(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】波形モニタ装置、ビデオ信号のモニタ方法及びコンピュータ・プログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 17/02 20060101AFI20230301BHJP
G01R 13/20 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H04N17/02 Z
G01R13/20 R
G01R13/20 S
(21)【出願番号】P 2018127721
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319013861
【氏名又は名称】プロジェクト・ジャイアンツ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョーン・ハブバード
(72)【発明者】
【氏名】トッド・エス・ハーロウ
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-012802(JP,A)
【文献】特開2015-109563(JP,A)
【文献】特開2004-361416(JP,A)
【文献】米国特許第06532024(US,B1)
【文献】英国特許出願公開第02507729(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 17/00
G01R 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ信号をモニタする波形モニタ装置であって、
複数のフレームを含む上記ビデオ信号を受ける入力部と、
受けた上記ビデオ信号を記憶するメモリと、
該メモリに結合されたプロセッサであって、
ビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離し、
少なくとも1つの上記コンポーネント信号に関して、上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号のピーク値を求め、
上記ピーク値においてマーカを生成し、
上記ピーク値が所定しきい値を突破したか判断し、
上記ピーク値が上記所定しきい値を突破した場合には、警告を生成するよう構成される上記プロセッサと、
少なくとも1つの上記コンポーネント信号と、該コンポーネント信号に関する上記ピーク値における上記マーカと、上記ピーク値が上記所定しきい値を突破した場合の上記警告とを表示する表示装置と
を具える波形モニタ装置。
【請求項2】
上記プロセッサが、上記ピーク値が上記所定しきい値を突破したか否かに基づいて上記マーカの色を変更することによって上記警告を生成する請求項1の波形モニタ装置。
【請求項3】
上記プロセッサは、
上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号の最小値を求め、該最小値でマーカを生成し、上記最小値を第2所定しきい値に対して比較し、もし上記最小値が上記第2所定しきい値を突破する場合には上記警告を生成する請求項1又は2の波形モニタ装置。
【請求項4】
上記プロセッサは、上記ビデオ信号の規格又は色空間を判断し、上記規格又は色空間に基づいて、上記所定しきい値を選択する請求項1から3の
うちのいずれか一つの波形モニタ装置。
【請求項5】
ビデオ信号をモニタする方法であって
複数のフレームを含む上記ビデオ信号を受ける処理と、
上記ビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離する処理と、
上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号のピーク値を求める処理と、
上記ピーク値でマーカを生成する処理と、
上記ピーク値を所定しきい値に対して比較する処理と、
上記ピーク値が上記所定しきい値を突破した場合には警告を生成する処理と、
少なくとも1つの上記コンポーネント信号と、該コンポーネント信号に関する上記ピーク値における上記マーカと、上記ピーク値が上記所定しきい値を突破した場合の上記警告とを表示装置上に表示する処理と
を具えるビデオ信号のモニタ方法。
【請求項6】
少なくとも2つの上記コンポーネント信号夫々のピーク値を求める処理と、
少なくとも2つの上記コンポーネント信号夫々の上記ピーク値においてマーカを生成する処理と、
少なくとも2つの上記コンポーネント信号のいずれかの上記ピーク値が所定しきい値を突破した場合に警告を生成する処理と、
少なくとも2つの上記コンポーネント信号と、少なくとも2つの上記コンポーネント信号夫々の上記ピーク値における上記マーカと、上記警告とを表示装置上に表示する処理と
を具える請求項5のビデオ信号のモニタ方法。
【請求項7】
上記ピーク値が上記所定しきい値を突破したか否かに基づいて上記マーカの色を変更することによって上記警告を生成する処理を更に具える請求項5又は6のビデオ信号のモニタ方法。
【請求項8】
上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号の最小値を求める処理と、
該最小値でマーカを生成する処理と、
上記最小値を第2所定しきい値に対して比較する処理と、
もし最小値が第2所定しきい値を突破する場合には警告を生成する処理と
を更に具える請求項5から7の
うちのいずれか一つのビデオ信号のモニタ方法。
【請求項9】
コンピュータ・プログラムであって、メディア分析装置のプロセッサによって実行されると、上記メディア分析装置に、
入力されたビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離させ、
複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号のピーク値を求めさせ、
上記ピーク値が所定しきい値を突破したか否か判断させ、
上記ピーク値が上記所定しきい値を突破した場合には警告を生成させ、
少なくとも1つの上記コンポーネント信号及び上記警告を表示装置上に表示させるコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
上記メディア分析装置に、更に、複数の上記フレーム中のフレーム夫々についてピーク値を求めさせ、上記フレーム夫々に関する上記ピーク値をグラフとしてプロットさせ、上記ピーク値のいずれかが上記所定しきい値を突破したか否か判断させる請求項9のコンピュータ・プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオ信号をモニタ(監視)する装置及び方法等に関し、特に、ビデオ信号のピーク値をモニタするための装置及び方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
波形モニタは、ビデオ及び画像の両方について、ライブ、保存、再生されたものをモニタ(監視)するのに利用されている。波形モニタによって、ユーザは、ビデオが関心のあるピーク値に達したか否かを判断できる。ハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)ビデオの登場と、ビデオ制作における波形モニタの使用にともなって、ユーザは、レンダリングしているビデオが所望のレンジ内に収まっているか否かをマニュルで判断する必要が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-506344号公報
【文献】特開2017-188872号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】「WFM/WVR-波形モニタ/ラスタライザ」、テクトロニクス社製波形モニタ等のビデオ関連測定機器紹介サイト、テクトロニクス、[online]、[2018年6月28日検索]、インターネット<https://jp.tek.com/ビデオ-test/waveform-monitors-0>
【文献】「ハイダイナミックレンジ合成」の記事、Wikipedia(日本語版)、[オンライン]、[2018年6月29日検索]、インターネット<https://ja.wikipedia.org/wiki/ハイダイナミックレンジ合成>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ビデオを再生しているときに、そのビデオがいつ所望レンジから外れたかをユーザが判断するのは、非常に難しいことがある。場合によっては、そのビデオのどこが所望レンジから外れたか否か判断するのに、ユーザがフレーム毎にビデオをクリックしなければならないこともある。しかし、ピーク値は、瞬間的なことがあり、また、その画像の単一画素だけや、そのような極小さい部分のみが、関心のある値にヒットすることがある。このように、いつ、そして、どのくらいのレベルで、そうしたピークが生じたのかを特定するのは、困難なことがある。即ち、ビデオ全体が所望のレンジ内に収まっているのか、それともレンジから外れた部分があるのか、容易に判断できないことがあった。
【0006】
本発明は、これらの課題やその他の課題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施例を以下に示す。本発明の実施形態としては、以下の実施例の任意の1つ以上であるか、又は、任意の組み合わせを含むことがありえる。
【0008】
実施例1としては、ビデオ信号をモニタ(監視)する波形モニタ装置があり、これは、複数のフレームを含むビデオ信号を受ける入力部と、入力されたビデオ信号を記憶するメモリと、このメモリに結合されたプロセッサとを有する。プロセッサは、ビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離し、 少なくとも1つの上記コンポーネント信号に関して、上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号のピーク値を求め、そのピーク値でマーカを生成し、そのピーク値が所定しきい値を突破したか否か判断し、ピーク値が所定しきい値を突破した場合には、警告(alert)を生成する。波形モニタ装置には、表示装置もあり、これは、少なくとも1つのコンポーネント信号と、このコンポーネント信号に関するピーク値におけるマーカと、ピーク値が所定しきい値を突破した場合の警告とを表示する。
【0009】
実施例2としては、実施例1の波形モニタ装置があり、このとき、プロセッサは、所定時間の間、ピーク値においてマーカを生成する。
【0010】
実施例3としては、実施例2の波形モニタ装置があり、ピーク値においてマーカを生成する所定時間の値(時間の長さ)を受けるためのユーザ入力部を更に有している。
【0011】
実施例4としては、実施例1から3のいずれかの波形モニタ装置があり、このとき、プロセッサは、ピーク値が所定しきい値を突破したか否かに基づいてマーカの色を変更することによって警告を生成する。
【0012】
実施例5としては、実施例1から4のいずれかの波形モニタ装置があり、このとき、プロセッサは、上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号の最小値を求め、この最小値でマーカを生成し、最小値を第2所定しきい値に対して比較し、もし最小値が第2所定しきい値を突破する場合には警告を生成する。
【0013】
実施例6としては、実施例1から5のいずれかの波形モニタ装置があり、このとき、プロセッサは、ビデオ信号の規格又は色空間を判断し、この規格又は色空間に基づいて、所定しきい値を選択する。
【0014】
実施例7としては、実施例1から6のいずれかの波形モニタ装置があり、このとき、ビデオ信号は、圧縮ビデオ信号である。
【0015】
実施例8としては、実施例1から7のいずれかの波形モニタ装置があり、このとき、ビデオ信号をインターネット・プロトコル(IP)入力部を通して受ける。
【0016】
実施例9としては、実施例1から8のいずれかの波形モニタ装置があり、このとき、プロセッサは、少なくとも1つのコンポーネント信号の最小値と、少なくとも1つのコンポーネント信号の最大値と、少なくとも1つのコンポーネント信号の平均値とを生成する。
【0017】
実施例10は、ユーザにビデオ信号のしきい値の突破を警告する方法であり、この方法は、複数のフレームを含むビデオ信号を受ける処理と、ビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離する処理と、上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号のピーク値を求める処理と、そのピーク値でマーカを生成する処理と、ピーク値を所定しきい値に対して比較する処理と、ピーク値が所定しきい値を突破した場合には警告を生成する処理と、少なくとも1つのコンポーネント信号、このコンポーネント信号に関するピーク値におけるマーカ及びピーク値が所定しきい値を突破した場合のユーザへの警告を表示装置上に表示する処理とを有している。
【0018】
実施例11としては実施例10の方法があり、更に、少なくとも2つのコンポーネント信号夫々のピーク値を求める処理と、少なくとも2つのコンポーネント信号夫々のピーク値においてマーカを生成する処理と、少なくとも2つのコンポーネント信号のいずれかのピーク値が所定しきい値を突破した場合に警告を生成する処理と、少なくとも2つのコンポーネント信号、少なくとも2つのコンポーネント信号夫々のピーク値におけるマーカ及び上記警告を表示装置上に表示する処理とを有している。
【0019】
実施例12としては、実施例10又は11の方法があり、更に、所定時間の間、ピーク値においてマーカを生成する処理を有している。
【0020】
実施例13としては、実施例10から12のいずれかの方法があり、更に、ピーク値が所定しきい値を突破したか否かに基づいてマーカの色を変更することによって警告を生成する処理を有する。
【0021】
実施例14としては、実施例10から13のいずれかの方法があり、更に、上記複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号の最小値を求める処理と、この最小値でマーカを生成する処理と、最小値を第2所定しきい値に対して比較する処理と、もし最小値が第2所定しきい値を突破する場合には警告を生成する処理とを有している。
【0022】
実施例15としては、コンピュータ・プログラムがあり、これは、メディア分析装置(例えば、波形モニタ装置)のプロセッサによって実行されると、メディア分析装置に、入力されたビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離させ、 複数のフレーム中のフレーム夫々における少なくとも1つの上記コンポーネント信号のピーク値を求めさせ、ピーク値が所定しきい値を突破したか否か判断させ、ピーク値が所定しきい値を突破した場合には警告を生成させ、少なくとも1つのコンポーネント信号及び上記警告を表示装置上に表示させる。
【0023】
実施例16は、実施例15のコンピュータ・プログラムであって、これは、メディア分析装置に、更に、所定時間の間、ピーク値においてマーカを生成させる。
【0024】
実施例17は、実施例15又は16のコンピュータ・プログラムであって、これは、メディア分析装置に、更に、ピーク値が所定しきい値を突破したか否かに基づいてマーカの色を変更することによって警告を生成させる。
【0025】
実施例18は、実施例15から17のいずれかのコンピュータ・プログラムであって、これは、メディア分析装置に、更に、ビデオ信号の規格又は色空間を判断させ、この規格又は色空間に基づいて、所定しきい値を選択させる。
【0026】
実施例19は、実施例15から18のいずれかのコンピュータ・プログラムであって、これは、メディア分析装置に、更に、ビデオ信号をインターネット・プロトコル(IP)入力部を通して受けさせる。
【0027】
実施例20は、実施例15から19のいずれかのコンピュータ・プログラムであって、これは、メディア分析装置に、更に、複数のフレーム中の各フレームについてピーク値を求めさせ、各フレームに関するピーク値をグラフとしてプロットさせ、これらピーク値のいずれかが所定しきい値を突破したか否か判断させる。
【0028】
本発明の実施形態の態様、特徴及び効果は、添付の図面を参照し、以下の実施形態の説明を読むことで明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による例示的な波形モニタ装置のブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態によるビデオ信号のコンポーネント信号の表示装置上での表示例である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による
図2のコンポーネント信号を表示するための例示的な方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ビデオ信号をモニタ(監視)する波形モニタ装置(メディア分析装置)に関する。波形モニタ装置は、複数のフレームを有するビデオ信号を受ける入力部と、入力されたビデオ信号を記憶するメモリと、このメモリに結合されたプロセッサと、表示装置とを有していても良い。プロセッサは、ビデオ信号を少なくとも2つのコンポーネント信号に分離し、少なくとも1つのコンポーネント信号について、その複数のフレーム中の少なくとも1つのフレームのピーク値を求め、そのピーク値でマーカを生成し、そのピーク値が所定しきい値を突破したか否か判断し、ピーク値が所定しきい値を突破した場合には、警告(alert)を生成する。表示装置上に、少なくとも1つのコンポーネント信号と、このコンポーネント信号に関するピーク値におけるマーカと、ピーク値が所定しきい値を突破した場合の警告とを表示することで、ユーザは、ビデオ信号のピーク値が所要のしきい値内にあるか否かを容易に判断できる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、ユーザは、画像信号が、標準的なダイナミック・レンジ(standard dynamic range:SDR)又は色空間(例えば、REC-709)からは外れているとしても、ハイ・ダイナミック・レンジ(HDR)のレンジ(バンド)内にはあるか否かを素早く判断できる。以下で更に詳細に説明するように、ビデオ信号を表示しているときに現れる水平バーが、ビデオ信号がレンジから外れたことを示すクイック・インジケータとして機能し、これによって、ユーザは、ビデオを一時停止(ポーズ)し、次いで、ビデオ信号をフレーム単位で再生することで、フレーム中の1画素のみがレンジから外れたような場合でさえも、レンジから外れた特定のフレームを見つけることができる。これは、例えば、もしあるビデオがある規格から別の規格へとコード変換されて、そのコード変換処理が、そのコード変換されたビデオ信号の規格から、その全てのビデオ画像信号が外れていなかったか否か判断するような場合に有用であろう。
【0032】
図1は、ある画像に関して関心のあるピーク値をモニタ(監視)する例示的な試験測定システムのブロック図である。画像は、静止画像でも良いし、ビデオ信号などによるビデオ画像(動画像)でも良い。試験測定システムは、波形モニタ100のような試験測定装置を含む。波形モニタ装置100には、ビデオ信号104を受ける1つ以上の入力ポート(入力部)102があっても良い。例えば、この1つ以上の入力ポート102は、シリアル・データ・インタフェース(SDI)、HDMI(登録商標)、インターネット・プロトコル(IP)入力部であっても良い。この1つ以上の入力ポート102は、有線でも良いし、無線でも良い。例えば、波形モニタ装置100は、IPビデオ信号を受ける無線入力部102を有していても良い。
【0033】
また、波形モニタ装置100には、メモリ108を通して1つ以上の入力ポート102からの画像を受けるプロセッサ106もある。ただし、実施形態によっては、プロセッサ106が、1つ以上の入力ポート102からの画像を直接受けるようにしても良い。プロセッサ106は、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、汎用プロセッサ、FPGA(field programmable gate array)、ASIC(特定用途向けIC)、又は、これらの組み合わせという形態で、1つ以上の回路によって実現されても良い。
【0034】
プロセッサ106は、入力部で受けた画像を処理し、その色空間の規格を求める(判断する)。画像信号は、その画像信号の色空間規格を示すメタデータを有していることがある。この場合、ビデオ・ペイロード識別子(identifier)のような画像信号のメタデータ中の情報に基づいて、プロセッサ106は、その画像を表示すべき色空間を決定できる。しかし、プロセッサ106は、入力信号中のメタデータに基づかず、入力信号だけに基づいて、その色空間を決定するようにすることもできる。
【0035】
決定した色空間規格に基づいて、プロセッサ106は、その色空間規格に関して、その画像信号で許容されるレンジを示す所望しきい値を、メモリ108から読み出して選択する。即ち、SDRビデオやHDRビデオのような、異なる色空間及びビデオ品質に関して、異なるしきい値を選択しても良い。ただし、実施形態によっては、波形モニタ装置100にユーザ入力手段(例えば、ダイアログ・ボックスなどのグラフィカル・ユーザ・インタフェース「GUI」)110を設けても良く、これによって、プロセッサ106が所定しきい値を選択するのではなく、ユーザが、その画像に関する所望のしきい値とレンジをユーザ入力手段110から入力しても良い。
【0036】
実施形態によっては、画像信号が、輝度コンポーネント信号と、色差コンポーネント信号とから構成されることがある。例えば、画像信号が、アナログYPbPr信号の形式で供給されることもある。プロセッサ106は、画像信号を処理し、輝度(Y)コンポーネント信号と、青原色信号から輝度信号を引いた信号である青色差(Pb)コンポーネント信号と、赤原色信号から輝度信号を引いた信号である赤色差(Pr)コンポーネント信号とを表示装置112へと出力する。これらコンポーネント信号は、その信号電圧に基づいて表示することもできるし、そのコンポーネント信号の符号ワード・ペイロードに基づいて表示することもできる。符号ワードのレンジは、SDR及びHDR ビデオに関しては、16進表示で0から3FFとしても良い。そして、もしSDRビデオ・ソースの符号(コード)が、HDR空間においてレンジから外れると、プロセッサ106がユーザに警告を与える。
【0037】
別の実施形態では、画像信号は、RGB信号又はデジタルYCbCr信号としても良い。こうした場合、画像信号は、赤(R)コンポーネント信号、緑(G)コンポーネント信号及び青(B)コンポーネント信号に分離されるか、又は、輝度(Y)コンポーネント信号、青色差(Cb)コンポーネント信号及び赤色差(Cr)コンポーネント信号に分離されるようにしても良い。更には、IPビデオ信号のような、ある種のビデオ信号は、ビデオ・ストリームとオーディオ・ストリームのような複数のコンポーネントに分離しても良い。これらストリームは、次に、色差成分を分析するために、更に分解しても良い。更に、実施形態によっては、画像信号が、RGB信号に加えて輝度(Y)信号のように、3つよりも多いコンポーネントを有していることもある。
【0038】
プロセッサ106がこれらコンポーネント信号を表示装置112に出力するとき、プロセッサ106は、信号を選択されたしきい値に対して比較し、もしこれらコンポーネント信号のいずれかが、そのしきい値を突破する(violate:違反する)と、ユーザに警告を行う。実施形態によっては、プロセッサ106が、画像信号の全体を処理するとしても、ユーザに対しては、選択されたしきい値から外れたフレームのみを出力するようにしても良い。実施形態によっては、プロセッサ106が、更に、画像信号の各コンポーネントの最小値、最大値及び平均値を求めるようにしても良い。
【0039】
実施形態によっては、プロセッサ106は、ビデオ信号全体について、これら最大値を求めてプロットし、そのプロットをメモリ108に保存する。そして、ビデオが流れているときにビデオ信号を比較するのではなく、このプロットを全体として、所定しきい値と比較する。これによって、ユーザは、どのフレームがレンジから外れたのか直ちに判断でき、そして、そのフレームに関するビデオ信号を抜き出し、どの画素がレンジから外れたのかを決定することができる。更に、これによって、ビデオがオフラインのときに、ビデオ信号がしきい値を突破したか否かの決定を実行できる。
【0040】
実施形態によっては、ビデオ信号を圧縮する前に、波形モニタ装置100で分析し、そのビデオの色空間又は規格のしきい値内にビデオが収まっているかを確認しても良い。もしビデオ信号がこの確認に合格すれば、次いでビデオ信号を圧縮し、次に圧縮ビデオ信号も波形モニタ装置100で分析し、圧縮ビデオ信号が圧縮後も所望レンジ内に収まっているか判断しても良い。非圧縮ビデオ信号及び圧縮ビデオ信号は、リアルタイムで分析されても良いし、メモリ108内に保存した後に分析されても良い。
【0041】
波形モニタ装置100は、
図1に示さない他の構成要素を有していても良い。例えば、波形モニタ装置100が、アナログ・デジタル・コンバータ(ADC)、フィルタなどを有し、プロセッサ106と共に動作して、画像信号の種々のコンポーネント信号を処理するようにしても良い。
【0042】
図2は、波形モニタ装置の表示装置におけるビデオ信号のコンポーネント信号の波形表示例であり、この例では、Yコンポーネント信号200、Pbコンポーネント信号202及びPrコンポーネント信号204の表示例を示している。まず、Yコンポーネント信号200については、Yコンポーネント信号200と比較される単一のしきい値を設けても良い。バー208は、Yコンポーネント信号200の表示に追従して、Yコンポーネント信号200のピーク値と共に移動する。実施形態によっては、Yコンポーネント信号200のピーク値が、どのくらい所定しきい値に近いかに応じて、バー208の色が変化しても良い。例えば、Yコンポーネント信号200のピーク値が試験対象の画像信号の色空間規格に関するレンジ内にあるときには、バー208が白色であるとしても良い。Yコンポーネント信号200のピーク値がしきい値に近いときには、バー208が黄色になっても良い。更に、Yコンポーネント信号200のピーク値がしきい値を突破し、レンジから外れたときには、バー208が赤色に変わっても良い。
【0043】
実施形態によっては、バー208の表示に複数フレームに渡る残像特性を持たせて、ビデオがレンジから外れたことを、ユーザが視覚的に容易に見ることができるようにしても良い。さもないと、ピーク値がレンジから外れる頻度が低い場合には、いつピーク値がレンジから外れたのか、そして、それがどのフレームで生じたのかを判断するのが難しくなるかもしれない。この残像の特性(残像の時間の長さ)は、ユーザがプログラムできるようにしても良い。更に、バー208の色もユーザがプログラムできるようにしても良い。
【0044】
ビデオ再生中に水平バーが出現するという視覚的指示表示によって、ユーザは、ビデオがその望ましい色空間に関するレンジから外れたことを素早く判断できる。次いで、ユーザは、ビデオを一時停止(ポーズ)し、次いで、ビデオをフレーム単位で再生することで、フレーム中の1画素のみが色空間規格から外れたような場合でさえも、所望色空間規格のレンジから外れた特定のフレームを見つけることができる。
【0045】
従来からあるシステムでは、ユーザは、フレーム単位で全ビデオを再生して各フレームを分析し、画像信号がその所望色空間のレンジから外れたか否か判断している。従来からあるシステムでは、ユーザは、じっとして、全ビデオをフレーム単位で進めて各フレームを分析し、ビデオ中の画素のいずれか又はそうした小さい部分がしきい値を突破するか判断する必要があり、これは、非常に時間がかかると共に、潜在的に精度が劣る処理である。こうした点を、上述の本発明によれば、改善できる。
【0046】
図2を再度参照すると、Pbコンポーネント信号202に関しては、その上側ピーク値と下側ピーク値に追従する上側バー210と下側バー212とが表示される。同様に、Prコンポーネント信号204に関しては、その上側ピーク値と下側ピーク値に追従する上側バー214と下側バー216とが表示される。Pbコンポーネント信号202及びPrコンポーネント信号204の夫々に関して、上側しきい値と、下側しきい値とが選択され、これらの間に収まる場合、Pbコンポーネント信号202及びPrコンポーネント信号204は、所定のレンジ内にあると判断される。これらバー210~216は、バー208と同様に、選択されたしきい値に対して、コンポーネント信号の上下のピーク値が夫々近いか、下回るか、又は、上回るかに応じて、画像信号を再生中にその色を変更しても良い。即ち、波形モニタ装置は、Pbコンポーネント信号202及びPrコンポーネント信号204の夫々に関して、上側ピーク値を上側しきい値と比較し、下側ピーク値を下側しきい値と比較することで、Yコンポーネント信号の場合と同様の表示と動作を行う。
【0047】
図3は、例えば、
図2に示すようなビデオ・コンポーネント信号を表示する方法に関するフローチャートを示す。最初に、ステップ300では、波形モニタ装置がその入力ポート(入力部)でビデオ信号を受ける。ステップ302では、ビデオ信号が少なくとも2つのコンポーネント信号に分離される。
図2の例では、ビデオ信号は、3つのコンポーネント信号に分離されている。ステップ304では、少なくとも1つのコンポーネント信号の複数のフレーム中の各フレームについてピーク値が求められる。これは、ビデオ信号の電圧をデータに変換し、そのデータを表示装置上にプロットすることによって行っても良い。別の実施形態としては、ビデオ信号の電圧自身をアナログ信号のままで、表示装置上で、そのビデオ信号をプロットするのに利用してもよい。いずれの状況においても、プロットされたビデオ信号のアナログ電圧又はデータに変換された電圧の情報に基づいて、所定しきい値が選択される。
【0048】
ステップ306では、ピーク値においてマーカが生成され、これは、更に、表示装置上でユーザに対して表示されても良い。次いで、ステップ308では、波形モニタ装置が、ピーク値が所定しきい値を突破(violate:違反)したか否かを判断する。ステップ310において、生成されたマーカは、ピーク値と所定しきい値との関係に基づいて、色分けされても良い。例えば、もしピーク値が、所定しきい値を突破しなければ(レンジ内であれば)、マーカの色は、白色としても良い。もしピーク値が所定しきい値に近ければ、マーカの色を黄色としても良い。もしピーク値が所定しきい値を突破すれば、マーカの色を赤色としても良い。
【0049】
マーカの色を変更することによって、ユーザは、いつビデオがそのコンポーネント信号のレンジから外れたかを視覚的に見ることができ、これによって、ユーザは、どのフレームがレンジから外れたのかを素早く簡単に判断できる。従来の方法では、全ビデオ信号をフレーム単位で再生して、選択した色空間のレンジから画素のいずれかが外れているか否か判断していたが、これに比較して、上述の本発明では、大幅に時間を節約できる。
【0050】
本発明の方法では、上述のように、ユーザ入力手段(ユーザ・インタフェース)110を介して、ユーザから所望レンジ及び所定しきい値を受ける処理か、又は、ビデオ信号の規格又は色空間の決定に基づいて、波形モニタ装置100がメモリ108中の記憶データから所定しきい値を選択する処理を更に有していても良い。
【0051】
本発明の実施例は、特に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本発明の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)又は他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。一般に、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータ又は他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体的又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本発明の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0052】
本願発明の態様は、様々な変更及び代替形態で動作する。特定の態様は、図面に例として示されており、詳細に説明した。しかしながら、本願に開示された実施例は、説明を明確にする目的で提示されており、明示的に限定されない限り、開示される一般的概念の範囲を本願に記載の具体例に限定することを意図していない。このように、本開示は、添付の図面及び特許請求の範囲に照らして、記載された態様のすべての変更、均等物及び代替物をカバーすることを意図している。
【0053】
明細書における実施形態、態様、実施例などへの言及は、記載された項目が特定の特徴、構造又は特性を含み得ることを示す。しかしながら、開示される各態様は、そうした特定の特徴、構造又は特性を含んでいても良いし、必ずしも含んでいなくても良い。更に、このような言い回しは、特に明記しない限り、必ずしも同じ態様を指しているとは限らない。更に、特定の態様に関連して特定の特徴、構造又は特性が記載されている場合、そのような特徴、構造又は特性は、そのような特徴が他の開示された態様と明示的に関連して記載されているか否かに関わらず、そうした他の開示された態様と関連して使用しても良い。
【0054】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はそれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含むことができる。
【0055】
コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)又はその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置又はその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は排除される。
【0056】
通信媒体は、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含むことができる。
【0057】
開示された主題の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0058】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴のあり得る全ての組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例の状況において開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例の状況においても利用できる。
【0059】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0060】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を除いて限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0061】
100 波形モニタ装置
102 入力ポート(入力部)
104 ビデオ信号
106 プロセッサ
108 メモリ
110 ユーザ入力手段(GUI)
112 表示装置
200 Yコンポーネント信号(波形)
202 Pbコンポーネント信号(波形)
204 Prコンポーネント信号(波形)
208 Yバー
210 Pb上側バー
212 Pb下側バー
214 Pr上側バー
216 Pr下側バー