(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】少量のバナジウムをドーピングした半絶縁炭化ケイ素単結晶、基板、製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20230301BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20230301BHJP
C30B 23/06 20060101ALI20230301BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20230301BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C23C14/06 B
C30B23/06
C30B33/02
H01L21/324 X
(21)【出願番号】P 2019571538
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(86)【国際出願番号】 CN2018123707
(87)【国際公開番号】W WO2020077846
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2020-04-09
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】201811204690.7
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811204702.6
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519453009
【氏名又は名称】山▲東▼天岳先▲進▼科技股▲フン▼有限公司
【住所又は居所原語表記】No.99, Tianyue South Road, Huaiyin District, Jinan, Shandong 250118, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高 超
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 家朋
(72)【発明者】
【氏名】李 加林
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲長▼▲進▼
(72)【発明者】
【氏名】柏 文文
(72)【発明者】
【氏名】宗 ▲艷▼民
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】金 公彦
【審判官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505833(JP,A)
【文献】特開2013-173655(JP,A)
【文献】特開2008-53667(JP,A)
【文献】特表2004-533720(JP,A)
【文献】特開2014-133701(JP,A)
【文献】特表2005-507360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浅いエネルギー準位不純物、低い濃度の深いエネルギー準位ドーパント及び極めて少量の真性点欠陥を含み、
前記深いエネルギー準位ドーパントは、前記真性点欠陥と共に浅いエネルギー準位不純物を補償し、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶の中の深いエネルギー準位ドーパントの濃度より小さく、
前記真性点欠陥の濃度は、室温での炭化ケイ素単結晶の中の真性点欠陥の元の濃度であり、前記真性点欠陥の室温での濃度は、1×10
14cm
-3以下であり、前記真性点欠陥の濃度は、炭化ケイ素単結晶の電気的性能の安定性に影響を与えず、前記真性点欠陥の元の濃度は、炭化ケイ素単結晶を成長するプロセスにおいて自熱して形成された真性点欠陥の濃度であり、炭化ケイ素単結晶の後続する処理を行う際に導入された真性点欠陥の濃度を含まれておらず、
前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×10
17cm
-3より小さく、
前記炭化ケイ素単結晶は、抵抗率が1×10
11Ω・cmより大きく、前記炭化ケイ素単結晶が900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、31%以下であることを特徴とする、少量のバナジウムがドーピングされた高品質の半絶縁炭化ケイ素単結晶。
【請求項2】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×10
17cm
-3より小さいことを特徴とする請求項1に記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶。
【請求項3】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×10
15cm
-3以上であり、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×10
15cm
-3以上であることを特徴とする請求項2に記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶。
【請求項4】
前記浅いエネルギー準位不純物は、元素周期表の中のIIIA及びVA主族元素の中の一種類又は複数の種類を含み、
前記深いエネルギー準位ドーパントは、元素周期表の中のVB族元素から選択される少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1に記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶。
【請求項5】
前記深いエネルギー準位ドーパントは、バナジウムであることを特徴とする請求項4に記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造方法であり、
熱場装置から不純物を除去するステップ(1)と、
一定の量の深いエネルギー準位ドーパントを炭化ケイ素の粉材料の中にドーピングすることによって、材料を混合させるステップ(2)と、
ステップ(2)で製造された、深いエネルギー準位ドーパントがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を、ステップ(1)で処理された熱場装置に置いた後、結晶成長を始めさせ、結晶成長が終わった後の深いエネルギー準位ドープ中心元素の濃度は、5×10
15cm
-3~1×10
17cm
-3であるステップ(3)と、
ステップ(3)で処理された炭化ケイ素単結晶の初期製品に対してアニール処理を行うことによって、半絶縁炭化ケイ素単結晶を製造するステップ(4)と、を含み、
前記ステップ(3)における結晶成長のステップは、高温前処理段階と、結晶成長段階とを備え、
前記高温前処理段階は、1800℃~2000℃の温度で且つ800~900mbarの圧力で30~50hの時間維持することを含み、
前記結晶成長段階の条件は、10~30℃/minの速度で2200℃以上に温度を上昇させると同時に、圧力を5~50mbarに下げさせることであり、
前記ステップ(4)におけるアニール処理の条件は、ステップ(3)で製造された炭化ケイ素単結晶の初期製品をアニール炉の中に置き、1800~2200℃の温度で10~50h維持することであることを特徴とする半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5の何れか1つに記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶を用いて製造されることを特徴とする半絶縁炭化ケイ素単結晶基板。
【請求項8】
請求項
7に記載の半絶縁炭化ケイ素単結晶基板を含むエピタキシャルウェハ及び/又はトランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、少量のバナジウムをドーピングした高品質の半絶縁炭化ケイ素単結晶、基板及び製造方法に関し、半導体材料分野に属する。
【背景技術】
【0002】
半絶縁炭化ケイ素(SiC)単結晶基板は、バンドギャップが大きく、抵抗率及び熱伝導率が高く、破壊電界強度が大きい等の優れた物理的特徴を有するので、GaNベース高周波マイクロ波デバイスを製造するための好ましい半導体材料になっている。5G技術の絶え間ない発展に伴い、市場では、半絶縁炭化ケイ素単結晶基板に対するニーズの数が絶えずに拡大し、特に、大量商業化の応用は、炭化ケイ素半絶縁単結晶基板の品質に対してより高い要求を求めている。
【0003】
現在、既に産業化された半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造は、物理気相成長法(PVT)により行われ、濃度の高いバナジウム不純物を深いエネルギー準位補償中心として導入することによって、半絶縁特徴を実現する。これによって製造された炭化ケイ素単結晶は、ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶と呼ばれる。又は、結晶体の製造プロセスにおいて結晶体の中の浅いエネルギー準位不純物の濃度を下げ続け、一定の数の真性点欠陥を導入することによって、その半絶縁特徴を実現する。これによって製造された炭化ケイ素単結晶は、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶と呼ばれる。
【0004】
ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶は、製造プロセスにおいて高い濃度のバナジウムが導入されるので、結晶体においてバナジウムの析出物が形成しやすく、マイクロチューブ欠陥が誘発され、結晶体の品質が低下する。また、研究から、高い濃度のバナジウムは、デバイスの中で電子捕獲中心としてバックゲート効果を引き起こし、デバイスの性能を低下させ、ひいては、デバイスの性能を破壊することがあることが知られている。従って、基板の製造技術及びデバイスの製造技術の発展に伴い、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶基板は、段々と主流となっている。高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶の中の比較的低い浅いエネルギー準位不純物は、結晶体の中の有効キャリア濃度を減少させ、同時に一定の数の真性点欠陥を導入し、フェルミエネルギー準位を禁制帯中心に釘付けることによって、結晶体の半絶縁の特徴を実現する。しかしながら、真性点欠陥は、結晶体において比較的高い遷移速度を有し、一定の温度で(例えば、GaNエピタキシャル層の製造温度の条件で)遷移拡散して湮滅することがあるので、基板の抵抗率の不安定性を招き、同じくデバイスの性能の安定性に影響を与えてしまうことがある。
【0005】
ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶の中のバナジウムの濃度[V]は、通常、1×1017~1×1018cm-3であり、相応する窒素の濃度[N]は、1017cm-3オーダーより高く、その製造プロセスにおいて濃度の高いバナジウムがドーピングされるのに比較的高い技術障壁を有し、さらに結晶体の製造時に、大量の欠陥及び制御不可能な浅いエネルギー準位不純物の濃度が形成しやすく、結晶体の品質が制御できなくなってしまう。高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶の中の[N]は、1015cm-3オーダーであり、相応する点欠陥の濃度は、1×1015cm-3オーダー以上であり、製造プロセスにおいて窒素等の浅いエネルギー準位不純物の濃度を除去するのに、比較的高い技術コスト及び資本コストが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題を解決するために、本願は、高品質で軽くドーピングする半絶縁炭化ケイ素単結晶、基板、製造方法を提供する。当該半絶縁炭化ケイ素単結晶は、抵抗率がより安定であり、高い濃度のドープに由来する析出物の欠陥及び電子捕獲問題が存在しない。当該炭化ケイ素単結晶により製造された炭化ケイ素単結晶基板は、抵抗率均一性が高く、応力が低いので、炭化ケイ素単結晶基板は、優れた表面形状の品質を有し、後続するエピタキシャルの品質の安定性及び一致性が保障される。よって、当該炭化ケイ素単結晶基板は、デバイスの性能を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの局面においては、本願は、少量のバナジウムがドーピングされた高品質の半絶縁炭化ケイ素単結晶を提供する。当該半絶縁炭化ケイ素単結晶は、浅いエネルギー準位不純物、低い濃度の深いエネルギー準位ドーパント及び極めて少量の真性点欠陥を含む。前記深いエネルギー準位ドーパントは、前記真性点欠陥と共に浅いエネルギー準位不純物を補償し、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶の中の深いエネルギー準位ドーパントの濃度より小さい。前記真性点欠陥の濃度は、室温での炭化ケイ素単結晶の中の真性点欠陥の元の濃度であり、前記真性点欠陥の濃度は、炭化ケイ素単結晶の電気的性能の安定性に影響を与えない。
【0008】
本願に記載の真性点欠陥の元の濃度は、炭化ケイ素単結晶を成長するプロセスにおいて自熱して形成された真性点欠陥の濃度であり、炭化ケイ素単結晶の後続する処理を行う際に導入された真性点欠陥の濃度を含まない。
【0009】
本願における前記ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶の中の深いエネルギー準位のドーパントの濃度は、通常、5×1017~1×1018cm-3である。
【0010】
前記炭化ケイ素単結晶は、炭化ケイ素結晶体の中の浅いエネルギー準位不純物を下げさせると共に、炭化ケイ素単結晶の中の真性点欠陥の代わりに、少量の深いエネルギー準位ドーパントを導入することによって、その半絶縁特徴を実現することが好ましい。
【0011】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1017cm-3より小さく、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×1017cm-3より小さく、前記真性点欠陥の室温での濃度は、1×1015cm-3以下であることが好ましい。更に、前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1017cm-3より小さく、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×1017cm-3より小さく、前記真性点欠陥の室温での濃度は、1×1015cm-3より小さい。
【0012】
前記真性点欠陥は、室温での濃度が1×1014cm-3以下であることが好ましい。更に、前記真性点欠陥は、室温での濃度が1×1014cm-3より小さい。
【0013】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1015cm-3以上であり、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×1015cm-3以上であり、前記真性点欠陥は、室温での濃度が1×1014cm-3以下であることが好ましい。更に、前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1015cm-3より大きく、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×1015cm-3より大きく、前記真性点欠陥は、室温での濃度が1×1014cm-3より小さい。
【0014】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1015cm-3より大きく、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、5×1015~1×1017cm-3であり、前記真性点欠陥は、室温での濃度が1×1014cm-3以下であることが好ましい。更に、前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1015cm-3より大きく、前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、5×1015~1×1017cm-3であり、前記真性点欠陥は、室温での濃度が1×1014cm-3より小さい。
【0015】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、5×1015cm-3以上であることが好ましい。更に、前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、5×1015cm-3より大きい。
【0016】
前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1016cm-3以上であることが好ましい。更に、前記浅いエネルギー準位不純物の濃度の合計は、1×1016cm-3より大きい。
【0017】
前記深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×1016cm-3~5×1016cm-3であることが好ましい。
【0018】
前記真性点欠陥の濃度は、室温での真性濃度以下であることが好ましい。
【0019】
前記真性点欠陥の濃度は、1×1012cm-3以下であることが好ましい。更に、前記真性点欠陥の濃度は、1×1012cm-3より小さい。
【0020】
前記炭化ケイ素単結晶は、エピタキシャルアニール工程処理の前後の抵抗率の平均値の変化値が55%より小さいことが好ましい。
【0021】
前記炭化ケイ素単結晶を単結晶基板に製造することができ、エピタキシャル工程アニールは、900~1200℃の温度で0.5~10h維持することを含むことが好ましい。
【0022】
前記炭化ケイ素単結晶が900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、55%より小さいことが好ましい。
【0023】
前記炭化ケイ素単結晶が900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、50%より小さいことが好ましい。更に、前記炭化ケイ素単結晶が900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、30%より小さい。
【0024】
前記浅いエネルギー準位不純物は、元素周期表の中のIIIA及びVA主族元素の中の一種類又は複数の種類を含むことが好ましい。
【0025】
前記浅いエネルギー準位不純物は、窒素、ホウ素及びアルミニウムの中の一種類又は複数の種類を含むことが好ましい。
【0026】
前記浅いエネルギー準位不純物は、窒素、ホウ素及びアルミニウムを含むことが好ましい。
【0027】
前記深いエネルギー準位ドーパントは、元素周期表の中のVB族元素から選択される少なくとも一種類であることが好ましい。
【0028】
前記深いエネルギー準位ドーパントは、バナジウムであることが好ましい。
【0029】
前記炭化ケイ素単結晶の結晶型は、4H-SiC、6H-SiC又は3C-SiCであることが好ましい。更に、前記炭化ケイ素単結晶の結晶型は、4H-SiCである。
【0030】
前記炭化ケイ素単結晶は、抵抗率が1×1011Ω・cmより大きいことが好ましい。更に、前記炭化ケイ素単結晶は、抵抗率が3×1011Ω・cmより大きい。更に、前記炭化ケイ素単結晶は、抵抗率が6×1011Ω・cmより大きい。
【0031】
本願のもう一つの局面は、次のステップ(1)、ステップ(2)、ステップ(3)及びステップ(4)を含む、少量のバナジウムをドーピングした高品質の半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造方法を提供する。
【0032】
ステップ(1)においては、熱場装置から不純物を除去する。
【0033】
ステップ(2)においては、材料を混合させ、即ち、深いエネルギー準位ドーパントを炭化ケイ素の粉材料の中にドーピングする。
【0034】
ステップ(3)においては、結晶成長させ、即ち、ステップ(2)で製造された、深いエネルギー準位ドーパントがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を、ステップ(1)で処理された熱場装置に置いた後、結晶成長を始めさせ、結晶成長が終わった後の深いエネルギー準位ドープ中心元素の濃度は、5×1015~1×1017cm-3である。
【0035】
ステップ(4)においては、アニールし、即ち、ステップ(3)で処理された炭化ケイ素単結晶の初期製品に対してアニール処理を行うことによって、前記炭化ケイ素単結晶を製造する。
【0036】
前記半絶縁炭化ケイ素単結晶は、次のステップ(1)、ステップ(2)、ステップ(3)及びステップ(4)を含む方法により製造することが好ましい。
【0037】
ステップ(1)においては、熱場装置から不純物を除去する。即ち、黒鉛断熱構造及び黒鉛坩堝に対して高温純化を行う。
【0038】
ステップ(2)においては、材料を混合させ、即ち、深いエネルギー準位ドーパント元素を炭化ケイ素の粉材料の中にドーピングし、炭化ケイ素の粉材料の中の深いエネルギー準位ドーパントの濃度は、1×1016cm-3~1×1017cm-3である。
【0039】
ステップ(3)においては、結晶成長させ、即ち、ステップ(2)で製造された、深いエネルギー準位ドーパント元素がドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を、ステップ(1)で処理された黒鉛坩堝に置いた後、結晶成長のステップを始めさせ、結晶成長のステップが終わった後の深いエネルギー準位ドープ中心元素の濃度は、5×1015cm-3~1×1017cm-3である。
【0040】
ステップ(4)においては、アニールし、即ち、ステップ(3)で処理された炭化ケイ素単結晶に対してアニール処理を行う。
【0041】
前記結晶成長のステップは、高温前処理段階及び結晶成長段階を含むことが好ましい。
【0042】
前記深いエネルギー準位ドーパント元素は、元素周期表の中のVB族元素から選択される少なくとも一種類である。
【0043】
前記深いエネルギー準位ドーパントは、バナジウムであることが好ましい。
【0044】
前記熱場装置は、黒鉛断熱構造及び黒鉛坩堝を含むことが好ましい。更に、前記黒鉛断熱構造は、黒鉛断熱フェルトである。
【0045】
前記ステップ(1)において熱場装置から不純物を除去することは、炭化ケイ素の粉材料を黒鉛坩堝に置いた後、1800~2500℃の温度で且つ5~50mbarの圧力で20~100h維持することを含むことが好ましい。更に、前記ステップ(1)において熱場装置から不純物を除去することは、炭化ケイ素の粉材料を黒鉛坩堝に置いた後、2200~2400℃の温度で且つ20~30mbarの圧力で50~100h維持することを含む。
【0046】
前記ステップ(2)において混合された材料の中の深いエネルギー準位ドーパント元素の濃度は、1×1016cm-3~1×1017cm-3であることが好ましい。更に、前記ステップ(2)において混合された材料の中の深いエネルギー準位ドーパント元素の濃度は、2×1016cm-3~5×1016cm-3である。
【0047】
前記ステップ(3)において結晶成長のステップは、高温前処理段階及び結晶成長段階を含むことが好ましい。
【0048】
前記高温前処理段階の条件は、1200℃~2000℃の温度で且つ800~1000mbarの圧力で5~50hの時間維持することである。
【0049】
前記結晶成長段階の条件は、10~50℃/minの速度で2200℃以上の温度に上昇させると同時に、圧力を5~50mbarに降下させることである。当該結晶成長段階の方法では、黒鉛坩堝内の炭化ケイ素の粉材料を十分に昇華させることができる。
【0050】
更に、前記ステップ(3)において結晶成長のステップは、高温前処理段階及び結晶成長段階を含む。
【0051】
前記高温前処理段階の条件は、1800℃~2000℃の温度で且つ800~900mbarの圧力で30~50hの時間維持することである。
【0052】
前記結晶成長段階の条件は、10~30℃/minの速度で2200℃以上の温度に上昇させると同時に、圧力を5~50mbarに降下させることである。
【0053】
前記ステップ(4)においてアニール処理の条件は、ステップ(3)の炭化ケイ素単結晶の初期製品をアニール炉の中に置き、1800~2200℃の温度で10~50h維持することが好ましい。更に、前記ステップ(4)においてアニール処理の条件は、ステップ(3)の炭化ケイ素単結晶の初期製品をアニール炉の中に置き、2000~2200℃の温度で30~50h維持することである。
【0054】
一つの実施例としては、前記半絶縁炭化ケイ素単結晶は、次のステップ(1)、ステップ(2)、ステップ(3)及びステップ(4)を含む方法により製造される。
【0055】
ステップ(1)においては、炭化ケイ素単結晶の結晶成長に用いられる黒鉛断熱フェルト及び黒鉛坩堝に対して高温純化を行う。黒鉛坩堝内に炭化ケイ素の粉材料を置き、粉材料の粒度を50~500μmに制御し、数量を坩堝の容積の50%~80%に制御する。黒鉛坩堝を黒鉛断熱フェルトに置き、炭化ケイ素結晶成長炉に密封した後、1800~2500℃の温度で且つ5~50mbarの圧力で20~100hの高温処理を行う。当該ステップでは、坩堝内の粉材料を昇華させて高温の気体を形成し、高温の気体が散逸する過程において黒鉛坩堝及び黒鉛断熱フェルトに浸透してそこに吸着された窒素等の不純物の元素を追い出すことによって、高純度の黒鉛材料を獲得する。
【0056】
ステップ(2)においては、バナジウム元素を均一的に炭化ケイ素の粉材料の中にドーピングする。バナジウム元素は、炭化ケイ素の粉材料の合成過程におけるドープでは炭化ケイ素の粉材料と混合する方法で行っても良く、黒鉛容器の中に置いた後に混合された炭化ケイ素の粉材料に埋めても良い。後続において炭化ケイ素単結晶の中に導入されるバナジウムのドープ濃度を制御するために、炭化ケイ素の粉材料の中のバナジウムのドープ濃度を相応的に制御すべきであり、1kg毎の反応ソースの粉の中に0.01~1gのバナジウム元素を置くべきであり、反応後に炭化ケイ素の粉材料の中のバナジウムの濃度は、1×1016cm-3~1×1017cm-3オーダーであり、これにより、後続の結晶成長過程の中の少量のバナジウムの含有量の範囲を実現する。具体的には、炭化ケイ素の粉材料をバナジウムと均一的に混合した後、又は、黒鉛容器の中にバナジウムを置いた後のドープ濃度の炭化ケイ素の粉材料の反応過程については、既に開示された特許文献を参考すれば良い。
【0057】
ステップ(3)においては、反応によりドッピングされたバナジウムの一定の濃度を含有する炭化ケイ素の粉材料を獲得した後、少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を黒鉛坩堝の中に置き、結晶成長炉に密封し、結晶成長を始めさせる。結晶成長プロセスは、1200℃~2000℃、800~1000mbar、5~50hの高温前処理を行うことによって、炉の中で吸着されている窒素等の不純物を除去することを含む。本願においては、少量のバナジウム元素を導入するので、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶に比べ、本ステップの純化プロセスを比較的大きく簡略化することができ、過剰の窒素元素を除去すれば良く、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造過程に比べ、技術コスト及びシード結晶コストを下げることができる。炉の中の純化前処理を完成した後、10~30℃/minの速度で温度を2200℃以上の温度に上昇させると同時に、圧力を5~50mbarに下げさせることによって、黒鉛坩堝の中の、少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を十分に昇華させる。昇華後の気相及び放出されたバナジウム元素は、温度の勾配に伴ってシード結晶のところに転送されて結晶する。高濃度ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶の成長プロセスから分かるように、バナジウム元素は、結晶成長プロセスにおいて結晶成長の境界面の一部の結晶格子の位置を占めるので、バナジウム元素をドーピングすることを実現する。少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料の中に含まれるバナジウム元素の含有量は、1×1016cm-3~1×1017cm-3に制御されているので、気相の転送プロセスを経た後、転送プロセスの消耗及びバナジウム元素と炭化ケイ素の粉材料の再結合により、最終的に結晶体の中にドーピングされたバナジウム元素の濃度は、5×1015cm-3~1×1017cm-3にあるべきである。炭化ケイ素単結晶に入ったこれらのバナジウム元素は、ドナーとして存在することができるし、アクセプターとして存在することもできる。よって、炭化ケイ素単結晶の中の浅いエネルギー準位不純物を補償することができる。
【0058】
ステップ(4)においては、炭化ケイ素単結晶の成長が終わった後、炭化ケイ素単結晶を黒鉛坩堝から取り出す。炭化ケイ素単結晶の成長プロセスにおいては、成長境界面が比較的高い温度に晒されるため、成長境界面の一部の原子が結晶格子の位置から離れて一定の濃度の真性点欠陥を形成する。炭化ケイ素単結晶をアニール炉の中に置き、1800~2000℃の温度で10~50hのアニール処理を行うことによって、真性点欠陥を除去することができる。アニールプロセスにおいては、炭化ケイ素単結晶の中に存在する真性点欠陥は、遷移して湮滅するので、真性点欠陥の濃度は、結晶体の電気的性能に影響を与えないレベルに下がる。
【0059】
本願により製造された炭化ケイ素単結晶の抵抗率は、残留の浅いエネルギー準位不純物及び少量のバナジウム元素により決められる。浅いエネルギー準位不純物及び少量のバナジウム元素は、何れも結晶格子の位置を占め、とても高い熱安定性を有するので、本願の炭化ケイ素単結晶は、高い安定性を有する抵抗率を得ることができることを意味する。
【0060】
本願の「以下」、「以上」は、エンドポイント値を含む。
【0061】
本願のもう一つの局面は、任意の1つの上述した半絶縁炭化ケイ素単結晶又は上述した任意の1つの方法で製造された半絶縁炭化ケイ素単結晶により製造されたことを特徴とする、半絶縁炭化ケイ素単結晶基板を提供する。
【0062】
本願のもう一つの局面は、任意の1つの上述した、少量のバナジウムをドーピングした高品質の半絶縁炭化ケイ素単結晶を切断し、研磨することにより前記半絶縁炭化ケイ素単結晶基板を製造することを特徴とする、少量のバナジウムをドーピングした高品質の半絶縁炭化ケイ素単結晶基板の製造方法を提供する。
【0063】
前記炭化ケイ素単結晶基板は、エピタキシャルアニール処理の前後の抵抗率の平均値の変化値が55%より小さいことが好ましい。
【0064】
前記炭化ケイ素単結晶基板は、900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、55%より小さいことが好ましい。
【0065】
更に、前記炭化ケイ素単結晶基板は、900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、50%より小さい。更に、前記炭化ケイ素単結晶基板は、900~1200℃の温度で0.5~10h維持されるという処理の前後の抵抗率の平均値の変化値は、30%より小さい。
【0066】
本願のもう一つの局面は、任意の1つの上述した炭化ケイ素単結晶基板を含むことを特徴とするエピタキシャルウェハ及び/又はトランジスタを提供する。
【発明の効果】
【0067】
本願の有益的な効果は、次を含むが、これらに限定されない。
【0068】
1、本願の炭化ケイ素単結晶は、少量のバナジウムがドーピングされた半絶縁単結晶である。本願は、炭化ケイ素単結晶の中の浅いエネルギー準位不純物を下げると同時に、炭化ケイ素単結晶の中の真性点欠陥の代わりに、少量のバナジウムを導入することによって、炭化ケイ素単結晶の半絶縁特徴を実現する。
【0069】
2、本願の炭化ケイ素単結晶の抵抗率は、残留の浅いエネルギー準位不純物及び少量のバナジウム元素により決められる。これらの不純物は、何れも結晶格子の位置を占め、とても高い熱安定性を有するので、結晶体が高い安定性を有する抵抗率を獲得し、高い抵抗率均一性を有することができることを意味する。
【0070】
3、本願の炭化ケイ素単結晶の製造は、従来のドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶及び高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造技術を組み合わせる。炭化ケイ素単結晶の中の浅いエネルギー準位不純物の濃度及び深いエネルギー準位ドーパントの濃度を制御することによって、より高い抵抗率安定性を有する半絶縁炭化ケイ素単結晶及び基板を実現することができ、同時に高濃度のドープによる析出物の欠陥及び電子捕獲問題を避けることができるので、炭化ケイ素単結晶基板の品質を高め、当該基板を用いるデバイスの性能を向上させることができる。
【0071】
4、本願の炭化ケイ素単結晶の中の浅いエネルギー準位不純物の濃度は、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶のレベルまでに下げる必要がなく、コストを節約し、工程の難しさを下げることができる。
【0072】
5、本願の炭化ケイ素単結晶は、基板として優れた電気的な性能の安定性を有する。また、炭化ケイ素単結晶基板に対してアニールを行う前後の表面形状テストでは、湾曲度及び反り返り度の絶対値の変化は、エピタキシャル工程に求められるアニールの前後の5μmのコントロールラインより遥かに小さい。これは、炭化ケイ素単結晶基板の内部の応力が非常に小さく、基板が優れた表面形状の品質を有し、後続するエピタキシャル過程の中の基板の品質の安定性及び一致性を保障することができることを意味する。
【0073】
6、少量のバナジウムをドーピングした半絶縁単結晶/単結晶基板を製造する本願の方法は、炭化ケイ素単結晶の中の浅いエネルギー準位不純物を低減させると同時に、炭化ケイ素結晶体の中の真性点欠陥の代わりに、少量のバナジウムを導入することによって、その半絶縁特徴を実現する。当該製造方法は、技術コスト及び資本コストが低い。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【
図1】
図1は、アニール前の炭化ケイ素単結晶基板1#の抵抗率の面スキャン図である。
【
図2】
図2は、アニール後の炭化ケイ素単結晶基板1#の抵抗率の面スキャン図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下、実施例を用いて本願を詳しく説明するが、本願は、これらの実施例に限定されない。
【0076】
特に説明しない限り、本願の実施例に記載の原料等は、全て商業のルートで購入されるものである。
【0077】
本願の実施例の中の分析方法は、次の通りである。
【0078】
炭化ケイ素単結晶の結晶型テストでは、Horiba会社のHR800型共焦点ラマン分光装置を用いる。
【0079】
炭化ケイ素単結晶基板の表面形状テストでは、FRT会社のMicroprof@TTV200型全自動表面形状テスタを用いる。
【0080】
抵抗率のテストでは、Semimap会社のCOREMA-WT型非接触式半絶縁抵抗率テスタを用いる。
【0081】
元素含有量テストでは、Cameca会社のIMS7f-Auto型二次イオン質量分析計を用いる。
【0082】
本願の実施例においては、炭化ケイ素単結晶の製造工程は、次のステップ(1)、ステップ(2)、ステップ(3)及びステップ(4)を含む。
【0083】
ステップ(1)においては、熱場装置から不純物を除去する。即ち、黒鉛断熱フェルト及び黒鉛坩堝に対して高温純化を行う。
【0084】
ステップ(2)においては、材料を混合させ、即ち、バナジウム元素を炭化ケイ素の粉材料の中に均一的にドーピングし、炭化ケイ素の粉材料の中のバナジウムの濃度は、1×1016cm-3~1×1017cm-3である。
【0085】
ステップ(3)においては、結晶成長させ、即ち、ステップ(2)で製造された、バナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を、ステップ(1)で処理された黒鉛坩堝に置いた後、高温前処理段階及び結晶成長段階を含む結晶成長のステップを始めさせ、結晶成長が終わった後のバナジウムの濃度は、5×1015cm-3~1×1017cm-3である。
【0086】
ステップ(4)においては、アニールし、即ち、ステップ(3)で処理された炭化ケイ素単結晶に対してアニール処理を行うことによって、前記半絶縁炭化ケイ素単結晶を製造する。
【0087】
実施例1)
半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造(熱場装置から不純物を除去する)
熱場装置は、黒鉛坩堝及び黒鉛断熱フェルトを含む。炭化ケイ素単結晶を製造する黒鉛断熱フェルト及び黒鉛坩堝に対して高温純化を行う。高温純化のステップは、次のステップを含む:炭化ケイ素の粉材料を黒鉛坩堝内に置き、粉材料の粒度を50~500μmに制御し、数量を坩堝の容積の50%~80%に制御する。黒鉛坩堝を黒鉛断熱フェルトに置き、炭化ケイ素結晶成長炉に密封した後、一定の温度、圧力で一定の時間維持し、熱場装置から不純物の除去を行う。表1は、熱場1#、熱場2#、熱場3#、熱場4#及び熱場5#の具体的な処理温度、圧力及び時間を示しており、表1の中の熱場装置は、黒鉛坩堝及び黒鉛断熱フェルトを含む。
【0088】
【0089】
熱場1#、熱場2#、熱場3#、熱場4#及び熱場5#の処理プロセスの中の黒鉛坩堝内の炭化ケイ素の粉材料を昇華させて高温の気体を形成し、高温の気体が散逸する過程において黒鉛坩堝及び黒鉛断熱フェルトに浸透してそこに吸着された窒素等の不純物の元素を追い出すことによって、高純度の黒鉛材料を獲得する。よって、準備された熱場1#、熱場2#、熱場3#、熱場4#及び熱場5#の中の不純物が除去され、半絶縁炭化ケイ素単結晶を製造するプロセスにおいて導入される不純物を制御することができる。
【0090】
(実施例2)
半絶縁炭化ケイ素単結晶の初期製品の製造(材料を混合させ、結晶成長させる)
炭化ケイ素の粉材料にバナジウムをドーピングすることによって、少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を製造する。1kg毎の反応する炭化ケイ素の粉材料の中に0.01~1gのバナジウム元素を置くべきであり、反応後に炭化ケイ素の粉材料の中のバナジウムの濃度は、1×1016cm-3~1×1017cm-3オーダーであり、これにより、後続の結晶成長過程の中のバナジウムの含有量の範囲を実現する。
【0091】
少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を、実施例1で処理された後の熱場1#、熱場2#、熱場3#、熱場4#及び熱場5#の黒鉛坩堝の中に置き、結晶成長炉に密封し、結晶成長のステップを行う。熱場1#を例として結晶成長のステップを説明し、表2は、結晶成長のステップの具体的な結晶成長の条件を示している。
【0092】
本実施例における結晶成長のステップは、高温前処理段階及び結晶成長段階を含む。高温前処理段階では、炉の中に吸着された窒素等の不純物を綺麗に除去する。本実施例の目的は、少量のバナジウム元素を導入することであるので、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶に比べ、本ステップの純化プロセスが比較的大きく簡略化することができ、過剰の窒素元素を除去すれば良く、高純度半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造プロセスに比べ、技術コスト及びシード結晶のコストを低減することができる。
【0093】
炉の中の純化前処理が完成された後、本願の結晶成長段階のパラメータを制御することにより、黒鉛坩堝内の、少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料を十分に昇華させ、昇華後の気相及び放出されたバナジウム元素は、温度の勾配に伴ってシード結晶のところに転送されて結晶する。高濃度ドープ半絶縁炭化ケイ素単結晶の成長プロセスから分かるように、バナジウム元素は、結晶成長プロセスにおいて結晶成長の境界面の一部の結晶格子の位置を占めるので、バナジウムをドーピングすることを実現する。少量のバナジウムがドーピングされた炭化ケイ素の粉材料の中に含まれるバナジウム元素の含有量は、1×1016cm-3~1×1017cm-3に制御されているので、気相の転送プロセスを経た後、転送プロセスの消耗、バナジウムと炭化ケイ素の粉材料の再結合により、最終的に炭化ケイ素単結晶の中にドーピングされたバナジウム元素の濃度は、5×1015cm-3~1×1017cm-3である。炭化ケイ素単結晶に入ったこれらのバナジウム元素は、ドナーとして存在することができるし、アクセプターとして存在することもできる。よって、炭化ケイ素単結晶の中の浅いエネルギー準位不純物を補償することができる。
【0094】
(実施例3)
半絶縁炭化ケイ素単結晶の製造(アニール)
実施例2で製造された炭化ケイ素単結晶の初期製品に対してアニール処理を行うと、半絶縁炭化ケイ素単結晶を獲得する。熱場1#で炭化ケイ素単結晶の結晶成長のステップにより製造された炭化ケイ素単結晶の初期製品に対してアニール処理を行うことを例とし、炭化ケイ素単結晶を製造するステップを説明する。実施例2の熱場1#が表2の結晶成長のステップのそれぞれを経ることにより製造された半絶縁炭化ケイ素単結晶の初期製品に対してアニール処理を行うと、炭化ケイ素単結晶1#、炭化ケイ素単結晶2#、炭化ケイ素単結晶3#、炭化ケイ素単結晶4#及び炭化ケイ素単結晶5#のそれぞれを獲得する。表2は、具体的なアニール処理の条件を示している。
【0095】
炭化ケイ素単結晶の成長が終わった後、炭化ケイ素単結晶を黒鉛坩堝から取り出す。結晶体の成長プロセスにおいては、成長境界面が比較的高い温度に晒されるため、成長境界面の一部の原子が結晶格子の位置から離れて一定の濃度の真性点欠陥を形成する。炭化ケイ素単結晶をアニール炉の中に置き、1800~2000℃の温度で10~50hのアニール処理を行うことによって、真性点欠陥を除去することができる。アニールプロセスにおいては、炭化ケイ素単結晶の中に存在する真性点欠陥は、遷移して湮滅するので、真性点欠陥の濃度は、室温での真性濃度以下で且つ結晶体の電気的性能の安定性に影響を与えないレベルに下がる。ここに至っては、本願により製造された炭化ケイ素単結晶の抵抗率は、残留の浅いエネルギー準位不純物及び少量のバナジウム元素により決められる。浅いエネルギー準位不純物及び少量のバナジウム元素は、何れも結晶格子の位置を占め、とても高い熱安定性を有するので、本願の炭化ケイ素単結晶は、高い安定性を有する抵抗率を得ることができることを意味する。
【0096】
【0097】
結晶体の成長プロセスにおいては、成長境界面が比較的高い温度に晒されるため、成長境界面の一部の原子が結晶格子の位置から離れて一定の濃度の点欠陥を形成する。本願のアニール処理が行われた後、結晶体の中に存在する点欠陥は、遷移して湮滅するので、濃度は、結晶体の電気的性能に影響を与えないレベルに下がる。ここに至っては、結晶体の抵抗率は、残留の浅いエネルギー準位不純物及び少量のバナジウム元素により決められる。これらの不純物は、何れも結晶格子の位置を占め、とても高い熱安定性を有するので、結晶体は、高い安定性を有する抵抗率を得ることができることを意味する。
【0098】
(実施例4)
半絶縁炭化ケイ素単結晶の特性評価
実施例3で製造された炭化ケイ素単結晶の抵抗率、結晶型、不純物含有量、真性点欠陥及び抵抗率をテストした。その結果から分かるように、製造された炭化ケイ素単結晶は、半絶縁性を有し、抵抗率が高く、エピタキシャル工程のアニール(900~1200℃/0.5~10h)が行われた後の抵抗率の平均値の変化値が55%より小さい。炭化ケイ素単結晶1#、炭化ケイ素単結晶2#、炭化ケイ素単結晶3#、炭化ケイ素単結晶4#及び炭化ケイ素単結晶5#を例として、テストされた抵抗率、結晶型、不純物含有量、真性点欠陥及び抵抗率の結果を説明し、表3に示すように、浅いエネルギー準位不純物の含有量は、N、B及びAlを含む。
【0099】
【0100】
(実施例5)
半絶縁炭化ケイ素単結晶基板の性能テスト
実施例3で製造された炭化ケイ素単結晶をそれぞれ切断、研削及び研磨を行うことによって、4~8インチの半絶縁炭化ケイ素単結晶基板を獲得し、獲得された炭化ケイ素単結晶基板に対してアニール処理を行うと共に、アニール前後の炭化ケイ素単結晶基板の抵抗率及び表面形状をテストした。テスト結果から分かるように、実施例3で製造された炭化ケイ素単結晶基板は、優れた電気的性能の安定性を有し、基板の内部の応力が極めて小さい。
【0101】
炭化ケイ素単結晶1#で製造された4インチの炭化ケイ素単結晶基板1#を例として説明する。炭化ケイ素単結晶基板1#に対して1200℃で2hアニールをする。
図1は、テストした炭化ケイ素単結晶基板1#のアニール前の抵抗率の面スキャン図であり、
図2は、テストした炭化ケイ素単結晶基板1#のアニール後の抵抗率の面スキャン図である。テストした抵抗率の平均値が4.22×10
11Ω・cmから3.17×10
11Ω・cmになり、抵抗率の減衰<50%である。また、炭化ケイ素単結晶基板1#のアニール前後の表面形状をテストし、炭化ケイ素単結晶基板1#のアニール前後のWARP値が8.35μmから8.42μmになり、BOW値が9.62μmから9.87μmになり、湾曲度及び反り返り度の絶対値の変化は、エピタキシャル工程に求められるアニールの前後の5μmのコントロールラインより遥かに小さい。これは、炭化ケイ素単結晶基板の内部の応力が非常に小さく、基板が優れた表面形状の品質を有し、後続するエピタキシャル過程の中の炭化ケイ素単結晶基板の品質の安定性及び一致性を保障することができることを意味する。
【0102】
上述した内容は、本願の実施例に過ぎない。本願の保護範囲は、これらの具体的な実施例に限定されず、本願の特許請求の範囲に決められる。当業者にとっては、本願に対して様々な変更及び変化を行うことができる。本願の技術的構想及び原理以内に行われた任意の補正、置換え、改良等は、何れも本願の保護範囲内に含まれる。