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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電池ホルダ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/244 20210101AFI20230301BHJP
   H01M 50/296 20210101ALI20230301BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20230301BHJP
   H01M 50/247 20210101ALI20230301BHJP
【FI】
H01M50/244 A
H01M50/296
H01M50/213
H01M50/247
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017099087
(22)【出願日】2017-05-18
(65)【公開番号】P2018195484
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-01-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】内山 豊
(72)【発明者】
【氏名】大森 清博
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-251068(JP,A)
【文献】特開2014-049227(JP,A)
【文献】特開2003-317680(JP,A)
【文献】特開2009-266597(JP,A)
【文献】特開2005-093363(JP,A)
【文献】特開2014-035976(JP,A)
【文献】特開2002-075305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を得るための電源端子を備えた電子機器の収納部へ収納され、前記電子機器の筐体と一体化される電池ホルダであって、
電池が収納されるケースと、
前記ケースに設けられ、収納される電池の電極に電気的に接続されると共に、前記電子機器の前記収納部に収納された状態で前記電源端子に接続される電気的接続部と、
を具備し、
前記電気的接続部は、前記ケースの外側へ付勢され、前記電源端子に接する複数の接触子が形成された導体板端子を備え、
前記接触子は、前記導体板端子を打ち抜いて形成された複数の舌状片により構成されたバネ部材であり、前記舌状片の基部から先端の間に外側へ凸となるように屈曲された凸部を備えており、
前記複数の舌状片毎にそれぞれのバネ定数が異なっている電池ホルダ。
【請求項2】
前記電源端子は、2つから構成されており、
前記導体板端子は、前記電源端子の一方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陰極側の導体板端子と、前記電源端子の他方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陽極側の導体板端子との、2つから構成されている請求項1に記載の電池ホルダ。
【請求項3】
前記導体板端子は、前記ケースに収納された電池の電極の位置であって前記ケースの外側に設けられ、
前記ケースの前記導体板端子の側辺部に沿った位置には、前記電子機器の前記収納部に形成された溝部に対応する突条が形成されている請求項1または2に記載の電池ホルダ。
【請求項4】
前記電池が収納された状態における前記電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成されており、
前記屋根部の基部には、前記導体板端子を固定するためのスリットが形成されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池ホルダ。
【請求項5】
前記ケースには、前記電子機器の前記収納部の開口部における第1の辺に形成された回動受部(または回動部)に対応する回動部(または回動受部)が形成され、
前記開口部の前記第1の辺と対向する第2の辺に形成された嵌合機構の一方の機構に対応する前記嵌合機構の他方の機構が、前記ケースに形成されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池ホルダ。
【請求項6】
前記複数の各舌状片における基部から前記凸部までの距離が、それぞれ異なるように形成され、または、前記凸部の外側へ付勢される屈曲される角度が異なるように形成されいる請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電池ホルダ。
【請求項7】
電力を得るための電源端子を備えた電子機器の収納部へ収納され、前記電子機器の筐体と一体化される電池ホルダであって、
電池が収納されるケースと、
前記ケースに設けられ、収納される電池の陽極または陰極に接続する電極端子と、
前記電池の電極に電気的に接続されると共に、前記電子機器の前記収納部に収納された状態で前記電源端子に接続される電気的接続部と、
を具備し、
前記電池が収納された状態における前記電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成され、
前記電極端子には、前記電池方向の下方へ突出した弾性部材を設け、前記ケースに電池が収納された状態における、前記電池の長手方向における前記屋根部の長さを、前記弾性部材の端部の位置よりも長くなるように位置する
電池ホルダ。
【請求項8】
電力を得るための電源端子を備えた収納部を備えた筐体と、
前記収納部へ収納され、前記筐体と一体化される電池ホルダと
を備える電子機器において、
電池ケースは、
電池が収納されるケースと、
前記ケースに設けられ、収納される電池の電極に電気的に接続されると共に、前記電子機器の前記収納部に収納された状態で前記電源端子に接続される電気的接続部と
を具備し、
前記電気的接続部は、前記ケースの外側へ付勢され、前記電源端子に接する複数の接触子が形成された導体板端子を備え、
前記接触子は、前記導体板端子を打ち抜いて形成された複数の舌状片により構成されたバネ部材であり、前記舌状片の基部から先端の間に外側へ凸となるように屈曲された凸部を備えており、
前記複数の舌状片毎にそれぞれのバネ定数が異なっている電子機器。
【請求項9】
前記電源端子は、2つから構成されており、
前記導体板端子は、前記電源端子の一方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陰極側の導体板端子と、前記電源端子の他方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陽極側の導体板端子との、2つから構成されている請求項8に記載の電子機器。
【請求項10】
前記導体板端子は、前記ケースに収納された電池の電極の位置であって前記ケースの外側に設けられ、
前記電子機器の前記収納部には、溝部が形成され、
前記ケースの前記導体板端子の側辺部に沿った位置には、前記溝部に対応する突条が形成されている請求項8または9に記載の電子機器。
【請求項11】
前記電池が収納された状態における前記電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成されており、
前記屋根部の基部には、前記導体板端子を固定するためのスリットが形成されている請求項8乃至10のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項12】
前記電子機器の前記収納部の開口部における第1の辺には、回動受部(または回動部)が形成され、
前記ケースには、前記電子機器の回動受部(または回動部)に対応する回動部(または回動受部)が形成され、
前記電子機器における前記開口部の前記第1の辺と対向する第2の辺に嵌合機構の一方の機構が形成され、
前記ケースには、前記嵌合機構の一方の機構に対応する前記嵌合機構の他方の機構が、形成されている請求項8乃至11のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項13】
前記複数の各舌状片における基部から前記凸部までの距離が、それぞれ異なるように形成され、または、前記凸部の外側へ付勢される屈曲される角度が異なるように形成され、ている請求項8乃至12のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項14】
電力を得るための電源端子を備えた収納部を備えた筐体と、
前記収納部へ収納され、前記筐体と一体化される電池ホルダと
を備える電子機器において、
電池が収納されるケースと、
前記ケースに設けられ、収納される電池の陽極または陰極に接続する電極端子と、
前記電池の電極に電気的に接続されると共に、前記電子機器の前記収納部に収納された状態で前記電源端子に接続される電気的接続部と、
を具備し、
前記電池が収納された状態における前記電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成され、
前記電極端子には、前記電池方向の下方へ突出した弾性部材を設け、前記ケースに電池が収納された状態における、前記電池の長手方向における前記屋根部の長さを、前記弾性部材の端部の位置よりも長くなるように位置する
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、何本かの電池を一まとめにして所定電圧の電源として、ワンタッチで電子機器の電源部にセットすることが可能に構成した電池ホルダと、この電池ホルダを電源部に組み込んで構成される電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器においては、電池を収納して電力を得るための電源部を、電子機器筐体の一部に電池収納部として備えたものが知られている。例えば、筐体の一部に電池を収納可能な容積を有する空室を電池収納部とするものである。この電池収納部には、電池の陽極及び陰極に接触する導電性の端子板が埋設されており、端子板から電子機器の電源回路に電力が供給されるように構成されている。上記電池収納部に電池を入れた後には、蓋により上記電池収納部の開口部を閉じることにより、電池を所定位置に固定し、電池と端子板との接触が不良となるなどの事態を防ぐように構成されている。
【0003】
上記のような電子機器の電池収納部の構成では、電池収納部の蓋の閉成を電池のセットとは別の作業により行わなければならず、煩わしく、また、電池が飛び出さないように工夫する必要があり、作業が難しい場合もある。また、電子機器の大きさや形状等によっては、電子機器を一方の手に持った状態で電池交換を行う必要があり、交換作業が難しくなるという問題もある。更に、電池の陽極及び陰極に接触する端子板が電子機器の筐体に埋設されているため、端子板が腐食などによる劣化や破損で交換しなければならない場合には、端子板の交換で済ませることができず、電子機器の筐体自体を交換する必要が生じるなど、修理が大掛かりとなり、また、修理のコストが高くなるという問題がある。
【0004】
上記に対し、特許文献1には、複数の電池を収納し、外部との電気的接続を得るための電極を備えた電池パックが開示されている。この電池パックは、電子機器に対して用いる場合には、電子機器とは別の装置として扱うことができ極めて便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-37563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の電池パックは、電池の陰極に接続する接続導体を備える絶縁体板と、電池の陽極に接続する接続導体を備える絶縁体板とにより、電池を挟むようにして、上記接続導体により電気的接続を得るものである。また、外部との電気的接続を得るための電極は、上記絶縁体板とは別のアタッチメント板に設けられている。つまり、外部との電気的接続を得るための電極を配置する別部品を用いており、構成が複雑化しコストが高くなるという問題点がある。
【0007】
電池の固定のために、アタッチメント板上に複数の電池を設け、これを2枚の絶縁体板により挟み込む。更に、略直方体形状の容器を逆さにした如き形状の固定部材によって全体を覆って包み込むように電池パックが構成される。このように、全体を覆って電池を固定する固定部材を用い、更に熱収縮チューブにより半永久的にパックした構成であり、電池固定のためにも大きく特別な部材を用いるものである。
【0008】
本発明は、上記のような電子機器の電池収納部の構成に鑑みてなされたもので、その目的は、構成が簡素であり、コストを安くしながら、電子機器とは別の装置として扱うことが可能な電池ホルダを提供することである。
【0009】
また、半永久的に電池を閉じ込めた構成ではなく、電池を収納したときに十分な固定状態を提供し、また、比較的容易に電池を取り外して交換することが可能な電池ホルダを提供することを目的とする。更に、本発明の他の目的は、上記のような電池ホルダを筐体に一体化して構成した電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電池ホルダは、電力を得るための電源端子を備えた電子機器の収納部へ収納され、前記電子機器の筐体と一体化される電池ホルダであって、電池が収納されるケースと、前記ケースに設けられ、収納される電池の電極に電気的に接続されると共に、前記電子機器の前記収納部に収納された状態で前記電源端子に接続される電気的接続部と、を具備し、前記電気的接続部は、前記ケースの外側へ付勢され、前記電源端子に接する複数の接触子が形成された導体板端子を備え、前記接触子は、前記導体板端子を打ち抜いて形成された複数の舌状片により構成されたバネ部材であり、前記舌状片の基部から先端の間に外側へ凸となるように屈曲された凸部を備えており、前記複数の舌状片毎にそれぞれのバネ定数が異なっている。
【0011】
本発明に係る電池ホルダでは、前記電源端子は、2つから構成されており、前記導体板端子は、前記電源端子の一方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陰極側の導体板端子と、前記電源端子の他方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陽極側の導体板端子との、2つから構成されている
【0013】
本発明に係る電池ホルダでは、前記導体板端子は、前記ケースに収納された電池の電極の位置であって前記ケースの外側に設けられ、前記ケースの前記導体板端子の側辺部に沿った位置には、前記電子機器の前記収納部に形成された溝部に対応する突条が形成されている。
【0014】
本発明に係る電池ホルダでは、前記電池が収納された状態における前記電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成されており、前記屋根部の基部には、前記導体板端子を固定するためのスリットが形成されている。
【0015】
本発明に係る電池ホルダでは、前記ケースには、前記電子機器の前記収納部の開口部における第1の辺に形成された回動受部(または回動部)に対応する回動部(または回動受部)が形成され、前記開口部の前記第1の辺と対向する第2の辺に形成された嵌合機構の一方の機構に対応する前記嵌合機構の他方の機構が、前記ケースに形成されている。
【0016】
本発明に係る電子機器は、電力を得るための電源端子を備えた収納部を備えた筐体と、前記収納部へ収納され、前記筐体と一体化される電池ホルダとを備える電子機器において、電池ケースは、電池が収納されるケースと、前記ケースに設けられ、収納される電池の電極に電気的に接続されると共に、前記電子機器の前記収納部に収納された状態で前記電源端子に接続される電気的接続部とを具備し、前記電気的接続部は、前記ケースの外側へ付勢され、前記電源端子に接する複数の接触子が形成された導体板端子を備え、前記接触子は、前記導体板端子を打ち抜いて形成された複数の舌状片により構成されたバネ部材であり、前記舌状片の基部から先端の間に外側へ凸となるように屈曲された凸部を備えており、前記複数の舌状片毎にそれぞれのバネ定数が異なっている。
【0017】
本発明に係る電子機器では、前記電源端子は、2つから構成されており、前記導体板端子は、前記電源端子の一方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陰極側の導体板端子と、前記電源端子の他方の1つの電源端子に接触する複数の接触子が形成された陽極側の導体板端子との、2つから構成されている
【0019】
本発明に係る電子機器では、前記導体板端子は、前記ケースに収納された電池の電極の位置であって前記ケースの外側に設けられ、前記電子機器の前記収納部には、溝部が形成され、前記ケースの前記導体板端子の側辺部に沿った位置には、前記溝部に対応する突条が形成されている。
【0020】
本発明に係る電子機器では、前記電池が収納された状態における前記電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成されており、前記屋根部の基部には、前記導体板端子を固定するためのスリットが形成されている。
【0021】
本発明に係る電子機器では、前記複数の各舌状片における基部から前記凸部までの距離が、それぞれ異なるように形成され、または、前記凸部の外側へ付勢される屈曲される角度が異なるように形成され、ている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、電池が収納されるケースと、収納される電池の電極に電気的に接続されると共に、電子機器の収納部に収納された状態で電源端子に接続される電気的接続部を備える。上記電気的接続部が上記ケースに設けられているので、外部との電気的接続を得るための電極を配置する別部品が不要であり、構成が簡素であり、コストを安くしながら、電子機器とは別の装置として扱うことが可能となっている。
【0023】
また、本発明では、電池が収納された状態における電池の陰極が位置付けられた前記ケースの部位から、前記電池を覆うように前記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部が形成され、上記屋根部が電池の不用意な挿入による電気的接続部の損傷を防ぎ、収納された電池の抜け落ちを防止する機能も備えることから、電池を収納したときに十分な固定状態を提供し、また、比較的容易に電池を取り外して交換することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る電子機器の収納部を示す斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る電子機器の収納部を、図1とは逆方向から見たときの斜視図。
図3】本発明の実施形態に係る電池ホルダの内側の斜視図。
図4】本発明の実施形態に係る電池ホルダの内側を、図3とは逆方向から見たときの斜視図。
図5】本発明の実施形態に係る電池ホルダの要部を抜き出して示した斜視図。
図6】本発明の実施形態に係る電池ホルダの要部拡大斜視図。
図7図6のI-I断面図。
図8】本発明の実施形態に係る電池ホルダによる作用を示す斜視図。
図9】本発明の実施形態に係る電池ホルダを電子機器の収納部に収納する過程を示す斜視図。
図10】本発明の実施形態に係る電池ホルダを電子機器の収納部に収納した状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下添付図面を参照して、本発明に係る電池ホルダ及び電子機器の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態に係る電子機器は、例えば、ポータブルタイプの心電計などのような医療機器とすることができ、その筐体10は、図1図10などに示すように、概ね直方体形状であり、各角部や各辺は面取り加工などにより丸みを帯びている。筐体10は、図1図2の状態で、成人男子が片手で持つことができる程度の大きさとすることができる。
【0026】
筐体10には、図3図4等に示される電池ホルダ20が収納される収納部11が設けられている。収納部11の底面には、電池ホルダ20にセットされた電池の側面の一部に接して電池を保持するための円弧形状の受リブ12が平行に2条設けられている。
【0027】
収納部11の側壁には、電子機器が電力を得るための電源端子13、14が設けられている。電源端子13は、金属などの導電体であり、最も奥側に位置する電池の陰極と対向する位置に設けられる。本実施形態では、電池ホルダ20に電池が3本並列にセットされる。上記収納部11の中央に位置する電池の陰極に対向して接触する位置には、電源端子14が設けられる。電源端子14は、電源端子13と同様に金属などの導電体で構成される。
【0028】
電池ホルダ20は、絶縁体の樹脂によるケース20aにより構成され、ケース20aの底板21が筐体10に形成された収納部11の開口部に対する蓋に相当している。従って、底板21の1辺側は、面取り加工に応じて図の上方に反り上がっている。底板21の内側には電池の側壁の形状に相当して、円筒内壁の一部のような凹部22a~22cが3本並列に形成されている。
【0029】
凹部22a~22cの長手方向における一方の端縁からは、底板21から直角に上へ向かって電池の陽極または陰極に接続する電極端子を支持する電極支持壁23が設けられている。凹部22a~22cの長手方向における他方の端縁からは電極支持壁23に対向して、電池の陽極または陰極に接続する電極端子を支持する電極支持壁24が設けられている。電極支持壁23、24の高さ寸法は、円柱形状の電池の直径より僅かに長い寸法とすることができる。
【0030】
電極支持壁23の内側面を横方向に三等分した3つの領域中の、中央の領域には電池の陰極に接続する電極端子25が設けられている。図5に示されるように、電極端子25は、横方向の両端側が導電体のコイルバネにより構成され、ケース20aと同一材料の樹脂により形成される電極保持片26Aに保持されている。2つのコイルバネ間には、収納される電池方向のやや下方へ突出したU字状のバネ線材が設けられている。U字状に突出したバネ線材は2つのコイルバネのバネ線材と一体の同一部材である。
【0031】
上記電極支持壁23の内側面を横方向に三等分した3つの領域中の、中央の領域の両サイドには、電池の陽極に接続する電極端子27が設けられる。電極端子27は、電極端子25と同じバネ線材により構成することができ、電極保持片26Aに保持された状態で構成されている。電極端子27の形状は特に制限はないが、ここではU字の下部が電極保持片26A内に設けられ、U字の左上端部からはバネ線材が左横へ連続して延びており、U字の右上端部からはバネ線材が右横へ連続して延びている形状とすることができる。
【0032】
電極支持壁24の内側面を横方向に三等分した3つの領域中の、中央の領域には電池の陽極に接続する電極端子27が設けられる。電極支持壁24の内側面を横方向に三等分した3つの領域中の両サイドには、電池の陰極に接続する電極端子25が設けられる。電極端子27及び電極端子25は電極保持片26Bに設けられ、電極端子27及び電極端子25を構成するバネ線材の一部は、電極保持片26B内に設けられる。
【0033】
電池が収納された状態における電池の陰極が位置付けられた上記ケース20aの電極支持壁23の部位から、上記電池を覆うように上記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部28が形成されている。また、電池が収納された状態における電池の陰極が位置付けられた上記ケース20aの電極支持壁24の部位から、上記電池を覆うように上記電池の陽極方向へ所定寸法の屋根部28が形成されている。
【0034】
図3に示すケース20aにおいて、3本並列に形成された凹部22a~22cについて、図の右から第1レーンの凹部22a、中央を第2レーンの凹部22b、左側を第3レーンの凹部22cと称する。第2レーンの凹部22bの電極支持壁23の外側には、導体板端子30aが設けられる。第3レーンの凹部22cの電極支持壁24の外側には、導体板端子30bが設けられる。導体板端子30a、30bは図5に示す様な、基本的に同じ構成のL字状に折り曲げられた導体板端子である。
【0035】
導体板端子30a、30bの直立部には、上記ケース20aの外側へ付勢され、電源端子13、14に接する複数(ここでは、2本)の接触子31a、31bが形成されている。上記接触子31a、31bは、上記導体板端子30a、30bを打ち抜いて形成された舌状片の形状により構成されている。
【0036】
上記接触子31a、31bは、それぞれの形状が異なるように形成され、詳細には上記接触子31a、31bのバネ定数が変化する寸法となるように形成されていれば良く、例えば図6に示すように、上記舌状片の基部から先端までの途中に外側へ凸となるように屈曲された凸部32a、32bを備えており、上記複数の各舌状片における基部から上記凸部32a、32bまでの距離L1、L2が、それぞれ異なるように形成される。または、凸部32a、32bの外側へ付勢される屈曲される角度が異なるように形成されても良い。
【0037】
また、上記接触子31a、31bは、図6に示すように上記舌状片の基部のそれぞれの長さL3、L4や、上記舌状片の端部から先端部における任意の位置の長さL5、L6が異なる長さとなるように形成されていても良い。
【0038】
また、上記接触子31a、31bは、図6に示すように舌状片の基部近傍に位置する打抜部30c、30d、30e、30fの打ち抜きの角度が異なるように形成されても良い。
【0039】
以上の構成により、接触子31a、31bの凸部32a、32bが電源端子13、14に接している状態において、振動などにより凸部32a、32bと電源端子13、14が非接触状態になる場合には、距離L1と距離L2の舌状片では、固有振動数が異なり、2つの凸部32a、32bが非接触となるタイミングが異なるものと考えられる。従って、振動による揺れなどが生じた場合には、2つの凸部32a、32bが同時に非接触となる事態を防止し、電源の瞬断を防ぎ、電子機器が医療機器などの場合に、測定する信号にアートファクトが発生したり、動作が不安定となったりするなどの障害を防止することが可能である。
【0040】
また、図5に示すように、導体板端子30a、30bの頭部には、上方へ延びる直立部から一度内側へ直角に折り曲げられ、更に直ぐに上方へ直角に折り曲げられた係止部30ac、30bcが形成されている。係止部30ac、30bcと屋根部28とに関する組立構成は、図7の断面図に示すようである。即ち、上記係止部30acは、第2レーンの凹部22bの屋根部28の基部に形成されたスリット29に挿入されて係合され、導体板端子30aを固定する機能を有している。また、係止部30bcは、第3レーンの凹部22cの屋根部28の基部に形成されたスリット29に挿入されて係合され、導体板端子30bを固定する機能を有している。
【0041】
前術の通り、導体板端子30a、30bは、ケース20aに収納された電池の電極の位置であってケース20aの外側に設けられている。そして、上記ケース20aの外側に設けられた導体板端子30a、30bの両側辺部に沿った位置には、突条33が形成されている。
【0042】
上記電子機器の筐体10における収納部11には、上記突条33に対応する溝部15が形成されている。逆に言えば、導体板端子30a、30bの両側辺部に沿った位置には、電子機器の筐体10における収納部11の溝部15に対応する突条33が形成されている。
【0043】
上記構成によって、ケース20aを把持した際や、電池ホルダへの取り付け時に生じる電池ホルダの接触子31a、31bへかかる応力を緩和することができ、電子機器の筐体10における収納部11へ電池ホルダ20を収納した場合に、電子機器の筐体10における収納部11の溝部15に、電池ホルダ20のケース20aに形成された突条33が係合することにより、電子機器の筐体10に振動等が生じた際に、接触子31a、31bの横方向にかかる応力を緩和することができ、接触子31a、31bの劣化や破損を防止することが可能となるとともに、ガタツキがなく、導体板端子30a、30bと電源端子13、14の電気的接続を適切に保つことが期待できる。
【0044】
図5に示すように、導体板端子30aのL字状に折り曲げられた直立部と直角をなす平面部には、貫通口34が形成されている。貫通口34には、導体板端子30aをケース20aに溶融固着するためのスタッドが貫通され、導体板端子30aがケース20aに固定される。導体板端子30aの平面部には、隣接する第1レーンの凹部22a側へ突出した接続部35が設けられている。この接続部35の先端部にはバネ線材に接続するための穴部35aが形成されている。
【0045】
ケース20aの電極支持壁23には、電極保持片26Aが貼り付けられて固定されている。この電極保持片26Aには、第1レーンの凹部22aに臨んで電池の陽極に接続する電極端子27が設けられている。電極端子27のバネ線材の先端部27aは、電極保持片26Aから導体板端子30aの接続部35に形成された穴部35aへ延びている。電極端子27のバネ線材の先端部27aと上記穴部35aとは、例えば溶着されて電気的接続がなされる。
【0046】
第2レーンの凹部22bに臨む電極保持片26Aに設けられた電極端子25と、第3レーンの凹部22cに臨む電極保持片26Aに設けられた電極端子27とは、電極保持片26A内部において電気的に接続されている。
【0047】
導体板端子30bのL字状に折り曲げられた直立部と直角をなす平面部には、貫通口36が形成されている。貫通口36には、導体板端子30bをケース20aに溶融固着するためのスタッドが貫通され、導体板端子30bがケース20aに固定される。導体板端子30bの平面部における屈曲部近傍には、バネ線材の径に相当する穴37が設けられている。
【0048】
ケース20aの電極支持壁24には、電極保持片26Bが貼り付けられて固定されている。この電極保持片26Bには、第3レーンの凹部22cに臨んで電池の陰極に接続する電極端子25が設けられている。電極端子25のバネ線材の先端部25aは、電極保持片26Bから導体板端子30bの平面部に形成された穴37へ延びている。電極端子25のバネ線材の先端部25aは上記穴37に挿入され、例えば溶着されて電気的接続がなされる。
【0049】
第2レーンの凹部22bに臨む電極保持片26Bに設けられた電極端子27と、第3レーンの凹部22cに臨む電極保持片26Bに設けられた電極端子25とは、電極保持片26B内部において電気的に接続されている。
【0050】
以上の、電極端子25、27、導体板端子30a、30bは、電気的接続部を構成する。この電気的接続部は、ケース20aに設けられ、収納される電池の電極に電気的に接続されると共に、電子機器の上記収納部11に収納された状態で電源端子13、14に接続されるものである。そして、3個の電極端子25と3個の電極端子とによって3本の電池は直列に接続される。また、導体板端子30aが直列に接続された3本の電池の端部陽極となり、導体板端子30bが直列に接続された3本の電池の端部陰極となる。
【0051】
そして、導体板端子30a、30bは、隣接するレーンの電極支持壁23、24の外側に設けられている。このため、図3の状態で導体板端子30bを中心とする横方向へ回転するような振動の場合には、導体板端子30aが遠いレーンの電極支持壁23の外側に設けられている場合と比べて、隣接するレーンの電極支持壁24の外側に設けられている導体板端子30aでは、揺れによる振幅が少なく、安定的に導体板端子30aと電源端子13の間の接続状態を保つことが期待できる。
【0052】
図1に示すように、電子機器の筐体10には収納部11が設けられており、収納部11の開口部における筐体10の外壁に最も近い辺(第1の辺)には、所定の長さを有する溝により構成される回動受部41(または突出した軸により構成される回動部)が形成されている。
【0053】
ケース20aには、図2に示す電子機器の回動受部41(または突出した軸により構成される回動部)に対応する長さの軸により構成される回動部38(または所定の長さを有する溝により構成される回動受部)が形成されている。
【0054】
電子機器における上記開口部の第1の辺と対向する第2の辺には、嵌合機構の一方の機構が形成されている。本実施形態では、嵌合機構の一方の機構を、所定の長さを有する溝42により構成することができる。
【0055】
ケース20aには、上記嵌合機構の一方の機構に対応する嵌合機構の他方の機構が、形成されている。具体的には、ケース20aの底板21の内部からバネにより突出される突片39による機構であり、底板21の外面側には、上記突片39をバネに抗して、ケース20aの底板21の内部側へ退避させるためのレバー39Aが設けられている(図9)。
【0056】
以上のように構成された電子機器と電池ホルダ20とは、次のようにして用いることができる。まず、電池ホルダ20に電池を収納する。電池を、第1レーンの凹部22a、第2レーンの凹部22b、第3レーンの凹部22cに収納する。それぞれのレーンの屋根部28の側に電池の陰極を挿入する。このとき、慌てて電池を挿入しようとして、電池の陽極を先に電極端子27側へ挿入しても、図8に示す状態となり、屋根部28によって電池BAの陰極を押しつけることができない。従って、屋根部28が設けられていない従来の電池ホルダでは、電池の陰極を押しつけて電池をセットすることにより電極端子25が破損する虞れがあったが、本実施形態では、電極端子25が破損する虞れをなくすることができる。
【0057】
更に、屋根部28が設けられることで電池をセットした状態において、電極端子25側から電池を抜き取る行為が不可能になることで、電池自身や、電極端子25が破損する虞れをなくすることができる。
【0058】
また、電極端子25に電池方向のやや下方へ突出したU字状のバネ線材を設け、更に電池ホルダ20に電池が収納された状態における、電池の長手方向における屋根部28の長さを、U字状のバネ線材の端部の位置よりも長くなるように位置したことにより、電池の陽極を誤って電極端子25にセットしようとした際、バネ線材で電池の陽極が反発され、且つ屋根部28に電池が引っかかってしまうことにより電池がうまく取り付けできないものとなり、電池の誤った取り付けを防止できる。
【0059】
上記のようにして全ての電池をセットし、電子機器の収納部11に形成されている回動受部41に対し、電池ホルダ20のケース20aに形成された回動部38を挿入し、回動して収納部11が電池ホルダ20によって閉じられるようにする(図9)。開口部を閉じるときには、突片39が突出しているため、レバー39Aを操作して突片39をケース20aの底板21の内部側へ退避させた状態で作業を行い、電子機器の筐体10と電池ホルダ20が一体化された図10の状態とすることができる。
【0060】
図10の状態から電池ホルダ20を取り出して電池交換する場合には、レバー39Aを操作して突片39をケース20aの底板21の内部側へ退避させた状態で電池ホルダ20を収納部11から引き出して図8の状態とする。更に、電子機器の収納部11に形成されている回動受部41と、電池ホルダ20を引き出すことにより、電池ホルダ20のケース20aに形成された回動部38との係合状態を解除し、電池ホルダ20を取り出す。以下は、電池を電池ホルダ20から取り外し、電池交換を行うことになる。
【0061】
上記実施形態では、電子機器の収納部11に回動受部41を設け、ケース20aに回動部38を形成したが、この構成を交換した構造とすることもできる。また、電池ホルダ20に設けた突片39とバネとレバー39Aによる機構を、電子機器に設け、電子機器に設けた溝42による機構を電池ホルダ20に設けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0062】
10 筐体
11 収納部
12 受リブ
13 電源端子
14 電源端子
15 溝部
20 電池ホルダ
20a ケース
21 底板
22a 第1レーンの凹部
22b 第2レーンの凹部
22c 第3レーンの凹部
23 電極支持壁
24 電極支持壁
25 電極端子
26A 電極保持片
26B 電極保持片
27 電極端子
28 屋根部
29 スリット
30a 導体板端子
30b 導体板端子

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10