(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】電子機器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20230301BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20230301BHJP
H05K 5/00 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
H05K5/06 E
H05K5/02 L
H05K5/00 A
(21)【出願番号】P 2018152316
(22)【出願日】2018-08-13
【審査請求日】2021-03-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 智志
【審査官】赤穂 州一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-356524(JP,A)
【文献】特開2001-277363(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073096(WO,A1)
【文献】特開2010-278056(JP,A)
【文献】特開2013-179364(JP,A)
【文献】特開2007-141959(JP,A)
【文献】特開2008-055981(JP,A)
【文献】特開2010-052701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気部を含む第1底壁部と超音波溶着用の溶着リブが設けられた第1溶着面とを有する第1ケース半体と、前記第1底壁部に対向する第2底壁部と前記溶着リブを介して前記第1溶着面に接合された第2溶着面とを有する第2ケース半体と、を有する合成樹脂製のケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置された電子部品と
を具備し、
前記通気部は、前記第1底壁部を貫通する少なくとも1つの通気孔と、前記第1底壁部の外面に設けられ前記通気孔を囲む第1環状凹部と
、前記第1底壁部の内面に設けられ前記第1環状凹部の中心に位置し前記第1環状凹部の内径よりも小さい外径を有する第2円形凹部と、前記第1底壁部の内面に設けられ前記第1環状凹部の内径よりも大きく前記第1環状凹部の外径よりも小さい外径を有する第3円形凹部と、を有する
電子機器。
【請求項2】
通気部を含む第1底壁部と超音波溶着用の溶着リブが設けられた第1溶着面とを有する第1ケース半体と、前記第1底壁部に対向する第2底壁部と前記溶着リブを介して前記第1溶着面に接合された第2溶着面とを有する第2ケース半体と、を有する合成樹脂製のケーシングと、
前記ケーシングの内部に配置された電子部品と
を具備し、
前記通気部は、前記第1底壁部を貫通する少なくとも1つの通気孔と、前記第1底壁部の外面に設けられ前記通気孔を囲む第1環状凹部と、前記第1底壁部の内面に設けられ前記通気孔を囲む第2環状凹部
とを有し、
前記第2環状凹部は、前記通気孔の開口径よりも大きな内径と、前記第1環状凹部の内径よりも小さい外径とを有する
電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器であって、
前記通気部は、前記第1底壁部の外面に設けられ前記第1環状凹部の中心に位置する第1円形凹部をさらに有し、
前記通気孔は、前記第1円形凹部の中心に設けられ、
前記第1円形凹部は、前記第2環状凹部の内径よりも小さい外径を有する
電子機器。
【請求項4】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記通気孔は、前記第2円形凹部の底部に設けられた複数の孔部を含む
電子機器。
【請求項5】
請求項
1に記載の電子機器であって、
前記通気部は、前記第2円形凹部の周囲に沿って配置される通気孔と、前記通気孔を外部に露出させる切欠き部とをさらに含む
電子機器。
【請求項6】
請求項
1に記載の電子機器であって
、
前記通気部は
、前記第3円形凹部に配置されたフィルタ
材をさらに有する
電子機器。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1つに記載の電子機器であって、
前記第1底壁部は、超音波溶着ホーンと接触することが可能に構成された枠状の接触面をさらに有し、
前記通気部は、前記接触面で囲まれる領域の中心からオフセットした位置に設けられる
電子機器。
【請求項8】
請求項
7に記載の電子機器であって、
前記第2ケース半体は、前記第2溶着面と、前記電子部品の一部が貫通する開口部とを有する周面部をさらに有する
電子機器。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1つに記載の電子機器であって、
前記通気孔の孔径は、1mm未満である
電子機器。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1つに記載の電子機器の製造方法であって、
前記第1ケース半体と前記第2ケース半体との間に前記電子部品を収容し、
前記第1底壁部の外面に超音波溶着ホーンを接触させて、前記第1溶着面を前記第2溶着面に超音波接合する
電子機器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気部を有するケーシングを備えた電子機器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外来固形物に対する保護を有する通気部を有するケーシングを備えた電子機器において、通気部は、ケーシングとは別部材で構成されるのが一般的である。例えば特許文献1には、筐体に設けられた開口部にシールリングを介して嵌合する通気部材を備えた電子機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通気部がケーシングとは別部材で構成される場合、部品点数が増加するため、製造コスト、管理コストの点で問題がある。また、通気部材及びケーシングがそれぞれ相互に適合可能に構成される必要があるため、設計自由度が低下し、通気部の位置、大きさを自由に設計することができないという問題がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、部品点数を削減しつつ、通気部の設計自由度を向上させることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電子機器は、合成樹脂製のケーシングと、電子部品とを具備する。
前記ケーシングは、第1ケース半体と、第2ケース半体とを有する。前記第1ケース半体は、通気部を含む第1底壁部と、超音波溶着用の溶着リブが設けられた第1溶着面とを有する。前記第2ケース半体は、前記第1底壁部に対向する第2底壁部と、前記溶着リブを介して前記第1溶着面に接合された第2溶着面とを有する。
前記電子部品は、前記ケーシングの内部に配置される。
前記通気部は、前記第1底壁部を貫通する少なくとも1つの通気孔と、前記第1底壁部の外面に設けられ前記通気孔を囲む第1環状凹部と、前記第1底壁部の内面に設けられ前記第1環状凹部の中心に位置し前記第1環状凹部の内径よりも小さい外径を有する第2円形凹部と、前記第1底壁部の内面に設けられ前記第1環状凹部の内径よりも大きく前記第1環状凹部の外径よりも小さい外径を有する第3円形凹部と、を有する。
【0007】
上記電子機器において、通気部は、第1底壁部に一体的に形成されるため、部品を追加することなく、通気部の位置、大きさを任意に設定することができる。さらに、第1溶着面と第2溶着面との接合に超音波溶着接合法を用いた場合でも、通気部の第1環状凹部によって通気孔に伝播する振動を減衰し、これにより超音波振動から通気部の破損を回避することができる。また、第2円形凹部は、第1底壁部の内面を伝って通気孔に向かって伝播する超音波振動を減衰させる機能を有する。
【0008】
前記通気部は、前記第1底壁部の内面に設けられ前記通気孔を囲む第2環状凹部をさらに有してもよい。この場合、前記第2環状凹部は、前記通気孔の開口径よりも大きな内径と、前記第1環状凹部の内径よりも小さい外径とを有する。
【0009】
前記通気部は、前記第1底壁部の外面に設けられ前記第1環状凹部の中心に位置する第1円形凹部をさらに有してもよい。この場合、前記通気孔は、前記第1円形凹部の中心に設けられ、前記第1円形凹部は、前記第2環状凹部の内径よりも小さい外径を有する。
【0011】
前記通気孔は、前記第2円形凹部の底部に設けられた複数の孔部を含んでもよい。
【0012】
前記通気部は、前記第2円形凹部の周囲に沿って配置される通気孔と、前記通気孔を外部に露出させる切欠き部とをさらに含んでもよい。
【0013】
前記通気部は、前記第3円形凹部に配置されたフィルタ材をさらに有してもよい。
【0014】
前記第1底壁部は、超音波溶着ホーンと接触することが可能に構成された枠状の接触面をさらに有してもよい。この場合、前記通気部は、前記接触面で囲まれる領域の中心からオフセットした位置に設けられる。
【0015】
前記第2ケース半体は、前記第2溶着面と、前記電子部品の一部が貫通する開口部とを有する周面部をさらに有してもよい。
【0016】
前記通気孔の孔径は、典型的には、1mm未満である。
【0017】
本発明の一形態に係る電子機器の製造方法は、前記第1ケース半体と前記第2ケース半体との間に前記電子部品を収容し、
前記第1底壁部の外面に超音波溶着ホーンを接触させて、前記第1溶着面を前記第2溶着面に超音波接合する。
【発明の効果】
【0018】
以上述べたように、本発明によれば、部品点数を削減しつつ、通気部の設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態における電子機器の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図3】上記電子機器における第1ケース半体の内側から見た通気部の平面図である。
【
図6】上記電子機器におけるケーシングの溶着工程を説明する模式図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る電子機器における通気部の構成図であり、(A)は第1ケース半体の内側から見た通気部の平面図、(B)は、その反対側の底面図、(C)は、(A)におけるB-B線拡大断面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る電子機器における通気部の構成図であり、(A)は第1ケース半体の内側から見た通気部の平面図、(B)は、その反対側の底面図、(C)は、(A)におけるB-B線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態における電子機器100の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図においてX軸、Y軸及びZ軸は相互に直交する3軸方向を示しており、X軸は前後方向(縦方向)、Y軸は左右方向(横方向)、Z軸は上下方向(厚み又は高さ方向)にそれぞれ相当する。以下の説明ではX軸の矢印方向を前方(その反対を後方)ともいい、Z軸の矢印方向を上方(その反対側を下方)ともいう。
【0022】
本実施形態の電子機器100は、ケーシング1と、ケーシング1に収容された電子部品3とを備える。
【0023】
[ケーシング]
ケーシング1は、X軸方向に長手の概略直方体形状に形成され、電子部品3を収容することが可能な内部空間Sを有する。ケーシング1は、第1ケース半体10と、第2ケース半体20とを有し、これらを超音波溶着法により接合することで構成される。
【0024】
第1ケース半体10及び第2ケース半体20はいずれも合成樹脂材料の射出成形体で構成される。合成樹脂材料の種類は特に限定されず、超音波溶着が可能な適宜の材料で構成され、本実施形態ではPBT(ポリブチレンテレフタレート)が用いられる。合成樹脂材料にはガラスファイバ等の補強繊維が含有されていてもよく、その含有量は、例えば30wt%程度である。
【0025】
第1ケース半体10は、第1底壁部11と、後壁部12と、一対の第1側壁部13とを有する。後壁部12及び一対の側壁部13は、第1ケース半体10の周面部を構成する。
【0026】
第1底壁部11は、XY平面に平行な平板状に形成され、ケーシング1の底壁を構成する。後壁部12は、第1底壁部11に立設されたYZ平面に平行な平板形状を有し、ケーシング1の後壁を構成する。一対の第1側壁部13は、第1底壁部11に立設されたXZ平面に平行な平板形状を有し、ケーシング1の側壁の一部を構成する。第1側壁部13は、後壁部12に向かってZ軸方向に沿った高さが連続的に増加する形状を有し、典型的には、Y軸方向から見たときの形状が直角三角形状となるように形成される。後壁部12及び一対の第1側壁部13各々の内面には、複数の補強用リブ19が設けられている。補強用リブ19の数や位置は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0027】
第2ケース半体20は、第2底壁部21と、前壁部22と、一対の第2側壁部23とを有する。前壁部22及び一対の第2側壁部23は、第2ケース半体20の周面部を構成する。
【0028】
第2底壁部21は、第1底壁部11とZ軸方向に対向し、ケーシング1の上壁を構成する。前壁部22は、第2底壁部21に立設されたXY平面に平行な平板形状を有し、後壁部12とX軸方向に対向するケーシング1の前壁を構成する。前壁部22の略中央部には、電子部品3のコネクタ32(外部接続部)が貫通する開口部27が設けられている。
【0029】
一対の第2側壁部23は、第2底壁部21に立設されたXZ平面に平行な平板形状を有し、ケーシング1の側壁の一部を構成する。一対の第2側壁部23は、前壁部22に向かってZ軸方向に沿った高さが連続的に増加する形状を有し、典型的には、Y軸方向から見たときの形状が直角三角形状となるように形成される。前壁部22及び一対の第2側壁部23各々の内面には、複数の補強用リブ29が設けられている。補強用リブ29の数や位置は特に限定されず、任意に設定可能である。
【0030】
本実施形態において第2底壁部21は、前方側と後方側とで高さが異なるXY平面に平行な2つの平面部が段部を介してX軸方向に連接された段付き形状を有する。第2底壁部21の形状はこれに限られず、第1底壁部11と同様な平板状に形成されてもよいし、ドーム状、錐体状、あるいは、より複雑な三次元形状に形成されてもよい。
【0031】
なお、第1底壁部11は、第2底壁部21よりも大きな全長を有する長方形状に形成される。第1底壁部21の四隅あるいは隅部の近傍には、当該電子機器100を図示しない被取付対象物に固定するためのボルトあるいはネジが挿通される複数の取り付け孔17(
図2参照)が設けられている。さらに、第1底壁部11には、内部空間Sを外気と連通させる通気部400が設けられている。通気部400の詳細については後述する。
【0032】
第1ケース半体10は、枠状の第1溶着面14をさらに有する。第1溶着面14は、第1底壁部11と後壁部12と一対の第1側壁部13とにわたって設けられる。より具体的に、第1溶着面14は、後壁部12の上方側端部と、一対の第1側壁部13の上方側端部と、一対の第1側壁部13の前方側端部の間に位置する第1底壁部11の内面とにわたって連続するように矩形環状に形成される。
【0033】
第1底壁部11に設けられる第1溶着面14の一部は、一対の第1側壁部13の前方側端部を連絡するように第1底壁部11の内面に形成されたY軸方向に平行な直線的な突条部15の上面に設けられる。突条部15は、ケーシング1の前壁部の一部を構成するように有意の高さで形成されてもよい。
【0034】
そして、第1溶着面14は、第1底壁部11に対して傾斜する平面で構成される。より具体的に、第1溶着面14は、ケーシング1の両側壁部を後方側から前方側に向かって下り傾斜となる対角線又はこれに近似する直線に沿って形成された枠状の傾斜面を構成する。この傾斜面は、典型的には、XY平面に平行な平面がY軸まわりに所定角度傾斜した平面である。
【0035】
同様に、第2ケース本体20は、枠状の第2溶着面24をさらに有する。第2溶着面24は、第2底壁部21と前壁部22と一対の第2側壁部23とにわたって設けられる。より具体的に、第2溶着面24は、前壁部22の下方側端部と、一対の第2側壁部23の下方側端部と、一対の第2側壁部23の後方側端部の間に位置する第2底壁部21の内面とにわたって連続するように矩形環状に形成される。
【0036】
第2底壁部21に設けられる第2溶着面24の一部は、一対の第2側壁部23の後方側端部を連絡するように第2底壁部21の内面に形成されたY軸方向に平行な直線的な突条部25(あるいは後面側壁部)の下面に設けられる。突条部25は、ケーシング1の後壁部の一部を構成するように有意の高さで形成されてもよい。
【0037】
第2溶着面24は、第1溶着面14と実質的に平行な平面かつ同一の形状及び大きさで形成される。第2溶着面14は、第1溶着面14に設けられた溶着リブ16を介して第1溶着面14に接合される。
【0038】
[電子部品]
電子部品3は、
図1に示すように、第1ケース半体10と第2ケース半体20との間に配置された部品本体31と、第2ケース半体20の前壁部22を貫通する外部接続部としてのコネクタ32とを有する。
【0039】
部品本体31は、回路基板33と、回路基板33の両面を被覆するシールドケース34との結合体で構成され、ケーシング1の内部空間Sに収容される。回路基板33には、ICチップその他の複数の電子部品が搭載されており、各種装置の制御回路を構成する。シールドケース34は、回路基板33を電磁ノイズから保護するためのものであるが、電子部品3の種類や仕様によっては省略されてもよい。
【0040】
図2は電子機器100の側面図である。ケーシング1の内部空間S(
図1参照)は、電子部品3の部品本体31を収容できる大きさに形成される。第2ケース半体20の全長は、電子部品3の全長よりも短く形成されており、電子部品3のコネクタ32は、第2ケース半体20の前壁部22を貫通して外部へ突出する。
【0041】
コネクタ32は、内部に複数の接続ピンを有し、典型的には、防水仕様のコネクタ部品で構成される。コネクタ32は、第2ケース半体20の前壁部22(開口部27)を貫通し、ケーシング1の外側に突出する突出部を構成する。コネクタ32は、支持体35を介して回路基板33の前方側端部に機械的、電気的に接続される。突出部は、コネクタ32等の外部接続端子に限られず、ヒューズや調整ネジ、スイッチ、ボリューム調整具などであってもよい。
【0042】
支持体35は、第2ケース半体20の前壁部22の内面に密着するシールリング36を有し、開口部27からケーシング1の内部空間Sへの塵埃や液滴の侵入を防止する。支持体35は、図示せずとも、前壁部22に対してネジ等の複数の締結具を用いて固定される。
【0043】
電子部品3は、特に限定されず、例えば、各種駆動装置を制御するコントロール制御ユニット(ECU)、あるいは、建設機械の稼働率を検出するための通信端末を構成する。コネクタ32は、インターフェースコネクタである。電子部品3は、コネクタ32以外にも、他の外部接続端子が設けられてもよい。他の外部接続端子も同様に、前壁部22を介してケーシング1から外部へ突出するように回路基板33に設けられる。他の接続端子としては、例えば、GPSやCellularなどのアンテナ部であってもよい。
【0044】
[通気部]
続いて、通気部400の詳細について説明する。
図3は第1ケース半体10の内側から見た通気部400の平面図、
図4は、その反対側の底面図、
図5は、
図3におけるA-A線拡大断面図である。
【0045】
通気部400は、第1ケース半体10の第1底壁部11に一体的に形成され、典型的には、射出成型法により第1底壁部11と一体成形される。本実施形態において通気部400は、単一の通気孔40を有する。この通気孔40の孔径d0は、特に限定されないが、防塵スペックIP4(φ1.0mmの外来物侵入不可)を満たすように1.0mm以下であることが好ましい。
【0046】
通気部400は、外側環状凹部41(第1環状凹部)を有する。外側環状凹部41は、通気孔40を囲むように第1底壁部11の外面11bに設けられた円環状の凹部である。外側環状凹部41は、超音波溶着時において第1底壁部11の外面11bを伝って通気孔40へ向かう振動を抑制する機能を有する。外側環状凹部41は、第1底壁部11の厚みt0より小さい深さt1で通気孔40と同心的に形成される。深さt1の大きさは特に限定されず、通気部400の強度を確保しつつ、所望とする超音波振動の減衰機能が得られる適宜の厚みに設定される。
【0047】
通気部400は、内側環状凹部42(第2環状凹部)と、外側円形凹部43(第1円形凹部)と、フィルタ載置部44(第3円形凹部)とをさらに有する。
【0048】
内側環状凹部42は、通気孔40を囲むように第1底壁部11の内面11aに設けられた円環状の凹部である。内側環状凹部42は、超音波溶着時において第1底壁部11の内面11aを伝って通気孔40へ向かう振動を抑制する機能を有する。内側環状凹部42は、通気孔40と同心的に形成され、通気孔40の開口径d0よりも大きな内径d3と、外側環状凹部41の内径d1よりも小さい外径d4とを有する。内側環状凹部42の深さt2は特に限定されず、本実施形態では、外側環状凹部41の深さt1と同一である。内側環状凹部42は、フィルタ載置部44の底部に形成される。内径d3、外径d4及び深さt2の大きさは特に限定されず、通気部400の強度を確保しつつ、所望とする超音波振動の減衰機能が得られる適宜の厚みに設定される。
【0049】
外側円形凹部43は、第1底壁部11の外面11bに設けられ、外側環状凹部41の中心に位置する。通気孔40は、外側円形凹部43の中心に設けられる。外側円形凹部43は、外側環状凹部41から通気孔40に向かって伝播する超音波振動を追加的に減衰させる機能を有する。外側円形凹部43は、内側環状凹部42の内径d3よりも小さい外径d5を有する。外側円形凹部43の深さは特に限定されず、本実施形態では、外側環状凹部41の深さt1と同一である。
【0050】
フィルタ載置部44は、第1底壁部11の内面11aに設けられ、外側環状凹部41の内径d1よりも大きく外側環状凹部の外径d2よりも小さい外径d6を有する円形の凹部である。フィルタ載置部44の深さは特に限定されず、本実施形態においてフィルタ載置部44は、内側環状凹部42の深さt2よりも小さい深さt3で形成される。
【0051】
フィルタ載置部44には、通気孔40を介してケーシング1の外部から内部空間Sへの塵埃や水分の侵入を防止するためのフィルタ材Fが配置される。フィルタ材Fは、通気部400の一部を構成し、フィルタ載置部44に接着あるいは溶着により接合される。フィルタ材Fの材料や形態は特に限定されず、典型的には、通気性、吸水性を有する繊維、織布、不織布などで構成されたシート材が用いられる。なお、フィルタ材Fは、必要に応じて省略されてもよい。
【0052】
通気部400の各部の寸法は特に限定されず、一例を挙げると以下のとおりである。d0=0.8mm、d1=12.3mm、d2=20.4mm、d3=6.3mm、d4=9.3mm、d5=3.3mm、d6=16.4mm、t0=3mm、t1=t2=1mm、t3=0.5mm。
【0053】
[電子機器の製造方法]
続いて、以上のように構成される本実施形態の電子機器100の製造方法について説明する。
【0054】
電子機器100の製造方法は、第1ケース半体10と第2ケース半体20との間に電子部品3を収容する工程と、第1底壁部11に超音波溶着ホーンを接触させて、第1溶着面14を第2溶着面24に超音波接合する工程とを有する。
【0055】
本実施形態においてケーシング1は、第1ケース半体10及び第2ケース半体20によって、その両側壁部が対角線又はこれに近似する直線で2つに分割されている(
図2参照)。したがって、第1ケース半体10と第2ケース半体20との間に電子部品3を収容する工程においては、第2ケース半体20の前壁部22に電子部品3のコネクタ32を貫通させながら、部品本体31が第2ケース半体20の内部に収容される。これにより、第2ケース半体20の内部空間は、電子部品3の部品本体31を収容できる程度の最小限の容積に抑えることができるため、第2ケース半体20の小型化を図ることができる。つまり、第2ケース半体20は、開口部27から突出する電子部品3のコネクタ32の長さL
0(
図2参照)に相当するスペースを設ける必要がなくなるため、第2ケース半体20の全長を電子部品3の全長よりも短くすることができる。
【0056】
第2ケース半体20に収容された電子部品3は、部品本体31の周囲の適宜の位置に形成された図示しない複数の取付ブラケットに挿通される複数のネジを介して第2ケース半体20の第2底壁部21の内面側に固定される。
【0057】
電子部品3が取り付けられた第2ケース半体20は、第1ケース半体10と超音波溶着される。
図6は溶着工程を説明する模式図である。
【0058】
第2ケース半体20は、第2溶着面24を上方に向けて溶着用治具81に設置される。溶着用治具81は、第2ケース半体20の第2底壁部21を水平に支持することが可能に構成される。この状態で第1ケース半体10が第1溶着面14を下向きにして、第2溶着面24に対向させる。
【0059】
続いて
図6に示すように、超音波溶着ホーン82を第1ケース半体10の第1底壁部11に接触させ、所定周波数の超音波を第1ケース半体10に印加する。これにより、第1溶着面14上の溶着リブ16が第2溶着面24との振動摩擦により溶融し、溶着リブ16と第2溶着面24とが相互に溶着される。第1ケース半体10及び第2ケース半体20各々の周面部内面には補強用リブ19,29が設けられているため、溶着中において第1溶着面14と第2溶着面24との対向関係を安定に維持することができる。これにより、各ケース半体10,20の周面部の板厚が比較的小さい場合においても第1ケース半体10を第2ケース半体20へ適切に接合することができる。
【0060】
超音波溶着ホーン82は、第1底壁部11の外面に設けられた枠状の接触面11tに当接する。接触面11tは、
図4に示すように、XY平面に平行な平面で形成され、第1溶着面14をZ軸方向に第1底壁部11へ投影した位置(つまり、第1溶着面14の直下)に設けられる。これにより、超音波溶着ホーン82から接触面11tへZ軸方向に印加された押圧力を、第1溶着面14上の溶着リブ16へ適切に伝達することができる。
【0061】
本実施形態によれば、通気部400が第1ケース半体10の第1底壁部11に一体成形されているため、通気部形成用の別途の部材(外来物ガードなど)を必要とすることなく、通気部400の小型化を図ることができる。これにより、部品点数や製造工数の削減を図ることができる。また、通気部400を第1底壁部11の任意の位置、大きさで形成することができるため、通気部400の設計自由度を向上させることができる。
【0062】
また、通気部400が外側環状凹部41を有しているため、接触面11tから第1底壁部11の外面を伝って通気孔40へ向かう超音波振動を当該外側環状凹部41において減衰させることができる。同様に、内側環状凹部42により、接触面11tから第1底壁部11の内面を伝って通気孔40へ向かう超音波振動を当該内側環状凹部42において減衰させることができる。さらに、外側円形凹部43によって、外側環状凹部41から通気孔40に向かって伝播する超音波振動を追加的に減衰させることができる。これにより、溶着時の超音波エネルギーで通気孔40が破損したり、通気孔を起点として底壁部11に亀裂が生じたりすることを回避することができる。さらに、外側環状凹部41は、第1底壁部11を垂直に設置した場合に水が流れる経路となるため、通気孔40から内部に水が浸入しにくくなる。
【0063】
通気部400は、第1底壁部11の任意の位置に形成することができる。本実施形態において通気部400は、接触面11tで囲まれる領域中心11c(
図4参照)からオフセットした位置(中心11cから第1底壁部の長手方向に任意の距離だけシフトした位置)に設けられる。接触面11に印加される超音波エネルギーによって第1底壁部11の領域中心11cは最大振幅点として振動する傾向がある。通気部400を中心11cからオフセットした位置に配置することで、溶着時における通気部400の変形量を効果的に低減することができる。
【0064】
さらに本実施形態によれば、溶着工程において、電子部品3を収容する第2ケース半体20を溶着用治具81に設置し、第1ケース半体10に超音波溶着ホーン82を接触させるようにしているため、電子部品3への超音波振動エネルギーの伝播を抑制して、振動振幅による電子部品3の破損を防止することができる。
【0065】
<第2の実施形態>
図7(A)~(C)は、本発明の第2の実施形態に係る電子機器における通気部500の構成図であり、(A)は第1ケース半体10の内側から見た通気部500の平面図、(B)は、その反対側の底面図、(C)は、(A)におけるB-B線拡大断面図である。以下、第1実施形態と異なる構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0066】
本実施形態において通気部500は、複数の通気孔40と、外側環状凹部41と、フィルタ載置部44と、内側円形凹部45(第2の円形凹部)とを有する。図中、フィルタ材F(
図5参照)の図示は省略している。
【0067】
内側円形凹部45は、第1底壁部11の内面11aに設けられ、外側環状凹部41の中心に位置する。内側円形凹部45は、第1底壁部11の内面11aを伝って通気孔40に向かって伝播する超音波振動を減衰させる機能を有する。内側円形凹部45は、外側環状凹部41の内径d1よりも小さい外径d7を有する。内側円形凹部45の深さt4は特に限定されず、本実施形態では、外側環状凹部41の深さt1と同一である。
【0068】
複数の通気孔40は、内側円形凹部45の底部に設けられ、それぞれ同一の開口径d0を有する。本実施形態において複数の通気孔40は、内側円形凹部45の中心とその周囲の3箇所に等角度間隔で設けられた計4つの通気孔40で構成される。周囲に位置する3つの通気孔40は、一辺の長さがp1の正三角形を形成する。通気孔40の数や形成位置はこれに限定されず、内側円形凹部45の適宜の位置に設けられてもよい。
【0069】
通気部500の各部の寸法は特に限定されず、一例を挙げると以下のとおりである。d0=0.8mm、d1=12.3mm、d2=20.4mm、d6=16.4mm、d7=9.3mm、t0=3mm、t1=t4=1mm、t3=0.5mm、p1=4.0mm。
【0070】
以上のように構成される本実施形態の通気部500においても、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態によれば、複数の通気孔40を有するため、通気性を高めることができる。これにより、温度変化の著しい例えば車載用途向けの電子機器に好適に用いることができる。
【0071】
<第3の実施形態>
図8(A)~(C)は、本発明の第3の実施形態に係る電子機器における通気部600の構成図であり、(A)は第1ケース半体10の内側から見た通気部600の平面図、(B)は、その反対側の底面図、(C)は、(A)におけるB-B線拡大断面図である。以下、第1実施形態と異なる構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0072】
本実施形態において通気部600は、複数の通気孔40と、外側環状凹部41と、フィルタ載置部44と、内側円形凹部46(第2の円形凹部)とを有する。図中、フィルタ材F(
図5参照)の図示は省略している。
【0073】
内側円形凹部46は、第1底壁部11の内面11aに設けられ、外側環状凹部41の中心に位置する。内側円形凹部45は、外側環状凹部41の内径d1よりも小さい外径d7を有する。内側円形凹部46の深さt4は特に限定されず、本実施形態では、外側環状凹部41の深さt1よりも大きく設定される。
【0074】
複数の通気孔40は、内側円形凹部46の底部に設けられる。本実施形態において複数の通気孔40は、内側円形凹部46の中心とその周囲に距離p2だけ隔てた4か所に等角度間隔で設けられた計5つの通気孔40で構成される。各通気孔40の開口径は特に限定されず、本実施形態では、周囲に位置する4つの通気孔40の開口径d8は、中央に位置する通気孔40の開口径d0よりも小さく設定されている。通気孔40の数や形成位置はこれに限定されず、内側円形凹部45の適宜の位置に設けられてもよい。
【0075】
本実施形態において、外側環状凹部41の内周部には、上記複数の通気孔40のうち内側円形凹部の周囲に沿って配置される4つの通気孔40を第1底壁部11の外面11bに露出させるための複数の切欠き部47が設けられている。
【0076】
通気部600の各部の寸法は特に限定されず、一例を挙げると以下のとおりである。d0=0.8mm、d1=11.2mm、d2=20.4mm、d6=16.4mm、d7=9.3mm、d8=0.7mm、t0=3mm、t1=1mm、t4=1.5mm、t3=0.5mm、p2=3.4mm。
【0077】
以上のように構成される本実施形態の通気部600においても、上述の第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。本実施形態によれば、複数の通気孔40を有するため、通気性を高めることができる。これにより、温度変化の著しい例えば車載用途向けの電子機器に好適に用いることができる。また本実施形態によれば、内側円形凹部46の周囲に設けられた複数の通気孔40が切欠き部47を介して開放されているため、内部に留まる塵埃を排出することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0079】
例えば以上の実施形態では、通気部400,500,600が第1ケース半体10の第1底壁部11に設けられたが、これに限られず、第2ケース半体20の第2底壁部21に設けられてもよい。
【0080】
また以上の実施形態では、電子部品3のコネクタ32は、第2ケース半体20の前壁部22を貫通するように構成されたが、これに限られず、第1ケース半体10の後壁部12を貫通するように構成されてもよい。
【0081】
さらに以上の実施形態では、第1ケース半体10及び第2ケース半体20によってケーシング1がその両側壁部の対角線又はこれに近似する直線に沿って分割される例について説明したが、これに限られず、第1底壁部11に平行な平面で分割されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…ケーシング
3…電子部品
10…第1ケース半体
11…第1底壁部
14…第1溶着面
16…溶着リブ
20…第2ケース半体
21…第2底壁部
22…前面部
24…第2溶着面
32…コネクタ
40…通気孔
41…外側環状凹部(第1環状凹部)
42…内側環状凹部(第2環状凹部)
43…外側円形凹部(第1円形凹部)
44…フィルタ載置部(第3円形凹部)
45,46…内側円形凹部(第2円形凹部)
82…超音波溶着ホーン
100…電子機器
400,500,600…通気部
F…フィルタ材