(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】導電層および電子センサを備えた装飾複合体
(51)【国際特許分類】
A44C 25/00 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
A44C25/00 Z
(21)【出願番号】P 2018535051
(86)(22)【出願日】2016-12-19
(86)【国際出願番号】 EP2016081773
(87)【国際公開番号】W WO2017118567
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-11-01
(32)【優先日】2016-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511237737
【氏名又は名称】デー.スワロフスキー カーゲー
【氏名又は名称原語表記】D.Swarovski KG
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガップ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ショルツ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】レーバー,アンネマリー
(72)【発明者】
【氏名】マイア,マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】レクサー,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】アルテンベルガー,エルンスト
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202345263(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0267183(US,A1)
【文献】特開2010-246854(JP,A)
【文献】登録実用新案第3095667(JP,U)
【文献】国際公開第2016/108938(WO,A1)
【文献】特開平11-133203(JP,A)
【文献】米国特許第06197428(US,B1)
【文献】特開2014-188164(JP,A)
【文献】特開2003-232875(JP,A)
【文献】特開2010-151511(JP,A)
【文献】国際公開第2010/075599(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾部品であって、
(a)宝石と、
(b)宝石の少なくとも一部の領域の上に設けられた導電層と、
(c)宝石の導電層とは反対側に設けられかつ導電層に接続された評価センサシステムと、を備え、
使用時において、導電層に触られることで評価センサシステムの機能が起動され
、
宝石は、ファセットカットされた、装飾部品。
【請求項2】
導電層は、Cr、Ti、Zr、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化ガリウム亜鉛、酸化チタン亜鉛、フッ素ドープ酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化タンタルスズ、酸化チタンニオブ、またはこれらの化合物の任意の順序による任意の組み合わせからなる群から選択された少なくとも一種の化合物を含む、請求項1に記載の装飾部品。
【請求項3】
導電層は透明である、請求項1または2に記載の装飾部品。
【請求項4】
導電層は、宝石の少なくとも2つの分離した領域に設けられた、請求項1~3のいずれか1項に記載の装飾部品。
【請求項5】
評価センサシステムは、電子センサを有し、
電子センサは、静電容量式センサまたは電気抵抗式センサである、請求項1~4のいずれか1項に記載の装飾部品。
【請求項6】
宝石はガラスまたはプラスティックで成形された、請求項1~5のいずれか1項に記載の装飾部品。
【請求項7】
宝石は、平凸領域または平凸凹領域を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の装飾部品。
【請求項8】
波長選択層が宝石の少なくとも一部の領域に設けられた、請求項1~
7のいずれか1項に記載の装飾部品。
【請求項9】
波長選択層は、誘電コーティングである、請求項
8に記載の装飾部品。
【請求項10】
誘電コーティングは、少なくとも1つの金属化合物を含む、請求項
9に記載の装飾部品。
【請求項11】
宝石は透明である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の装飾部品。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の装飾部品であって、
a)ファセットカットされたガラス製の宝石と、
b)酸化インジウムスズからなる導電層と、
c)SiO
2層およびTiO
2層の積層構造を有する波長選択層と、
d)電子センサと、を備えた装飾部品。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の装飾部品を用いて電子デバイスの機能を制御するための方法であって、
a)装飾部品を準備する工程と、
b)指またはスタイラスを用いて、導電層に接触する工程と、
c)前記接触により、評価センサシステムの機能を起動させる工程と、を備えた方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宝石、および宝石の少なくとも一部の領域上の導電層を備えた装飾部品(装飾エレメント)に関する。装飾部品は、電子的に機能を制御するのに適したものである。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、宝石は、アクセサリおよび織物において、ほとんど専ら純粋に審美的な目的のために利用されてきたが、機能的な効果を備えるものは、あまりなかった。ウェアラブル(装着可能)な電子機器(いわゆる「ウェアラブル技術」)は、ユーザが審美性より機能性を追求するあまり、急速に成長する可能性のある市場を見失いつつある。機能的な宝石は、一般に、実現可能であるが、機能性および審美性が要求される場合には特に電子デバイスの機能制御が課題となる。タッチスクリーン等として知られている接触感応式(タッチセンサー式)の電子回路は、指またはスタイラスを用いて、電子デバイスの心地よい機能制御性を実現するものである。電子デバイスの入力インターフェイスは、機能を起動させるタッチ(接触感覚)を与えるデバイス部品である。入力インターフェイスとして機能するとともに、デバイスの接触感応式の正確な操作性を実現する宝石は存在しない。
【0003】
米国特許第7,932,893号明細書には、コンピュータのカーソルを制御する機能を有する接触感知式センサを備えた腕時計が開示されている。
【0004】
米国特許第6,868,046号明細書には、静電容量式の鍵を備えた腕時計が開示されている。静電容量式の鍵は、指を用いて手動で操作され、時計の針を制御することが記載されている。
【0005】
国際特許出願公開第2010/075599号明細書には、透明導電層で被膜された透明材料で構成された本体部が開示されている。透明導電層を用いて、無機半導体チップのLEDに導通させる。
【0006】
米国特許出願公開第2006/0280040号明細書には、透明導電層が腕時計のガラスの内面に被膜され、その端部にエナメルが被膜された腕時計が開示されている。この構造は、短絡を防止するための者と考えられる。
【0007】
欧州特許出願公開第1 544 178号は、透明電極および多層構造体を備えた透明部品が開示されている。多層構造体を構成する1つの層が透明導電層である。多層構造体は、互いに重なりあい、反射防止層として機能するものである。
【0008】
仏国特許出願公開第1221561号明細書には、リン光性発光材料を用いて照明可能な装飾部品が開示されている。
【0009】
これまで、電子デバイスの機能を制御するのに適した宝石を提供する技術的手段は存在しなかった。本発明の目的は、電子デバイスの機能を制御することができる装飾部品を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第7,932,893号明細書
【文献】米国特許第6,868,046号明細書
【文献】国際特許出願公開第2010/075599号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0280040号明細書
【文献】欧州特許出願公開第公開第1 544 178号明細書
【文献】仏国特許出願公開第1221561号明細書
【発明の概要】
【0011】
本発明に係る第1の主題は、装飾部品に関し、この装飾部品は、
(a)宝石と、
(b)宝石の少なくとも一部の領域の上に設けられた導電層と、
(c)電子センサと、を備える。
【0012】
さらに本発明は、電子デバイスの機能を制御するための方法に関し、この方法は、
a)導電層で被膜された宝石を準備する工程と、
b)指またはスタイラスを用いて、導電層に接触する工程と、
c)前記接触により、評価センサシステムの機能を起動させる工程と、を備えた方法。
【0013】
導電層で被膜された宝石を用いて、例えばスマートフォンやラップトップコンピュータで知られた静電容量式タッチスクリーン、タッチパッド、またはトラックパッドに接合した後、電子デバイスの機能を制御することができる。好適には、機能を制御するための電子センサは、上述のタッチスクリーン、タッチパッド、またはトラックパッドに内蔵されている。本発明のさらなる可能性のある好適な用途として、導電層が評価センサシステムに直接的に接続される(後述)。こうした構造を有する装飾部品は、幅広い用途に適している。ブレスレット、リング(指輪)、ネックレス、またはブローチ等のジュエル(宝石類)が電子デバイスを含み、本発明に係る装飾部品は、機能制御のための電子センサをさらに備える。また本発明は、装飾部品を含む物品に関する。装飾部品は、例えばいわゆる「アクティビティ・トラッカー(活動量計)」に利用することができ、本発明は、こうした装飾部品の利用にも関する。さらなる可能性のある用途については、後述する。さらに本発明は、電子デバイスの機能を制御する装飾部品の利用に関する。
【0014】
驚くべきことに、導電層を有する宝石、および入力インターフェイスとしての電子センサの組み合わせは、例えばディスプレイの明るさ調整等、さまざまな用途に適している。本発明の上記組み合わせは、機能制御するための入力インターフェイスおよび宝石の両方として、意匠的および技術的な分野において広範な可能性のある用途を提供する。導電層を有する宝石によれば、指または導電性スタイラスで導電層を触ることにより、電子デバイスの機能を制御することができる。例えば金属層や透明な導電性酸化物層等、さまざまな材料からなる複数の層を導電層として構成してもよい(後述)。好適には、宝石の彩色が視認できるように、導電層は透明である。本発明によれば、好適にも、宝石は透明であり、輝き(ブリリアンシー)を得ることができる。輝きの性能により、宝石はきわめて審美的な効果を実現する。本発明において、透明な導電層および透明な宝石の組み合わせは特に好ましい。
【0015】
好適には、波長選択層は、宝石の少なくとも一部の領域の上にさらに設けられる。透明な宝石に透明導電層および波長選択層を組み合わせると、宝石の輝き(ブリリアンシー)が改善される。「透明性」という用語は、電磁波を透過させる物質の特性を意味する(透過率)。物質が、それなりの広い範囲の波長領域の入射電磁放射線(光子)に対して透明である場合、放射線は材料をほぼ完全に透過することができ、すなわちほとんど反射せず、ほとんど吸収されない。本発明によれば、「透明性」は、入射光の少なくとも60%、好適には70%を超える、より好適には80%を超える透過率を意味する。また宝石に、ミラーコーティングを設けてもよい。ミラーコーティングは、例えば、湿式化学プロセスによって形成された銀の層であってもよい。適当ならば、ミラーコーティングは波長選択層として機能させてもよい。
【0016】
本発明によれば、好適には「ファセット(ファセットカット)」された宝石を利用する。本発明によれば、「ファセット(ファセットカットすること)」とは、多角形またはいわゆるn角形(n>3)を有するように宝石の表面のデザインすることを意味し、ファセットは、通常、ごつごつとした結晶を研磨することによって成形されるが、プレス方法によっても成形することができる。
【0017】
本発明によれば、宝石は、平凸形状または平凸凹形状を有し、宝石を平坦な領域で容易に配置することができるので好ましい。湾曲した凸領域または凹凸領域により、装飾部品の快適な操作が支援され、装飾部品の審美性が担保される。「凸状」および「凹状」の用語は、ファセット面の上または下の仮想的な包絡線に関連するものであり、その定義は、光学分野のレンズを類推することにより理解される。凸状領域および凹状領域は、対称的または非対称的であってもよい。
【0018】
装飾部品(複合体)の可能性のある構造として、
図1、
図2(a)~(d)、および
図3(a)~3(b)に図示され、参照符号(1)~(14)は以下の構成要素を示す。
(1)装飾部品
(2)宝石
(3)波長選択コーティング
(4)接着剤
(5)透明導電層
(5.1)~(5.6)導電層の部分的領域
(6)導電接続部
(7)評価センサシステム
(8)ポゴピンによる接触(接続)
(9)宝石台座による接触(接続)
(10)導電接着剤による接触(接続)
(11)導電性フィルム、金属ミラーリングまたは導電性エラストマによる接触(接続)
(12)指またはスタイラスによるタッチ(接触)
(13)矢印方向の動き
(14)変更された矢印方向の動き
【0019】
好適には、装飾部品は、透明なファセットカットされたガラス製の宝石、および透明な導電層を備える。特に好適な実施形態では、装飾部品は、透明なファセットカットされたガラス製の宝石、酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明な導電層、さらにSiO2層およびTiO2層の積層構造を有する波長選択層を備える。より好適な実施形態では、装飾部品は、電子センサさらに備える。
【0020】
本発明によれば、好適には、導電層は、宝石の適当な凸/凹の湾曲表面に設けられる(
図1)。本発明によれば透明導電層(5)は、本発明では空間的に分離して積層されるため、
図1では不連続に図示されている(後述)。波長選択コーティング(後述)は、凸/凹の湾曲表面とは反対側の(湾曲表面に対向する)平坦な表面の上、すなわち平凸凹形状または平凸形状の宝石の裏面(
図1)に設けられることが好ましい(後述)。
【0021】
装飾部品を評価センサシステム(後述)に接続することにより、電子デバイスの機能を制御することができる。導電層を、指または電気的に導電性のスタイラスで触ることにより、電子デバイスの機能を制御する信号を生成することができる。特に、ウェアラブル電子デバイスにおいて、電子デバイスの寸法が小さいことから、その機能を制御することは、1つの課題となっている。本発明に係る装飾部品は、輝度を増大させるとともに、併せて明確な入力インターフェイスを提供するものである。ただし、本発明に係る装飾部品は、ウェアラブル電子デバイスの分野に限定されるものではない。機能性および審美性が所望される場合に、こうした装飾部品を利用することが考えられる。例えば、照明スイッチとして装飾部品を利用することが考えられる。このような場合、装飾部品を触ることにより、照明をスイッチオンまたはスイッチオフし、さらに照度調整機能が実現される。一般に、テレビジョンセット、ラジオ、またはメディアプレーヤ等の電子デバイス部品の機能を、装飾部品を用いて制御することができる。
【0022】
装飾部品の別の用途は、例えばリング(指輪)およびイヤリングであり、これらは宝石として機能すると同時に、電子デバイスの機能を制御することができる。すなわち、例えば本発明に係る装飾部品を備えたリングを用いて、特定の身体機能を測定することができる。例えばスイッチオン機能、スイッチオフ機能、異なる動作モード間のスイッチング機能等、さまざまな機能制御の可能性を想定することができる。
【0023】
本発明に係る装飾部品を用いて、例えば、RGB-LEDを用いた宝石の色彩変化、いわゆるスマートウォッチのディスプレイ機能等、いわゆる切替可能な効果を得るように機能制御することができる。切替可能な効果は、装飾部品および適当な評価センサシステム(後述)を用いて、装飾部品の導電層を指等で触ることにより制御することができる。また装飾部品の透明導電層を触ることにより、例えば宝石の色彩を変化させることができる。
【0024】
例えばスマートウォッチまたは活動センサ(活動量計)の機能を制御するために、1つまたは複数の装飾部品をブレスレットと一体化してもよい。複数の装飾部品が設けられた場合、それぞれの装飾部品を用いて機能を制御してもよい。例えばケーブルを用いて、機能を制御するために、装飾部品を互いに電気的に接続して、複数の装飾部品を連続的に触った場合にのみ、例えばディスプレイの明るさや、スピーカの音量を調整するといった機能を(後述)制御することができる。
【0025】
[宝石]
宝石は、例えば、ガラス、プラスティック、セラミックまたは宝石もしくは半貴石等、さまざまな材料で成形することができる。ガラスまたはプラスティックで成形された宝石は、最も安価であり、最も容易に加工することができるので、本発明では好ましい。本発明ではガラスを使用することが特に好ましい。ファセットカットされたガラス製の宝石が特に好ましい。宝石は、凸状または凸凹状に湾曲した領域を有する。これは、ファセット面上の凸状湾曲領域に加えて、凹状領域も存在し得るということを意味する。宝石のファセット面とは反対側の表面は、(好適には)平坦であるか、あるいは凹状である。特に好ましいのは、凸状、特に平凸形状の宝石である。
【0026】
[ガラス]
本発明は、原則的に、ガラスの組成に限定されない。「ガラス」とは、非晶質固体を構成する凍結した過冷却液体を意味する。本発明によれば、酸化物ガラスならびにカルコゲナイドガラス、金属ガラスまたは非金属ガラスの両方を利用することができる。オキシ窒化物ガラスもまた適している。ガラスは、一成分ガラス(例えば、石英ガラス)、二成分ガラス(例えば、ホウ酸アルカリガラス)または多成分(ソーダ石灰ガラス)ガラスであってもよい。ガラスは、溶融法、ゾル-ゲル法、または衝撃波によって作製することができる。これらの方法は当業者に知られている。本発明によれば、無機ガラス、特に酸化物ガラスが好ましい。これらには、ケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラスまたはリン酸塩ガラスが含まれる。鉛フリーガラスが特に好ましい。
【0027】
宝石を作製するためには、ケイ酸塩ガラスが好ましい。ケイ酸塩ガラスは、一般に、そのネットワークが主に二酸化ケイ素(SiO2)によって形成されている。アルミナまたはさまざまなアルカリ酸化物等のさらなる酸化物を添加することによって、アルモシリケートガラスまたはアルカリシリケートガラスが形成される。五酸化リンまたは三酸化ホウ素が、ガラスの主なネットワーク形成物質であるとき、こうしたガラスは、それぞれリン酸塩ガラスまたはホウ酸塩ガラスと呼ばれ、その特性は酸化物をさらに添加することによって調整することもできる。本発明において、これらのガラスも同様に利用することができる。上述のガラスは主に酸化物からなるため、総称して酸化物ガラスと呼ばれる。
【0028】
本発明に係る好適な実施形態において、ガラス組成物は以下の成分を含む。
(a)約35%~約85重量%のSiO2
(b)0~約20重量%のK2O
(c)0~約20重量%のNa2O
(d)0~約5重量%のLi2O
(e)0~約13重量%のZnO
(f)0~約11重量%のCaO
(g)0~約7重量%のMgO
(h)0~約10重量%のBaO
(i)0~約4重量%のAl2O3
(j)0~約5重量%のZrO2
(k)0~約6重量%のB2O3
(l)0~約3重量%のF
(m)0~約2.5重量%のCl
【0029】
上述の各重量%は、任意的なさらなる組成物と併せて、合計100重量%となると理解されたい。宝石のファセットカットは、通常、当業者が十分に精通している研磨技術および仕上加工技術によって行われる。
【0030】
例えば、鉛フリーガラス、特にスワロフスキー社がChessboard Flat Backs(カタログ番号2493)に使用しているガラスは、380~1200nmの波長領域で95%を超える透過率を有し、本発明において適したものである。
【0031】
[プラスティック]
(a)宝石を作製するための別の原材料として、プラスティックを用いることができる。透明なプラスティックは、本発明において好ましい。
なかでも、以下の材料が本発明において適している。
・アクリルガラス(ポリメチルメタクリレート、PMMA)
・ポリカーボネート(PC)
・ポリ塩化ビニル(PVC)
・ポリスチレン(PS)
・ポリフェニレンエーテル(PPO)
・ポリエチレン(PE)
・ポリ-N-メチルメタクリルイミド(PMMI)
【0032】
ガラスに比してプラスティックの利点は、とりわけ比重が小さいことであり、ガラスの約半分の比重しかない。他の材料特性も選択的に調節することができる。さらにプラスティックは、ガラスに比べ、加工がより容易である場合が多い。欠点としては、ガラスと比較して、弾性率が低く、表面硬度が低く、さらには約70℃以上の温度で強度が大幅に低下することである。本発明に係る好適なプラスティックは、ポリ-N-メチルメタクリルイミドであり、これは、例えばEvonik社のPleximid(登録商標)TT70として市販されている。Pleximid(登録商標)TT70は、1.54の屈折率、およびD65標準光を用いたISO 13468-2に従って測定したとき91%の透過率を有する。
【0033】
[形状]
宝石のデザイン形状は、原則的には制限されず、主にデザインの態様に依存する。宝石は、好ましくは正方形、矩形または円形である。宝石は、好ましくは凸形状、特に平凸状を有する。好適には、宝石は、好ましくは凸状湾曲面上に複数のファセット面(ファセットカットされた面)を含む。
【0034】
ファセット面のタイプは、宝石の形状に深く関係する。ファセット面の幾何学的形状は、原則的には限定されない。本発明によれば、正方形または矩形の形状で、平凸の幾何学的形状を有する宝石と組み合わせた、正方形または矩形のファセット面が好ましい。ただし、ファセットカットされ、丸みを帯びた宝石を用いてもよい。
【0035】
[センサ]
指または導電性スタイラスを用いた電子デバイスの機能の制御は、例えばタッチスクリーン等に用いられる接触感応式の電子回路によって実現することができる。接触感応式の電子回路として、さまざまな電子センサが適している。好適には、本発明によれば、電子センサとして、電気抵抗式センサまたは静電容量式センサ、より好適には静電容量式センサが用いられる。静電容量式センサは、コンデンサおよび入力インターフェイスを有する電子部品を備える。装飾部品における入力インターフェイスは、導電層を有する宝石である。指または導電性スタイラスを用いて、入力インターフェイスを触ると、コンデンサの静電容量が変化する。こうした変化を電気的に検出し、別の電子制御部品を用いてさらに処理する。静電容量式センサおよび別の電子制御部品は、「評価センサシステム」と呼ばれる。導電層は、評価センサシステムに接続されることが好ましい。こうして、装飾部品の極めて良好な操作性が実現される。
【0036】
電気抵抗式センサおよび静電容量式センサの実施形態は、当業者に広く知られている。電気抵抗式センサは、2つの分離した電気コンタクト表面を含む電子部品を備える。2つの分離した電気コンタクト表面は、導電層で被膜された宝石に接続される。電気抵抗式センサにおいて、指または導電性スタイラスで宝石を触ると、電流が流れる。電流は。電気的に検出することができる。制御信号としての電流を検出すると、電子デバイスの機能を制御することができる。電気抵抗式センサとして、例えばダーリントントランジスタが適している。
【0037】
入力インターフェイスとこれらのセンサとの接続は、電気的な導通により実現される(
図1および
図2a~
図2d)。これには、機能制御に悪影響をもたらさないという利点がある。本発明によれば、例えばポゴピンを用いて(
図2a)、電気的に導通させることができる。ポゴピン(8)は、宝石上の導電層にばね圧力によって、導電層とセンサとの間を電気的に導通させることができる。択一的には、導電性の宝石台座を用いて(
図2b)、導通させてもよい。例えば、宝石台座(9)の導電性部分は、宝石を保持する機能を有する。導電層と宝石台座の導電性部分とを接続することにより、導通させることができる。
【0038】
択一的には、例えば3M社(登録商標)から市販されている型番5303 R-25μ、型番5303 R-50μの導電性接着剤(
図2c)、3M社(登録商標)から市販されている型番7379の異方性導電フィルムもしくは導電性エラストマ(
図2d)、またはFuji Polymer Industries社から市販されているSilver Zebra(登録商標)コネクタが、電気的な導通手段徒死して適している。ワイヤ接続を用いて、電気的な導通を実現してもよい。電気的導通のための可能な手段は、当業者に知られている。
【0039】
[プッシュ式およびスライド式の入力]
導電層を用いた評価センサシステムの機能制御は、さまざまな方法で実現することができる。1つの実施形態は、プッシュ式の入力手段である。プッシュ式の入力手段は、例えば評価センサシステムの機能である電子デバイスのスイッチオンまたはスイッチオフを、指または導電性スタイラスで導電層に触ることにより作動させることができる。プッシュ式の入力手段では、宝石の全体表面を導電層で覆う必要はない。導電層は、宝石の表面の一部領域のみを覆うものであってもよい(
図3aおよび
図3b)。
【0040】
例えば、導電層が宝石の表面の少なくとも2つの絶縁された領域に配置された場合(
図3aおよび
図3bの破線で図示)、および2つの絶縁された領域が異なる機能を有する場合、導電層の各領域と評価センサシステムとの間を電気的に導通接触させることが必要である(
図1)。例えば、一方の領域は、電子デバイスのスイッチオンおよびスイッチオフを機能させ、他方の領域は、例えば動作モード間の切替を可能にするものであってもよい。これは、機能制御に関する数多くの可能性をもたらすものである。装飾部品は台座に備え付けられる場合が多いので、例えば(上述の)台座を介して、導通接触を実現してもよい。導通接触は、当業者により広く知られている(上記参照)。
【0041】
スライド式の入力手段は、機能制御の別の可能性である。このタイプの入力手段では、導電層を湾曲したファセット面の少なくとも2つの分離した領域に配置する必要がある(
図3aの破線で囲った矩形領域5.1および5.2、
図3bの破線で囲った矩形領域5.3、5.4、5.5、および5.6を参照)。複数の分割領域を予め設定された順序で指または導電性スタイラスによって触ることにより機能制御することができる(
図3aおよび
図3bの参照符号12)。指または導電性スタイラスは、矢印の方向に動く(
図3aおよび
図3bの参照符号13,14)。この簡単な入力方法は、スマートフォンでも知られている。当業者に広く知られたさまざまな方法により(上記参照)、導電層と評価センサシステムとの間を電気的に導通接触させることができる。
【0042】
したがって、プッシュ式およびスライド式の入力手段の両方において、少なくとも2つの分離した領域に配置された透明導電層は、簡単な機能制御である点で有用である。したがって、導電層は、宝石の表面の少なくとも2つの分離した領域に配置されることが好ましい。また、プッシュ式およびスライド式の入力手段、例えば空間的に分離した領域5.3、5.4および5.6によるスライド式の入力手段と、領域5.5によるプッシュ式の入力手段とを1つの装飾部品に組み込むと、機能制御のさらなる可能性が得られる(
図3b)。
【0043】
本発明に係る装飾部品は、プッシュ式および/またはスライド式の入力手段を備え、例えばブレスレット、リング(指輪)、ネックレス、ブローチ、ポケット、ヘッドセット、または活動量計に採用することができる。ブレスレット、リング、ネックレス、またはブローチ等のジュエル(宝石類)自体が、例えば照明効果等の切替可能な機能を有する電子デバイスを含み、または例えばスマートフォン、ヘッドセット、または活動量計等の遠隔コントローラとして利用することができる。例えば、装飾部品を触ることにより、スマートフォンのコールを受信し、拒否し、ヘッドセットの音量を調整し、活動量計の複数の動作モード間で切り替えるといった機能制御が実現できる。機能制御の適用分野および可能性について、単なる例示として説明したが、さまざまな制御可能な機能を実現することができる。
【0044】
[導電層]
導電層は、評価センサシステムとの接続により、電子デバイスの機能を制御することができる。本発明によれば、好適にも、指またはスタイラスを用いて導電層に軽く触ることができるように宝石の湾曲した表面に形成されている。導電層の透明性は、装飾部品の輝き特性(ブリリアンシー特性)に影響を与える。したがって導電層は、好適には380~1200nmの波長領域で透明である。
【0045】
その導電率を得るために、導電層として金属層が適している。金属層は、例えばスパッタリング法(後述)等の適当な被膜方法を用いて宝石の上に積層することができる。Cr、Ti、Zr、V、Mo、Ta、W等の金属が適している。Al、Cu、またはAg等の金属は、化学的安定性が低いので、導電層としてはあまり有用ではないが、それでも原則的には適している。導電性を有する化学化合物、例えばTiN、TiAlN、またはCrN等の窒化化合物を導電層として用いてもよい。金属層および導電性を有する化学化合物は、当業者に広く知られている。
【0046】
透明な導電性を有する酸化物層を導電層として利用するすることができる。こうした酸化物層は、当業者に知られている。導電性酸化物層は、良好な機械的な耐摩耗性、良好な耐薬品性、および良好な温度安定性を有する。導電性酸化物層には、半導体酸化物が含まれる。半導体酸化物には、適当にnドープすることにより得られる。透明な導電性酸化物層は、平坦なスクリーン(フラットスクリーン)または薄膜太陽電池の透明電極において重要な構成要素である。
【0047】
酸化インジウムスズ(ITO)は、技術的に最も容易に入手可能な透明導電層である。約90%のIn2O3と約10%のSnO2の混合酸化物が市販されている。酸化インジウムスズは、極めて良好な透過性、極めて良好な機械的な耐摩耗性、および極めて良好な耐薬品性を有する。本発明によれば、好適には、導電層として酸化インジウムスズを用い、導電性を得るために、酸化インジウムスズが少なくとも4nmの膜厚で積層される。
【0048】
アルミニウムドープ酸化亜鉛は、透明な導電性酸化物層として、良好な透過性および良好な機械的な耐摩耗性を有する。大量生産の規模で、例えば太陽電池の技術分野において採用することができる。さらに適当な透明導電性酸化物層は、酸化ガリウム亜鉛または酸化チタン亜鉛等のドープ酸化亜鉛、またはフッ素ドープ酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化タンタルスズ、またはドープ酸化チタンニオブ等のドープ酸化スズを含む。
【0049】
本発明によれば、導電層は、好適には、Cr、Ti、Zr、酸化インジウムスズ、アルミニウムドープ酸化亜鉛、酸化ガリウム亜鉛、酸化チタン亜鉛、フッ素ドープ酸化スズ、酸化アンチモンスズ、酸化タンタルスズ、酸化チタンニオブ、またはこれらの化合物の任意の組合せのうちの少なくとも一種の化合物を含む。本発明によれば、より好適には、酸化インジウムスズが導電層として積層される。
【0050】
導電層の積層方法は、当業者に広く知られている。その積層方法は、これに限定されるものではないが、PVD(物理的気相成長法)およびCVD(化学的気相成長法)を含む。本発明では、PVD(物理的気相成長法)が好ましい。
【0051】
PVD(物理的気相成長法)は、当業者に広く知られた真空蒸着法または薄膜技術であり、特に光学産業およびジュエリー産業においてガラスおよびプラスティックに被膜するために利用されている。PVD(物理的気相成長法)において、被膜材料が気相に相転移する。そして気相材料は、基板に案内されて被膜され、凝結し、目標とする層を形成する。これらのPVD(物理的気相成長法)のいくつか(マグネトロンスパッタリング法、レーザビーム消散法、熱気相成長法等)を用いて、極めて低い処理温度を実現することができる。このように、数多くの被膜材料を極めて純粋な態様で積層することができる。こうした処理を、例えば酸素等の反応ガスの存在下で行うと、例えば金属酸化物が同様に積層される。本発明に係る好適な方法は、例えばEvatecから市販されているRadiance装置を用いたスパッタリングによる被膜方法である。典型的な層システム(層系)は、機能および視覚的様相の要請に応じて、1層だけでなく複数の層で構成されるものであってもよい。
【0052】
湾曲したファセット面に導電層の分割領域を形成するために(上記参照)、宝石をマスクで覆う。マスクは、湾曲したファセット面に複数の領域を露出させ、露出させた領域に導電層が積層される。例えばプラスティックまたは金属のカバーが、マスクとして適している。湾曲したファセット面に導電層の分割領域を形成するための択一的な実現可能な方法は、例えばNd:YAGレーザまたは超短パルスレーザ等のレーザを用いて、導電層を切断して、分割領域を形成することである。レーザを利用することにより、分割領域を極めて精緻に形成することができる。またエッチングにより、導電層を分割してもよい。エッチング工程は、例えばフォトレジストを用いて、導電層上にマスクを形成することを含む。エッチング工程によれば、透明導電層の所望の空間的な分割領域を形成することができる。フォトレジストは、例えば湿式化学法を用いて、実質的に除去される。この方法は当業者に広く知られている。
【0053】
[波長選択層]
波長選択層は、装飾部品の輝き(ブリリアンシー)を増大させるものである。任意的な波長選択層は、好適には、宝石と評価センサシステムとの間に設けられる。本発明によれば、好適には、波長選択層は、PVD法、CVD法、または湿式化学法によって形成された波長選択フィルムまたは波長選択コーティングによる2つの異なる方法で形成される。しかしながら、波長選択層は、同様に微細構造表面により得ることができる。微細構造形成方法は、当業者には広く知られている。
【0054】
所与の範囲の可視スペクトル(可視光)を反射させると(フィルタリング)、光学部品は輝き(ブリリアンシー)を得て、看者に特定の色彩を呈する。輝きは、宝石のファセットカットによってさらに引き出される。本発明に係る好適な実施形態では、波長選択層は、380~780nmの波長光の一部、すなわち主に可視領域の光の一部を反射する。
【0055】
波長選択層は、反射光の角度依存性を有する(
図5aおよび
図5b)。反射間隔は、装飾部品に入射する光の角度の関数として変化する。装飾部品の位置に依存するが、さまざまな色の光が反射される。
【0056】
UV硬化性接着剤を用いて、装飾部品の個々の構成要素の接合を可能にするために、波長選択層は、紫外光(UV光)に対して少なくともある程度透明であることが好ましい。
【0057】
本発明によれば、導電層の分割領域に対して無制限に機能制御できるようにするため、波長選択層は誘電体であることが好ましい(上記参照)。波長選択層が導電性である場合、故障電流が流れ得る。
【0058】
本発明によれば、波長選択層は、原理的には、導電層と宝石の表面の間にある宝石表面に設けてもよいが、輝きが小さくなる可能性があるので、これはあまり好ましいものではない。波長選択層が宝石の平坦な面に設けられた場合、宝石内で複数回の反射が生じ、輝き(ブリリアンシー)を増大させることができる。
【0059】
[波長選択フィルム]
波長選択フィルムは、「Radiant Light Film」の名称で市販されている。これらは、他の材料に貼付可能な多層ポリマーフィルムである。これらの光学フィルムは、ブラッグミラーであり、可視光を高い反射率で反射し、鮮やかな色彩効果を生じる。数百ナノメートルの範囲内のレリーフ状の微細構造体は、異なる波長光を反射し、干渉現象が生じ、視野角の関数として色彩を変化させる。
【0060】
本発明に係る特に好適なフィルムは、その最も外側にある層(最外層)がポリエステルである多層ポリマーフィルムからなる。このようなフィルムは、例えば3M社からRadiant Color Filmの型番CM 500および型番CM 590として市販されている。フィルムの反射間隔は、590~740nmまたは500~700nmである。
【0061】
波長選択性フィルムは、好適には接着剤を用いて宝石に接合される。接着剤および宝石がともに透明である場合、接着剤も透明である必要がある。好適な実施形態では、接着剤の屈折率と、透明な宝石の屈折率との差異は、±20%未満である。特に好適な実施形態では、この差異は10%未満であり、より好適には5%未満である。これは、異なる屈折率に起因した反射損失を最小限に抑えることができる唯一の方法である。それぞれの境界層を粗面化することにより、互いの屈折率を適合させることができる(モスアイ効果)。いわゆる「モスアイ表面」は、理想的な場合、光の屈折率を急激に変化させるのではなく、緩やかに変化させる微細な突起状構造物で構成される。こうして、屈折率が急激に変化する急峻な境界が除去されるので、屈折率変化はほとんど滑らかとなり、光は妨げられることなく、透過することができる。そのために必要な構造物の大きさは、300nmより小さくなければならない。モスアイ効果は、確実に、境界層での反射を最小限に抑え、境界層でより多くの光を透過させることができる。
【0062】
本発明によれば、UV照射により硬化可能な接着剤が好ましい。UV硬化性接着剤および屈折率を特定する方法は、当業者に広く知られている。とりわけ本発明によれば、アクリレート接着剤、特に変性ウレタンアクリレート接着剤を用いることが好ましい。これらの接着剤は、数多くの企業、例えばDelo-Photobond(登録商標)の型番PB 437という名称でDelo社によって販売されており、320~42nmの波長帯域のUV光で硬化できる接着剤である。
【0063】
[波長選択コーティング]
コーティング材料は、当業者に広く知られている。本発明に係る好適な実施形態において、波長選択コーティングは誘電体である(上記参照)。誘電体コーティング材料は、一般的なコーティング方法を用いて形成される。さまざまな誘電体からなる複数の層を積層することができる。コーティングを形成する方法およびコーティングそのものは、当業者に広く知られている。これらの方法には、中でも、従来技術に係るPVD(物理的気相成長法)、CVD(化学的気相成長法)、塗装コーティング法、および湿式化学法が含まれる。本発明では、PVD(物理的気相成長法)が好ましい(上記参照)。
【0064】
本発明に係る誘電性の波長選択コーティングにおいて、MgF2、SiO2、CeF3、Al2O3、ZrO2、Si3N4、Ta2O5、TiO2、またはこれらの任意の順序による組み合わせのコーティング材料が適しており、とりわけTiO2層およびSiO2層の多層構造体が好ましい。所望される反射率および透過率は、コーティング材料、層の数、および膜厚を適当に選択することにより調整することができる。
【0065】
PVD(物理的気相成長法)による層形成において、例えばEvatec社の型番BAK1101等、市販されているさまざまな装置を利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本発明はこれらに限定されるものではないが、実施例および図面を参照して本発明について以下説明する。図面は以下の主題を示すものである。
【
図1】宝石の一部領域に設けた導電層、およびファセット面とは反対側の平坦な表面上に設けた波長選択膜(波長選択コーティング)を備えた、装飾部品(装飾エレメント)の構造を示す。
【
図2a】ポゴピンを介して、導電層と評価センサシステムとを導通させた装飾部品の構造を示す。
【
図2b】導電性の宝石台座を介して、導電層と評価センサシステムとを導通させた装飾部品の構造を示す。
【
図2c】導電性の接着剤を介して、導電層と評価センサシステムとを導通させた装飾部品の構造を示す。
【
図2d】導電性フィルムまたは導電性エラストマを介して、導電層と評価センサシステムとを導通させた装飾部品の構造を示す。
【
図3a】透明の導電層の2つの分割された領域を含む装飾部品の制御機能であって、プッシュ式とスライド式の入力手段を示す。
【
図3b】透明の導電層の4つの分割された領域を含む装飾部品の制御機能であって、プッシュ式とスライド式の入力手段を示す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明に係る実施例を、宝石および導電層を用いて作製した。
【0068】
[宝石]
D.スワロフスキー,カーゲー社から市販されているChessboard Flat Back 型番2493の部品(30mm×30mm)を用いて、ガラス製の宝石として、当業者に知られた方法で作製した。
【0069】
[形状]
宝石は、30mmのエッジ長さおよび多少湾曲した角部を有する正方形のベース領域を有するファセットカットされた本体部である。ファセットカット上側部分は、凸状に湾曲する領域を有していた。本体部の全体の高さは約8mmであり、角部の高さは約2.7mmであった。
【0070】
[透明導電層]
酸化インジウムスズ(ITO)からなる透明導電層を宝石の全体表面に被膜した。FHR社の型番FHRline 400のPVDプラントを用いて、スパッタリング法により被膜工程が行われた。
【0071】
電気的特性ならびに化学的特性、および機械的な耐摩耗性を改善するために、宝石は、まずFHRline 400プラントでイオンエッチングにより処理された。その後、サンプルは、このFHRline 400プラントにおいて約550℃で約30分間、加熱された。これに引き続き、このFHRline 400プラント内で酸化インジウムスズを光学部品の上に被膜した。このとき混合酸化物は、約90%のIn2O3と約10%のSnO2の通常の比率を有するものであった。圧力は、約3.3×10-3mbarであり、放電出力は約1kWであった。膜厚は、表面形状の関数として、約140nmから約190nmまで変化した。被膜工程は、アルゴンおよび5ccmの酸素の保護ガスを用いて実行された。続けて、被膜された光学部品は、このFHRline 400プラント内において約550℃で約20分間、加熱された。
【0072】
[評価センサシステムおよび装飾部品の構造体]
皮膜された宝石は、Harwin Plc Europe社から市販されている型番S7121-42Rのポゴピンを用いて、Kingboard社の型番KB-6160 FR-4Y KB 1.55の回路基板に裏面接触させた。型番S7121-42Rのポゴピンを回路基板に半田付けした。回路基板と宝石の被膜された裏面との間の距離は、約1.5mmであった。Azoteq (Pty)社から市販されている型番IQS228ASのタッチコントローラを用いて機能制御を行った。型番IQS228ASのタッチコントローラは、宝石と回路基板との間であって、回路基板の上面に配置し、回路基板に半田付けした。型番IQS228ASのタッチコントローラは、ポゴピンを介して電気接続した。タッチコントローラに電源供給し、多極ケーブルを介して、タッチコントローラからの信号を通信した。型番Makrolon(登録商標)2405のポリカーボネイトからなるハウジングで、構造体を囲った。スワロフスキー社から市販されている二液性エポキシ樹脂接着剤の型番9030 CG 500 (A+B) 50 ml EUROPE/AMERICA 材料番号5284198を用いて、宝石は、回路基板から約1.5mmの距離でハウジングと接続した。ハウジングは、約1.7mm内側に延びるウェブを有し、これにより、宝石の裏面と回路基板との間を約1.5mmの距離とし、接着剤を用いて、ハウジングと宝石とを接着させることができる。多極ケーブルは、ハウジングに設けた開口部を介して、ハウジングから導出された。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る装飾部品は、数多くの電子デバイスの機能制御のために用いることができる。