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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】加工機、及び、加工システム
(51)【国際特許分類】
   B23B 5/12 20060101AFI20230301BHJP
   B23B 25/00 20060101ALI20230301BHJP
   B23B 25/06 20060101ALI20230301BHJP
   B24B 27/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B23B5/12
B23B25/00 Z
B23B25/06
B24B27/00 L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017138182
(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公開番号】P2019018273
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 英寿
(72)【発明者】
【氏名】高木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁之
(72)【発明者】
【氏名】安藤 耕治
(72)【発明者】
【氏名】竹村 知也子
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】奥隅 隆
【審判官】大山 健
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-277802(JP,A)
【文献】特開昭61-203201(JP,A)
【文献】特開2002-79402(JP,A)
【文献】特開昭58-171201(JP,A)
【文献】特開平8-290302(JP,A)
【文献】特開平4-331005(JP,A)
【文献】特開昭59-93203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 5/12
B23B 25/00
B25B 25/06
B24B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユニットで構成された加工機であって、
前記複数のユニットを回転体の周囲で組み立てて、互いに連結するとともに、前記回転体に固定する、固定機構と、
回転体の周囲を回転可能な状態で、前記固定機構に取り付けられている、回転機構部と、
を備え、
前記回転機構部は、
前記回転体の長さ方向に沿って移動可能な横行部と、
前記横行部に取り付けられ、前記回転体の軸受を支持する軸受支持部の切削加工を行う切削機構と、
を備え、
前記切削機構は、前記回転体の半径方向外側に向けて設けられており、
前記軸受が取り外された前記回転体と前記回転体の前記軸受を支持する前記軸受支持部との間に挿入されて、前記切削機構は前記軸受支持部の内径を切削加工する、ことを特徴とする、加工機。
【請求項2】
前記切削機構は、前記軸受支持部の切削を行う切削工具と、前記切削工具を前記回転体の半径方向に移動可能に保持する工具保持機構とを、備える請求項1に記載の加工機。
【請求項3】
前記固定機構に取り付けられて、前記横行部を、前記回転体の長さ方向に沿って移動させる送り機構を、さらに備える請求項1又は請求項2に記載の加工機。
【請求項4】
前記横行部に取り付けられて、前記回転体の表面の変位を計測する変位計をさらに備えており、
前記横行部を前記回転体の長さ方向に移動させつつ、前記変位計で前記回転体の長さ方向の変位量を計測し、或いは、前記回転機構部を回転させつつ、前記変位計で前記回転体の円周方向の変位量を計測する、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の加工機。
【請求項5】
複数のユニットで構成された加工機と、前記加工機に接続されたコンピュータとを備える、加工システムであって、
前記加工機は、
前記複数のユニットを回転体の周囲で組み立てて、互いに連結するとともに、前記回転体に固定する、固定機構と、
前記回転体の周囲を回転可能な状態で、前記固定機構に取り付けられている、回転機構部と、
を備え、
前記回転機構部は、
前記回転体の長さ方向に沿って移動可能な横行部と、
前記横行部に取り付けられ、前記回転体の切削加工を行う切削機構と、
を備え、
前記回転機構部が前記回転体の周囲を回転しつつ、前記横行部が前記回転体の長さ方向に移動することにより、前記切削機構が前記回転体の切削加工を行うとともに、
前記複数のユニットのそれぞれは、前記回転体を挟み込む切れ込みが形成されたブロックを備えており、このブロックで前記回転体を挟み込むことにより、前記固定機構は前記回転体に固定され、
前記複数のブロックで前記回転体を挟み込むために、一対のネジ棒が、前記回転体を挟み込む方向に前記複数のブロックを貫通しており、
前記横行部に取り付けられて、前記回転体の表面の変位を計測する変位計をさらに備えており、
前記横行部を前記回転体の長さ方向に移動させつつ、前記変位計で前記回転体の長さ方向の変位量を計測し、或いは、前記回転機構部を回転させつつ、前記変位計で前記回転体の円周方向の変位量を計測するとともに、
前記コンピュータは、前記変位計が計測した前記回転体の表面の変位量に基づいて、修正加工量を算出し、前記加工機の最大加工量と、算出した前記修正加工量とに基づいて、前記回転体の切削加工の回数を決定する、
ことを特徴とする加工システム。
【請求項6】
前記横行部に取り付けられた前記切削機構に代えて、研磨機構が設けられており、
前記回転機構部が前記回転体の周囲を回転しつつ、前記横行部が前記回転体の長さ方向に移動することにより、前記研磨機構が前記軸受支持部の研磨を行うことを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の加工機。
【請求項7】
前記切削機構の近傍において前記横行部に取り付けられたクリーナーをさらに備えており、
前記クリーナーは、前記切削機構による前記軸受支持部の切削加工で生じた屑を回収する、請求項1乃至請求項4及び請求項6のいずれかに記載の加工機。
【請求項8】
前記横行部に取り付けられた前記切削機構は、役割の異なる複数の工具が工程順に取り付けられており、
前記回転機構部が前記回転体の周囲を回転しつつ、前記横行部が前記回転体の長さ方向に沿って、前記複数の工具がその工程順となるように、前記回転体の一方の端部から他方の端部に移動することにより、前記軸受支持部の切削加工を行う、請求項1乃至請求項4、請求項6、及び、請求項7のいずれかに記載の加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加工機、及び、加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火力、水力、地熱、原子力等の発電機は、蒸気や水のエネルギーを利用して、回転運動を電気エネルギーに変換する装置である。これらの発電機の回転体の摺動面は、稼働時間の経過とともに、摩擦や発熱、潤滑不足などにより、偏摩耗が発生する。偏摩耗が進行すると、軸受部との摩擦抵抗が増加し、摺動部の温度上昇や振動が発生し、機械材料や周辺機器の劣化が進行する。このため、発電所の定期点検においては、回転体の摺動面における偏摩耗の計測が行われており、計測の結果、判定値を超える偏摩耗を確認した場合には、現地で修正加工が行われている。
【0003】
しかし、火力、水力、地熱、原子力等の発電機の回転体は、大型で重量物であるため、これらの修正加工を行う場合には、現状では、分割型の旋盤を現地に持ち込み、大物搬入口を占有して加工を行う必要があり、長期間、大きなスペースを占有する必要がある。この大物搬入口は、発電所内の機材を受け渡しする場所であり、この場所を長期間占有すると、機材の受け渡しが出来なくなってしまうことから、他の作業が滞ってしまい、定期点検の期間が長くなってしまうという弊害が生じている。また、大物搬入口は、他の作業等でも利用することが多く、そもそも長期間占有できないことも多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-203201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の目的は、専有面積が可及的に小さく、可搬性に優れた、発電機等の回転体の加工機及び加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る加工機は、複数のユニットで構成された加工機であって、前記複数のユニットを回転体の周囲で組み立てて、互いに連結するとともに、前記回転体に固定する、固定機構と、前記回転体の周囲を回転可能な状態で、前記固定機構に取り付けられている、回転機構部と、を備えている。前記回転機構部は、前記回転体の長さ方向に沿って移動可能な横行部と、前記横行部に取り付けられ、前記回転体の切削加工を行う切削機構と、を備えている。そして、前記回転機構部が前記回転体の周囲を回転しつつ、前記横行部が前記回転体の長さ方向に移動することにより、前記切削機構が前記回転体の切削加工を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態に係る加工機を回転体の長さ方向に沿って見た側面図。
図2図1に示した加工機を回転体の回転軸方向から見た正面図。
図3図1の加工機の回転機構部を取り出して、回転体の長さ方向に沿って見た側面図。
図4図3の回転機構部を回転体の回転軸方向から見た正面図。
図5図1の加工機のB-B線断面を部分的に示す図。
図6図1の加工機の送り機構におけるパッド部分の断面図。
図7】第1実施形態の変形例に係る加工機の斜視図。
図8図7の加工機を回転体に取り付けた状態におけるC-C線断面を示す図。
図9】第2実施形態に係る加工機を回転体に取り付けた状態の断面図。
図10】第3実施形態に係る加工機を回転体の長さ方向に沿って見た側面図。
図11図10に示した加工機を回転体の回転軸方向から見た正面図。
図12】第4実施形態に係る加工機を回転体の長さ方向に沿って見た側面図。
図13図12の加工機が備える変位計で回転体の表面の変位を形成した結果の一例を示す図。
図14】第4実施形態に係る加工機の切削機構に切削工具の繰り出し機構を追加した一例を説明する図。
図15図14における矢印D方向から切削機構を見た図。
図16】第5実施形態に係る加工機を回転体の長さ方向に沿って見た側面図。
図17図16の加工機において、グラインダー方式で研磨機構を構成した場合における研磨機構の拡大図。
図18図16の加工機において、サンダー方式で研磨機構を構成した場合における研磨機構の拡大図。
図19】第6実施形態に係る加工機を回転体の長さ方向に沿って見た側面図。
図20図19の加工機が備えるクリーナーの拡大図。
図21】第7実施形態の加工機を回転体に取り付けた状態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る加工機を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る加工機1の側面図であり、図2は、図1の矢印A方向から見た加工機1の正面図である。これら図1及び図2においては、加工機1を回転体2に取り付け、回転体2の円周表面を切削加工する状態を図示している。
【0010】
これら図1及び図2に示すように、本実施形態に係る加工機1は、既設の発電機等の回転体2の周囲に取り付け可能とするために、複数のユニットで構成されており、これら複数のユニットを回転体2の周囲で互いに連結して組立可能に構成されている。本実施形態においては、上側の第1ユニット1aと、下側の第2ユニット1bの2つのユニットで構成されている。そして、これら2つの第1ユニット1aと第2ユニット1bとを、分割した状態で、回転体2の設置されている場所まで搬入し、回転体2の周囲で連結して組み立てることにより、加工機1が回転体2に取り付けられる。
【0011】
加工機1における回転体2の長さ方向の両端部には、図2に示すように、ブロック10が設けられている。すなわち、第1ユニット1aと第2ユニット1bのそれぞれに、ブロック10が設けられている。本実施形態においては、ブロック10には、V字状の切れ込み12が形成されており、第1ユニット1aのブロック10に形成されたV字状の切れ込み12と、第2ユニット1bのブロック10に形成されたV字状の切れ込み12とに、回転体2を挟み込むことにより、第1ユニット1aと第2ユニット1bとが回転体2に取り付けられる。V字状の切れ込み12において、回転体2とブロック10とが当接する部分には、保護部材14が設けられている。ブロック10に設けられている保護部材14は、回転体2がブロック10で傷つかないようにするための緩衝材であり、銅やアルミニウムなどの比較的柔らかい金属で形成されている。
【0012】
2つのブロック10で回転体2を挟み込むために、本実施形態に係る加工機1には、一対のネジ棒20が、第1ユニット1aに設けられたブロック10と、第2ユニット1bに設けられたブロック10とを、回転体2を挟み込む方向に貫通している。そして、一対のネジ棒20の上下に設けられたナット22を締め付けることにより、第1ユニット1aのブロック10と第2ユニット1bのブロック10との間の距離が狭まり、V字状の切れ込み12で回転体2を挟み込んで、第1ユニット1aと第2ユニット1bとを互いに連結して加工機1として組み立てて、回転体2に固定することができる。
【0013】
なお、回転体2の太さ(直径)にも種々のものがあると想定される。異なる太さの回転体2にも加工機1を取り付け可能にすべく、2つのナット24が、ネジ棒20におけるブロック10の内側位置に設けられている。一対のネジ棒20のそれぞれに設けられた2つのナット24の位置を調整することにより、様々な太さの回転体2に、本実施形態に係る第1ユニット1aと第2ユニット1bとから構成される加工機1は、取り付けることができるようになる。
【0014】
図2は、図1の加工機1を右側方向(矢印A方向)から見た図であるが、上述したように、加工機1における回転体2の長さ方向の両端部にブロック10が設けられていることから、図1における左側方向から加工機1を見ても、図2と同様に、左側に設けられた第1ユニット1aのブロック10と第2ユニット1bのブロック10とが現れる。すなわち、図1の加工機1における回転体2の長さ方向の両端部の2カ所で、換言すれば、図1の加工機1の右端部と左端部の2カ所で、ブロック10を用いて、ブロック10のV字状の切れ込み12で回転体2を挟み込むことにより、加工機1は、回転体2に固定される。
【0015】
加工機1は、さらに、このブロック10が取り付けられた固定部30を、回転体2の長さ方向の両端部に備えている。このため、この固定部30は、回転体2に対して固定的に取り付けられる。これら一対の固定部30の内径側には、固定部30に対して回転自在に設けられた回転機構部40が設けられている。このため、本実施形態においては、ブロック10と固定部30とにより、第1ユニット1aと第2ユニット1bを回転体2の周囲で連結して組み立てて、回転体2に加工機1を固定する固定機構が構成されている。
【0016】
図3は、この回転機構部40を、加工機1から抜き出して説明する図であり、図4は、回転機構部40を回転体2の回転軸方向(矢印A方向)から見た模式図である。これら図3及び図4に示すように、回転機構部40は、回転体2の長さ方向の両端部に設けられたドーナッツ型の両端支持部42と、これら一対の両端支持部42の間を連結するガイド44とを備えている。
【0017】
ガイド44の本数は任意であるが、本実施形態においては、8本のガイド44が、2つの両端支持部42の間に配設されている。すなわち、回転体2に取り付けられた際に、その回転体2の周囲にほぼ均等に円周状に配置されるように、8本のガイド44が、一対の両端支持部42の間に設けられている。つまり、本実施形態においては、45°間隔で、ガイド44が配置されている。このようにガイド44を円周状に配置することで、回転機構部40のモーメント荷重を抑制することが可能となる。また、8本のガイドが互いに180°反対側にも位置するように配置されているので、回転機構部40が偏心せずに、精度の高い切削加工を実現することが可能となる。さらに、ガイド44の本数を8本とすることにより、4本や6本のガイド44を設けるよりも切削加工の精度を向上させることが可能となる。但し、ガイド44や固定部30、回転体2の剛性によっては、ガイド44の本数を、4本、6本、10本等の他の本数にすることもできる。
【0018】
2つの両端支持部42の間における一方の端部には、支持部46と回転歯車48とが隣接して設けられている。支持部46と回転歯車48は、ともに、両端支持部42と同様にドーナッツ型であり、空間が形成されたその中心部分に、回転体2が位置する。支持部46と回転歯車48における8本のガイド44の配置は、当然に、両端支持部42と同様である。
【0019】
2つの両端支持部42の間における他方の端部には、支持部50、52が隣接して設けられている。支持部50、52は、ともに、両端支持部42と同様にドーナッツ型であり、空間が形成されたその中心部分に、回転体2が位置する。支持部50、52における8本のガイド44の配置は、当然に、両端支持部42と同様である。
【0020】
回転歯車48と支持部52との間には、横行部54が設けられている。横行部54も、両端支持部42と同様にドーナッツ型であり、8本のガイド44の配置も同様である。但し、横行部54は、回転歯車48と支持部52との間をガイド44に沿って移動可能である。すなわち、横行部54は、ガイド44とともに回転体2の周囲を回転可能ではあるが、ガイド44に固定されておらず、回転体2の長さ方向に沿ってガイド44上を摺動可能に取り付けられている。
【0021】
横行部54の外周上の1カ所に、切削機構56が設けられている。この切削機構56は、回転体2の円周表面を切削加工して、修正加工をする機能を有している。本実施形態においては、横行部54の外周上の1カ所に切削機構56が設けられているが、横行部54の外周上の複数箇所に切削機構56を設けるようにしてもよい。
【0022】
本実施形態における切削機構56は、回転体2の円周表面の切削を行う切削工具60と、この切削工具60を半径方向に移動可能に保持する工具保持機構62とを備えている。切削工具60は、回転体2の切削加工を可能とする刃部を備えている。工具保持機構62は、切削工具60を保持する保持部と、切削工具60を回転体2の半径方向に送り出したり、引き込んだりする動作を可能にする可動部とを備えている。
【0023】
本実施形態においては、図3及び図4に示した回転機構部40全体が、回転体2の周囲を回転する。すなわち、両端支持部42と、ガイド44と、支持部46、50、52と、回転歯車48と、横行部54と、切削機構56とは、互いに相対的には不動である。このため、両端支持部42と、ガイド44と、支持部46、50、52と、回転歯車48と、横行部54と、切削機構56とが一体となって、回転体2の回転軸を中心として回転する。そして、この回転機構部40が回転体2の周囲を回転しながら、切削機構56が回転体2の切削加工を行うことにより、回転体2の切削加工の修正加工を実現できる。具体的には、切削機構56の切削工具60が、回転体2の外周の切削加工を行い、回転体2の修正加工を実現する。
【0024】
図5は、図1における加工機1のB-B線断面を部分的に示す図である。つまり、この図5は、図1における加工機1の全体の1/4を示す断面図である。この図5に示すように、回転歯車48の外周部には、円筒ガイド70が設けられている。円筒ガイド70は、回転歯車48を、ベアリング等を介して回転可能に保持している。また、円筒ガイド70は、支持部72を介して、固定部30に固定的に取り付けられている。このため、円筒ガイド70は、結果的に、回転体2に対して、相対的に不動に取り付けられている。
【0025】
加工機1における、この円筒ガイド70の反対側にも、円筒ガイド74が設けられている。この円筒ガイド74は、支持部52を回転可能に保持している。すなわち、円筒ガイド74は、支持部76を介して、固定部30に不動に取り付けられている。このため、円筒ガイド74は、結果的に、回転体2に対して、相対的に不動に取り付けられている。
【0026】
再び図1及び図2に示すように、加工機1は、モータ80を備えている。本実施形態においては、モータ80は、固定部30と支持部72の上部に固定的に取り付けられている。モータ80の先端軸には歯車機構82が設けられており、モータ80の回転駆動力が、歯車機構82を介して、回転歯車48に伝達されるように構成されている。本実施形態においては、例えば、二つの組み合わせ歯車84、86により、歯車機構82が構成されている。歯車84はモータ80の回転軸に接続されており、このモータ80が回転駆動することにより、歯車84が回転し、その回転が歯車86に伝達され、さらにその回転が回転歯車48に伝達される。
【0027】
また、加工機1には、横行部54を、回転体2の長さ方向に沿って移動させるための送り機構100を備えている。本実施形態においては、送り機構100は、送りネジ102と、パッド104と、モータ106とを、備えて構成されている。送りネジ102は、その両端部が、固着具108、110により、その中心軸に沿って回転可能に、支持部72、76に取り付けられている。送りネジ102の一端部は、固定部30に取り付けられたモータ106に接続されており、モータ106が回転駆動することにより、送りネジ102も回転し、送りネジ102が回転することにより、パッド104が回転体2の長さ方向に沿って左右に移動する。例えば、モータ106が正回転をすることにより、パッド104が右方向に移動し、モータ106が逆回転をすることにより、パッド104が左方向に移動する。
【0028】
図6は、本実施形態に係る送りネジ102を含むパッド104の断面を示す図である。この図6に示すように、本実施形態に係るパッド104は、送りネジ102がその内部を貫通する貫通孔106が形成されており、この貫通孔106に螺旋状にネジ溝が刻まれている。この貫通孔106に螺旋状に形成されたネジ溝に、送りネジ102に螺旋状に形成されたネジ山が係合し、送りネジ102が回転することにより、パッド104が移動する構造になっている。
【0029】
また、パッド104には、横行部54を挟み込む挟持部108が形成されており、この挟持部108で横行部54を左右から挟み込む構造になっている。このため、パッド104が移動すると、これに伴って横行部54も移動する。すなわち、挟持部108の凹部と横行部54との間は摺動し、回転機構部40の回転に伴って横行部54が回転しても、その回転力はパッド104には伝達されない。
【0030】
したがって、モータ80により回転機構部40を回転させつつ、モータ106によりパッド104を移動させることにより、横行部54に設けられた切削機構56に回転体2の外径の加工を行わせることができる。どの程度の切削加工を施すのかは、切削機構56における工具保持機構62による切削工具60の繰り出し量により調整される。
【0031】
また、図2から分かるように、本実施形態においては、この送り機構100は、加工機1の左右両側に設けられている。このため、モータ106の回転駆動は同期制御がなされ、送りネジ102の送り量が左右で同等になるように制御される。なお、送り機構100は、必ずしも2つ設ける必要はなく、加工機1全体に1つだけ設けるようにしてもよい。さらには、3つ、4つ等の送り機構100を加工機1が備えるようにしてもよい。
【0032】
再び、図1及び図2に示すように、本実施形態に係る加工機1は、固定部30に押しネジ部110を備えている。本実施形態においては、1つの固定部30に対して4つの押しネジ部110が設けられており、それぞれの押しネジ部110が支持部76に連結されている。このため、押しネジ部110の位置を微調整することにより、加工機1と回転体2の中心合わせをすることができる。
【0033】
以上のように、本実施形態に係る加工機1によれば、加工機1が複数のユニットに分割されて構成されているので、加工機1を発電機等の回転体2を有する設備に運び入れる搬入作業を容易化することができる。そして、これら複数のユニットを回転体2の周囲で組み立てて連結することにより、回転体2に加工機1を固定的に取り付けることができる。そして、回転体2に固定した加工機1により、切削機構56を用いて回転体2の外径の加工をすることができる。
【0034】
より具体的には、モータ80を回転駆動させることにより、回転歯車48が回転し、これにより、加工機1自体は回転体2に固定したまま、回転機構部40を回転体2の周囲で回転させることができる。回転機構部40が回転することにより、横行部54も回転し、この横行部54に取り付けられた切削機構56も回転する。さらに、モータ106も回転駆動し、送りネジ102が回転して横行部54が回転体2の長さ方向に沿って移動する。このため、例えば、切削機構56を回転体2の周囲を回転させながら回転体2の一方の端部から他方の端部へ移動させることができる。この移動の際に、切削機構56の切削工具60の繰り出し量を調整することにより、回転体2の切削加工を行うことができる。
【0035】
さらに、加工機1を回転体2に固定することとしたので、回転体2が斜めに設置されていたり、垂直に設置されていたりしても、加工機1を回転体2に取り付けて、回転体2の切削加工を行うことができる。このため、加工機1の利用可能性を格段に広げることができる。
【0036】
(第1実施形態の変形例)
上述した第1実施形態においては、回転機構部40が回転体2の周囲を回転することにより、回転体2の切削加工を行うように構成したが、本変形例では、横行部が回転することにより、回転体2の切削加工を行うようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0037】
図7は、第1実施形態の変形例に係る加工機1の斜視図であり、図8は、図7の加工機1を回転体2に取り付けた状態の断面図であり、図7のC-C線断面を示している。これら図7及び図8に示すように、加工機1は、第1ユニット1aと第2ユニット1bと分割されて構成されており、これら第1ユニット1aと第2ユニット1bとを回転体2の周囲で組み立てて、互いに連結するとともに、回転体2とは別の部分に固定的に取り付けることができる。
【0038】
具体的には、図7に示すように、本変形例に係る加工機1は、両端部に固定部150が設けられている。そして、この一対の固定部150の間に、8本のガイド44が配置されている。すなわち、第1ユニット1aに、4本のガイド44が設けられており、第2ユニット1bにも4本のガイド44が設けられている。第1ユニット1aと第2ユニット1bを組み立てることにより形成される中央部分の開口に回転体2を位置させて、第1ユニット1aと第2ユニット1bを固着具152により連結する
【0039】
図8に示すように、加工機1は、回転体2に固定的に取り付けられている。切削機構56は、回転体2の長さ方向に沿って移動可能である。切削機構56は、上述した第1実施形態と同様に、切削工具60と工具保持機構62とを備えており、工具保持機構62が切削工具60の半径方向への移動を調整することにより、回転体2の切削加工の量を調整する。
【0040】
切削機構56は、送り機構100により、回転体2の長さ方向に沿って移動する。すなわち、モータ106が回転駆動することにより、送りネジ102が回転し、送りネジ102の回転に伴い、切削機構56の取り付けられている横行部154が、回転体2の長さ方向に沿って移動する。このため、モータ106が回転駆動することにより、切削機構56を回転体2の長さ方向に沿って移動させることができる。また、横行部154は、外部にも接続されたチェーン機構156により、回転体2の周囲を回転可能に構成されている。すなわち、横行部154の外周部は、8本のガイド44に、回転体2の長さ方向に移動可能な状態で取り付けられており、横行部154の内周部は、外周部の内側に回転体2の周囲を回転可能な状態で取り付けられている。また、横行部154の内周部には、切削機構56が設けられており、チェーン機構156の駆動力により、内周部が回転体2の周囲を回転すると、切削機構56も回転する。これにより、回転体2の外周を切削機構56により加工することができる。
【0041】
以上のように、本変形例においても、複数のユニットで構成された加工機1を、回転体2の周囲で組み立てることができる。本変形例においては、横行部154の内周部が回転して、この内周部に取り付けられた切削機構56も回転体2の周囲を回転し、回転体2の表面を切削加工することができる。そして、横行部154の内周部を回転させながら、送り機構100により切削機構56を回転体2の一方から他方に移動させることにより、回転体2の外周を長さ方向に沿って切削加工することができる。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態は、上述した第1実施形態の変形例をさらに変形して、回転体2の外側にある軸受支持部を加工機1で切削加工できるようにしたものである。以下、上述した第1実施形態の変形例と異なる部分を説明する。
【0043】
図9は、第2実施形態に係る加工機1を回転体2に取り付けた状態の断面図であり、上述した図8に対応する図である。この図9に示すように、第2実施形態においては、切削機構56が回転体2の外周方向を向いている。すなわち、切削機構56の切削工具60が回転体2の外周を向いている。工具保持機構62は、切削工具60の半径方向の移動量を調整可能であるが、その調整は、回転体2の半径方向外側に向けて行う。
【0044】
回転体2の半径方向外側には、軸受支持部200が位置している。すなわち、図9は、回転体2と軸受支持部200との間にあった軸受を分解して取り出し、その隙間に加工機1を挿入した状態を示している。この軸受支持部200は、回転体2の周囲全体に設けられている。このため、切削機構56は、この軸受支持部200の内径を切削加工することを可能にする。
【0045】
以上のように、本実施形態に係る加工機1によれば、回転体2の軸受部200の内径を切削加工し、その内径を拡大することができるようになる。より具体的には、回転体2を回転させることにより、加工機1は回転する。そして、加工機1を回転させながら、モータ106を回転駆動し、送り機構100により、切削機構56を回転体2の一方の端部から他方の端部へと移動させる。これにより、軸受支持部200を、その一方の端部から他方の端部まで、切削加工することができ、その内径を拡大することができる。
【0046】
(第3実施形態)
第3実施形態は、上述した第1実施形態を変形して、加工機1がさらに脚部を備えるようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0047】
図10は、第3実施形態に係る加工機1の側面図であり、上述した図1に対応する図である。図11は、第3実施形態に係る加工機1の正面図であり、上述した図2と同様に、加工機1を図10の矢印A方向から見た図である。
【0048】
これら図10及び図11に示すように、本実施形態に係る加工機1は、第2ユニット1bの下部に、脚部300が設けられている。本実施形態においては、第2ユニット1bの4カ所に、脚部300が設けられている。このため、加工機1は、第1ユニット1aと第2ユニット1bとを連結して組み立てた状態で、自立することができる。
【0049】
脚部300を取り付ける位置は、任意であるが、本実施形態においては、固定部30に脚部300が取り付けられている。このため、加工機1は、回転体2の重量と、加工機1の自重とを、固定部30と脚部300とにより保持することが可能となる。回転体2の重量は軽いほど好ましいが、回転体2の重量が重い場合には、固定部30の剛性を高くする等の対策が必要となる。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る加工機1によれば、下側に位置する第2ユニット1bの下部に脚部300を設けたので、加工機1を自立させることができる。このため、加工機1を組み立てて、回転体2に取り付けた状態で、加工機1は回転体2を保持することができる。従って、例えば、回転体2から軸受を外した状態で、回転体2の切削加工をすることができる。
【0051】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1の横行部54に変位計を設置することにより、加工機1から回転体2までの変位を計測できるようにして、回転体2の摩耗状況や加工状況を把握することができるようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0052】
図12は、第4実施形態に係る加工機1の回転体2の長さ方向に沿った側面を示す図であり、上述した第1実施形態における図1に対応している。この図12から分かるように、本実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1の横行部54に、変位計400を追加的に設けることにより構成されている。
【0053】
変位計400は、横行部54が回転体2の長さ方向に沿って移動することに伴い、同じく回転体2の長さ方向に沿って移動する。また、変位計400は、回転機構部40が回転体2の周囲を回転することに伴い、同じく回転体2の周囲を回転する。このため、変位計400は、回転体2の任意の箇所の変位を計測することが可能である。
【0054】
本実施形態に係る変位計400は、変位センサ402と、データ送信部404と、センサ保持部406とを備えて構成されている。変位センサ402は、変位計400と回転体2の表面との間の距離を計測するためのセンサである。本実施形態においては、変位センサ402の先端が回転体2の表面に接触しており、この変位センサ402が水平な軸との間で形成する角度に基づいて、変位計400と回転体2の表面との間の距離を算出する。
【0055】
データ送信部404は、この加工機1とデータ収集装置410との間のデータ通信を行うための装置である。例えば、データ送信部404は、変位センサ402の計測データをパルス信号でデータ収集装置410に送信する。本実施形態においては、データ送信部404とデータ収集装置410との間の通信は、ケーブルの巻き付き等を防止すべく、無線により行われる。但し、データ送信部404とデータ収集装置410との間の通信は、無線に限らず任意の手法で通信可能であり、例えば、通信ケーブル等の有線により、これらの間の通信が行われるようにしてもよい。
【0056】
センサ保持部406は、変位センサ402がセンシング動作可能なように、変位センサ402とデータ送信部404とを横行部54に固定している。このため、変位計400は、横行部54の移動や回転に付随して、移動し、回転する。
【0057】
さらに、データ収集装置410には、モータ80とモータ106の移動量もパルス信号として送信される。移動量に関する情報は、モータ80とモータ106から直接、データ収集装置410に送信されてもよいし、データ送信部404を介して、データ収集装置410に送信されてもよい。また、通信手法は、無線であっても、有線であってもよい。
【0058】
本実施形態においては、これら変位計400の変位量に関するデータと、モータ80及びモータ106の移動量に関するデータは、データ収集装置410のプログラマブル・ロジック・コントローラ412で受信される。すなわち、プログラマブル・ロジック・コントローラ412は、変位計400の変位量と、モータ80とモータ106の移動量とを、同期がとれた状態で受信し、コンピュータ420に転送する。
【0059】
コンピュータ420は、例えば、いわゆるパソコンにより構成されており、プログラマブル・ロジック・コントローラ412から受信した、変位計400の変位量と、モータ80とモータ106の移動量を解析する解析部422と、この解析部422で解析した結果を表示する表示部424とを備えている。解析部422は、例えば、変位計400の変位量と、モータ80とモータ106の移動量を解析するソフトウェアにより構成されており、表示部424は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等により構成されている。
【0060】
以上のような構成に鑑みれば、本実施形態においては、変位計400を備えた加工機1と、データ収集装置410と、コンピュータ420とにより、回転体2の切削加工を行う加工システム4が構成されていると捉えられる。そして、以上のような加工システム4により、以下のようなことを実現することができる。
【0061】
例えば、回転機構部40の回転を止めた状態で、横行部54を回転体2の長さ方向の一方の端部から他方の端部まで移動させることにより、回転体2の長さ方向の表面の状態の変位を計測することができる。
【0062】
図13は、例えば、回転体2の0°の位置と180°の位置における回転体2の表面の変位の計測結果の一例を示している。この図13においては、回転体2の修正加工をする前に、偏摩耗の状態を確認するために、回転体2の表面を計測した計測結果を示している。この図13に示すように、回転体2の長さ方向の両端部には、軸受が接触しない健全面430が設けられている。この健全面430は、軸受と接触しないため、偏摩耗は生じず、回転体2の表面は滑らかな真円を保っている。
【0063】
これに対して、回転体2の軸受と接触する部分は、軸受のベアリング等との摩耗により、その表面に偏摩耗が生じている。このため、変位計400により回転体2の表面を計測すると、その表面に凹凸が生じていることが観察できる。この偏摩耗の量に応じて、加工機1による加工量を調整する。すなわち、回転体2の摺動面を真円な状態に戻すために必要な修正加工量を求めることができる。一般的には、修正加工の量は、偏摩耗量に加えて、僅かに仕上げ加工を行うことができる余裕量を加味して決定する。例えば、偏摩耗の量が35μmであった場合は、例えば、余裕量を10μmに設定し、修正加工量を45μmに設定する。
【0064】
なお、この加工機1に設定されている最大加工量が30μmであった場合、コンピュータ420は、1回目の修正加工量を30μmに設定し、2回目の修正加工量を15μmに設定するように設計されている。
【0065】
なお、回転体2は長年、常時回転するように摺動することから、回転体2の円周状にほぼ同じ量で減少することが分かっている。このため、変位計400を1つの角度だけで、回転体2の長さ方向の計測をするだけで、回転体2の摩耗状態を把握することもできる。この場合、例えば、回転体2の0°の位置だけ、その表面の計測をするようにしてもよい。
【0066】
さらには、例えば90°ピッチで、回転体2の表面を計測することにより、加工機1の回転体2に対する取り付け状態を確認することができる。すなわち、水平方向及び垂直方向の表面の変位量が一定であった場合、回転体2の回転軸中心に対して、真っ直ぐに、加工機1を取り付けることができたことを意味する。回転体2の真円度についても、この手法で、把握することができる。なお、回転体2をどの程度の角度のピッチで計測するかは、任意である。例えば、45°ピッチで回転体2の表面を計測すると、回転体2の8カ所で、その表面を計測することができる。
【0067】
或いは、加工機1における横行部54を1カ所に停止した状態で、回転機構部40を回転させて、回転体2の円周方向に沿って、変位計400が回転体2の表面を計測することにより、回転体2の真円度を高い精度で測ることができる。この真円度の測定は、回転体2の切削加工前に行って、加工量を決めるような使い方もできるし、回転体2の切削加工後に行って、加工精度の確認をするような使い方もできる。
【0068】
次に、図14及び図15に基づいて、加工中に切り込み量を調整する機能を有する加工機1を説明する。図14は、切削機構56に切り込み量調整機能を付加した加工機1を示す図であり、図15は、切削機構56を図14の矢印D方向から見た図である。
【0069】
これら図14及び図15に示すように、切削機構56は、切削工具60をモータ430の駆動力を用いて半径方向に移動可能にしている。モータ430の制御は、制御部432が制御信号を無線若しくは有線で受信して、この制御受信した信号に基づいてモータ430を制御する。モータ430は、例えば、バッテリー434を具備しており、このバッテリー434の備える電力で動作する。
【0070】
モータ430は、切削機構56に設けられているネジ棒436を回転させる。ネジ棒436は、T型スロットナットを介して回転可能に保持されているとともに、切削工具60にカップリングされている。このため、ネジ棒436が回転することにより、切削工具60が半径方向に移動する。例えば、モータ430が正回転することにより、切削工具60が飛び出す方向に移動し、切り込み量を大きくすることができる。一方、モータ430が逆回転することにより、切削工具60が引っ込む方向に移動し、切り込み量を小さくすることが出来る。このモータ430の制御は、例えば、コンピュータ420からユーザが行うことができる。
【0071】
以上のように、本実施形態に係る加工機1及びそのような加工機1を備える加工システム4によれば、回転体2の加工を行う前に、変位計400を用いて回転体2の表面を計測することにより、回転体2の偏摩耗量を予め計測することができる。このため、加工機1による加工量をより正確に算出することができる。
【0072】
また、回転体2を加工すべき量が、加工機1の最大加工量を超えているような場合には、どのように加工量を分割して、複数回の加工により、回転体2を加工すべきなのかをコンピュータ420が予め算出することができる。このため、加工機1による回転体2の加工効率を向上させることができる。
【0073】
さらには、回転体2に対して、加工機1による切削加工を行った後も、加工後の回転体2の状態を容易に確認することができる。例えば、回転体2の長さ方向に沿って、その表面の状態を計測することにより、或いは、回転体2の円周方向に沿って、その真円度を計測することにより、適切な切削加工が回転体2に対して行われたのかを確認することができる。
【0074】
なお、これまで本実施形態に係る変位計400を第1実施形態に適用した場合を例に、第4実施形態を説明したが、この変位計400は、他の実施形態にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0075】
(第5実施形態)
第5実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1の横行部54に切削機構56として研磨機構500を設置することにより、回転体2の周囲を研磨で切削加工するようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0076】
図16は、第5実施形態に係る加工機1の回転体2の長さ方向に沿った側面を示す図であり、上述した第1実施形態における図1に対応している。この図16から分かるように、本実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1の横行部54に、研磨機構500を追加的に設けることにより構成されている。
【0077】
本実施形態においては、横行部54に1つの研磨機構500を設けているが、横行部54に設ける研磨機構500の数は1つに限るものではなく、2つ、3つ等の複数の研磨機構500を横行部54に設けるようにしてもよい。例えば、1つの研磨機構500では、加工の程度が十分ではない場合には、複数の研磨機構500を設けるようにすればよい。
【0078】
この研磨機構500は、種々の研磨方式を採用することができる。例えば、研磨機構500は、研磨ヘッドを回転させるグラインダー方式でもよいし、研磨ヘッドを揺動させるサンダー方式でもよい。
【0079】
図17は、研磨ヘッド502を回転させるグラインダー方式で研磨機構500を構成した場合における研磨機構500の拡大図を示す図であり、図16の矢印X方向から研磨機構500を見た状態を示す図である。この図17に示す研磨機構500は、バッテリー式グラインダーを例示している。
【0080】
この図17に示すように、グラインダー方式の研磨機構500は、研磨ヘッド502と、この研磨ヘッド502に取り付けられた研磨部504とを備えて構成されている。研磨部504は、例えば、ブラシや不織布等で構成されている。この研磨部504が回転体2の表面に接触している状態を保ったまま、研磨ヘッド502は研磨部504を回転させる。具体的には、円盤状の研磨部504の中心部分に回転主軸が設けられており、この回転主軸を中心として、円盤状の研磨部504が回転することにより、回転体2の表面を研磨する。これにより、回転体2の表面の加工が可能になる。
【0081】
図18は、研磨ヘッド510を揺動させるサンダー方式で研磨機構500を構成した場合における研磨機構500の拡大図を示す図であり、図16の矢印X方向から研磨機構500を見た状態を示す図である。この図18に示す研磨機構500は、バッテリー式サンダーを例示している。
【0082】
この図18に示すように、サンダー方式の研磨機構500は、研磨ヘッド510と、この研磨ヘッド510に取り付けられた研磨部512とを備えて構成されている。研磨部512は、例えば、布やすり等で構成されている。この研磨部512が回転体2の表面に接触している状態を保ったまま、研磨ヘッド510は研磨部512を揺動させる。具体的には、研磨部512を回転体2の長手方向に往復運動をさせることにより、回転体2の表面を研磨する。これにより、回転体2の表面の加工が可能になる。
【0083】
以上のように、本実施形態に係る加工機1によれば、横行部54に切削機構56として、研磨機構500を取り付けたので、この研磨機構500により、回転体2の外周表面の研磨をし、切削加工をすることができる。すなわち、回転体2を中心として、回転機構部40とともに横行部54を回転させながら、回転体2の長さ方向に沿って、回転体2の一方の端部から他方の端部まで横行部54を移動させることにより、回転体2の円周表面を研磨して、切削加工することができる。また、研磨機構500により、回転体2の加工を行うことができるので、回転体2の円周表面を滑らかに加工することができる。
【0084】
なお、これまで本実施形態に係る研磨機構500を第1実施形態に適用した場合を例に、第5実施形態を説明したが、この研磨機構500は、他の実施形態にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0085】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1の横行部54に切削機構56の近傍にクリーナーを設置することにより、切削機構56が回転体2を切削加工することにより生じた屑をクリーナーが吸引するようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0086】
図19は、第6実施形態に係る加工機1の回転体2の長さ方向に沿った側面を示す図であり、上述した第1実施形態における図1に対応している。また、図20は、本実施形態に係る加工機1が備えるクリーナー600を拡大して示す図であり、図19の矢印X方向から切削機構56とクリーナー600とを見た状態を示す図である。これら図19及び図20から分かるように、本実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1における横行部54の切削機構56の近傍にクリーナー600を追加的に設けることにより構成されている。
【0087】
本実施形態に係る加工機1における回転体2に対する切削加工の動作は、上述した第1実施形態と同様であるが、切削機構56の近くにクリーナー600が設けられている点が相違する。すなわち、切削機構56により回転体2の周囲表面の切削加工を行うと、屑が発生する。この屑は、切り屑と呼ばれたり、粉塵と呼ばれたりするが、これらを回収せずに切削加工を続けると、屑が回転体2の周囲に飛散する。このため、この屑を作業者が吸引してしまったり、屑が加工機1に付着してしまったりする問題が生じ得る。
【0088】
そこで、本実施形態に係る加工機1では、切削機構56に隣接して、クリーナー600を設けることにより、切削機構56の切削加工で発生した屑を吸引して回収することにしている。特に、本実施形態においては、図20から分かるように、切削機構56からみて、横行部54の回転方向後方位置にクリーナー600を設けている。このクリーナー600は、例えば、バッテリー式で駆動する吸引器であり、切削機構56の後方から発生した屑を、吸引口602から吸引して回収する。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る加工機1によれば、切削機構56の近傍にクリーナー600を設け、切削加工で生じる屑を吸引して回収することとした。このため、切削加工で発生した屑の飛散を抑制することができ、屑を作業員が吸引してしまったり、加工機1に付着してしまったりすることを回避することができる。
【0090】
なお、これまで本実施形態に係るクリーナー600を第1実施形態に適用した場合を例に、第6実施形態を説明したが、このクリーナー600は、他の実施形態に係る加工機にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0091】
(第7実施形態)
第7実施形態に係る加工機1は、上述した第1実施形態に係る加工機1の切削機構56に、役割の異なる複数の工具を設けることにより、回転体2の切削加工精度の向上と、加工時間の短縮を図ったものである。以下、上述した第2実施形態と異なる部分を説明する。
【0092】
図21は、第7実施形態に係る加工機1の回転体2の長さ方向に沿った側面を示す図であり、上述した第2実施形態における図9に対応している。この図21に示すように、本実施形態に係る加工機1の横行部154に取り付けられた切削機構56は、荒加工用工具700と、仕上げ加工用工具702と、研磨加工用ブラシ704とを備えている。
【0093】
荒加工用工具700は、チェーン機構156の駆動に伴って横行部154が回転した場合に、回転体2の円周表面を深く荒く切削加工するための工具である。仕上げ加工用工具702は、チェーン機構156の回転に伴って横行部154が回転した場合に、回転体2の円周表面を浅く細かく切削加工するための工具である。研磨加工用ブラシ704は、チェーン機構156の駆動の回転に伴って横行部154が回転した場合に、回転体2の円周表面を研磨仕上げするための工具である。本実施形態においては、これら荒加工用工具700と、仕上げ加工用工具702と、研磨加工用ブラシ704とが、回転体2の長さ方向に対する横行部154の進行方向に沿って工程順に並べられている。
【0094】
したがって、本実施形態においては、横行部154は、回転体2の長さ方向に沿って、右側の端部から左側の端部まで移動する。換言すれば、切削機構56の複数の工具が、その切削加工の工程順に回転体2の円周表面を加工するように、横行部154が移動する。このため、横行部154の内周部が回転しながら、回転体2の一方の端部から他方の端部まで移動することにより、1回の移動で、回転体2の切削や研磨を行うことができる。
【0095】
以上のように、本実施形態に係る加工機1によれば、横行部154の切削機構56に役割の異なる複数の工具を、その工程順に並べて設置したので、横行部154を回転させながら、一方の端部から他方の端部まで移動させることにより、切削加工を完了させることができる。
【0096】
なお、切削機構56に設ける工具は、荒加工用工具700と、仕上げ加工用工具702と、研磨加工用ブラシ704の3つの工具の組み合わせに限られるものではなく、任意の工具を組み合わせることが可能である。例えば、切削工具60と研磨加工用ブラシ704の組み合わせで、切削機構56を構成してもよい。また、これら3つの工具に、さらに別の工具を加えて、切削機構56を構成するようにしてもよい。
【0097】
なお、これまで本実施形態に係る異なる役割を有する複数の工具を備える切削機構56を第1実施形態に適用した場合を例に、第7実施形態を説明したが、このような工具を備える切削機構56を、他の実施形態に係る加工機にも同様に適用できることは言うまでもない。
【0098】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0099】
1:加工機、2:回転体、10:ブロック、20:ネジ棒、30:固定部、40:回転機構部、42:両端支持部、44:ガイド、46:支持部、48回転歯車、50:支持部、52:支持部、54:横行部、56:切削機構、60:切削工具、62:工具保持機構、80:モータ、82:歯車機構、100:送り機構、102:送りネジ、104:パッド、106:モータ、108:挟持部
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