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特許7235399選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法
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  • 特許-選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法 図1
  • 特許-選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法 図2
  • 特許-選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法 図3
  • 特許-選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法 図4
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  • 特許-選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法 図6
  • 特許-選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】選択的片末端反応を用いたシランカップリング剤合成方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
C07F7/18 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018171981
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020040930
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】渕上 清実
(72)【発明者】
【氏名】山本 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】北田 直也
(72)【発明者】
【氏名】信野 和也
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196682(JP,A)
【文献】特表2015-532663(JP,A)
【文献】特表2015-530427(JP,A)
【文献】特開2000-212269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応基質同士が相溶しない環境で、両基質を相溶させるための有機溶媒を加えることなく、不均一なエマルション状態を形成させ、そのエマルション界面で反応を進行させるシランカップリング剤の製造方法であって、
化合物(I)と化合物(II)を反応させる工程、
上記工程で得られた化合物に、化合物(III)を反応させる工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【化1】
式中、Zは、任意の有機基を表す。
【化2】
式中、
Aは、ラジカル重合性基、
BおよびR1は任意の有機基、aは1~6を表す。
【化3】
式中、
R2 およびR3は任意の有機基、
R4は任意の有機基(nが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する)を表し、
nは0~3を表す。
【請求項2】
反応基質同士が相溶しない環境で、両基質を相溶させるための有機溶媒を加えることなく、不均一なエマルション状態を形成させ、そのエマルション界面で反応を進行させるシランカップリング剤の製造方法であって、
化合物(I)と化合物(III)を反応させる工程、
上記工程で得られた化合物に、化合物(II)を反応させる工程、
を含むことを特徴とする製造方法。
【化4】
式中、Zは、任意の有機基を表す。
【化5】
式中、
Aは、ラジカル重合性基、
BおよびR1は任意の有機基、aは1~6を表す。
【化6】
式中、
R2 およびR3は任意の有機基、
R4は任意の有機基(nが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する)を表し、
nは0~3を表す。
【請求項3】
請求項1または2の製造方法において
マイクロリアクター素子、フローフォーカシングデバイス、ガラスビーズ充填カラム、SPG膜、マイクロチャネル、スタティックミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波素子のうち、
少なくとも1種類以上を用いることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1または2の製造方法において
少なくとも1種類以上の界面活性剤を用いることを特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医科歯科分野で骨や歯牙の欠損を修復するために金属補綴物や合成樹脂成型物などが用いられている。それらの生体硬組織への接着には、接着重合性モノマーを含有する接着剤が多用されている。また、歯科分野では、所謂コンポジットレジンと呼ばれる医科歯科用硬化性組成物が日々臨床にて使用されている。これは未硬化体(ラジカル重合前)ペーストを、歯牙等の欠損部位に充填した後に光照射等の外的エネルギーを付与することでラジカル重合硬化体を得る。
【0003】
一般的にこれらの接着剤やコンポジットレジンには、メチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート、ウレタン系ジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが使用されている。これら(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等のビニルモノマーのフリーラジカル重合(以下ラジカル重合と記す)では、炭素-炭素の二重結合が解裂し単結合になることで高分子体を形成し硬化する。このコンポジットレジンにはビニルモノマーだけではなく、無機充填剤が機械的強度向上の目的で添加される。一般的にそれらの無機充填剤は重合性基を有するシランカップリング剤により表面処理され、濡れ性の向上や機械的強度向上が図られている。歯科分野では従来より、シランカップリング剤としてγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下KBM-503と記す)が広く用いられている。該化合物で表面処理された粒子を用いた場合、疎水性が低いため加水分解が進行しやすく、材料の耐久性が低いという課題があった。また、その低い疎水性のため無機充填剤の充填率も低く十分な機械的強度が得られないと言う欠点も有していた。
【0004】
そのため、材料の耐久性や充填率を向上させるために、アルキル鎖の長いシランカップリング剤を使用する方法(特許文献1、2、3)、フルオロアルキレン基を有するシランカップリング剤を使用する方法(特許文献4)、重合性基を数多く有するシランカップリング剤を使用する方法(特許文献5)が提案されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1~特許文献3に記載の方法を、医科歯科用硬化性組成物の一つである医科歯科用コンポジットレジンに適用した際には、機械的強度に改善の余地があった。すなわち、単にアルキル鎖が長いだけでは、柔軟性(しなやかさ)や接着性・密着性に欠けていた。また、特許文献4に記載の方法を歯科材料に適用した際には、耐水性が低く、材料の耐久性は不十分であった。このように、従来技術でのシランカップリング剤を使用した材料の耐久性及び機械的強度の両立は不十分であり、更なる改良の余地があった。
【0006】
ラジカル重合性モノマーに対する高い親和性を与え、これにより医科歯科用硬化性組成物に用いた際に高い機械的強度、柔軟性(しなやかさ)及び耐久性を与える新規なシランカップリング剤、および新規なシランカップリング剤により表面処理された無機充填剤および新規な医科歯科用硬化性組成物を提供する事と、シランカップリング剤合成時に高価な白金やパラジウム等の貴金属触媒を使用しないことが求められていた。
【0007】
ここで、目的とするシランカップリング剤の合成において、非特許文献1にあるように、例えば1,10-デカンジオール等の両末端等価化合物の方末端のみに官能基を導入したい場合には、希薄溶液内で反応を行う方法が一般的であった。しかしながら、希薄溶液での反応は収量が極端に低いために工業的ではなかった。以下、より詳細に説明する。
【0008】
[化1]に示すように、両末端等価化合物としてエチレングリコール、付加化合物として2-イソシアネートエチルメタクリレートおよび3-イソシアナートプロピルトリメトキシシランを用いてシランカップリング剤(3,3-ジメトキシ-8,13-ジオキソ-2,9,12-トリオキサ-7,14-ジアザ-3-シラヘキサデカン-16-イルメタクリレート)を合成する場合を考える。まず、反応生成物および原材料を溶解する有機溶媒を選択する必要があり、[化1]の場合にはテトラヒドロフランが適当であった。よって、反応フラスコにエチレングリコール0.1mol、テトラヒドロフラン50mLおよびジブチルチンジラウリレート42.2mgを加え十分に攪拌し均一溶液とした。次にビーカに2-イソシアネートエチルメタクリレート0.1molおよびテトラヒドロフラン50mLを加え十分に攪拌し均一溶液とした後に滴下ロートに移液した。反応フラスコに分液ロート、温度計、攪拌機、冷却管をセットし、オイルバスにて内温が30℃になるまで加温した。恒温に達した後に、滴下ロートより2-イソシアネートエチルメタクリレート溶液を滴下し反応を開始した。滴下終了後、更に24時間攪拌を継続し、反応の熟成・完結を行った。ガスクロマトグラフィーによる分析では2-イソシアネートエチルメタクリレートは完全に消失していた。また、片末端付加物([化1]内の化合物(a))と両末端付加物([化1]内の化合物(b))は60:40の比率で存在していた。よって、2段階目の片末端付加物と3-イソシアナートプロピルトリメトキシシランの反応を行う前に、蒸留等の分離操作が必要となる。したがって、[化1]の反応スキームで最終的に得られるシランカップリング剤(3,3-ジメトキシ-8,13-ジオキソ-2,9,12-トリオキサ-7,14-ジアザ-3-シラヘキサデカン-16-イルメタクリレート)収率は60%以下になってしまい、製造コストの大幅な高騰を招いていた。
【0009】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平2-134307号
【文献】特開平3-70778号
【文献】特開2015-196682号
【文献】特開2007-238567号
【文献】特開2010-229054号
【文献】Huang X, Liu Y, Wang S, Zhou S, Zhu D. “Synthesis and self-assembly of 2,9,16-tri(tert-butyl)-23-(10-mercaptodecyloxy)phthalocyanine and the application of its self-assembled monolayers in organic light-emitting diodes" Chemistry - A European Journal, 2002, 8(18), 4179-4184.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ラジカル重合性モノマーに対する高い親和性を与え、これにより医科歯科用硬化性組成物に用いた際に高い機械的強度、柔軟性(しなやかさ)及び耐久性を与える新規なシランカップリング剤の合成において、高価な白金やパラジウム等の貴金属触媒を使用しないこと、および、例えば1,10-デカンジオール等の両末端等価化合物の方末端のみに官能基を導入する場合の反応において、片末端反応生成物のみを高い収率で得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者等の鋭意検討の結果、反応基質が相溶しない場合には、あえて両基質を相溶させるための有機溶媒を加える事無く、不均一なエマルション状態を形成させ、そのエマルション界面で反応が進行する様にする事で、片末端のみに効率的に官能基を導入出来る事を見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明は、シランカップリング剤の製造方法であって、
不均一なエマルション状態において、化合物(I)と化合物(II)を反応させる工程、上記工程で得られた化合物に、化合物(III)を反応させる工程、
を含むことを特徴とする製造方法に関する。
【0014】
【化2】
【0015】
化合物(I)において、式中、Zは任意の有機基を表す。
【0016】
【化3】
【0017】
化合物(II)において、式中、Aは、ラジカル重合性基、BおよびR1は任意の有機基、aは1~6を表す。
【0018】
【化4】
【0019】
化合物(III)において、式中、R2 およびR3は任意の有機基、
R4は任意の有機基(nが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する)を表し、nは0~3を表す。
【0020】
また、本発明は、シランカップリング剤の製造方法であって、
不均一なエマルション状態において、化合物(I)と化合物(III)を反応させる工程、上記工程で得られた化合物に、化合物(II)を反応させる工程、を含むことを特徴とする製造方法に関する。
【0021】
その基本的な概念を図1から図4に記載する。すなわち、相溶しない2-イソシアネートエチルメタクリレートのエチルエーテル溶液にエチレングリコールを懸濁させた状態を図1に示す。より詳細に説明すると、連続相であるエチルエーテルに大きな液滴(エチレングリコールが会合した液滴)が存在し、その周りに小さい液滴(2-イソシアネートエチルメタクリレートの1分子を表す)が存在する様子を示す。なお、図にて理解し易い様にエチルエーテルを用いた連続相にエチレングリコールが懸濁した状態を描いているが、エチルエーテルは必須ではなく、ニート反応でも反応基質同士が相溶しなければ問題ない。図2には小さい液滴が大きい液滴の界面で反応した状態を示す。一旦その様に反応すると、その反応点周辺は他の部位に比して疎水性が高まるため、図3に示した様にある種コロニー様を呈する。この小さい液滴が反応した部位は未反応の部位に比して大きく極性が異なるので、図4に示した様に自発的な分離・分裂が生じ離脱する。この離脱・分裂した液滴の概念図を図5に示す。図5ではより詳細な概念図を示す。すなわち、エチレングリコールの片末端に2-イソシアネートエチルメタクリレートが反応した部分が外側に向いた図であり、内向きには未反応のエチレングリコールのヒドロキシ基が会合した状態である。この状態がもっとも反応物が安定した状態であると考える。この分離・分裂後に残されたエチレングリコール液滴はやや液滴径が減少し、再度小さい液滴が反応を繰り返す事で片末端のみが反応した分子の集合体が得られる。その後、溶媒であるエチルエーテルを除去し、等モルの3-イソシアナートプロピルトリメトキシシランを反応させる事でほぼ100%の収率で所望する分子構造を有するシランカップリング剤が合成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法、すなわち、エマルション状態を意図的に形成させたシランカップリング剤合成法では一般的な均一な溶液による反応と異なり、両末端等価化合物への片末端選択的反応が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の概念図1
図2】本発明の概念図2
図3】本発明の概念図3
図4】本発明の概念図4
図5】本発明の概念図5
図6】実施例にて用いた合成装置
図7】実施例にて用いたガラスビーズ充填カラム
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明における合成される両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法で使用するエマルション生成装置としては、特に限定されないが好ましくはマイクロリアクター素子、フローフォーカシングデバイス、ガラスビーズ充填カラム、SPG膜、マイクロチャネル、スタティックミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、超音波素子から少なくとも1種以上から選択出来る。より好ましくはガラスビーズ充填カラムである。ガラス充填カラムは流路の閉塞が少なく、また、安価なガラスビーズを用いるので、容易にガラスビーズの交換が可能であるためである。
【0025】
本発明における合成される、両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法で合成されるシランカップリング剤の分子構造は、[化5]に示される構造である。式中、Zは、任意の有機基、Aはラジカル重合性基、BおよびR1は任意の有機基、aは1~6を表す。
また、R2 およびR3は任意の有機基、R4は任意の有機基(nが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する)を表し、nは0~3を表す。
【0026】
【化5】

【0027】
また、本発明の合成方法で合成されるシランカップリング剤の分子構造は、特に好ましくは、[化5]に示される構造であって、Aは、H2C=CH-, H2C=C(CH3)-, H2C=CH-C6H4- 基を表し(C6H4はフェニレン基を示す)、Bは、-C(O)-O-, -C(O)-S-, -C(O)-NH-, -NH-C(O)-NH-, -NH-C(O)-S-, -NH-C(O)-O- 基を表し、R1は、C2~C100の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、-O-CH2-CH2-基、-O-CH(CH3)-CH2-基、-O-CH2-CH(CH3)-基のうちから1以上含み得、
Zは、C2~C100の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、
少なくとも、-O-CH2-CH2-基、-O-CH(CH3)-CH2-基、-O-CH2-CH(CH3)-基のうちから1以上含み、
R2 は、C2~C100の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、-S-, -NH-, -NR4-(R4はアルキレン基を示す),-CH2-C6H4-(C6H4はフェニレン基を示す), -C(O)-O-, -O- 基、-O-CH2-CH2-基、-O-CH(CH3)-CH2-基、-O-CH2-CH(CH3)-基を含み得、
R3はC1~C6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、R4はR4はC1~C16の直鎖または分岐鎖のアルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を表しnが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する。aは1~6, nは0~3である。
【0028】
以下に特に好ましい化合物の化学構造を記載する。
【0029】
【化6】
【0030】
【化7】
【0031】
本発明における、不均一なエマルション状態をより安定にさせるために、界面活性剤を用いてもよい。本発明で使用可能な界面活性剤は特に限定されないが、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性(高分子)界面活性剤がある。より具体的にはアニオン性界面活性剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリメタクリル酸カリウム。アルキル硫酸エステル塩としてラウリル硫酸ナトリウム。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン。アルキルベンゼンスルホン酸塩として、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム。その他スルホン酸塩として、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸カリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸カリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸カリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸カリウム。脂肪酸塩として、半硬化牛脂脂肪酸ナトリウム、半硬化牛脂脂肪酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ヒマシ油ナトリウム、ヒマシ油カリウムその他、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルケニルコハク酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド。アルキルアミン塩として、ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート。第四級アンモニウム塩として、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンや原子移動ラジカル重合等の精密重合(ATRP,ICAR, AGET, Reverse ASTRP, RAFT, NMP)により合成されるブロックコポリマーやトリブロックポリマーなどがある。具体的にはポリメチルメタアクリレート-b-ポリアクリル酸ブロックコポリマー、ポリメチルメタアクリレート-b-ポリメタアクリル酸ブロックコポリマー、ポリメチルメタアクリレート-b-ポリビニルピロリドンブロックコポリマー、ポリメチルメタアクリレート-b-ポリ2-ヒドロキシメタアクリレートブロックコポリマー、ポリメチルメタアクリレート-b-ポリビニルアルコールブロックコポリマー、ポリメチルメタアクリレート-b-ポリエチレングリコールブロックコポリマー、ポリメチルアクリレート-b-ポリアクリル酸ブロックコポリマー、ポリメチルアクリレート-b-ポリメタアクリル酸ブロックコポリマー、ポリメチルアクリレート-b-ポリビニルピロリドンブロックコポリマー、ポリメチルアクリレート-b-ポリ2-ヒドロキシメタアクリレートブロックコポリマー、ポリメチルアクリレート-b-ポリビニルアルコールブロックコポリマー、ポリメチルアクリレート-b-ポリエチレングリコールブロックコポリマー、ポリスチレン-b-ポリアクリル酸ブロックコポリマー、ポリスチレン-b-ポリメタアクリル酸ブロックコポリマー、ポリスチレン-b-ポリビニルピロリドンブロックコポリマー、ポリスチレン-b-ポリ2-ヒドロキシメタアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン-b-ポリビニルアルコールブロックコポリマー、ポリスチレン-b-ポリエチレングリコールブロックコポリマーなどが挙げられる。
【実施例
【0032】
以下、本発明による両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法について詳しく説明するが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。
【0033】
まず、[図6] [図7]に本実験で使用した装置の配管図およびガラスビーズ充填カラムの模式図を示す。図中の矢印はエマルションの流れを意味する。
【0034】
(合成例1)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成1
50mLデュラン瓶に2,2'-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール):19.4g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:27.2mgおよびp-メトキシフェノール:13.6mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-イソシアネートエチルメタクリレート:15.52g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2,2'-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)および2-イソシアネートエチルメタクリレートは消失し、新たなピーク:16-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11,14-テトラオキサ-3-アザヘキサデシルメタクリレート(分子量349.38)を収率99.5%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した前駆体化合物27.2g(77.7mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である16-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11,14-テトラオキサ-3-アザヘキサデシルメタクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:3,3-ジメトキシ-8,22-ジオキソ-2,9,12,15,18,21-ヘキサオキサ-7,23-ジアザ-3-シラペンタコサン-25-イルメタクリレート(分子量554.7)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
【0035】
【化8】
【0036】
(合成例2)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成2
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に2,2'-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール):19.4g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:29.4mgおよびp-メトキシフェノール:14.7mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-(2-イソシアネートエトキシ)エチルメタクリレート:19.9g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2,2'-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)および2-(2-イソシアネートエトキシ)エチルメタクリレートは消失し、新たなピーク:19-ヒドロキシ-7-オキソ-3,8,11,14,17-ペンタオキサ-6-アザノナデシルメタクリレート(分子量393.43)を収率99.7%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した前駆体化合物29.4g(74.7mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である19-ヒドロキシ-7-オキソ-3,8,11,14,17-ペンタオキサ-6-アザノナデシルメタクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:3,3-ジメトキシ-8,22-ジオキソ-2,9,12,15,18,21,26-ヘプタオキサ-7,23-ジアザ-3-シラオクタコサン-28-イル メタクリレート(分子量598.72)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
【0037】
【化9】
【0038】
(合成例3)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成3
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に2-(2-(2-(2-ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ)プロポキシ)プロパン-1-オール:25.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:29.4mgおよびp-メトキシフェノール:14.7mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-イソシアネートエチルメタクリレート:15.5g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2-(2-(2-(2-ヒドロキシプロポキシ)プロポキシ)プロポキシ)プロパン-1-オールおよび2-イソシアネートエチルメタクリレートは消失し、新たなピーク:16-ヒドロキシ-6,9,12,15-テトラメチル-4-オキソ-5,8,11,14-テトラオキサ-3-アザヘキサデシルメタクリレート(分子量405.49)を収率99.4%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した32.8g(80.8mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である16-ヒドロキシ-6,9,12,15-テトラメチル-4-オキソ-5,8,11,14-テトラオキサ-3-アザヘキサデシルメタクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:3,3-ジメトキシ-11,14,17,20-テトラメチル-8,22-ジオキソ-2,9,12,15,18,21-ヘキサオキサ-7,23-ジアザ-3-シラペンタコサン-25-イル メタクリレート(分子量610.77)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。

【0039】
【化10】
【0040】
(合成例4)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成4
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に2,2'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール):15.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:29.4mgおよびp-メトキシフェノール:14.7mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-イソシアネートエチルメタクリレート:15.5g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2,2'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)および2-イソシアネートエチルメタクリレートは消失し、新たなピーク:13-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11-トリオキサ-3-アザトリデシルメタクリレート(分子量305.33)を収率99.5%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した32.8g(80.8mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である13-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11-トリオキサ-3-アザトリデシルメタクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:3,3-ジメトキシ-8,19-ジオキソ-2,9,12,15,18-ペンタオキサ-7,20-ジアザ-3-シラドコサン-22-イル メタクリレート(分子量510.61)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
【0041】
【化11】
【0042】
(合成例5)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成5
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に2,2'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール):15.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:29.4mgおよびp-メトキシフェノール:14.7mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-(2-イソシアネートエトキシ)エチルメタクリレート:19.92g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2,2'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)および2-(2-イソシアネートエトキシ)エチルメタクリレートは消失し、新たなピーク:16-ヒドロキシ-7-オキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-6-アザヘキサデシルメタクリレート(分子量349.38)を収率99.3%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した32.8g(80.8mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である16-ヒドロキシ-7-オキソ-3,8,11,14-テトラオキサ-6-アザヘキサデシルメタクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:3,3-ジメトキシ-8,19-ジオキソ-2,9,12,15,18,23-ヘキサオキサ-7,20-ジアザ-3-シラペンタコサン-25-イルメタクリレート(分子量554.66)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
【0043】
【化12】
【0044】
(合成例6)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成6
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に2,2'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール):15.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:29.4mgおよびp-メトキシフェノール:14.7mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-イソシアネート-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレート:24.0g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2,2'-(エタン-1,2-ジイルビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)および2-イソシアネート-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレートは消失し、新たなピーク:2-(((2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレート(分子量389.40)を収率99.7%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した前駆体化合物27.0g(69.3mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である2-(((2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)カルボニル)アミノ)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:2-((3,3-ジメトキシ-8-オキソ-2,9,12,15,18-ペンタオキサ-7-アザ-3-シラノナデカン-19-オイル)アミノ)-2-メチルプロパン-1,3-ジイルジアクリレート(分子量594.69)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
【0045】
【化13】
【0046】
(合成例7)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成7
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に3,6,9,12,15,18,21,24-オクタオキサヘキサコサン-1,26-ジオール:41.4g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:29.4mgおよびp-メトキシフェノール:14.7mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、エチルエーテル20mLに2-イソシアネートエチルアクリレート:14.12g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は乳白状態を呈していたが、時間経過と共に透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である3,6,9,12,15,18,21,24-オクタオキサヘキサコサン-1,26-ジオールおよび2-イソシアネートエチルアクリレートは消失し、新たなピーク:31-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11,14,17,20,23,26,29-ノナオキサ-3-アザヘントリアコンチルアクリレート(分子量555.62)を収率99.8%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(300mL容積)に上述の操作で合成した前駆体化合物48.5g(87.2mmol)を含有するエチルエーテル溶液を移液し、(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシラン:20.5g(0.10mol)を攪拌しながら滴下した。なお、反応温度は20℃とした。滴下終了後、12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT-IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である31-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11,14,17,20,23,26,29-ノナオキサ-3-アザヘントリアコンチルアクリレートおよび(3-イソシアネートプロピル)トリメトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:3,3-ジメトキシ-8,37-ジオキソ-2,9,12,15,18,21,24,27,30,33,36-ウンデカオキサ-7,38-ジアザ-3-シラテトラコンタン-40-イルアクリレート(分子量760.9)を確認した。また、FT-IR測定の結果、3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
【0047】
【化14】
【0048】
(比較合成例1)ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成1
合成例1と同様の装置を用い合成を行った。すなわち、50mLデュラン瓶に2,2'-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール):19.4g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:27.2mgおよびp-メトキシフェノール:13.6mgを加え電磁攪拌子にて攪拌溶解させた。次に、テトラヒドロフラン20mLに2-イソシアネートエチルメタクリレート:15.52g(0.10mol)を溶解した溶液をデュラン瓶に加え攪拌させた。それらの試薬をモーノポンプ(ハステロイ兵神装備製)ポンプにて100mL/minの流速でガラスビーズ充填カラム(カラム内径1.0cm, 長さ10cm, ガラスビーズ径100μm, ガラスビーズ層長さ9cm)循環させた。なお、循環時間は12時間とし、デュラン瓶は40℃に保温した。当初の溶液状態は均一な透明状態を呈した。12時間後、HPLCおよびFT-IR測定をおこなった。なお、その際のサンプルは極少量をピペットにて分取し、エバポレーターにて溶媒を除去したものを使用した。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX-ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT-IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である2,2'-((オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(エタン-1-オール)は完全には消失せず、シランカップリング剤前駆体である新たなピーク:16-ヒドロキシ-4-オキソ-5,8,11,14-テトラオキサ-3-アザヘキサデシルメタクリレート(分子量349.38)を収率60.5%で確認した。また、FT-IR測定の結果、2280~2250cm-1のイソシアナート吸収消失および3300cm-1近傍のヒドロキシ基吸収の強度低減を確認し、新たに1250cm-1にウレタン基由来の吸収を確認した。
【0051】
以上の合成例および比較合成例より明白なように、本発明である両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法、すなわち、エマルション状態を意図的に形成させたシランカップリング剤合成法では一般的な均一な溶液による反応と異なり、両末端等価化合物への片末端選択的反応が可能となった。すなわち、本発明により化学反応の課題であった両末端等価化合物への片末端選択的反応が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
現在使用されているシランカップリング剤は医科歯科分野、一般工業分野に限らず、諸物性を向上させるためにアルキレン鎖の長い化合物が使用されている。しかしながら、それらの合成において反応基質が両末端等価化合物である場合には反応収率が極めて悪かった。本発明である両末端等価化合物への選択的片末端反応を用いた効率的なシランカップリング剤の合成方法、すなわち、エマルション状態を意図的に形成させたシランカップリング剤合成法では一般的な均一な溶液による反応と異なり、両末端等価化合物への片末端選択的反応が可能となった。すなわち、本発明により化学反応の課題であった両末端等価化合物への片末端選択的反応が可能となった。本発明は両末端等価化合物への選択的片末端反応の反応収率課題を克服しており、産業上の利用の可能性は大きいと言える。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7