(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】エアゾール型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/891 20060101AFI20230301BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20230301BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230301BHJP
A61K 8/41 20060101ALI20230301BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20230301BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230301BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61K8/891
A61K8/895
A61K8/49
A61K8/41
A61K8/35
A61K8/02
A61Q17/04
(21)【出願番号】P 2018227529
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中山 小百合
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141919(WO,A1)
【文献】特開2018-008943(JP,A)
【文献】特開2017-071602(JP,A)
【文献】Have & Be, South Korea,Sun & Gun Sun Spray SPF 50+ PA+++,Mintel GNPD [online],2016年06月,Internet <URL:https://WWW.portal.mintel.com>,ID#4085643,[検索日:2022年5月25日], 製品情報, 製品詳細
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(
f);
(a)トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、及びアクリル-シリコーングラフト共重合体から選ばれる1種又は2種以上
(b)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(c)架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体及び/又はメチルシロキサ ン網状重合体
(d)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミ ノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt-ブチルメトキシジベンゾイルメタン から選ばれる1種又は2種以上
(e)25℃で液状であるIOB値0.15~0.35の油剤
(f)ジメチコジエチルベンザルマロネート
を含有する原液と、噴射剤とからなるエアゾール型化粧料。
【請求項2】
前記成分(a)がトリメチルシロキシケイ酸である請求項1に記載のエアゾール型化粧料 。
【請求項3】
前記成分(c)が架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体である請求項1 又は2に記載のエアゾール型化粧料。
【請求項4】
前記成分(e)が安息香酸アルキル(C12~15)である請求項1~3のいずれか1項 に記載のエアゾール型化粧料。
【請求項5】
前記原液中における含有質量割合(a)/(c)が0.3~2である請求項1~
4のいず れか1項に記載のエアゾール型化粧料。
【請求項6】
前記原液中における含有質量割合(b)/{(a)+(c)}が0.2~1である請求項 1~
5のいずれか1項に記載のエアゾール型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、シミやしわの原因となりうる紫外線への対策意識も高まり、紫外線量の多い夏に留まらず、一年を通して日焼け止め化粧料が使用されている。市場では、日焼け止め化粧料として、ミルク型、ジェル型、エアゾール型等多岐にわたる剤型が展開されている。中でもエアゾール型化粧料のスプレーの場合は、肌や髪の広範囲に塗布しやすく、また手の届きにくい部位にも容易に塗布できるため、使用性の高さが評価されている。
【0003】
一方、エアゾール型化粧料は、一般的に化粧膜が薄く、ヨレやすいといった機能面での課題や、油剤を多量配合した場合、ぬるつき感が顕著であるといった感触面での課題があった。従来より、有機シリコーン樹脂を配合して耐水性を向上させる技術(例えば特許文献1)や日焼け止め化粧料にトリメチルシロキシケイ酸を含有することにより、化粧持ちや耐水性を向上させる技術(例えば、特許文献2)が検討されてきたが、これらの技術では、被膜形成剤のぬるつきが顕著となり、感触面において、検討の余地があった。また、ぬるつき感を抑制する技術として噴射剤を含む皮膚化粧料に、数平均粒子径が1μm以上10μm以下の粉体を含有することにより、べたつきを抑制する技術(例えば、特許文献3)が検討されてきたが、ぬるつき感は抑制できるものの化粧膜がヨレやすく、膜の強度が低く、機能面において十分満足のいくものではなかった。
【0004】
さらに、エアゾール型化粧料は、容器内で、化粧料原液と噴射剤である液化ガスや圧縮ガスとが共存する、加圧された特殊環境であるため、凝集や粘度変化等が生じ易く、その結果、噴出口等で目詰まりが起こり、噴射性の低下や、不均一な噴射という使用性の問題につながっていた。そのため、容器内での原液や液化ガスの均一な分散性を保つことは重要な要素であり、エアゾール型化粧料は、常に一定に噴射されることにより、化粧膜が均一となり、紫外線防御能や耐摩擦性機能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-75414号公報
【文献】特開2018-8910号公報
【文献】特開2016-6029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコーン系被膜形成剤とシリコーン粉体を含有する化粧料原液に噴射剤を混合し、加圧環境下に置くと、被膜形成剤と粉体が凝集する場合があり、改善が求められていた。
従って本発明では、耐摩擦性に優れた塗布膜を形成し、粉体の分散性に優れ、ぬるつきのない使用性を有したエアゾール型化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者は鋭意研究を行った結果、化粧料原液と噴射剤からなる、トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン又はアクリル-シリコーングラフト共重合体と、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体又はメチルシロキサン網状重合体を含有するエアゾール型化粧料に、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物を配合することにより、前記課題を解決したエアゾール型化粧料が得られることを見出した。さらに、ジメチコジエチルベンザルマロネートを配合することにより、化粧料原液を噴射剤と混合・振盪した際の粉体の分散性がより向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(a)~(e);
(a)トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、及びアクリル-シリコーングラフト共重合体から選ばれる1種又は2種以上
(b)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物
(c)架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体及び/又はメチルシロキサン網状重合体
(d)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンから選ばれる1種又は2種以上
(e)25℃で液状である IOB値0.15~0.35の油剤
を含有する原液と、噴射剤とからなるエアゾール型化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアゾール型化粧料は、紫外線防御効果に優れ、耐摩擦性があり高く、ぬるつきのない使用感であり、さらに噴射剤と混合した際の粉体の分散性にも優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
本発明のエアゾール型化粧料は、成分(a)~(e)を含有する化粧料原液と噴射剤とを、耐圧バルブを有する容器に充填したものである。エアゾールとしては、使用目的に応じて、スプレー(霧状)、フォーム(泡状)等の形態に調製が可能であり、噴霧してそのまま、あるいは手で伸ばして使用するか、一旦、手に吐出させたものを肌に塗布して使用する。本発明においては、使用性の高さという観点から、スプレーの形態が好ましい。そのため、エアゾール型化粧料中の、化粧料原液と噴射剤との充填割合は、質量比で20:80~50:50が好ましく、25:75~45:55がより好ましい。この範囲であれば、エアゾール型化粧料としての使用性が良好であり、より均一に噴射することができる。
【0011】
(化粧料原液)
本発明に用いられる成分(a)トリメチルシロキシケイ酸、ポリメチルシルセスキオキサン、及びアクリル-シリコーングラフト共重合体(ジメチコンとアクリル酸、メタクリル酸、あるいはそれらのエステルとの共重合体)は、一種又は二種以上用いることができる。トリメチルシロキシケイ酸は、[(CH3)3SiO1/2]x[SiO2]yで表されるもの(Xは1~3、Yは0.5~8)等であり、市販品としてはKF‐9021、X-21-5249、X-21-5250、KF‐7312J(以上、信越化学工業社製)、SR1000(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)が挙げられる。またポリメチルシルセスキオキサンは、R1SiO1.5単位とR23SiO0.5単位(式中、R1、R2は置換または非置換の1価炭化水素基を表す)から成るシリコーン樹脂であり、市販品としては、SILFORM FLEXIBLE RESIN(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)が挙げられる。またアクリル-シリコーングラフト共重合体を溶剤に溶解したものとして、KP541、KP543、KP545(以上、信越化学工業社製)がある。
【0012】
本発明の化粧料原液における(a)の含有量は、耐摩擦性と化粧料原液の粉体の分散性の観点から、0.5~2質量%(以下、単に「%」と略す)が好ましく、1~1.5%がより好ましい。
【0013】
本発明に用いられる成分(b)部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物は、オルガノポリシロキサンを架橋結合させて得られる重合体であり、一部に三次元架橋構造を有し、RSiO単位及びRSiO1.5単位よりなり、RSiO0.5単位及び/又はSiO2単位を含んでいても良い。具体例としては、INCI(INTERNATIONAL NOMENCLATURE of COSMETIC INGREDIENTS)名が(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニルジメチコン)クロスポリマーである部分架橋型オルガノポリシロキサン重合体が挙げられる。成分(b)は、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合体として単独で配合しても良いが、油剤で膨潤せしめたシリコーンゲル組成物として用いることもでき、このような市販品としては、例えば、KSG-15(部分架橋型メチルポリシロキサンとデカメチルシクロペンタシロキサンとの混合物、固形分1~15%)、KSG-18(部分架橋型メチルフェニルポリシロキサンとフェニルトリメチコンとの混合物、固形分10~20%)(信越化学工業製)が挙げられる。
【0014】
本発明の化粧料原液における成分(b)の含有量は、0.2~4%が好ましく、0.5~3%がより好ましい。この範囲であれば、化粧料原液の粉体の分散性がより良好となり、ぬるつきのない使用感を実現できる。
【0015】
本発明の化粧料原液における成分(c)の架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体は通常の化粧料等に使用されるものであれば特に限定されない。具体的には、INCI名で、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー等を挙げることができ、市販品としては、例えば、KSP-100、101、102、105、300(何れも、信越化学工業社製)、トレフィルE505、E506、E701(何れも、東レ・ダウコーニング社製)、ガンツパールSIG-070(アイカ工業社製)等が挙げられる。また、メチルシロキサン網状重合体は、市販品としては、例えば、TOSPEARL 3000A(平均粒子径5μm)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)が挙げられる。粉体の分散性の観点から、架橋型シリコーン・網状型シリコーンブロック共重合体が好ましく、KSP-100(平均粒子径5μm)、101(平均粒子径12μm)等がより好ましい。成分(c)の平均粒子径は特に限定されないが、ぬるつきのない使用感の観点から1~30μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。平均粒子径は、例えば、レーザー散乱式粒度分布計(LA-960:HORIBA社製)を用い、体積平均粒子径(D50)として測定することができる。
【0016】
本発明の化粧料原液における成分(c)の含有量は、噴射剤と混合した際の粉体の分散性と塗布後のぬるつきのない使用感を得るという観点から1~4%が好ましい。
【0017】
本発明の成分(a)及び成分(c)について、含有質量割合は(a)/(c)が0.2~2.5であることが好ましく、0.3~2がより好ましい。この範囲であれば、耐摩擦性の効果を得られながら、ぬるつきのない使用感に優れる化粧膜を実現できる。
【0018】
本発明の成分(a)、成分(b)及び成分(c)について、含有質量割合は(b)/{(a)+(c)}が0.1~1.2であることが好ましく、0.2~1がより好ましい。この範囲であれば、粉体の分散性に優れた化粧膜が実現できる。
【0019】
本発明の化粧料原液における成分(d)は、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。また、紫外線防御効果の観点から、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを併用することが好ましい。
【0020】
本発明の化粧料原液における成分(d)の含有量は、1~10%が好ましく、2~6%がより好ましい。この範囲であると、紫外線防御効果に優れ、化粧料原液の安定性も良好である。
【0021】
本発明の化粧料原液における成分(e)は、25℃でIOB値0.15~0.35の液状の油剤であり、通常の化粧料等に使用されるものであれば特に限定されない。
【0022】
なお、本発明におけるIOB値とは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。
【0023】
本発明に用いられる成分(e)の25℃で液状であるIOB値0.15~0.35の油剤としては、モノエステル体、ジエステル体、及びトリエステル体等のエステル油を用いることもでき、例えば、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.15)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、オリーブ油(IOB=0.16)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、安息香酸アルキル(C12~15)(IOB=0.19)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.20)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB=0.26)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(IOB値=0.28) 、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール(IOB=0.32)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.35)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、等が挙げられ、一種又は二種以上を用いることができる。また、紫外線防御効果と粉体の分散性の観点からIOB=0.18~0.28が好ましく、安息香酸アルキル(C12~15)を含むことがより好ましい。
【0024】
本発明の化粧料原液における成分(e)の含有量は、特に限定されないが、30~60%が好ましく、40~50%がより好ましい。この範囲であれば、紫外線防御効果と粉体の分散性もより優れたものとなる。
【0025】
本発明の化粧料原液における成分(f)は、ジメチコジエチルベンザルマロネートは、INCI名がPOLYSILICONE-15で示され、鎖長約60のジメチコンのうち約7.5%が2種の置換基で置換されたシリコーン誘導体であり、それ自体が高い紫外線防御能を持ちながら、他の紫外線防御剤との相乗効果によりSPFやPAの数値を向上させることが知られている。本発明においては、成分(a)と成分(c)との凝集を抑制し、粉体の分散性向上やぬるつきのない使用感に寄与する。市販品としては、PARSOL SLX(DSM NUTRITION PRODUCTS社製)が挙げられる。
【0026】
本発明の化粧料原液における成分(f)の含有量は、特に限定されないが、1~6%が好ましく、2~4%がより好ましい。また、成分(a)及び成分(b)、成分(c)、成分(f)について、耐摩擦性、粉体の分散性、ぬるつきのない使用感の観点から、含有質量割合は{(b)+(f)}/{(a)+(c)}が1~3であることが好ましく、1.5~2.5がより好ましい。
【0027】
本発明の化粧料原液には、通常の化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、必要に応じて配合することが出来る。例えば、成分(b)、(e)以外の油性成分、水性成分、界面活性剤、成分(c)以外の粉体、水溶性高分子、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤等を含有することができる。
【0028】
油性成分としては、成分(b)、(e)以外の通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、いずれのものも使用することができ、固形、半固形、液状、揮発性等の性状や、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、紫外線吸収剤も含むエステル油類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類、油溶性樹脂等が挙げられる。
【0029】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、グルコースなどの糖アルコール類、等が挙げられる。水としては、特に制限されず、常水、精製水、温泉水、深層水、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられ、一種又は二種以上を用いることができる。
【0030】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であれば、いずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、夏場に汗をかいた時の紫外線防御効果の持続性や各成分の分配に影響しにくいとの観点から、非イオン性界面活性剤であるポリエーテル変性シリコーンを選択することが好ましい。具体例としては、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン共重合体として、例えばPEG-9ジメチコン(市販品としては、例えば「KF-6019」信越化学工業社製)、シリコーン分岐型ポリオキシアルキレン変性シリコーンとして、例えばPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(市販品としては、例えば「KF-6028」信越化学工業社製)、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(市販品としては例えば「KF-6038」信越化学工業社製)、シリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンとして、例えばラウリルポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(市販品としては例えば「KF-6105」信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の化粧料原液の製造方法は、特に限定されるものではなく常法により調製されるが、例えば、油相中に水相を分散乳化することによって得られる。また、粉体は、予め油性成分または水性成分に充分に分散させた後、乳化を行っても良い。
【0032】
本発明の化粧料原液は、エアゾール型化粧料として噴射可能な性状であればよく、水中油乳化型であっても、油中水乳化型であっても良いが、油中水乳化型の方が、耐水性や紫外線防御効果に優れるため好ましい。また、一層型であっても、液相や粉体相が分離している二層(多層)型であっても良い。
【0033】
(噴射剤)
本発明に用いられる噴射剤としては、炭素数2~5の炭化水素及びジメチルエーテル(以下、「DME」と記すことがある。)、ジエチルエーテル等の液化ガス類、炭酸ガス、窒素ガス、酸素等の圧縮ガス類が挙げられる。炭素数2~5の炭化水素としては、具体的に、エタン、プロパン(以下[LPG」と記すことがある。)、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、エアゾール容器内で、長期にわたる安定性を維持する点で、炭素数2~5の炭化水素を用いることが好ましい。また、高温下での安全性の観点から、20℃での圧力を0.15MPaに調整したプロパン(以下、「LPG0.15」と記すことがある。)が好ましい。
【0035】
本発明のエアゾール型化粧料の充填方法としては、特に限定されないが、常法により調製した前記化粧料原液を耐圧容器に充填し、容器にエアゾールバルブを固着した後、該バルブを通じて噴射剤を注入する。更に、前記エアゾールバルブに目的に応じた噴射部材を取り付けることによりエアゾール型化粧料となる。
【0036】
本発明のエアゾール型化粧料は、日焼け止め化粧料、ファンデーション、コンシーラー、メークアップ下地などのメイクアップ化粧料、ボディー用や毛髪用の化粧料等に好適に用いることができ、特に好ましくは日焼け止め化粧料に用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
実施例1~16、比較例1~11:エアゾール型日焼け止め化粧料
表1~3に示す組成(化粧料原液)及び下記製造方法にてエアゾール型の日焼け止め化粧料を調製した。得られた日焼け止め化粧料の紫外線防御効果、耐摩擦性、ぬるつきのなさ、粉体の分散性について下記の方法により評価し結果を併せて、表1~3に示した。
【0038】
【表1】
(*1)KSG-18(信越化学工業社製)15%固形分
(*2)KSG-15(信越化学工業社製)5%固形分
(*3)KSP-100(信越化学工業社製)平均粒子径3~8μm
(*4)TOSPEARL 3000A(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)平均粒子径3~9μm
(*5)KF-6028P(信越化学工業社製)
(*6)KP-545(信越化学工業社製)
(*7)SILFORM FLEXIBLE RESIN(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン)
【0039】
【0040】
【0041】
(製造方法)
A:成分(15)~(21)を加熱し均一に溶解する。
B:成分(8)~(14)を混合する。
C:A及びB、(1)~(7)を混合し均一に分散する。
D:Cと成分(22)~(24)を混合し均一に分散する。
E:成分(25)~(27)を混合する。
F:DにEを加えて分散し、油中水乳化型の化粧料原液を得た。
G:Fで得られた化粧料原液30gを耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 70gを耐圧容器に充填し、エアゾール型の日焼け止め化粧料を得た。
【0042】
(評価方法:(イ)紫外線防御効果)
各試料を、PMMA板に2mg/cm2塗布後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行った。
(a)3段階評価基準
(評価) :(判定)
SPF値=30以上 :○
SPF値=15以上30未満 :△
SPF値=15未満 :×
【0043】
(評価方法:(ロ)耐摩擦性)
前記の各試料を、PMMA板に2mg/cm2塗布後、20分静置したサンプルについて、SPFアナライザー(Labsphere社製 UV-2000S)を用いたSPF測定を行い、摩擦前SPF値を測定した。次に摩擦を行った。摩擦条件はテクスチャーアナライザー TA.XT PLUS(英弘精機社製)を用いて、治具の先端にタオル生地を固定化し、一定の荷重をかけて往復で3回左右に動かした。摩擦完了後、前記SPFアナライザーを用いて、摩擦後SPF値を測定した。得られた摩擦前後でのSPF値を元に、耐摩擦性を下記評価基準にて4段階評価し判定した。
(a)4段階評価基準
(評価) :(判定)
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.7以上 : ◎
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.5以上0.7未満 : ○
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.3以上0.5未満 : △
(摩擦後SPF測定値)/(摩擦前SPF測定値)=0.3未満 : ×
【0044】
(評価方法:(ハ)ぬるつきのない使用感)
専門評価パネル20名に、前記の各試料を前腕に塗布してもらい、使用時のぬるつきについて、下記評価基準にて4段階評価し判定した。
<4段階評価基準>
(評価) :(判定)
ぬるつきが全く無い :4点
ぬるつきがほとんど無い :3点
ぬるつきがある :2点
ぬるつきが非常にある :1点
[評点の平均点] :[判定]
3.25以上 : ◎
2.5以上3.25未満 : ○
1.75以上2.5未満 : △
1.75未満 : ×
【0045】
(評価方法:(ニ)粉体の分散性)
各試料をガラス製の耐圧ビンに入れ噴射剤を封入し、耐圧ビンを5回振った後の粉体の分散状態を観察し、下記4段階判定基準を用いて判定した。なお、エアゾール化粧料の通常使用においては、振盪後、噴射終了までにかかる時間は10秒と想定している。
<3段階判定基準>
(評価) :(判定)
沈降するまでの時間7秒超 :◎
沈降するまでの時間5~7秒 :○
沈降するまでの時間5秒未満、分散しない :×
【0046】
実施例1~16の日焼け止め化粧料は、紫外線防御効果に優れ、耐摩擦性が高く、ぬるつきのない使用感であり、また原液と噴射剤を混合した際の粉体分散性に優れた日焼け止め化粧料であった。これに対して、成分(a)を異なる被膜形成剤に替えた比較例1~4は、粉体分散性が悪く、耐摩擦性も劣るものであった。成分(b)を含有しない比較例5は、粉体分散性に劣るものであった。成分(c)をシリカやメタクリル酸メチルクロスポリマーに替えた比較例6、7は粉体分散性やぬるつきのない使用感の点で劣るものであった。成分(d)を含有しない比較例8は紫外線防御能が劣るものであった。成分(e)を含有しない比較例9、IOB値を0.15未満0.35超の油剤に替えた比較例10、11は紫外線防御能及び粉体分散性の点で劣るものであった。
【0047】
実施例17:下地化粧料
(成分) (%)
1.アクリル-シリコーングラフト共重合体(*6) 1
2.イソドデカン 3
3.ジカプリン酸プロピレングリコール 5
4.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 3
5.t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン 2
6.メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 8.5
7.部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物(*2) 0.15
8.ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(*8) 1
9.エタノール 40
10.精製水 1
11.メチルシロキサン網状重合体(*4) 3
12.ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.01
13.1,3ブチレングリコール 残量
14.香料 適量
(*8)KF-6038(信越化学工業社製)
【0048】
(製造方法)
A:成分(1)~(2)を均一に分散する。
B:成分(3)~(6)を加熱溶解し、均一に分散する。
C:Bを室温に冷却した後、成分(7)~(8)を加え、均一に分散する。
D:Cに成分(9)~(14)を加え、均一に撹拌し、化粧料原液を得た。
E:得られた化粧料原液20gをアルミ製耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 20gおよびジメチルエーテル 10gを耐圧容器に充填し、エアゾール型の下地化粧料を得た。
(結果)
実施例17の下地化粧料は、ぬるつきのない使用感であり、紫外線防御効果や耐摩擦性、粉体の分散性に優れたものであった。
【0049】
実施例18:ファンデーション
(成分) (%)
1.トリメチルシロキシケイ酸 1.5
2.デカメチルシクロペンタシロキサン 7
3.テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル 8
4.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 4
5.メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7
6.ジメチコジエチルベンザルマロネート 2
7.部分架橋型フェニル変性オルガノポリシロキサン重合物(*1) 2
8.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(*5) 1.5
9.メチルパラベン 0.1
10.エタノール 10
11.精製水 残量
12.水溶性コラーゲン 0.01
13.グリセリン 3
13.黄酸化鉄 0.6
14.ベンガラ 1.5
15.赤酸化鉄 0.4
16.(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)
クロスポリマー(*3) 0.2
【0050】
(製造方法)
A:成分(1)~(2)を均一に分散する
B:成分(3)~(5)を加熱溶解し、均一に分散する。
C:Bを室温に冷却した後、AにB、成分(6)~(8)、成分(13)~(16)を加え、均一に混合分散する。
D:Cに成分(9)~(13)を加え、乳化し、原液を得た。
E:Dで得られた原液15gをアルミ製耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 25gおよびジメチルエーテル 10gを耐圧容器に充填し、エアゾール型ファンデーションを得た。
(結果)
実施例18のファンデーションはぬるつきのない使用感であり、紫外線防御効果や耐摩擦性、粉体の分散性に優れたものであった。