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特許7235430多様なセンサーによるテストを利用した風力タービン用診断装置
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  • 特許-多様なセンサーによるテストを利用した風力タービン用診断装置 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】多様なセンサーによるテストを利用した風力タービン用診断装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20230301BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
F03D17/00
H01M10/48 P
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016242203
(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公開番号】P2017110664
(43)【公開日】2017-06-22
【審査請求日】2019-12-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】1522385.2
(32)【優先日】2015-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521213325
【氏名又は名称】ケバ インダストリアル オートメーション ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】トビアス レスマン
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
【審判官】佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0181045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 17/00
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンであって、
予備電源と、
プロセッサと、
前記予備電源の状態を示す電圧値と電流値の少なくとも一方を測定するよう構成された第1センサーユニット及び第2センサーユニットと、を有し、
前記第1センサーユニットは、前記風力タービン内の第1部位において、前記電圧値及び前記電流値の少なくとも一方を測定するよう構成され、
前記第2センサーユニットは、前記風力タービン内の前記第1部位とは異なる第2部位において、前記電圧値及び前記電流値の少なくとも一方を測定するよう構成され、
前記プロセッサは、
前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方を、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方と比較し、
該比較に基づき、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方に信頼度を付与するよう構成され、
付与された前記信頼度が低信頼度と判定されると、動翼をフェザリング姿勢にすることで前記風力タービンをアイドリング状態にするよう更に構成された、風力タービン。
【請求項2】
前記第1部位は、前記予備電源に近接しており、前記第2部位は前記予備電源から離間している、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項3】
少なくとも1つのピッチ駆動ユニットを制御するよう構成された中央ユニットを更に有し、
前記第1部位は、前記少なくとも1つのピッチ駆動ユニットにあり、前記第2部位は、前記中央ユニットにある、請求項2に記載の風力タービン。
【請求項4】
前記少なくとも1つのピッチ駆動ユニットは、前記第1及び第2センサーユニットが前記電圧値と前記電流値の少なくとも1つを測定中に、ピッチモータを動作するよう構成され、
前記プロセッサは、ピッチモータ電圧、ピッチモータ電流、ブレーキチョッパに使用される電流、前記ブレーキチョッパに対応する電圧、平滑化コンデンサに使用される電流、平滑化コンデンサに対応する電圧の少なくとも1つを判定し、
前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方と、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方とを、前記ピッチモータ電圧、ピッチモータ電流、ブレーキチョッパに使用される電流、前記ブレーキチョッパに対応する電圧、平滑化コンデンサに使用される電流、平滑化コンデンサに対応する電圧の少なくとも1つに基づいて比較するように更に構成された、請求項3に記載の風力タービン。
【請求項5】
前記第1部位と第2部位との間に設けられ、前記予備電源側への第1方向に電流が流れることを実質的に可能とし、前記第1方向の反対の第2方向に電流が流れることを実質的に防止するダイオードを更に有し、
前記プロセッサは、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方と、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方との前記比較に基づき、前記ダイオードが適切に動作しているかを判定するよう更に構成された、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項6】
前記予備電源は、主電源により充電される超コンデンサであり、
前記電圧値は、前記超コンデンサの充電電圧であり、
前記電流値は、前記超コンデンサの充電中に、該超コンデンサに使用される充電電流である、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項7】
前記第1センサーユニットは前記風力タービンの備え付けセンサーユニットであって、前記第2センサーユニットは前記風力タービンに後付けされるか、
前記第2センサーユニットは前記風力タービンの備え付けセンサーユニットであって、前記第1センサーユニットは前記風力タービンに後付けされる、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項8】
前記後付けセンサーユニットは、前記備え付けセンサーユニットよりもSIL評価が高い、請求項7に記載の風力タービン。
【請求項9】
前記第1及び第2センサーユニットは、前記風力タービンがアイドルモードにある際に前記電圧値と前記電流値の少なくとも一方を測定するよう構成された、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記第1センサーユニットにより測定された前記電流値及び前記電圧値の少なくとも一方又は前記第2センサーユニットにより測定された前記電流値及び前記電圧値の少なくとも一方が、前記予備電源に修理又は交換が必要であると示しているかを判定するよう更に構成され、
該予備電源に修理又は交換が必要であると判定すると、前記プロセッサは動翼をフェザリング姿勢にすることで前記風力タービンをアイドリング状態にするよう更に構成された、請求項1に記載の風力タービン。
【請求項11】
風力タービン内の予備電源の状態を監視する方法であって、
第1センサーユニットを使用して、前記風力タービンの第1部位において、前記第1部位における前記予備電源の状態を示す電圧値と電流値の少なくとも一方を測定することと、
第2センサーユニットを使用して、前記風力タービン内の前記第1部位とは異なる第2部位において、前記第2部位における前記電圧値及び前記電流値の少なくとも一方を測定することと、
前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方を、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方と比較することと、
該比較に基づき、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方に信頼度を付与することと、
付与された前記信頼度が低信頼度と判定されると、動翼をフェザリング姿勢にすることで前記風力タービンをアイドリング状態にすること、を含む、方法。
【請求項12】
前記第1センサーユニットを使用する前記測定ステップは前記風力タービンのピッチ駆動ユニットで行われ、前記第2センサーユニットを使用する前記測定ステップは前記風力タービンの中央ユニットで行われる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ピッチモータ電圧及びピッチモータ電流の少なくとも一方を判定することと、
前記ピッチモータ電圧及び前記ピッチモータ電流の少なくとも一方に基づき、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方を、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方と比較することを更に含む、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンに使用される電源予備システムの実現に関する。特に、本発明は電源予備システムに対する測定の信頼性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
風力タービンは典型的には、安全性を向上し、例えば通常電源供給喪失時のような緊急時にはタービンをアイドルモードにする電気的予備システムを有する。予備システムは、多くの場合バッテリ又は超高容量コンデンサにより動力供給される予備電源の形態をとる。主電源供給喪失又は動翼駆動が不能の際には、動翼をいわゆる「フェザリング姿勢」とするのに十分な電力が予備電源から動翼ピッチモータに供給される。フェザリング姿勢をとった動翼はタービンの回転を遅くし、最終的に動翼が停止すると、電力生成がなくなり、タービンはアイドルモードに入る。
【0003】
予備システムの機能を定期的に検証することが重要である。風力タービン認証ガイドライン2010年版、及び風力タービンの設計要件の国際基準(IEC61400-1)では、風力タービンの予備及び保全システムが毎週テストされることが求められている。
【0004】
テスト手順を実行する方法は、欧州特許出願2824321A1に記載されている。当該方法では、テスト中に予備電源の放電電流及び電圧を測定することが求められる。予備電源のテストにおいては、当該測定の信頼度を確実に妥当なレベルとすることが重要である。信頼度は測定が信頼に足るものであるか、ひいてはテスト結果が信頼に足るものであるかの指標となるのである。
【発明の概要】
【0005】
上述の問題に少なくとも部分的に対処するために、本発明は、添付の請求項にて定義される装置、方法を提供する。特に、本発明は、予備電源と、前記予備電源の状態を示す電圧値と電流値の少なくとも一方を測定するよう構成された第1センサーユニット及び第2センサーユニットと、を有する風力タービンであって、前記第1センサーユニットは、前記風力タービン内の第1部位において、前記電圧値及び前記電流値の少なくとも一方を測定するよう構成され、前記第2センサーユニットは、前記風力タービン内の前記第1部位とは異なる第2部位において、前記電圧値及び前記電流値の少なくとも一方を測定するよう構成される風力タービンを提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記風力タービンはプロセッサを更に備え、前記プロセッサは、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方を、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方と比較し、当該比較に基づき、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値及び電流値の少なくとも一方に信頼度を付与するよう構成される。
【0007】
好適には、本発明は、第1センサーユニットにより測定される予備電源の充電電流/電圧の測定の有効性を確認する手段を提供する。これにより、本発明は、予備電源の特性の測定の信頼度が低く、そのため予備電源の状態が十分に把握できないため適切な対応策を取るような場合を特定できる。これにより、本発明は、風力タービンの安全性を向上させる。
【0008】
前記第1部位は、前記予備電源に近接しており、前記第2部位は前記予備電源から離間していてもよい。前記第1部位は、制御ユニットにあり、前記第2部位は、前記少なくとも1つのピッチ駆動ユニットにある。これにより、センサーの一方を最大限の測定精度を得るのに適した部位に配置でき、他方を装置全体として環境条件(例えば温度)がより良い箇所又はメンテナンス/後付け、その他のためにアクセスしやすい箇所に置かれる。いくつかの例では、タービンは、ピッチ駆動ユニットを動翼毎に有する。各ピッチ駆動ユニットは、予備電源を有し、好ましくはピッチ駆動ユニット毎に異なるセンサーが設けられる。中央ユニットに配置された1つのセンサーは、評価されるピッチ駆動ユニットにおけるそれぞれのセンサーの測定を可能にするという利点がある。
【0009】
前記プロセッサは、ピッチモータ電圧、ピッチモータ電流、ブレーキチョッパに使用される電流、前記ブレーキチョッパに対応する電圧、平滑化コンデンサに使用される電流、平滑化コンデンサに対応する電圧の少なくとも1つを判定し、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方と、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方とを、前記ピッチモータ電圧、ピッチモータ電流、ブレーキチョッパに使用される電流、前記ブレーキチョッパに対応する電圧、平滑化コンデンサに使用される電流、平滑化コンデンサに対応する電圧の少なくとも1つに基づいて比較するように更に構成されてもよい。したがって、プロセッサは、ピッチ駆動ユニットにおけるその他電子部品により使用される電流及び対応する電圧降下を考慮して構成されている。これによって、充電電流/電圧の測定中に、ピッチ駆動モータが動作可能になり、ピッチ駆動ユニットに対応する動翼が予備電源の特性の定量中にも動作可能になるという利点がある。したがって、予備電源のテスト中に、風力タービンが生成できる電力が増加し得る。
【0010】
前記風力タービンは、前記第1部位と前記第2部位との間に設けられ、前記予備電源側への第1方向に電流が流れることを実質的に可能とし、前記予備電源の反対側への第2方向に電流が流れることを実質的に防止するダイオード(減結合ダイオード等)を更に有し、前記プロセッサは、前記第1センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方と、前記第2センサーユニットにより測定された前記電圧値と電流値の少なくとも一方との前記比較に基づき、前記ダイオードが適切に動作しているかを判定するよう更に構成されてもよい。2つのセンサーを互いに離間した部位に配置することで、更に減結合ダイオードの動作を検証できるという利点がある。
【0011】
いくつかの実施形態において、センサーの1つは、風力タービンに後付けされる。例えば、後付けされるセンサーは、ロバストな種類で、更に/あるいは備え付けのセンサーユニットよりもSILが高くてもよい。これにより、風力タービンに関連したSILを向上できる。いくつかの実施形態において、後付けセンサーユニットは、備え付けセンサーユニットよりもシンプルである。このため、メンテナンス要件が減り、備え付けセンサーの有効性確認の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
発明の実施形態を、以下の添付の図を参照に、あくまで例示的に説明する。
図1A図1Aは、本発明の好適な実施形態に係る風力タービンの概略図である。
図1B図1Bは、本発明の好適な実施形態に係る風力タービンの概略図である。
図2図2は、予備電源状態の測定の信頼度向上に寄与する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、予備電源の特性測定の信頼性向上が可能なロバストなシステムを提供する。測定の信頼度が増せば、予備電源の動作特性をより確かに把握でき、風力タービンそのものの安全性が向上する。信頼度が低すぎ、風力タービンが最早安全な状態ではない、即ち例えばいつ止まってもおかしくないという状態が検知されれば、適切な対応策を取ることができる。適切な対応策の例としては、風力タービンをフェザリング姿勢にし、例えば、技術者が風力タービンを訪れて、低信頼度に繋がった故障部品を取り換えるまで、その状態を維持しておくことが挙げられる。隣接位置でセンサー数を倍増するよりも、異なる箇所で得られた値を比較した方が信頼性が高い。隣接配置された2つのセンサーは、温度が高すぎるという同じ要因の故障を生じ得る。近接配置された2つのセンサーの測定値を比較することで、ある程度その信頼度が増す。本発明は、測定が可能な限り互いに独立して行われることを保証し、これにより有効性確認の信頼性を向上するものである。
【0014】
これにより、より安全度水準(SIL)が高い風力タービンが得られ得る。更に、本発明は第2センサーユニットを簡単に後付け、メンテナンス可能とするものであって、これにより既存の風力タービンの安全性を向上する。
【0015】
図1Aは、本発明の好適な実施形態に係る風力タービン100のいくつかの内部部品の概略図である。風力タービン100は、中央回路103を有する中央ユニット102と、ピッチ駆動回路105を有するピッチ駆動ユニット104とを備える。中央ユニットは、主電源106に接続され、バス107(いわゆるフィールドバス)と、電源連結部108とを介してピッチ駆動ユニット104に接続される。風力タービンは更に、中央ユニット102とピッチ駆動ユニット104との間に位置し、電源電流が中央ユニット102からピッチ駆動ユニット104に流れることが可能だが、その逆には流れないようにするように構成された減結合ダイオード118を更に有する。主電源106は、電力グリッドへの連結部であってもよい。ピッチ駆動ユニット104は、ピッチモータ110に接続される。好適の実施形態においては、中央ユニットは風力タービン100の回転ハブ(図示せず)内に配置される。別の実施形態においては、中央ユニットは風力タービン100のナセル(図示せず)内に配置される。
【0016】
通常運転中、主電源106は中央ユニット102に電力供給する。中央ユニットは、電源連結部108を介してピッチ駆動ユニット104に電力供給し、バス107を介してピッチ駆動ユニット104に制御信号を送る。ピッチ駆動ユニット104はピッチ駆動モータ110に電力供給し、制御信号がピッチ駆動ユニット回路105に解釈されてピッチ駆動モータの制御に使用され、これにより風力タービン(図示せず)の動翼のピッチが制御される。
【0017】
風力タービンは更に予備電源112を有する。予備電源は、電気化学電池であってもよく、より好ましくは超コンデンサのような大容量コンデンサである。予備電源112はピッチ駆動ユニット104に接続され、緊急時に動翼(図示せず)をフェザリング姿勢とするのに十分な電力をピッチ駆動モータに供給するように構成される。当該緊急時の例としては、主電源106の故障や、ピッチ制御ユニットの電力喪失につながるようなその他事象が挙げられる。
【0018】
図1Aは、単一のピッチ駆動ユニット104と、単一のピッチ駆動モータ110とを示す。風力タービン100が更にピッチ駆動ユニットやモータを有してもよいことが理解されよう。実際、風力タービンは通常、動翼毎に1つのピッチ駆動モータを有する。更に、好適な実施形態では、動翼毎に異なるピッチ駆動ユニットを備える。例えば、3つの動翼を有する風力タービンは、好ましくは3つのピッチ駆動ユニットを有し、それぞれのピッチ駆動ユニットが1つの動翼に対応するピッチ駆動モータを制御する。好ましくは、複数のピッチ駆動ユニットは中央ユニット102に別々のバスで接続される。予備電源112は、全てのピッチ駆動ユニットに接続されてもよいが、好ましくはピッチ制御ユニット毎に異なる予備電源が設けられる。これにより、タービンの安全停止の際、1つの予備電源が適切に機能しなくとも、その他の予備電源により残りの動翼をフェザリング姿勢にできるため、風力タービンの安全性が向上するという効果がある。
【0019】
欧州特許第2824321A1に記載の通りに、予備電源112の動作テストを行ってもよい。このテスト手順は、ピッチ駆動ユニット104に供給されている電力を停止するために電源連結部108に接続されたスイッチ(図示せず)を操作することで、ピッチ駆動ユニット104を中央ユニット102から切り離すことと、当該ピッチ駆動ユニット104に対応する予備電源112にストレステストを実施することとを含む。ストレステスト中、予備電源112が放電されて、ピッチ駆動ユニット104に、好ましくは少なくとも対応する動翼をフェザリング姿勢するために必要な電流が送られる。いくつかの実施形態では、電流供給によりストレステスト中もピッチ駆動モータ110が通常動作を継続できる。これによりストレステスト中にピッチ駆動モータが通常動作でない場合と比較して、ストレステスト中の風力タービンからより大きな電力を生成できる。ストレステスト後、スイッチによりピッチ駆動ユニット104を中央ユニット102に再接続することで、予備電源112が再充電される。再充電中、予備電源112は充電用電流が供給され、それに対応する充電電圧を有する。充電電流と充電電圧は予備電源112の状態を示すものであるため、充電電流/充電電圧を測定することで、予備電源112が適切に機能しているかの指標が得られる。あるいは、タービン100がアイドリング姿勢で、電力が生成されていない際にストレステストを実施する。例えば、ストレステストの実施により電力生成が受ける影響を最小化するため、風が少ない又は無風状態でストレステストを実施してもよい。
【0020】
本発明では、第1センサーユニット114が設けられ、予備電源112のテスト中に、予備電源112の充電電力、予備電源112の充電電圧、又はその両方を測定する。当業者であれば、第1センサーユニット114が、電流、電圧をそれぞれ測定するための別々の構成要素を有してもよいことが理解されよう。例えば、第1センサーユニット114は、複数のセンサーを有してもよく、1つ以上のセンサーが電流を測定するよう構成され、1つ以上のセンサーが電圧を測定するよう構成されてもよい。好ましくは、第1センサーユニットは、図1Aに示すようにピッチ駆動ユニット104に配置されるか、予備電源112に配置される。好ましくは、第1センサーユニット114は予備電源112付近の位置で測定を行う。即ち、充電電流/電圧を直接測定する。この配置により、測定に対する風力タービン内のその他構成要素によるあらゆる抵抗損失による悪影響が低減される。言い換えると、上記好ましい位置での測定は、タービン内の回路のその他部位での電流損失を考慮すると、より正確なのである。したがって、上記好ましい配置は、充電電流及び電圧の正確な測定が可能となるという利点がある。有効な互いに離れた2地点で測定を行い、測定値を比較することで、信頼性が増す。いくつかの実施形態では、第1センサーユニット114として、第2センサーユニットとは異なる物理効果に基づいて測定を行うものを選択することで、多様な観点が得られるという更なる効果がある。例えば、第1センサーユニット114としてホール素子を有する電流センサーを選択してもよく、これによっても電流が非常に正確に測定できるという効果が得られる。1つ以上のピッチ駆動ユニットを有する風力タービンでは、ピッチ駆動ユニット毎に第1センサーユニット114が設けられることが好ましい。
【0021】
好ましくは、風力タービンは更に第2センサーユニット116を有する。第2センサーユニットも、予備電源のテスト中、予備電源112の充電電流、予備電源112の充電電流の一方、又はその両方を測定するように構成される。第1センサーユニット(複数の場合もあり)114と同様に、第2センサーユニットは、例えば電流を測定する1つ以上のセンサーや、電圧を測定するための1つ以上のセンサーのように、電流と電圧それぞれの測定用に別々の構成要素を有してもよい。
【0022】
好ましくは、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116は、リモートコンピューティングシステム(図示せず)に測定データを送るよう構成される。例えば、中央回路103は、データがリモートコンピューティングシステムに送信可能となるよう、通信リンク(図示せず)に対する連結部を有してもよい。好ましくは、第1センサーユニット114は測定データを、例えばバス107を介して中央ユニット回路103に送り、その後中央ユニット回路103が当該データをリモートコンピューティングシステムに送信する。同様に、第2センサーユニット116は、リモートコンピューティングシステムへの転送を目的としてデータを中央ユニット回路103に、例えばバス107又は風力タービン100内の第2センサーユニット116の配置によってはその他の接続を介して送信する。
【0023】
別の実施形態では、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116からの測定データは、風力タービンでローカルに記憶される。
【0024】
第2センサーユニット116を設ければ、第1センサーユニット114による測定が信頼に足るかを判定する手段が設けられるという点で有利である。好ましくは、第2センサーユニット116による測定は、第1センサーユニット114による測定と比較され、この比較に基づき信頼度が割り当てられる。信頼度とは、第1センサーユニット114及び/又は第2センサーユニット116による測定が信頼に足るかの指標である。第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116による測定値を比較する際、値同士のあらゆる差異は閾値と比較され、閾値を超えるか否かにより、信頼度、即ち第1センサーユニット114及び/又は第2センサーユニット116による測定が正確であると信頼できるか(即ち測定が有効か)の指標が得られる。例えば、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116による充電電流/電圧測定が同一又は同様であれば、第1センサーユニット114(又は第2センサーユニット116あるいは両方)による測定に高信頼度が付され、一方、結果に大きな差が見られれば、第1センサーユニット(又は第2センサーユニット116あるいは両方)による測定に低信頼度が付される。したがって、第2センサーユニット116は、第1センサーユニット114による測定の有効性を検証するものである。一実施形態では、リモートコンピューティングシステムは第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116により得られた測定データを比較し、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116の一方又は両方による測定に対して信頼度を付すように構成される。あるいは、例えば処理回路(図示せず)を使用して、風力タービン内でローカルに比較を実施する。好ましくは、そのような処理回路は中央ユニット102内に配置され、例えばSIL評価の高いセーフティカードを有してもよい。セーフティカードは風力タービンに後付け可能な追加のハードウェアデバイスである。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1センサーユニット114と第2センサーユニット116からの測定値の差が10%以下であれば高信頼度が付され、10%を超えると低信頼度が付されてもよい。あるいは、高信頼度と低信頼度とを分ける閾値は、例えば測定値間の差5%,15%、又は20%のように異なる値であってもよい。あるいは信頼度の基準が3つ以上であってもよい。例えば、10%以下の差であれば高信頼度とし、10%から20%の間で有れば中信頼度とし、20%を超えると低信頼度としてもよい。この場合、高信頼度は、第1センサーユニット114による測定が信頼できるため、作業が不要であることを示す。中信頼度であれば、第1センサーユニットの信頼性を確認するため、更に測定が必要である旨を示す警告を発してもよい。低信頼度は、第1センサーユニット116が信頼できないため、交換又はメンテナンスが必要であることを示す。上述の説明では、測定値の相対差(パーセントによる差)が比較されるが、閾値に対して測定値の絶対差を比較して信頼度を判定してもよい。
【0026】
好ましくは、低信頼度と判定されると、風力タービンは安全モード(アイドルモード)に遷移する。したがって、風力タービン内のピッチ駆動モータ110が、動翼をフェザリング姿勢にし、タービンを回転停止させるように構成される。言い換えると、測定の信頼度が不十分であれば、即ち測定値同士の差が所定の閾値を超える場合に、タービンは安全モードに遷移する。これにより、予備電源112が正しく機能しているか確実には分からない状態で、風力タービン、人、環境に対する損害が生じる可能性が低くなる。
【0027】
好ましくは、第2センサーユニット116は第1センサーユニット114とは種類が異なる。即ち、ハードウェア構成、測定方法、及び/又は分析方法が異なるのである。いくつかの実施形態では、第1、第2センサーユニットはそれぞれ異なるメーカーのものである。第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116に使用する装置に多様性を持たせることで、測定値の信頼度の向上を図ることが可能である。具体的には、そのような第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116であれば、同じ原因のシステム上のエラーが生じにくい。したがって、両センサーユニットによる測定値が一致し、測定値に同じシステム上のエラーが生じていないのであれば、様々な測定の信頼度が高くなる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2センサーユニット116は第1センサーユニット114よりもシンプルな種類となるため、低価格で第1センサーユニット114による測定の有効性を適切に検証できる。よりシンプルなセンサーユニットはよりロバストでもあるので、必要なメンテナンスの頻度も低くできる。
【0029】
したがって、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116にエンジニアを派遣して機能を評価する代わりに、第1センサーユニット114及び/又は第2センサーユニット116に修理、再調整、交換が必要であるかが遠隔地から判定できる(即ち、センサーユニットが一致しないと判断された場合)。図1Aに示す構成要素は、通常、風力タービンのハブに配置されるため、特に海上に設けられた風力タービンの場合、アクセスが困難であることが理解されよう。したがって、風力タービンの構成用のテストにエンジニアを派遣する必要性が低くなれば、当該テストの費用が低減される。
【0030】
好ましくは、第2センサーニット116は風力タービン内において、第1センサーユニット114から離れた位置に配置される。即ち、第1及び第2センサーユニットは風力タービン内の、空間的に離間したハードウェア構成要素にそれぞれ配置される(例えば、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116は1メートル以上離間される)。好ましくは、第2センサーユニット116は予備電源112から離れた位置で測定を行うため、間接的に充電電流/電圧を測定することとなる。好ましくは、図1Aに示すように、第2センサーユニット116は中央ユニット102に配置され、一方第1センサーユニット114はピッチ制御ユニット104に配置される。発明者らは、減結合ダイオード118による多少の損失はあれど、中央ユニット102とピッチ駆動ユニット104では充電電流及び電圧はほぼ同じであるという有利な点を発見した。減結合ダイオード118による推定損失は、既知の技術で推定されてもよく、測定値間の比較において適切に考慮されてもよい。減結合ダイオード118による推定損失を考慮した際に、第1センサーユニット114と第2センサーユニット116とによる測定値が一致すれば、減結合ダイオード118が適切に機能していることも示されるという利点がある。測定値が不一致であれば、減結合ダイオード118による損失が推定値と異なるため、減結合ダイオード118の故障を示す指標ともなり得る。あるいは、第2センサーユニット116は電源連結部108の位置に配置されてもよく、又は第1センサーユニット114の位置から離れており、予備電源ストレステスト実施中に予備電源112の充電電流及び/又は電圧が測定可能なその他任意の位置に配置されてもよい。
【0031】
第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116をそのように配置することで、いくつかの利点がある。第1に、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116の挙動は、温度やその他環境的要因に左右され得る。ピッチ駆動ユニット104近傍に配置された第1センサーユニット114は、ピッチ駆動モータ110の動作による温度上昇にさらされる可能性がある。そこで第2センサーユニット116をタービン内の、ピッチ駆動モータからより離れた別の箇所に配置することで、より温度が安定した環境に第2センサーユニット116を配置でき、温度により第1センサーユニット114の性能が悪影響を受けている状態を特定可能となる。第2に、第1センサーユニットがピッチ駆動ユニット内又はその近傍にあってアクセスし難い一方、第2センサーユニット116はタービン内のよりアクセスしやすい部位に配置できる。このように配置された第2センサーユニット116は、メンテナンス、修理のために容易にアクセスできる。更に、第2センサーユニット116をこのように配置すれば、第1センサーユニット114のみを有する既存の風力タービンに容易に後付けできる。したがって、第1センサーユニット114しか持たなかった既存のタービンにおける充電電圧/電流の測定が検証でき、測定信頼度の向上を図ることができる。
【0032】
更に、第2センサーユニット116は、第1センサーユニット114よりも安全度水準(SIL)評価が高いものであってもよい。したがって、第2センサーユニット116を、第1センサーユニット114を1つ以上有する既存の風力タービンに後付けすれば、風力タービンのSIL評価が高まるのである。
【0033】
更に、第2センサーユニット116はフェイルセーフインジケータを有してもよい。フェイルセーフインジケータは、第2センサーユニット116が正しく機能しているかを判定するよう構成された診断回路を有するものである。好ましくは、フェイルセーフインジケータは、リモートコンピューティングシステムに対して、第2センサーユニット116が正しく機能しているかを示す指標を送信するように構成される。これにより、リモートコンピューティングシステムが第2センサーユニット116による測定が信頼に足るかを判断でき、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116のいずれもが正しく動作していないが、それら両センサーユニットからの測定値が一致しているような場合を特定できるという利点が得られる。したがって、このようにフェイルセーフを設けることで、測定値の信頼性を更に向上できる。
【0034】
図1Bは、図1Aに示した風力タービン100の別の概略図を示し、好適な実施形態に係る風力タービン100の構成要素がより詳細に示されている。同様の参照符号が同様の構成要素に付されている。図1Bでは、中央ユニット102はピッチ駆動ユニット104、更に2つのピッチ駆動ユニット104a及び104bに接続されている。好ましくは、風力タービン100の動翼毎に、異なるピッチ駆動ユニット104,104a,104bが設けられる。これにより、各動翼のピッチが個別に制御できる。中央ユニット102は、中央回路103を有する。中央回路103は好ましくはAC/DCコンバータ120及びDC/DCコンバータ122を有する。AC/DCコンバータ120及びDC/DCコンバータ122は、それぞれ主電源106からのAC電力を、ピッチ駆動モータ110及びその他電力を必要とする構成要素の電力として適切なDC電力に変換する。例えば、AC/DCコンバータ120及びDC/DCコンバータ122は更に、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116にも適したDC電力も供給する。こうすると、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116のために、追加で電源を設ける必要がなくなるため、有利である。あるいは、第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116にそれぞれ異なる電源を設けてもよい。
【0035】
好ましくは、第2センサーユニット116はピッチ駆動ユニット104,104a,104bそれぞれに対する予備電源の電流及び電圧特性を測定するよう構成される。例えば、第2センサーはピッチ駆動ユニット104,104a,104bそれぞれの電源連結部に接続される。第2センサーユニット116はピッチ駆動ユニット104,104a,104bそれぞれに対して、測定用連結部130,130a,130bを介して電流を、別の測定用連結部132,132a,132bを介して電圧を測定する。これにより、異なる予備電源112にそれぞれ対応する第1センサーユニット114一つ一つによる測定値の有効性を、単一の第2センサーユニット116を使用して検証できるという利点が得られる。
【0036】
ピッチ駆動回路105は好ましくはブレーキチョッパ124を有する。ブレーキチョッパ124は、必要であればモータの巻線を選択的に短絡させて、モータの回転による起電力が回転方向の反対に作用させることで、ピッチ駆動モータ110にブレーキをかけるよう構成される。モータ110のより効果的な動作を保証するため、ピッチ駆動回路は、AC/DCコンバータ120及びDC/DCコンバータ122からピッチモータ110への電流を平滑化するよう構成された平滑コンデンサ126を更に有することが好ましい。ピッチ駆動回路は更にモータ110を制御するモータ駆動ユニット128を有することが好ましい。図1Bは、ピッチ駆動ユニット104に配置された減結合ダイオード118を示すが、中央ユニット102又は電源連結部108に沿った位置にダイオード118が配置されてもよいことが理解されよう。好適な実施形態では、予備電源112は超コンデンサ113を有する。あるいは、電池を設けてもよい。
【0037】
本発明のいくつかの態様では、第1センサーユニット114は予備電源112に接続され、予備電源112に対して流入/流出する電流を、第1連結部134を介して直接測定するように構成される。各第1センサーユニット114は更に、予備電源112に対応する電圧を、別の連結部136を介して直接測定するように構成される。
【0038】
図1Bに示すシステムでは、中央ユニット102における第2センサー116で測定された総電流Iは、以下の式で表される。
I=Ich+Ism+I+I+Ilog
式中、Ichはブレーキチョッパ124に使用される第1電流であり、Ismは平滑コンデンサ126に使用される第2電流であり、Iは予備電源112に使用される第3電流であり、Iはモータに使用される第4電流であり、Ilogはピッチ駆動ユニット104での任意の論理(第1センサーユニット114による任意の電流を含む)に使用される第5電流である。風力タービンがアイドルモードで測定が行われる場合、第1電流Ich、第2電流Ism、第4電流Iは0となる。
【0039】
上述のように、いくつかの実施形態では、ローカルに設けられた処理回路が第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116による測定の比較を実施するように構成される。更に、処理回路はブレーキチョッパ124に使用される第1電流Ich、平滑コンデンサ126に使用される第2電流Ism、ピッチモータ110に使用される第4電流Iを考慮して、比較を実施するように構成される。例えば、処理回路はピッチ駆動ユニット104における第1センサー114により測定された電流から、ブレーキチョッパ124に使用される第1電流Ich、平滑コンデンサ126に使用される第2電流Ism、ピッチモータ110に使用される第4電流Iを減算することで、再充電中の予備電源112に使用される第3電流Iを判定してもよい。一実施形態において、ブレーキチョッパ124、平滑コンデンサ126、ピッチモータ110に対応する電流/電圧は、風力タービンの動作の所定のモデル、及び/又はピッチモータ110により実行されている電流動作を示すピッチモータ制御部(図示せず)からの情報に基づいて推定されてもよい。あるいは、ブレーキチョッパ124、平滑コンデンサ126、ピッチモータ110に対応する電流/電圧は、追加のセンサーユニット(図示せず)により直接測定されてもよい。これら構成要素に関連した電流の使用/電圧の損失を考慮する手段を設けることで、ピッチモータ110の使用中に予備電源の充電電流/電圧が測定できる。したがって、測定中に全動翼が通常動作が可能であるため、測定実施中に風力タービン100が生成可能な電力が増える(少なくとも同等となる)。上述の説明では、風力タービン100で処理回路を使用して比較を実行し、ピッチ駆動回路105の特徴的構成要素を考慮するものであるが、このような機能は上述のリモートコンピューティングシステムで実現されてもよいことが理解されよう。
【0040】
別の例として、風力タービンがアイドリング状態の場合は第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116によって測定を行い、これによってピッチモータ110により第4電流Iは使用されない。これにより、ピッチ駆動ユニット104内のその他構成要素の電流/電圧使用の測定のため追加のセンサーを使用する必要や、電流/電圧使用の推定のためにモデルを使用する必要がなくなる。したがって、部品点数や演算分析を減らすことができ、風力タービンのコスト、複雑性を低減できる。本実施形態では、風力タービンが電力生成しないような風が少ない又は無風の期間に測定が行われることが好ましい。この場合、風力タービンは第1センサーユニット114及び第2センサーユニット116を使用した有効性確認を行うためにアイドルモードにする必要がなく、電力生成に十分な風があれば電力生成を継続できるため、有利である。
【0041】
第1センサーユニット114及び/又は第2センサーユニット116による測定の絶対値を利用して、風力タービンを、動翼がフェザリング姿勢となる安全なアイドルモードにするかを判定してもよい。例えば、測定された充電電圧が所定レベルより低い場合、又は充電電流及び電圧が、予備ユニット112が貯蔵できる電力が所定量よりも低いことを示す場合、予備電源112に修理又は交換が必要であると判定できるので有利である。そのような判定は、例えば中央ユニット102に存在する処理回路(図示せず)のように、風力タービンにおいてローカルに行われてもよい。判定に応じて、ピッチ駆動ユニット104はピッチ駆動モータ110を動作して動翼にフェザリング姿勢をとらせる。
【0042】
更なる実施形態では、特定のピッチ駆動ユニット104に対応する第1センサーユニット114による測定を、別のピッチ駆動ユニットに対応する別の第1センサーによる測定と比較してもよい。例えば、各ピッチ駆動ユニットによる充電電流/電圧の測定値間の比較が可能である。この比較により、各ピッチ駆動ユニットに対応する予備電源が同様に動作していることを確認できるため、有利である。あるピッチ駆動ユニット104に対する測定が、当該ピッチ駆動ユニット用の予備電源112の特性が風力タービン100内のその他予備電源の特性と異なっていることを示すのであれば、当該予備電源112の故障及び/又は予備電源112のその他予備電源に対して異なる劣化を示している場合がある。したがって、特定の予備電源に修理又は交換が必要であるか特定できるのである。この比較は、例えば中央ユニット102に存在する処理回路を使用して、風力タービンにおいてローカルに行われることが好ましい。好ましさが劣る実施形態では、各ピッチ駆動ユニットの第1センサーからのデータが、リモートコンピューティングシステムに送られ、上述の比較がリモートコンピューティングシステムで行われる。
【0043】
図2は、予備電源状態測定の信頼度を付与するための方法200のフローチャートである。図2の方法は、図1A、1Bを参照に上述した装置を使用して実行されてもよい。
【0044】
ステップS202において、上述の予備電源112のような予備電源に対してストレステストが行われる。ストレステストは、例えば欧州特許出願第2824321に記載されたような既知の方法に従って進めればよい。ストレステストは、上述のように切り離しスイッチを介して、主電源からピッチ駆動ユニットを切り離すことを含んでもよい。ステップS204において、ピッチドライブが中央ユニットから切り離されていれば、ピッチドライブを再接続して、予備電源からの電流を使用できるようにする。
【0045】
ステップS208において、予備電源の充電特性が、第1部位にて測定される。充電特性は、予備電源の充電電流及び充電電圧の一方又は両方を含むことが好ましい。好ましくは、上述の第1センサーユニット114のような第1センサーユニットにより測定が行われる。好ましくは、第1部位はピッチ駆動ユニット内の、評価中の予備電源に対応する位置である。
【0046】
ステップS210において、予備電源の充電特性が第2部位にて測定される。好ましくは、上述の第2センサーユニット116のような第2センサーユニットにより測定が行われる。好ましくは、第2部位は、例えば上述のように中央ユニット内のような、風力タービン内の第1センサーユニットから離れた位置である。
【0047】
なお、ステップS210の前又は後にS208を実施してもよい。ステップS208及びS210を同時に実行することがより好ましい。これにより、充電電流及び/又は電圧に経時変化がある場合でも測定信頼性が正確に判定できる。更に、好ましくはステップS208及びS210は所定の期間中繰り返し実行される。これにより、充電電流及び/又は電圧の経時的遷移を測定でき、遷移中の様々な時点における信頼性が判定できる。
【0048】
ステップS212において、ステップS208及びS210で実行された測定値同士が比較される。例えば、第1センサーユニットで測定された充電電流が、第2センサーユニットで測定された充電電流と比較される。いくつかの実施形態では、当該比較は、値間の差をパーセントで算出することを含む。別の実施形態では、当該比較は、測定値間の絶対差を算出することを含む。当該分野では一般的なように、値を比較するその他方法を利用してもよい。
【0049】
ステップS212での比較に基づき、ステップS214において第1部位での測定及び/又は第2部位での測定に対して信頼度が付与される。図1A及び1Bを参照に上述したように、信頼度は、第1及び/又は第2センサーユニットによる測定が信頼に足るか、即ち有効であるかの指標となる。いくつかの実施形態では、信頼度はピッチ駆動ユニットに配置された第1センサーユニットにより測定された値に付与される。いくつかの実施形態では、測定値の差が10%以下であれば高信頼度が付され、10%を超えると低信頼度が付されてもよい。あるいは、高信頼度と低信頼度とを分ける閾値は、例えば測定値間の差5%、15%、又は20%のように10%とは異なる値であってもよい。あるいは、信頼度を定義する2つ以上の閾値を用いて、信頼度の基準が3つ以上であってもよい。例えば、10%以下の差であれば高信頼度とし、10%から20%の間であれば中信頼度とし、20%を超えると低信頼度としてもよい。この場合、高信頼度は、第1(及び/又は第2部位)における測定が信頼できるため、作業が不要であることを示す。中信頼度であれば、1つ以上のセンサーユニットの信頼性を確認するため、更に測定が必要である旨を示す警告を発してもよい。低信頼度は、1つ以上のセンサーが信頼できないため、交換又はメンテナンスが必要であることを示す。同様に絶対差のような別の値を比較して、信頼度を付与してもよい(例えば、絶対差が閾値を下回れば高信頼度を付与し、閾値を超えれば低信頼度を付してもよい)。
【0050】
ステップS216において、ステップS214において付与された信頼度に基づいて、実行される動作が選択される。
【0051】
低信頼度でなければ(即ち高信頼度であれば、あるいはいくつかの実施形態では、中信頼度が付与されていれば)、方法はステップS218に進み、風力タービンが通常動作を継続可能となる。いくつかの実施形態では、ステップS218において、測定が信頼できるという旨をユーザに伝えてもよい。上述のように、いくつかの実施形態では、風力タービンがアイドルモードの際に、第1及び第2センサーが測定を行ってもよい。この場合、ステップS218にて、風力タービンは、動翼がフェザリング姿勢から脱して通常動作を開始するよう、アイドルモードから遷移してもよい。
【0052】
低信頼度であれば、方法はステップS220に進み、風力タービンが安全状態に置かれる。好ましくは、これは風力タービン内のピッチ駆動モータを使用して、動翼をフェザリング位置にすることを含む。これにより動翼は、これ以上電力が生成されないよう、タービンがアイドルモードに遷移するよう、タービンの回転速度を低減する。これにより、緊急用予備電源が正しく動作している保証がない状況で、環境、人、施設に損害を生じるおそれを低減できる。好ましくは、ステップS220において、予備電源の機能が保証できない旨を、サービスマンに自動的に伝えてもよい。その場合サービスマンは適宜センサーユニットの一方又は両方を修理又は交換するよう対策を取る。いくつかの実施形態では、上述のように風力タービンが既にアイドルモードにある場合に、第1及び第2センサーが測定を実施してもよい。この場合、ステップS220において、風力タービンは、動翼がフェザリング位置に保たれるよう、アイドリング状態に保たれる。
【0053】
言い換えると、風力タービンの動翼をフェザリングさせ、風力タービンを安全なアイドルモードにするか(又は、既にアイドルモードにあるのであれば、風力タービンをアイドルモードに維持するか)を、第1及び第2センサーユニットにより測定された値の差が所定の閾値を超えるかに基づく有効性確認に応じて判定される。
【0054】
本発明の具体的な実施形態を上述した。上述のように、図1Bに示す風力タービン100は、図1Aに示す風力タービン100と同じであることが好ましい。これにより、本発明の実施に当たって、図1A又は図1Bを参照して説明した特徴は、入れ替え可能となる。更に、図2に記載の方法200は、図1A及び1Bに示すような風力タービン100に適用されることが好ましい。本発明の更なる態様が、添付の請求項から理解されよう。
図1A
図1B
図2