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特許7235357測位支援装置、測位支援方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】測位支援装置、測位支援方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/07 20100101AFI20230301BHJP
   G01S 19/41 20100101ALI20230301BHJP
【FI】
G01S19/07
G01S19/41
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021543697
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2020031511
(87)【国際公開番号】W WO2021044866
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019162454
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】柏木 真保
(72)【発明者】
【氏名】神田 優花
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0024248(US,A1)
【文献】特開2011-112576(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103455702(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00-19/55
G01C 21/26-21/36
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローカル補正情報を生成する生成側装置に設けられる測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定手段と、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する、第一の正確度を算出する、第一の正確度算出手段と、
前記第一の正確度を用いて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出手段と、
を有することを特徴とする測位支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定する、第二の推定手段と、
推定した前記対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する、第二の正確度を算出する、第二の正確度算出手段と、
を有することを特徴とする測位支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測位支援装置であって、
前記第二の正確度を用いて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出手段
を有することを特徴とする測位支援装置。
【請求項4】
ローカル補正情報を利用する利用側装置に設けられる測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出手段
を有することを特徴とする測位支援装置。
【請求項5】
請求項に記載の測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルにより推定された対流圏遅延量と、測位演算により算出された対流圏遅延量と、を用いて算出された第二の正確度に基づいて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出手段
を有することを特徴とする測位支援装置。
【請求項6】
ローカル補正情報を生成する生成側装置の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定し、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する第一の正確度を算出
前記第一の正確度を用いて、前記電離層遅延量の精度を算出する、
ことを特徴とする測位支援方法。
【請求項7】
請求項に記載の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定し、
推定した前記対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する、第二の正確度を算出する、
ことを特徴とする測位支援方法。
【請求項8】
請求項に記載の測位支援方法であって、
前記第二の正確度を用いて、前記対流圏遅延量の精度を算出する
ことを特徴とする測位支援方法。
【請求項9】
ローカル補正情報を利用する利用側装置の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、
ことを特徴とする測位支援方法。
【請求項10】
請求項に記載の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルにより推定された対流圏遅延量と、測位演算により算出された対流圏遅延量と、を用いて算出された第二の正確度に基づいて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、
ことを特徴とする測位支援方法。
【請求項11】
ローカル補正情報を生成する生成側装置のコンピュータに、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定し、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する第一の正確度を算出
前記第一の正確度を用いて、前記電離層遅延量の精度を算出する、
処理を実行させるプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムであって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定し、
推定した前記対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する第二の正確度を算出する、
処理を実行させるプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムであって、
前記第二の正確度を用いて、前記対流圏遅延量の精度を算出する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項14】
ローカル補正情報を利用する利用側装置のコンピュータに、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量とを用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、
処理を実行させるプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のプログラムであって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルにより推定された対流圏遅延量と、測位演算により算出された対流圏遅延量とを用いて算出された第二の正確度に基づいて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位を支援する測位支援装置、測位支援方法に関し、更には、これらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星測位を精度よく行うためには、(1)衛星の軌道誤差、(2)衛星の時計誤差、(3)電離層による遅延、(4)対流圏による遅延、(5)信号遮蔽、(6)マルチパスなどの誤差要因を考慮しなければならない。
【0003】
そこで、精密単独測位(PPP:Precise Point Positioning)などの技術が提案されている。ところが、衛星から受信した情報だけを用いた場合、高精度な衛星測位を行うことは困難である。
【0004】
近年では、衛星測位の精度を更に向上させるために、MADOCA(Multi-GNSS(Global Navigation Satellite System) Advanced Demonstration tool for Orbit and Clock Analysis)-PPPなどの技術が提案されている。
【0005】
具体的には、(1)衛星の軌道誤差と(2)衛星の時計誤差については、MADOCA補正情報を用いて誤差を低減している。(3)電離層による遅延の誤差と(4)対流圏による遅延の誤差については、ローカル補正情報を用いて誤差を低減している。(5)信号遮蔽と(6)マルチパスにより生じる誤差については、高仰角の衛星(例えば、準天頂衛星など)から発信された電波を用いて誤差を低減している。
【0006】
関連する技術として特許文献1には、衛星測位の精度を向上させる測位装置が開示されている。特許文献1の測位装置によれば、衛星回線及び地上回線から取得した補正情報(グローバル補正情報、ローカル補正情報)と、衛星から発信された測位信号に基づいて生成された観測データとを用いて測位演算処理を実施する。また、特許文献1の測位装置は、新規に取得した補正情報と、既に記憶されている補正情報との内容(対象衛星、情報種別)が重複する場合、それぞれの信頼度を算出して、信頼度の高い方の情報を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-205244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された測位装置は、ローカル補正情報を保持している時間(情報の鮮度)に加えて、地方生成局と測位装置との距離、又は、地方生成局の測位結果を母集団とする標準偏差を用いて、信頼度を算出し、算出した信頼度に応じてローカル補正情報を更新しているが、電離層遅延量、対流圏遅延量の精度を向上させるものではない。
【0009】
本発明の目的の一例は、測位精度を向上させる測位支援装置、測位支援方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における測位支援装置は、
ローカル補正情報を生成する生成側装置に設けられる測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定部と、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する、第一の正確度を算出する、第一の正確度算出部と、
を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における測位支援装置は、
ローカル補正情報を利用する利用側装置に設けられる測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出部
を有することを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における測位支援方法は、
ローカル補正情報を生成する生成側装置の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定ステップと、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する、第一の正確度を算出する、第一の正確度算出ステップと、
を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における測位支援方法は、
ローカル補正情報を利用する利用側装置の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出ステップ
を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは
ローカル補正情報を生成する生成側装置のコンピュータに、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定ステップと、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する、第一の正確度を算出する、第一の正確度算出ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【0015】
さらに、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは
ローカル補正情報を利用する利用側装置のコンピュータに、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出ステップ
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、測位精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、測位支援装置の一例を説明するための図である。
図2図2は、測位支援装置を有するシステムの一例を説明するための図である。
図3図3は、生成側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。
図4図4は、利用側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。
図5図5は、測位支援装置を有するシステムの一例を説明するための図である。
図6図6は、生成側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。
図7図7は、利用側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。
図8図8は、測位支援装置を実現するコンピュータの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一の実施の形態)
以下、第一の実施の形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
【0019】
[装置構成]
最初に、図1を用いて、第一の実施の形態における測位支援装置1の構成について説明する。図1は、測位支援装置の一例を説明するための図である。
【0020】
図1に示す測位支援装置は、測位精度を向上させる装置である。また、図1に示すように、測位支援装置は、推定部2と、正確度算出部3、遅延精度算出部4とを有する。
【0021】
このうち、推定部2は、機械学習を用いて生成された電離層遅延量を表す電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定部2aを有する。また、推定部2は、機械学習を用いて生成された対流圏遅延量を表す対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定する、第二の推定部2bを有する。
【0022】
電離層遅延モデルは、例えば、過去の測位において収集したデータを入力として機械学習をし、電離層遅延量を出力するモデルである。また、対流圏遅延モデルは、例えば、過去の測位において収集したデータを入力として機械学習をし、対流圏遅延量を出力するモデルである。機械学習は、例えば、回帰分析、ディープラーニングなどを用いた学習が考えられる。
【0023】
正確度算出部3は、推定した電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する、第一の正確度を算出する、第一の正確度算出部3aを有する。また、正確度算出部3は、推定した対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する、第二の正確度を算出する、第二の正確度算出部3bを有する。
【0024】
第一の正確度は、例えば、推定した電離層遅延量B1と、測位演算により算出された電離層遅延量A1との差を求め、その差の絶対値を、推定した電離層遅延量B1で除した値が考えられる。また、第二の正確度は、例えば、推定した対流圏遅延量B2と、測位演算により算出された対流圏遅延量A2との差を求め、その差の絶対値を、推定した対流圏遅延量B2で除した値が考えられる。
【0025】
遅延精度算出部4は、第一の正確度を用いて、電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出部4aを有する。また、遅延精度算出部4は、第二の正確度を用いて、対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出部4bを有する。
【0026】
電離層遅延量の精度は、例えば、電離層遅延量の標準偏差と第一の正確度とを用いて表した値でもよい。また、対流圏遅延量の精度は、例えば、対流圏遅延量の標準偏差と第二の正確度とを用いて表した値でもよい。
【0027】
このように、第一の実施の形態においては、推定した電離層遅延量又は対流圏遅延量を用いて、測位演算時に算出した電離層遅延量又は対流圏遅延の精度の正確さを算出することで、更に電離層遅延量又は対流圏遅延量の精度を向上させることができる。その結果、測位精度を向上させることができる。
【0028】
[システム構成]
続いて、図2を用いて、第一の実施の形態における測位支援装置1の構成をより具体的に説明する。図2は、測位支援装置を有するシステムの一例を説明するための図である。
【0029】
図2に示すように、第一の実施の形態におけるシステムは、生成側装置10(生成局)、利用側装置20を有している。また、生成側装置10、利用側装置20は、測位衛星30から電波を受信する。
【0030】
生成側装置10は、推定部2(第一の推定部2a、第二の推定部2b)、正確度算出部3(第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3b)、遅延精度算出部4(第一の遅延精度算出部4a、第二の遅延精度算出部4b)、測位信号受信部11、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、通信部15を有する。また、利用側装置20は、測位信号受信部21、通信部22、測位部23、制御部24を有する。
【0031】
システムについて説明する。
システムは、例えば、衛星測位システムなどである。衛星測位システムは、例えば、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)などが考えられる。具体的には、衛星測位システムでは、図2に示す複数の測位衛星30それぞれから送信された測位信号に基づいて、生成側装置10、利用側装置20がそれぞれの現在位置を算出する。
【0032】
生成側装置10は、測位衛星30から測位信号を受信し、サービスエリアにおいて有効なローカル補正情報を生成する。その後、生成側装置10は、生成したローカル補正情報を、利用側装置20へ送信する。生成側装置10は、例えば、地上に設置される。
【0033】
サービスエリアは、例えば、生成側装置10が設置された位置を基準として設定される地域である。
【0034】
利用側装置20は、測位衛星30から測位信号を受信し、受信した測位信号を復調して観測データを生成する。また、利用側装置20は、生成側装置10からローカル補正情報を受信する。その後、利用側装置20は、生成した観測データと、サービスエリアにおいて有効なローカル補正情報とに基づいて、現在位置を算出する。さらに、利用側装置20は、算出した現在位置を表す情報を、各種アプリケーションに提供する。
【0035】
例えば、利用側装置20は、移動体などに搭載される。移動体は、例えば、車両、飛行体、船舶、モバイル機器などが考えられる。アプリケーションは、例えば、ナビゲーションシステム、自動運転システムなどが考えられる。
【0036】
測位衛星30は、所定の衛星軌道を所定の軌道周期で周回する。測位衛星30は、送信時刻を表すデータなどを位相変調した測位信号を送信する。
【0037】
ローカル補正情報を生成する生成側装置10について説明する。
測位信号受信部11は、測位衛星30それぞれから送信された測位信号を、生成側装置10の周辺に配置された測位衛星30からの電波をモニタするモニタ装置を介して受信し、受信した測位信号を復調して観測データを生成する。具体的には、測位信号受信部11は、測位信号を受信するアンテナ、測位信号を復調するための回路などを有する。
【0038】
観測データは、例えば、測位衛星を識別する識別情報、観測データを生成するために用いた測位信号を受信した観測時刻、ドップラー効果により生じる搬送波周波数と受信周波数の差を表すドップラーシフト量、測位衛星30の衛星軌道上における現在位置を表す衛星座標、測位信号が測位衛星30から送信された時刻と測位信号受信部11で受信された時刻との差を表す擬似距離、搬送波位相などのデータが考えられる。
【0039】
測位部12は、観測データを用いて生成側装置10の位置座標を算出する。測位方法としては、例えば、PPP-AR、MADOCA-PPPなどを採用することができる。
【0040】
ローカル補正情報生成部13は、観測データに基づいて、測位衛星30ごとにローカル補正情報を生成し、生成したローカル補正情報を、図2に不図示のローカル補正情報生成部13内に設けられた記憶部に記憶する。なお、記憶部は、生成側装置10内、又は生成側装置10外に設けられたデータベースなどの記憶装置に記憶してもよい。
【0041】
ローカル補正情報は、例えば、衛星を識別する識別番号、ローカル補正情報が生成された生成時刻、生成側装置10の位置座標、位置座標の一定時間におけるばらつきを表す位置座標偏差、電離層補正情報(例えば、電離層遅延量A1、電離層遅延量の標準偏差などの情報)、対流圏補正情報(例えば、対流圏遅延量A2、対流圏遅延量の標準偏差などの情報)などの情報を有する。
【0042】
測位誤差算出部14は、生成側装置10の位置を表す位置座標(基準位置)と、衛星から受信した測位信号に基づいて推定された生成側装置10の位置座標(推定位置)とを用いて、測位誤差を算出する。基準位置は、あらかじめ測定された生成側装置10の位置座標である。
【0043】
測位誤差算出部14は、例えば、三次元空間における二点間(基準位置と推定位置との間)の距離を算出して測位誤差とする。
【0044】
第一の推定部2aは、電離層遅延モデルに、あらかじめ設定された間隔で取得した複数のデータを適用し、電離層遅延量B1を推定する。具体的には、第一の推定部2aは、まず、あらかじめ設定された間隔で、リアルタイムに日時Dt、温度T、湿度H、測位誤差Lなどのデータを取得する。
【0045】
続いて、第一の推定部2aは、取得したデータを、電離層遅延モデルに適用して、推定した電離層遅延量B1を出力する。電離層遅延モデルは、例えば、数1に示すような関係式が考えられる。ただし、数1に限定されるものではない。
【0046】
(数1)
B1=a1×L+a2×Dt+a3×T+a4×H+……+b
B1:電離層遅延モデルを用いて推定した電離層遅延量
a1:測位誤差に対応する係数
L :測位誤差算出部14が算出した測位誤差
a2:日時に対応する係数
Dt:測位をした日時
a3:温度に対応する係数
T :外部から通信部15を介して取得した温度
a4:湿度に対応する係数
H :外部から通信部15を介して取得した湿度
b :切片
【0047】
第二の推定部2bは、対流圏遅延モデルに、あらかじめ設定された間隔で取得した複数のデータを適用し、対流圏遅延量B2を推定する。具体的には、第二の推定部2bは、まず、あらかじめ設定された間隔で、リアルタイムに日時Dt、温度T、湿度H、測位誤差Lなどのデータを取得する。
【0048】
続いて、第二の推定部2bは、取得したデータを、対流圏遅延モデルに適用して、推定した対流圏遅延量B2を出力する。対流圏遅延モデルは、例えば、数2に示すような関係式が考えられる。ただし、数2に限定されるものではない。
【0049】
(数2)
B2=c1×L+c2×Dt+c3×T+c4×H+……+d
B2:対流圏遅延モデルを用いて推定した対流圏遅延量
c1:測位誤差に対応する係数
L :測位誤差算出部14が算出した測位誤差
c2:日時に対応する係数
Dt:測位をした日時
c3:温度に対応する係数
T :外部から通信部15を介して取得した温度
c4:湿度に対応する係数
H :外部から通信部15を介して取得した湿度
d :切片
【0050】
第一の正確度算出部3aは、推定した電離層遅延量B1と、測位演算により算出された電離層遅延量A1とを用いて、電離層遅延量A1に対する第一の正確度を算出する。具体的には、正確度算出部3aは、数3に示すように第一の正確度を算出する。ただし、数3に限定されるものではない。
【0051】
(数3)
Re1=|B1-A1|/B1
Re1:ローカル補正情報の電離層遅延量A1の正確度(第一の正確度)
【0052】
第二の正確度算出部3bは、推定した対流圏遅延量B2と、測位演算により算出された対流圏遅延量A2とを用いて、対流圏遅延量A2に対する第二の正確度を算出する。具体的には、正確度算出部3bは、数4に示すように第二の正確度を算出する。ただし、数4に限定されるものではない。
【0053】
(数4)
Re2=|B2-A2|/B2
Re:ローカル補正情報の電離層遅延量A2の正確度(第二の正確度)
【0054】
第一の遅延精度算出部4aは、第一の正確度を用いて、電離層遅延量の精度を算出する。具体的には、第一の遅延精度算出部4aは、電離層遅延量の標準偏差と第一の正確度とを用いて、電離層遅延量の精度を算出する。電離層遅延量の精度は、例えば、数5に示すように算出することが考えられる。
【0055】
(数5)
Ac1=Sd1×Re1
Ac1:電離層遅延量の精度
Sd1:電離層遅延量の標準偏差
Re1:第一の正確度
【0056】
第二の遅延精度算出部4bは、第二の正確度を用いて、対流圏遅延量の精度を算出する。具体的には、第二の遅延精度算出部4bは、対流圏遅延量の標準偏差と第二の正確度とを用いて、対流圏遅延量の精度を算出する。対流圏遅延量の精度は、例えば、数6に示すように算出することが考えられる。
【0057】
(数6)
Ac2=Sd2×Re2
Ac2:対流圏遅延量の精度
Sd2:対流圏遅延量の標準偏差
Re2:第二の正確度
【0058】
なお、上述した電離層遅延量の精度と対流圏遅延量の精度について三つの例を用いて説明する。(1)において、標準偏差が0.28で、正確度が0.22である場合、精度は0.062となる。(2)において、標準偏差が2.50で、正確度が0.30である場合、精度は0.750となる。(3)において、標準偏差が0.77で、正確度が1.20である場合、精度は0.924となる。
【0059】
(1)の場合には、標準偏差と正確度がともに小さい値なので、遅延量の精度がよいことがわかる。ところが(2)(3)の場合には、標準偏差と正確度のいずれかが大きい値なので、精度がよくないことがわかる。従来のように、標準偏差だけを用いるのではなく、正確度を組み合わせることで、更に遅延量の精度を細かく算出することができる。
【0060】
通信部15は、ローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを、利用側装置20の通信部22へ送信する。具体的には、通信部15は、有線又は無線などの通信をする通信装置である。
【0061】
ローカル補正情報を利用する利用側装置20について説明する。
測位信号受信部21は、測位衛星30それぞれから送信された測位信号を受信し、受信した測位信号を復調して観測データを生成する。具体的には、測位信号受信部21は、測位信号を受信するアンテナ、測位信号を復調するための回路などを有する。
【0062】
通信部22は、ローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを生成側装置10の通信部15から受信する。具体的には、通信部22は、有線又は無線などの通信をする通信装置である。
【0063】
測位部23は、観測データと、ローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを用いて、利用側装置20の位置座標を算出する。測位方法としては、例えば、PPP-AR、MADOCA-PPPなどを採用することができる。
【0064】
制御部24は、利用側装置20が算出した位置座標を用いて、利用側装置20が搭載された装置(例えば、車両、飛行体、船舶、モバイル機器など)、又は利用側装置20に搭載されたアプリケーション(例えば、ナビゲーションシステムなど)を制御する。具体的には、制御部24は、プロセッサなどを有する回路である。
【0065】
[装置動作]
次に、第一の実施の形態における測位支援装置の動作について図を用いて説明する。図3は、生成側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。図4は、利用側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。以下の説明においては、適宜図2を参照する。また、第一の実施の形態では、測位支援装置を動作させることによって、測位支援方法が実施される。よって、第一の実施の形態における測位支援方法の説明は、以下の測位支援装置の動作説明に代える。
【0066】
生成側装置の動作について図3を用いて説明する。
最初に、測位信号受信部11は、測位衛星30それぞれから送信された測位信号を、生成側装置10の周辺に配置された測位衛星30からの電波をモニタするモニタ装置を介して受信し、受信した測位信号を復調して観測データを生成する(ステップA1)。
【0067】
続いて、測位部12は、観測データを用いて、生成側装置10の位置座標を算出する(ステップA2)。続いて、ローカル補正情報生成部13は、観測データに基づいて、測位衛星30ごとにローカル補正情報を生成し、生成したローカル補正情報を記憶部に記憶する(ステップA3)。
【0068】
続いて、測位誤差算出部14は、生成側装置10の正確な位置を表す位置座標(基準位置)と、衛星から受信した測位信号に基づいて推定された生成側装置10の位置座標(推定位置)とを用いて、測位誤差を算出する(ステップA4)。測位誤差算出部14は、例えば、三次元空間における二点間(基準位置と推定位置との間)の距離を算出して測位誤差とする。
【0069】
続いて、第一の推定部2aは、電離層遅延モデルに、あらかじめ設定された間隔で取得した複数のデータを適用し、電離層遅延量B1を推定する(ステップA5)。また、第二の推定部2bは、対流圏遅延モデルに、あらかじめ設定された間隔で取得した複数のデータを適用し、対流圏遅延量B2を推定する(ステップA5)。
【0070】
具体的には、ステップA5において、第一の推定部2aは、まず、あらかじめ設定された間隔で、リアルタイムの日時Dt、温度T、湿度H、測位誤差Lなどのデータを取得する。続いて、第一の推定部2aは、取得したデータを、電離層遅延モデルに適用して、推定した電離層遅延量B1を出力する。電離層遅延モデルは、例えば、数1に示すような関係式が考えられる。
【0071】
また、具体的には、ステップA5において、第二の推定部2bは、まず、あらかじめ設定された間隔で、リアルタイムの日時Dt、温度T、湿度H、測位誤差Lなどのデータを取得する。続いて、第二の推定部2bは、取得したデータを、対流圏遅延モデルに適用して、推定した対流圏遅延量B2を出力する。対流圏遅延モデルは、例えば、数2に示すような関係式が考えられる。
【0072】
続いて、第一の正確度算出部3aは、推定した電離層遅延量B1と、測位演算により算出された電離層遅延量A1とを用いて、電離層遅延量A1に対する第一の正確度を算出する(ステップA6)。また、第二の正確度算出部3bは、推定した対流圏遅延量B2と、測位演算により算出された対流圏遅延量A2とを用いて、対流圏遅延量A2に対する第二の正確度を算出する(ステップA6)。
【0073】
具体的には、ステップA6において、第一の正確度算出部3aは、数3に示すように第一の正確度を算出することが考えられる。また、ステップA6において、第二の正確度算出部3bは、数4に示すように第二の正確度を算出することが考えられる。
【0074】
第一の遅延精度算出部4aは、第一の正確度を用いて、電離層遅延量の精度を算出する。具体的には、第一の遅延精度算出部4aは、電離層遅延量の標準偏差と第一の正確度とを用いて、電離層遅延量の精度を算出する(ステップA7)。電離層遅延量の精度は、例えば、数5に示すように算出することが考えられる。
【0075】
また、第二の遅延精度算出部4bは、第二の正確度を用いて、対流圏遅延量の精度を算出する。具体的には、第二の遅延精度算出部4bは、対流圏遅延量の標準偏差と第二の正確度とを用いて、対流圏遅延量の精度を算出する(ステップA7)。対流圏遅延量の精度は、例えば、数6に示すように算出することが考えられる。
【0076】
通信部15は、ローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを利用側装置20の通信部22へ送信する(ステップA8)。
【0077】
利用側装置の動作について図4を用いて説明する。
最初に、測位信号受信部21は、測位衛星30それぞれから送信された測位信号を受信し、受信した測位信号を復調して観測データを生成する(ステップB1)。
【0078】
続いて、測位部23は、生成側装置10から通信部22を介してローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを受信する(ステップB2)。
【0079】
測位部23は、観測データと、ローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを用いて、利用側装置20の位置座標を算出する(ステップB3)。
【0080】
続いて、制御部24は、利用側装置20が算出した位置座標を用いて、利用側装置20が搭載された装置(例えば、車両、飛行体、船舶、モバイル機器など)、又は利用側装置20に搭載されたアプリケーション(例えば、ナビゲーションシステムなど)を制御する。
【0081】
[本実施の形態の効果]
以上のように第一の実施の形態によれば、推定した電離層遅延量又は対流圏遅延量を用いて、測位演算時に算出した電離層遅延量又は対流圏遅延の精度の正確さを算出することで、更に電離層遅延量又は対流圏遅延量の精度を向上させることができる。その結果、測位精度を向上させることができる。
【0082】
[プログラム]
第一の実施の形態におけるプログラムは、生成側のコンピュータに、図3に示すステップA1からA8を実行させるプログラムであればよい。また、利用側のコンピュータに、図4に示すステップB1からB3を実行させるプログラムであればよい。
【0083】
これらプログラムそれぞれを対応するコンピュータにインストールし、実行することによって、第一の実施の形態における、生成側又は利用側の測位支援装置と測位支援方法とを実現することができる。生成側のこの場合、コンピュータのプロセッサは、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、第一の推定部2a、第二の推定部2b、第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3b、第一の遅延精度算出部4a、第二の遅延精度算出部4bとして機能し、処理を行なう。また、利用側のコンピュータのプロセッサは、測位部23、制御部24として機能し、処理を行なう。
【0084】
また、第一の実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。生成側の場合、例えば、各コンピュータが、それぞれ、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、第一の推定部2a、第二の推定部2b、第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3b、第一の遅延精度算出部4a、第二の遅延精度算出部4bのいずれかとして機能してもよい。利用側の場合、例えば、各コンピュータが、それぞれ、測位部23、制御部24のいずれかとして機能してもよい。
【0085】
(第二の実施の形態)
以下、第二の実施の形態について、図5から図7を参照しながら説明する。
【0086】
[システム構成]
続いて、図5を用いて、第二の実施の形態における測位支援装置の構成をより具体的に説明する。図5は、測位支援装置を有するシステムの一例を説明するための図である。
【0087】
図5に示すように、第二の実施の形態におけるシステムは、生成側装置10(生成局)、利用側装置20を有している。生成側装置10は、推定部2(第一の推定部2a、第二の推定部2b)、正確度算出部3(第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3b)、測位信号受信部11、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、通信部15を有する。また、利用側装置20は、測位信号受信部21、通信部22、測位部23、遅延精度算出部4(第一の遅延精度算出部4a、第二の遅延精度算出部4b)、制御部24を有する。
【0088】
ローカル補正情報を生成する生成側装置10について説明する。
第二の実施の形態における、測位信号受信部11、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、推定部2(第一の推定部2a、第二の推定部2b)、正確度算出部3(第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3b)の動作は、第一の実施の形態と同じなので、説明は省略する。
【0089】
通信部15は、ローカル補正情報と、第一の正確度と、第二の正確度とを利用側装置20の通信部22へ送信する。
【0090】
ローカル補正情報を利用する利用側装置20について説明する。
第二の実施の形態における、測位信号受信部21、測位部23、制御部24の動作は、第一の実施の形態と同じなので、測位信号受信部21、測位部23、制御部24の説明は省略する。
【0091】
通信部22は、ローカル補正情報と、第一の正確度と、第二の正確度とを、生成側装置10の通信部15から受信する。
【0092】
遅延精度算出部4aは、第一の正確度を用いて、電離層遅延量の精度を算出する。具体的には、遅延精度算出部4aは、電離層遅延量の標準偏差と第一の正確度とを用いて、電離層遅延量の精度を算出する。電離層遅延量の精度は、例えば、数5に示すように算出することが考えられる。
【0093】
第二の遅延精度算出部4bは、第二の正確度を用いて、対流圏遅延量の精度を算出する。具体的には、第二の遅延精度算出部4bは、対流圏遅延量の標準偏差と第二の正確度とを用いて、対流圏遅延量の精度を算出する。対流圏遅延量の精度は、例えば、数6に示すように算出することが考えられる。
【0094】
[装置動作]
次に、第二の実施の形態における測位支援装置の動作について図を用いて説明する。図6は、生成側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。図7は、利用側装置が有する測位支援装置の動作の一例を説明するための図である。以下の説明においては、適宜図5を参照する。また、第二の実施の形態では、測位支援装置を動作させることによって、測位支援方法が実施される。よって、第二の実施の形態における測位支援方法の説明は、以下の測位支援装置の動作説明に代える。
【0095】
生成側装置の動作について図6を用いて説明をする。
最初に、生成側装置10は、ステップA1からA6、ステップC1の処理を実行する。図6に示すステップA1からA6については、第一の実施の形態で説明をしたので、説明を省略する。
【0096】
通信部15は、ローカル補正情報と、第一の正確度と、第二の正確度とを利用側装置20の通信部22へ送信する(ステップC1)。
【0097】
利用側装置の動作について図7を用いて説明をする。
最初に、測位信号受信部21は、測位衛星30それぞれから送信された測位信号を受信し、受信した測位信号を復調して観測データを生成する(ステップB1)。
【0098】
通信部22は、ローカル補正情報と、第一の正確度と、第二の正確度とを、生成側装置10の通信部15から受信する(ステップD1)。
【0099】
続いて、遅延精度算出部4aは、第一の正確度を用いて、電離層遅延量の精度を算出する(ステップD2)。また、第二の遅延精度算出部4bは、第二の正確度を用いて、対流圏遅延量の精度を算出する(ステップD2)。
【0100】
具体的には、ステップD2において、第一の遅延精度算出部4aは、電離層遅延量の標準偏差と第一の正確度とを用いて、電離層遅延量の精度を算出する。電離層遅延量の精度は、例えば、数5に示すように算出することが考えられる。また、ステップD2において、第二の遅延精度算出部4bは、対流圏遅延量の標準偏差と第二の正確度とを用いて、対流圏遅延量の精度を算出する。対流圏遅延量の精度は、例えば、数6に示すように算出することが考えられる。その後、測位部23は、観測データと、ローカル補正情報と、電離層遅延量の精度と、対流圏遅延量の精度とを用いて、利用側装置20の位置座標を算出する(ステップB3)。
【0101】
[第二の実施の形態の効果]
以上のように第二の実施の形態によれば、推定した電離層遅延量又は対流圏遅延量を用いて、測位演算時に算出した電離層遅延量又は対流圏遅延の精度の正確さを算出することで、更に電離層遅延量又は対流圏遅延量の精度を向上させることができる。その結果、測位精度を向上させることができる。
【0102】
[プログラム]
第二の実施の形態におけるプログラムは、生成側のコンピュータに、図6に示すステップA1からA6、C1を実行させるプログラムであればよい。また、利用側のコンピュータに、図7に示すステップB1、D1、D2、B3を実行させるプログラムであればよい。
【0103】
これらプログラムそれぞれを対応するコンピュータにインストールし、実行することによって、第二の実施の形態における、生成側又は利用側の測位支援装置と測位支援方法とを実現することができる。生成側のこの場合、コンピュータのプロセッサは、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、第一の推定部2a、第二の推定部2b、第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3bとして機能し、処理を行なう。
また、利用側のコンピュータのプロセッサは、第一の遅延精度算出部4a、第二の遅延精度算出部4b、測位部23、制御部24として機能し、処理を行なう。
【0104】
また、第二の実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。生成側のこの場合、例えば、各コンピュータが、それぞれ、測位部12、ローカル補正情報生成部13、測位誤差算出部14、第一の推定部2a、第二の推定部2b、第一の正確度算出部3a、第二の正確度算出部3bのいずれかとして機能してもよい。利用側の場合、例えば、各コンピュータが、それぞれ、第一の遅延精度算出部4a、第二の遅延精度算出部4b、測位部23、制御部24のいずれかとして機能してもよい。
【0105】
[物理構成]
ここで、第一、第二の実施の形態それぞれにおける、生成側、利用側のプログラムを実行することによって、測位支援装置を実現するコンピュータについて図8を用いて説明する。図8は、第一、第二の実施の形態における測位支援装置を実現するコンピュータの一例を説明するための図である。
【0106】
図8に示すように、コンピュータ110は、CPU(Central Processing Unit)111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていてもよい。
【0107】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0108】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリなどの半導体記憶装置があげられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0109】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0110】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)などの汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)などの磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体があげられる。
【0111】
[付記]
以上の実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。上述した実施の形態の一部又は全部は、以下に記載する(付記1)から(付記18)により表現することができるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0112】
(付記1)
ローカル補正情報を生成する生成側装置に設けられる測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定部と、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する第一の正確度を算出する、第一の正確度算出部と、
を有することを特徴とする測位支援装置。
【0113】
(付記2)
付記1に記載の測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定する、第二の推定部と、
推定した前記対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する第二の正確度を算出する、第二の正確度算出部と、
を有することを特徴とする測位支援装置。
【0114】
(付記3)
付記1に記載の測位支援装置であって、
前記第一の正確度を用いて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出部
を有することを特徴とする測位支援装置。
【0115】
(付記4)
付記2に記載の測位支援装置であって、
前記第二の正確度を用いて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出部
を有することを特徴とする測位支援装置。
【0116】
(付記5)
ローカル補正情報を利用する利用側装置に設けられる測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出部
を有することを特徴とする測位支援装置。
【0117】
(付記6)
付記5に記載の測位支援装置であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルにより推定された対流圏遅延量と、測位演算により算出された対流圏遅延量と、を用いて算出された第二の正確度に基づいて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出部
を有することを特徴とする測位支援装置。
【0118】
(付記7)
ローカル補正情報を生成する生成側装置の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定ステップと、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する第一の正確度を算出する、第一の正確度算出ステップと、
を有することを特徴とする測位支援方法。
【0119】
(付記8)
付記7に記載の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定第二の推定ステップと、
推定した前記対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する、第二の正確度を算出する、第二の正確度算出ステップと、
を有することを特徴とする測位支援方法。
【0120】
(付記9)
付記7に記載の測位支援方法であって、
前記第一の正確度を用いて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出ステップ
を有することを特徴とする測位支援方法。
【0121】
(付記10)
付記8に記載の測位支援方法であって、
前記第二の正確度を用いて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出ステップ
を有することを特徴とする測位支援方法。
【0122】
(付記11)
ローカル補正情報を利用する利用側装置の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、
測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出ステップ
を有することを特徴とする測位支援方法。
【0123】
(付記12)
付記11に記載の測位支援方法であって、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルにより推定された対流圏遅延量と、測位演算により算出された対流圏遅延量と、を用いて算出された第二の正確度に基づいて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出ステップ
を有することを特徴とする測位支援方法。
【0124】
(付記13)
ローカル補正情報を生成する生成側装置のコンピュータに、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルを用いて電離層遅延量を推定する、第一の推定ステップと、
推定した前記電離層遅延量を用いて、測位演算により算出された電離層遅延量に対する、第一の正確度を算出する、第一の正確度算出ステップと、
を実行させるプログラム。
【0125】
(付記14)
付記13に記載のプログラムであって、
前記プログラムが、前記コンピュータに、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルを用いて対流圏遅延量を推定する、第二の推定ステップと、
推定した前記対流圏遅延量を用いて、測位演算により算出された対流圏遅延量に対する第二の正確度を算出する、第二の正確度算出ステップと、
を実行させるプログラム。
【0126】
(付記15)
付記13に記載のプログラムであって、
前記プログラムが、前記コンピュータに、
前記第一の正確度を用いて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出ステップ
を実行させるプログラム。
【0127】
(付記16)
付記14に記載のプログラムであって、
前記プログラムが、前記コンピュータに、
前記第二の正確度を用いて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出ステップ
を実行させるプログラム。
【0128】
(付記17)
ローカル補正情報を利用する利用側装置のコンピュータに、
機械学習を用いて生成された電離層遅延モデルにより推定された電離層遅延量と、測位演算により算出された電離層遅延量と、を用いて算出された第一の正確度に基づいて、前記電離層遅延量の精度を算出する、第一の遅延精度算出ステップ
を実行させるプログラム。
【0129】
(付記18)
付記17に記載のプログラムであって、
前記プログラムが、前記コンピュータに、
機械学習を用いて生成された対流圏遅延モデルにより推定された対流圏遅延量と、測位演算により算出された対流圏遅延量と、を用いて算出された第二の正確度に基づいて、前記対流圏遅延量の精度を算出する、第二の遅延精度算出ステップ
を実行させるプログラム。
【0130】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0131】
この出願は、2019年9月5日に出願された日本出願特願2019-162454を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0132】
以上のように本発明によれば、測位精度を向上させることができる。本発明は、衛星測位システムを用いて測位が必要な分野において有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 測位支援装置
2 推定部
2a 第一の推定部
2b 第二の推定部
3 正確度算出部
3a 第一の正確度算出部
3b 第二の正確度算出部
4 遅延精度算出部
4a 第一の遅延精度算出部
4b 第二の遅延精度算出部
10 生成側装置
11 測位信号受信部
12 測位部
13 ローカル補正情報生成部
14 測位誤差算出部
15 通信部
20 利用側装置
21 測位信号受信部
22 通信部
23 測位部
24 制御部
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8