(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】FMCWレーダーのチャープ信号線形性及び位相ノイズを判定するための回路及び方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20230301BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G01S7/40 108
G01S13/34
(21)【出願番号】P 2021120275
(22)【出願日】2021-07-21
(62)【分割の表示】P 2018532051の分割
【原出願日】2016-12-19
【審査請求日】2021-08-17
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】アンジャン プラサッド エスワラン
(72)【発明者】
【氏名】シャンカール ラム ナラナモーティ
(72)【発明者】
【氏名】ストリーキラン サマラ
(72)【発明者】
【氏名】カーティック サブライ
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/072481(WO,A1)
【文献】欧州特許第01889091(EP,B1)
【文献】国際公開第2009/028010(WO,A1)
【文献】特開2015-210099(JP,A)
【文献】特開2005-265535(JP,A)
【文献】特開2003-262670(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102013207464(DE,A1)
【文献】“Further Analysis of RMS Frequency Offset for a CPRI Client Transported over OTN”,ITU-T [online],STUDY GROUP 15 - CONTRIBUTION 972,2010年05月19日,11 Pages,<URL: https://www.itu.int/md/T09-SG15-C-0972/en >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMCWレーダーにより生成されるチャープ信号を分析する方法であって、
前記チャープ信号を直交信号にダウンコンバートすることと、
中間周波数(IF)信号を生成させるために前記直交信号をデジタル化することと、
前記IF信号の瞬時周波数サンプルを産出するために前記IF信号の位相
の導関数を
計算することと、
周波数誤差サンプルを産出するために前記瞬時周波数サンプルと所定の周波数サンプルとの間の差を判定することと、
位相誤差サンプルを産出するために前記周波数誤差サンプルを積分することと、
前記チャープ信号のダイナミック位相ノイズを
産出するために前記位相
誤差サンプルの
パワースペクトル密度関数を計算することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記位相誤差サンプルのパワースペクトル密度が前記チャープ信号のダイナミック位相ノイズを生成する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記チャープ信号の周波数線形性を判定することを更に含む、方法。
【請求項4】
請求項
3に記載の方法であって、
前記周波数線形性を判定することが、
前記瞬時周波数サンプルを線に合わせることと、
前記周波数線形性を
産出するために前記瞬時周波数サンプルと所定の周波数サンプルを構成する線との間の差を判定することと、
を含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記ダウンコンバートすることがスペクトル分析器を用いて実施される、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記チャープ信号の第1の帯域幅を分析することと、
前記チャープ信号の第2の帯域幅を分析することと、
前記チャープ信号の分析をもたらすために前記第1の帯域幅の分析と前記第2の帯域幅との分析の結果を組み合わせることと、
を更に含む、方法。
【請求項7】
FMCWレーダーのためのテストデバイスであって、
前記FMCWレーダーにより生成されるチャープ信号を受信するための入力と、
前記チャープ信号をダウンコンバートするために前記入力に結合されるIQダウンコンバータと、
前記ダウンコンバートされたチャープ信号からデジタル化されたIQ信号を抽出するためのデジタイザーと、
前記チャープ信号の周波数線形性と位相ノイズとの少なくとも一方を判定するために前記デジタイザーに結合されるプロセッサ
であって、
前記デジタル化されたIQ信号の瞬時周波数サンプルを産出するために前記デジタル化されたIQ信号の位相の導関数を計算し、
周波数誤差サンプルを産出するために前記瞬時周波数サンプルと所定の周波数サンプルとの間の差を判定し、
位相誤差サンプルを産出するために前記周波数誤差サンプルを積分し、
ダイナミック位相ノイズを産出するために前記位相誤差サンプルのパワースペクトル密度関数を計算する、
ように構成される、前記プロセッサと、
を含む、テストデバイス。
【請求項8】
請求項
7に記載のテストデバイスであって、
前記IQダウンコンバータがIQダウンコンバータミキサーである、テストデバイス。
【請求項9】
請求項
8に記載のテストデバイスであって、
前記IQダウンコンバータミキサーによって実施されるダウンコンバージョンのための局部発振器周波数を提供するために前記IQダウンコンバータミキサーに結合される発振器を更に含む、テストデバイス。
【請求項10】
請求項
7に記載のテストデバイスであって、
前記IQダウンコンバータがスペクトル分析器である、テストデバイス。
【請求項11】
請求項7に記載のテストデバイスであって、
前記プロセッサが、
前記瞬時周波数サンプルを線に合わせ、
前記周波数線形性を産出するために前記瞬時周波数サンプルと所定の周波数サンプルを構成する線との間の差を判定する、
ように更に構成される、テストデバイス。
【請求項12】
装置であって、
周波数変調連続波(FMCW)レーダーによって生成されるチャープ信号を直交信号にダウンコンバートする手段と、
中間周波数(IF)信号を産出するために前記直交信号をデジタル化する手段と、
前記IF信号の瞬時周波数サンプルを産出するために前記IF信号の位相の導関数を計算する手段と、
周波数エラーサンプルを産出するために前記瞬時周波数サンプルと所定の周波数サンプルとの間の差を判定する手段と、
位相エラーサンプルを産出するために前記周波数エラーサンプルを積分する手段と、
ダイナミック位相ノイズを産出するために前記位相エラーサンプルのパワースペクトル密度関数を計算する手段と、
を更に含む、装置。
【請求項13】
請求項
12に記載の装置であって、
前記瞬時周波数を線に合わせる手段と、
前記周波数線形性を産出するために前記瞬時周波数の線と所定の瞬時周波数を構成する線との間の差を判定する手段と、
を更に含む、装置。
【請求項14】
請求項
12に記載の装置であって、
前記ダウンコンバートすることがスペクトル分析器を用いて前記チャープ信号を直交信号にダウンコンバートすることを含む、装置。
【請求項15】
請求項
12に記載の装置であって、
ダイナミック位相ノイズを産出するために前記位相エラーサンプルのパワースペクトル密度を判定する手段を更に含む、装置。
【請求項16】
請求項
12に記載の装置であって、
前記チャープ信号を構成する複数の帯域幅を分析する手段と、
前記チャープ信号の分析をもたらすために前記複数の帯域幅を分析することの結果を組み合わせる手段と、
を更に含む、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
FMCW(周波数変調連続波)レーダーは、正弦波又は鋸波波形などの周期的関数を変調する、連続波を送信するシステムである。FMCWレーダーの主要構成要素は、チャープ信号又は波形である。チャープ信号は、周波数が時間と共に増大又は低減する信号である。チャープ信号は、レーダーのレシーバにおいて見られる位相歪みの影響を避けるために、極めて線形である必要がある。
【0002】
レーダーは、連続波位相ノイズに対して最適化されるそれらの局部発振器(LO)サブシステムにおいてループフィルタを有するが、これは、ダイナミック位相ノイズに対して最適ではない可能性がある。ダイナミック位相ノイズは、或る帯域幅にわたって送信されているチャープ信号に関連する位相ノイズを指すために用いられる用語である。周波数線形性及びダイナミック位相ノイズの測定はFMCWレーダーにおいて重要である。というのも、それらによって、レーダーにより送信されるチャープ信号の波形の純度が決まるためである。
【0003】
現在の解決策は、周波数線形性及び位相ノイズを測定するためテスト機器の利用に関与する。しかしながら、殆どのテスト機器は、高価であり、用いるのに時間がかかる。よりリーズナブルなテスト機器は、典型的に、周波数線形性を測定するための帯域幅を有さず、及び/又は、ダイナミック位相ノイズを測定するために一層広いチャープ信号帯域幅で動作する能力を有さない。
【発明の概要】
【0004】
記載される例において、FMCWレーダーのためのテストデバイスが、FMCWレーダーにより生成されるチャープ信号を受信するための入力を含む。入力に結合されるIQダウンコンバータが、チャープ信号をダウンコンバートする。ダウンコンバートされたチャープ信号からデジタイザーがデジタル化されたI及びQ信号を抽出する。デジタイザーに結合されるプロセッサが、チャープ信号の周波数線形性及び位相ノイズの少なくとも一方を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】チャープ信号の一例を時間の関数として示すグラフである。
【0006】
【
図2】送信されたチャープ信号のチャープ信号線形性を測定する一実施例を説明するフローチャートである。
【0007】
【
図3】送信されたチャープ信号のダイナミック位相ノイズを測定する一実施例を説明するフローチャートである。
【0008】
【
図4】分析機器によってチャープ信号帯域幅が適合され(accommodated)得ない状況におけるチャープ信号のメトリックを演算するための手順を説明するフローチャートである。
【0009】
【
図5】レーダーの周波数線形性及びダイナミック位相ノイズを測定するテスト機器のブロック図である。
【0010】
【
図6】チャープ信号の周波数線形性及びダイナミック位相ノイズを測定する一層詳細なテスト機器の一実施例のブロック図である。
【0011】
【
図7】チャープ信号の周波数線形性を判定するための方法を説明するフローチャートである。
【0012】
【
図8】チャープ信号のダイナミック位相ノイズを判定するための方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
周波数変調連続波(FMCW)レーダーの周波数線形性及びダイナミック位相ノイズを確認する回路及び方法を本明細書に開示する。周波数線形性は、レーダーにより送信されるチャープ信号の線形性である。ダイナミック位相ノイズは、チャープ信号が或る帯域幅にわたって送信されているとき測定される位相ノイズを指すために用いられるという用語である。こういった回路及び方法を、下記パラメータの波形を有する例示のチャープ信号に基づいて後述する。
送信されるチャープ信号帯域幅:0.025GHz
チャープ開始周波数:2.375GHz
チャープ停止周波数:2.4GHz
勾配レート:1000MHz/μs
【0014】
図1は、上記パラメータを有するチャープ信号100の一例を時間の関数として示すグラフである。チャープ信号100は、継続的に反復し、2.375GHzの開始周波数で開始し、2.4GHzの停止周波数で終わる。開始周波数と停止周波数との間の周波数上昇は、チャープ信号100の周波数線形性が測定される部分に対応する。より具体的には、線102に沿った、開始周波数と停止周波数との間の一定の勾配レートが、高周波数線形性を有するチャープ信号に対応する。線102が曲線であるか又は不連続性を有する場合、チャープ信号は低い周波数線形性を有する。そのため、開始周波数と停止周波数との間に示される線102の直線性は、周波数線形性に関連する。
【0015】
図2を付加的に参照する。
図2は、送信されるチャープ信号のチャープ信号線形性を判定する一実施例を説明するフローチャート200である。工程202において、送信されたチャープ信号が捕捉される。幾つかの例において、チャープ信号は、一般的な信号分析器を用いて捕捉される。例えば、通常利用可能なスペクトル分析器が、送信されたチャープ信号を捕捉するために用いられ得る。また、スペクトル分析器は、それら自体の内部の又は局地的に生成される局部発振器(LO)を用いてチャープ信号をダウンコンバートするので、高帯域幅チャープ信号を用いる場合でも、信号分析器として機能する。チャープ信号は、工程204においてその等価のベースバンド中間周波数(IF)サンプルにダウンコンバートされ、工程206においてIF信号と称されるデジタル化されたIF信号を生成させるために、デジタル化される。
【0016】
IF信号は、本質的に直交(典型的に、デジタルI及びQサンプル)である。スペクトル分析器の帯域幅は、送信されたチャープ信号の帯域幅に適合してもよく又は適合しなくてもよく、そのため、スペクトル分析器の帯域幅の分析は、チャープ信号の最大部分を分析するために出来る限りその最大値に設定され得る。幾つかの例において、スペクトル分析器の分析帯域幅は約40MHzである。
【0017】
スペクトル分析器により捕捉されるデジタル化された直交サンプルの振幅は、それが、デジタイザーのダイナミックレンジをクリップ又は飽和しないような方式で、及びデジタル化された直交サンプルがデジタイザーのノイズフロアの下に埋もれないように選択される。選択された振幅は、最適であるべきであり、デジタイザーのオペレーションの線形範囲にあるべきである。幾つかの例において、IF信号の位相を演算するために、IF信号が処理される。チャープ信号の瞬時周波数を生成させるために、時間に対するIF信号の位相の導関数が計算される。工程208において、チャープ信号の瞬時周波数が判定され、これは、演算された周波数サンプルと称されることもある。
【0018】
演算された周波数サンプルは、典型的にチャープ信号のLOであるトランスミッタのLO周波数と受信機器のLOとの間の周波数差によって生じる周波数オフセットを有し得る。機器により捕捉されるようなチャープ信号の開始周波数、及び、チャープ信号100の伝送のために用いられる実際の開始周波数における差も、周波数オフセットを起こし得る。こういった周波数オフセットは、工程210で従来の手法により取り除かれ得る。
【0019】
演算された周波数サンプルの理想周波数サンプルが、演算された周波数サンプルから判定される。幾つかの例において、これは、演算された周波数サンプルに対して、一次多項式フィット(first order polynomial fit)の形式の線形フィットを適用することにより判定され、こういったフィットには、勾配及び切片などの単純項(simple terms)が含まれ得る。幾つかの例において、多項式フィットのための多項式は、f(t)=at+bであり、ここで、「f」は理想周波数サンプルであり、「t」は時間基準であり、「a」は勾配であり、「b」は切片である。これら全ての変数は、演算された周波数サンプルに対する最良フィットを与える多項式係数である。
【0020】
所定の周波数サンプルは、チャープ信号の数学的モデルに基づく周波数サンプルである。周波数誤差サンプルを生成させるため、工程212において理想的な周波数サンプルと所定の周波数サンプルとの間の差が判定される。工程214において、周波数線形性が周波数誤差サンプルから計算される。幾つかの例において、周波数誤差サンプルに対する平均標準偏差などの統計的オペレーションにより、周波数線形性が測定される。
【0021】
周波数線形性を測定するためのプロセスを説明してきたので、次に、ダイナミック位相ノイズを測定するためのプロセスを説明する。ダイナミック位相ノイズは、チャープ信号の帯域幅にわたって継続的に分析され、一つの特定のオフセット周波数において特定される。幾つかの例において、ダイナミック位相ノイズは、キャリア信号から、100KHz、1MHz、及び10MHzオフセットしていると称される。FMCWレーダーの場合、キャリア信号は単一のCW周波数ではなく、絶えず変化する。例えば、それは、特定の帯域幅にわたって特定される
図1に示すランプ信号であり得る。従って、ダイナミック位相ノイズは、10KHz、1MHz、又は10MHzなどのオフセット周波数でのランプの位相ノイズとして特定される。
【0022】
図3は、送信されたチャープ信号のダイナミック位相ノイズを判定するための一実施例を説明するフローチャート300である。工程302でチャープ信号の位相が判定される。工程304において、チャープ信号の位相サンプルが判定される。位相サンプルは、周波数サンプルから、又は、デジタル化されたI及びQサンプルから演算された位相から、演算され得る。前者において、周波数誤差サンプルは、積分又は総計され、2πで除算されて、位相誤差サンプルが生成される。後者の場合、位相サンプルを演算するために、(演算された周波数サンプルに対する線形フィットに類似する)線形多項式フィットが適用される。用いられる多項式の一例は、φ(t)=at+bであり、ここで、φは、チャープ信号の位相サンプルであり、「t」は時間基準であり、「a」は勾配であり、「b」は切片である。これらの変数は、測定された位相サンプルと称されることもある位相サンプルに対して最良フィットを与える多項式係数である。
【0023】
工程306において、所定の位相サンプルが計算される。所定の位相サンプルは、理想的なチャープ信号の数学的モデルに基づく。位相誤差サンプルを生成させるために、工程308で、位相サンプルと所定の位相サンプルとの間の差が判定される。送信されたチャープ信号のダイナミック位相ノイズを生成させるために、工程310において位相誤差サンプルのパワースペクトル密度関数が計算される。位相誤差サンプルのパワースペクトル密度は、或る周波数オフセットにわたるノイズパワーを演算するために有用である。
【0024】
図4は、チャープ信号帯域幅が分析機器により適合され得ない状況においてチャープ信号のメトリックを演算するための手順を説明するフローチャート400である。要約すると、チャープ信号の全帯域幅がセグメントにセグメント化され、そして、各セグメントが分析される。この例では、チャープ信号は、下記の特性を有する。
送信されるチャープ信号帯域幅:70.3MHz
チャープ開始周波数:2.375GHz
チャープ停止周波数:2.445GHz
機器帯域幅:40MHz
セグメントの数:2
セグメント化された帯域幅:35MHz
セグメント1開始及び停止周波数:2.375~2.41GHz
セグメント2開始及び停止周波数:2.411~2.445GHz
【0025】
上述のように、チャープ信号帯域幅は、チャープ信号を分析するデバイス又は装置の帯域幅より大きい。工程402において、チャープ信号の帯域幅は複数のセグメントにセグメント化され、そのため、各セグメントは、分析機器の帯域幅内の帯域幅を有する。本明細書に記載の例において、チャープ信号の帯域幅は、分析機器の帯域幅内である、等しい帯域幅の半分にセグメント化される。セグメント化された半分のセグメントの開始及び停止周波数は、各セグメントのためのデジタル化されたIQサンプルを抽出するために、分析機器に入力される。工程404において、各セグメントのメトリックを判定するため、チャープ信号の各セグメントが
図2及び
図3に従って分析される。上述のメトリックに関して、第1のセグメント及び第2のセグメントは、それらのメトリックを個別に判定するために分析される。工程406において、全チャープ信号のメトリックを生成させるため、各セグメントのメトリックの二乗平均平方根が共に加算される。こういったメトリックには、周波数線形性及び位相ノイズが含まれる。
【0026】
図5は、レーダー502の周波数線形性及び位相ノイズを測定するテスト機器500のブロック図である。幾つかの例において、テスト機器500は自動化され、レーダー502の製造の間、レーダー502の周波数線形性及び位相ノイズを測定する。レーダー502は、チャープ信号を出力するテストモードを有する。
図5の例において、チャープ信号は、2.375GHzの開始周波数、及び2.41GHzの停止周波数を有する。テスト機器500は、レーダー502の出力に結合されるIQダウンコンバータミキサー504を含む。IQダウンコンバータミキサー504は、IQダウンコンバータミキサー504に対してミキシング信号を提供する外部局部発振器508に結合される。
図5の例において、局部発振器の周波数は2.5GHzである。IQダウンコンバータミキサー504により出力されるミキシングされた信号は、中間周波数(IF)デジタイザー510に出力され、IFデジタイザー510は、IQダウンコンバータミキサー504により生成されたミキシングされた信号からデジタルIQ信号を抽出する。IQダウンコンバータ504とIFデジタイザー510との組み合わせは、従来の信号分析器として同様の機能を提供する。プロセッサ514が、IFデジタイザー510により生成されたデジタル化されたIQ信号を分析し、
図2及び
図3に図示される方法に従って周波数線形性及びダイナミック位相ノイズチャープ信号を判定する。
【0027】
IQダウンコンバータ504は、その入力を、レーダー502により生成されたチャープ信号の形式で受信する。本願において提供される例におけるチャープ信号は、2.375GHz~2.51GHzの周波数範囲にある。チャープ信号は、ゼロIF信号を生成させるため、局部発振器508により生成された外部LOとミキシングされる。ゼロIF信号は、デジタル化された直交(IQ)サンプルを生成するためIFデジタイザー510を通過される。本明細書に記載される信号処理手法は、上述のように周波数線形性及びダイナミック位相ノイズを評価するため、プロセッサ514によりゼロIF信号に対して適用され得る。
【0028】
図6は、チャープ信号の周波数線形性及びダイナミック位相ノイズを測定する一層詳細なテスト機器600の一実施例のブロック図である。幾つかの例において、測定は、単一の集積回路チップ上で又は単一の回路により達成される。勾配、帯域幅、開始周波数、及び停止周波数などの定義された構成を有するチャープ信号が、レーダー602から送信される。チャープ信号の周波数は、分周器604によりスケールダウンされる。チャープ信号の周波数をスケールダウンすることは、後述のデバイスの一層シンプルな設計に適合する。
図6の例において、スケーリングは、チャープ信号を分割し得る分周器604によって、2、4、8、16、及び32などの複数のあり得る値で達成される。
【0029】
分周器604の出力は、ダウンコンバージョンプロセスのために用いられる補助ミキサー606の入力に結合される。
図6の例において、補助ミキサー606は、複素ミキサー又は直交ミキサーである。外部LO610が、レーダー602と同じ周波数を有する信号を生成する。
図6の実施例において、外部LO610は、76GHz~81GHzの範囲の周波数を生成する。外部LO610の出力は、ミキサー604と同じであり得る又は実質的に類似し得る分周器612に入力される。例えば、分周器612は、分周器604がレーダー602により出力される信号を低減するのと同じく、外部LO610の周波数を低減し得る。分周器612の出力は、ダウンコンバージョンのために用いられる補助LO616に入力される。補助LO616の出力はミキサー606に入力される。
【0030】
ミキサー606の出力は、IF増幅器622及びADC624を含むレシーバ620に結合される。幾つかの例において、IF増幅器622は、補助ミキサー606の出力を増幅する2階のバイ・クワッド(bi-quad)IF増幅器である。増幅器622の出力はADC624によりデジタル化される。ADC624の出力は、
図2及び
図3のフローチャート200及び300に説明される方法に従ってプロセッサ630によって処理される。幾つかの例において、プロセッサ630の処理は、レーダー602の他の部分と同じ回路又は集積回路に対して実施され、そのため、この処理は、レーダー602を特徴付けるために書き込まれるソフトウェア/ファームウェアの一部として取り込まれ得る。例えば、この処理は、レーダーのセルフテストプロセスとして実施され得る。
【0031】
位相ノイズが、ダウンコンバージョンの間に相殺され、ダイナミック位相ノイズ測定に影響を与え得るので、レーダー602に用いられるLOは、補助ミキサー606及び外部LO610をフィードするために用いることができない。この問題は、外部ソースから外部LO610をフィードすることによって克服される。他の内部クロックを用いることは、上述の測定に悪影響を与え得るノイズをつくり得る。
【0032】
実験テストデバイスの多くは、上述のようなチャープ信号のダイナミック位相ノイズを測定する能力を有さない。チャープ信号周波数線形性測定は典型的に、ハイエンドテスト機器を必要とする。本明細書に記載される方法及びデバイスは、一般的な信号分析器及び信号処理アルゴリズムの組み合わせを用いることによって周波数線形性及びダイナミック位相ノイズを共に測定することに関連する問題を克服する。
【0033】
図7は、チャープ信号の周波数線形性を判定するための方法を説明するフローチャート700である。この方法は、工程702でチャープ信号を直交信号にダウンコンバートすることを含む。工程704で、IF信号を生成させるために直交信号がデジタル化される。工程706で、IF信号の瞬時周波数が判定される。工程708で、チャープ信号の周波数線形性を判定するために、IF信号の瞬時周波数がチャープ信号の所定の瞬時周波数と比較される。
【0034】
図8は、チャープ信号のダイナミック位相ノイズを判定するための方法を説明するフローチャート800である。この方法は、工程802で、チャープ信号を直交信号にダウンコンバートすることを含む。またこの方法は、工程804でIF信号を生成させるために直交信号をデジタル化すること、工程806でIF信号のダイナミック位相を測定すること、及び、工程808で、チャープ信号のダイナミック位相ノイズを生成させるために、IF信号の測定されたダイナミック位相をチャープ信号の所定のダイナミック位相と比較することを含む。
【0035】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に変形が成され得、他の実施例が可能である。