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特許7235348被加工野菜の皮剥き装置、および皮剥き方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】被加工野菜の皮剥き装置、および皮剥き方法
(51)【国際特許分類】
   A23N 7/00 20060101AFI20230301BHJP
   B26D 3/26 20060101ALI20230301BHJP
   B26D 5/34 20060101ALI20230301BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20230301BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20230301BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230301BHJP
【FI】
A23N7/00 A
B26D3/26 603D
B26D5/34 Z
G01N21/27 A
G06N3/02
G06N20/00 130
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021101319
(22)【出願日】2021-06-18
(65)【公開番号】P2023000474
(43)【公開日】2023-01-04
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】392035019
【氏名又は名称】吉泉産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓輔
【審査官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-014409(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021-0009327(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第112668445(CN,A)
【文献】特開2019-187259(JP,A)
【文献】特開平06-253636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23N 1/00-17/02
G06N 3/00- 3/12
G06N 7/08-99/00
B26D 3/00- 3/30
B26D 5/00- 5/42
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一列に並んだ複数対のピーラーの間に被加工野菜を通過させて、前記ピーラーにより前記被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置であって、
前記被加工野菜の画像を撮影する撮影部と、
多層ニューラルネットワークで構成され、前記画像を入力して前記被加工野菜の種類と形状とを検出する検出部と、
前記被加工野菜を支持する支持部と、前記支持部を回転させる回転機構とを有し、前記ピーラーの間を進行する野菜取付部と、
前記被加工野菜の形状に基づいて前記被加工野菜の軸心と前記支持部との高さを一致させる支持部高さ調節機構と、
前記複数対のピーラー間の下方に配備された支持プレートと、
前記複数対のピーラーおよび前記支持プレートの高さを調節するフレーム昇降機構と、を備え
前記支持部は、前記被加工野菜の先端を前記支持プレートに当接させて、進行方向に対して下方に傾斜した状態で前記被加工野菜を支持し、
前記回転機構は、前記被加工野菜の先端を前記進行方向に対して下方に傾斜した状態で前記被加工野菜を回転させ、
前記検出部で検出した前記被加工野菜の種類および形状に基づいて、前記複数対のピーラーおよび前記支持プレートの高さを調節する、皮剥き装置。
【請求項2】
前記複数対のピーラーおよび前記支持プレートの高さの調節においては、高さ調節のための形状の閾値にヒステリシスを設ける、請求項1に記載の皮剥き装置。
【請求項3】
前記多層ニューラルネットワークはYOLOシステム(you only look once)であって、前記YOLOシステムの教師データは、前記被加工野菜の種類ごとに別々の前記教師データとして用意される、請求項1または2に記載の皮剥き装置。
【請求項4】
被加工野菜の画像を撮影する撮影工程と、
前記画像を入力して前記被加工野菜の種類と形状とを検出する検出工程と、
前記被加工野菜の形状に基づいて、前記被加工野菜の軸心と前記被加工野菜を支持する支持部との高さを調節する支持部高さ調節工程と、
前記支持部を回転させつつ、一列に並んだ複数対のピーラーの間に、前記支持部に支持された前記被加工野菜を通過させて、前記ピーラーにより前記被加工野菜の皮を剥く皮剥き工程と、を備え、
前記検出工程は多層ニューラルネットワークを用いて実行され
前記皮剥き工程では、前記被加工野菜の先端を支持プレートに当接させて、進行方向に対して下方に傾斜した状態で前記被加工野菜を支持し、かつ回転させ、
前記検出工程で検出した前記被加工野菜の種類および形状に基づいて、前記複数対のピーラーおよび前記支持プレートの高さを調節する、皮剥き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大根、人参、牛蒡などの棒状野菜等の被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置、および皮剥き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
棒状野菜等の被加工野菜の皮剥き装置として、以下の発明が出願されている。
特許文献1(特開2020-014406号公報)には、被加工野菜の回転ぶれを抑えつつ皮剥きを行なうことのできる皮剥き装置が開示されている。
特許文献1に記載の被加工野菜の皮剥き装置は、一列に並んだ複数対のピーラー間に被加工野菜を通過させて、ピーラーにより被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置であって、被加工野菜を支持する支持手段と、支持手段を回転させる回転手段とを有し、ピーラー間を進行する野菜取付部を具え、支持手段は、被加工野菜の先端を進行方向に対して下方に傾斜した状態で支持し、回転手段は、前記被加工野菜の先端を進行方向に対して下方に傾斜した状態で回転させる。
【0003】
特許文献2(特開2017-169461号公報)には、作業性に優れると共に、生産性の向上が図れる棒状野菜の皮剥き装置が開示されている。
特許文献2に記載の棒状野菜の皮剥き装置は、載置された棒状野菜を送る棒状野菜供給チェーンコンベア手段と、棒状野菜供給チェーンコンベア手段で送られてきた棒状野菜を支持する棒状野菜支持手段と、棒状野菜支持手段の両側に対向して設けられた複数個の刃物手段と、棒状野菜支持手段の上方に設けられた棒状野菜押しチェーンコンベアと、棒状野菜押しチェーンコンベアのチェーンに設けられ、棒状野菜供給チェーンコンベア手段より送られてきた棒状野菜を刃物手段に送る棒状野菜押し手段と、棒状野菜供給チェーンコンベア手段のチェーンコンベアと棒状野菜押しチェーンコンベアを同期駆動する駆動手段とを備えている。
【0004】
特許文献3(特開2014-097005号公報)には、棒状野菜を連続的に軸回転させると同時に複数のピーラーの刃を圧接した状態で連続的に棒状野菜の長手方向に移動させ、ピーラーの1回の移動で棒状野菜の全周を皮むきする皮むき装置が開示されている。
特許文献3に記載の皮むき装置は、棒状野菜の長手方向の両端を支持する野菜支持機構と、棒状野菜を軸回転させる野菜軸回転機構と、棒状野菜に刃を圧接しつつ棒状野菜の長手方向にピーラーを移動させて、棒状野菜の外周部を皮むきする皮むき機構と、を具える棒状野菜の皮むき装置であって、野菜軸回転機構は、棒状野菜を連続的に軸回転させ、皮むき機構は、棒状野菜を挟むように対向配置されて棒状野菜に対する皮むき空間を形成する一対の無端のピーラー搬送部を具えており、ピーラー搬送部は各々、複数のピーラーを並べて配置し、対称的に連続的に循環回転して、複数のピーラーを皮むき空間内にて棒状野菜の長手方向に沿って等速度で移動させる。
【0005】
特許文献4(特開2008-278807号公報)には、生産性の向上が図れる根菜類の皮剥き装置が開示されている。
特許文献4に記載の皮剥き装置は、回転駆動される回転円板と、回転円板に等角度に設けられ根菜類を支持する複数個の根菜支持機構部とを備え、回転円板の回転によって根菜支持機構部が回転して位置するステーションとして、少なくとも1個の根菜供給ステーション、複数個の根菜皮剥きステーション、根菜排出ステーションを設け、複数個の根菜皮剥きステーションには、上下動してそれぞれ根菜類の異なる周辺の皮剥きを行う皮剥き機構部を設けてなり、回転円板が1ステーション回転する毎に根菜類の皮剥きが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-014406号公報
【文献】特開2017-169461号公報
【文献】特開2014-097005号公報
【文献】特開2008-278807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大根、人参などの被加工野菜の皮剥き装置に対する課題としては、被加工野菜を皮剥き装置に1本ずつではなく連続的に供給できること、また、被加工野菜の種類、形状によらず安定して皮剥きができること、が挙げられる。
【0008】
特許文献1に記載の皮剥き装置では、供給部の無端状ベルトに被加工野菜を載置することで皮剥き装置に連続的に被加工野菜を供給することができる。しかし、被加工野菜の種類が変更された場合には、作業者がフレームの高さと角度を調整する必要がある。また、特許文献1には、被加工野菜の直径のばらつきに対して、レーザーセンサー等の計測機器を配置して測定し、中心が搬送部の野菜取付部と一致してセンタリングできるように高さ調整を行なうと記載されているが、被加工野菜の形状のばらつき等に対して安定してセンタリングができるかどうかは明確でない。
【0009】
特許文献2に記載の棒状野菜の皮剥き装置でも、供給チェーンコンベア手段に被加工野菜を載置することで皮剥き装置に連続的に被加工野菜を供給することができる。しかし、特許文献2に記載の皮剥き装置では、ばねとセンター出し板などで構成されたセンター出し手段で被加工野菜のセンター出しする構成になっており、例えば人参と大根では一部部品の交換が必要になる。
また、被加工野菜は、円柱或いは円錐状ではなく、曲がりや歪みがある。このため、軸心を進行方向に対して平行に回転させつつ被加工野菜を進行させると、進行につれて回転ぶれを起こし、上手く皮剥きを行なえないことがある。
【0010】
特許文献3および特許文献4に記載の皮むき装置はともに被加工野菜を1本ずつ皮むき装置にセットして皮をむく皮むき装置であり、複数本の被加工野菜に対して、連続的に皮剥き作業を行うことはできない。
【0011】
本発明の主な目的は、複数本の被加工野菜を供給部にセットするだけで、それぞれの被加工野菜の直径その他の形状のばらつきを検出して皮剥き装置の設定を適合させることによって、被加工野菜の形状がばらついても、安定して連続的に皮剥きを行うことができる、被加工野菜の皮剥き装置および皮剥き方法を提供することにある。
本発明の第2の目的は、被加工野菜を供給部にセットするだけで、被加工野菜の種類を検出して皮剥き装置の設定を適合させることによって、被加工野菜の種類が変更されても、それぞれの被加工野菜に対して皮剥きを好適に行うことのできる、被加工野菜の皮剥き装置および皮剥き方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)
一局面に従う皮剥き装置は、一列に並んだ複数対のピーラーの間に被加工野菜を通過させて、ピーラーにより被加工野菜の皮を剥く皮剥き装置であって、被加工野菜の画像を撮影する撮影部と、多層ニューラルネットワークで構成され、画像を入力して被加工野菜の種類と形状とを検出する検出部と、被加工野菜を支持する支持部と支持部を回転させる回転機構とを有しピーラーの間を進行する野菜取付部と、被加工野菜の形状に基づいて被加工野菜の軸心と支持部との高さを一致させる支持部高さ調節機構と、を備える。
【0013】
この場合、多層ニューラルネットワークで構成された検出部により、被加工野菜の種類と、最大の直径と中心位置とが検出され、支持部の高さを調節することによって、被加工野菜の軸心と支持部の十字刃との位置を一致させることができる。
特に、多層ニューラルネットワークで構成された検出部では、入力された被加工野菜全体の形状のうちの最大輪郭の幅を検出することから、長さが大幅に異なる大根と人参でも同じ方法で最大の直径を求めることができる。また、根元付近が最も大きい大根と中央付近が最も大きい大根とのそれぞれに対しても、正確に最大の直径を検出することができる。
また、同じ大根であっても、通常の白い大根と青首大根などではその色が異なる部分があるが、多層ニューラルネットワークで構成された検出部では、大根の教師データとして通常の白い大根と青首大根など異なる外観のデータを用意し、それらの教師データを用いて多層ニューラルネットワークに学習させることによって、外観の異なる大根であってもそれぞれの大根の最大の直径を正確に検出することができる。
したがって、一局面に従う皮剥き装置は、検出部が正確に被加工野菜の最大の直径を正確に検出し、被加工野菜の形状に基づいて被加工野菜の軸心と支持部との高さを一致させることによって、被加工野菜の形状がばらついても、安定して連続的に皮剥きを行うことができる。
【0014】
(2)
第2の発明にかかる皮剥き装置は、一局面に従う皮剥き装置において、多層ニューラルネットワークはYOLOシステム(you only look once)であって、YOLOシステムの教師データは、被加工野菜の種類ごとに別々の教師データとして用意されてもよい。
【0015】
YOLOシステムでは、教師データとして、例えば、大根と人参それぞれについて、いろいろな形状、あるいは、通常の大根と青首大根のようないろいろな外観の教師データを準備して学習させ、撮影部で撮影した被加工野菜の画像を入力することにより、物体のクラス(被加工野菜の種類、例えば、大根か人参か、に相当)とバウンダリーボックス(被加工野菜の外接四角形に相当)を出力する。したがって、検出部では、出力されたクラスにより被加工野菜の種類を検出し、バウンダリーボックスの幅により被加工野菜の最大の直径を検出することができる。
また、例えば大根の教師データとして、通常の白い大根、青首大根、少し土の付いた大根、レンズの汚れなどにより少しぼやけている大根などの画像データを用意し、それらの画像データを用いてYOLOシステムに学習させることによって、多種多様な外観の大根の最大の直径と長さとを正確に検出させることができる。また、カメラのレンズなどのメンテナンスの頻度を下げることができる。
【0016】
(3)
第3の発明にかかる皮剥き装置は、一局面または第2の発明にかかる皮剥き装置において、複数対のピーラー間の下方に配備された支持プレートをさらに備え、支持部は、被加工野菜の先端を支持プレートに当接させて、進行方向に対して下方に傾斜した状態で被加工野菜を支持し、回転機構は、被加工野菜の先端を進行方向に対して下方に傾斜した状態で被加工野菜を回転させてもよい。
【0017】
この場合、被加工野菜は、先端が支持プレートに当接し、下方に傾斜した状態で支持されて回転することで、回転ぶれや先端の浮き上がりを起こすことなく安定して進行することができる。また、被加工野菜は、先端が下方に傾斜した状態で回転してピーラー間に侵入することで、ピーラーの刃が被加工野菜に斜め方向に当たり、斜め切り効果によって皮剥きを好適に行なうことができる。
【0018】
(4)
第4の発明にかかる皮剥き装置は、第3の発明にかかる皮剥き装置において、複数対のピーラーおよび支持プレートの高さを調節するフレーム昇降機構をさらに備え、検出部で検出した被加工野菜の種類および/または形状に基づいて、複数対のピーラーおよび支持プレートの高さを調節してもよい。
【0019】
第3の発明にかかる皮剥き装置では、先端が支持プレートに当接し、下方に傾斜した状態で支持されて回転することで、被加工野菜が安定して進行し、皮剥きを好適に行うことができる。しかし、支持プレートの高さが同じ場合、この傾斜角度は、長さの短い人参等では長さの長い大根等に比べて大きくなる。また、長さが同じであっても、直径が小さい場合には傾斜角度が大きくなる。また、径の大きな大根と径の小さな人参とではピーラーの高さも調整したほうが皮をスムーズに剥くことができる。
第4の発明にかかる皮剥き装置では、検出部で検出した被加工野菜の種類および/または形状に基づいて、複数対のピーラーおよび支持プレートの高さを調節することによって、被加工野菜の傾斜角度を適切に保ち、また、ピーラーの被加工野菜に当たる位置を適切に合わせて、それぞれの被加工野菜に対して皮剥きを好適に行うことができる。
なお、フレーム昇降機構の高さの調節を頻繁に行った場合には皮剥き装置の作業効率が低下するため、被加工野菜の形状に対応して複数対のピーラーおよび支持プレートの高さを調節する場合には、複数対のピーラーおよび支持プレートの高さ調節のための閾値にヒステリシスを設け、複数対のピーラーおよび支持プレートの高さ調節の頻度を下げることが望ましい。
【0020】
(5)
他の局面に従う被加工野菜の皮剥き方法は、被加工野菜の画像を撮影する撮影工程と、
画像を入力して被加工野菜の種類と形状とを検出する検出工程と、被加工野菜の形状に基づいて、被加工野菜の軸心と被加工野菜を支持する支持部との高さを調節する支持部高さ調節工程と、支持部を回転させつつ、一列に並んだ複数対のピーラーの間に、支持部に支持された被加工野菜を通過させて、ピーラーにより被加工野菜の皮を剥く皮剥き工程と、を備え、検出工程は多層ニューラルネットワークを用いて実行される。
【0021】
この場合、多層ニューラルネットワークを用いて被加工野菜の最大の直径を検出し、検出した最大の直径の半分の高さに支持部の高さを調節することによって、被加工野菜の種類や形状によらず、支持部を被加工野菜の軸心にセンタリングすることができ、好適に被加工野菜の皮を剥くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る皮剥き装置の斜視図である。
図2】皮剥き装置の正面図である。
図3】皮剥き装置の一実施形態に係るブロック図である。
図4】皮剥き装置の供給部の上面図である。
図5】被加工野菜の根元側から撮影した写真と検出結果の一例を示す図である。
図6図2の線A-A線断面図である。
図7】無端状ベルトの拡大図であって、図7(a)は載置スペースに小径の被加工野菜、図7(b)は大径の被加工野菜を載置した状態を示した、正面側から見た模式図である。
図8】野菜取付部の斜視図である。
図9】ピーラー部の正面図である。
図10】ピーラー部の平面図である。
図11図9を線C-Cに沿って断面し、矢印方向に見た断面図である。
図12】被加工野菜の皮剥きを行なっている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る皮剥き装置10について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付す。また、同符号の場合には、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さないものとする。
本発明の皮剥き装置10により皮剥きすることのできる被加工野菜Vとして、大根、人参、牛蒡などの棒状野菜を例示できるが、これに限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る皮剥き装置10の斜視図、図2は正面図である。また、図3は皮剥き装置10の一実施形態に係るブロック図、図4は皮剥き装置10の供給部20の上面図である。
皮剥き装置10は、一実施形態として、図中、前方右側に被加工野菜Vを供給する供給部20、前方左側に供給された被加工野菜Vの皮剥きを行なうピーラー部80を併設して構成され、これらの後方には、被加工野菜Vを供給部20からピーラー部80に搬送し、ピーラー部80内で進行させる搬送部40を配置している。
【0025】
<供給部>
供給部20は、被加工野菜Vを皮剥き装置10に供給する。供給部20は、本実施形態では、ピーラー部80に供給される被加工野菜Vの進行方向に対して直交する向きに配置された無端状ベルト21とすることができる。無端状ベルト21は、プーリー25,25aに張設されており、一方のプーリー25に内装又は外付けされたコンベアモータ24の駆動により周回する。図示の実施形態では、搬送部40側に近い先端側のプーリー25にコンベアモータ24を内装している。コンベアモータ24は、図3に示すように、制御部12に電気的に接続され、搬送部40の野菜取付部50の動作に合わせて間欠回転可能となっている。なお、制御部12は、皮剥き装置10の適所に配置することができる。
【0026】
図2、および図4に示すように、供給部20の無端状ベルト21の側方には、供給部20上に載置された被加工野菜Vを撮影する、カメラおよび照明装置を備えた撮影部29が配置されている。図4に示すように撮影部29は被加工野菜Vを支持する支持部55に対して、無端状ベルト21の進行方向手前に配置され、支持部55が被加工野菜Vを支持する(十字刃で刺して固定する)時に、一つ手前の被加工野菜Vを根元側から撮影するように構成されている。
図3に示すように、撮影部29で撮影された被加工野菜Vを根元側から撮影した画像は多層ニューラルネットワークで構成される検出部30に送られ、被加工野菜Vの種類と形状(直径および中心位置32)が検出される。
本実施形態では、多層ニューラルネットワークはYOLO(you only look once)システムである。YOLOシステムの教師データとして、大根、人参、牛蒡などの被加工野菜Vの種類ごとに別々の画像データを用意し、それらの画像データを用いてYOLOシステムを学習させることによって、物体のクラス(被加工野菜Vの種類、例えば、大根か人参か、に相当)を検出させることができる。
また、例えば、大根の教師データとして、通常の白い大根、青首大根、少し土の付いた大根、レンズの汚れなどにより少しぼやけている大根などの画像データを用意し、それらの画像データを用いてYOLOシステムに学習させることによって、多種多様な外観の大根の最大の直径と中心位置32とを正確に検出させることができる。また、カメラのレンズなどのメンテナンスの頻度を下げることができる。
【0027】
図5に被加工野菜V(大根)を根元側から撮影部29で撮影した写真とYOLOで検出したバウンディングボックス31、および被加工野菜Vの中心位置32を示す。被加工野菜Vの中心位置32はバウンディングボックス31の中心に相当し、被加工野菜Vの直径はバウンディングボックス31の幅、または高さに相当する。
被加工野菜Vは一般に、長さ方向で根元付近よりも中央付近の方が直径が大きい。YOLOシステムでは、教師データとして、根元側から撮影した被加工野菜Vの画像の最大輪郭に合わせてバウンディングボックス31を設定することにより、被加工野菜Vの最大の直径、および最大の直径に対応した中心位置32を検出することができる。
また、本実施形態では検出部30の多層ニューラルネットワークとしてYOLOシステムを使用しているが、R-CNNなど、YOLOシステム以外の多層ニューラルネットワークを検出部30に用いることも可能である。
【0028】
皮剥き装置10の検出部30にレーザーセンサーを用いることに対するYOLOシステムを用いることの利点は以下の通りである。
レーザーセンサーは被加工野菜Vの長手方向に直交する方向に帯状のレーザー光を照射し、その反射光をCCDで受光して三角測距の原理で計測対象物の形状プロファイルを生成する。したがって、レーザーを照射した部分の形状は正確に測定することができる。しかし、被加工野菜Vが大根の場合と人参の場合とで、長手方向において最大の直径となる位置が異なるため、被加工野菜Vの種類ごとにレーザーセンサーの位置を調整する必要がある。また、同じ大根でも支持部55が支持する根元付近が直径が大きいものと根元よりも中央付近の方が直径が大きいものとがあり、長手方向の一定位置で測定した場合、最大の直径を正確に測ることができない。
これに対して、本発明の撮影部29と多層ニューラルネットワークの検出部30とからなる検出方法では、根元側から撮影した被加工野菜Vの画像の最大輪郭に相当するバウンディングボックス31の大きさにより被加工野菜Vの最大の直径を検出できるため、被加工野菜Vの種類および形状によらず、被加工野菜Vの最大の直径を正確に検出することができる。
【0029】
また、皮剥き装置10の検出部30に、従来の、画像データを用いた検出方法に対するYOLOシステムを用いることの利点は以下の通りである。
従来は、画像データに対して閾値を設定し、例えば、閾値以下の領域は被加工野菜V、閾値以上の領域は背景とすることによって被加工野菜Vの形状を検出していた。しかし、この場合には、色の異なる人参と大根とでは閾値を設定しなおす必要がある。また、同じ大根でも青首大根の場合は根元側が青く、閾値の値によってはその形状を正確に検出できない場合もある。
これに対して、本発明の撮影部29と多層ニューラルネットワークの検出部30とからなる検出方法では、被加工野菜Vの種類ごとに別々の教師データとして用意するとともに、大根の教師データとして通常の白い大根と青首大根など異なる外観のデータを用意し、それらの教師データを用いて多層ニューラルネットワークに学習させることによって、被加工野菜Vの種類と形状とを正確に検出することができる。
検出された被加工野菜Vの種類に応じて、支持プレート91の高さ、傾斜角度、支持部55の回転数、各ピーラー81の付勢力などを自動的に調整可能としてもよい。例えば、大根、人参、胡瓜、かぶ、芋など野菜の分類を検出して調整してもよいし、同じ大根でも秋大根と冬大根などのように、品種、収穫時期、産地なども検出してさらに詳細に調整してもよい。
【0030】
無端状ベルト21は、図6に示すように外周面の幅方向に複数のガイド板が突設されており、ガイド板間に形成される保持スペースSに被加工野菜Vが載置される。ガイド板は、図7に拡大して示すように、高さの低い一対の第1ガイド板22,22と、これらの両側に配置され、第1ガイド板22,22よりも高く突出した一対の第2ガイド板22a、22aから構成することができる。高さの異なるガイド板によって、図7(a)中、線V1で示すように、直径の小さい被加工野菜Vは第1ガイド板22,22間に安定して保持することができ、図7(b)中、線V2で示すように、直径の大きい被加工野菜Vは、側方を第2ガイド板22a、22a、下方を第1ガイド板22,22によって安定して保持される。なお、図1に示すように、第1ガイド板22,22は無端状ベルト21の幅方向全長ではなく、一部のみに設けてもよい。
【0031】
無端状ベルト21は、図1図2及び図6に示すように、複数の保持スペースSが上面側に存する長さに構成され、同時に複数の被加工野菜Vを各保持スペースSに載置することができる。従って、作業者は、複数の被加工野菜Vを無端状ベルト21に載置し、これら被加工野菜Vがなくなるまで皮剥き装置10から離れることができ、作業効率を可及的に向上することができる。また、無端状ベルト21は、ピーラー部80に供給される被加工野菜Vの進行方向に対して直交する向きに配置しているから、皮剥き装置10の長手方向長さが長くなることはなく、皮剥き装置10のコンパクト化を図ることができる。
【0032】
供給部20は、被加工野菜Vの直径に応じて、搬送部40側の高さを上下に調節する支持部高さ調節機構27を具える。支持部高さ調節機構27は、例えば、カム片を支持部高さ調節モータ28で作動させる構成や、アクチュエーター等から構成することができ、制御部12により制御される。
供給される被加工野菜Vは、図2に示された撮影部29で撮影され、撮影された画像が検出部30に送られ、検出部30のYOLOシステムで幅および高さ(被加工野菜Vの直径に相当)が検出される。そして、支持部高さ調節機構27は、検出部30により検出された直径に応じて供給部20の高さを上下動する。具体的には、支持部高さ調節機構27は、被加工野菜Vの中心位置32が、次に説明する搬送部40の野菜取付部50の支持部55と一致してセンタリングできるように高さ調節を行なう。
【0033】
<搬送部>
供給部20から供給された被加工野菜Vは、図1等に示すように、搬送部40に配置された野菜取付部50に装着されて、ピーラー部80に搬送される。野菜取付部50は、図2及び図6に示すように、皮剥き装置10の後方側に配置された搬送部ケーシング41内に左右に長く周回するよう長円状に張設された無端状の搬送用チェーン44に取り付けられている。搬送用チェーン44は、図2に示すように、両側のギア45,45aに噛合しており、一方のギア45にはたとえば搬送用駆動手段となる搬送用駆動モータ46が連繋されている。搬送用駆動モータ46は、図3に示すように、制御部12に電気的に接続され、搬送用駆動モータ46を駆動することで、搬送用チェーン44に取り付けられた野菜取付部50は長円状に周回する。搬送部ケーシング41の前面には、図1図2等に示すように、搬送用チェーン44の周回軌道の内周側に対応する位置に長円状の溝42が形成されており、野菜取付部50が前方に向けて延出している。
【0034】
また、搬送用チェーン44の下周回後方であって、後述するピーラー部80と対向する位置には、図2に示すように、野菜取付部50の回転機構53を駆動する回転駆動手段が配置されている。回転駆動手段は、搬送用チェーン44に沿って配設された長軸ギア60と、長軸ギア60を回転させる長軸ギア駆動モータ61を具える。長軸ギア60は、長手方向周面にギア溝が刻設されている。また、長軸ギア駆動モータ61は、制御部12に電気的に接続される(図3)。
【0035】
野菜取付部50は、搬送用チェーン44に所定間隔で複数装着され、被加工野菜Vを供給部20からピーラー部80に搬送すると共に、ピーラー部80内で被加工野菜Vを回転させて、ピーラー部80により皮剥きを行なう。
【0036】
野菜取付部50は、図8に示すように、先端が下方に向けて屈曲した略L字形状の搬送アーム51の基端近傍を搬送用チェーン44に取り付けて構成される。
【0037】
搬送アーム51の基端には、長軸ギア60と噛合可能な位置に、次に説明する支持部55を回転させる回転機構53の一部を形成するギア54が支持されている。搬送アーム51は、内部が中空に形成されており、中空部には、ギア54と動力伝達可能にかさ歯車、軸等(何れも図示せず)が配備されており、搬送アーム51の下向きに屈曲した先端に進行方向に向けて装着された被加工野菜Vを保持する支持部55を回転可能としている。すなわち、ギア54が回転すると、回転機構53を介して支持部55が従動して回転する。
【0038】
図示の実施形態では、支持部55は十字刃であり、被加工野菜Vは、十字刃に刺さって支持部55に支持される。
【0039】
搬送アーム51には、支持部55よりも上部に舟形の開き部材57が装着されており、被加工野菜Vを支持部55に装着しない状態で野菜取付部50をピーラー81間に進入させたときに、開き部材57がピーラー81,81を押し開いて、支持部55とピーラー81との衝突を防止する。
【0040】
また、野菜取付部50を、周回経路上で安定して進行させるために、搬送アーム51の基端にはローラー58が転動自在に装着されている。ローラー58は、図6に示すように、野菜取付部50の周回移行路に沿って、搬送部ケーシング41の背面側内面に設けられた長円状の案内溝47内を走行する。
【0041】
搬送用駆動モータ46を駆動すると搬送用チェーン44が周回し、図2に示すように、野菜取付部50は、供給部20からピーラー部80を通って旋回し、再度供給部20に戻る長円の経路を進行する。
【0042】
野菜取付部50は、支持部55がピーラー部80を通過する間、図2及び図6に示すように、長軸ギア駆動モータ61により回転する長軸ギア60にギア54が噛合すると、ギア54が回転し、回転機構53を介して支持部55が従動回転する。支持部55の回転数は、長軸ギア駆動モータ61の回転数を制御することで、自在に調整することができる。なお、ピーラー部80を通過した後、再度供給部20を通過する間は、ギア54は長軸ギア60と噛合していないため、支持部55が回転することなく野菜取付部50は進行する。
【0043】
<ピーラー部>
ピーラー部80は、図1等、より詳細には、図9乃至図11に示すように、複数対のピーラー81,81を並べて構成される。各ピーラー81,81は、平行に配置されたフレーム90,90にそれぞれ揺動可能に支持されており、被加工野菜Vの進行方向に向けて観音開き可能となっている。なお、フレーム90,90は、図2中符号90aで示すカム片90aにより上下方向に高さ調節が可能である。カム片90aは、上記した支持部高さ調節機構27と同様の構成からなるフレーム昇降機構93により作動する。したがって、フレーム昇降機構93によってカム片90aを作動させることにより、フレーム90,90、フレーム90,90、に支持された各ピーラー81,81、および、フレーム90,90の略中央で、ピーラー81,81よりも下方に配備された、平らな支持プレート91(図12参照)を昇降することができる。フレーム昇降機構93はフレーム昇降調節モータ93aに駆動される。
大根と人参のように野菜の径や長さが大幅に変化した場合、搬送部40の野菜取付部50の支持部55の高さを被加工野菜Vの中心位置32と一致するように調節を行なうだけでなく、各ピーラー81,81、および支持プレート91の高さも調整することが望ましい。本実施形態では、検出部30で検出した野菜の種類に合わせて、制御部12がフレーム昇降調節モータ93aを制御し、フレーム90,90、各ピーラー81,81、および支持プレート91の高さを調整する。
したがって、検出部30が検出した野菜種別に応じて、フレーム90等が昇降して高さが調整され、また、検出30部が検出した中心位置32に応じて、搬送部40に対する支持部55の高さが調整される。
また、支持プレート91とフレーム90,90間には、剥かれた皮が落下する隙間92が形成されている。隙間92の下には、図1等に示すように、剥かれた皮を集めるダストボックス15を配置しておくことができる。また、ピーラー部80の下流側には、図1図2等に示すように、皮剥きされた被加工野菜Vが排出される野菜排出案内板16が取り付けられている。
【0044】
ピーラー81,81は、図9乃至図11に示すように、フレーム90,90の中央、具体的には支持プレート91の上部で、被加工野菜Vの進行方向に向けて傾斜した状態で、先端どうしが互いに接近するよう配置されている。各ピーラー81は、ピーラーアーム83の先端にピーラー刃82を具える。ピーラー刃82は、たとえば、樹脂製のカバー部86を介してピーラーアーム83に装着することができ、刃先が被加工野菜Vの進行方向とは逆向きに配置され、ピーラー81,81間を通過する被加工野菜Vの皮を剥く。
【0045】
ピーラーアーム83は、基端にフレーム90へ枢支される軸部84を有する。ピーラー81は、フレーム90に対して付勢手段85によってそれぞれ内向きに付勢される。たとえば、付勢手段85として、トーションバネを例示することができ、トーションバネの一端を軸部84又はピーラーアーム83に装着し、他端をフレーム90に取り付けることで、ピーラー81を内向きに付勢している。
【0046】
ピーラー81,81は、ピーラー81,81間に被加工野菜Vが進入しピーラー81,81が付勢手段85の付勢力に抗して開いたときに、後方のピーラー81,81に当接し(図10及び図11のP参照)、後方のピーラー81,81を押し広げることができる間隔に配置される。たとえば、カバー部86を後方に向けて凸形状とすることで、開いたピーラー81,81のカバー部86,86が当たりとなって後方のピーラー81,81に当接し、後方のピーラー81,81を押し広げる。このように、前方のピーラー81,81が後方のピーラー81,81を押し広げる構成とすることで、各列のピーラー81,81の間隔を短くすることができ、皮剥き装置10の小型化を達成できる。また、前方のピーラー81は、後方のピーラー81の付勢力を利用することができるから、皮剥き能力の向上を図ることができると共に、付勢手段85の付勢力を小さくすることができ、付勢手段85の小型化、ひいてはピーラー81の小型化を達成できる。
【0047】
一番手前に配置されるピーラー81,81は、後述するとおり、被加工野菜Vを支持部55に深く突き刺すため、また、被加工野菜Vの進行方向を規定して回転ぶれすることなく被加工野菜Vをピーラー81,81間で進行させるために、付勢手段85による付勢力は、後方のピーラー81に比して強くすることが望ましい。すべてのピーラー81に同じ付勢力の付勢手段85を採用する場合には、たとえば、一番手前のピーラー81,81の先端に磁石(図示せず)を配置し、磁力によってピーラー81,81どうしを引き寄せ合うことで、付勢力を高めるようにしてもよい。
【0048】
一番後方に配置されるピーラー81には、図11に示すように、ピーラー刃82の側方にガイド87を形成している。ガイド87は、剥かれた皮が被加工野菜Vに付着して下流側に引っ張られることを防止し、支持プレート91とフレーム90との間に剥かれた皮を落下させる案内の役割をなす。これにより、皮の落下位置をコントロールすることができ、フレーム90等に皮が残らず、清掃性を向上できる。たとえば、ガイド87は、カバー部86に装着され、外向きに湾曲した形状とすることができる。
【0049】
本発明の皮剥き装置10は、図1等に示すように、搬送部ケーシング41の適所に設けられた操作部13によって操作される。操作部13や、上記したコンベアモータ24、支持部高さ調節モータ28、撮影部29、検出部30,搬送用駆動モータ46、長軸ギア駆動モータ61、フレーム昇降調節モータ93aは、図3に示すように、制御部12に電気的に接続されている。制御部12は、皮剥き装置10の各種制御プログラム等が記憶されており、操作部13を操作することで、プログラムに応じて、たとえば以下の要領でモータ等が駆動する。
【0050】
供給部20では、制御部12は、コンベアモータ24を間欠運転させて、野菜取付部50が供給部20の上を通過する際には無端状ベルト21の回転を止め、次の野菜取付部50が供給部20に到達するまでに保持スペースSが1つ進むように回転させる。
【0051】
搬送部40では、制御部12は、搬送用駆動モータ46を連続的に運転させて、搬送用チェーン44を走行させ、野菜取付部50を周回させる。また、制御部12は、長軸ギア駆動モータ61を連続的に運転させて、長軸ギア60を回転させる。長軸ギア駆動モータ61は、ピーラー部80を野菜取付部50が通過する間に、長軸ギア60により回転する支持部55が1周乃至複数周する回転速度に調整することができる。支持部55の回転数は、被加工野菜Vの硬さ、皮の厚さ、剥く皮の量などにより決定され、たとえば、被加工野菜Vを厚く皮剥きする場合には、支持部55が2周以上回転するように長軸ギア駆動モータ61の回転速度を調整すればよい。本発明では、支持部55の回転数を長軸ギア駆動モータ61により任意に決定することができ、被加工野菜Vの種類、皮剥き厚さなどに合わせた加工が可能となる。
【0052】
供給部20には、作業者によって保持スペースSに順次被加工野菜Vが載置される。保持スペースSには、先端がピーラー部80側となるように被加工野菜Vを配置する。無端状ベルト21には、複数の保持スペースSが存するから、作業者は、一度に複数の被加工野菜Vを保持スペースSに載置することができ、被加工野菜Vを載置した後、皮剥き装置10から離れることができ、1本ずつ被加工野菜Vを載置する場合に比べて、作業効率を高めることができる。
【0053】
保持スペースSには、第1ガイド板22および第2ガイド板22aが設けられているから、載置された被加工野菜Vは、図7(a)中、線V1で示すように、直径が小さい場合には第1ガイド板22,22間に安定して保持され、直径が大きい場合には、図7(b)中、線V2で示すように下方が第1ガイド板22,22に当接して第2ガイド板22a,22a間に安定して保持される。
【0054】
コンベアモータ24の間欠駆動により、無端状ベルト21上の保持スペースSが1つ進み、保持スペースSが野菜取付部50の移行路に到達した状態で、コンベアモータ24は停止して、撮影部29により被加工野菜Vの画像が撮影され、検出部30により被加工野菜Vの直径が検出される。制御部12は、検出部30により検出された被加工野菜Vの直径に基づき、被加工野菜Vの軸心が支持部55の軸心と一致するように支持部高さ調節モータ28を駆動し、無端状ベルト21の先端の高さを調節(センタリング)する。
【0055】
この状態で、搬送用駆動モータ46により周回する搬送用チェーン44に装着された野菜取付部50が供給部20の先端の保持スペースS上を通過する。野菜取付部50には、支持部55が進行方向先端に取り付けられており、この支持部55が保持スペースS上で待機する被加工野菜Vの軸心に突き刺さり、被加工野菜Vを支持した状態で野菜取付部50が前進する。支持部55への被加工野菜Vの刺さりが浅い場合であっても、本発明では、次に説明するように、ピーラー部80の最初のピーラー81,81の付勢力を強くしているから、野菜取付部50を前進させることで、被加工野菜Vの先端がピーラー部80の最初のピーラー81,81に当たり、支持部55は被加工野菜Vに深く突き刺さる。
【0056】
野菜取付部50は、被加工野菜Vを支持部55に装着した状態でさらに前進する。被加工野菜Vは、基端を支持部55に支持されているが、先端は自由であるから、その重みによって下方に垂れる。しかしながら、ピーラー部80には、被加工野菜Vの移行路下方に平らな支持プレート91が配置されているから、被加工野菜Vは、図12に示すように、先端が支持プレート91に当接しつつ、一点鎖線Eのように、若干先端が下方に傾いた状態で進行する。
この場合、被加工野菜Vの先端が支持プレート91に当接し、下方に傾斜した状態で支持されて回転することで、被加工野菜Vが安定して進行し、皮剥きを好適に行うことができる。しかし、支持プレート91の高さが同じ場合、この傾斜角度は、長さの短い人参等では長さの長い大根等に比べて大きくなる。また、長さが同じであっても、直径が小さい場合には傾斜角度が大きくなる。
本実施形態の皮剥き装置10では、検出部30で検出した被加工野菜Vの種類および/または形状に基づいて、フレーム昇降機構93により複数対のピーラー81および支持プレート91の高さを調節することによって、被加工野菜Vの傾斜角度を適切に保ち、それぞれの被加工野菜Vに対して皮剥きを好適に行うことができる。
なお、複数対のピーラー81および支持プレート91の高さの調節を頻繁に行った場合には皮剥き装置10の作業効率が低下するため、被加工野菜Vの形状に対応して複数対のピーラー81および支持プレート91の高さを調節する場合には、複数対のピーラー81および支持プレート91の高さ調節のための被加工野菜Vの形状(直径)の閾値にヒステリシスを設け、複数対のピーラー81および支持プレート91の高さ調節の頻度を下げることが望ましい。
また、本発明における被加工野菜Vの先端とは、被加工野菜Vの頂点(最も尖った一点)のみをいうのではなく、頂点に向かって直径が小さくなる傾斜部分の全体または一部を含むものである。したがって、支持プレート91には、被加工野菜Vの頂点が当接していてもよいし、頂点に向かって直径が小さくなる傾斜部分の一部が当接していてもよい。
【0057】
被加工野菜Vの先端が、ピーラー部80の一番手前のピーラー81,81に当たると、被加工野菜Vが付勢手段85の付勢力に抗してピーラー81,81を押し広げる。このとき、被加工野菜Vが支持部55に深く刺さっていない場合であっても、被加工野菜Vがピーラー81,81に当たることで、支持部55を深く突き刺すことができる。
【0058】
被加工野菜Vの先端が、ピーラー81,81に当接するのとほぼ同時に、野菜取付部50は、ギア54が回転する長軸ギア60と噛合し、回転機構53を介して支持部55が回転する。そして、支持部55に支持された被加工野菜Vも共に回転する。被加工野菜Vが野菜取付部50により、回転しながらピーラー81,81間を進行することで、被加工野菜Vは、ピーラー刃82,82によって皮剥きされる。
【0059】
さらに被加工野菜Vが進行すると、一番手前のピーラー81,81は被加工野菜Vによりさらに開放し、開き角度が大きくなると、図10及び図11にPで示すように、ピーラー81,81のカバー部86が後方に位置するピーラー81,81と当接する。これにより、一番手前のピーラー81,81は、自らの付勢手段85の付勢力に加えて、当接したピーラー81,81の付勢手段85の付勢力が加わり、被加工野菜Vにより強く当接し、皮剥きが行なわれる。とくに、被加工野菜Vの直径が大きい場合ほど、ピーラー81,81の開き角度は大きくなり、後方のピーラー81,81の付勢力を利用でき、ピーラー刃82,82を被加工野菜Vに強く押し当てて皮剥き能力を高めることができる。
【0060】
被加工野菜Vの先端が、一番手前のピーラー81,81を通過すると、二番目に位置するピーラー81,81を押し広げ、これらのピーラー刃82,82によって皮剥きが進む。剥かれた皮は、ピーラー刃82,82から支持プレート91の両側の隙間92からダストボックス15に落下する。
【0061】
被加工野菜Vを、図12に一点鎖線Eで示すように、先端が斜め下方に傾いた状態で支持プレート91に当接しながら、回転(矢印F)、進行(矢印G)させることで、被加工野菜Vがピーラー部80から浮き上がることなく、滑らかに回転ぶれすることなく安定して回転する。このため、きれいに、効率的な皮剥きを行なうことができる。とくに、被加工野菜Vは、曲がりや歪みがあるが、先端を斜め下方に傾けた状態で回転させることで、滑らかな回転を維持できる。また、被加工野菜Vが斜め下向きの状態でピーラー部80に当たることで、斜め切り効果により、ピーラー刃82,82が被加工野菜Vに食い込む抵抗を小さくすることができ、きれいに皮剥きを行なうことができる。
【0062】
被加工野菜Vを回転させつつ進行させることにより、被加工野菜Vは、順次ピーラー81,81を押し広げつつ、ピーラー刃82,82により皮剥きが行なわれる。そして、被加工野菜Vが一番後方のピーラー81,81に達する。一番後方のピーラー81,81には、ピーラー刃82にガイド87が取り付けられているから、剥かれた皮は、ガイド87に案内されて、支持プレート91とフレーム90との間の隙間92に落下する。従って、剥かれた皮が被加工野菜Vに付着したまま、皮剥きが完了することはない。
【0063】
搬送用チェーン44は、ピーラー部80の後方で上向きに周回しているから、野菜取付部50は、ピーラー部80を通過した後、支持部55が上向きに傾動する。これにより、皮剥きが完了した被加工野菜Vは、自重によって支持部55である十字刃から外れ、野菜排出案内板16に沿って落下する。被加工野菜Vの落下位置には、皮剥きされた被加工野菜Vが投入されるケースなどを置いておくことで、ケース内に順次被加工野菜Vが収容される。
【0064】
なお、供給部20の保持スペースSに被加工野菜Vが載置されていない場合には、空の野菜取付部50がピーラー81,81間を進行する。このとき、ピーラーアーム83に設けられた舟形の開き部材57が、ピーラー81,81を押し広げつつ進行するから、ピーラー刃82,82に支持部55が当接することはなく、ピーラー刃82が傷むこともない。
【0065】
ピーラー部80を通過した野菜取付部50は、周回する搬送用チェーン44により、旋回し、再度、供給部20に戻る。
【0066】
本発明では、被加工野菜Vの回転数、すなわち、支持部55の回転数を、長軸ギア駆動モータ61の回転速度により、適宜調整することができる。従って、長軸ギア駆動モータ61の回転速度を制御することで、被加工野菜Vの回転数を調整することで、皮剥き量の増減、或いは、被加工野菜Vの硬さなどに応じて、皮剥きの厚みなどに対する細かなニーズに対応することができる。
【0067】
本発明では、野菜取付部50を進行させる搬送部40、支持部55を回転させる長軸ギア60及び長軸ギア駆動モータ61は、被加工野菜Vの進行移行路上に配置せず、進行移行路から後退した位置に設けている。従って、搬送用チェーン44や長軸ギア60等の潤滑油が被加工野菜Vに落下し付着することはない。また、剥かれた皮が搬送用チェーン44や長軸ギア60に付着することもないから、これらの動作安定性も確保できる。
【0068】
本発明において、ピーラー81が『ピーラー』に相当し、被加工野菜Vが『被加工野菜』に相当し、皮剥き装置10が『皮剥き装置』に相当し、撮影部29が『撮影部』に相当し、検出部30が『検出部』に相当し、支持部55が『支持部』に相当し、回転機構53が『回転機構』に相当し、野菜取付部50が『野菜取付部』に相当し、支持部高さ調節機構27が『支持部高さ調節機構』に相当し、支持プレート91が『支持プレート』に相当し、フレーム昇降機構93が『フレーム昇降機構』に相当する。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0070】
10 皮剥き装置
27 支持部高さ調節機構
29 撮影部
30 検出部
40 搬送部
50 野菜取付部
53 回転機構
55 支持部
81 ピーラー
91 支持プレート
93 フレーム昇降機構
V 被加工野菜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12