(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】熱成形物品における折り曲げ可能な電気導体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230301BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20230301BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B32B27/00 103
B32B27/40
B32B27/18 J
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018109621
(22)【出願日】2018-06-07
【審査請求日】2021-06-07
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519372065
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アナイリン インス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー ジェイ.ジー.ディー
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-176728(JP,A)
【文献】特表2017-505984(JP,A)
【文献】特表2014-531490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気導体によって横断される折り曲げ可能な領域を含有する熱成形物品であって、前記電気導体が、
(a)基材と、
(b)二層電気導体であって、
a.
粉末またはフレークの形態の銀と、熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物
と、溶媒とを含むポリマー厚膜銀導体の層Aと、
b.
粉末またはフレークの形態の銀と、熱可塑性ポリヒドロキシエーテル
と、溶媒とからなるポリマー厚膜銀導体の層Bと
を含む二層電気導体と
を含み、
層Aが下層として前記基材上に直接印刷され層Bが前記電気導体の上層として層A上に印刷されるか、または層Bが下層として前記基材上に直接印刷され層Aが前記電気導体の上層として層B上に印刷されるかのいずれかである、熱成形物品。
【請求項2】
前記ポリマー厚膜
銀導体
の層Aの熱可塑性ポリウレタンが、ウレタンホモポリマー、ポリエステル系コポリマーおよび直鎖ヒドロキシルポリウレタンからなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
層Aが下層として前記基材上に直接印刷され層Bが前記電気導体の上層として層A上に印刷される、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
層Bが下層として前記基材上に直接印刷され層Aが前記電気導体の上層として層B上に印刷される、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記ポリマー厚膜
銀導体の上層が前記ポリマー厚膜
銀導体の下層の全長に沿って延在している、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ポリマー厚膜
銀導体の上層が前記
ポリマー厚膜
銀導体の下層の一部分のみに沿って延在し、前記一部分が前記熱成形物品の前記折り曲げ可能な領域を含む、請求項1に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り曲げ可能な電気導体によって横断される折り曲げ可能な領域を含有する熱成形物品に関する。
【背景技術】
【0002】
可撓性かつ折り曲げ可能な物品に電気導体を組み込むことに関心が寄せられている。ペーストを印刷することによって導体が形成されて、導体の抵抗が熱成形または曲げの結果として許容限度よりも増加する場合、最初に形成された導体の抵抗が低くなるようにペーストの第2の層が印刷される。典型的に、これは、最初に許容可能であるが、疲れ試験下での導体の機械的制限が明らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
抵抗の大きい変化を伴うことなく、物品の寿命中、屈曲および曲げに加えて積層、エンボス加工または熱成形を受ける物品における電気導体が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、電気導体によって横断される折り曲げ可能な領域を有する熱成形物品に関する。
【0005】
本発明は、電気導体によって横断される折り曲げ可能な領域を含有する熱成形物品を提供し、電気導体は、
(a)基材と、
(b)二層電気導体であって、
a.(i)熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物、および(ii)少なくとも200%の伸び率パーセントと1000ポンド/平方インチ未満の100%伸びを達成するために必要な引張応力とを有する熱可塑性ポリウレタン、からなる群から選択されるポリマーを含むポリマー厚膜銀導体の層Aと、
b.熱可塑性ポリヒドロキシエーテルを含むポリマー厚膜銀導体の層Bと
を含む二層電気導体と
を含み、層Aが下層として基材上に直接印刷され層Bが電気導体の上層として層A上に印刷されるか、または層Bが下層として基材上に直接印刷され層Aが電気導体の上層として層B上に印刷されるかのいずれかである。
【0006】
熱成形された電気導体は、180°曲げ試験に供せられた後の最終抵抗Rfおよび180°曲げ試験前の初期抵抗Riを有する。
【0007】
一実施形態において、層Aのポリマーは、熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物を含み、比Rf/Riは10より小さい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、電気導体によって横断される折り曲げ可能な領域を含有する熱成形物品に関し、電気導体は、基材と、(i)熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物、および(ii)少なくとも200%の伸び率パーセントと1000ポンド/平方インチ未満の100%伸びを達成するために必要な引張応力とを有する熱可塑性ポリウレタン、からなる群から選択されるポリマーを含むポリマー厚膜銀導体の層Aと、熱可塑性ポリヒドロキシエーテルを含むポリマー厚膜銀導体の層Bとを含む二層電気導体とを含む。
【0009】
一実施形態において、層Aが下層として基材上に直接印刷され層Bが電気導体の上層として層A上に印刷される。
【0010】
別の実施形態において、層Bが下層として基材上に直接印刷され層Aが電気導体の上層として層B上に印刷される。
【0011】
一実施形態において、ポリマー厚膜導体の上層は、厚膜導体の下層の全長に沿って延在している。
【0012】
別の実施形態において、ポリマー厚膜導体の上層は、厚膜導体の下層の一部分のみに沿って延在し、この部分が熱成形物品の折り曲げ可能な領域を含む。
【0013】
電気導体のための基材は、物品自体の一部分であってもよい。別の実施形態において、基材は、二層電気導体が上に印刷される別個の要素であり、その場合、基材は物品に付着される。基材は、布、特にウレタンコーティングを有する布であってもよい。
【0014】
二層電気導体を有する物品は、ポリマー厚膜銀ペーストを印刷することによって作製されてもよい。
【0015】
ポリマー厚膜導体の層Aを形成するために使用されるペーストは、典型的に、粉末またはフレークの形態の銀と、(i)熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物、および(ii)少なくとも200%の伸び率パーセントと1000ポンド/平方インチ未満の100%伸びを達成するために必要な引張応力とを有する熱可塑性ポリウレタン、からなる群から選択されるポリマーと、溶媒とを含む。印刷後の乾燥工程は、溶媒を除去し、層Aをもたらす。ポリマー厚膜導体の熱可塑性ポリウレタンは、ウレタンホモポリマー、ポリエステル系コポリマーおよび直鎖ヒドロキシルポリウレタンからなる群から選択される。一実施形態において、ポリマーは、熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物を含む。別の実施形態において、ポリマーは、少なくとも200%の伸び率パーセントと、1000ポンド/平方インチ未満の100%伸びを達成するために必要な引張応力とを有する熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0016】
ポリマー厚膜導体の層Bを形成するために使用されるペーストは、典型的に、粉末またはフレークの形態の銀と、熱可塑性ポリヒドロキシエーテルと、溶媒とを含む。印刷後の乾燥工程は、溶媒を除去し、層Bをもたらす。
【0017】
一般的には、厚膜組成物は、適切な機能特性を組成物に付与する機能相を含む。例えば、機能相は、機能相のためのキャリアとして作用する有機媒体において分散された銀などの電気機能粉末を含んでもよい。一般的には、組成物を焼いて、有機媒体のポリマーおよび溶媒をともに燃焼させて電気機能特性を付与する。しかしながら、ポリマー厚膜組成物の場合、有機媒体のポリマー部分は、乾燥後に導体組成物の構成部分として残留する。したがって、ポリマーの選択は、ポリマー厚膜導体の性質を決定するのに重要である。
【0018】
熱可塑性ポリマーは、特定の温度を超えると成形可能になり、冷却されるときに固化し、再加熱して再成形され得、したがって加熱によって再造形され得る。
【0019】
熱成形は、曲げやすい温度に材料を加熱して、次に型内で特定の形状に成形する製造法である。本明細書中で用いられるとき、熱成形は、通常の熱成形ならびにスタンピングまたはモールディングによる物品上のエンボス加工ならびに熱および/または圧力による積層を意味する。
【実施例】
【0020】
いくつかの実施例を、簡単な曲げ試験を使用して試験した。層Aのポリマーは、熱可塑性ポリウレタンと熱可塑性ポリヒドロキシエーテルとの混合物であった。一試料において、層Aが下層として基材上に堆積され、および層Bが上層として層A上に堆積された-基材/A/B。第2の試料において層Bが下層として基材上に堆積され、層Aが上層として層B上に堆積された - 基材/B/A。次に、試料を熱成形した。次に、各々の試料は、各々の二層導体の抵抗を連続的にモニタしながら、直径4mmの曲げ表面について最初に一方向に180°曲げられ、次に反対側の方向に180°曲げられた。これは、本明細書において180°曲げ試験と称されるものの一サイクルである。180°曲げ試験は、120のこのようなサイクルからなった。各々のサイクルは約1秒かかり、抵抗は、各々のサイクルについて最大値をとる。最大値は、増加するサイクル数とともに増加する。しかしながら、曲げを止めるとき、抵抗は20秒未満でより低い抵抗に戻る。各々の試料は、試験前に初期抵抗Riおよび180°曲げ試験の120サイクルに供せられた後にRfの(元に戻った)最終抵抗を有した。基材/A/B試料の初期抵抗Riは0.5オームであり、抵抗比Rf/Riは5.8であった。基材/B/A試料の初期抵抗Riは0.6オームであり、抵抗比Rf/Riは8.6であった。
【0021】
比較実験A
比較のために同じポリマー厚膜導体の2つの層を使用して別の試料が作製された、すなわち、下層および上層の両方が層Bであった - 基材/B/B。次に、試料を熱成形した。試料を180°曲げ試験に供した。試料の初期抵抗Riは0.5オームであり、抵抗比Rf/Riは46.1であった。