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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】着色組成物、および、カラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/20 20060101AFI20230301BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20230301BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
C09B67/20 G
C09B67/20 L
G03F7/004 505
G03F7/004 504
G02B5/20 101
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018200894
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2020066687
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】清水 達彦
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特許第6316531(JP,B2)
【文献】特開平06-049390(JP,A)
【文献】特開2016-191010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/20
G03F 7/004
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材、分散剤、バインダー樹脂および分散媒体を含有する着色組成物であって、
前記着色材が、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含有し、
前記分散剤が、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、一般式(3)で表される構造単位および一般式(4)で表される構造単位を有するBブロックとを有し、
前記(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位の含有率が、前記Aブロック100質量%中において、80質量%以上であり、
前記(メタ)アクリルモノマーが、鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、多環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレート、酸性基を有する(メタ)アクリレート、および、(メタ)アクリル酸よりなる群から選択される少なくとも1種であるブロック共重合体を含有することを特徴とする着色組成物。
【化1】
[式(3)において、R31およびR32は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R31およびR32が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R33は水素原子またはメチル基を表す。X31はアミド基、エステル基、または、単結合を表す。Y31は2価の炭化水素基を表す。]
【化2】
[式(4)において、R41は水素原子またはヒドロキシ基を有する芳香族基を表す。R42は水素原子またはメチル基を表す。]
【請求項2】
前記Aブロックが、一般式(2)で表される構造単位を有する請求項1に記載の着色組成物。
【化3】
[式(2)において、n1は1~10の整数を表す。R21は水素原子またはメチル基を表す。R22は炭素数が1~10のアルキレン基を表す。R23は炭素数が1~10のアルキレン基を表す。]
【請求項3】
前記ブロック共重合体のアミン価が、10mgKOH/g~200mgKOH/gである請求項1または2に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記Bブロックが、前記一般式(3)で表わされる構造単位を10質量%~99質量%含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記Bブロックが、前記一般式(4)で表わされる構造単位を1質量%~30質量%含有する請求項1~4のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体の前記Aブロックと前記Bブロックとの質量比(Aブロックの質量Bブロックの質量)が、50/50~95/5である請求項1~5のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項7】
前記ブロック共重合体の分子量分布(PDI)が、2.5以下である請求項1~6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
前記ブロック共重合体が、リビングラジカル重合により重合されたものである請求項1~7のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項9】
前記一般式(2)で表される構造単位の含有率が、Aブロック100質量%中において10質量%~95質量%である請求項2に記載の着色組成物。
【請求項10】
カラーフィルタ用である請求項1~9のいずれか一項に記載の着色組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の着色組成物を用いて形成された着色層を備えることを特徴とするカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料および分散剤としてのブロック共重合体を含有する着色組成物、および、カラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレー等に用いられるカラーフィルタの製造において、基材への着色材の付与方法としては、染色法、印刷法、インクジェット法、電着法、顔料分散法等が知られている。これらの中でも、分光特性、耐久性、パターン形状および精度の観点から、顔料分散法が主流となっている。この顔料分散法においては、顔料、分散剤、分散媒体(溶媒)、バインダー樹脂等を混合した着色組成物からなる塗布膜を基板上に形成し、所望のパターン形状のフォトマスクを介して放射線を照射して硬化し、アルカリ現像、ポストベークが行われる。
【0003】
カラーフィルタに対しては、高透過率および高コントラストを得るために、高度に微粒子された顔料を分散することが求められている。このような分散剤として特許文献1および特許文献2には、アミン価が80mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であり、かつアミノ基を有さないAブロックと、側鎖にアミノ基を有するBブロックからなるブロック共重合体が記載されている(特許文献1(段落0023-0039)参照)、特許文献2(段落0046-0067)参照)。
【0004】
また、カラーフィルタの良好な色再現性および高コントラストを得るために着色組成物中の顔料の高濃度化が検討されている。顔料を高濃度化する場合、相対的に分散剤の割合が減少するため、分散剤には高い分散性が求められる(例えば、特許文献3(段落0004)参照)。
【0005】
さらに、アルカリ現像では、アルカリ可溶性を有するバインダー樹脂が大きな役割を果している。しかし、顔料を高濃度化した着色組成物の場合には、現像成分であるバインダー樹脂の割合が減少し、アルカリ現像性が低下する。そのため、本来、バインダー樹脂に求められてきたアルカリ現像性が、分散剤にも求められる。ここで、特許文献1および特許文献2に記載された分散剤ではアルカリ現像性が十分でないことから、アルカリ現像性が優れている分散剤として特許文献4には、側鎖にポリラクトン鎖を有するAブロックと、側鎖に3級アミノ基を有するBブロックとからなる、A-Bブロック共重合体を分散剤として用いることが提案されている(特許文献4(段落0023~0045)参照)。
【0006】
また、特に緑色画素の高輝度化に関して、例えば特許文献5および特許文献6に記載のような、特定の色相を有する新しいポリハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料が提案されている。これにより、従来のポリハロゲン化銅フタロシアニン顔料に対する高輝度化が実現された(特許文献5(段落0142-0147)、特許文献6(段落0144-0149)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-25813号公報
【文献】特開2017-182092号公報
【文献】特開2009-265515号公報
【文献】特開2013-119568号公報
【文献】特開2004-70342号公報
【文献】特開2004-70343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、技術革新が加速され、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料含有着色組成物においては、塗布後のアルカリ現像性だけでなく、着色層を備えた部材の高温加工後においても着色層の輝度が優れていることが求められている。しかし、従来の分散剤では、高温加工後の塗布膜の輝度が十分ではなかった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、着色材としてポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含有する着色組成物であって、高温に曝された場合でも輝度の低下を抑制できる着色層を形成できる着色組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することができた本発明の着色組成物は、着色材、分散剤、バインダー樹脂および分散媒体を含有し、前記着色材がポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含有し、前記分散剤が(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、一般式(3)で表される構造単位および一般式(4)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有することを特徴とする。
【0011】
【化1】
[式(3)において、R31およびR32は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R31およびR32が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R33は水素原子またはメチル基を表す。X31はアミド基、エステル基、または、単結合を表す。Y31は2価の炭化水素基を表す。]
【0012】
【化2】
[式(4)において、R41は水素原子またはヒドロキシ基を有する芳香族基を表す。R42は水素原子またはメチル基を表す。]
【0013】
本発明の着色組成物は、着色材としてポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含有し、分散剤として特定の構造単位を有するブロック共重合体を含有する。このような特定の構造単位(式(3)で表される構造単位および式(4)で表される構造単位)を有するブロック共重合体を分散剤として用いることにより、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含有する着色層が高温に曝された場合でも、輝度の低下を抑制できる。
【0014】
本発明には、前記着色組成物を用いて形成された着色層を備えるカラーフィルタも含まれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の着色組成物を用いれば、高温に曝された場合でも輝度の低下を抑制できる着色層を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は単なる例示である。以下の実施形態に何ら限定されない。
【0017】
<着色組成物>
本発明の着色組成物は、着色材、分散剤、バインダー樹脂および分散媒体を含有する。
【0018】
(1.着色材)
前記着色材は、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料を含有する。前記ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料とは、金属フタロシアニンをハロゲン化した顔料であり、例えば、ポリクロロ銅フタロシアニン、ポリブロモ銅フタロシアニン、ポリブロモクロロ銅フタロシアニン、ポリクロロ亜鉛フタロシアニン、ポリブロモ亜鉛フタロシアニン、ポリブロモクロロ亜鉛フタロシアニン等が挙げられる。前記ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリハロゲン化金属フタロシアニンは、分子中の塩素原子及び/又は臭素原子の数が増すと、色相が青色から緑色となる。緑色の着色組成物を得るためには、ポリハロゲン化金属フタロシアニンとしては、分子中に塩素原子及び/又は臭素原子を合計8個以上有するものを使用することが好ましい。
【0020】
具体的には、ポリハロゲン化金属フタロシアニンとしては、一般式(1)で示される顔料を使用することができる。
【0021】
【化3】
[式(1)中、Mは銅または亜鉛であり、X1~X16は、いずれも独立して塩素原子、臭素原子または水素原子である。ただし、X1~X16において塩素原子と臭素原子の合計は8~15であり、残りは水素原子である。]
【0022】
ポリハロゲン化金属フタロシアニンとしては、より黄味で明度の高い緑色を得るうえで、ポリハロゲン化金属フタロシアニン分子(構造)1個あたり4個のベンゼン環に、合計8~15個の塩素原子および/または臭素原子が結合し、前記ベンゼン環の残りの位置に水素原子が結合した構造を有するものを使用することが好ましく、前記4個のベンゼン環に塩素原子および/または臭素原子が合計9~15個が結合し、前記ベンゼン環の残りの位置に水素原子が結合した構造を有するものを使用することがより好ましく、前記4個のベンゼン環に13~15個の臭素原子が結合し、前記ベンゼン環の残りの位置に水素原子が結合した構造であることが特に好ましい。
【0023】
本発明においては、上記一般式(1)を満たすポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料であれば特に限定なく使用することができ、また上記一般式(1)を満たす複数の顔料を混合して使用してもよい。
【0024】
具体的には、C.I.Pigment Green 7(一般式(1)中のMが銅であり、X1~X16が塩素原子または水素原子である化合物);C.I.Pigment Green 36(一般式(1)中のMが銅であり、X1~X16が塩素原子、臭素原子または水素原子である化合物);C.I.Pigment Green 58(一般式(1)中のMが亜鉛であり、X1~X16が塩素原子、臭素原子または水素原子である化合物);C.I.Pigment Green 59(一般式(1)中のMが亜鉛であり、X1~X16が塩素原子、臭素原子または水素原子である化合物)等が挙げられ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0025】
前記着色材の個数平均粒子径は、その用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定はない。前記着色組成物は、高透明性および高コントラスト性の観点から、個数平均粒子径が10nm~150nmの着色材を含有することが好ましい。
【0026】
前記着色材は、本発明の好ましい物性を損なわない範囲であれば、色相の調整等のためにポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料以外の顔料または染料と組み合わせて用いることもできる。
【0027】
その他の顔料としては、有機顔料および無機顔料のいずれでもよいが、有機化合物を主成分とする有機顔料が特に好ましい。顔料としては、例えば、赤色顔料、黄色顔料、橙色顔料、青色顔料、緑色顔料、紫色顔料等の各色の顔料が挙げられる。顔料の構造は、モノアゾ系顔料、ジアゾ系顔料、縮合ジアゾ系顔料等のアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、キナクリドン系顔料、インディゴ系顔料、チオインディゴ系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料等の多環系顔料等が挙げられる。着色組成物に含まれる顔料は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0028】
顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、122、123、146、149、168、177、178、179、187、200、202、208、210、215、224、254、255、264等の赤色顔料;C.I.Pigment Yellow 1、3、5、6、14、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、93、97、98、104、108、110、138、139、147、150、151、154、155、166、167、168、170、180、185、188、193、194、213等の黄色顔料;C.I.Pigment Orange 36、38、43等の橙色顔料;C.I.Pigment Blue 15、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60等の青色顔料;C.I.Pigment Violet 23、29、32、50等の紫色顔料等が挙げられる。
【0029】
前記着色材として、ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料以外の着色材を使用する場合、全着色材中の前記ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料の含有率は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。なお、着色材として、前記ポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料のみを使用してもよい。
【0030】
また、前記着色材は、分散助剤として色素誘導体を含有していてもよい。前記色素誘導体としては、分散剤に含まれるブロック共重合体中のアミノ基とイオン結合させて吸着させるために、酸性基を有する酸性の色素誘導体を含有することが好ましい。この色素誘導体は、色素骨格に酸性基が導入されたものである。色素骨格としては、着色組成物を構成している着色材と同一または類似の骨格、該顔料の原料となる化合物と同一または類似の骨格が好ましい。色素骨格の具体例としては、アゾ系色素骨格、フタロシアニン系色素骨格、アントラキノン系色素骨格、トリアジン系色素骨格、アクリジン系色素骨格、ペリレン系色素骨格等を挙げることができる。色素骨格に導入される酸性基としては、カルボキシ基、リン酸基、スルホン酸基が好ましい。なお、合成の都合上、および酸性度の強さからスルホン酸基が好ましい。また、酸性基は、色素骨格に直接結合してもよいが、アルキル基やアリール基等の炭化水素基;エステル、エーテル、スルホンアミド、ウレタン結合を介して色素骨格に結合してもよい。
【0031】
色素誘導体の使用量は特に限定はないが、例えば、着色材100質量部に対して4~17質量部であることが好ましい。
【0032】
着色組成物における着色材の含有量の上限値は、輝度の観点から、着色組成物の固形分全量中において、通常80質量%であり、70質量%であることが好ましく、60質量%であることがより好ましい。また、着色組成物における着色材の含有量の下限値は、着色組成物の固形分全量中において、通常10質量%であり、20質量%であることが好ましく、30質量%であることがより好ましい。ここで固形分とは、後述する分散媒体以外の成分である。
【0033】
着色組成物における着色材に対する分散剤の含有量は、着色材100質量部に対して5質量部~200質量部であることが好ましく、10質量部~100質量部であることが好ましく、10質量部~80質量部であることがさらに好ましい。
【0034】
(2.分散剤)
本発明で使用する分散剤は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、一般式(3)で表される構造単位および一般式(4)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有する。分散剤中の前記ブロック共重合体の含有率は、50質量%以上であり、好ましくは75質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。前記着色組成物は、分散剤として、前記ブロック共重合体のみを含有してもよい。
【0035】
(2-1.ブロック共重合体)
前記分散剤に用いるブロック共重合体は、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、一般式(3)で表される構造単位および一般式(4)で表される構造単位を有するBブロックとを有する。前記ブロック共重合体の各種構成成分等について以下説明する。
【0036】
(2-1-1.Aブロック)
Aブロックは、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を含むポリマーブロックである。Aブロックにおける(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位は、1種のみでもあってもよいし、2種以上を有していてもよい。(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を有することで、分散媒体(溶媒)、着色組成物に配合されるバインダー樹脂との高い親和性を維持できる。
【0037】
前記(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位の含有率は、前記Aブロック100質量%中において、80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0038】
前記(メタ)アクリルモノマーは、鎖状アルキル基(直鎖アルキル基または分岐鎖アルキル基)を有する(メタ)アクリレート、環状アルキル基を有する(メタ)アクリレート、多環式構造を有する(メタ)アクリレート、芳香族基を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレート、含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレート、酸性基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができ、これらの中から1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
前記直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、直鎖アルキル基の炭素数が1~20である直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、直鎖アルキル基の炭素数が1~10である直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。前記直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
前記分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、分岐鎖アルキル基の炭素数が3~20である分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、分岐鎖アルキル基の炭素数が3~10である分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。前記分岐鎖アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
前記環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、環状アルキル基の炭素数が6~12の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。環状アルキル基としては、単環構造を有する環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基)が挙げられる。単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
前記多環式構造を有する(メタ)アクリレートとしては、多環式構造の炭素数が6~12の多環式構造を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。多環式構造としては、橋かけ環構造を有する環状アルキル基(例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基)が挙げられる。多環式構造を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
前記芳香族基を有する(メタ)アクリレートとしては、芳香族基の炭素数が6~12の芳香族基を有する(メタ)アクリレートであることが好ましい。芳香族基としては、アリール基等を挙げることができ、またアルキルアリール基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基等のように鎖状部分を有していてもよい。芳香族基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0044】
前記ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート;ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
【0045】
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも炭素数が1~5であるヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0046】
前記ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートにラクトンを付加したものが挙げられ、カプロラクトンを付加したものが好ましい。カプロラクトンの付加量は、1mol~10molが好ましい。前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン1mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン2mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン3mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン4mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン5mol付加物、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのカプロラクトン10mol付加物等が好ましい。
【0047】
前記アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
前記含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートとしては、4員環~6員環の含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。含酸素ヘテロ環基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、2-〔(2-テトラヒドロピラニル)オキシ〕エチル(メタ)アクリレート、1,3-ジオキサン-(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0049】
前記酸性基としては、カルボキシ基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、リン酸基(-OPO32)、ホスホン酸基(-PO32)、ホスフィン酸基(-PO22)が挙げられる。前記酸性基を有する(メタ)アクリレートとしては、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレート、リン酸基を有する(メタ)アクリレート、スルホン基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレアート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー等、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。前記スルホン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記リン酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等が挙げられる。
【0051】
前記Aブロックは、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位以外の他の構造単位を有していてもよい。Aブロックに含まれ得る他の構造単位は、(メタ)アクリルモノマーおよび後述のBブロックを形成するビニルモノマーの両方と共重合し得るビニルモノマーにより形成されるものであれば特に制限はない。Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、α-オレフィン、芳香族ビニルモノマー、ヘテロ環を含有するビニルモノマー、ビニルアミド、カルボン酸ビニル、ジエン類等が挙げられる。これらのビニルモノマーはヒドロキシ基、エポキシ基を有していてもよい。
【0053】
α-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等が挙げられる。
ヘテロ環を含有するビニルモノマーとしては、2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、1-ビニル-2-ピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
ビニルアミドとしては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-ε-カプロラクタム等が挙げられる。
カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
ジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。
【0054】
Aブロックは、一般式(2)で表される構造単位、すなわち前記ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含有することが好ましい。一般式(2)で表される構造単位は、側鎖にエステル結合部分および末端ヒドロキシ基を有することから、分散媒体、バインダー樹脂との高い親和性を有し、ブロック共重合体のアルカリ現像性を高める。
【0055】
【化4】
[式(2)において、n1は1~10の整数を表す。R21は水素原子またはメチル基を表す。R22は炭素数が1~10のアルキレン基を表す。R23は炭素数が1~10のアルキレン基を表す。]
【0056】
前記式(2)のn1は、1~7の整数であることが好ましく、1~5の整数であることがより好ましい。
【0057】
前記R22で示される炭素数が1~10のアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。前記R22で示される炭素数が1~10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、1-メチルエチレン基等が挙げられる。R22は、炭素数が1~5のアルキレン基であることが好ましい。
【0058】
前記R23で示される炭素数が1~10のアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。前記R23で示される炭素数が1~10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。R23は、炭素数が1~8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が3~8のアルキレン基であることがより好ましい。
【0059】
前記Aブロックが、一般式(2)で表される構造単位を含有する場合、その含有率は、Aブロック100質量%中において10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。ラクトン変性ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率を上記範囲内とすることで、ブロック共重合体のアルカリ現像性を高めることができる。
【0060】
Aブロックは、酸性基を有するビニルモノマー(好ましくは酸性基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸)に由来する構造単位を有することが好ましい。酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を有することでアルカリ現像液への溶解性が増し、アルカリ現像性を向上させることができる。しかし、その割合が多くなると、分散媒体(溶媒)、バインダー樹脂との親和性が低くなるおそれがある。そのため、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の割合は、ブロック共重合体の全体の酸価がアミン価より低くなる割合とすることが好ましい。
【0061】
酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を含有する場合、その含有率は、Aブロック100質量%中において2質量%以上が好ましく、20質量%以下が好ましい。酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有率が2質量%以上であればアルカリ現像において、アルカリで中和した際の溶解速度が速くなり、20質量%以下であれば親水性が高すぎず、形成される画素が乱雑になることを抑制できる。
【0062】
前記Aブロックは、後述する一般式(3)で表される構造単位、一般式(4)で表される構造単位および一般式(5)で表される構造単位の含有率が10質量%未満、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下、一般式(3)で表される構造単位、一般式(4)で表される構造単位および一般式(5)で表される構造単位を含有しないことが最も好ましい。Aブロック中の一般式(3)で表される構造単位、一般式(4)で表される構造単位および一般式(5)で表される構造単位の含有率が低い程、着色材の分散性能が向上する。
【0063】
Aブロックは、アミノ基を有さないことが好ましい。つまり、Aブロックを構成するビニルモノマーには、アミノ基を有するビニルモノマーを含有しないことが好ましい。Aブロックにアミノ基が多量に存在すると、分散剤として使用した際に、着色材がAブロックおよびBブロックの両方に吸着されてしまい、着色材の分散性能が低下する。Aブロック中のアミノ基を有するビニルモノマーに由来する構造単位(アミノ基が4級化されているものを含む。)の含有率は、3質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、最も好ましくは0質量%である。
【0064】
Aブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Aブロックに含有される各種構造単位は、Aブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等のいずれの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。例えば、Aブロックが、a1ブロックからなる構造単位とa2ブロックとからなる構造単位との共重合体により形成されていてもよい。
【0065】
(2-1-2.Bブロック)
Bブロックは下記一般式(3)で表される構造単位および下記一般式(4)で表される構造単位を含むポリマーブロックである。
【0066】
一般式(3)で表される構造単位は、1種のみでもあってもよいし、2種以上を有していてもよい。一般式(3)で表される構造単位を有することで、着色材との吸着性が高くすることができる。
【0067】
【化5】
[式(3)において、R31およびR32は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を示す。R31およびR32が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R33は水素原子またはメチル基を表す。X31はアミド基、エステル基、または、単結合を表す。Y31は2価の炭化水素基を表す。]
【0068】
前記R31およびR32で表される鎖状の炭化水素基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基等を挙げることができる。前記直鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましく、炭素数1~5がさらに好ましい。前記直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ラウリル基等が挙げられる。前記分岐鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10がより好ましく、炭素数3~5がさらに好ましい。前記分岐鎖状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ネオペンチル基、イソオクチル基等が挙げられる。
【0069】
前記R31およびR32で表される鎖状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、ベンゾイル基(-COC65)、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0070】
前記R31およびR32で表される環状の炭化水素基としては、環状アルキル基、芳香族基等が挙げられ、環状アルキル基および芳香族基は鎖状部分を有していてもよい。前記環状アルキル基の炭素数としては、炭素数4~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~10がさらに好ましい。前記環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。前記芳香族基の炭素数としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~8がさらに好ましい。前記芳香族基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。鎖状部分を有する環状アルキル基および鎖状部分を有する芳香族基の鎖状部分の例としては、炭素数1~12のアルキレン基、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基が挙げられる。
【0071】
前記R31およびR32で表される環状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、鎖状のアルキル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0072】
前記R31およびR32が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば、5員環~7員環の含窒素ヘテロ環またはこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素ヘテロ環は芳香族性を有しないものが好ましく、飽和環がより好ましい。具体的には下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)で表される構造が挙げられる。
【0073】
【化6】
[式(3-1)、(3-2)、(3-3)において、R34は、炭素数1~6のアルキル基を示す。lは0~5の整数を表す。mは0~4の整数を表す。nは0~4の整数を表す。*は結合手を表す。lが2~5、mが2~4、nが2~4の場合、複数存在するR34は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0074】
前記X31は、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、または、単結合を表す。なお、アミド基、エステル基の結合方向は特に限定されない。アミド基の結合態様としては、C-CO-NH-Y31、または、C-NH-CO-Y31が挙げられる。エステル基の結合態様としては、C-CO-O-Y31、または、C-O-CO-Y31が挙げられる。
【0075】
前記Y31で示される2価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、炭素数6~10のアレーンジイル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数1~10のアルキレン基が好ましい。前記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。Y31は、炭素数が1~5のアルキレン基であることが好ましい。
【0076】
一般式(3)で表される構造単位を形成するビニルモノマーの具体例としては、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、プロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、プロピルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0077】
一般式(3)で表される構造単位の含有率は、Bブロック100質量%中において10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、99質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。一般式(3)で表される構造単位の含有率をこの範囲にすることで着色材と高い親和性を有すると考えられる。
【0078】
一般式(4)で表される構造単位は、1種のみでもあってもよいし、2種以上を有していてもよい。一般式(4)で表される構造単位を有することで、塗布後の高温加工においても輝度が優れた着色組成物とすることができる。
【0079】
【化7】
[式(4)において、R41は水素原子またはヒドロキシ基を有する芳香族基を表す。R42は水素原子またはメチル基を表す。]
【0080】
前記R41で表されるヒドロキシ基を有する芳香族基としては、2-ヒドロキシフェニル基、3-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシフェニル基、2,3-ジヒドロキシフェニル基、2,4-ジヒドロキシフェニル基、2,5-ジヒドロキシフェニル基、2,6-ジヒドロキシフェニル基、3,4-ジヒドロキシフェニル基、3,5-ジヒドロキシフェニル基、2,3,4-トリヒドロキシフェニル基、2,3,5-トリヒドロキシフェニル基、2,3,6-トリヒドロキシフェニル基、2,4,5-トリヒドロキシフェニル基、2,4,6-トリヒドロキシフェニル基、3,4,5-トリヒドロキシフェニル基、2-ヒドロキシ-1-ナフチル基、3-ヒドロキシ-1-ナフチル基、4-ヒドロキシ-1-ナフチル基、5-ヒドロキシ-1-ナフチル基、6-ヒドロキシ-1-ナフチル基、7-ヒドロキシ-1-ナフチル基、8-ヒドロキシ-1-ナフチル基、1-ヒドロキシ-2-ナフチル基、3-ヒドロキシ-2-ナフチル基、4-ヒドロキシ-2-ナフチル基、5-ヒドロキシ-2-ナフチル基、6-ヒドロキシ-2-ナフチル基、7-ヒドロキシ-2-ナフチル基、8-ヒドロキシ-2-ナフチル基、2,3-ジヒドロキシ-1-ナフチル基、2,6-ジヒドロキシ-1-ナフチル基、2,7-ジヒドロキシ-1-ナフチル基、1,5-ジヒドロキシ-2-ナフチル基、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフチル基、1,6-ジヒドロキシ-2-ナフチル基、1,8-ジヒドロキシ-2-ナフチル基等を挙げることができ、好ましくは、4-ヒドロキシフェニル基、4-ヒドロキシ-1-ナフチル基である。
【0081】
一般式(4)で表される構造単位を形成するビニルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシ-1-ナフチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0082】
一般式(4)で表される構造単位の含有率は、Bブロック100質量%中において1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。一般式(4)で表される構造単位の含有率をこの範囲にすることで、塗布後の高温加工においても輝度が優れた着色組成物とすることができる。
【0083】
Bブロックは、一般式(5)で表される構造単位を有していてもよい。Bブロックにおける一般式(5)で表される構造単位は、1種のみであってもよいし、2種以上を有していてもよい。Bブロックが一般式(5)で表される構造単位を有していれば、着色材表面への強い吸着性を長期的に維持でき、保存安定性がより向上する。
【0084】
【化8】
[式(5)において、R51は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を表す。R52およびR53は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい鎖状もしくは環状の炭化水素基を表す。R52およびR53が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。R54は水素原子またはメチル基を表す。X51はアミド基、エステル基、または、単結合を表す。Y51は2価の炭化水素基を表す。Z-は、対イオンを示す。]
【0085】
前記R51~R53で表される鎖状の炭化水素基としては、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基等を挙げることができる。前記直鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数1~20が好ましく、炭素数1~10がより好ましく、炭素数1~5がさらに好ましい。前記直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ラウリル基等が挙げられる。前記分岐鎖状アルキル基の炭素数としては、炭素数3~20が好ましく、炭素数3~10がより好ましく、炭素数3~5がさらに好ましい。前記分岐鎖状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、ネオペンチル基、イソオクチル基等が挙げられる。
【0086】
前記R51~R53で表される鎖状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、ベンゾイル基(-COC65)、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0087】
前記R51~R53で表される環状の炭化水素基としては、環状アルキル基、芳香族基等が挙げられ、環状アルキル基および芳香族基は鎖状部分を有していてもよい。前記環状アルキル基の炭素数としては、炭素数4~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~10がさらに好ましい。前記環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。前記芳香族基の炭素数としては、炭素数6~18が好ましく、炭素数6~12がより好ましく、炭素数6~8がさらに好ましい。前記芳香族基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等が挙げられる。鎖状部分を有する環状アルキル基および鎖状部分を有する芳香族基の鎖状部分の例としては、炭素数1~12のアルキレン基、好ましくは炭素数1~6のアルキレン基、より好ましくは炭素数1~3のアルキレン基が挙げられる。
【0088】
前記R51~R53で表される環状の炭化水素基が有する置換基としては、ハロゲン基、アルコキシ基、鎖状のアルキル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。
【0089】
前記R52およびR53が互いに結合して形成する環状構造としては、例えば、5員環~7員環の含窒素ヘテロ環またはこれらが2個縮合してなる縮合環が挙げられる。該含窒素ヘテロ環は芳香族性を有しないものが好ましく、飽和環がより好ましい。具体的には下記式(5-1)、(5-2)、(5-3)で表される構造が挙げられる。
【0090】
【化9】
[一般式(5-1)、(5-2)、(5-3)において、R55は、R51である。R56は、炭素数1~6のアルキル基を示す。lは0~5の整数を表す。mは0~4の整数を表す。nは0~4の整数を表す。*は結合手を表す。lが2~5、mが2~4、nが2~4の場合、複数存在するR56は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
【0091】
前記X51は、アミド基(-CO-NH-)、エステル基(-CO-O-)、または、単結合を表す。なお、アミド基、エステル基の結合方向は特に限定されない。アミド基の結合態様としては、C-CO-NH-Y51、または、C-NH-CO-Y51が挙げられる。エステル基の結合態様としては、C-CO-O-Y51、または、C-O-CO-Y51が挙げられる。
【0092】
前記Y51で示される2価の炭化水素基としては、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、炭素数6~10のアレーンジイル基などが挙げられる。これらの中でも炭素数1~10のアルキレン基が好ましい。前記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。Y51は、炭素数が1~5のアルキレン基であることが好ましい。
【0093】
-としては、ハロゲンアニオン、カルボキシレートアニオン、スルフェートアニオン、スルホネートアニオン、ホスフェートアニオン、ニトロキシドアニオンなどが挙げられる。
【0094】
前記ハロゲンアニオンとしては、フルオロアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオンが挙げられる。
前記カルボキシレートアニオンとしては、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン等のアルキルカルボキシレートアニオン;安息香酸アニオン等の芳香族カルボキシレートアニオン;等が挙げられる。
前記スルフェートアニオンとしては、メチル硫酸アニオン、エチル硫酸アニオン等のアルキルスルフェートアニオン;フェニル硫酸アニオン、ベンジル硫酸アニオン等の芳香族硫酸アニオン;等が挙げられる。
前記スルホネートアニオンとしては、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン等のアルキルスルホネートアニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン等の芳香族スルホネートアニオン;等が挙げられる。
【0095】
前記式(5)で示される構造単位を形成するビニルモノマーの具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシブチルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルベンジルジエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシブチルベンジルジエチルアンモニウムクロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルベンジルジエチルアンモニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシブチルベンジルジエチルアンモニウムブロミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムヨージド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルベンジルジエチルアンモニウムヨージド、(メタ)アクリロイルオキシブチルベンジルジエチルアンモニウムヨージド、(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルジエチルアンモニウムフロリド、(メタ)アクリロイルオキシプロピルベンジルジエチルアンモニウムフロリド、(メタ)アクリロイルオキシブチルベンジルジエチルアンモニウムフロリド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム・メチルスルファート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム・メチルスルファート、(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメチルアンモニウム・メチルスルファート、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルエチルアンモニウム・エチルスルファート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルジメチルエチルアンモニウム・エチルスルファート、(メタ)アクリロイルオキシブチルジメチルエチルアンモニウム・エチルスルファート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム・トルエン-4-スルホナート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム・トルエン-4-スルホナート、(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメチルアンモニウム・トルエン-4-スルホナート等が挙げられる。
【0096】
一般式(5)で表される構造単位を含有する場合、その含有率は、Bブロック100質量%中において1質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、60質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下である。一般式(5)で表される構造単位の含有率をこの範囲にすることで着色材と高い親和性を有すると考えられる。
【0097】
Bブロックは、一般式(3)で表される構造単位、一般式(4)で表される構造単位および一般式(5)で表される構造単位のみであっても良いし、他の構造単位が含まれていてもよい。着色材との親和性を保持する観点から、Bブロック中の一般式(3)で表される構造単位と一般式(4)で表される構造単位と一般式(5)で表される構造単位との合計含有率は、Bブロック100質量%中において80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。また、Bブロックは、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位を実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有率は、Bブロック100質量%中において、5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0098】
前記Bブロックにおける前記一般式(3)で表される構造単位と前記一般式(5)で表される構造単位の合計に対する前記一般式(4)で表される構造単位の質量比(式(4)/(式(3)+式(5)))は、0.01以上が好ましく、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、0.30以下が好ましく、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下である。
【0099】
Bブロックの他の構造単位を形成し得るビニルモノマーの具体例としては、Aブロックの他の構造単位を形成し得るビニルのモノマーの具体例として例示したものと同一のものを挙げることができる。
【0100】
Bブロックにおいて2種以上の構造単位が含有される場合は、Bブロックに含有される各種構造単位は、Bブロック中においてランダム共重合、ブロック共重合等の何れの態様で含有されていてもよく、均一性の観点からランダム共重合の態様で含有されていることが好ましい。例えば、Bブロックが、b1ブロックからなる構造単位とb2ブロックとからなる構造単位との共重合体により形成されていてもよい。
【0101】
(2-1-3.ブロック共重合体)
前記ブロック共重合体の構造は、線状ブロック共重合体であることが好ましい。また、線状ブロック共重合体は、いずれの構造(配列)であっても良いが、線状ブロック共重合体の物性、または組成物の物性の観点から、AブロックをA、BブロックをBと表現したとき、(A-B)m型、(A-B)m-A型、(B-A)m-B型(mは1以上の整数、例えば1~3の整数)よりなる群から選択される少なくとも1種の構造を持つ共重合体であることが好ましい。これらの中でも、加工時の取扱い性、組成物の物性の観点から、A-B型ジブロック共重合体であることが好ましい。A-B型ジブロック共重合体を構成することで、Aブロックに有する(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位と、Bブロックに有する一般式(3)で表される構造単位および一般式(4)で表される構造単位とが局在化し、効率的に着色材と、分散媒体(溶媒)、バインダー樹脂(アルカリ可溶性樹脂)と好適に作用することができると考えられる。前記ブロック共重合体は、AブロックおよびBブロック以外の他のブロックを有していてもよい。
【0102】
Aブロックの含有率は、ブロック共重合体全体100質量%中において、35質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上であり、85質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。Bブロックの含有率は、ブロック共重合体全体100質量%中において、15質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上であり、65質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下である。AブロックおよびBブロックの含有率を、上記範囲内に調整することで、分散剤として使用した際の分散性能がより一層向上する。
【0103】
ブロック共重合体中のAブロックとBブロックとの質量比(Aブロック/Bブロック)は、50/50以上が好ましく、より好ましくは55/45以上、さらに好ましくは60/40以上であり、95/5以下が好ましく、より好ましくは90/10以下、さらに好ましくは80/20以下である。AブロックとBブロックとの質量比が前記範囲内であれば、分散剤として使用した際の分散性能がより一層向上する。
【0104】
前記ブロック共重合体が酸性基を有する構造単位を含有する場合、前記ブロック共重合体における酸性基を有するビニルモノマーに由来する構造単位の含有率は、1質量%以上が好ましく、10質量%以下が好ましい。
【0105】
前記ブロック共重合体における前記一般式(3)で表される構造単位、前記一般式(4)で表される構造単位および前記一般式(5)で表される構造単位の合計含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0106】
前記ブロック共重合体の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下「GPC」という)法により測定される。前記ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は3,000以上が好ましく、より好ましくは4,000以上、さらに好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは6,000以上であり、40,000以下が好ましく、より好ましくは30,000以下、さらに好ましくは25,000以下であり、特に好ましくは20,000以下である。重量平均分子量が上記範囲内にあれば、分散剤として使用した際の分散性能がより良好となる。
【0107】
前記ブロック共重合体の分子量分布(PDI)は、2.5以下が好ましく、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.6以下である。なお、本発明において、分子量分布(PDI)とは、(ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw))/(ブロック共重合体の数平均分子量(Mn))によって求められるものである。PDIが小さいほど分子量分布の幅が狭い、分子量のそろった共重合体となり、その値が1.0のとき最も分子量分布の幅が狭い。即ち、PDIの下限値は1.0である。ブロック共重合体の分子量分布(PDI)が、2.5を超えると、分子量の小さいものや、分子量の大きいものが含まれることになる。
【0108】
前記ブロック共重合体のアミン価は、着色材への吸着性および着色材分散性の観点から、10mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは50mgKOH/g以上、さらに好ましくは65mgKOH/g以上、特に好ましくは80mgKOH/g以上であり、200mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは150mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下である。
【0109】
前記ブロック共重合体が酸性基を有する構造単位を含有する場合、ブロック共重合体の酸価は、5mgKOH/g以上が好ましく、50mgKOH/g以下が好ましい。酸価をこの範囲にすることで、ブロック共重合体の着色材との親和性を損なうことなく、バインダー樹脂(アルカリ可溶性樹脂)と好適に作用することができる。
【0110】
(2-2.ブロック共重合体の製造方法)
前記ブロック共重合体の製造方法としては、ビニルモノマーの重合反応によって、Aブロックを先に製造し、AブロックにBブロックのモノマーを重合する方法;Bブロックを先に製造し、BブロックにAブロックのモノマーを重合する方法;AブロックとBブロックとを別々に製造した後、AブロックとBブロックとをカップリングする方法;等が挙げられる。
【0111】
重合法は特に限定されないが、リビングラジカル重合が好ましい。すなわち、前記ブロック共重合体としては、リビングラジカル重合により重合されたものが好ましい。従来のラジカル重合法は、開始反応、成長反応だけでなく、停止反応、連鎖移動反応により成長末端の失活が起こり、様々な分子量、不均一な組成のポリマーの混合物となり易い傾向がある。これに対してリビングラジカル重合法は、従来のラジカル重合法の簡便性と汎用性を保ちながら、停止反応や、連鎖移動が起こりにくく、成長末端が失活することなく成長するため、分子量分布の精密制御、均一な組成のポリマーの製造が容易である点で好ましい。
【0112】
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法);硫黄系の可逆的連鎖移動剤を用いる方法(RAFT法);有機テルル化合物を用いる方法(TERP法);等の方法がある。ATRP法は、アミン系錯体を使用するため、酸性基を有するビニルモノマーの酸性基を保護せず使用することができない場合がある。RAFT法は、多種のモノマーを使用した場合、低分子量分布になりづらく、かつ硫黄臭や着色等の不具合がある場合がある。これらの方法のなかでも、使用できるモノマーの多様性、高分子領域での分子量制御、均一な組成、あるいは着色の観点から、TERP法を用いることが好ましい。
【0113】
TERP法とは、有機テルル化合物を連鎖移動剤として用い、ラジカル重合性化合物(ビニルモノマー)を重合させる方法であり、例えば、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された方法である。
【0114】
TERP法の具体的な重合法としては、下記(a)~(d)が挙げられる。
(a)ビニルモノマーを、一般式(6)で表される有機テルル化合物を用いて重合する。
(b)ビニルモノマーを、一般式(6)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤との混合物を用いて重合する。
(c)ビニルモノマーを、一般式(6)で表される有機テルル化合物と一般式(7)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する。
(d)ビニルモノマーを、一般式(6)で表される有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤と一般式(7)で表される有機ジテルリド化合物との混合物を用いて重合する。
【0115】
【化10】
[式(6)において、R61は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。R62およびR63は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~8のアルキル基を示す。R64は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基を示す。
一般式(7)において、R61は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基を示す。]
【0116】
61で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基または芳香族ヘテロ環基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
【0117】
62およびR63で表される基は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基であり、各基は、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基や、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
【0118】
64で表される基は、炭素数1~8のアルキル基、アリール基、置換アリール基、芳香族ヘテロ環基、アルコキシ基、アシル基、アミド基、オキシカルボニル基、シアノ基、アリル基またはプロパルギル基であり、具体的には次の通りである。
炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の直鎖または分岐鎖アルキル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基等を挙げることができる。好ましくは炭素数1~4の直鎖または分岐鎖アルキル基であり、更に好ましくはメチル基またはエチル基である。
アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。好ましくはフェニル基である。
置換アリール基としては、置換基を有しているフェニル基、置換基を有しているナフチル基等を挙げることができる。前記置換基を有しているアリール基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、-COR641で示されるカルボニル含有基(R641は炭素数1~8のアルキル基、アリール基、炭素数1~8のアルコキシ基またはアリーロキシ基)、スルホニル基、トリフルオロメチル基等を挙げることができる。また、これらの置換基は、1個または2個置換しているのがよい。
芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、フリル基、チエニル基等を挙げることができる。
アルコキシ基としては、炭素数1~8のアルキル基が酸素原子に結合した基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基等を挙げることができる。
アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等を挙げることができる。
アミド基としては、-CONR64216422(R6421、R6422は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基)を挙げることがきる。
オキシカルボニル基としては、-COOR6431(R6431は水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基)で表される基が好ましく、例えばカルボキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、n-ペンチルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等を挙げることができる。好ましいオキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基が挙げられる。
アリル基としては、-CR64416442-CR6443=CR64446445(R6441、R6442は、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~8のアルキル基、R6443、R6444、R6445は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~8のアルキル基またはアリール基であり、それぞれの置換基が環状構造で繋がっていてもよい)等を挙げることができる。
プロパルギル基としては、-CR64516452-C≡CR6453(R6451、R6452は、水素原子または炭素数1~8のアルキル基、R6453は、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、アリール基またはシリル基)等を挙げることができる。
【0119】
一般式(6)で表される有機テルル化合物は、具体的には(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(メチルテラニルメチル)ナフタレン、エチル-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート、(2-トリメチルシロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート、(2-ヒドロキシエチル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネートまたは(3-トリメチルシリルプロパルギル)-2-メチル-2-メチルテラニル-プロピオネート等、国際公開第2004/14848号、国際公開第2004/14962号、国際公開第2004/072126号、および国際公開第2004/096870号に記載された有機テルル化合物の全てを例示することができる。
【0120】
一般式(7)で表される有機ジテルリド化合物の具体例としては、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-s-ブチルジテルリド、ジ-t-ブチルジテルリド、ジシクロブチルジテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリドまたはジピリジルジテルリド等を例示することができる。
【0121】
アゾ系重合開始剤は、通常のラジカル重合で使用するアゾ系重合開始剤であれば特に制限なく使用することができる。例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(AMBN)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(ADVN)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)(ACHN)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート(MAIB)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリアン酸)(ACVA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチルアミド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(V-70)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2-シアノ-2-プロピルアゾホルムアミド、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、または2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)等を例示することができる。
【0122】
重合工程は、不活性ガスで置換した容器で、ビニルモノマーと一般式(6)の有機テルル化合物と、ビニルモノマーの種類に応じて反応促進、分子量および分子量分布の制御等の目的で、さらにアゾ系重合開始剤および/または一般式(7)の有機ジテルリド化合物を混合する。このとき、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等を挙げることができる。好ましくは、アルゴン、窒素が良い。
【0123】
前記(a)、(b)、(c)および(d)におけるビニルモノマーの使用量は、目的とする共重合体の物性により適宜調節すればよい。一般式(6)の有機テルル化合物1molに対しビニルモノマーを5mol~10000molとすることが好ましい。
【0124】
前記(b)の一般式(6)の有機テルル化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(6)の有機テルル化合物1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol~10molとすることが好ましい。
【0125】
前記(c)の一般式(6)の有機テルル化合物と一般式(7)の有機ジテルリド化合物とを併用する場合、一般式(6)の有機テルル化合物1molに対して一般式(7)の有機ジテルル化合物を0.01mol~100molとすることが好ましい。
【0126】
前記(d)の一般式(6)の有機テルル化合物と一般式(7)の有機ジテルリド化合物とアゾ系重合開始剤とを併用する場合、一般式(6)の有機テルル化合物1molに対して一般式(7)の有機ジテルリド化合物を0.01mol~100molとすることが好ましく、一般式(6)の有機テルル化合物1molに対してアゾ系重合開始剤を0.01mol~10molとすることが好ましい。
【0127】
重合反応は、無溶媒でも行うことができるが、ラジカル重合で一般に使用される非プロトン性溶媒またはプロトン性溶媒を使用し、前記混合物を撹拌して行なってもよい。使用できる非プロトン性溶媒は、例えば、アニソール、ベンゼン、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、2-ブタノン(メチルエチルケトン)、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチルまたはトリフルオロメチルベンゼン等を例示することができる。また、プロトン性溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、1-メトキシ-2-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノールまたはジアセトンアルコール等を例示することができる。
【0128】
溶媒の使用量としては、適宜調節すればよく、例えば、ビニルモノマー1gに対して、0.01ml以上が好ましく、より好ましくは0.05ml以上、さらに好ましくは0.1ml以上であり、50ml以下が好ましく、より好ましくは10ml以下、さらに好ましくは1ml以下である。
【0129】
反応温度、反応時間は、得られる共重合体の分子量或いは分子量分布により適宜調節すればよいが、通常、0℃~150℃で、1分~100時間撹拌する。TERP法は、低い重合温度および短い重合時間であっても高い収率と精密な分子量分布を得ることができる。このとき、圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧または減圧しても構わない。
【0130】
重合反応の終了後、得られた反応混合物から、通常の分離精製手段により、使用溶媒、残存ビニルモノマーの除去等を行い、目的とする共重合体を分離することができる。
【0131】
重合反応により得られる共重合体の成長末端は、テルル化合物由来の-TeR61(式中、R61は上記と同じである)の形態であり、重合反応終了後の空気中の操作により失活していくが、テルル原子が残存する場合がある。テルル原子が末端に残存した共重合体は着色したり、熱安定性が劣ったりするため、テルル原子を除去することが好ましい。
【0132】
テルル原子を除去する方法としては、トリブチルスタンナンまたはチオール化合物等を用いるラジカル還元方法;活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、活性白土、モレキュラーシーブスおよび高分子吸着剤等で吸着する方法;イオン交換樹脂等で金属を吸着する方法;過酸化水素水または過酸化ベンゾイル等の過酸化物を添加したり、空気または酸素を系中に吹き込むことで共重合体末端のテルル原子を酸化分解させ、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留テルル化合物を除去する液-液抽出法や固-液抽出法;特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限界ろ過等の溶液状態での精製方法;等を用いることができ、また、これらの方法を組み合わせて用いることもできる。
【0133】
式(3)で表される構造単位の3級アミン基を4級化する場合、4級化剤としては、塩化メチル、塩化エチル、臭化メチル、ヨウ化メチル等のハロゲン化アルキル;塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル等のハロゲン化アラルキル;硫酸ジフェニル等の硫酸ジアリール;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等の硫酸ジアルキル;p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル等の芳香族スルホン酸アルキル;等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは塩化ベンジル、臭化ベンジル、ヨウ化ベンジル等のハロゲン化アラルキル、硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジ-n-プロピル等の硫酸ジアルキル、p-トルエンスルホン酸メチル、p-トルエンスルホン酸エチル等の芳香族スルホン酸アルキルであり、より好ましくは塩化ベンジル、硫酸ジメチル、p-トルエンスルホン酸メチルである。4級化後の構造には、4級化剤に由来するアルキル基、アラルキル基が導入される。よって、4級化により導入されたアルキル基、アラルキル基等の量を測定することで、式(5)で表される構造単位の量を推定することができる。
【0134】
重合物中の式(3)で表される構造単位の一部の3級アミン構造を4級化する方法としては、重合物と4級化剤とを接触させる方法が挙げられる。具体的には、式(3)で表される構造単位を形成し得るビニルモノマーを含有するモノマー組成物を重合した後、この反応液に4級化剤を添加し、撹拌する方法が挙げられる。4級化剤を添加する反応液の温度は25℃~65℃が好ましく、撹拌時間は、1時間~20時間が好ましい。4級化剤を添加する際に、重合後の反応液を希釈することも好ましい。希釈のために添加する溶媒としては、重合反応に使用し得る溶媒、重合反応に使用し得る溶媒とプロトン性溶媒との混合溶媒が挙げられ、目的とするブロック共重合体の溶解度により適宜選択すればよい。プロトン性溶媒としてはメタノールが好ましい。
【0135】
(3.バインダー樹脂)
前記着色組成物は、バインダー樹脂(ただし、前記ブロック共重合体は除く。)を含有する。これにより、着色組成物のアルカリ現像性や基板への結着性を高めることができる。このようなバインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基等の酸性基を有する樹脂であることが好ましい。前記バインダー樹脂としては、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させてなる樹脂、あるいは該付加反応により生じたヒドロキシ基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させて得られるアルカリ可溶性樹脂;主鎖にカルボキシ基を含有する直鎖状アルカリ可溶性樹脂;カルボキシ基含有樹脂のカルボキシ基部分に、エポキシ基含有不飽和化合物を付加させた樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;カルボキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂;等を挙げることができ、これらを単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0136】
前記バインダー樹脂の好ましい態様としては、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する構造単位と(メタ)アクリレートに由来する構造単位とスチレンとを含有するランダム共重合体、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する構造単位と(メタ)アクリレートに由来する構造単位とを含有するランダム共重合体が挙げられる。前記カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸が好ましい。前記(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0137】
前記バインダー樹脂は、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する構造単位と(メタ)アクリレートに由来する構造単位との合計含有率が、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。また、前記バインダー樹脂は、カルボキシ基含有ビニルモノマーに由来する構造の含有率が、5質量%以上が好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、より好ましくは70質量%以下である。
【0138】
これらの中でも、カルボキシ基含有ビニルモノマーと(メタ)アクリレートとのランダム共重合体であることが好ましい。このような共重合体の具体例としては、(メタ)アクリル酸とブチル(メタ)アクリレートとのランダム共重合体、(メタ)アクリル酸とベンジル(メタ)アクリレートとのランダム共重合体、(メタ)アクリル酸とブチル(メタ)アクリレートとベンジル(メタ)アクリレートとのランダム共重合体等が挙げられる。バインダー樹脂と着色材との親和性の観点からは、バインダー樹脂は、(メタ)アクリル酸とベンジル(メタ)アクリレートとのランダム共重合体であることが特に好ましい。
【0139】
カルボキシ基含有ビニルモノマーと(メタ)アクリレートとの共重合体において、(メタ)アクリル酸の含有量は、全モノマー成分中、通常5質量%~90質量%であり、10質量%~70質量%であることが好ましく、20質量%~70質量%であることがより好ましい。
【0140】
前記バインダー樹脂は、側鎖にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を有するものであってもよい。側鎖に二重結合を有することで、本発明に係る着色組成物の光硬化性が高まるため、解像度、密着性を更に向上することができる。側鎖にラジカル重合可能な炭素-炭素二重結合を導入する方法としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-(またはm-、またはp-)ビニルベンジルグリシジルエーテル等の化合物を、前記バインダー樹脂の酸性基に反応させる方法が挙げられる。
【0141】
バインダー樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~100,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましく、5,000~20,000であることがさらに好ましい。バインダー樹脂のMwが3,000以上であると、着色組成物から形成された着色層の耐熱性、膜強度等が良好となり、Mwが100,000以下であると、この塗布膜のアルカリ現像性がより一層良好となる。
【0142】
バインダー樹脂の酸価は、20mgKOH/g~170mgKOH/gであることが好ましく、50mgKOH/g~150mgKOH/gであることがより好ましく、90mgKOH/g~150mgKOH/gであることがさらに好ましい。バインダー樹脂の酸価が20mgKOH以上/gであると、着色組成物を着色層としたときのアルカリ現像性がより一層良好となり、170mgKOH/g以下であると耐熱性が良好となる。
【0143】
着色組成物に含まれるバインダー樹脂は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。着色組成物において、バインダー樹脂の含有量は、着色材100質量部に対して、3質量部~200質量部であることが好ましく、10質量部~100質量部であることがより好ましく、20質量部~80質量部であることがさらに好ましい。
【0144】
(4.分散媒体)
本発明で使用する分散媒体としては、着色組成物を構成する他の成分を分散または溶解し、かつこれらの成分と反応せず、適度に揮発性を有するものである限り、適宜に選択して使用できる。例えば、従来公知の有機溶媒を使用することができ、例えば、従来公知の有機溶媒を使用することができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、メトキシメチルペンタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のグリコールアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサノールジアセテート等のグリコールジアセテート類;シクロヘキサノールアセテート等のアルキルアセテート類;アミルエーテル、プロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ジアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジヘキシルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エチルアミルケトン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、メトキシメチルペンタノン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、メトキシプロパノール、メトキシメチルペンタノール、グリセリン、ベンジルアルコール等の1価または多価アルコール類;n-ペンタン、n-オクタン、ジイソブチレン、n-ヘキサン、ヘキセン、イソプレン、ジペンテン、ドデカン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族炭化水素類;アミルホルメート、エチルホルメート、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸アミル、メチルイソブチレート、エチレングリコールアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、酪酸ブチル、酪酸イソブチル、イソ酪酸メチル、エチルカプリレート、ブチルステアレート、エチルベンゾエート、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、γ-ブチロラクトン等の鎖状または環状エステル類;3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸等のアルコキシカルボン酸類;ブチルクロライド、アミルクロライド等のハロゲン化炭化水素類;メトキシメチルペンタノン等のエーテルケトン類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類等が挙げられる。有機溶媒は、着色材等の分散性、分散剤の溶解性、着色組成物の塗布性等の観点から、グリコールアルキルエーテルアセテート類、グリコールモノアルキルエーテル類、1価または多価アルコール類であることが好ましい。着色組成物に含まれる溶媒は、1種類のみであってもよいし、複数種類であってもよい。
【0145】
フォトリソグラフィ法にてカラーフィルタの画素を形成する場合、分散媒体の沸点が100℃~200℃(圧力1013.25hPa条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)が好ましく、120℃~170℃がより好ましい。上記分散媒体の中でも、塗布性、表面張力などのバランスがよく、着色組成物中の構成成分の溶解度が比較的高い点から、グリコールアルキルエーテルアセテート類が好ましい。グリコールアルキルエーテルアセテート類は単独で使用しても良いし、他の分散媒体を併用しても良い。
【0146】
また、沸点が150℃以上の分散媒体を併用することも好ましい。このような高沸点の分散媒体を併用することにより、着色組成物は乾きにくくなり、急激に乾燥することによる着色組成物の相互関係の破壊を起こし難くする効果がある。高沸点分散媒体の含有割合は、分散媒体全体100質量%に対して3質量%~50質量%が好ましい。3質量%以上とすることで、スリットノズル先端で着色材などが析出・固化して異物欠陥を惹き起こす可能性を低くすることができる傾向がある。50質量%以下とすることで、着色組成物の乾燥温度が遅くなり、後述するカラーフィルタ製造工程における、減圧乾燥プロセスのタクト不良や、プリベークのピン跡といった問題を惹き起こす可能性を低くすることができる傾向がある。なお、沸点が150℃以上の分散媒体が、グリコールアルキルエーテルアセテート類であってもよく、この場合は、沸点が150℃以上の分散媒体を別途含有させなくてもかまわない。
【0147】
インクジェット法にてカラーフィルタの画素を形成する場合、分散媒体の沸点は130℃~300℃が好ましく、150℃~280℃がより好ましい。沸点を前記下限値以上とすることで、得られる塗膜の均一性が良好になる傾向がある。また沸点を前記上限値以下とすることで熱焼成後においても塗膜中に残留溶剤が多く存在し、品質上の不具合を生じたり、真空乾燥などでの乾燥時間が長くなり、タクトタイムを増大させるなどの不具合を生じたりする可能性を低くすることができる傾向がある。また、分散媒体の蒸気圧は、得られる塗膜の均一性の観点から、通常10mmHg以下、好ましくは5mmHg以下、より好ましくは1mmHg以下のものが使用できる。
【0148】
なお、インクジェット法によるカラーフィルタ製造において、ノズルから発せられるインクは数pL~数十pLと非常に微細であるため、ノズル口周辺あるいは画素バンク内に着弾する前に、分散媒体が蒸発してインクが濃縮・乾固する傾向がある。これを回避するためには分散媒体の沸点は高い方が好ましく、具体的には、沸点が180℃以上の分散媒体を含むことが好ましい。より好ましくは、沸点が200℃以上、特に好ましくは沸点が220℃以上である分散媒体を含有する。また、沸点が180℃以上である高沸点溶剤は、着色樹脂組成物に含まれる分散媒体全体100質量%に対して50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が最も好ましい。前記下限値以上とすることで液滴からの溶剤の蒸発防止効果を十分に発揮できる傾向がある。
【0149】
着色組成物中の分散媒体の含有量は、特に限定されず、適宜調整することができる。着色組成物中の分散媒体の含有量の上限値は、通常99質量%である。また、着色組成物中の分散媒体の含有量の下限値は、着色組成物の塗布に適した粘度を考慮して、通常70質量%であり、80質量%であることが好ましい。上記分散媒体は、着色組成物から形成される析出物を溶解、除去するための溶媒として使用できる。
【0150】
(5.架橋剤)
本発明の着色組成物は、必要に応じて、架橋剤を含有してもよい。架橋剤とは、2個以上の重合可能な基を有する化合物をいう。重合可能な基としては、例えば、エチレン性不飽和基、オキシラニル基、オキセタニル基、N-アルコキシメチルアミノ基等を挙げることができる。前記架橋剤としては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、または2個以上のN-アルコキシメチルアミノ基を有する化合物が好ましい。前記架橋剤は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0151】
前記2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物の具体例としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と(メタ)アクリル酸を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性された多官能(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性された多官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートと多官能イソシアネートを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートと酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0152】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価の脂肪族ポリヒドロキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3価以上の脂肪族ポリヒドロキシ化合物が挙げられる。前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロールジメタクリレート等が挙げられる。前記多官能イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。前記酸無水物としては、例えば、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の二塩基酸の無水物;無水ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の四塩基酸二無水物が挙げられる。
【0153】
前記着色組成物において、架橋剤の含有量は、着色材100質量部に対して、10質量部~1,000質量部が好ましく、特に20質量部~500質量部が好ましい。架橋剤の含有量が少なすぎると、十分な硬化性が得られないおそれがある。一方、架橋剤の量が多すぎると、本発明の着色組成物にアルカリ現像性が低下し、未露光部の基板上または遮光層上に地汚れ、膜残り等が発生しやすくなる傾向がある。
【0154】
(6.光重合開始剤)
本発明の着色組成物は、必要に応じて、光重合開始剤を含有してもよい。これにより、着色組成物に感放射線性を付与することができる。前記光重合開始剤は、可視光線、紫外線、遠赤外線、電子線、X線等の放射線の露光により、架橋剤の重合を開始し得る活性種を発生する化合物である
【0155】
前記光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン系化合物、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O-アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α-ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。光重合開始剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0156】
本発明の着色組成物において、光重合開始剤の含有量は、架橋剤100質量部に対して、0.01質量部~120質量部が好ましく、特に1質量部~100質量部が好ましい。この場合、光重合開始剤の含有量が少なすぎると、露光により硬化が不十分となるおそれがあり、一方多すぎると、形成された着色層が現像時に基板から脱落しやすくなる傾向がある。
【0157】
(7.他の配合剤)
本発明の着色組成物には、本発明の好ましい物性を損なわない範囲であれば、前記配合剤以外に、他の配合剤を配合することができる。他の配合剤としては、上記ブロック共重合体を除く分散剤(ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレングリコールジエステル系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等)、増感色素、熱重合防止剤、可塑剤、有機カルボン酸化合物、有機カルボン酸無水物、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防腐剤、防カビ剤、界面活性剤(非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤)、凝集防止剤、密着性改良剤、現像改良剤、保存安定剤等を挙げることができる。
【0158】
<着色組成物の製造方法>
前記着色組成物は、着色材、分散剤、バインダー樹脂、分散媒体、必要に応じて、架橋剤、光重合開始剤、他の配合剤を混合することで調製できる。混合は、例えば、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ディゾルバー、ニーダー等の混合分散機を用いることができる。着色組成物は、混合後に濾過することが好ましい。前記着色組成物は、アルカリ現像性を有することから、カラーフィルタ用として好適に使用することができる。
【0159】
<カラーフィルタ>
本発明のカラーフィルタは、前記着色組成物を用いて形成された着色層を備えるものである。
【0160】
カラーフィルタを製造する方法としては、例えば、次の方法が挙げられる。まず、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などの熱可塑性樹脂製シート、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂などの熱硬化性樹脂シート、各種ガラスなどの透明基板上に、例えば、赤色の顔料が分散された着色組成物を塗布したのち、プレベークを行って溶媒(分散媒体)を蒸発させ、塗膜を形成する。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ現像液(有機溶剤又は界面活性剤とアルカリ性化合物とを含む水溶液など)を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去する。その後、ポストベークすることにより、赤色の画素パターンが所定の配列で配置された画素アレイを形成する。次いで、緑色の着色組成物(本発明の着色組成物)または青色の着色組成物を用い、上記と同様にして、各着色組成物の塗布、プレベーク、露光、現像およびポストベークを行って、緑色の画素アレイおよび青色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。これにより、赤色、緑色および青色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。但し、本発明においては、各色の画素を形成する順序は、上記のものに限定されない。また、赤色、緑色および青色の三原色の画素アレイを形成に用いる透明基板上には、ブラックマトリックスが設けられていてもよい。
【0161】
着色組成物を基板に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができるが、特に、スピンコート法、スリットダイ塗布法を採用することが好ましい。
【0162】
このようにして得られた画素パターン上に、必要に応じて保護膜を形成した後、透明導電膜(ITOなど)をスパッタリングにより形成する。透明導電膜を形成した後、更にスペーサーを形成してカラーフィルタとすることもできる。
【0163】
本発明のカラーフィルタは、寸法精度等が高く、カラー液晶表示素子、カラー撮像管素子、カラーセンサー、有機EL表示素子、電子ペーパー等に好適に使用することができる。
【実施例
【0164】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。なお、ブロック共重合体およびバインダー樹脂の重合率、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(PDI)、アミン価および酸価、着色組成物の粘度、輝度、乾燥再溶解性およびアルカリ現像性は、下記の方法に従って評価した。
【0165】
なお、略語の意味は下記のとおりである。
BTEE:エチル-2-メチル-2-n-ブチルテラニル-プロピオネート
DBDT:ジブチルジテルリド
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)
BMA:n-ブチルメタクリレート
PCL5:2-ヒドロキシエチルメタクリレートの5molカプロラクトン付加物(ダイセル化学社製、プラクセル(登録商標)FM5)
DMAEMA:2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート
MAm:メタクリルアミド
4HPMAm:N-(4-ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド
MMAm:N-メチルメタクリルアミド
MOMMAm:N-メトキシメチルメタクリルアミド
PMAm:N-フェニルメタクリルアミド
BzMA:ベンジルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MP:1-メトキシ-2-プロパノール
【0166】
(重合率)
核磁気共鳴(NMR)測定装置(ブルカー・バイオスピン社製、型式:AVANCE500(周波数500MHz))を用いて、1H-NMRを測定(溶媒:CDCl3、内部標準:TMS)した。得られたNMRスペクトルについて、モノマー由来のビニル基とポリマー由来のエステル側鎖のピークの積分比を求め、モノマーの重合率を算出した。
【0167】
(重量平均分子量(Mw)および分子量分布(PDI))
高速液体クロマトグラフ(東ソー製、型式HLC-8320)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)より求めた。カラムはSHODEX KF-603(φ6mm×150mm)(SHODEX社製)を1本、移動相に10mmol/L臭化リチウム/10mmol/L酢酸/N-メチル―2-ピロリドン溶液、検出器に示差屈折計を使用した。測定条件は、カラム温度を40℃、試料濃度を20mg/mL、試料注入量を10μm、流速を0.2mL/minとした。標準物質としてポリスチレン(分子量427,000、190,000、96,400、37,400、10,200、2,630、906)を使用して検量線(校正曲線)を作成し、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を測定した。この測定値から分子量分布(PDI=Mw/Mn)を算出した。
【0168】
(アミン価)
アミン価は、固形分1gあたりの塩基性成分と当量の水酸化カリウム(KOH)の質量を表したものである。測定試料をテトラヒドロフランに溶解し、電位差滴定装置(商品名:GT-06、三菱化学社製)を用いて、得られた溶液を0.1mol/L塩酸/2-プロパノール溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として次式によりアミン価(B)を算出した。
B=56.11×Vs×0.1×f/w
B:アミン価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L塩酸/2-プロパノール溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L塩酸(2-プロパノール性)の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0169】
(酸価)
酸価は、固形分1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの重量を表わしたものである。測定サンプルをテトラヒドロフランに溶解し、得られた溶液に1.0w/v%フェノールフタレインエタノール(90)溶液を指示薬として数滴加え、0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液で中和滴定した。少し赤みが残るところを滴定終点として、次式により酸価を算出した。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化カリウム/エタノール溶液の力価
w:測定サンプル重量(g)(固形分換算)
【0170】
(粘度)
E型粘度計(商品名:TVE-22L、東機産業社製)を用い、コーンローター(1°34’×R24)を使用して、25℃下、ローター回転数60rpmで粘度を測定した。測定は、調製後、25℃で1時間保管した着色組成物について行った。
【0171】
(輝度)
表面を洗浄したガラス板(50mm×50mm)上に、スピンコーター(商品名:MS-A100、ミカサ社製)を用いて、厚さの異なる着色組成物の塗布膜3枚を形成し、90℃で10分間乾燥した。乾燥させた塗布膜を分光測色計(商品名:CM-5、コニカミノルタ社製)にてx、Y値を測定した。得られたx、Y値より検量線を作成し、x=0.265の時の補正Y値を算出した。塗布膜を230℃で30分間熱処理し、上記と同様に補正Y値を算出した。また、熱処理前後の補正Y値より、ΔYを算出した。
【0172】
(乾燥再溶解性)
表面を洗浄したガラス板(50mm×30mm)上に、25μmの厚さで着色組成物を塗布し、90℃で10分乾燥して塗布膜を形成した。次に、ガラス板を溶媒(PMA)に浸漬し、塗布膜の溶媒への溶解性を観察した。その溶解性を以下の基準により評価した。
○:浸漬10分以内に塗布膜がガラス板上から溶出している。
×:浸漬10分後に塗布膜がガラス板上からほぼ溶出せず、残っている。
【0173】
(アルカリ現像性)
表面を洗浄したガラス板(50mm×30mm)上に、25μmの厚さで着色組成物を塗布し、90℃で10分乾燥して塗布膜を形成した。次に、塗布膜を形成したガラス板を1%水酸化カリウム水溶液に浸漬し、塗布膜の1%水酸化カリウム水溶液(アルカリ水溶液)中への溶解性を観察した。その溶解性を以下の基準により評価した。
◎:浸漬5分以内に塗布膜がガラス板上から溶離している。
○:浸漬10分以内に塗布膜がガラス板上から溶離している。
×:浸漬10分後に塗布膜がガラス板上に残っている。
【0174】
<ブロック共重合体の合成>
(ブロック共重合体No.1)
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにBMA 46.0g、PCL5 137.9g、AIBN 0.82g、PMA 46.0gを仕込み、アルゴン置換後、BTEE 7.49g、DBDT 9.23gを加え、60℃で7.7時間反応させAブロックを重合した。重合率は99.6%であった。
【0175】
反応溶液に、予めアルゴン置換したDMAEMA 58.0g、MAm 8.00g、AIBN 0.41g、MP 16.5gの混合溶液を加え、60℃で8.0時間反応させ、Bブロックを重合した。重合率は99.6%であった。反応終了後、撹拌しているn-ヘプタン中に注いだ。析出したポリマーを吸引濾過、乾燥することによりブロック共重合体No.1を得た。得られたブロック共重合体No.1は、Mwが16,145、PDIが1.50、アミン価が84mgKOH/gであった。
【0176】
(ブロック共重合体No.2~8)
ブロック共重合体No.1の製造法と同様にして、ブロック共重合体No.2~8を作製した。表1に、使用したモノマー、有機テルル化合物、有機ジテルリド化合物、アゾ系重合開始剤、溶媒、反応条件、重合率を示した。また、表2に各ブロック共重合体の組成、Mw、PDI、アミン価を示した。なお、共重合体中の各構造単位の含有率は、重合反応に用いたモノマーの仕込み比率および重合率から算出した。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
<アルカリ可溶性樹脂の合成>
アルゴンガス導入管、撹拌機を備えたフラスコにMAA(40.0g)、BzMA(160.0g)、PMA(580.0g)を仕込み、アルゴン置換後、AIBN(4.0g)、n-ドデカンチオール(6.0g)、PMA(20.0g)を加え90℃まで昇温した。その溶液を90℃に保ちながら、その溶液にMAA(80.0g)、BzMA(320.0g)、AIBN(8.0g)、n-ドデカンチオール(12.0g)、PMA(50.0g)を1.5時間かけて滴下した。滴下が終了してから60分後、温度を110℃まで昇温し、AIBN(0.8g)、PMA(10.0g)を加えて1時間反応させ、さらにAIBN(0.8g)、PMA(10.0g)を加え1時間反応させ、さらにAIBN(0.8g)、PMA(10.0g)を加え1時間反応させた。
【0180】
得られた反応溶液を室温に冷却し、PMA(240.0g)を加え、不揮発分39.5%のアルカリ可溶性樹脂の溶液を得た。アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は9,150、分子量分布(PDI)は1.92、酸価は128mgKOH/gであった。
【0181】
<着色組成物の調製>
(着色組成物No.1)
顔料11質量部、分散剤(ブロック共重合体No.1)6質量部、アルカリ可溶性樹脂6質量部、PMA76質量部となるように配合組成を調製し、0.3mmジルコニアビーズ555質量部を加え、ビーズミル(商品名:DISPERMAT CA、VMA-GETZMANN GmbH社製)にて3時間混合し十分に分散させた。分散終了後、ビーズをろ別して着色組成物を得た。顔料には、C.I.Pigment Green 58(商品名:FASTOGEN(登録商標)GREEN A310、DIC社製)を用いた。得られた着色組成物の粘度、輝度、乾燥再溶解性およびアルカリ現像性を評価し、結果を表3に示した。
【0182】
(着色組成物No.2~8)
分散剤(ブロック共重合体)を変更したこと以外は着色組成物No.1の調製法と同様にして、着色組成物No.2~8を調製した。得られた着色組成物の粘度および輝度を評価し、結果を表3に示した。
【0183】
【表3】
【0184】
着色組成物No.1~3は、着色材としてポリハロゲン化金属フタロシアニン顔料、分散剤として、(メタ)アクリルモノマーに由来する構造単位を有するAブロックと、式(3)および(4)で表される構造単位を有するBブロックとを有するブロック共重合体を含有する。これらの着色組成物No.1~3の塗布膜は、熱処理前後のΔYの値が小さく、かつ、熱処理後の補正Y値が大きい。よって、これらの着色組成物No.1~3を使用すれば、高温に曝された場合でも輝度の低下を抑制できる着色層を形成できる。
【0185】
着色組成物No.4~8は、分散剤として使用するブロック共重合体が、式(4)で表される構造単位を有さない場合である。これらの着色組成物No.4~8の塗布膜は、熱処理前後のΔYの値が大きく、かつ、熱処理後の補正Y値が小さくなる傾向がある。よって、これらの着色組成物No.4~8により形成された着色層は、高温に曝されると輝度が大きく低下すると考えられる。
【0186】
また、着色組成物No1とNo.4との比較から、Bブロックに式(4)で表される構造単位を有することで乾燥再溶解性も向上する。