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特許7235452発泡性ビールテイスト飲料及び発泡性ビールテイスト飲料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】発泡性ビールテイスト飲料及び発泡性ビールテイスト飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 5/02 20060101AFI20230301BHJP
   C12G 3/055 20190101ALI20230301BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230301BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230301BHJP
   A23L 2/40 20060101ALI20230301BHJP
   A23F 5/20 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C12C5/02
C12G3/055
A23L2/38 J
A23L2/40
A23L2/00 U
A23F5/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018136662
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020010661
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】蝦名 史子
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-140352(JP,A)
【文献】特開2015-181361(JP,A)
【文献】特開2018-042479(JP,A)
【文献】特開2003-245064(JP,A)
【文献】特開2010-022221(JP,A)
【文献】特開2015-208253(JP,A)
【文献】特開2006-101751(JP,A)
【文献】特開2012-147778(JP,A)
【文献】特開2019-201556(JP,A)
【文献】Journal of American Society Brewing Chemists,2015年,73(2),pp.170-178
【文献】日本食品科学工学会誌,2009年,56(6),pp.336-342
【文献】世界のウェブアーカイブ|ADVANCED BREWINGウェブサイトに掲載された「ビールキットC」の商品紹介のアーカイブ,2017年,[オンライン],[検索日:2022年 1月19日],URL,http://web.archive.org/web/20170825051359/http://advanced-brewing.com/0_kitc.html
【文献】世界のウェブアーカイブ|Specialty Coffee Associationof Americaのウェブサイトに掲載された「SCAA Standard | Golden Cup」のアーカイブ,2017年,[オンライン],[検索日:2022年 1月19日],URL,https://web.archive.org/web/20171113192651/http://scaa.org/PDF/resources/golden-cup-standard.pdf
【文献】J. Agric.Food Chem.,2009年,57(4),pp.1253-1259
【文献】Czech J. Food Sci.,2015年,33,pp.261-266
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F,A23L,C12C,C12G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総ポリフェノール量が350ppm以上900ppm以下であり、
原料として、カフェインレスコーヒー原料を含有する、発泡性ビールテイスト発酵飲料。
【請求項2】
総ポリフェノール量が400ppm以上900ppm以下である、請求項1に記載の発泡性ビールテイスト発酵飲料。
【請求項3】
NIBEM値が200以上である、請求項1又は2に記載の発泡性ビールテイスト発酵飲料。
【請求項4】
原料液にカフェインレスコーヒー原料を添加する工程を備え、
総ポリフェノール量が350ppm以上900ppm以下になるように調整することを含む、発泡性ビールテイスト発酵飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性ビールテイスト飲料及び発泡性ビールテイスト飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発泡性ビールテイスト飲料の泡持ちを改善する手段については種々の報告がなされている。例えば、非特許文献1には、ホップに含まれる成分(イソα酸等)が、高い泡持ち効果を有し、ホップ添加により泡持ちが向上することが開示されている(非特許文献1)。一方、発泡性ビールテイスト飲料の泡持ちを阻害する物質(泡阻害物質)の存在も知られており、このような物質の例として、ポリフェノールが挙げられている(非特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】宮地秀夫著、「ビール醸造技術」、1999年12月28日、食品産業新聞社、p.379-389
【文献】D. Evan Evans et al., “Don’t Be Fobbed Off: The Substance of BeerFoam-A Review”,J. Am. Soc. Brew. Chem. 60(2):47-57, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、泡持ちと総ポリフェノール量との関係に着目して検討した結果、発泡性ビールテイスト飲料の総ポリフェノール量を所定量以上にすると、泡持ちが阻害されることなく、むしろ向上することを見出した。
【0005】
本発明は、この新規な知見に基づくものであり、泡持ちに優れる発泡性ビールテイスト飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、総ポリフェノール量が300ppm以上である、発泡性ビールテイスト飲料を提供する。本発明に係る発泡性ビールテイスト飲料は、総ポリフェノールが所定量以上であるため、泡持ちが向上している。
【0007】
本発明に係る発泡性ビールテイスト飲料において、総ポリフェノール量が400ppm以上であってよい。この場合、泡持ちがより一層優れたものとなる。
【0008】
本発明に係る発泡性ビールテイスト飲料において、NIBEM値は、200以上であってよい。
【0009】
本発明に係る発泡性ビールテイスト飲料は、原料として、コーヒー原料を含有してよい。この場合、泡持ちがより一層優れたものとなる。
【0010】
本発明はまた、総ポリフェノール量が300ppm以上となるように調整することを含む、発泡性ビールテイスト飲料の製造方法を提供する。本発明に係る製造方法は、原料液にコーヒー原料を添加する工程を備えていてよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、泡持ちに優れる発泡性ビールテイスト飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、「発泡性ビールテイスト飲料」とは、ビール様の香味を有する発泡性の飲料を意味する。発泡性ビールテイスト飲料は、アルコール度数が1v/v%以上である発泡性ビールテイストアルコール飲料であってもよく、アルコール度数が1v/v%未満である発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料であってもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0014】
発泡性ビールテイストアルコール飲料としては、例えば、酒税法(平成二九年三月三一日法律第四号)上のビール、発泡酒、その他の醸造酒、リキュールに分類されるものが挙げられる。
【0015】
発泡性ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数は、特に制限されず、例えば、1v/v%以上20v/v%以下であってよい。発泡性ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の下限は、例えば、1v/v%以上、2v/v%以上、3v/v%以上、4v/v%以上、又は5v/v%以上であってもよい。また、発泡性ビールテイストアルコール飲料のアルコール度数の上限は、例えば、20v/v%以下、15v/v%以下、10v/v%以下、9v/v%以下、8v/v%以下、7v/v%以下、6v/v%以下、5v/v%以下、4v/v%以下、又は3v/v%以下であってもよい。
【0016】
発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料は、実質的にアルコールを含有しない発泡性ビールテイスト飲料である。発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料のアルコール度数は、1v/v%未満であればよく、0.5v/v%以下であってよく、0.1v/v%以下であってよく、0.005v/v%未満(0.00v/v%)であってもよい。
【0017】
本明細書において、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm)程度又は0.235MPa(2.4kg/cm)程度としてもよい。
【0018】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、総ポリフェノール量が300ppm以上である。ポリフェノールとしては、例えば、特に限定されないが、キサントフモール、カテキン、ヘスペリジン、クロロゲン酸、レスベラトロール、フラボノール、イソフラボン、タンニン、ケルセチン、アントシアニンが挙げられる。本明細書において総ポリフェノール量とは、発泡性ビールテイスト飲料に含まれるこれらポリフェノールの総量をいう。総ポリフェノール量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.19 総ポリフェノール」に記載の方法によって測定することができる。なお、本明細書において、「ppm」は、「mg/L」を意味する。
【0019】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料の総ポリフェノール量は、泡持ちがより優れたものとなる観点から、300ppm以上、350ppm以上、400ppm以上、450ppm以上、470ppm以上、480ppm以上、490ppm以上、500ppm以上、510ppm以上、520ppm以上、530ppm以上、又は540ppm以上であってよく、3000ppm以下、2500ppm以下、2000ppm以下、1500ppm以下、900ppm、又は850ppm以下であってよい。
【0020】
総ポリフェノール量は、例えば、原料の種類、使用量及び添加時期を調整することにより、上記範囲に適宜設定することができる。また、総ポリフェノール量は、製造工程の任意の段階において、ポリフェノールを添加し、かつその添加量を制御することにより調整することもできる。
【0021】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料のNIBEM値は、200以上、210以上、220以上、230以上、又は240以上であってよく、350以下又は300以下であってよい。
【0022】
NIBEM値は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.29. 泡 NIBEM-Tを用いた泡持ち測定方法」に記載されている方法によって測定することができる。
【0023】
発泡性ビールテイスト飲料のNIBEM値は、例えば、原料の種類、使用量及び添加時期を調整することにより、上記範囲に適宜設定することができる。また、NIBEM値は、製造工程の任意の段階において、ポリフェノールを添加し、かつその添加量を制御することにより調整することもできる。
【0024】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、発酵飲料(ビールテイスト発酵飲料)であってよく、非発酵飲料(ビールテイスト非発酵飲料)であってもよい。発酵飲料は、酵母等による発酵を経て製造されるものである。非発酵飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造されるものである。
【0025】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、原料として、麦芽を含んでいてよい。本明細書において、原料とは、発泡性ビールテイスト飲料の製造に用いられる全原料のうち、水及びホップ以外のものを意味する。麦芽は、麦を発芽させることにより得ることができる。麦としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦、エン麦等であってよく、大麦であることが好ましい。麦芽にはモルトエキスが含まれる。モルトエキスは、麦芽から糖分及び窒素分を含むエキス分を抽出することにより得られる。
【0026】
麦芽としては、例えば、淡色麦芽及び濃色麦芽を用いることができる。淡色麦芽は、淡い色の麦芽であり、麦から麦芽を製造する際の焙燥を80℃程度の温度上昇に抑えて焦がさないようにして製造することができる。濃色麦芽とは、濃い褐色から黒色の麦芽であり、麦から麦芽を製造する際の焙燥や焙煎を比較的高い温度(例えば約120℃)で行い、焦がすことで製造することができる。濃色麦芽としては、例えば、カラメル麦芽、クリスタル麦芽、黒麦芽、チョコレート麦芽、コーヒー麦芽が挙げられる。
【0027】
原料中の麦芽の比率は、特に限定されず、例えば、10重量%以上であってよく、25重量%以上であってよく、50重量%以上であってよく、66重量%以上であってもよいが、本発明の効果をより効果的に得られるためには、50重量%以上であることが好ましい。
【0028】
麦芽中の濃色麦芽の比率は、麦芽全量を基準として、例えば、0.1重量%以上、5重量%以上、若しくは10重量%以上、又は15重量%以下、30重量%以下、若しくは50重量%以下であってよい。
【0029】
原料は、麦芽以外の麦原料を含んでいてもよい。麦芽以外の麦原料としては、例えば、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、オート麦、ハト麦及びエン麦等の麦、並びに麦エキス等の麦加工物が挙げられる。麦エキスは、麦から糖分及び窒素分を含む麦エキス分を抽出することにより得られる。麦芽以外の麦原料は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本実施形態に係るビールテイスト飲料は、原料として、コーヒー原料を含んでいてよい。
【0031】
コーヒー原料は、例えば、コーヒー豆又はコーヒー豆由来の原料であってよい。コーヒー豆は、精選、焙煎、粉砕等の処理が施されたものであってもよい。コーヒー豆由来の原料としては、例えば、コーヒーエキス、インスタントコーヒーが挙げられる。コーヒーエキスは、例えばコーヒー豆の抽出により得られる。具体的には、コーヒーエキスは、例えば、生コーヒー豆を抽出して得られる生コーヒー豆エキス、又は焙煎したコーヒー豆を熱水で抽出することにより得られるコーヒー豆エキスであってもよい。
【0032】
コーヒー原料は、カフェインレスであってよい。カフェインレスであるコーヒー原料(カフェインレスコーヒー原料)は、コーヒー原料中のカフェインの30%以上を除去されたものである。カフェインレスコーヒー原料は、コーヒー原料中のカフェインの60%以上又は90%以上を除去されたものであってよい。カフェインレスコーヒー原料は、コーヒー原料(例えばコーヒー豆)の水抽出等の通常の方法を用いて、コーヒー原料からカフェインを除去して得ることができる。例えば、カフェインレスコーヒーエキスは、カフェインの30%以上を除去したコーヒー豆の抽出により得ることができる。カフェインレスコーヒーエキスは、カフェインの60%を除去したコーヒー豆の抽出により得てもよく、カフェインの90%以上を除去したコーヒー豆の抽出により得ることが好ましい。
【0033】
発泡性ビールテイスト飲料は、原料として、麦原料及びコーヒー原料以外の副原料を用いてもよい。副原料としては、コーン、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等の澱粉原料、液糖、砂糖等の糖質原料が挙げられる。
【0034】
発泡性ビールテイスト飲料は、原料として、酒税法の第三条第十二項ロに記載の政令で定める果実及び香味料(コーヒー原料を除く)を含んでいてもよい。これらの原料を含有する場合、上記果実及び香味料(コーヒー原料を除く)の含有量は、麦芽100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、本発明による効果を阻害しない限り、飲料に通常配合される甘味料、酸化防止剤、酸味料、苦味料等の添加剤を含有してもよい。
【0036】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、容器に入れて提供することができる。容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器等を適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分及び光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
【0037】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、総ポリフェノール量が300ppm以上になるように調整することを含む。総ポリフェノール量は、ポリフェノール及び/又はポリフェノール含有原料を添加し、かつ添加量を制御することにより調整することができる。
【0038】
ポリフェノール含有原料とは、少なくとも1種のポリフェノールを含む原料である。ポリフェノール含有原料としては、例えば、コーヒー原料、茶原料、果実原料(果汁や果皮、種子、花等を含むがそれに限らない)、ホップ、麦芽が挙げられる。ポリフェノール含有原料は、好ましくはコーヒー原料である。
【0039】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、原料液にポリフェノール及び/又はポリフェノール含有原料を添加する工程を備えていてよく、好ましくは、原料液にコーヒー原料を添加する工程を備えている。原料液にコーヒー原料を添加する場合、総ポリフェノール量が300ppm以上である発泡性ビールテイスト飲料が得られやすくなると共に、得られる発泡性ビールテイスト飲料に好ましい風味(コーヒーテイスト)を付与することが可能となる。なお、原料液は、発泡性ビールテイスト飲料のもととなる液であり、原料液には、発泡性ビールテイスト飲料の各製造工程で使用又は製造される液が含まれる。
【0040】
ポリフェノール及び/又はポリフェノール含有原料は、総ポリフェノール量が上記範囲となるように添加してよい。例えば、ポリフェノール含有原料は、発泡性ビールテイスト飲料全量を基準として、0.1重量%以上、0.3重量%以上、0.5重量%以上又は0.7重量%以上となるように添加してよく、10.0重量%以下、5.0重量%以下、3.0重量%以下、2.0重量%以下又は1.5重量%以下となるように添加してよい。コーヒー原料の添加量が、発泡性ビールテイスト飲料全量を基準として、上記範囲内であることが好ましい。
【0041】
発泡性ビールテイスト飲料が原料として麦芽を含む場合、ポリフェノール含有原料の添加量は、麦芽100重量部に対して、5重量部以下、又は4重量部以下であってよく、1重量部以上、2重量部以上又は3重量部以上であってよい。コーヒー原料の添加量が、麦芽100重量部に対して、上記範囲内であることが好ましい。
【0042】
一実施形態に係る製造方法は、例えば、仕込工程及び発酵工程を備える。ポリフェノール又はポリフェノール含有原料は、仕込工程で原料に添加してもよく、発酵工程を経て得られた発酵後液に添加してもよい。
【0043】
仕込工程では、原料及び仕込水(仕込工程で使用される水)を用いて、発酵前液を得る。つまり、仕込工程は、発酵に用いられる発酵前液を調製する工程である。仕込工程は、糖含有液を煮沸する煮沸工程、原料液中の固形分を除去する除去工程、原料液を冷却する冷却工程を含んでいてよい。
【0044】
煮沸工程では、糖含有液を煮沸して煮沸後液(煮沸後の糖含有液)を得る。糖含有液とは、酵母によるアルコール発酵が可能な成分を含有するものである。糖含有液としては、例えば、麦汁、シロップが挙げられる。麦汁とは、上述の麦原料の糖化を経て得られる液体であり、未発酵のものである。麦汁は、例えば、上述の麦原料等の原料と水とを混合する工程、原料と水とを含む液を常法により糖化して糖化液を得る工程、及び糖化液をろ過する工程を経て得ることができる。
【0045】
煮沸工程では、原料液にホップを添加してよい。添加するホップとしては、例えば、乾燥ホップ、ホップペレット、ホップエキスを用いることができる。ホップは、ローホップ、ヘキサホップ、テトラホップ、イソ化ホップエキス等のホップ加工品であってもよい。
【0046】
除去工程では、煮沸後液中の固形分を除去して精製液を得る。除去工程は、例えば、煮沸後液に含まれる不溶性の固形分を沈殿させることにより行うことができる。固形分としては、煮沸工程により生じた熱凝固物、煮沸工程でホップを添加した場合には、ホップのかす等が挙げられる。除去工程は、ワールプール中で実施してよい。冷却工程では、酵母による発酵が可能な温度まで精製液を冷却して発酵前液を得る。
【0047】
発酵工程では、発酵前液を酵母により発酵させて発酵後液を得る。発酵工程では、酵母を添加してアルコール発酵が行われる。より具体的には、発酵前液に酵母を接種して発酵させ、酵母により生成するアルコールを含む発酵後液を得る。
【0048】
本実施形態に係る製造方法では、発酵工程後の発酵後工程として、発酵後液をろ過する工程を備えていてもよい。ろ過工程を実施することにより、発酵後液から不溶性の固形分、酵母等を除去することができる。
【0049】
本実施形態に係る製造方法では、他の発酵後工程として、発酵後液(又はろ過工程後の発酵後液)に対して加熱(殺菌)、各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)の添加、アルコールの添加、カーボネーション等を行ってもよい。発酵後工程で添加するアルコールとしては、例えば、スピリッツを用いることができる。
【0050】
発酵ビールテイスト飲料がノンアルコールである場合は、通常のビール等のビールテイスト飲料と同様に発酵を行ってアルコールを生成させた後に、アルコールを除去又は低減させることによって製造してもよく、また、発酵期間を短くしてアルコールの生成を抑えることによって製造してもよい。
【0051】
他の実施形態における製造方法は、例えば、水と、ポリフェノール及び/又はポリフェノール含有原料と、必要に応じて、蒸留アルコール及び各種添加剤(例えば、着色料、酸化防止剤、酸味料、苦味料、香料)と、を原料タンクに配合する配合工程を含む。総ポリフェノール量は、ポリフェノール及び/又はポリフェノール含有原料を添加し、かつ添加量を制御することにより調整することができる。
【0052】
本実施形態に係る製造方法は、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、ろ過工程でろ過したろ過液を殺菌する第一の殺菌工程と、第一の殺菌工程で殺菌した殺菌済みのろ過液をビン、缶、ビン、ペットボトル等の容器に充填する充填工程と、充填工程で容器に充填されたろ過液を容器ごと殺菌する第二の殺菌工程と、を更に含んでいてもよい。
【0053】
配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。また、ろ過工程は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。第一の殺菌工程は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行ってもよく、同様の処理を行うことができるのであれば、これに限定されることなく適用可能である。充填工程は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填してもよい。第二の殺菌工程は、所定の温度及び所定の時間でろ過液を容器ごと加熱することにより行うことができる。第一の殺菌工程及び第二の殺菌工程を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。また、発泡性の飲料とする場合は、例えば、第一の殺菌工程と充填工程の間でカーボネーションを行うとよい。
【0054】
本実施形態に係る発泡性ビールテイスト飲料は、泡持ちに優れるという効果を奏する。したがって、本発明の一実施形態として、総ポリフェノール量が300ppm以上となるように調整することを含む、発泡性ビールテイスト飲料の泡持ちを改善する方法が提供される。
【実施例
【0055】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0056】
〔試験例1〕
(発泡性ビールテイストアルコール飲料の製造)
発泡性ビールテイストアルコール飲料を以下の方法により調製した。発泡性ビールテイストアルコール飲料を調製する過程で、原料液に、カフェインを90%以上除去したコーヒー豆から抽出したカフェインレスコーヒーエキス、コーヒー豆、コーヒーエキス又はカフェインレスコーヒー豆を、発泡性ビールテイストアルコール飲料全量に対して、表1~3に示す含有量となるように添加した。まず、麦芽を含む原料と水とを混合した後、常法により糖化して、糖化液を調製した。糖化液を濾過して得た麦汁(糖含有液)を煮沸釜中で煮沸した(煮沸工程)。煮沸工程の過程で、ホップを添加した。煮沸工程後に、熱麦汁(煮沸後液)をワールプールに移し、熱麦汁中の固形分を沈殿させ、除去した(除去工程)。得られた精製麦汁(精製液)を冷却して冷麦汁(発酵前液)を得た(冷却工程)。冷麦汁にビール酵母を添加して発酵タンク中で発酵させた(発酵工程)。得られた発酵後液をろ過前タンクに貯蔵してからろ過を行い(ろ過工程)、実施例1~11の発泡性ビールテイストアルコール飲料(アルコール度数5v/v%)を得た。各発泡性ビールテイストアルコール飲料において、カフェインを90%以上除去したコーヒー豆から抽出したカフェインレスコーヒーエキスは、煮沸工程、冷却工程、又は発酵工程で添加した。コーヒー豆は、煮沸工程又は冷却工程で添加した。コーヒーエキスは煮沸工程で添加した。カフェインレスコーヒー豆は、煮沸工程、冷却工程、発酵工程又は発酵後工程で添加した。
【0057】
実施例1~11の発泡性ビールテイストアルコール飲料において、ガス圧は2.20~2.38kg/cmの範囲とした。
【0058】
(総ポリフェノール量の測定)
発泡性ビールテイストアルコール飲料の総ポリフェノール量は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.19 総ポリフェノール」に記載の方法によって測定した。
【0059】
(NIBEM値の測定)
発泡性ビールテイストアルコール飲料のNIBEM値は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.29 泡 NIBEM-Tを用いた泡持ち測定」に記載されている方法によって測定した。結果を表1~3に示す。なお、NIBEM値は、20℃における測定開始位置から30mmまでのビール泡表面の崩壊時間(秒)である。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
総ポリフェノール量が300ppm以上である実施例1~11の発泡性ビールテイストアルコール飲料は、泡持ちに優れることが示された。総ポリフェノール量が300ppm以上である発泡性ビールテイストアルコール飲料においては、総ポリフェノール量が増加するにつれて、泡持ちが向上した。
【0064】
〔試験例2〕
(発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料の製造)
発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料を以下の方法により調製した。発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料を調製する過程で、原料液に、コーヒー原料である生コーヒー豆エキスを、発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料全量に対して、表4に示す含有量となるように添加した。炭酸水及び水に、食物繊維、大麦エキス、大豆ペプチドを添加して原料液を調製し、この原料液にコーヒー原料を添加し、さらにビールフレーバー、酸味料及び苦味料を添加して、発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料を調製した。ガス圧は2.3kg/cmとなるように炭酸水の量を調整した。
【0065】
【表4】
【0066】
発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料とした場合であっても、総ポリフェノール量が300ppm以上である実施例12~14の発泡性ノンアルコールビールテイスト飲料は、泡持ちが向上していることが示された(実施例12~14と比較例1との対比)。