(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20230301BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20230301BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20230301BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01D53/94 220
B01D53/94 245
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 301Q
(21)【出願番号】P 2020144020
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000104607
【氏名又は名称】株式会社キャタラー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎮西 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】東條 巧
(72)【発明者】
【氏名】白川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】星野 将
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 実
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直人
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/131796(WO,A1)
【文献】特開2017-200675(JP,A)
【文献】特開2012-050961(JP,A)
【文献】特開2008-055418(JP,A)
【文献】特開2016-148256(JP,A)
【文献】特開2007-038085(JP,A)
【文献】特開2010-215534(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323785(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102728356(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104801316(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 23/63
B01D 53/94
F01N 3/10
F01N 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有し、前記上流端と前記下流端の間の長さがLsである基材と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域において、前記基材に接して形成された、パラジウム粒子を含む第一触媒層と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域において、前記基材に接して形成された、ロジウム粒子を含む第二触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第三距離Lcを隔てた第三位置との間の第三領域において、少なくとも前記第一触媒層に接して形成された、ロジウム粒子を含む第三触媒層と、
を備え、
前記第二触媒層及び前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.0~2.0nmであり且つ標準偏差が0.8nm以下である、排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記基材の長さLs、前記第一距離La、及び前記第二距離Lbが、La+Lb<Lsを満たす、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第二触媒層及び前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の総重量を基準とする、前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の割合が、0%超50%未満である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第二触媒層及び前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の総重量を基準とする、前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の割合が、10%超である、請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記第二触媒層及び前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の総重量を基準とする、前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の割合が、20%以上である、請求項3に記載の排ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で使用される内燃機関から排出される排ガスには、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分の排出量の規制は年々強化されており、これらの有害成分を除去するために、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属が触媒として用いられている。
【0003】
一方、資源リスクの観点から、貴金属触媒の使用量を低減させることが求められている。排ガス浄化装置において、貴金属の使用量を低減させる方法の一つとして、貴金属を担体上に微細な粒子として担持することが知られている。例えば、特許文献1には、酸化物担体に貴金属粒子を担持させて貴金属担持触媒とする工程と、還元雰囲気中で貴金属担持触媒を加熱処理して、貴金属の粒径を所定の範囲に制御する工程とを含む、触媒の製造方法が開示されている。特許文献1の実施例には、酸化物担体上の貴金属粒子の粒径を2.8nm以上3.8nm以下の範囲に制御することができたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貴金属の中でもRhはNOx還元活性を有する。しかし、特許文献1に記載の方法で粒径を制御したRh粒子は、高温に対する耐久性が十分でなく、高温条件下においてシンタリングして、触媒活性が低下することがあった。
【0006】
そこで、本発明は、高温条件下での使用後も高いNOx浄化率を示す排ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に従えば、排ガス浄化装置であって、
排ガスが流入する上流端及び前記排ガスが排出される下流端を有し、前記上流端と前記下流端の間の長さがLsである基材と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第一距離Laを隔てた第一位置との間の第一領域において、前記基材に接して形成された、パラジウム粒子を含む第一触媒層と、
前記下流端と前記下流端から前記上流端に向かって第二距離Lbを隔てた第二位置との間の第二領域において、前記基材に接して形成された、ロジウム粒子を含む第二触媒層と、
前記上流端と前記上流端から前記下流端に向かって第三距離Lcを隔てた第三位置との間の第三領域において、少なくとも前記第一触媒層に接して形成された、ロジウム粒子を含む第三触媒層と、
を備え、
前記第二触媒層及び前記第三触媒層に含まれる前記ロジウム粒子の粒径分布の平均が1.0~2.0nmであり且つ標準偏差が0.8nm以下である、排ガス浄化装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の排ガス浄化装置は、高温条件下での使用後も高いNOx浄化率を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁近傍の構成を模式的に示している。
【
図2】
図2は、基材の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、変形形態に係る排ガス浄化装置を、排ガスの流れ方向に平行な面で切断した要部拡大端面図であり、基材の隔壁近傍の構成を模式的に示している。
【
図4】
図4は、実施例及び比較例の排ガス浄化装置のNOx浄化率と全炭化水素(THC)浄化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図面において、同一の部材又は同様の機能を有する部材には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率が説明の都合上実際の比率とは異なったり、部材の一部が図面から省略されたりする場合がある。また、本願において、記号「~」を用いて表される数値範囲は、記号「~」の前後に記載される数値のそれぞれを下限値及び上限値として含む。
【0011】
実施形態に係る排ガス浄化装置100を、
図1、2を参照しながら説明する。実施形態に係る排ガス浄化装置100は、基材10、第一触媒層20、第二触媒層30、及び第三触媒層40を備える。
【0012】
(1)基材10
基材10の形状は特に限定されないが、例えば、基材10は、
図2に示すように、枠部12と、枠部12の内側の空間を仕切って複数のセル14を画成する隔壁16から構成されてよい。枠部12と隔壁16は一体的に形成されていてよい。枠部12は、円筒状、楕円筒状、多角筒状等の任意の形状であってよい。隔壁16は、基材10の第一端(第一端面)Iと第二端(第二端面)Jの間に延設され、第一端Iと第二端Jの間で延伸する複数のセル14を画成する。各セル14の断面形状は、正方形、平行四辺形、長方形、台形などの矩形、三角形、その他の多角形(例えば、六角形、八角形)、円形等の任意の形状であってよい。
【0013】
基材10は、例えば、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素等の高い耐熱性を有するセラミックス材料、ステンレス鋼等の金属箔からなるメタル材料から形成されてよい。コストの観点から、基材10はコージェライト製であることが好ましい。
【0014】
図1、2において、破線矢印は、排ガス浄化装置100及び基材10中の排ガスの流れ方向を示す。排ガスは、第一端Iを通って排ガス浄化装置100に流入し、第二端Jを通って排ガス浄化装置100から排出される。そのため、以降、適宜、第一端Iを上流端I、第二端Jを下流端Jとも呼ぶ。本明細書において、上流端Iと下流端Jの間の長さ、すなわち、基材10の全長をLsと表す。
【0015】
(2)第一触媒層20
第一触媒層20は、上流端Iと、上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第一距離Laを隔てた第一位置Pとの間の第一領域Xにおいて、基材10に接して形成される。第一距離Laは、基材10の全長Lsの15~35%であってよい。
【0016】
第一触媒層20は、パラジウム(Pd)粒子を含む。Pd粒子は、主に、HCを酸化させるための触媒として機能する。第一触媒層20におけるPd粒子の含有量は、第一領域Xにおける基材容積を基準として、例えば0.1~10g/Lであってよく、好ましくは1~9g/Lであってよく、より好ましくは3~7g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0017】
Pd粒子は、担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子としては、特に限定されず、例えば、酸化物担体粒子を用いることができる。Pd粒子は、含浸担持法、吸着担持法及び吸水担持法等の任意の担持法で担持することができる。
【0018】
酸化物担体粒子の例としては、金属酸化物の粒子、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族から選択される金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される1種以上の金属の酸化物の粒子が挙げられる。酸化物担体粒子が2種以上の金属の酸化物の粒子である場合、酸化物担体粒子は、2種以上の金属酸化物の混合物であってもよいし、2種以上の金属を含む複合酸化物であってもよいし、あるいは。1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物であってもよい。
【0019】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物であってよい。特に、金属酸化物は、アルミナ(Al2O3)、又はAl2O3及びランタナ(La2O3)の複合酸化物であってもよい。
【0020】
第一触媒層20における担体粒子の含有量は、第一領域Xにおける基材容積を基準として、例えば1~100g/Lであってよく、好ましくは10~90g/Lであってよく、より好ましくは30~70g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。担体粒子の粒径は、特に限定されず、適宜設定してよい。
【0021】
Pd粒子を担体粒子上に担持して用いる場合 、Pd粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、13重量%以下、又は11重量%以下であってよい。また、Pd粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.1重量%以上、0.5重量%以上、1重量%以上、5重量%以上、7重量%以上、又は9重量%以上であってよい。
【0022】
第一触媒層20は、さらに、他の任意成分を含んでいてもよい。他の任意成分としては、酸素過剰雰囲気下で雰囲気中の酸素を吸蔵し、酸素欠乏雰囲気下で酸素を放出するOSC(Oxygen Storage Capacity)材が挙げられる。
【0023】
OSC材としては、特に限定されず、例えば、酸化セリウム(セリア:CeO2)、セリアを含む複合酸化物(例えば、セリア-ジルコニア(ZrO2)複合酸化物(CZ又はZC複合酸化物)、アルミナ(Al2O3)-セリア-ジルコニア複合酸化物(ACZ複合酸化物))等が挙げられる。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、CZ複合酸化物が好ましい。CZ複合酸化物を、ランタナ(La2O3)、イットリア(Y2O3)等とさらに複合化させた複合酸化物もOSC材として用いることができる。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの重量割合は、CeO2/ZrO2=0.1~1.0であってよい。
【0024】
第一触媒層20におけるOSC材の含有量は、第一領域Xにおける基材容積を基準として、例えば1~100g/Lであってよく、好ましくは10~90g/Lであってよく、より好ましくは30~70g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0025】
第一触媒層20は、例えば以下のようにして、形成することができる。まず、Pd粒子前駆体及び担体粉末を含むスラリーを調製する。あるいは、予めPd粒子を担持した担体粉末を含むスラリーを調製してもよい。また、スラリーはさらに、OSC材、バインダー、添加物等を含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、第一領域Xにおいて基材10に塗布する。例えば、基材10を、上流端I側から第一距離Laに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、第一領域Xにおいてスラリーを基材10に塗布できる。あるいは、基材10の上流端I側からセル14にスラリーを流し込み、上流端Iにブロアーで風を吹きつけてスラリーを下流端Jに向かって塗り広げることにより、スラリーを基材10に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを乾燥、焼成する。それにより、第一領域Xにおいて、基材10に接して第一触媒層20が形成される。
【0026】
Pd粒子前駆体としては、適切なPdの無機酸塩、例えば、塩化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、フッ化水素酸塩等を用いることができる。
【0027】
(3)第二触媒層30
第二触媒層30は、下流端Jと下流端Jから上流端Iに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向と反対の方向に)第二距離Lbを隔てた第二位置Qとの間の第二領域Yにおいて、基材10に接して形成される。第二距離Lbは、基材10の全長Lsの40~65%であってよい。また、基材の長さLs、第一距離La、及び第二距離Lbは、La+Lb<Lsを満たしてよい。それにより、後述する実施例で示すように、排ガス浄化装置100は、高いNOx浄化率及び高いTHC浄化率を有することができる。
【0028】
第二触媒層30は、ロジウム(Rh)粒子を含む。Rh粒子は、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。第二触媒層30におけるRh粒子の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば0.05~5g/L、0.1~0.8g/L、又は0.4~0.6g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0029】
第二触媒層30に含まれるRh粒子の粒径分布の平均は1.0~2.0nmである。Rh粒子の平均粒径が1.0nm以上であることにより、触媒反応中に凝集して粗大化を引き起こすと考えられる粒径1.0nm未満の微細なRh粒子の割合が低減されるため、Rh粒子の触媒能の劣化が抑制され、排ガス浄化装置100の耐久性を向上させることができる。また、Rh粒子の平均粒径が2.0nm以下であることにより、Rh粒子が大きい比表面積を有することができ、高い触媒活性を示すことができる。
【0030】
Rh粒子の粒径分布の平均は、1.1nm以上、好ましくは1.2nm以上であってよい。また、Rh粒子の粒径分布の平均は、1.9nm以下、好ましくは1.8nm以下、より好ましくは1.6nm以下であってよい。Rh粒子の粒径分布の平均は、1.1~1.9nmであってよく、好ましくは1.2~1.8nmであってよい。
【0031】
第二触媒層30に含まれるRh粒子の粒径分布の標準偏差σは0.8nm以下である。この場合、Rh粒子の粒径分布がシャープであるため、微細なRh粒子及び粗大なRh粒子の含有割合が低い。微細なRh粒子が少ないことにより、触媒反応中のRh粒子の凝集が抑制されるため、Rh粒子の触媒能の劣化が抑制され、排ガス浄化装置100の耐久性が向上する。また、粗大なRh粒子が少ないことにより、Rh粒子の比表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0032】
Rh粒子の粒径分布の標準偏差σは、0.7nm以下であってよく、好ましくは0.6nm以下であってよく、より好ましくは0.5nm以下であってよい。Rh粒子の粒径分布は単分散であってもよいが、標準偏差σが0.2nm以上、0.3nm以上又は0.4nm以上であっても、排ガス浄化装置100の耐久性を向上させることができる。
【0033】
上述のような粒径分布を有するRh粒子は、特に、粒径が1.0nm未満である微細粒子の割合が低い。それにより、触媒反応中のRh粒子の凝集が抑制されるため、Rhの触媒能の劣化が抑制され、排ガス浄化装置100の耐久性が向上する。粒径1.0nm未満のRh粒子の量は、第二触媒層30中のRh粒子の全重量を基準として、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.1重量%以下であってよい。あるいは、第二触媒層30は、粒径1.0nm未満のRh粒子を全く含まなくてもよい。
【0034】
なお、本願において、Rh粒子の粒径分布は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において撮影した画像を元に、投影面積円相当径を計測し、集合数100以上の粒子群を解析することによって得られる。個数基準の粒径分布である。
【0035】
Rh粒子は、担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子としては、特に限定されず、例えば、酸化物担体粒子を用いることができる。
【0036】
酸化物担体粒子の例としては、金属酸化物の粒子、例えば、元素周期表の3族、4族及び13族から選択される金属、並びにランタノイド系の金属からなる群から選択される1種以上の金属の酸化物の粒子が挙げられる。酸化物担体粒子が2種以上の金属の酸化物の粒子である場合、酸化物担体粒子は、2種以上の金属酸化物の混合物であってもよいし、2種以上の金属を含む複合酸化物であってもよいし、あるいは。1種以上の金属酸化物と、1種以上の複合酸化物との混合物であってもよい。
【0037】
金属酸化物は、例えば、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ルテチウム(Lu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択される1種以上の金属の酸化物であってよく、好ましくはY、La、Ce、Ti、Zr及びAlからなる群から選択される1種以上の金属の酸化物であってよい。特に、金属酸化物は、アルミナ、セリア、及びジルコニアの複合酸化物であってもよく、該複合酸化物にイットリア、ランタナ、酸化ネオジム(Nd3O3)を微量転化して耐熱性を向上させてもよい。
【0038】
第二触媒層30における担体粒子の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば1~100g/Lであってよく、好ましくは10~90g/Lであってよく、より好ましくは30~70g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。担体粒子の粒径は、特に限定されず、適宜設定してよい。
【0039】
Rh粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、Rh粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、又は1.2重量%以下であってよい。また、Rh粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.5重量%以上、又は0.9重量%以上であってよい。
【0040】
担体粒子を、予め所定の粒径分布に制御されたRh粒子前駆体を含有するRh粒子前駆体分散液に接触させ、次いで焼成することによって、Rh粒子を担体粒子に担持することができる。
【0041】
Rh粒子前駆体分散液は、液状の分散媒と、分散媒中に分散されたRh粒子前駆体を含む。
【0042】
分散媒は、水性媒体であってよく、水、又は水と水性有機溶媒との混合物であってよい。典型的には、分散媒は水であってよい。
【0043】
Rh粒子前駆体は、水酸化ロジウムであってよい。ここで、水酸化ロジウムは、典型的には、Rhイオンがその価数と等しい数の水酸基と結合した化合物であるが、Rh-Rh結合を一部に含んでもよく、Rh-酸素原子-Rh結合を一部に含んでもよく、Rh-有機基結合を一部に含んでもよい。
【0044】
Rh粒子前駆体は、予め所定の粒径分布に制御されており、1.4nm以上、1.6nm以上、1.8nm以上、又は2.0nm以上のメジアン径(D50)を有してよく、また、2.9nm以下、2.8nm以下、2.7nm以下、2.6nm以下、2.5nm以下、又は2.4nm以下のメジアン径(D50)を有してよい。本願において、Rh粒子前駆体分散液中のRh粒子前駆体の粒径分布及びメジアン径は、動的光散乱法(DLS)により測定される。
【0045】
所定の粒径分布に制御されたRh粒子前駆体分散液は、例えば、以下のいずれかの方法によって調製することができる。
a)反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器中で、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させる方法(方法1)、及び
b)Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させた後、高速ミキサー中で撹拌処理する方法(方法2)。
【0046】
方法1において、反応器は、例えば、適当なクリアランス調節部材を有してよく、それにより、反応場のクリアランスを所定の値に設定することができる。
【0047】
反応場に、Rh化合物の酸性溶液及び塩基性溶液を導入すると、反応場でRh化合物の酸性溶液と塩基性溶液が反応して、反応場から排出される。ここで、反応場のクリアランスは所定の値に設定されているため、Rh化合物の酸性溶液と塩基性溶液の反応により生成される不溶成分の粒径は、反応場のクリアランスによって制限され、不溶成分の粒径が過度に増大することが抑制される。そのため、調製されるRh粒子前駆体分散液中のRh粒子前駆体の粒径分布を制御することができる。
【0048】
反応器のクリアランス調節部材は、例えば、2枚の平板、平板と波状板との組み合わせ、細管等であってよい。
【0049】
クリアランス調節部材が2枚の平板である場合、これら2枚の平板を所定の間隔で配置する。それにより、2枚の平板の間隙が反応場となり、2枚の平板の間の距離が反応場のクリアランスとなる。2枚の平板の少なくとも一方にスリットを形成してもよい。2枚の平板を反応中に相対的に回転又は平行移動させてもよい。平板の平面形状は、任意の形状、例えば、矩形、円形(ディスク状)、多角形状等であってよい。
【0050】
クリアランス調節部材が平板と波状板との組み合わせである場合、これらを互いに接して配置する。それにより、平板と波状板の凹部の間隙が反応場となり、該凹部の深さが反応場のクリアランスとなる。平板と波状板を反応中に相対的に回転又は平行移動させてもよい。平板及び波状板の平面形状は、任意の形状、例えば、矩形、円形(ディスク状)、多角形状等であってよい。
【0051】
クリアランス調節部材が細管である場合、細管の内部が反応場となり、細管の内径が反応場のクリアランスとなる。
【0052】
反応場のクリアランスは、Rh粒子前駆体の所望の粒径分布に応じて、適宜設定してよい。例えば、反応場のクリアランスは、1μm以上、2μm以上、4μm以上、6μm以上、8μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、又は30μm以上であってよい。また、反応場のクリアランスは、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、又は20μm以下であってよい。
【0053】
反応場のクリアランスが所定の範囲に設定された反応器として、例えば、適当なクリアランス調節部材を有するマイクロリアクターが挙げられる。反応器としては市販品を使用してよい。
【0054】
方法2では、まず、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを混合して反応させ、大粒径のRh粒子前駆体を生成させる。次いで、反応液を高速ミキサーの撹拌槽に導入し、高速で撹拌する、すると、反応液中のRh粒子前駆体が遠心力により、撹拌槽の内壁に押し付けられ、内壁に対するRh粒子前駆体の相対的な移動が抑制される。一方、反応液中の分散媒は、攪拌層内を回転して流れ続ける。この撹拌槽内における分散媒の回転流れにより、撹拌槽の内壁に押し付けられたRh粒子前駆体に強い剪断応力が加わる。この剪断応力により、粗大なRh粒子前駆体が微細化する。それにより、調製されるRh粒子前駆体分散液中のRh粒子前駆体の粒径分布を制御することができる。
【0055】
高速ミキサーとしては、例えば、周速が6m/sec以上の高速ミキサー等を用いることができる。高速ミキサーとして市販品を使用してもよい。
【0056】
方法1及び方法2で用いるRh化合物の酸性溶液は、Rh化合物が適当な溶媒に溶解された溶液であってよい。
【0057】
Rh化合物は、適切なRhの無機酸塩であってよく、例えば、塩化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、フッ化水素酸塩であってよい。
【0058】
Rh化合物の酸性溶液の溶媒は、水性媒体であってよく、水、又は水と水性有機溶媒との混合物であってよい。典型的には、溶媒は水であってよい。
【0059】
Rh化合物の酸性溶液のpHは、7.0未満であり、例えば、6.0以下、5.0以下、4.0以下、3.0以下、2.0以下、又は1.0以下であってよく、また、0.1以上、0.3以上、0.5以上、0.7以上、又は1.0以上であってよい。
【0060】
方法1及び方法2で用いる塩基性溶液は、塩基、特に有機塩基が適当な溶媒に溶解された溶液であってよい。
【0061】
有機塩基は、含窒素有機化合物であってよく、アミン化合物、環の構成原子として窒素原子を含む複素環式化合物等から選択されてよい。アミン化合物として、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、ジメチルアミノナフタレンが挙げられる。環の構成原子として窒素原子を含む複素環式化合物として、例えば、ピリジン、ジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【0062】
塩基性溶液の溶媒は、水性媒体であってよく、水、又は水と水性有機溶媒との混合物であってよい。典型的には、溶媒は水であってよい。
【0063】
塩基性溶液のpHは、7.0超であり、例えば、8.0以上、9.0以上、10.0以上、11.0以上、12.0以上、又は13.0以上であってよく、また、14.0以下、13.5以下、13.0以下、12.5以下、又は12.0以下であってよい。
【0064】
方法1及び方法2において、Rh化合物の酸性溶液と、塩基性溶液とを反応させて得られるRh粒子前駆体分散液は、塩基性(アルカリ性)であってもよいし、酸性であってもよい。塩基性のRh粒子前駆体分散液を調製する場合、使用する塩基とRh化合物のモル比(塩基/Rh化合物)は、例えば、2以上、5以上、10以上、15以上、又は20以上であってよく、また、100以下、75以下、50以下、40以下、30以下、又は20以下、であってよい。酸性のRh粒子前駆体分散液を調製する場合、使用する塩基とRh化合物のモル比(塩基/Rh化合物)は、1以下であってよい。
【0065】
方法1及び方法2において、反応温度は、-10~100℃の範囲内で適宜設定してよく、例えば室温であってよい。反応時間は、反応器の種類に応じて、例えば0.1秒~1時間の範囲内で適宜設定してよい。
【0066】
第二触媒層30は、さらに、他の任意成分を含んでいてもよい。他の任意成分としては、OSC材が挙げられる。
【0067】
OSC材としては、特に限定されず、例えば、セリア、セリアを含む複合酸化物(例えば、CZ複合酸化物、ACZ複合酸化物)等が挙げられる。特に、高い酸素吸蔵能を有し且つ比較的安価であることから、CZ複合酸化物が好ましい。CZ複合酸化物を、ランタナ(La2O3)、イットリア(Y2O3)等とさらに複合化させた複合酸化物もOSC材として用いることができる。セリア-ジルコニア複合酸化物におけるセリアとジルコニアとの重量割合は、CeO2/ZrO2=0.1~1.0であってよい。
【0068】
第二触媒層30におけるOSC材の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば10~200g/Lであってよく、好ましくは50~100g/Lであってよく、より好ましくは80~120g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0069】
第二触媒層30は、例えば以下のようにして、形成することができる。まず、Rh粒子前駆体及び担体粉末を含むスラリーを調製する。予めRh粒子を担持した担体粉末を含むスラリーを調製してもよい。また、スラリーはさらに、OSC材、バインダー、添加物等を含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、第二領域Yにおいて基材10に塗布する。例えば、基材10を、下流端J側から第二距離Lbに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、第二領域Yにおいてスラリーを基材10に塗布できる。あるいは、基材10の下流端J側からセル14にスラリーを流し込み、下流端Jにブロアーで風を吹きつけてスラリーを上流端Iに向かって塗り広げることにより、スラリーを基材10に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを乾燥、焼成する。それにより、第二領域Yにおいて、基材10に接して第二触媒層30が形成される。
【0070】
(4)第三触媒層40
第三触媒層40は、上流端Iと上流端Iから下流端Jに向かって(すなわち、排ガスの流れ方向に)第三距離Lcを隔てた第三位置Rとの間の第三領域Zにおいて、少なくとも第一触媒層20に接して形成される。第三距離Lcは、基材10の全長Lsの40~70%であってよい。また、第一距離Laと第三距離Lcは、La<Lcを満たしてよい。すなわち、第一触媒層20が形成された第一領域Xは、第三触媒層40が形成された第三領域Zに包含されてよい。さらに、基材の長さLs、第二距離Lb、及び第三距離Lcは、Lb+Lc>Lsを満たしてよい。すなわち、第二触媒層30が形成された第二領域Yと第三触媒層40が形成された第三領域Zは重複してよい。それにより排ガス浄化装置100が高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0071】
第三触媒層40は、ロジウム(Rh)粒子を含む。Rh粒子は、主に、NOxを還元させるための触媒として機能する。第三触媒層40におけるRh粒子の含有量は、第二領域Yにおける基材容積を基準として、例えば0.02~2g/L、0.05~0.7g/L、又は0.2~0.4g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0072】
第三触媒層40に含まれるRh粒子の粒径分布の平均は1.0~2.0nmである。Rh粒子の平均粒径が1.0nm以上であることにより、触媒反応中に凝集して粗大化を引き起こすと考えられる粒径1.0nm未満の微細なRh粒子の割合が低減されるため、Rh粒子の触媒能の劣化が抑制され、排ガス浄化装置100の耐久性を向上させることができる。また、Rh粒子の平均粒径が2.0nm以下であることにより、Rh粒子が大きい比表面積を有することができ、高い触媒活性を示すことができる。
【0073】
Rh粒子の粒径分布の平均は、1.1nm以上、好ましくは1.2nm以上であってよい。また、Rh粒子の粒径分布の平均は、1.9nm以下、好ましくは1.8nm以下、より好ましくは1.6nm以下であってよい。Rh粒子の粒径分布の平均は、1.1~1.9nmであってよく、好ましくは1.2~1.8nmであってよい。
【0074】
第三触媒層40に含まれるRh粒子の粒径分布の標準偏差σは0.8nm以下である。この場合、Rh粒子の粒径分布がシャープであるため、微細なRh粒子及び粗大なRh粒子の含有割合が低い。微細なRh粒子が少ないことにより、触媒反応中のRh粒子の凝集が抑制されるため、Rh粒子の触媒能の劣化が抑制され、排ガス浄化装置100の耐久性が向上する。また、粗大なRh粒子が少ないことにより、Rh粒子の比表面積が大きくなり、触媒活性が向上する。
【0075】
Rh粒子の粒径分布の標準偏差σは、0.7nm以下であってよく、好ましくは0.6nm以下であってよく、より好ましくは0.5nm以下であってよい。Rh粒子の粒径分布は単分散であってもよいが、標準偏差σが0.2nm以上、0.3nm以上又は0.4nm以上であっても、排ガス浄化装置100の耐久性を向上させることができる。
【0076】
上述のような粒径分布を有するRh粒子は、特に、粒径が1.0nm未満である微細粒子の割合が低い。それにより、触媒反応中のRh粒子の凝集が抑制されるため、Rhの触媒能の劣化が抑制され、排ガス浄化装置100の耐久性が向上する。粒径1.0nm未満のRh粒子の量は、第三触媒層40中のRh粒子の全重量を基準として、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、又は0.1重量%以下であってよい。あるいは、第三触媒層40は、粒径1.0nm未満のRh粒子を全く含まなくてもよい。
【0077】
Rh微粒子は、担体粒子上に担持されてもよい。担体粒子としては、特に限定されず、例えば、酸化物担体粒子を用いることができる。
【0078】
酸化物担体粒子としては、第二触媒層30に用いることができる材料と同様の材料を使用することができる。
【0079】
第三触媒層40における担体粒子の含有量は、第三領域Zにおける基材容積を基準として、例えば1~100g/Lであってよく、好ましくは10~50g/Lであってよく、より好ましくは30~40g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。担体粒子の粒径は、特に限定されず、適宜設定してよい。
【0080】
Rh粒子を担体粒子上に担持して用いる場合、Rh粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、又は1重量%以下であってよい。また、Rh粒子の担持量は、担体粒子の重量を基準として、例えば0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.05重量%以上、0.07重量%以上、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.4重量%以上、0.6重量%以上、又は0.7重量%以上であってよい。
【0081】
担体粒子を、予め所定の粒径分布に制御されたRh粒子前駆体を含有するRh粒子前駆体分散液に接触させ、次いで焼成することによって、Rh粒子を担体粒子に担持することができる。
【0082】
所定の粒径分布に制御されたRh粒子前駆体分散液は、「(3)第二触媒層30」の項にて説明した方法1又は方法2により、調製することができる。
【0083】
第三触媒層40は、さらに、他の任意成分を含んでいてもよい。他の任意成分としては、OSC材が挙げられる。
【0084】
OSC材としては、「(3)第二触媒層30」の項にて説明したOSC材を用いることができる。
【0085】
第三触媒層40におけるOSC材の含有量は、第三領域Zにおける基材容積を基準として、例えば10~120g/Lであってよく、好ましくは40~90g/Lであってよく、より好ましくは60~70g/Lであってよい。それにより排ガス浄化装置100が十分に高い排ガス浄化性能を有することができる。
【0086】
第二触媒層30及び第三触媒層40に含まれるRh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層40に含まれるRh粒子の割合は、0%超50%未満であってよい。それにより、後述する実施例で示すように、排ガス浄化装置100がより高いTHC浄化率を有することができる。さらに、第二触媒層30及び第三触媒層40に含まれるRh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層40に含まれるRh粒子の割合は、10%超50%未満、特に20%以上50%未満であってよい。それにより、後述する実施例で示すように、排ガス浄化装置100が、より高いNOx浄化率及びより高いTHC浄化率の両方を実現することができる。
【0087】
第三触媒層40は、例えば以下のようにして、形成することができる。まず、Rh粒子前駆体及び担体粉末を含むスラリーを調製する。あるいは、予めRh粒子を担持した担体粉末を含むスラリーを調製してもよい。また、スラリーはさらに、OSC材、バインダー、添加物等を含んでよい。スラリーの性状、例えば、粘性、固形成分の粒子径等は、適宜調整してよい。調製したスラリーを、第三領域Zにおいて、少なくとも第一触媒層20が形成された基材10に塗布する。例えば、基材10を、上流端I側から第三距離Lcに対応する深さまでスラリーに浸漬し、所定の時間が経過した後、該スラリーから基材10を引き上げることにより、第三領域Zにおいてスラリーを少なくとも第一触媒層20上に塗布できる。あるいは、基材10の上流端I側からセル14にスラリーを流し込み、上流端Iにブロアーで風を吹きつけてスラリーを下流端Jに向かって塗り広げることにより、スラリーを少なくとも第一触媒層20上に塗布してもよい。次に、所定の温度及び時間でスラリーを乾燥、焼成する。それにより、第三領域Zにおいて、少なくとも第一触媒層20に接して、第三触媒層40が形成される。
【0088】
なお、第二触媒層30と第三触媒層40の形成はどちらを先に行ってもよい。第二触媒層30を形成した後に第三触媒層40を形成すると、
図1に示すように、第二領域Yと第三領域Zの重複領域において、第二触媒層30上に第三触媒層40が形成される。第三触媒層40を形成した後に第二触媒層30を形成すると、
図3に示すように、第二領域Yと第三領域Zの重複領域において、第三触媒層40上に第二触媒層30が形成される。
【0089】
実施形態に係る排ガス浄化装置100は、内燃機関を備える種々の車両に適用され得る。
【0090】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(1)実施例及び比較例で使用した材料
a)基材(ハニカム基材)
材質:コージェライト
容積:875cc
隔壁の厚さ:2mil(50.8μm)
セル密度:1平方インチ当たり600個
セル断面形状:六角形
【0093】
b)材料1
La2O3複合化Al2O3(La2O3:1wt%~10wt%)
【0094】
c)材料2
ACZ(Al2O3-CeO2-ZrO2)複合酸化物(CeO2:15~30wt%)に、Nd2O3、La2O3、Y2O3を微量添加し、高耐熱化処理を施したもの
【0095】
d)材料3
CZ(CeO2-ZrO2)複合酸化物(CeO2:40wt%、ZrO2:50wt%、La2O3:5wt%、Y2O3:5wt%)
【0096】
e)材料4
CZ(CeO2-ZrO2)複合酸化物(CeO2:20wt%、ZrO2:70wt%、La2O3:5wt%、Y2O3:5wt%)
【0097】
f)材料5
硝酸パラジウム
【0098】
g)材料6
硝酸ロジウム
【0099】
h)材料7
以下のようにして調製した、Rh粒子前駆体分散液
50mLのイオン交換水に0.2gの硝酸ロジウム(III)を溶解させ、硝酸ロジウム(RN)水溶液(pH1.0)を調製した。また、濃度175g/Lの水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)水溶液(pH14)を用意した。クリアランス調節部材として2枚の平板を有する反応器(マイクロリアクター)を用いて、RN水溶液とTEAH水溶液を反応させた。具体的には、クリアランスを10μmに設定した反応場に、RN水溶液とTEAH水溶液を、TEAH:RN=18:1のモル比で導入して反応させて。Rh粒子前駆体分散液を調製した。得られた分散液のpHは14であった。また、動的光散乱法(DLS)により求めた、分散液中のRh粒子前駆体のメジアン径(D50)は、2.0nmであった。
【0100】
i)材料8
硫酸バリウム
【0101】
(2)材料6から形成されるRh粒子の評価
50mLのイオン交換水50mLに0.2gの材料6を溶解させ、硝酸ロジウム水溶液(pH1.0)を調製した。アルミナの質量を基準とするRhの質量の割合が0.5%となるように、硝酸ロジウム水溶液とアルミナとを接触させた後、焼成した。それにより、Rh粒子をアルミナに担持した。
【0102】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察により、アルミナに担持されたRh粒子の粒径分布を調べた。Rh粒子の粒径分布の平均は0.7nmであり、粒径分布の標準偏差は0.48nmであった。
【0103】
(3)材料7から形成されるRh粒子の評価
アルミナの質量を基準とするRhの質量の割合が0.5%となるように、材料7とアルミナとを接触させた後、焼成した。それにより、Rh粒子をアルミナに担持した。
【0104】
走査型透過電子顕微鏡(STEM)観察により、アルミナに担持されたRh粒子の粒径分布を調べた。Rh粒子の粒径分布の平均は1.4nmであり、粒径分布の標準偏差は0.48nmであった。
【0105】
(4)排ガス浄化装置の作製
実施例1~5
蒸留水を撹拌しながら、材料1、材料3、材料5、材料8、及びAl2O3系バインダーを加え、懸濁したスラリー1を調製した。次に、調製したスラリー1を基材の一端(上流端)から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払った。それにより、基材の一端と、基材の一端から基材の他端(下流端)に向かって基材全長の35%の長さの距離を隔てた第一位置との間の第一領域において、基材の隔壁がスラリー1でコーティングされた。内部を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置き、スラリー1中の水を蒸発させ、次いで、電気炉で基材を500℃で2時間焼成した。それにより、第一触媒層を形成した。
【0106】
このとき、第一領域における基材の容積を基準とした、第一触媒層中の材料1の含有量は50g/L、材料3の含有量は50g/L、材料5に由来するPdの含有量は5g/L、材料8の含有量は5g/Lであった。
【0107】
次に、蒸留水を撹拌しながら、材料1、材料2、材料4、材料7、及びAl2O3系バインダーを加え、懸濁したスラリー2を調製した。次に、調製したスラリー2を基材の他端(下流端)から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払った。それにより、基材の他端と、基材の他端から基材の一端(上流端)に向かって基材全長の55%の長さの距離を隔てた第二位置との間の第二領域において、基材の隔壁がスラリー2でコーティングされた。内部を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置き、スラリー2中の水を蒸発させ、次いで、電気炉で基材を500℃で2時間焼成した。それにより、第二触媒層を形成した。
【0108】
このとき、第二領域における基材の容積を基準とした、第二触媒層中の材料1の含有量は50g/L、材料2の含有量は50g/L、材料4の含有量は50g/L、材料7に由来するRhの含有量は表1に記載の通りであった。
【0109】
次に、蒸留水を撹拌しながら、材料1、材料2、材料4、材料7、及びAl2O3系バインダーを加え、懸濁したスラリー3を調製した。次に、調製したスラリー3を基材の一端(上流端)から流し込み、ブロアーで不要分を吹き払った。それにより、基材の一端と、基材の一端から基材の他端(下流端)に向かって基材全長の50%の長さの距離を隔てた第三位置との間の第三領域において、スラリー3の層が形成された。内部を120℃に保った乾燥機に基材を2時間置き、スラリー3中の水を蒸発させ、次いで、電気炉で基材を500℃で2時間焼成した。それにより、第三触媒層を形成した。
【0110】
このとき、第三領域における基材の容積を基準とした、第三触媒層中の材料1の含有量は33g/L、材料2の含有量は33g/L、材料4の含有量は33g/L、材料7に由来するRhの含有量は表1に記載の通りであった。
【0111】
このようにして、実施例1~5の排ガス浄化装置を作製した。第二触媒層及び第三触媒層に含まれるRhの総重量を基準とする第三触媒層中に含まれるRhの割合は、表1に記載の通りであった。
【0112】
実施例6
第二位置を、基材の他端(下流端)から基材の一端(上流端)に向かって基材全長の80%の長さの距離を隔てた位置としたこと以外は実施例3と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0113】
比較例1~3
第二触媒層及び第三触媒層の形成において、材料7の代わりに材料6を用いたこと、並びに、第二触媒層及び第三触媒層のそれぞれにおいて、材料6に由来するRhの含有量を表1に記載の通りとしたこと以外は実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を作製した。
【0114】
(5)排ガス浄化性能評価
実施例1~6及び比較例1~3の排ガス浄化装置を、それぞれ、V型8気筒エンジンの排気系に接続し、該エンジンにストイキ(空燃比A/F=14.6)及び酸素過剰(リーン:A/F>14.6)の混合気を、時間比3:1の一定の周期で交互に切り替えて繰り返し流入させ、排ガス浄化装置の床温を950℃に50時間にわたって維持した。それにより、排ガス浄化装置をエージング処理した。
【0115】
次に排ガス浄化装置をL型4気筒エンジンの排気系に接続し、該エンジンに空燃比A/Fが14.4の混合気を供給し、排ガス浄化装置に流入する排ガスの温度が550℃になるようにエンジンの運転条件を制御した。
【0116】
排ガス浄化装置に流入するガスと排ガス浄化装置から排出されたガスのNOx含有量を測定し、NOx浄化率として、(排ガス浄化装置から排出されたガス中のNOx含有量)/(排ガス浄化装置に流入するガス中のNOx含有量)を求めた。また、排ガス浄化装置に流入するガスと排ガス浄化装置から排出されたガスの全炭化水素(THC)含有量を測定し、THC浄化率として、(排ガス浄化装置から排出されたガス中のTHC含有量)/(排ガス浄化装置に流入するガス中のTHC含有量)を求めた。結果を表1及び
図4に示す。
【0117】
実施例1~6の排ガス浄化装置はいずれも、比較例1~3の排ガス浄化装置よりも高いNOx浄化率を示した。実施例1~6では、第二触媒層及び第三触媒層の形成において材料7を用いたことで、第二触媒層及び第三触媒層中のRh粒子の粒径分布の平均が1.0~2.0nm、且つ標準偏差が0.8nm以下に制御され、それによりRh粒子のシンタリングが抑制されたためと考えられる。
【0118】
また、基材の長さLs、第一距離La、及び第二距離Lbが、La+Lb<Lsを満たす実施例3の排ガス浄化装置は、実施例6の排ガス浄化装置よりも、高いNOx浄化率及び高いTHC浄化率を示した。実施例3では、La+Lb<Lsを満たすことにより、第二触媒層中のRh粒子が第一触媒層中のPd粒子と接触せず、Rh粒子がPd粒子と合金を形成して劣化することが抑制されたためと考えられる。
【0119】
特に、Rh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層に含まれるRh粒子の割合が、10%超である実施例2~5の排ガス浄化装置は、Rh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層に含まれるRh粒子の割合が、10%である実施例1の排ガス浄化装置よりも高いNOx浄化率を示した。また、Rh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層に含まれるRh粒子の割合が、0%超50%未満である実施例1~3の排ガス浄化装置は、Rh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層に含まれるRh粒子の割合が、50%以上である実施例4、5の排ガス浄化装置よりも高いTHC浄化率を示した。したがって、Rh粒子の総重量を基準とする、第三触媒層に含まれるRh粒子の割合が、10%超50%未満、特に20%以上50%未満である実施例2、3の排ガス浄化装置は、より高いNOx浄化率及びより高いTHC浄化率の両方を達成することができた。
【0120】
【符号の説明】
【0121】
10:基材、12:枠部、14:セル、16:隔壁、20:第一触媒層、30:第二触媒層、40:第三触媒層、100:排ガス浄化装置、I:上流端(第一端)、J:下流端(第二端)、P:第一位置、Q:第二位置、R:第三位置、X:第一領域、Y:第二領域、Z:第三領域