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  • 特許-浴槽排水装置 図1
  • 特許-浴槽排水装置 図2
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  • 特許-浴槽排水装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】浴槽排水装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/00 20060101AFI20230301BHJP
   A47K 3/02 20060101ALI20230301BHJP
   F24H 15/196 20220101ALI20230301BHJP
【FI】
A47K3/00 Z
A47K3/02
F24H15/196 301M
F24H15/196 301P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022567458
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2021034256
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】721002406
【氏名又は名称】百瀬尚幸
(74)【代理人】
【識別番号】100103687
【弁理士】
【氏名又は名称】百瀬 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 文子
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6025281(JP,B1)
【文献】特開2003-343907(JP,A)
【文献】特開平4-108450(JP,A)
【文献】特開2001-120634(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106859445(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00
A47K 3/02
F24H 15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯が貯留される浴槽の床の入浴者が着座可能な位置に対応する位置に形成された開口を開閉することが可能で、かつ少なくとも前記入浴者の臀部が載置可能なプレートと、
前記開口を閉鎖している前記プレートを、前記開口が開放されるように上昇させる上昇部と、
前記入浴者の状態を表す情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得された情報が、前記入浴者の異常状態を示している場合に、前記開口が開放されるように前記プレートを上昇させ、前記浴槽に貯留された湯が前記開口から排出されるように前記上昇部を制御する制御部と、
を含む浴槽排水装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記取得部で取得された情報が、前記入浴者の異常状態を示している場合に、前記入浴者の少なくとも鼻が湯面より上方に位置するように前記上昇部を制御する、請求項1に記載の浴槽排水装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記浴槽を撮影することにより、前記入浴者の画像を取得する撮影部であり、
前記制御部は、予め定められた入浴者の異常な状態の画像と前記撮影部により取得された前記入浴者の画像とに基づいて、前記入浴者の状態が異常な状態であるか否かを判断し、前記入浴者の状態が異常な状態であると判断した場合に、前記制御を行う、
請求項1又は請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記入浴者のバイタルサインを取得するバイタルセンサである、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の浴槽排水装置。
【請求項5】
前記開口と前記プレートとの間に配置されたシール部材を更に備える、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の浴槽排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、浴槽排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2003-343907公報には、入浴中に浴槽内で意識を失い水没して溺死する事故を防止するため、浴槽内で水没事故が発生したと判断した場合、栓を開放する強制排水機能付ふろ釜が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、強制排水機能付ふろ釜では、栓を開放するだけであるので、入浴者の顔に対する湯の液面が下降するのに時間がかかる。
【0004】
本開示の技術は、入浴者の顔に対する湯の液面を背景技術より迅速に相対的に下降させることができる浴槽排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本開示の技術の浴槽排水装置は、湯が貯留される浴槽の床の入浴者が着座可能な位置に対応する位置に形成された開口を開閉することが可能で、かつ少なくとも前記入浴者の臀部が載置可能なプレートと、前記開口を閉鎖している前記プレートを、前記開口が開放されるように上昇させる上昇部と、前記入浴者の状態を表す情報を取得する取得部と、前記取得部で取得された情報が、前記入浴者の異常状態を示している場合に、前記開口が開放されるように前記プレートを上昇させ、前記浴槽に貯留された湯が前記開口から排出されるように前記上昇部を制御する制御部と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の技術は、入浴者の顔に対する湯の液面を背景技術より迅速に相対的に下降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施の形態の浴槽排水装置の概略図である。
図2】制御装置30のブロック図である。
図3】制御装置30のCPU32が実行する浴槽排水処理プログラムのフローチャートである。
図4】入浴者の状態が異常な状態であると判断された場合、開口が開放されるように、入浴者が着座しているプレート14を、上昇させ、浴槽12に貯留された湯20を開口から排出するする様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本開示の技術の実施の形態を説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施の形態の浴槽排水装置は、湯20が貯留される浴槽12の床の入浴者が着座可能な位置に対応する位置に形成された開口を開閉することが可能で、かつ少なくとも入浴者の臀部が載置可能なプレート14を備えている。
【0010】
浴槽排水装置は、開口とプレート14との間、具体的には、プレート14の側面に配置されたシール部材142を備えている。側面にシール部材142が配置されたプレート14が開口に嵌ると、開口が、プレート14及びシール部材142により、閉鎖され、浴槽12に湯20が貯留可能となる。なお、以下、浴槽12に湯20が貯留され、入浴者の臀部がプレート14に載置されている場合を説明する。
【0011】
プレート14は、浴槽12の床のほぼ全域の大きさを有する。プレート14の上面の形状は、浴槽12の床の形状に対応し、長方形である。なお、プレート14の大きさは、標準体型の臀部を支持することができる大きさでもよい。
【0012】
浴槽排水装置は、開口を閉鎖しているプレート14を、開口が開放されるように上昇させる上昇部16を備えている。上昇部16は、例えば、油圧アクチュエータ、具体的には、4本の油圧シリンダで構成されている。各油圧シリンダ16の上面は、長方形のプレート14の各角から所定距離内側に位置している。各油圧シリンダ16に油圧回路18から油が供給されると、各油圧シリンダ16の上面が、長方形のプレート14の各角から所定距離内側の場所を上昇し、プレート14が上昇する(図4も参照)。
【0013】
浴槽排水装置は、入浴者の状態を表す情報を取得するカメラ22を備えている。図1に示す例では、入浴者は、顔側を、浴槽12の図1の右側に位置し、足側を、浴槽12の図1の左側に位置するように、入浴する。カメラ22は、浴槽12の図1の右側を撮影する。よって、カメラ22は、入浴者の顔を撮影することができ、入浴者の状態を表す顔の画像を取得することができる。
【0014】
本開示の技術では、図1に示す例とは異なり、入浴者が、顔側を、浴槽12の図1の左側に位置し、足側を、浴槽12の図1の右側に位置するように、入浴する場合に対応して、カメラ22を、カメラ22が浴槽12の図1の左側を撮影することができる位置に配置してもよい。また、本開示の技術では、カメラ22は、浴槽12の図1の右側を撮影することができる位置と、浴槽12の図1の左側を撮影することができる位置との各々の位置に配置してもよい。
【0015】
カメラ22は、本開示の技術の「取得部」の一例である。
【0016】
浴槽排水装置は、図2に示すように、カメラ22で取得された情報(即ち、顔の画像)が、入浴者の異常状態を示している場合に、開口が開放されるようにプレート14を上昇させ(図4も参照)、浴槽12に貯留された湯20が開口から排出(図4の矢印F参照)されるように上昇部16を制御する制御装置30を備えている。図2に示すように、制御装置30は、コンピュータで構成されている。具体的には、制御装置30は、CPU32、ROM34、RAM36、及び入出力(I/O)ポート40を備え、これらは、バス38により、相互に接続されている。I/Oポート40には、記憶装置44、カメラ22、及び駆動部42を備えている。駆動部42は、制御装置30の制御に従って、油圧回路18を、各油圧シリンダ16に油が供給され、また、供給された油が各油圧シリンダ16から戻るように、制御する。
【0017】
ROM34又は記憶装置44には、後述する浴槽排水処理プログラムが記憶されている。
【0018】
次に、図3を参照して、制御装置30のCPU32が実行する浴槽排水処理プログラムを説明する。
【0019】
図示しないスイッチがオンされると、ROM34又は記憶装置44から浴槽排水処理プログラムが、RAM36に読み出され、CPU32により、実行され、浴槽排水処理が実行される。
【0020】
浴槽排水処理プログラムがスタートすると、ステップ52で、CPU32は、カメラ22により浴槽12の図1の右側が撮影されて得られた入浴者の画像を取り込む。
【0021】
ステップ54で、CPU32は、予め定められた入浴者の異常な状態の画像とカメラ22により浴槽12の図1の右側が撮影されて得られた入浴者の画像とに基づいて、入浴者の状態が異常な状態であるか否かを判断する。
【0022】
予め定められた入浴者の異常な状態の画像は、記憶装置44に記憶されており、ステップ54では、記憶装置44から、予め定められた入浴者の異常な状態の画像が読み出される。予め定められた入浴者の異常な状態の画像は、例えば、入浴者の顔、具体的には、鼻の位置が、湯20の液面より下側の位置P1に位置している画像である。
【0023】
ステップ54では、CPU32は、記憶装置44から読み出された予め定められた入浴者の異常な状態の画像と、カメラ22により浴槽12の図1の右側が撮影されて得られた入浴者の画像とのマッチング処理を実行し、マッチング割合を計算する。CPU32は、マッチング割合が所定値以上の場合、入浴者の状態が異常な状態であると判断する。
【0024】
入浴者の状態が異常な状態であると判断されなかった場合には、浴槽排水処理は、ステップ52に戻って、以上の処理(即ち、ステップ52及びステップ54)が実行される。入浴者の状態が異常な状態であると判断された場合には、浴槽排水処理は、ステップ56に進む。
【0025】
ステップ56で、CPU32は、開口が開放されるようにプレート14を上昇させ、浴槽12に貯留された湯20が開口から排出されるようにするため、各油圧シリンダ16に油圧回路18から油が供給されるように、駆動部42を作動するように制御する。このように、各油圧シリンダ16に油圧回路18から油が供給されると、各油圧シリンダ16が上昇し、各油圧シリンダ16の上面は、長方形のプレート14の各角から所定距離内側の場所を上昇し、プレート14が上昇する(図4も参照)。
【0026】
プレート14が上昇すると、開口が解放され、矢印Fに示すように、浴槽12に貯留されている湯20が開口から排出する。浴槽12に貯留されている湯20が開口から排出すると、湯20の液面が、矢印Dに示すように、下降する。
【0027】
ところで、開口が解放されるのは、プレート14が上昇したからである。プレート14には、入浴者の臀部が載置されている。入浴者の臀部が載置されているプレート14が上昇すると、入浴者の位置、より具体的には、入浴者の顔、特に、鼻や口の位置が、上昇する。
【0028】
ステップ58で、CPU32は、入浴者の状態が異常な状態でなくなったか否かを判断する。
【0029】
上記のように、浴槽12に貯留されている湯20が開口から排出することにより、湯20の液面が、矢印Dに示すように、下降すると共に、プレート14が上昇することにより、入浴者の顔、特に、鼻や口の位置が、矢印Uに示すように、上昇する。このように、湯20の液面が下降し、入浴者の顔、特に、鼻や口の位置が、上昇し続けると、ステップ56の処理が開始した時から一定時間後には、湯20の液面より下側の位置P1に位置していた入浴者の少なくとも鼻の位置は、湯20の液面より上側の位置P2に、相対的に移動する。入浴者の少なくとも鼻の位置が、湯20の液面より上側の位置P2に移動すると、入浴者は、息ができ、異常な状態でなくなる。
【0030】
ステップ60で、CPU32は、ステップ56の処理が開始した時から一定時間経過したか否かを判断することにより、入浴者の状態が異常な状態でなくなったか否かを判断する。なお、上記一定時間は、鼻ばかりではなく口の位置が、湯20の液面より上側の位置P2に位置する時間でもよい。
【0031】
本開示の技術は、ステップ56の処理が開始した時から一定時間経過したか否かを判断することにより、入浴者の状態が異常な状態でなくなったか否かを判断することに限定されない。例えば、CPU32は、カメラ22により得られた画像と、予め定められた入浴者の状態が異常な状態でなくなった場合の画像(記憶装置44に記憶されている)とのマッチング処理を実行し、マッチング割合を計算し、マッチング割合が所定値以上の場合、入浴者の状態が異常な状態でなくなったと判断してもよい。
【0032】
入浴者の状態が異常な状態でなくなったと判断されなかった場合には、浴槽排水処理は、ステップ56に戻って、以上の処理(即ち、ステップ56及びステップ58)が実行さる。入浴者の状態が異常な状態でなくなったと判断された場合には、浴槽排水処理は、ステップ60に進む。ステップ60で、CPU32は、駆動部42の作動を停止して、浴槽排水処理を終了する。
【0033】
以上説明したように本実施の形態では、入浴者の状態が異常な状態であると判断された場合、開口が開放されるようにプレート14を、入浴者が着座している状態で、上昇させ、浴槽12に貯留された湯20を開口から排出する。このように、開口が開放されるように入浴者が着座している状態でプレート14を上昇させ、浴槽12に貯留された湯20を開口から排出するので、例えば、単に栓を抜くような場合に比べ、入浴者の顔に対する湯の液面を迅速に相対的に下降させることができる。
【0034】
前述した実施の形態では、入浴者の状態を表す情報として、カメラ22が入浴者を撮影することにより、入浴者の顔の画像を取得し、入浴者の状態が異常な状態であるか否かを判断している。本開示の技術はこれに限定されない。例えば、入浴者のバイタルサイン(生体信号)を取得するバイタルセンサを用いるようにしてもよい。バイタルサインは、例えば、心拍、呼吸、血圧、脈拍、体温などである。バイタルセンサは、取得するバイタルサインに応じて、身体に装着されて、バイタルサインを取得してり、身体には装着されずに、バイタルサインを非接触で取得する。CPU32は、取得したバイタルサインと、入浴者の状態が異常な状態である場合の値と、に基づいて、入浴者の状態が異常な状態であるか否かを判断する。
【0035】
また、前述した実施の形態では、入浴者の状態が異常な状態であると判断された場合、直ちに、開口が開放されるようにプレート14を、入浴者が着座している状態で、上昇させ、浴槽12に貯留された湯20を開口から排出する。しかし、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、解除ボタンを設け、プレート14が上昇し始めた場合において、解除ボタンが押された場合、プレート14の上昇を元の位置に戻すようにしてもよい。実際は、入浴者に異常な状態でない場合もあるからである。
【要約】
浴槽排水装置は、湯が貯留される浴槽の床の入浴者が着座可能な位置に対応する位置に形成された開口を開閉することが可能で、かつ少なくとも前記入浴者の臀部が載置可能なプレートと、前記開口を閉鎖している前記プレートを、前記開口が開放されるように上昇させる上昇部と、前記入浴者の状態を表す情報を取得する取得部と、前記取得部で取得された情報が、前記入浴者の異常状態を示している場合に、前記開口が開放されるように前記プレートを上昇させ、前記浴槽に貯留された湯が前記開口から排出されるように前記上昇部を制御する制御部と、を含む。
図1
図2
図3
図4