防止することができた。
【0223】
例8
(S)-2-アミノ-6-((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸トリヒドロクロリド
【化30】
【0224】
(S)-2-アミノ-6-((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸トリヒドロクロリドを次のように製造した。
(A)t-ブチル-(S)-(1-(3-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメートの製造
【化31】
【0225】
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(0.8760mmol;1.0MのTHF溶液876μL)をt-ブチル(S)-(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメート(0.4380mmol;100mg)の無水テトラヒドロフラン溶液(1mL)に添加した。得られた懸濁液を室温で30分間撹拌した。N-Boc-6-ブロモヘキシルアミン(0.8760mmol;245mg)を一度に全部添加した。反応液を室温で48時間撹拌し、次いで60℃で18時間撹拌した。これを濃縮し、残渣を酢酸エチルと水に分けた。水性層を除去した。有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そして濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中0~40%の酢酸エチルの勾配溶媒系を使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物を無色の油状物として得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ6.00(bd,J=5.8Hz,1H),4.56(bs,1H),4.33(m,1H),3.43-3.52(m,2H),3.36-3.41(m,1H),3.25-3.33(m,1H),3.15-3.23(m,1H),3.05-3.13(m,2H),1.89-1.98(m,1H),1.74-1.88(m,3H),1.41-1.54(m,22H),1.27-1.36(m,5H);MS(ESI):m/z428.3[(M+H)+]。
【0226】
(B)(S)-2-アミノ-6ー((6-アミノヘキシル)アミノ)ヘキサン酸トリヒドロクロリドの製造
【化32】
【0227】
t-ブチル(S)-(1-(6-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)-2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメート(0.0215mmol;9.2mg)を12N塩酸(1mL)に溶解した。この溶液を泡立ちが完全に止むまで室温で撹拌した。これをマイクロ波反応バイアルに移し、そして160℃で90分間加熱した。濃縮して、純粋な表記化合物を淡黄色油状物として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ4.08(t,J=6.4Hz,1H),2.98-3.10(m,6H),1.92-2.06(m,2H),1.64-1.81(m,6H),1.40-1.57(m,6H);MS(ESI):m/z246.2[(M+H)+]。
【0228】
例9
(S)-2-アミノ-6-((3‐アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドは4-HNEと付加物を形成する
次の研究は、本発明の化合物である(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドが4-HNEと付加物を形成ことによって、4-HNEがカルボニル化によりGLUT-4を損傷させないようにすることを実証するものである。実験計画は、等モル量(10μM)のAPL(ジヒドロクロリド)を4-HNEと共にインキュベートし、37℃で1時間のインキュベーションの前後に質量分析法によって付加体形成を測定することであった。
【0229】
結果を図6A及び図6Bに示す。図6Aに示すように、APLは4-HNEの添加前に検出される。図6Bに示すように、APLは1時間のインキュベーション後に4-HNEと付加物を形成する。
【0230】
例10
栄養過剰の動物におけるグルコース取り込み障害の回復
過栄養誘導グルコース取り込み障害の回復における(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの効果を次のように実証した。
【0231】
8週齢の24匹のC57BL/6Jマウスに、通常の固形食餌又は高脂肪食餌(HFD、60%の脂肪含有量)のいずれかを与えた。8匹の動物に固形食餌を1週間にわたって与え、8匹の動物に既に2週間HFDを与え、もう1週間同じ食餌を続けて与え(合計3週間給餌)、そして8匹の動物に動物の選択と同時にHFDを開始した(2週間給餌)。各群を半分に分け、4匹の動物に通常の水を与え、他の4匹の動物に、水に溶解させた(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(10μg/mL)を与えた。
【0232】
動物を5時間絶食させ、体重測定し、そして血糖をテールクリッピングにより測定した。さらに、グルコース(1mg/体重1g)を腹腔内投与した。グルコース投与の20、40及び80分後に追加のグルコースレベルを測定した。大量のグルコースも腹腔内投与して、組織からのグルコース取り込みをさらに測定した。140分後にグルコース濃度を再び測定した。動物を麻酔下(イソフルラン)で安楽死させ、そして血液、肝臓、脂肪及び筋肉を採取した。
【0233】
図7の結果は、活性剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドが、細胞内の過剰栄養によって誘導されるグルコース取り込み障害に対抗するのに有効であったことを実証するものである。
【0234】
例11
栄養過剰動物におけるGLUT4カルボニル化の減少-追加研究
次の追加研究は、高脂肪食を与えたマウスの脂肪組織でのGLUT4カルボニル化の減少における(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの効果を実証するものである。
【0235】
A.方法
8週齢の32匹のC57BL/6Jマウスを選択し、そして無作為に分けた。マウス(n=8)に、固形食餌又は高脂肪食(HFD、60%の脂肪含有量)のいずれかを2週間自由に与えた。各群を半分に分けた;8匹の動物に通常の水を与え、他の8匹には、マウス1匹あたり、一日約10mg/kgの薬物体重を投与するように、水に溶解した(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドを与えた。追加の実験対照として(n=8)、HFDを与えた一群のマウスにもピオグリタゾン(10mg/kg)を与えた。ポグリタゾンは周知の抗糖尿病薬である。これは、細胞へのグルコース取り込みを増加させることができる。また、ポグリタゾンは、タンパク質のカルボニル化を減少させることも示されている(Xu、Q.,Hahn,WS&Bernlohr,DA(2014)Detecting protein carbonylation in adipose tissue and in cultured adipocytes。Methods in enzymology 538,249-261、doi:10.1016/B978-0-12-800280-3.00014-1)。2週間の終了時に、動物を5時間絶食させ、体重測定し、そしてそれらの尾を切り取って空腹時血糖値を測定した。直後に、グルコースを腹腔内投与した(1mg/体重1g)。グルコース時間試験(GTT)においてグルコースを投与した後の20、40、80及び140分目にグルコースレベルを測定した。動物を麻酔下(イソフルラン)で安楽死させた。血液、肝臓、脂肪及び筋肉組織を採取し、そして研究のために急速冷凍した。
【0236】
HFDを与えた対照動物及び(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドを与えたHFD動物における脂肪組織中のGLUT4カルボニル化レベルを上記のMRM法によって測定した。
【0237】
(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(10mg/kg/日)を有する及びそれなしの食餌誘発性(HFD)マウスの体重を14日間にわたって測定した。
【0238】
B.結果:GLUT4カルボニル化のレベル
図8Aに示すように(n=8;P<0.02)、活性剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)は、治療を受けた個人の脂肪組織における過剰栄養誘発GLUT4カルボニル化を減少させるのに再び有効であった。この薬剤は、GLUT4のカルボニル化を約50%減少させるのに有効であった(図8A)。
【0239】
C.結果:耐糖能試験
耐糖能に及ぼす化合物(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの影響を決定するために、(i)HFD+ポグリタゾン、(ii)HFD+ビヒクル、(iii)HFD+(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド及び(iv)固形食餌(対照)を与えたマウスについて、耐糖能試験(GTT)を行った。図8Bに示すように、薬剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)は空腹時血糖値を低下させた。
【0240】
図8Cは、動物群(i)~(iv)についてのグルコース時間試験の結果を示す。耐糖能は、固形食餌対照と比較してHFDにおいて損なわれた。興味深いことに、耐糖能試験は(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドで処理したマウスでは劇的に改善された。ピオグリタゾンは、中程度の耐糖能の改善しか示さなかった。ピオグリタゾンの結果は公表されているデータと一致する(Xu,Q.,Hahn,WS&Bernlohr,DA(2014)Detecting protein carbonylation in adipose tissue and in cultured adipocytes。Methods in enzymology 538,249-261,doi:10.1016/B978-0-12-800280-3.00014-1)。
【0241】
図8Cの耐糖能試験データの曲線下面積を計算した場合にも同様の結果が得られた。図8Cの曲線下面積は、図8Dに棒グラフとして表されている。
【0242】
図8A図8Dにおいて、全てのデータ点及びエラーバーは平均±標準誤差を表す。統計処理を、両側スチューデントのt検定を使用して行った。有意水準は*p<0.05;**p<0.02である。
【0243】
D.結果:体重
図9は、10mg/kg/日の(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドによる処理(「APL」)中及びALPによる処理なし「対照」)での2週間にわたる食餌誘発(HFD)肥満マウスの体重を示す。この薬剤は体重に影響を及ぼさなかった。これに対し、ポグリタゾンは水分保持と体重増加とを引き起こすことが知られている。また、体重が減少しなかったことは、有意な毒性がないことの証拠となる。
【0244】
例12
レプチン肥満(db/db)マウスの前糖尿病段階及び糖尿病段階における耐糖能障害の減少
次の研究は、前糖尿病段階における耐糖能障害の低減における(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの効果を実証するものである。
【0245】
レプチン受容体ノックアウト(db/db)マウスは、4週齢で最初に認識され可能な、重症で急速な自然発生的及び早期発症型の肥満及びインスリン抵抗性を有する。これらの動物(各群につき5匹)を使用して、前糖尿病レベルでの耐糖能障害に及ぼす(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの効果を決定した。これらの群は、(i)50mg/kgの(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドを一日二回経口投与したdb/dbマウス;(ii)db/dbビヒクル対照処理マウス;(iii)ヘテロ接合同腹子対照マウスからなるものであった。治療期間は7日間であった。耐糖能試験を上記のように実施した。図10に示す結果は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)が前糖尿病db/dbマウスにおける耐糖能障害を正常化することを実証するものである。
【0246】
糖尿病を発症した後の耐糖能障害に及ぼす(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドの効果を決定するために、6週齢のdb/dbマウスを薬剤(50mg/kg一日二回経口投与)で14日間処理した。陽性対照群を、同じ用量のメトホルミンで処理した。図11の結果は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)が、2型糖尿病治療の第一選択薬であるメトホルミンよりも耐糖能障害の低減の点で優れていることを示している。これらの結果は、この薬剤を使用して、前糖尿病と、糖尿病表現型が確立されている糖尿病との両方を治療することができることを実証するものである。
【0247】
例13
レプチン肥満(db/db)マウスにおける疾患進行の遅延
処理期間中に(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドが糖尿病への進行を遅らせる又は糖尿病のみを隠すかどうかを評価するために、(i)db/dbマウス;(ii)db/dbビヒクル対照処置マウス;(iii)ヘテロ接合性同腹子対照マウスを(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド又はメトホルミン(50mg/kg一日二回経口投与)で14日間処理し又はこれで処理しなかった。14日間の処理期間の後に、処理を行わなかった別の14日間(「ウォッシュアウト期間」)があった。図12の結果は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(「APL」)が、治療除去後14日後であっても耐糖能障害の低減に依然として有効であることを示す。これらの結果は、この薬剤が糖尿病調節性であることを示す。これは単に上記疾患を覆い隠すものではない。
【0248】
例14
次の研究は、(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリドがGLUT4カルボニル化を低減させ、4-HNE及びH22によって誘導されるグルコース取り込み障害を防止することができることを実証するものである。インスリン刺激3T3-L1脂肪細胞を、薬剤(S)-2-アミノ-6-((3-アミノプロピル)アミノ)ヘキサン酸ジヒドロクロリド(10μM)で12時間にわたって前処理した後、4HNE及びH22にさらに4時間曝露した。3T3-L1脂肪細胞によって取り込まれたグルコースの量を、上記MRM法によって測定した。図13の結果は、4ーHNE及びH22に曝露されたインスリン刺激3T3-L1細胞におけるグルコース取り込みを回復させる際の当該薬剤の効果を示す:対照細胞、インスリンなし(C-No Ins);対照細胞、インスリンあり(C+Ins);4HNE+H22処理細胞(4HNE/H22);及び薬剤+4HNE+H22で処理した細胞(「APL」)。
【0249】
例15
(S)‐2‐アミノ‐5-((6‐アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド
【化33】
【0250】
(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドを次のように製造した。
A.t-ブチル(6-オキソヘキシル)カルバメートの製造
【化34】
【0251】
塩化オキサリル(50μL)の無水ジクロロメタン撹拌溶液(2mL)に無水ジメチルスルホキシド(83μL)を-78℃で滴下した。15分間撹拌した後、6-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-1-ヘキサノール(115mg、0.53mmol)の無水ジクロロメタン溶液(1mL)を滴下した。得られた混合物を-78℃で45分間撹拌した。トリエチルアミン(368μL)を添加し、そしてこの反応物を室温まで温めた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して表記化合物を灰白色固体として得(86mg、75%収率)、これをさらに精製することなく使用した。
【0252】
B.(S)-2-((((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5)-((6-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)アミノ)ペンタン酸の製造
【化35】
【0253】
酢酸(100μL)を含有する無水メタノール(2mL)にN-α-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン94mg(0.352mmol)を懸濁してなる撹拌懸濁液に、t-ブチル(6-オキソヘキシル)カルバメート(114mg、0.528mmol)の無水メタノール溶液(1.9mL)を添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(66mg、1.057mmol)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターで濃縮した後、残渣を酢酸エチルと1M硫酸水素カリウム水溶液とに分けた。水性層を除去した。有機相を水及びブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣を、0.1%ギ酸改質剤と共に水中10~100%アセトニトリルの勾配を使用した逆相クロマトグラフィー(C18カラム)によって精製した。表記化合物(87mg、収率53%)を淡黄色油状物として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ3.94(t,J=5.92Hz,0.5H),3.63(m,0.5H),2.99-3.13(m,6H),1.65-2.04(m,8H),1.43(m,4H);MS(ESI):m/z466.2[(M+H)+]。
【0254】
(C)(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドの製造
【化36】
【0255】
(S)-2-((((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((6-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ヘキシル)アミノ)ペンタン酸)(18mg、0.039mmol)の6N塩酸溶液(4mL)を2時間にわたって還流させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、表記化合物(12mg、収率90%)を淡黄色油状物として得た。1H NMR(400MHz,D2O)δ4.27(m,0.5H),3.95(m,0.5H),3.33-3.48(m,6H),2.00-2.37(m,8H),1.77(m,4H);MS(ESI):m/z232.2[(M+H)+]。
【0256】
D.4-HNE及びH 2 2 に曝露したインスリン刺激3T3-L1細胞内でのグルコース取り込みの回復における(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドの効果
インスリン刺激3T3-L1脂肪細胞を、薬剤(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸ジヒドロクロリド(10μM)で12時間にわたって前処理した後、さらに4時間にわたって4HNE及びH22にさらした。3T3-L1脂肪細胞によって取り込まれたグルコースの量を、上記MRM法によって測定した。図13には、次の結果が含まれる:(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドで処理された細胞(MC-180351)。このデータは、(S)-2-アミノ-5-((6-アミノヘキシル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドがGLUT4カルボニル化を低減させ、4-HNE及びH22によって誘導されるグルコース取り込み障害を防止することができることを実証するものである。
【0257】
例16
(S)‐2‐アミノ‐5-((5‐アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリド
【化37】
【0258】
(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドを次のように製造した。
【0259】
A.t-ブチル(5-オキソペンチル)カルバメートの製造
【化38】
【0260】
無水ジメチルスルホキシド(58μL)を、塩化オキサリル(35μL)の無水ジクロロメタン撹拌溶液(1.5mL)に-78℃で滴下した。15分間撹拌した後、6-(t-ブトキシカルボニルアミノ)-1-ペンタノール(75mg、0.37mmol)の無水ジクロロメタン溶液(0.75mL)を滴下した。得られた混合物を-78℃で45分間撹拌した。トリエチルアミン(257μL)を添加し、そしてこの反応物を室温まで温めた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、表記化合物を灰白色固体として得(52mg、収率70%)、これをさらに精製することなく使用した。
【0261】
B.(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((5-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル)アミノ)ペンタン酸の製造
【化39】
【0262】
酢酸(38μL)を含有する無水メタノール(1mL)中にN-α-ベンジルオキシカルボニル-L-オルニチン35mg(0.13mmol)を懸濁してなる撹拌懸濁液に、t-ブチル(5-オキソペンチル)カルバメート(40mg、0.20mmol)の無水メタノール溶液(1.0mL)を添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(25mg、0.40mmol)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。ロータリーエバポレーターで濃縮した後、残渣を酢酸エチルと1M硫酸水素カリウム水溶液とに分けた。水性層を除去した。有機相を水及びブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣を、0.1%ギ酸改質剤と共に水中10~100%アセトニトリルの勾配を使用した逆相クロマトグラフィー(C18カラム)によって精製した。表記化合物(34mg、収率58%)を無色油状物として得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ7.26-7.38(m,5H),5.08(s,2H),4.03(m,1H),2.90-3.07(m,6H),1.87(m,1H),1.65-1.79(m,5H),1.34-1.54(m,13H);MS(ESI):m/z452.30[(M+H)+]。
【0263】
C.(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドの製造
【化40】
【0264】
(S)-2-(((ベンジルオキシ)カルボニル)アミノ)-5-((5-((t-ブトキシカルボニル)アミノ)ペンチル)アミノ)アミノ)ペンタン酸(20mg、0.044mmol))の6N塩酸溶液(4mL)を2時間にわたって還流させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、表記化合物(12mg、収率88%)を淡黄色油状物として得た。1H NMR(400MHz,CD3OD)δ4.06(t,J=5.36Hz,1H),3.06(m,4H),2.96(t,J=7.52Hz,2H),1.88-2.10(m,4H),1.68-1.83(m,4H),1.47-1.55(m,2H);MS(ESI):m/z218.2[(M+H)+]。
【0265】
D.4-HNE及びH 2 2 に曝されたインスリン刺激3T3-L1細胞内でのグルコース取り込みの回復における(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドの効果
インスリン刺激3T3-L1脂肪細胞を、薬剤(S)-2-アミノ-5-((5-アミノヘプチル)アミノ)ペンタン酸ジヒドロクロリド(10μM)で12時間にわたって前処理した後、さらに4時間にわたって4HNE及びH22に曝した。3T3-L1脂肪細胞によって取り込まれたグルコースの量を、上記MRM法によって測定した。図13には次の結果が含まれる:(S)-2-アミノ-5-((5-アミノペンチル)アミノ)ペンタン酸トリヒドロクロリドで処理した細胞(MC-180352)。このデータは、(S)-2-アミノ-5-((5-アミノヘプチル)アミノ)ペンタン酸ジヒドロクロリドがGLUT4カルボニル化を低減し、4-HNE及びH22によって誘導されるグルコース取り込み障害を防止することができることを実証するものである。
【0266】
本明細書で引用したそれぞれの及び全ての特許、特許出願、GenBankレコード及び刊行物の開示は、その全体を参照により本明細書において援用される。
【0267】
本発明を特定の実施形態を参照しながら開示してきたが、当業者であれば、本発明の実施の際に使用される真の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態及び変形を考案できることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような実施形態及び均等物の変形形態を全て含むものと解釈すべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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