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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ブレーキシステムのための操作装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20230301BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20230301BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B60T13/74 D
B60T8/17 B
B60T8/171
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021556693
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2020058155
(87)【国際公開番号】W WO2020200915
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-20
(31)【優先権主張番号】102019204554.5
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ナーゲル ヴィリ
(72)【発明者】
【氏名】コルテス グアシュ エステーヴ
(72)【発明者】
【氏名】オセス ミヒャエル
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/194674(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01598252(EP,A1)
【文献】特表2018-526276(JP,A)
【文献】特表2018-526281(JP,A)
【文献】国際公開第2016/072413(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011106626(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/74
B60T 8/17
B60T 8/171
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキシステムのための操作装置であって、ブレーキペダルによって操作方向(4)に移動可能である入力ロッド(10)と、測定値発信器(14)および受信器(12)を備え、かつ前記入力ロッド(10)の移動位置を算出するために構成されたストロークセンサ(11)と、制動力発生器(5)とを有しており、該制動力発生器(5)が、スピンドルナット(7)およびスピンドル(8)を備えたスピンドル伝動装置(6)を有しており、前記スピンドルナット(7)が、前記操作方向(4)に延在する回転軸線(46)を中心にして回転可能に支承されていて、前記スピンドル(8)は、前記スピンドルナット(7)の回転によって軸方向に移動可能であって、前記制動力発生器が、算出された移動位置に依存して前記ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ(2)を操作するために前記スピンドル(8)を軸方向に移動させるように構成されており、前記入力ロッド(10)が前記スピンドル(8)に対して相対的に軸方向に移動可能であって、前記操作装置(1)がペダルストロークシミュレータ(18)を有しており、該ペダルストロークシミュレータ(18)が前記入力ロッド(10)によって操作可能である形式のものにおいて、
軸方向力を伝達する軸受(19)が設けられており、該軸受(19)は、一方では前記スピンドルナット(7)と、他方では前記ペダルストロークシミュレータ(18)との間で軸方向に保持されていることを特徴とする、ブレーキシステムのための操作装置。
【請求項2】
前記軸受(19)が、転がり軸受、特にボールベアリングとしてまたは滑り軸受として構成されていることを特徴とする、請求項1記載の操作装置。
【請求項3】
転がり軸受として構成された前記軸受(19)が、第1の軸受リング(20)と第2の軸受リング(21)とを有しており、前記軸受リング(20,21)が前記回転軸線(46)を中心にして互いに相対的に回転可能であって、前記軸受(19)の転動体が、前記軸受リング(20,21)間で半径方向または軸方向に配置されていることを特徴とする、請求項2記載の操作装置。
【請求項4】
前記入力ロッド(10)が、前記ペダルストロークシミュレータ(18)の少なくとも1区分を通って同軸的に延在していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項5】
前記ペダルストロークシミュレータ(18)が第1のばね装置(22)を有していて、該第1のばね装置(22)がコイルスプリング(25)および/またはエラストマースプリング(47)を有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項6】
前記ペダルストロークシミュレータ(18)が第2のばね装置(23)を有していて、該第2のばね装置(23)が少なくとも1つのエラストマースプリング(26)を有していることを特徴とする、請求項記載の操作装置。
【請求項7】
前記ペダルストロークシミュレータ(18)が第3のばね装置(24)を有していて、該第3のばね装置(24)が少なくとも1つの皿ばね(27,28)を有していることを特徴とする、請求項記載の操作装置。
【請求項8】
前記スピンドル(8)に対して相対的に軸方向に移動可能なスリーブ状の第1のエレメント(29)が設けられており、前記第1のエレメント(29)が軸方向切欠(44)を有していて、該軸方向切欠(44)内に前記第1のばね装置(22)が配置されており、前記操作装置(1)が、第1の負荷解除状態および第1の操作状態を有していて、前記第1の負荷解除状態で前記入力ロッド(10)の半径方向突起(31)が前記第1のエレメント(29)の後ろ側(33)に対して軸方向間隔(32)を保っていて、前記第1の操作状態で前記半径方向突起(31)が前記第1のばね装置(22)の圧縮後に前記第1のエレメント(29)の後ろ側(33)に軸方向で当接し、このような軸方向の当接によって前記第1のばね装置(22)のさらなる圧縮が阻止されていることを特徴とする、請求項記載の操作装置。
【請求項9】
前記スピンドル(8)が軸方向切欠(45)を有しており、該軸方向切欠(45)内に、前記第1のばね装置(22)が配置されているかまたは前記第1のばね装置(22)および前記第1のエレメント(29)が配置されていることを特徴とする、請求項記載の操作装置。
【請求項10】
前記第1のエレメント(29)に対して相対的に軸方向に移動可能な第2のエレメント(34)が設けられていて、該第2のエレメント(34)を通って前記入力ロッド(10)が同軸的に延在しており、前記第2のエレメント(34)が半径方向突起(38)を有していて、該半径方向突起(38)の端面側に前記第3のばね装置(24)が当接しており、前記第2のエレメント(34)が前記第1のエレメント(29)よりも大きい横断面を有しており、前記第1のエレメント(29)が半径方向突起(37)を有していて、該半径方向突起(37)に前記第2のエレメント(34)の横断面先細り部(36)が後ろから係合することを特徴とする、請求項8または9記載の操作装置。
【請求項11】
軸方向で互いに相対的に移動可能な2つのガイドディスク(39,40)が設けられており、第1の前記ガイドディスク(39)の端面側が軸方向で前記第2のばね装置(23)の後ろ側に当接し、第2の前記ガイドディスク(40)の後ろ側が軸方向で前記第2のばね装置(23)の端面側に当接し、この場合、前記ガイドディスクの少なくとも1つ(40)が、他方の前記ガイドディスク(39)に向かう方向に延在する軸方向突起(41)を有しており、前記操作装置(1)が第2の負荷解除状態を有していて、該第2の負荷解除状態で一方の前記ガイドディスク(40)の前記軸方向突起(41)が他方の前記ガイドディスク(39)に対して軸方向間隔(42)を保っており、また前記操作装置(1)が第2の操作状態を有していて、該第2の操作状態で前記軸方向突起(41)が前記第2のばね装置(23)の圧縮後に他方の前記ガイドディスク(39)に軸方向で当接し、この軸方向の当接により、前記第2のばね装置(23)のさらなる圧縮が阻止されていることを特徴とする、請求項から10までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項12】
前記第3のばね装置(24)が第1の皿ばね(27)と第2の皿ばね(28)とを有しており、これらの皿ばね(27,28)が軸方向で互いに間隔を保って配置されており、前記皿ばね(27,28)の間に前記第2のばね装置(23)が配置されているかまたは前記第2のばね装置(23)および前記ガイドディスク(39,40)が配置されていることを特徴とする、請求項11記載の操作装置。
【請求項13】
前記軸受(19)が、一方では前記スピンドルナット(7)と、他方では前記第3のばね装置(24)の皿ばね(28)との間で軸方向に保持されていることを特徴とする、請求項11または12記載の操作装置。
【請求項14】
前記ペダルストロークシミュレータ(18)が、一方では前記入力ロッド(10)と、他方では第1のハウジング部分(13)に配置された部分との間でプリロードをかけられていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の操作装置。
【請求項15】
第4のばね装置(43)が設けられており、該第4のばね装置(43)は、前記ペダルストロークシミュレータ(18)にプリロードをかけるために、一方では前記第1のハウジング部分(13)に配置された部分に支持されていて、他方では前記ペダルストロークシミュレータ(18)に支持されていることを特徴とする、請求項14記載の操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステムのための操作装置であって、ブレーキペダルによって操作方向に移動可能である入力ロッドと、測定値発信器および受信器を備え、かつ入力ロッドの移動位置を算出するために構成されたストロークセンサと、制動力発生器とを有しており、該制動力発生器が、スピンドルナットおよびスピンドルを備えたスピンドル伝動装置を有しており、この場合、スピンドルナットが、操作方向に延在する回転軸線を中心にして回転可能に支承されていて、スピンドルは、スピンドルナットの回転によって軸方向に移動可能であって、また制動力発生器が、算出された移動位置に依存してブレーキシステムのマスタブレーキシリンダを操作するためにスピンドルを軸方向に移動させるように構成されており、この場合、入力ロッドがスピンドルに対して相対的に軸方向に移動可能であって、操作装置がペダルストロークシミュレータを有しており、このペダルストロークシミュレータが入力ロッドによって操作可能である形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の液圧式のブレーキシステムは、一般的にホイールに対応配設された少なくとも1つのホイールブレーキ装置を有している。さらに、ブレーキシステムはマスタブレーキシリンダを有しており、このマスタブレーキシリンダは、ホイールブレーキ装置のホイールブレーキシリンダに流体技術的に接続されているので、マスタブレーキシリンダ内に支承された液圧ピストンが操作方向で軸方向に移動することによってブレーキ液がホイールブレーキシリンダ内に押しずらされ、その結果、ホイールブレーキ装置によって減速トルクが生ぜしめられる。マスタブレーキシリンダを操作するために、つまり液圧ピストンを移動させるために操作装置が設けられている。
【0003】
ブレーキ装置のための操作装置は、例えば特許文献1により公知である。操作装置は、スピンドル伝動装置を備えた制動力発生器を有している。スピンドル伝動装置は、操作方向に延在する回転軸線を中心にして回転可能に支承されたスピンドルナットと、このスピンドルナットの回転によって軸方向に移動可能なスピンドルとを有している。公知の操作装置はさらに入力ロッドを有しており、この入力ロッドはブレーキペダルによって操作方向に移動可能である。この場合、入力ロッドはスピンドルに対して相対的に軸方向に移動可能である。さらに、操作装置はストロークセンサを有しており、このストロークセンサは、測定値発信器および受信器を有していて、入力ロッドの移動位置を算出するために構成されている。最後に、制動力発生器は、算出された移動位置に依存してマスタブレーキシリンダを操作するためにスピンドルを軸方向に移動させるように構成されている。公知の操作装置の場合、少なくともマスタブレーキシリンダの操作の際に入力ロッドが直に機械的に液圧ピストンに連結されているので、入力ロッドの移動によって軸方向力が液圧ピストンに直接伝達可能である。また、公知の操作装置を有するブレーキシステムはサーボブレーキに関するものである。
【0004】
また、従来技術によればパワーブレーキが公知である。このパワーブレーキは、操作装置の入力ロッドとマスタブレーキシリンダの液圧ピストンとが、操作装置の通常運転中でマスタブレーキシリンダの操作時に、機械的に連結解除されていることを特徴としている。このことはつまり、入力ロッドと液圧ピストンとの間で、少なくとも堅固な機械的連結は存在しないということである。パワーブレーキの場合、操作方向での入力ロッドの移動に抗して働き、操作装置の使用者によって感知可能である所望の反力を生ぜしめるために、パワーブレーキは一般的にペダルストロークシミュレータを有しており、このペダルストロークシミュレータは入力ロッドによって操作可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】ドイツ連邦共和国特許公開第102015217522号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0006】
ブレーキシステムのための本発明による操作装置は、ペダルストロークシミュレータの、入力ロッドとは反対側の端部の低摩擦ひいては低摩耗の支持または支承を保証する。特に、操作装置がパワーブレーキとして構成されたブレーキシステムのプッシュスルー機能“Push-Through-Funktion”(踏み込み機能)を保証する、という利点が得られる。この場合、プッシュスルー機能とは、制動力発生器、特に制動力発生器の電動機が故障した時にマスタブレーキシリンダが直接操作可能であり、つまりこの場合、入力ロッドを操作方向に移動させることによって、入力ロッドと液圧ピストンとの間の堅固な機械的な連結が存在するかまたは形成されることであると解釈されてよい。これによって、操作装置または操作装置を備えたブレーキシステムを有する車両の運転時の安全性が高められる。本発明によれば、操作装置が軸方向力を伝達する軸受を有しており、この軸受は、一方ではスピンドルナットと、他方ではペダルストロークシミュレータとの間で軸方向に保持されている。したがって、この軸受は、軸方向力、つまり操作方向に作用する力または操作方向とは逆方向に作用する力を、ペダルストロークシミュレータからスピンドルナットにまたはスピンドルナットからペダルストロークシミュレータに伝達するために構成されている。さらに、この軸受は、ペダルストロークシミュレータに対して相対的な、スピンドルナットの低摩擦の回転を可能とするように構成されている。プッシュスルー機能を保証するために、スピンドルナットは少なくとも制動力発生器の故障時に軸方向で操作方向に移動可能であるので、制動力発生器の故障時に入力ロッドを操作方向に移動させることによってスピンドルナットが操作方向に移動せしめられ、このスピンドルナットの移動によってマスタブレーキシリンダが操作される。
【0007】
好適な実施例によれば、軸受が、転がり軸受、特にボールベアリングとしてまたは滑り軸受として構成されている。このような軸受型式は、一方ではペダルストロークシミュレータからスピンドルナットへのまたはスピンドルナットからペダルストロークシミュレータへの軸方向力の伝達を保証し、他方ではペダルストロークシミュレータに対して相対的な、回転軸線を中心にしたスピンドルナットの回転を可能とする。この場合、転がり軸受とは、摩擦抵抗を減少させるための転動体を有する軸受であると解釈されてよい。軸受が転がり軸受として構成されている場合、スピンドルナットの回転を特に低摩擦で可能にする、という利点が得られる。転動体がボールであれば特に好適であるので、転がり軸受はボールベアリングとして構成されている。転がり軸受としての構成の代わりに、軸受が滑り軸受として構成されている。この場合、滑り軸受とは、摩擦抵抗が軸受の潤滑によって少なくとも概ね減少される軸受であると解釈されてよい。軸受が滑り軸受として構成されている場合、軸受の損傷なしに特に高い軸方向力を軸受によって伝達可能である、という利点が得られる。
【0008】
好適な実施例によれば、転がり軸受として構成された軸受が、第1の軸受リングと第2の軸受リングとを有しており、これらの軸受リングが回転軸線を中心にして互いに相対的に回転可能であって、この場合、軸受の転動体が、軸受リング間で半径方向または軸方向に配置されている。特に転動体は軸受リングの間で半径方向に配置されている。この実施例によれば、軸受リングが互いに同心的に配置されており、この場合、軸受リングの外側が、軸受リングの内側よりも大きい直径を有している。代替的に、転動体は軸受リングの間で軸方向に配置されている。この実施例によれば、2つの軸受リングは、操作方向で見て相前後して並んで配置されている。これにより、軸受は、特に高い軸方向力を伝達するために構成されている、という利点が得られる。
【0009】
好適な実施例によれば、入力ロッドが、ペダルストロークシミュレータの少なくとも1区分を通って同軸的に延在している。これにより、ペダルストロークシミュレータの場所をとらない配置が得られる。
【0010】
好適な形式で、ペダルストロークシミュレータは第1のばね装置を有しており、この第1のばね装置は特にコイルスプリングおよび/またはエラストマースプリングを有している。したがって、ペダルストロークシミュレータは、入力ロッドが操作方向に移動する際に弾性的に変形可能に構成されている。この場合、ペダルストロークシミュレータの構造的に特に簡単な構成が得られる。好適な形式でペダルストロークシミュレータは第1のばね装置を用いて入力ロッドで支えられている。したがって、第1のばね装置の、マスタブレーキシリンダとは反対側の端部は、入力ロッドのマスタブレーキシリンダに対面する端部に軸方向で当接している。好適な形式で、第1のばね装置は少なくとも1つのコイルスプリングを有している。特に、コイルスプリングは小さいばね定数を有しているので、コイルスプリングによって、高くても90Nの反力が提供可能である。特に、第1のばね装置は、選択的にまたは追加的にエラストマースプリングを有している。エラストマースプリングは、コイルスプリングよりも大きいばね定数を有していて、軸方向で直接的にコイルスプリングに支えられている。したがって、エラストマースプリングを選択的にまたは追加的に設けることによって、コイルスプリングだけを設けるのと比較して、第1のばね装置の減衰作用が高められる。
【0011】
好適な形式で、ペダルストロークシミュレータは第2のばね装置を有しており、この第2のばね装置は特に少なくとも1つのエラストマースプリングを有している。第2のばね装置を設けることによって、移動位置-反力特性曲線へのより精確な適合が可能である。好適な形式で、第2のばね装置は、第1のばね装置のばね定数よりも大きいばね定数を有している。好適な形式で、第2のばね装置はこのために少なくとも1つのエラストマースプリングを有している。特に、第2のばね装置は、この第2のばね装置の弾性変形の大きさに依存して、第2のばね装置によって少なくとも90N乃至1000Nの反力が提供されるように構成されている。
【0012】
好適な実施例によれば、ペダルストロークシミュレータが第3のばね装置を有しており、この第3のばね装置が特に少なくとも1つの皿ばねを有している。第3のばね装置を設けることによって、移動位置-反力特性曲線への適合の精度がさらに高められる。この場合、第3のばね装置は好適には、第2のばね装置のばね定数よりも大きいばね定数を有している。好適な形式で、ペダルストロークシミュレータの複数のばね装置は直列に接続されている。複数のばね装置は、ペダルストロークシミュレータのばね装置のそれぞれによって軸方向力を、ペダルストロークシミュレータの別のばね装置に直接的にまたは間接的に、例えばスリーブ、連行部材等の、例えば力伝達部材を介在して伝達可能であるように配置されている。
【0013】
好適な形式で、操作装置は、スピンドルに対して相対的に軸方向に移動可能な第1のスリーブ状のエレメントを有しており、この第1のエレメントが軸方向切欠を有していて、この軸方向切欠内に第1のばね装置が配置されており、操作装置が、第1の負荷解除状態および第1の操作状態を有していて、第1の負荷解除状態で入力ロッドの半径方向突起が第1のエレメントの後ろ側に対して軸方向間隔を保っていて、第1の操作状態で半径方向突起が第1のばね装置の圧縮後に第1のエレメントの後ろ側に軸方向で当接し、このような軸方向の当接によって前記第1のばね装置のさらなる圧縮が阻止されている。第1のばね装置が第1のエレメントの軸方向切欠内に配置されていることに基づいて、第1のばね装置の、マスタブレーキシリンダに対面する端部は、第1のエレメントの、マスタブレーキシリンダとは反対側に軸方向で当接する。前記のように構成された第1のエレメントが設けられていることによって、第1のばね装置の最大許容圧縮量が規定される。これによって、反力の適合精度がさらに高められる。スリーブ状のエレメントは、特に軸方向切欠を有する円筒形のエレメントである。この場合、このエレメントの周壁は特に連続的に構成されているので、軸方向切欠は周壁によって全体的に包囲されている。代替的に、周壁は少なくとも1つの周壁開口部を有している。半径方向突起とは、入力ロッドの横断面肉厚部であると解釈されてよい。つまり入力ロッドは半径方向突起の領域で、操作方向で見て半径方向突起の直ぐ後ろよりも大きい横断面を有している。後ろ側とは、この特許出願の周辺状況において、エレメントの、マスタブレーキシリンダとは反対側のことであると解釈されてよい。端面側とは、エレメントの、マスタブレーキシリンダに対面する側のことであると解釈されてよい。
【0014】
好適な形式で、スピンドルは軸方向切欠を有しており、この軸方向切欠内に、第1のばね装置が配置されているかまたは第1のばね装置および第1のエレメントが配置されている。ばね装置、またはばね装置および第1のエレメントをこのような形式で配置することによって、ペダルストロークシミュレータの特に場所をとらない構成が得られる。
【0015】
好適な形式で、第1のエレメントに対して相対的に軸方向に移動可能なスリーブ状の第2のエレメントが設けられていて、この第2のエレメントを通って入力ロッドが同軸的に延在しており、第2のエレメントが半径方向突起を有していて、この半径方向突起の端面側に第3のばね装置が当接しており、この場合、第2のエレメントが第1のエレメントよりも大きい横断面を有しており、第1のエレメントが半径方向突起を有していて、この半径方向突起に第2のエレメントの横断面先細り部が後ろから係合する。前記のように構成された第2のエレメントを設けたことによって、使用者によって入力ロッドに加えられた、軸方向で操作方向に作用する操作力が、少なくとも第3のばね装置に伝達可能であるかまたは伝達されることが保証される。
【0016】
好適な形式で、操作装置は、軸方向で互いに相対的に移動可能な2つのガイドディスクを有しており、第1のガイドディスクの端面側が軸方向で第2のばね装置の後ろ側に当接し、第2のガイドディスクの後ろ側が軸方向で第2のばね装置の端面側に当接し、この場合、ガイドディスクの少なくとも1つが、他方のガイドディスクに向かう方向に延在する軸方向突起を有しており、操作装置が第2の負荷解除状態を有していて、この第2の負荷解除状態で一方のガイドディスクの軸方向突起が他方のガイドディスクに対して軸方向間隔を保っており、さらに操作装置は第2の操作状態を有していて、この第2の操作状態で軸方向突起が第2のばね装置の圧縮後に他方のガイドディスクに軸方向で当接し、この軸方向の当接により、第2のばね装置のさらなる圧縮が阻止されているようになっている。したがって、前記のように構成されたガイドディスクを設けたことによって、第2のばね装置の最大許容圧縮量が予め設定される。これによって、移動位置-反力特性曲線を特に精確に予め設定することができる。しかも、エラストマースプリングの強すぎる圧縮によって引き起こされるエラストマースプリングの塑性変形は避けられる。特に、第1の負荷軽減状態は第2の負荷軽減状態に相当するので、負荷軽減状態において、第1のばね装置も第2のばね装置も、入力ロッドが操作方向に移動することによって圧縮可能である。ガイドディスクとは、ディスク状のエレメント、つまりその半径方向寸法が軸方向寸法よりも大きい、特に著しく大きいエレメントのことであると解釈されてよい。
【0017】
好適な実施例によれば、第3のばね装置が第1の皿ばねと第2の皿ばねとを有しており、これらの皿ばねが軸方向で互いに間隔を保って配置されており、これらの皿ばねの間に第2のばね装置が配置されているかまたは第2のばね装置およびガイドディスクが配置されている。第2のばね装置および第3のばね装置のこのような構成は、一方ではペダルストロークシミュレータの特に場所をとらない構成である。他方では、このような第2のばね装置および第3のばね装置の構成または配置によって、軸方向力が第2のばね装置から第3のばね装置へまたは第3のばね装置から第2のばね装置へ伝達可能であるように保証されている。
【0018】
好適な形式で、軸受は、一方ではスピンドルナットと、他方では第3のばね装置の皿ばねとの間で軸方向に保持されている。それにより、軸受とペダルストロークシミュレータとの間で特に安定した当接接触が得られる。好適な実施例によれば、皿ばねは、限界負荷よりも小さい軸方向負荷において一方の軸受リングだけに当接し、限界負荷よりも大きい軸方向負荷において両方の軸受リングに当接するように配置されかつ弾性的に変形可能に構成されている。この場合、軸受は転がり軸受として構成されており、その軸受リングが互いに同心的に配置されているので、軸受の転動体は軸受リングの間で半径方向に配置されている。このように構成された軸受は、一般的に最大許容軸方向負荷を有しており、この場合、軸受は、最大許容軸方向負荷を越えると軸方向負荷によって損傷され得る。皿ばねは、限界負荷が最大許容軸方向負荷と同じかまたはこれを下回るように、構成されているかまたは配置されている。これによって、ペダルストロークシミュレータは、最大許容軸方向負荷を上回る軸方向負荷時に2つの軸受リングに当接し、それによって軸受の損傷は避けられる。
【0019】
好適な形式で、ペダルストロークシミュレータが、一方では入力ロッドと、他方では第1のハウジング部分に配置された部分との間でプリロードをかけて保持されている。この場合、配置された部分は、介在物なしに、つまり直接的に、または介在物ありで、つまり間接的に、若しくは第1のハウジング部分が配置されている少なくとも1つの別のエレメントを介在させて第1のハウジング部分に配置されている。特に、配置された部分は、第1のハウジング部分自体、別のハウジング部分またはマスタブレーキシリンダである。ペダルストロークシミュレータにプリロードをかけることによって、ペダルストロークシミュレータの部分がコンパクトに圧縮保持される、という利点が得られる。
【0020】
好適な形式で、操作装置は、第4のばね装置を有しており、この第4のばね装置は、ペダルストロークシミュレータにプリロードをかけるために、一方では第1のハウジング部分に配置された部分に支持されていて、他方ではペダルストロークシミュレータに支持されている。つまりペダルストロークシミュレータのプリロードは、少なくとも部分的に第4のばね装置によって提供される。配置された部分またはペダルストロークシミュレータにおける第4のばね装置の支持も、介在物なしで、つまり直接的に、または介在物ありで、つまり少なくとも1つの別のエレメントを介在させて行われる。好適な形式で、第4のばね装置は、スピンドルのためのリターンスプリングを有している。配置された部分は、例えば第1のハウジング部分自体、別のハウジング部分またはマスタブレーキシリンダである。スピンドルのためのリターンスプリングは、ペダルストロークシミュレータで支えるために、例えばスピンドルに連結されたプレッシャディスクに支持されており、この場合、プレッシャディスクは、少なくとも操作方向でスピンドルと一緒に移動可能であって、スピンドルは少なくとも操作方向とは逆方向でプレッシャディスクと一緒に移動可能である。したがって、スピンドルのためのリターンスプリングは、プレッシャディスク、スピンドル、スピンドルナットおよび軸受を用いてペダルストロークシミュレータで支えられている。選択的にまたは追加的に、第4のばね装置は、液圧ピストンのためのリターンスプリングを有している。このリターンスプリングは、一方ではマスタブレーキシリンダ内でマスタブレーキシリンダの、入力ロッドに対面する側に支えられていて、他方では液圧ピストンの、入力ロッドとは反対側に支えられている。したがって、液圧ピストンのためのリターンスプリングは、液圧ピストン、プッシュロッド、スピンドル、スピンドルナットおよび軸受を用いてペダルストロークシミュレータで支えられている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ブレーキシステムの好適な操作装置の第1実施例を示す図である。
図2】操作装置の第2実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を以下に図面を用いて詳しく説明する。この場合、図面中の同じ部材および対応する部材には同じ符号が付けられている。
【0023】
図1は、ブレーキシステムの操作装置1の縦断面図を示す。この場合、図1に示した操作装置1は、操作装置1の第1実施例である。操作装置1は、ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダ2を操作するために、つまりマスタブレーキシリンダ2内に支承された液圧ピストン3を操作方向4に移動させるために構成されている。マスタブレーキシリンダ2は、図示していないホイールブレーキ装置のホイールブレーキシリンダに流体技術的に接続されている。この場合、液圧ピストン3を操作方向4に移動させることによって、作動液がマスタブレーキシリンダ2からホイールブレーキシリンダ内に移動させられる。その結果、ホイールブレーキ装置によって減速トルクが生ぜしめられる。
【0024】
操作装置1は制動力発生器5を有している。制動力発生器5はスピンドル伝動装置6を有している。スピンドル伝動装置6は、制動力発生器5の電動機によって駆動可能なスピンドルナット7を有しており、このスピンドルナット7は操作方向4に延在する回転軸線46を中心にして回転可能に支承されている。さらに、スピンドル伝動装置6は、相対回動不能であるが軸方向に移動可能に配置されたスピンドル8を有しており、この場合、スピンドル8の外ねじは、スピンドルナット7の内ねじに噛み合い、したがってスピンドル8はスピンドルナット7の回転によって軸方向に移動可能である。スピンドル8が操作方向4で軸方向に移動することによって、少なくともマスタブレーキシリンダ2の操作時に端面側が液圧ピストン3に当接するプッシュロッド9がスピンドル8と一緒に移動せしめられる。
【0025】
操作装置1は入力ロッド10を有しており、この入力ロッド10は、図示していないブレーキペダルによって操作方向4に移動可能であって、スピンドル8に対して相対的に軸方向に移動可能である。入力ロッド10を操作方向4に移動させるために、操作装置1の使用者はブレーキペダルを操作し、それによって操作方向4に作用する軸方向力または操作力が入力ロッド10に伝達される。さらに、操作装置1はストロークセンサ11を有しており、このストロークセンサ11は、入力ロッド10の移動位置を算出するために構成されている。ここでは、ストロークセンサ11が受信器12を有しており、この受信器12は操作装置1の定置の第1のハウジング部分13に配置されている。さらに、ストロークセンサ11は測定値発信器14を有しており、この測定値発信器14は、入力ロッド10に連結された、操作装置1の第2のハウジング部分15に配置されている。2つのハウジング部分13および15は互いに同心的に配置されており、この場合、第2のハウジング部分15は、第1のハウジング部分13内で半径方向にガイドされている。第2のハウジング部分15の、操作方向4で見て後方の端部は半径方向突起16を有しており、この半径方向突起16は、第1のハウジング部分13の、操作方向4で見て前方の端部の横断面先細り部17に後ろから係合する。この場合、半径方向突起16および横断面先細り部17によって、操作方向4とは逆方向の入力ロッド10の最大許容移動量が規定される。この場合、半径方向突起16が軸方向で横断面先細り部17に当接すると、入力ロッド10は操作方向4に抗して移動できないかまたはそれ以上移動できない。
【0026】
操作装置1はさらにペダルストロークシミュレータ18を有している。この場合、ペダルストロークシミュレータ18とは、操作方向4に抗して入力ロッド10に作用する力、つまり反力を提供するために構成された装置であると解釈されてよい。入力ロッド10はブレーキペダルに連結されているので、反力は入力ロッド10によってブレーキペダルに伝達され、したがって操作装置1の使用者によって感知され得る。反力を提供するために、ペダルストロークシミュレータ18は入力ロッド10によって操作可能である。
【0027】
また、操作装置1は、軸方向力を伝達する軸受19を有しており、この軸受19は、一方ではスピンドルナット7と、他方ではペダルストロークシミュレータ18との間に軸方向で保持されている。この場合、軸受19は、ペダルストロークシミュレータ18に対して相対的なスピンドルナット7の回転を可能にする。このために軸受19は、2つの軸受リング20および21を有しており、これらの軸受リング20および21は互いに相対的に回転軸線46を中心にして回転可能である。軸受19は、ここではボールベアリング19である。ボールベアリング19のボールは、軸受リング20と21との間で半径方向に配置されている。したがって、軸受リング20および21は、外側の軸受リング20および内側の軸受リング21であって、外側の軸受リング20は、内側の軸受リング21よりも大きい直径を有していて、これらの軸受リング20,21は互いに同心的に配置されている。図1の図によれば、スピンドルナット7は外側の軸受リング20に軸方向で当接している。ペダルストロークシミュレータ18は軸受19の内側の軸受リング21に軸方向で当接している。代替的に、スピンドルナット7が軸方向で内側の軸受リング21に当接し、ペダルストロークシミュレータ18が外側の軸受リング20に軸方向で当接している。
【0028】
ペダルストロークシミュレータ18は、第1のばね装置22と、第2のばね装置23と第3のばね装置24とを有している。ばね装置22,23,24は直列に接続されている。第1のばね装置22は、図1の実施例によればコイルスプリング25を有している。コイルスプリング25は、小さいばね定数を有している。したがって、コイルスプリング25は、小さい反力、特に90Nよりも小さい反力だけを提供するために構成されている。第1のばね装置22またはコイルスプリング25の、マスタブレーキシリンダ2とは反対側の端部は、少なくとも間接的に、入力ロッド10の、マスタブレーキシリンダ2に対面する端部に軸方向で当接する。したがって、ペダルストロークシミュレータ18は、第1のばね装置22を用いて入力ロッド10で支えられる。第2のばね装置23はエラストマースプリング26を有している。エラストマースプリング26は、このために構成された90N乃至1000Nの反力を提供する。このために、第2のばね装置23またはエラストマースプリング26は、第1のばね装置22よりも大きいばね定数を有している。第3のばね装置24は、ここでは第1の皿ばね27および第2の皿ばね28を有している。皿ばね27および28はそれぞれ、1000Nよりも大きい反力を提供するために構成されている。このために、第3のばね装置24は、第2のばね装置23または第1のばね装置22よりも大きいばね定数を有している。
【0029】
操作装置1はさらに、スリーブ状に構成された第1のエレメント29を有している。第1のエレメント29は軸方向切欠44を有しており、この軸方向切欠44内に第1のばね装置22またはコイルスプリング25が配置されている。第1のばね装置22またはコイルスプリング25の、マスタブレーキシリンダ2に対面する端部は、軸方向切欠44内で、第1のエレメント29の、マスタブレーキシリンダ2とは反対側に軸方向で当接する。この場合、第1のエレメント29は、スピンドル8に対して相対的に軸方向に移動可能であって、スピンドル8の軸方向切欠45内に支承されている。
【0030】
ここでは、入力ロッド10とコイルばね25との間に入力ピストン30が配置されている。入力ピストン30は、第1のエレメント29内で軸方向に移動可能に支承されていて、半径方向突起31を有している。入力ピストン30は、入力ロッド10と少なくとも軸方向で機械的に堅固に連結されている。したがって、入力ピストン30は、入力ロッド10の構成部分であることを前提としている。また、半径方向突起31も入力ロッド10の構成部分である。図1の図によれば、半径方向突起31は、第1のエレメント29の後ろ側33に対して軸方向間隔32を有している。したがって、操作装置1は第1の負荷軽減状態にある。第1の負荷軽減状態から出発して、コイルスプリング25は、入力ロッド10の操作方向4への移動によって圧縮可能である。それとは異なり、半径方向突起31が後ろ側33に軸方向で当接すると、操作装置1は第1の操作状態に位置する。第1の操作状態から出発して、コイルスプリング25は、入力ロッド10が操作方向4に移動する際に圧縮可能ではないかまたはそれ以上圧縮可能ではない。したがって、半径方向突起31が後ろ側33に軸方向で当接することによって、コイルスプリング25の圧縮は阻止される。
【0031】
操作装置1はさらに、スリーブ状の第2のエレメント34を有していて、この第2のエレメント34は軸方向開口部35を有しており、この軸方向開口部35を通って入力ロッド10が同軸的に延在している。第2のエレメント34と第1のエレメント29とは、少なくとも部分的に互いに同心的に配置されており、この場合、第2のエレメント34は、第1のエレメント29よりも大きい横断面を有している。したがって、第1のエレメント29は第2のエレメント34内で半径方向にガイドされている。第2のエレメント34は、第1のエレメント29の半径方向突起37に後ろから係合する横断面先細り部36を有している。ここでは、横断面先細り部36は、操作方向4で見て、第2のエレメント34の後ろの端部の領域内に位置している。半径方向突起37は、操作方向で見て、第1のエレメント29の前方の端部に位置している。また、第2のエレメント34は、操作方向4で見て、横断面先細り部36の前に位置する半径方向突起38を有しており、この場合、第3のばね装置24または第1の皿ばね27は、半径方向突起38の端面側で支えられている。したがって、第1のエレメント29および第2のエレメント34によって、第1のばね装置22および第3のばね装置24の直列接続が保証される。図1によれば、半径方向突起38は、第2のエレメント34の、操作方向4で見て前方の端部に位置している。また、入力ロッド10は半径方向突起48を有している。半径方向突起48は入力ロッド10と連結されていて、第1の操作状態で第2のエレメント34に軸方向で当接するので、第1の操作状態から出発して、入力ロッド10が操作方向4にさらに移動する際に、第2のエレメント34は入力ロッド10と一緒に移動可能である。
【0032】
図1に示した実施例によれば、操作装置1は、第1のガイドディスク39と第2のガイドディスク40とを有しており、この場合、第1のガイドディスク39は、操作方向4で見て、第2のガイドディスク40の前に配置されている。ガイドディスク39および40は、互いに相対的に軸方向に移動可能である。また、各ガイドディスク39,40は、それぞれ1つの軸方向開口部を有しており、これらの軸方向開口部を通って入力ロッド10が延在している。第1のガイドディスク39は、第1の皿ばね27の端面側が当接する後ろ側と、第2のばね装置23のエラストマースプリング26の後ろ側が当接する端面側とを有している。第2のガイドディスク40は、エラストマースプリング26の端面側が当接する後ろ側と、第2の皿ばね28の後ろ側が当接する端面側とを有している。さらに、第2のガイドディスク40は、第1のガイドディスク39の方向に延在する軸方向突起41を有している。図1の図によれば、第1のガイドディスク39の端面側は、軸方向突起41に対して軸方向間隔42を有している。したがって、操作装置1は第2の負荷軽減状態にある。第2の負荷軽減状態から出発して、エラストマースプリング26は、入力ロッド10が操作方向4に移動せしめられる際に圧縮可能である。それとは異なり、操作装置1は、第1のガイドディスク39の端面側が軸方向突起41に軸方向で当接すると、第2の操作状態にある。第2の負荷軽減状態から出発して、エラストマースプリング26は、入力ロッド10が操作方向4に移動せしめられることによって、圧縮可能ではないかまたはそれ以上圧縮可能ではない。したがって、第1のガイドディスク39の端面側が軸方向突起41に軸方向で当接することによって、エラストマースプリング26の圧縮は阻止される。
【0033】
ペダルストロークシミュレータ18は、一方では入力ロッド10と、他方では少なくとも間接的に第1のハウジング部分13に配置された部分との間でプリロードをかけて保持されるように、構成されている。つまり、ペダルストロークシミュレータ18は、少なくとも第1のハウジング部分13の横断面先細り部17がペダルストロークシミュレータ18の第2のハウジング部分15の半径方向突起16に軸方向で当接する際に、一方では操作方向に抗して入力ロッド10に作用する軸方向力を提供し、他方では第1のハウジング部分13に少なくとも間接的に配置された部分に操作方向4に作用する軸方向力を提供する、ということである。
【0034】
ここでは、操作装置1は、ペダルストロークシミュレータ18にプリロードをかけるために第4のばね装置43を有している。第4のばね装置43は、一方では軸方向でスピンドル8に当接するプレッシャディスク49に支えられており、この場合、プレッシャディスク49は少なくとも操作方向4にスピンドル8と一緒に移動可能であって、スピンドル8は少なくとも操作方向4に抗してプレッシャディスク49と一緒に移動可能である。それによって、第4のばね装置43は、スピンドル8のためのリターンスプリング43として構成されている。他方では、第4のばね装置43は図示していないハウジング部分で支えられており、このハウジング部分は第1のハウジング13に少なくとも間接的に配置されている。最終的に、入力ロッド10から図示していないハウジング部分への軸方向力の伝達が、入力ピストン30、ペダルストロークシミュレータ18、軸受19、スピンドルナット7、スピンドル8および第4のばね装置49によって行われる。
【0035】
以下に、操作装置1の通常運転中における操作装置1の機能形式を説明する。この場合、通常運転とは、操作方向4への入力ロッド10の移動がマスタブレーキシリンダ2の制動力発生器5によって操作される、操作装置1の運転であると解釈されてよい。通常運転中に、スピンドル8は、操作方向4への入力ロッド10の移動の大きさに依存して操作方向4に移動せしめられる。また、操作方向4への入力ロッド10の移動の大きさに依存して、第1のばね装置22、第1のばね装置22および第2のばね装置23、または第1のばね装置22、第2のばね装置23および第3のばね装置24が、入力ロッド10の移動によって圧縮される。ばね装置22,23および24の圧縮によって、操作方向4に作用する軸方向力がスピンドルナット7に伝達される。スピンドルナット7は基本的に軸方向に移動可能に支承されている。しかしながら、通常運転中に、制動力発生器5の電動機はこれが運転されることによって、スピンドルナット7の軸方向の移動を阻止する反力を生ぜしめる。
【0036】
以下に、非常ブレーキ運転中の操作装置1の機能形式を説明する。この場合、非常ブレーキ運転とは、例えば電動機が故障しているために、入力ロッド10が操作方向4に移動させられる際に制動力発生器5によってマスタブレーキシリンダ2の操作が行われない、操作装置1の運転のことであると解釈されてよい。この場合、スピンドルナット7の軸方向の移動は、反力によって阻止されない。非常ブレーキ運転中でも、操作方向4への入力ロッド10の移動の大きさに依存して、ばね装置22,23および24が圧縮される。これによって、操作方向4に作用する軸方向力がスピンドルナット7に伝達され、この場合、操作方向4に作用する軸方向力が、リターンスプリング43によって加えられた操作方向4に抗してスピンドルナット7に作用する力を上回ると、スピンドルナット7はマスタブレーキシリンダ2を操作するために軸方向に移動せしめられる。特に、第2のエレメント34は、非常ブレーキ運転中に入力ロッド10が操作方向4に移動する際にスピンドル8に軸方向で当接するので、操作方向4に作用する軸方向力は、一方ではペダルストロークシミュレータ18および軸受19によってスピンドルナット7に伝達され、他方では第2のエレメント34によってスピンドル8に伝達される。
【0037】
図2は、操作装置1の第2実施例の縦断面図を示す。図1の実施例とは異なり、図2に示された操作装置1は、コイルスプリング25およびエラストマースプリング47を備えた第1のばね装置22を有している。この場合、コイルスプリング25およびエラストマースプリング47は相前後して並んで配置されているので、コイルスプリング25とエラストマースプリング47とは軸方向で互いに当接し合っている。図1に示した操作装置1の実施例による第1のばね装置22と比較して、図2に示した実施例の第1のばね装置22は、より強い減衰を提供するために構成されている。したがって、図2に示した実施例の第1のばね装置22によって、より強い減衰作用が生ぜしめられる。
【符号の説明】
【0038】
1 操作装置
2 マスタブレーキシリンダ
3 液圧ピストン
4 操作方向
5 制動力発生器
6 スピンドル伝動装置
7 スピンドルナット
8 スピンドル
9 プッシュロッド
10 入力ロッド
11 ストロークセンサ
12 受信器
13 第1のハウジング部分
14 測定値発信器
15 第2のハウジング部分
16 半径方向突起
17 横断面先細り部
18 ペダルストロークシミュレータ
19 軸受
20 外側の軸受リング
21 内側の軸受リング
22 第1のばね装置
23 第2のばね装置
24 第3のばね装置
25 コイルスプリング
26 エラストマースプリング
27 第1の皿ばね
28 第2の皿ばね
29 第1のエレメント
30 入力ピストン
31 半径方向突起
32 軸方向間隔
33 第1のエレメントの後ろ側
34 第2のエレメント
35 軸方向開口部
36 横断面先細り部
37 半径方向突起
38 半径方向突起
39 第1のガイドディスク
40 第2のガイドディスク
41 軸方向突起
42 軸方向間隔
43 第4のばね装置、リターンスプリング
44 軸方向切欠
45 軸方向切欠
46 回転軸線
47 エラストマースプリング
48 半径方向突起
49 プレッシャディスク
図1
図2