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特許7235509植え込み可能な生きた電極およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】植え込み可能な生きた電極およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/25 20210101AFI20230301BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61B5/25
A61N1/05
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2018554371
(86)(22)【出願日】2017-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-27
(86)【国際出願番号】 US2017027705
(87)【国際公開番号】W WO2017181068
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-06
(31)【優先権主張番号】62/322,434
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(73)【特許権者】
【識別番号】516241599
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】カレン ダニエル ケイシー
(72)【発明者】
【氏名】ハリス ジェームス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ ジョン エー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン エイチ. アイザック
(72)【発明者】
【氏名】スミス ダグラス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】セルーヤ ミジャイル
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/066627(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0371564(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0292187(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0171116(US,A1)
【文献】特表2009-506836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25-5/398
A61N 1/05
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部においてインビトロで成長し、かつ、該細胞外マトリックスコアに沿って軸索成長を有する複数のニューロン
を含む、植え込み可能な生きた電極であって、
該複数のニューロンが、植え込み可能な生きた電極の第1端の近位にある1つまたは複数の光遺伝学的ニューロンを含む、前記植え込み可能な生きた電極。
【請求項2】
前記植え込み可能な生きた電極が、二方向刺激および二方向記録が可能である、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項3】
前記植え込み可能な生きた電極が、一方向刺激および一方向記録が可能である、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項4】
前記植え込み可能な生きた電極が、一方向刺激および二方向記録が可能である、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項5】
前記ニューロンが、異なる波長の光を使用して刺激および記録される、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項6】
前記複数のニューロンが、複数の標的を標的とする複数の異なる表現型、および別個の波長の光に応答するまたはそれを発するための複数の異なる光遺伝学的または磁気遺伝学的表現型を含む、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項7】
前記複数のニューロンが、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、およびペプチド作動性ニューロンからなる群より選択される1つまたは複数のニューロンを含む、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項8】
前記複数のニューロンが、初代大脳皮質ニューロンを含み、ここで、該初代大脳皮質ニューロンが、皮質第I層由来のニューロン、皮質第II層由来のニューロン、皮質第III層由来のニューロン、皮質第IV層由来のニューロン、皮質第V層由来のニューロン、皮質第VI層由来のニューロン、視覚皮質由来のニューロン、運動皮質由来のニューロン、感覚皮質由来のニューロン、および嗅内皮質由来のニューロンからなる群より選択される1つまたは複数のニューロンを含む、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項9】
内皮細胞、筋細胞、筋芽細胞、星状膠細胞、嗅神経鞘細胞、乏突起膠細胞、またはシュワン細胞からなる群より選択される1つまたは複数の非ニューロン細胞をさらに含む、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項10】
前記ニューロンが幹細胞に由来する、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項11】
前記ニューロンがニューロン前駆細胞に由来する、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項12】
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部において成長したニューロンの少なくとも一部が、強制的な細胞凝集を経て形成される、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項13】
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアを同軸に囲むハイドロゲルの鞘
をさらに含む、請求項1記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項14】
1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および
刺激装置を、該1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置する段階
を含む方法において使用するための、請求項1~13のいずれか一項記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項15】
前記方法が、前記1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つ、対象の中枢神経系、末梢神経系、大脳皮質、線条体、海馬、脊髄、および/または末梢神経に植え込む段階を含む、請求項14記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項16】
前記方法が、大脳皮質ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む、請求項14記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項17】
前記方法が、ドーパミン作動性ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む、請求項14記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項18】
前記方法が、後根神経節ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む、請求項14記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項19】
1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および
センサーを該1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置する段階
を含む方法において使用するための、請求項1~13のいずれか一項記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項20】
前記方法が、興奮性ニューロンの活動を報告する段階をさらに含む、請求項19記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項21】
前記方法が、抑制性ニューロンの活動を報告する段階をさらに含む、請求項19記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項22】
前記方法が、興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンの活動を同時に報告する段階をさらに含む、請求項19記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項23】
1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および
グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、およびペプチド作動性ニューロンからなる群より選択される1つまたは複数のニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制するために、該植え込み可能な生きた電極に刺激を加える段階
を含む方法において使用するための、請求項1~13のいずれか一項記載の植え込み可能な生きた電極。
【請求項24】
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた複数の凝集したニューロン
を含む、植え込み可能な生きた電極。
【請求項25】
細胞外マトリックスコアを提供する段階;および
該細胞外マトリックスコアの少なくとも一端を複数の凝集したニューロンと接触させる段階
を含む、植え込み可能な生きた電極を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年4月14日に出願された米国仮出願第62/322,434号の優先権を主張し、その内容は、その全体で参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ブレインマシンインターフェース(BMI)は、神経変性に関連する欠損を緩和するため、または末梢プロステーシスを駆動するために、神経系が外部デバイスと直接通信できるようにする。貫入型微小電極アレイおよび光遺伝学的戦略を使用して大幅な進歩があった。しかし、これらのアプローチは、非有機電極/オプトロード(optrode)を脳内に配置することに一般的に依存しており、記録および刺激の量を最終的に減少させる炎症性異物応答に必然的に繋がる点で限界がある。現在のBMI戦略は、非永続性、非特異性、および/または植え込まれたときの重大な異物応答という難点がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の簡単な概要
一局面では、本発明は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロンを含む、植え込み可能な生きた電極を含み、該1つまたは複数のニューロンは、植え込み可能な生きた電極の第1端の近位にある1つまたは複数の光遺伝学的または磁気遺伝学的磁気遺伝学的(magnetogenetic)ニューロンを含む。
【0004】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、二方向刺激および二方向記録が可能である。
【0005】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、一方向刺激および一方向記録が可能である。
【0006】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、一方向刺激および二方向記録が可能である。
【0007】
様々な態様では、ニューロンは、異なる光波長を使用して刺激および記録される。
【0008】
様々な態様では、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアは、約10μm~約20μm、約25μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約150μm、約150μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約700μm、および約700μm~約1000μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する。
【0009】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアを同軸性に囲むハイドロゲルの鞘をさらに含む。
【0010】
様々な態様では、ハイドロゲルの鞘は、約20μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、および約800μm~約1200μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する。
【0011】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、約100μmから10cmまたはそれよりも大きな長さを有する。
【0012】
様々な態様では、1つまたは複数のニューロンは、複数の標的を標的とする複数の異なる表現型、および別個の波長の光に応答するまたはそれを発するための複数の異なる光遺伝学的または磁気遺伝学的表現型を含む。
【0013】
様々な態様では、1つまたは複数のニューロンは、初代大脳皮質ニューロン、後根神経節ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ペプチド作動性ニューロン、視床由来ニューロン、線条体由来ニューロン、海馬由来ニューロン、黒質由来ニューロン、末梢神経系由来ニューロン、および脊髄運動ニューロンからなる群より選択される1つまたは複数を含む。
【0014】
様々な態様では、初代大脳皮質ニューロンは、皮質第I層由来のニューロン、皮質第II層由来のニューロン、皮質第III層由来のニューロン、皮質第IV層由来のニューロン、皮質第V層由来のニューロン、皮質第VI層由来のニューロン、視覚皮質由来のニューロン、運動皮質由来のニューロン、感覚皮質由来のニューロン、および嗅内皮質由来のニューロンからなる群より選択される1つまたは複数を含む。
【0015】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、内皮細胞、筋細胞、筋芽細胞、星状膠細胞、嗅神経鞘細胞、乏突起膠細胞、またはシュワン細胞からなる群より選択される1つまたは複数の非ニューロン細胞をさらに含む。
【0016】
様々な態様では、ニューロンは、幹細胞に由来する。
【0017】
様々な態様では、ニューロンは、ニューロン前駆細胞に由来する。
【0018】
様々な態様では、ハイドロゲルの鞘は、アガロースを含む。
【0019】
様々な態様では、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロンは、強制的な細胞凝集を経て形成される。
【0020】
様々な態様では、本発明は、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および適合性の刺激装置を、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置する段階を含む方法を含む。
【0021】
様々な態様では、方法は、脳活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0022】
様々な態様では、方法は、宿主のシナプス活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0023】
様々な態様では、方法は、ニューロン活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0024】
様々な態様では、方法は、神経ネットワーク活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0025】
様々な態様では、方法は、脳活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0026】
様々な態様では、方法は、宿主のシナプス活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0027】
様々な態様では、方法は、ニューロン活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0028】
様々な態様では、方法は、神経ネットワーク活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0029】
様々な態様では、方法は、宿主のシナプス活動をモデュレートするために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0030】
様々な態様では、方法は、ニューロン活動をモデュレートするために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0031】
様々な態様では、方法は、神経ネットワーク活動をモデュレートするために、適合性の刺激装置を制御して植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階をさらに含む。
【0032】
様々な態様では、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つは、対象の中枢神経系、末梢神経系、大脳皮質、線条体、海馬、脊髄、および/または末梢神経に植え込まれる。
【0033】
様々な態様では、方法は、大脳皮質ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む。
【0034】
様々な態様では、方法は、ドーパミン作動性ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む。
【0035】
様々な態様では、方法は、後根神経節ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む。
【0036】
様々な態様では、本発明は、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および適合性のセンサーを1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置する段階を含む方法を含む。
【0037】
様々な態様では、方法は、興奮性ニューロンの活動を報告する段階をさらに含む。
【0038】
様々な態様では、方法は、抑制性ニューロンの活動を報告する段階をさらに含む。
【0039】
様々な態様では、方法は、興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンの活動を同時に報告する段階をさらに含む。
【0040】
様々な態様では、本発明は、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;およびグルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ペプチド作動性ニューロン、視床由来ニューロン、線条体由来ニューロン、海馬由来ニューロン、黒質由来ニューロン、末梢神経系由来ニューロン、脊髄運動ニューロン、大脳皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、および後根神経節ニューロンからなる群より選択される1つまたは複数を選択的に興奮させるまたは抑制するために、該植え込み可能な生きた電極に刺激を加える段階を含む方法を含む。
【0041】
様々な態様では、方法は、シナプス入力の量を制御する段階をさらに含む。
【0042】
別の局面では、本発明は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアを同軸性に囲むハイドロゲルの鞘;実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアとハイドロゲルの鞘との間に配置された電極、オプトロード、磁気アクチュエーター、加熱プローブ、冷却プローブ、または化学物質アプリケーターからなる群より選択される1つまたは複数;および実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロンを含む、植え込み可能な生きた電極を含む。
【0043】
別の局面では、本発明は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた複数の凝集したニューロンを含む、植え込み可能な生きた電極を含む。
【0044】
様々な態様では、複数の凝集したニューロンは、ドーパミン作動性ニューロンを含む。
【0045】
様々な態様では、細胞外マトリックスコアは、コラーゲン-ラミニンを含む。
【0046】
様々な態様では、凝集したニューロンは、角錐状ウェル中での遠心分離によって形成される。
【0047】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、別個のニューロン本体部および別個の軸索部を含む。
【0048】
様々な態様では、植え込み可能な生きた電極は、一方向性または二方向性の植え込み可能な生きた電極である。
【0049】
様々な態様では、細胞外マトリックスコアは、コラーゲン-ラミニンを含む。
【0050】
様々な態様では、本発明は、患者におけるパーキンソン病を処置する方法であって、請求項のいずれか一項記載の生きた電極を患者の黒質に植え込む段階を含む方法を含む。
【0051】
別の局面では、本発明は、細胞外マトリックスコアを提供する段階;および細胞外マトリックスコアの少なくとも一端を複数の凝集したニューロンと接触させる段階を含む、植え込み可能な生きた電極を製造する方法を含む。
【0052】
様々な態様では、方法は、細胞外マトリックスコア内またはそれに沿った軸索の成長を促進する条件下で植え込み可能な生きた電極を維持する段階をさらに含む。
【0053】
様々な態様では、方法は、少なくとも1つの細胞外マトリックスコアを接触させる前に、複数の凝集したニューロンを予備形成する段階をさらに含む。
[本発明1001]
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロン
を含む、植え込み可能な生きた電極であって、
該1つまたは複数のニューロンが、植え込み可能な生きた電極の第1端の近位にある1つまたは複数の光遺伝学的または磁気遺伝学的(magnetogenetic)ニューロンを含む、前記植え込み可能な生きた電極。
[本発明1002]
二方向刺激および二方向記録が可能である、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1003]
一方向刺激および一方向記録が可能である、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1004]
一方向刺激および二方向記録が可能である、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1005]
前記ニューロンが、異なる波長の光を使用して刺激および記録される、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1006]
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアが、約10μm~約20μm、約25μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約150μm、約150μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約700μm、および約700μm~約1000μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1007]
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアを同軸性に囲むハイドロゲルの鞘
をさらに含む、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1008]
前記ハイドロゲルの鞘が、約20μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、および約800μm~約1200μmからなる群より選択される最大断面寸法を有する、本発明1007の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1009]
約100μmから10cmまたはそれよりも大きな長さを有する、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1010]
前記1つまたは複数のニューロンが、複数の標的を標的とする複数の異なる表現型、および別個の波長の光に応答するまたはそれを発するための複数の異なる光遺伝学的または磁気遺伝学的表現型を含む、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1011]
前記1つまたは複数のニューロンが、初代大脳皮質ニューロン、後根神経節ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ペプチド作動性ニューロン、視床由来ニューロン、線条体由来ニューロン、海馬由来ニューロン、黒質由来ニューロン、末梢神経系由来ニューロン、および脊髄運動ニューロンからなる群より選択される1つまたは複数を含む、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1012]
初代大脳皮質ニューロンが、皮質第I層由来のニューロン、皮質第II層由来のニューロン、皮質第III層由来のニューロン、皮質第IV層由来のニューロン、皮質第V層由来のニューロン、皮質第VI層由来のニューロン、視覚皮質由来のニューロン、運動皮質由来のニューロン、感覚皮質由来のニューロン、および嗅内皮質由来のニューロンからなる群より選択される1つまたは複数を含む、本発明1011の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1013]
内皮細胞、筋細胞、筋芽細胞、星状膠細胞、嗅神経鞘細胞、乏突起膠細胞、またはシュワン細胞からなる群より選択される1つまたは複数の非ニューロン細胞をさらに含む、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1014]
前記ニューロンが幹細胞に由来する、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1015]
前記ニューロンがニューロン前駆細胞に由来する、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1016]
前記ハイドロゲルの鞘がアガロースを含む、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1017]
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロンが、強制的な細胞凝集を経て形成される、本発明1001の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1018]
本発明1001~1015のいずれかの1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および
適合性の刺激装置を、該1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置する段階
を含む、方法。
[本発明1019]
脳活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1020]
宿主のシナプス活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1021]
ニューロン活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1022]
神経ネットワーク活動を活性化または興奮させるために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1023]
脳活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1024]
宿主のシナプス活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1025]
ニューロン活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1026]
神経ネットワーク活動を抑制するために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1027]
宿主のシナプス活動をモデュレートするために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1028]
ニューロン活動をモデュレートするために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1029]
神経ネットワーク活動をモデュレートするために、適合性の刺激装置を制御して前記植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つを作動させる段階
をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1030]
前記1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つが、対象の中枢神経系、末梢神経系、大脳皮質、線条体、海馬、脊髄、および/または末梢神経に植え込まれる、本発明1018の方法。
[本発明1031]
大脳皮質ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1032]
ドーパミン作動性ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1033]
後根神経節ニューロンを選択的に興奮させるまたは抑制する段階をさらに含む、本発明1018の方法。
[本発明1034]
本発明1001~1015のいずれかの1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および
適合性のセンサーを該1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置する段階
を含む、方法。
[本発明1035]
興奮性ニューロンの活動を報告する段階をさらに含む、本発明1034の方法。
[本発明1036]
抑制性ニューロンの活動を報告する段階をさらに含む、本発明1034の方法。
[本発明1037]
興奮性ニューロンおよび抑制性ニューロンの活動を同時に報告する段階をさらに含む、本発明1034の方法。
[本発明1038]
本発明1001~1015のいずれかの1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極を対象の脳に植え込む段階;および
グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロン、コリン作動性ニューロン、セロトニン作動性ニューロン、ペプチド作動性ニューロン、視床由来ニューロン、線条体由来ニューロン、海馬由来ニューロン、黒質由来ニューロン、末梢神経系由来ニューロン、脊髄運動ニューロン、大脳皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、および後根神経節ニューロンからなる群より選択される1つまたは複数を選択的に興奮させるまたは抑制するために、該植え込み可能な生きた電極に刺激を加える段階
を含む、方法。
[本発明1039]
シナプス入力の量を制御する段階
をさらに含む、本発明1038の方法。
[本発明1040]
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアを同軸性に囲むハイドロゲルの鞘;
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアとハイドロゲルの鞘との間に配置された、電極、オプトロード(optrode)、磁気アクチュエーター、加熱プローブ、冷却プローブ、または化学物質アプリケーターからなる群より選択される1つまたは複数;および
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロン
を含む、植え込み可能な生きた電極。
[本発明1041]
実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および
該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた複数の凝集したニューロン
を含む、植え込み可能な生きた電極。
[本発明1042]
前記複数の凝集したニューロンが、ドーパミン作動性ニューロンを含む、本発明1041の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1043]
前記細胞外マトリックスコアが、コラーゲン-ラミニンを含む、本発明1041の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1044]
前記凝集したニューロンが、角錐状ウェル中での遠心分離によって形成される、本発明1041の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1045]
別個のニューロン本体部および別個の軸索部を含む、本発明1041の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1046]
一方向性または二方向性の植え込み可能な生きた電極である、本発明1041の植え込み可能な生きた電極。
[本発明1047]
本発明1041の生きた電極を患者の黒質に植え込む段階を含む、患者におけるパーキンソン病を処置する方法。
[本発明1048]
細胞外マトリックスコアを提供する段階;および
該細胞外マトリックスコアの少なくとも一端を複数の凝集したニューロンと接触させる段階
を含む、植え込み可能な生きた電極を製造する方法。
[本発明1049]
細胞外マトリックスコア内またはそれに沿った軸索の成長を促進する条件下で植え込み可能な生きた電極を維持する段階をさらに含む、本発明1048の方法。
[本発明1050]
少なくとも1つの細胞外マトリックスコアを接触させる段階の前に、複数の凝集したニューロンを予備形成する段階をさらに含む、本発明1049の方法。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の性質および所望の目的をより十分に理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明が参照されるが、その際、等しい参照文字は、いくつかの図に渡り該当する部分を指す。
【0055】
図1】本発明の態様の、ハイドロゲルの鞘(104)によって同軸性に囲まれ、ニューロン(106a、106b)を植え込まれた柱体状の細胞外マトリックスコア(102)を含む、植え込み可能な生きた電極(矢印番号100で示す)を説明する図である。一態様では、ある特定の神経細胞集団(112a)を、一波長の光(114)によって興奮させることができ、一方で、別の波長の光(116)の適用は、別の神経細胞集団(112b)を抑制する。別の態様では、2つの異なる神経細胞集団を、2つの異なる波長の光によって興奮させることができる。なお別の態様では、2つの異なる神経細胞集団を、異なる波長の光によって抑制することができる。
図2図2A~2Cは、本発明の態様の、ハイドロゲルの鞘によって囲まれた細胞外マトリックスコア(102)を含む電極の断面を示す。
図3】本発明の態様の、植え込み可能な生きた電極の使用方法を示す。
図4図4A~4Cは、マイクロTENNの構造および機能分析を示す。マイクロTENNは、ニューロン細胞体の密なクラスターからなり、密な軸索路が中心カラム内を端から端まで伸長している。図4Aに、タウ+軸索路が渡る単一ニューロン(MAP-2+)集団である一方向性マイクロTENNを示す。図4Bに、ベータ-チューブリン-III+(Tuj 1+)軸索路が渡る2つのニューロン集団を示す二方向性マイクロTENNを示す。図4Cに、インビトロの(遺伝的にコードされるオプシンおよび/または蛍光Ca2+レポーターによる)光刺激および記録ならびに伝統的電気生理学の理論的枠組みを示す。一方のニューロン集団を刺激し、結果として生じた他方の集団における活動電位を電気生理学的に、およびCa2+感受性レポーターに基づき光学的に記録することによって、マイクロTENNの活動を評価した。
図5図5A~5Eは、ニューロン細胞体の分布および軸索貫入に基づいて変動する複数の構成について、マイクロTENNの構造、表現型、および成熟を示す。図5Aに、インビトロで2週間目の一方向性ドーパミン作動性マイクロTENNの共焦点再構築を示す(緑:全ての軸索(ベータ-チューブリン-III+);赤:ドーパミン作動性ニューロン(チロシンヒドロキシラーゼ+);青:全ての核)。図5Bに、二方向性大脳皮質ニューロン性マイクロTENNの位相差顕微鏡像を示す。図5Cおよび5Dに、一方向性後根神経節ニューロン性マイクロTENNを示す。図5Eに、細胞体領域がハイドロゲルマイクロカラムに対して外在する、密な一方向性皮質ニューロン性マイクロTENNを示す。生きたマイクロTENN電極の構造、表現型、成熟/可塑性、および機能の制御が、インビトロで実証されている。
図6】極端に長いマイクロTENNを示す。二方向性マイクロTENNのインビトロ免疫組織化学検査により、ニューロン集団の端から端までの強い軸索伸長が示された。ニューロンの細胞本体および軸索の染色は最大2cmの軸索伸長を示す。
図7】インビボのマイクロTENNの生存、内部成長および統合を示す。図7のパネルAに、ラット脳に送達した3日後に、マイクロTENNニューロンが生存し、ハイドロゲルチューブ内にその軸索構成を維持したという結果を示す。図7のパネルB~Dに、植え込みの28日後にマイクロTENNニューロンが生存し、脳と統合されたという結果を示す。図7のパネルBに、移植されたニューロンが神経突起を宿主組織内に伸ばしたことを示す。図7のパネルCおよびDに、図7のパネルBからの領域の拡大図を示し、内部成長している神経突起に沿った推定上の樹状突起棘を示すが、これは、(図7のパネルD)神経突起のすぐ近く(丸印)に、シナプス統合を示唆するシナプシン陽性の斑点を有する。スケールバーは、パネルA=50μm、パネルB=40μm、パネルCおよびD=20μmである。
図8】ニューロモデュレーションのための軸索ベースの「生きた電極」の理論的長所、すなわち従来の電極(中央)およびオプトロード(右)と比べた「生きた電極」(左)に関するニューロン刺激のメカニズムおよび特異性を説明する。生きた電極は、制御された細胞構成および完全に分化したニューロンを有する加工された軸索路を提供し、そのニューロンは、インビトロで予備トランスフェクトされた場合に、トランスフェクトされた細胞の空間的な広さを制約すると同時に、細胞懸濁液の送達に由来する3D減少問題を抑制し、これらは両方とも臨床展開に有利である。電極の周囲の相対的に大きな3D体積(多数の層およびニューロンに影響を与えている刺激の大きな雲によって示される)から本質的に刺激または記録する従来の電極と対照的に、生きた電極は、(ある特定の色のニューロンとシナプスを形成している生きた電極の軸索によって示されるような)所与の解剖学的領域における特異的なニューロンサブタイプとシナプスを形成するように構造体を設計することができるので、高い特異性を提供することもできる。マイクロファイバー製オプトロードは、高レベルの特異性を達成することができるのに対し、オプシンのインビボ送達は、ウイルスの注射に一般的に依存し、注射は、拡散して非標的領域に影響する場合がある(光遺伝学的形質導入の広がりを、第V層から第VI層内に迷入している明るい灰色のニューロンによって図示する)。また、光学的方法は、光の組織吸収が原因で限定された利点を有する場合がある。最終的に、生きた電極は、電極/オプトロードに使用される剛体材料と比較して、深部脳構造に出入りする経路信号に対して柔らかい経路を提供することで、機械的ミスマッチ/微細動作およびグリア性瘢痕が原因のシグナル問題を最小限にする。
図9】生きた電極の標的特異性およびシナプス統合の概念を説明する。概念的描出で星状のニューロンではなく円形のニューロンとのみシナプス形成しているマイクロTENN軸索によって実証されるように、特異的ニューロンサブタイプとシナプス形成するように構造体を設計することができるので、生きた電極は、高い特異性を提供する。
図10】大脳皮質に生きた電極を使用するための記録および刺激試験の理論的枠組みを示す。
図11】生きた電極の概念を示す。マイクロTENNは、神経回路との皮質遠心性記録(右パネル)または皮質求心性刺激(左パネル)のインターフェースのために使用される。脳の所定の位置に貫入し、他端を脳表面に位置させることにより、マイクロTENNは生きた電極として作用する。次に、脳内の深部マイクロTENNニューロン/軸索は、局所宿主ニューロンとシナプスで統合できるのに対し、構造体を渡る軸索投影は、皮質表面に出入りする機能的リレーとして作用し、皮質表面で光および/または電気インターフェースを使用して情報が交換される。出力(皮質遠心性)の理論的枠組みは、局所的シナプス統合によって皮質表面への深部活動の複製の投影を可能にする。入力(皮質求心性)の理論的枠組みは、特異的な神経回路の興奮または抑制の制御を可能にする。
図12】生きた電極構造および脳内の適用の例を示す(紫:脳内の一般的な軸索路のトラクトグラフィー)。脳内の失われた長距離軸索結合を物理的に再構築するために最初に開発されたマイクロ組織工学神経回路網(TENN)は、インビトロ成長させて予備形成した微小構造体であり、長い軸索路が渡る別個のニューロン集団からなる。マイクロTENNは、一方向性または二方向性軸索路からなり得る。皮質視床マイクロTENNは、脳外傷および脳卒中に脆弱な皮質または視床における感覚-運動情報を記録またはモデュレートするために生きた電極として適用することができる。ドーパミン作動性(DA)マイクロTENNは、パーキンソン病における運動症状を緩和するために重要な線条体へのドーパミン作動性入力を提供/回復するために使用することができる。皮質-海馬マイクロTENNは、学習および記憶形成に重要である皮質と海馬との間の情報交換をモデュレートまたは符号化するために使用することができる。
図13】本発明の態様のマクロTENN電極の透視図を提供する。
図14】本発明の態様のマクロTENN構造内の神経成長を示す。細胞核をDAPIで青色に染色する。軸索をベータ-チューブリン-III(Tuj1)で緑色に染色する。図14のパネルA~Cに、図14のパネルDに図示した平面に沿った共焦点スライスを提供する。図14のパネルAは、マクロTENN構造体の底面に載る細胞核を示す一番下の共焦点スライスである。図14のパネルBは、図14のパネルAに示すスライスのすぐ上の共焦点スライスであって、マクロTENN構造体の内縁に沿って成長している軸索(緑)を示す。図14のパネルCは、図14のパネルBに示すスライスのすぐ上の共焦点スライスであって、チューブの北または南側のみでの界面の縁でのみ成長している軸索(緑)を示す。図14のパネルDは、図14のパネルA~Cに示す共焦点スライスを図で説明するためにマクロTENNの長さを模式的に見下ろしたものである。図14のパネルEは、図14のパネルDの視点と同様の断面で示した、図14のパネルA~Cの共焦点像の再構成を示す。
図15図15A~15Cは、本発明の態様による脱神経束(defascicularization)デバイスにおける電極の展開を示す。図15Aに、神経を見下ろす図を提供する。図15Bに、神経の長さに沿った図を示す。図15Cに端部が神経のサイズとマッチしているが、表面積および神経束の分離を増加させるために構造体の内部がより大きい先細デバイスを示す。(分かり易くするために図15Cには電極を示さない)。
図16】(パネルC~E)強制的なニューロン凝集物の送達と対比させた、(パネルAおよびB)ニューロン懸濁液の送達を使用して築いたマイクロTENNの位相差顕微鏡像を提供する。パネルAおよびBに、コアにおける不完全な細胞外マトリックス(ECM)連続性の結果である、マイクロカラムの内部全体に渡るニューロン細胞体の浸潤を有するマイクロTENNの例を示す。これが起こった場合、これは、理想的なマイクロTENN細胞構成からの逸脱を招く。対照的に、パネルC~Eにおいて、正確に形成したニューロン凝集物を使用してマイクロカラムに播種した場合、細胞体(パネルD)区域および軸索(パネルE)区域の理想的な分布が一貫して維持される。
図17】強制的なニューロン凝集物性マイクロTENNにおけるニューロンの細胞体および軸索の分布の位相差および共焦点顕微鏡像を示す図である。パネルAおよびBに示すように、ニューロン凝集物をマイクロカラムの一端に正確に播種することができる。パネルCに、インビトロで数日に渡り、凝集物においてニューロンから投射されている密な軸索伸長を観察することができる。パネルDに、全ての軸索(ベータ-チューブリンIII;赤)および全ての細胞核(Hoechst;青)、およびシナプス(シナプシン;緑)を認識している抗体を使用してこれらの凝集物性マイクロTENNを標識するための免疫組織化学検査後の共焦点顕微鏡像を提供する。マイクロカラムを構成するハイドロゲルは、非特異的に紫色に標識される。これは、定義された別個の細胞体(Hoechst+)区域および軸索(ベータ-チューブリンIII+)区域を実証するのに対し、シナプシン+の斑点は、マイクロTENNにおける機能的成熟および電気化学活動を実証するものである。ニューロン凝集物の播種方法論は、マイクロカラムの一端または両端に凝集物としてのニューロン細胞体を有する定義された区域と軸索の投射が長軸方向に伸びてマイクロカラムの中心部を渡る定義された区域とからなる理想的な細胞構成の一方向または二方向性マイクロTENNの形成を一貫してもたらす。
図18】本発明の態様の生きた電極の縦断面を示す図である。
図19】ニューロモデュレーションのための長投射型一方向性軸索ベースの生きた電極を示す図である。パネルAに、軸索(β-チューブリン-III;赤)およびニューロン細胞体/樹状突起(MAP-2;緑)について免疫標識し、核対比染色(Hoechst;青)を行った生きた大脳皮質ニューロン電極の28DIVでの共焦点再構築を示す。凝集物(a')領域および軸索(a")領域の図内挿入図は、該当部分を枠線で囲み、右に示す。スケールバー:100μm。パネルBに、軸索(β-チューブリン-III;緑)およびチロシンヒドロキシラーゼ(ドーパミン作動性ニューロン/軸索;赤)について免疫標識し、核対比染色(Hoechst;青)を行った生きた腹側中脳(ドーパミン作動性)電極の28DIVでの共焦点再構築を示す。凝集物(b')領域および軸索(b")領域の図内挿入図は、該当部分を枠線で囲み、左に示す。スケールバー:250μm。
図20】軸索ベースの生きた電極の適用潜在性を示す図である。生体適合性のマイクロカラムを通って長い軸索路を伸長している表現型的に制御されたニューロン集団からなる特別仕様の生きた電極は、特定の疾患過程を処置するために様々な領域に渡るように定位的に移植される場合がある。パネルAにおいて、生きたドーパミン作動性電極から投射されている軸索は、線条体の局所構成内にシナプスを形成し、チャンネルロドプシンを用いたインビトロ機能化により、脳表面で核周部の光刺激を受けてドーパミンを放出し得る。これは、外部制御できる方法で、線条体への黒質緻密部の入力を模倣している。パネルBにおいて、生きたグルタミン酸作動性電極からの軸索は、麻痺を有する患者における神経運動プロステーシスの閉ループ制御を達成するために、一次感覚野内の第IV層ニューロンと優先的にシナプス形成して、表面光刺激を介して錯覚に基づく触覚フィードバックを伝達し得る。パネルCにおいて、生きたGABA作動性電極からの軸索を植え込んで、光刺激が有病変てんかん患者における発作活動の正味の抑制を引き起こすように発作焦点並置することもできる。
図21】パネルA~Cは、生きた電極における「生物学的多重化」を活用する可能性を図解する。いわゆる生物学的多重化をさらに活用するために、より洗練された生きた電極が開発され得る。マイクロプリントおよびマイクロパターン化技法を使用して構造体をインビトロ製作することにより、構造体を脳と連結する、ある特定のきめ細かいシグナル操作をもたらすために特異的シナプス構成を成し遂げることができる。パネルaに、最も単純な形式で、軸索の「チャンネル選択」束がシグナルを伝達して、どの他の束がシグナルを脳内に伝達し、どれがサイレンシングされるかを選択することができることを示す。パネルbに、電気通信に使用される多重化の種類と最も類似する生物学的インスタンス化において「チャンネル選択」により1つの最終的な共通出力に収束する複数のチャンネルを同様に切り替えることができることを示す。同様にパネルcにおいて、単一の入力チャンネルを選択する、または1つもしくは複数の並列出力に転用して、そのシグナルを「逆多重化する」ことができる。パネルdに、生きた電極における時分割「生物学的多重化」の潜在性を示す。生きた電極は、ギャップ結合(結合された減衰振動子)ならびにマイクロパターン化された抑制性および興奮性接続によって連結されたニューロンのクラスターによって形成される単一の「クロック」回路から発する遅延線を活用し得る。したがって、複数の並列入力チャンネルを、各クロックサイクルで今度は脳と連結する単一の標的出力ニューロンへと連続的に多重化することができる。クロックレート(したがって、多重化サンプリング期間)は、クロック回路を直接駆動することによって変更することができる。
図22】ヒトの脳におけるニューロンの別個の集団を接続する長距離軸索路の拡散テンソル画像表示である。この概念的描出に、一方向性マイクロTENN(長い整列した突起を伸ばしているドーパミン作動性ニューロン集団からなる)をどのように使用して、パーキンソン病において変性する黒質線条体経路を再創出できるかを示す。黒質中の軸索は、マイクロTENN中に移植されたドーパミン作動性ニューロンと機能的に統合されると予想されるのに対し、移植されたドーパミン作動性軸索は、線条体中のニューロンと機能的に統合されると予想される。黒質から適切な入力を受け取った後、移植されたニューロンは、線条体中にドーパミンを放出し、それにより、パーキンソン病で失われた回路を再創出する。
図23】これらの態様を採用する組成物および方法に適用される強制凝集法を使用する改良されたマイクロTENN細胞構成を示す図である。14DIVでの初代ドーパミン作動性ニューロンをプレーティングしたマイクロTENNの位相差および共焦点再構築。パネルAに、ニューロン/軸索および細胞核を示すための免疫組織化学法により(それぞれβ-チューブリンIIIおよびHoechstで)標識された解離ニューロンをプレーティングした代表的なマイクロTENNを示す。解離したマイクロTENNは、内部コアの全長に渡り細胞浸潤を示したので、所望の細胞構成を表さなかった。(B、C)加工されたドーパミン作動性ニューロン凝集物をプレーティングしたマイクロTENNを表す位相差像。プレーティング技法に基づき、凝集物は、(B)アガロースマイクロカラムの外側または(C)内部コアの内側のいずれかに直接付着した。(B、C)における説明領域からの高倍率画像は、(D1、D3)細胞本体領域が2つの凝集物プレーティング技法の間で異なったものの、それらの(D2、D4)軸索領域が類似していたことを示す。(E)全てのニューロン/軸索(β-チューブリンIII)およびドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)を表示するために免疫組織化学法により標識され、細胞核対比染色(Hoechst)を行われた代表的な凝集物性マイクロTENN。凝集物性マイクロTENNは、(E1)別個の細胞本体領域および(E2、E3)軸索領域を有する理想的な細胞構成を表した。(F)(E)における説明領域からのより高倍率の再構築は、凝集した細胞本体を示す。(G)凝集物を使用して作製したマイクロTENNは、解離したニューロンをプレーティングしたマイクロTENNよりも大きな軸索伸長を示した(各群n=13個のマイクロTENN;マン-ホイットニー検定、p<0.0001)。データを平均±標準偏差として提示する。スケールバー(A)=250μm。スケールバー(B、C)=500μm。スケールバー(D1)=200μm。スケールバー(D2~D4)=100μm。スケールバー(E)=250μm。スケールバー(F)=50μm。
図24】マイクロTENN内の軸索伸長に及ぼす細胞外マトリックスの効果を示す図である。異なるECMコアをプレーティングしたドーパミン作動性マイクロTENNの代表的な共焦点再構築。14DIVで、核対比染色(Hoechst)とともに、全てのマイクロTENNを免疫組織化学法により標識して、全てのニューロン/軸索(β-チューブリンIII)およびドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)を示した。ECMの種類は、軸索伸長に強く影響し、(A)コラーゲンI(n=12個のマイクロTENN)ならびに(C)コラーゲンIとラミニンとのカクテル(n=12)が最長の軸索伸長を支持した。(B)空のコア(n=9)または(D)架橋コラーゲンコア(n=11)を有するマイクロTENNは、有意に短い伸長を示した。(a~d)(A~D)における説明領域からのより高倍率の再構築は、群間で類似のTH発現を示す。パネルEは、一元配置ANOVA(p<0.0001)に続く事後ターキー検定により、コラーゲンIおよびコラーゲンI-ラミニンカクテルのコアが統計的に等しかったこと(p=0.8590)、ならびにそれらがそれぞれ、空のコア(p<0.0001)、ラミニンコーティングされたコア(p<0.0001)、または架橋コラーゲンコア(p<0.0001)における伸長よりも統計的に長かった軸索伸長を支持したことが示されたことを示すグラフである(*は、有意性を意味する)。パネルFは、マン-ホイットニー検定により判定されたように、全軸索長に対するパーセンテージとしてのTH+軸索長が、コラーゲンI内部コア(n=12)とコラーゲンIおよびラミニン内部コア(n=12)との間で統計的に等しかったことを示すグラフである(p=0.9723)。データを平均±標準偏差として提示する。スケールバー(A、C、D)=500μm。スケールバー(B)=250μm。スケールバー(E~H)=50μm。
図25】長投射ドーパミン作動性マイクロTENNを示す図である。パネルA~Fは、ドーパミン作動性凝集物をプレーティングした代表的なマイクロTENNおよびコラーゲンI内部コアの28DIVでの共焦点再構築である。全てのニューロン/軸索(β-チューブリンIII)およびドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)を表示するように免疫組織化学法により標識され、核対比染色(Hoechst)を行ったマイクロTENN。パネルA~Dにおいて、長期ドーパミン作動性マイクロTENNは、28DIVに渡り強い生存性および軸索伸長を示した。パネルE~Fは、パネルCにおける説明領域からのより高倍率の再構築であり、健全なTH+ニューロンおよび軸索を示し、外見上の軸索バリコシティがドーパミン放出部位を示唆している。パネルGに、28DIVに行ったマイクロTENNの長さの測定(n=7個のマイクロTENN)は、TH+軸索が6046±670μmであり、合計TH+長が、ドーパミン作動性凝集物を含めて7264±672μmであったことを示す。重要なことに、これらの長さは、ラットにおける黒質線条体経路を渡るために十分すぎるほどの長さである。データを平均±標準偏差として提示する。スケールバー(A~D)=250μm。スケールバー(E~F)=50μm。
図26】マイクロTENNドーパミン作動性軸索と線条体ニューロンとの間のインビトロシナプス形成を示す図である。パネルAに、凝集した線条体末端標的と共にプレーティングしたドーパミン作動性マイクロTENNの14DIVでの代表的な共焦点再構築を示す。ドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)、線条体(中型有棘)ニューロン(DARPP-32)、およびシナプス(シナプシン)を表示するためにマイクロTENNを免疫組織化学法により標識し、核対比染色を行った(Hoechst)。パネルB~Eに、(A)における説明領域のより高倍率の再構築が、(B)ドーパミン作動性ニューロン凝集物、(C)整列した頑強なTH+軸索、および(D)線条体ニューロン集団からの神経突起伸長を表示することを示す。(E)TH+軸索の投射経路に沿ったより高度のシナプシン標識は、ドーパミン作動性軸索が線条体ニューロンとシナプスを形成したことを示唆する。パネルFは、末端標的を有しない一方向性ドーパミン作動性マイクロTENNと比較した場合、線条体末端標的を含有するマイクロTENNが統計的により長い軸索伸長を生じなかったことを示すグラフである(各群n=9個のマイクロTENN;マン-ホイットニー検定、p=0.9182)。データを平均±標準偏差として提示する。パネルG~Hに、ドーパミン作動性軸索バリコシティを有することが示された線条体ニューロンから投射されている推定上の樹状突起を装飾しているシナプシン+の斑点を見ることができ、このことは、シナプス統合をさらに示唆している。スケールバー(A)=250μm。スケールバー(B~E)=50μm。スケールバー(G~H)=20μm。
図27】インビボのマイクロTENNのニューロン生存性および軸索細胞構成の維持を示す図である。パネルAに、マイクロTENN植え込み物の投射経路および一定の縮尺で描いた寸法を示す(出典 Gardoni F, Bellone C. 2015, Modulation of the glutamatergic transmission by Dopamine: a focus on Parkinson, Huntington and Addiction diseases, Frontiers in cellular neuroscience, 9: 25)。パネルBに、マイクロTENNの向きを示す(正確な縮尺ではない)。パネルCに、植え込みの1週間後の代表的な矢状断面を表示するが、本図は、全てのニューロンがシナプシンプロモーター上にGFPを発現しており、かつドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)を表示するために免疫組織化学法により標識されている、ドーパミン作動性マイクロTENNの縦断図を示している。これは、マイクロTENNニューロンが生存し、長軸方向に整列した細胞構成が維持されたことを実証している。パネルDに、植え込みの1ヶ月後に、ドーパミン作動性ニューロン/軸索(TH)および全てのニューロン/軸索(β-チューブリンIII)を表示するために免疫組織化学法により標識されたGFP+ドーパミン作動性マイクロTENNの断面図を提供している代表的な斜め切片を表示する。これは、インビボで1ヶ月目に頑強なドーパミン作動性軸索投射を有する、移植された健全なニューロン/軸索であることを実証している。スケールバー(A)=20μm。スケールバー(B)=50μm。
図28】神経機能代替インターフェースのための生きた電極としてのマイクロTENNを示す。パネルaは、マイクロTENNの概念図である。パネルAに、コラーゲンおよびラミニンの細胞外マトリックスコアを入れるハイドロゲル筒体からなる、最大で数ミリメートル長のマイクロTENNの三次元構造体を示す。このマイクロTENNは、外径300~400ミクロン、内径1ミクロンを有するが、任意のサイズで作られ得る。ニューロン集団は、筒体の一端または両端に配置され、軸索路はECMに貫入し、筒体の長さに渡る。パネルBに、一方向性マイクロTENNニューロンからのニューロンが、宿主ニューロンとシナプス形成し、標的とする皮質領域へのシグナル入力の伝播を可能にし得ることを示す。パネルCに、宿主ニューロンが二方向性マイクロTENNとシナプス形成および統合されて、標的とする皮質領域から背側ニューロン集団へのシグナル出力の伝播を可能にし得ることを示す。パネルDに、マイクロTENNの「生きた電極」としてのインビボ送達および統合を示す。マイクロTENNは、インビトロで予備形成され、脳内に植え込まれると、これらの生きたマイクロ管は、感覚運動情報のための入/出力チャンネルとして役立ち得る。入力のために、LEDアレイ(1)は、チャンネルロドプシン陽性ニューロンを有する一方向性マイクロTENN(2)を光刺激し、それは、宿主第IV層ニューロン(3)とシナプスを形成する。出力のために、第V層からの宿主ニューロン(4)は、二方向性マイクロTENN(5)のニューロンとシナプスを形成し;ニューロン活動は、微小電極アレイ(6)によって記録される。
図29】従来の皮質マイクロTENNを凝集物性皮質マイクロTENNと比較する、マイクロTENNの凝集物の製作を示す。生きた電極は、アガロースマイクロカラムの形成および皮質ニューロンの凝集の2段階で製作される。パネル(a)に、アガロースマイクロカラムの形成を示す。1:特別設計の再利用可能なアクリル型を使用して、指定された内径および外径を有するアガロースマイクロカラムを作製する。2:組み立てられた型の上面図。破線は、外径(中央)および内径(上;下)を示す。3:指定された内径のニードルを型に挿入する。4:溶融アガロースを型に導入し、冷却させる。5:ニードルを取り除き、型を分解し、マイクロカラムを取り出す。パネル(b)に皮質ニューロンの凝集を示す。1:3Dプリントしたポジ型からPDMS中で四角錐状ウェルを注型する。2:PDMS角錐状ウェルの画像。3:げっ歯類胚性ニューロンの単細胞懸濁液を角錐状ウェルに導入し、遠心分離してニューロン凝集物にする。4:プレーティングの24時間後の凝集物の位相画像。5:生存ニューロンおよび死滅ニューロンについて染色された72時間目の凝集物の共焦点再構築。パネル(c)に、細胞外マトリックス(1mg/ml ラミニンおよびコラーゲン;pH7.2~7.4)を充填されたアガロースマイクロカラムを示す。次に、マイクロカラムの一端または両端にニューロン凝集物を配置し、インビトロで成長させる。全てのスケールバー:100μm。(d、e)以前の研究におけるマイクロTENNを、解離したニューロンを用いて製作した。解離したマイクロTENNは、数日に渡りインビトロで軸索成長およびネットワーク形成を示したが、マイクロTENNの構成の制御および再現性は、本質的に限られた。(f、g、h)凝集物法を用いて、1つまたは2つのニューロン凝集物(それぞれ一方向性または二方向性マイクロTENN用)を使用してマイクロカラムに播種する。インビトロで3日後の代表的な二方向性マイクロTENNを示す。凝集物性マイクロTENNは、頑強な軸索成長およびより制御可能な構成を示す。具体的にいうと、凝集により、細胞本体(g)または神経突起の投射(h)のいずれかが存在する確実に別個の領域が生じる。
図30】凝集物性マイクロTENNの経時的な軸索成長を示す。一方向性マイクロTENN(a)および二方向性マイクロTENN(b)の両方が、最初の数DIVに渡りECMコアに沿って頑強な軸索伸長を示した。遠位標的を欠く一方向性マイクロTENNは、約7~8DIV後に軸索の退縮を示した。その反対に、二方向性マイクロTENNの軸索は、マイクロカラムの長さ(2~2.5mm)を渡り、5DIVまでに反対側の凝集物とシナプスを形成する。1、3、5、および8DIVの代表的なマイクロTENNを示す。(c)より長い二方向性マイクロTENN(5mm)は、発生するのにより長くかかったが、それでも頑強な成長を示した。1、3、および5DIVの代表的なマイクロTENNを示す。(d)2mmの一方向性、2mmの二方向性、5mmの二方向性、および2mmの解離/従来型マイクロTENNについて1、3、5、8、および10DIVに定量された成長速度。表示の時点で位相顕微鏡像(倍率10×)において凝集物から最長の神経突起を特定することによって成長速度を定量した。試料サイズ:n=6(一方向性 - 2mm)、9(二方向性 - 2mm)、7(二方向性 - 5mm)、および7(解離 - 2mm)。エラーバーはs.e.m.を意味する。スケールバー:100μm。
図31】蛍光標識を用いた凝集物特異成長を示す図である。各凝集物からの軸索成長をインビトロで観察するためにGFPおよびmCherryで標識された二方向性マイクロTENNの共焦点再構築。(a、b、c)1(a)、3(b)、および7(c)DIVでのマイクロTENN。3DIVまでに各凝集物から推定上の軸索-軸索接触があり、続いて5DIVまでにより強い伸長がある。(d)6DIVにおける別のマイクロTENN。図内挿入図は、互いに沿って成長している各凝集物からの軸索(e)および反対側の集団と接触している1つの凝集物からの軸索(f)を示す。スケールバー:500μm(a、d);100μm(e、f)。
図32】マイクロTENNの生存度を示す図である。一方向性および二方向性マイクロTENNならびに作製からの時間が一致する二次元対照についての生存度を10および28DIVにおける生-死(カルセイン-AM/エチジウムホモダイマー)染色により定量した。(a、b、c)10DIVの生細胞、死細胞、および一方向性マイクロTENNのオーバーレイを示す代表的な共焦点生-死画像。概略の図内挿入図を下に示す。(d、e、f)28DIVの二方向性マイクロTENNの代表的な共焦点生-死画像。概略の図内挿入図を下に示す。全てのスケールバー:100μm。(g)グラフは、各実験群および時点についての合計(生+死)細胞面積に対する生細胞体面積の平均比率を示す。二元配置ANOVAおよび事後解析は、いくつかの統計的に関連する対の差を明らかにした(*=p<0.05;**=p<0.01;***=p<0.001)。エラーバーは、s.e.m.を意味する。標本サイズ:それぞれ10および28DIVについてn=4および4(一方向性);7および4(二方向性);9および5(対照)。(h)40DIVで染色されたマイクロTENNの生-死共焦点画像。スケールバー:100μm。
図33】マイクロTENNの構成およびシナプス形成を示す図である。細胞核(Hoechst)、軸索(Tuj-1)、およびシナプス(シナプシン)について免疫標識された、4DIV(a)、10DIV(b)、および28DIV(d)での代表的な二方向性マイクロTENNの共焦点再構築。(b)および(d)における図内挿入図は、シナプス、軸索ネットワーク、およびこれら2つのオーバーレイのズームインを示す呼び出し欄(c)および(e)を表す。(f)28DIVの代表的な一方向性マイクロTENNの共焦点再構築。スケールバー:200μm。
図34】皮質視床マイクロTENNの植え込みを示す図である。GFP陽性マイクロTENNの植え込みの1ヶ月後の脳断面。ここでの植え込みは、大きな背側ニューロン集団が腹側で軸索を脳内に伸長させている「生きた電極」の適用(図28)を模倣している。脳を切片にし、染色して、マイクロTENNニューロン(GFP)、樹状突起および細胞体(MAP-2)、ならびに軸索(Tuj-1)を特定した。(a)マイクロTENNの背側図。図内挿入図は、凝集物(b)および軸索(c)を含有するマイクロTENNの内腔を示す呼び出し欄を表す。同様に、別のマイクロTENNの植え込みの断面は、凝集物(d)およびマイクロカラムの内腔内の軸索(e)を明らかにする。スケールバー:200μm(a);100μm(b);50μm(d);25μm(c、e)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
定義
本発明は、以下の定義を参照して最も明確に理解される。
【0057】
本明細書に使用される単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを指さない限り、複数の指示対象を含む。
【0058】
特に明確に述べない限り、または文脈から明白でない限り、本明細書に使用される「約」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均から2標準偏差以内と理解される。「約」は、言及された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解することができる。特に文脈から明白でない限り、本明細書に提供される全ての数値は、約という用語で修飾されている。
【0059】
明細書および特許請求の範囲に使用される用語「含む」、「含んでいる」、「含有している」、「有している」等は、米国特許法においてそれらに帰せられる意味を有することができ、「含む」、「含んでいる」等を意味することができる。
【0060】
本明細書に使用される「柱体」または「柱体状の」という用語は、所与の直線と平行な直線であって、所与の曲線を通り抜ける直線の各々からなる表面を含む。いくつかの態様では、柱体は、環状の輪郭を有する。他の態様では、柱体は、正方形、長方形、三角形、楕円形、多角形、平行四辺形、菱形、環形、三日月形、半円形、長円形、超長円形、デルタ状等からなる群より選択される断面を有する。他の態様では、柱体は、例えば、複雑な巻き込み、らせん、分岐パターン、複数の管状導管、ならびに様々なフラクタル階層のものを含む、コンピューター支援設計、3Dプリンティング、および/または分泌生物(例えば、サンゴ)の定方向進化アプローチに実施されることができる任意の数の形状を含むことができる、より複雑な三次元構造の出発点である。
【0061】
本明細書に使用される「生きた足場」という用語は、予備形成した、しばしば異方性の三次元(3-D)構成における生きた神経細胞から構成される生物学的足場を表す。生きた足場は、既存の宿主組織と物理的に統合されることができる。生きた足場は、重要な発生メカニズムを模倣することによって、標的とされた神経細胞の遊走および軸索の経路探索を容易にし得る。生きた足場は、構造および可溶性合図の同時提示ならびに/または電気生理学的な、イオン的な、もしくは神経伝達物質ベースのシグナル伝達に基づき作用することができる。
【0062】
本明細書に使用される「生きた電極」という用語は、神経系を探索またはモデュレートするように設計された突出した神経突起路(軸索または樹状)を有する別個の細胞体領域から一般的に構成される定義された構成を有する、一般的にしかし非排他的にニューロンである神経細胞を含む、生きた構造体を表す。
【0063】
特に明確に述べない限り、または文脈から明白でない限り、本明細書に使用される「または」という用語は、包含的であると理解される。
【0064】
本明細書に使用される「シナプス」は、化学通信が両端に流れるニューロンと別の細胞との間の接合部を表す。
【0065】
本明細書に使用される「シナプス形成した」は、別のニューロンまたは筋細胞などの1つまたは複数の細胞と1つまたは複数のシナプスを形成したニューロンを表す。
【0066】
本明細書に提供される範囲は、範囲内の値の全てについての省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50(および文脈が明らかに他のことを指さない限りその分数)からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むことが理解される。
【0067】
発明の詳細な説明
本発明の局面は、先進のマイクロ組織加工技術を利用して、長期的なBMIおよび/またはニューロモデュレーションのための最初の生きた生物学的電極を創出するものである。新規なマイクロ組織工学神経回路網(マイクロTENN)は、一般的に微小管状ハイドロゲル内に含有される長い軸索路によって接続された別個のニューロン集団から構成される生きた電極として作用する。これらの生きたミクロンスケールの構造体は、局所ニューロン/軸索との統合のために所定の深さまで脳に貫入することが可能であり、後ろの部分は脳表面上に外在したままであり、そこで次世代光および電気インターフェースを使用して機能的情報が入力/制御および/または出力/収集される。
【0068】
マイクロTENNニューロンは、生存し、局所の宿主ニューロンと統合され、それらの軸索構成を維持する。これらの特徴は、生きた電極を脳の深部領域に出入りする機能的な中継として進歩させるために活用される。この極端な理論的枠組みでは、これらの構造体の生物学的構成成分だけが脳に貫入することで、慢性異物応答を減弱させる。そのうえ、特別仕様の細胞および組織工学技法により、マイクロTENNニューロンと一緒にシナプスを形成する特異的な宿主ニューロンサブタイプが影響を受け、それにより、従来のマイクロ電極では今のところ達成不可能である局所刺激および記録のレベルの特異性が付加され得る。
【0069】
電気生理学技法、光遺伝学技法、および先進の顕微鏡検査技法は、ラットにおける皮質表面での脳神経回路網とのマイクロTENNシナプスの統合およびマイクロTENNニューロンとの交差通信の証拠を示している。この多機能のプラットフォーム技法は、局所脳活動を読み出し、入力を提供して神経の活動および機能に影響し、それにより、ネイティブな神経回路網と機能的に統合されるためおよび二方向刺激および記録用の管路として役立つための生きた組織加工電極の最初の実証を提供する。神経科学と工学との接点におけるこの潜在的変換技法は、従来の電極の実行可能な代替として予備形成した植え込み可能な神経回路網のための基盤を築くものである。
【0070】
ここで図1を参照すると、本発明の一態様は、植え込み可能な生きた電極(100)を提供する。この電極は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア(102)および該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア(102)を同軸性に囲むハイドロゲルの鞘(104)を含むことができる。1つまたは複数のニューロン(106a、106b)を、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア(102)に沿ってまたはその内部に植え込むことができる。1つまたは複数のニューロン(106a、106b)は、植え込み可能な生きた電極の第1端(108)の近位にある1つまたは複数の光遺伝学的または磁気遺伝学的ニューロンを含むことができる。
【0071】
細胞外マトリックスコア(102)は、軸索成長を強化する、生存を促進する、宿主の炎症を軽減する、または宿主組織への組成物の統合を促進するタンパク質、核酸、小分子、ホルモン、成長因子などを含むことができる。例示的なタンパク質には、コラーゲン、ラミニン、フィブリン、およびフィブロネクチンが含まれる。細胞外マトリックスコア(102)は、ヒアルロン酸を追加的または代替的に含むことができる。細胞外マトリックスコアは、単層(生きた軸索の周囲に硬化した単一材料)、二層(本明細書記載の通り)、または三層であることができる。
【0072】
ハイドロゲルの鞘(104)は、植え込みの前、途中、および/または後に、細胞外マトリックスコア(102)を屈曲、座屈、つぶれなどから保護するために十分な、細胞外マトリックスコア(102)のための機械的支持を提供することができる。例えば、ハイドロゲルの鞘(104)は、ニードル内の負荷およびニードルから対象の組織内への前進を可能にするために十分な機械的剛性を有することができる。ハイドロゲルの鞘(104)は、いくつかの態様では、軸索の成長をハイドロゲルの鞘(104)内および/またはその中心軸に実質的に平行に案内および制限するために、軸索の投射を通さないまたは実質的に通さないものであり得る。いくつかの態様では、ハイドロゲルの鞘(104)は、ある期間(例えば1ヶ月)の後に、溶解する、分解する、および/または吸収される。
【0073】
いくつかの態様では、細胞外マトリックスコア102およびハイドロゲルの鞘(104)の両方は、ハイドロゲルから製作される。とはいえ、これらのハイドロゲルは、異なる機械的および/または化学的性質を有することができる。
【0074】
加えて、鞘(104)は省略することができ、コア(102)は、細胞および軸索が包埋されかつ植え込みの前、途中、および/または後に屈曲、座屈、つぶれなどに耐えるために十分な強度を有するハイドロゲルおよび/または細胞外マトリックスから製作することができる。
【0075】
1つまたは複数のニューロン(106a、106b)は、植え込み可能な生きた電極(100)内の様々な位置に植え込むことができる。一態様では、ニューロン(106)は、一端(例えば、第1端 108または第2端 110)に植え込まれ、植え込み後に電極の他端へと成長する。別の態様では、ニューロンは、植え込み可能な生きた電極(100)の中心に植え込まれ、軸の両方向に成長する。なお他の態様では、ニューロンは、電極(100)の末端表面に配置され、細胞外マトリックスコア(102)の中へおよびそれを通り抜けて成長する。なお他の態様では、ニューロン(106)は、植え込み前に細胞外マトリックスコア(102)と混合されまたはそれ全体に配置され、隣接ニューロンと接続する軸索の投射を形成して、電極(100)の端から端までの通信を促す。一態様では、ニューロンは、細胞外マトリックスコア(102)とハイドロゲルの鞘(104)との間の界面に存在する。他の態様では、グリア細胞、または他の神経もしくは非神経表現型が、ニューロンの成長および表現型分化を促すために植え込まれる。
【0076】
本明細書提供の組成物および方法に有用なニューロンには、運動または感覚PNS、CNS、およびニューロン表現型に分化した幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞、胚性幹細胞など)を非限定的に含む、全てのニューロンサブタイプが含まれる。本発明の一態様では、ニューロンは、ニューロン細胞(例えば、皮質ニューロン、後根神経節ニューロンもしくは交感神経節ニューロン)である任意の細胞、またはニューロン細胞に分化することが可能な任意の細胞(例えば幹細胞)に由来する。ニューロンは、対象に対して自己由来、同種、または異種であり得る。
【0077】
ある特定の態様では、ニューロンは、後根神経節ニューロンまたは運動ニューロンを含む末梢または脊髄ニューロンである。ある特定の態様では、ニューロンは、大脳皮質、視床、海馬、線条体、黒質および小脳由来のニューロンを非限定的に含む、脳由来である。ある特定の態様では、初代大脳皮質ニューロンには、皮質第I、第II、第III、第IV、第V層、および/または第VI層(別々またはその任意の組み合わせ)由来のニューロン、視覚皮質由来のニューロン、運動皮質由来のニューロン、感覚皮質由来のニューロン、および嗅内皮質由来のニューロンが非限定的に含まれる。ニューロンは、興奮性または抑制性ニューロンであり得る。ニューロンは、グルタミン酸作動性、ドーパミン作動性、GABA作動性、セロトニン作動性、コリン作動性、またはその主要な神経伝達物質に基づき分類されるような任意の他の種類のニューロンであり得る。
【0078】
本発明に有用なニューロンは、細胞株またはドナーもしくは志願者などの他の哺乳動物起源に由来し得る。一態様では、ニューロンは、ヒトニューロンである。一態様では、ニューロンは、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または非ヒト霊長類から得られたニューロンを含む、非ヒト哺乳動物ニューロンである。一態様では、ニューロンは、皮質ニューロン、海馬ニューロン、後根神経節ニューロンまたは交感神経節ニューロンである。別の態様では、ニューロンは、誘導されてニューロン様になる不死化細胞株(例えば、NT2、PC12)に由来する。一態様では、ニューロンは、屍体に由来するニューロンである。別の態様では、ニューロンは、神経節切除、嗅上皮生検、側頭葉切除、腫瘍境界切除、末梢神経生検、脳生検、生検を伴う脳室シャント植え込み、または他の臨床手技を受けた患者に由来するニューロンである。さらに、ニューロンは、単一の統合されたニューロンまたは複数の統合されたニューロン(すなわち統合された神経束)であり得る。
【0079】
ある特定の態様では、グリア細胞(例えば、突起を伸長して、宿主のシナプス、軸索、樹状突起、細胞体、および/または宿主のネットワーク活動をモデュレートし得る星状膠細胞)が、ニューロン106に追加的にまたは代替として組み込まれる。これらは、脳または脊髄に由来する星状膠細胞であることができる。ある特定の態様では、細胞は、嗅神経鞘細胞、乏突起膠細胞、シュワン細胞、内皮細胞、または筋細胞/筋芽細胞である。
【0080】
構造体のどちらかの端部に位置づけられる細胞の数または密度は、使用されているニューロンの種類および構造体の最終的な使用に依存する。例えば、ある特定の態様では、1、100、1,000、10,000、1,000,000、100,000,000個、またはそれよりも多い細胞が、構造体の一端に位置づけられる。
【0081】
ある特定の態様では、ニューロンは、インビトロまたはエクスビボで培養される。構造体のコアを通る軸索の成長を促進するために適切な条件下でニューロンの培養を行うことができる。これらの条件には、適切な温度および/または圧力、電気的および/または機械的活動、力、適切な量のO2および/またはCO2、適切な量の湿度、ならびに無菌または近無菌条件が非限定的に含まれる。例えば、細胞は、栄養補助(例えば、栄養素および/またはグルコースなどの炭素源)、外因性ホルモンもしくは成長因子、分化因子、および/または特定のpHを要求し得る。ニューロンの成長および生存を支持することができる例示的な細胞培養培地には、NEUROBASAL(登録商標)培地、NEUROBASAL(登録商標)A培地、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、および最小必須培地(MEM)が非限定的に含まれる。ある特定の態様では、培養培地にB-27(登録商標)サプリメントが補給される。ある特定の態様では、培養培地は、ウシ胎仔血清または別の種由来の血清を少なくとも濃度1%から約30%、または約5%から約15%、または約10%で含有し得る。一態様では、培養培地は、約2% B27および約500μM L-グルタミンを補充したNEUROBASAL(登録商標)を含む。
【0082】
図1に示すように、単一の電極100は、複数の異なる種類のニューロン(106a、106b)の多重化を支持することができる。例えば、ニューロン(106a、106b)は、別個の構造(112a、112b)を標的とするおよび/または異なるチャンネルに沿った通信を促すように設計された異なる表現型を有することができる。一態様では、ニューロンは、神経の光遺伝学的制御および/またはモニタリングのために異なる波長のエネルギーに応答するまたはそれを発する。例えば、電極(100)は、例えば光源(114)からの光の第1波長を適用し、検出器(116)を使用して第2の異なる波長を検出することによって二方向刺激および記録を支援することができる。
【0083】
寸法
ここで図2A~2Cを参照すると、電極(100)は、多様な直径および/または厚さを有することができる複数の層(102、104、206)を含むことができる。
【0084】
細胞外マトリックスコア(102)は、約10μm~約1,000μmの最大断面寸法を有することができる。例えば、最大断面寸法は、約10μm~約20μm、約25μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約150μm、約150μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約500μm、約500μm~約700μm、および約700μm~約1,000μmからなる群より選択することができる。
【0085】
ハイドロゲルの鞘(104)は、約20μm~約1,200μmの最大断面寸法を有することができる。例えば、最大断面寸法は、約20μm~約50μm、約50μm~約100μm、約100μm~約200μm、約200μm~約250μm、約250μm~約300μm、約300μm~約350μm、約350μm~約400μm、約400μm~約450μm、約450μm~約500μm、約500μm~約600μm、約600μm~約800μm、およびおよそ約800μm~約1,200μmからなる群より選択することができる。別の言い方をすると、ハイドロゲルの鞘(104)の厚さは、約5μm~約400μmであることができる。
【0086】
ハイドロゲルの鞘(104)は、カルボキシメチルセルロース(CMC)の層によってさらに囲まれていることができる。CMCは、カルボキシメチル基がヒドロキシル基と結合したセルロース誘導体である。機能的性質は、セルロース構造の置換度および重合度に依存する。CMCは、脱水状態で硬く、水和状態でゲル様である点で独特の性質を有し、微小寸法で状態間に短い移行期間がある。また、CMCは、ヒトおよび動物に無毒であり、安価であり、広く利用可能である。厚さ約15μmを有するCMC層 206は、対象の脳への無ニードル挿入を可能にするために十分な初期剛性を提供する。
【0087】
いくつかの態様では、ハイドロゲルの鞘(104)は、国際公開公報第2015/066627号に表示および記載されているCMC鞘によって完全に置き換えられている。
【0088】
生きた電極(100)は、臨床的および解剖学的必要性を反映するために様々な深さを有することができる。例えば、生きた電極(100)は、第2端(110)がニューロン集団/核/層に隣接して存在する一方で、(例えば、光および/または磁場による操作のために)第1端(108)が対象の脳の外表面に隣接して(例えば、同一平面、わずかに下、またはわずかに突き出て)存在するために十分な深さまで挿入するための大きさに作ることができる。例えば、電極(100)は、約100μmから約2cmまたはそれよりも大きい長さを有することができる。いくつかの態様では、生きた電極は、対象の脳の外表面に対して所望の長さにインサイチューでトリムする前に、所望の深さに(例えば、イメージングおよび/またはフィードバックに基づき)植え込むことができる。
【0089】
ニューロン
本発明の態様は、光感受性イオンチャンネルを発現するように遺伝的に改変された細胞を生きた組織中で制御するために、光の使用を可能にする光遺伝学的ニューロンを含むことができる。例えば、ニューロンは、チャンネルロドプシン、ハロロドプシン、およびアーキオロドプシン(archaerhodopsin)ならびに/またはカルシウム(例えば、エクオリン、カメレオン(Cameleon)、GCaMP)、塩化物(例えば、クロメレオン(Clomeleon))もしくは膜電圧(例えば、マーメイド(Mermaid))に対する1つもしくは複数の光遺伝学的センサーなどの1つまたは複数の光遺伝学的アクチュエーターを発現することができる。
【0090】
本発明の態様は、交流磁場の印加を通じて生きた組織において制御することができる磁気遺伝学的ニューロンを含むことができる。磁気遺伝学的技法は、Xiaoyyang Long et al., "Magnetogenetics: remote non-invasive magnetic activation of neuronal activity with a magnetoreceptor," 60(24) Sci. Bull. 2107-19 (2015)に記載されている。
【0091】
ある特定の態様では、ニューロンは、因子を分泌して疾患の病態生理をモデュレートするように、移植細胞を基礎疾患の病態生理に耐性にさせるように、または新規なイオンチャンネルおよび受容体を発現して微妙な生物学的制御を可能にするように、遺伝的に改変される。例えば、病理学的アルファ-シヌクレイン、タウ、またはアミロイド-ベータなどのタンパク質の蓄積をニューロンにより十分に処理/分解させる遺伝子を付加/改変することができる。
【0092】
本発明の態様は、初代大脳皮質ニューロンおよび/または後根神経節ニューロンを追加的または代替的に含むことができる。
【0093】
生体適合性
本明細書記載の構造は、生体適合性であることができる。例えば構造は、植え込まれたときに、対象に有害な慢性の免疫原性または炎症性応答を発生すべきでない。ある特定の態様では、構造の1つまたは複数の要素は経時的に分解し、それにより、被包された軸索路を対象内に残す。一態様では、生きた電極は、同種ニューロンを使用して発生される。同種ニューロンは、明白な免疫原性または炎症性応答を誘起すべきでない。一態様では、生きた電極は、患者自身の幹細胞(例えば、人工多能性幹細胞、または嗅上皮、舌、脳室上位、もしくは歯状回に見られる幹細胞などの内因性幹細胞集団)に由来する自己ニューロンを使用して発生される。
【0094】
ハイドロゲル
ハイドロゲルは、一般的に多量の液体を吸収することができ、平衡時に典型的には、約60%よりも大きい液体および約40%未満のポリマーから構成される。好ましい態様では、ハイドロゲルの水分含量は約80~99.9%である。ハイドロゲルは、架橋ポリマーネットワークの固有の生体適合性が原因で特に有用である(Hill-West, et al., 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5967-5971)。ハイドロゲルの生体適合性は、親水性および大量の生物学的液体を吸う能力のせいであるとすることができる(Preparation and Characterization of Cross-linked Hydrophilic Networks in Absorbent Polymer Technology, Brannon-Peppas and Harland, Eds. 1990, Elsevier: Amsterdam, pp 45-66; Preparation Methods and Structure of Hydrogels in Hydrogels in Medicine and Pharmacy, Peppas, Ed. 1986, CRC Press: Boca Raton, Fla., pp 1-27)。
【0095】
ハイドロゲルは、親水性バイオポリマーまたは合成ポリマーを架橋することによって調製することができる。親水性バイオポリマーの物理的または化学的架橋から形成されたハイドロゲルの例には、ヒアルロナン、キトサン、アルギネート、コラーゲン、デキストラン、ペクチン、カラゲナン、ポリリシン、ゼラチン、ヒアルロン酸、またはアガロースが非限定的に含まれる(Hennink and van Nostrum, 2002, Adv. Drug Del. Rev. 54, 13-36およびHoffman, 2002, Adv. Drug Del. Rev. 43, 3-12)。これらの材料は、直鎖または分岐の多糖またはポリペプチドから作られた高分子量骨格鎖からなる。化学的または物理的架橋合成ポリマーベースのハイドロゲルの例には、(メタ)アクリレート-オリゴラクチド-PEO-オリゴラクチド-(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(PEO)、ポリ(プロピレングリコール)(PPO)、PEO-PPO-PEOコポリマー(Pluronics)、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(メタクリレート)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、PL(G)A-PEO-PL(G)Aコポリマー、ポリ(エチレンイミン)などが非限定的に含まれる。(Hoffman, 2002, Adv. Drug Del. Rev, 43, 3-12)。いくつかの態様では、ハイドロゲルは、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)を含む。
【0096】
一態様では、ハイドロゲルは、少なくとも1種類のバイオポリマーを含む。他の態様では、ハイドロゲルの足場は、少なくとも2種類のバイオポリマーをさらに含む。さらに他の態様では、ハイドロゲルの足場は、少なくとも1種類のバイオポリマーおよび少なくとも1種類の合成ポリマーをさらに含む。
【0097】
一態様では、ハイドロゲルは、アガロースを含む。アガロースの濃度は、場合によっては、最終的に培養されるニューロンの種類、所望の機械的性質などに依存し得る。例えば、アガロースの濃度を増加させることは、ニューロンの生存および神経突起の伸長を強化する。一態様では、アガロースの濃度は、約0.1%から約10%である。一態様では、アガロースの濃度は、約0.5%から約5%である。一態様では、アガロースの濃度は、約4%である。
【0098】
ハイドロゲルは、天然の生きた細胞外マトリックスによく似ている(Ratner and Hoffman. Synthetic Hydrogels for Biomedical Applications in Hydrogels for Medical and Related Applications, Andrade, Ed. 1976, American Chemical Society: Washington, D.C., pp 1-36)。ハイドロゲルは、PLA、PLGAまたはPGAポリマーを組み入れることによってインビボ分解可能にすることもできる。そのうえ、ハイドロゲルは、細胞接着および増殖を促進することができる、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、または例えば表面修飾用のRGDで修飾することができる(Heungsoo Shin, 2003, Biomaterials 24:4353-4364; Hwang et al., 2006 Tissue Eng. 12:2695-706)。実際に、分子量、ブロック構造、分解可能な結合、および架橋モードを変更することは、インスタントハイドロゲルの強度、弾性、および分解特性に影響することができる(Nguyen and West, 2002, Biomaterials 23(22):4307-14; Ifkovits and Burkick, 2007, Tissue Eng. 13(10):2369 85)。
【0099】
例えば共有結合、被包などを介してハイドロゲルマトリックスに組み入れることができる分子には、ビタミンおよび他の栄養補助物質;糖タンパク質(例えばコラーゲン);フィブロネクチン;ペプチドおよびタンパク質;神経伝達物質;成長因子または神経栄養因子;分化因子;糖質(単純および/または複合の両方);プロテオグリカン;抗原;オリゴヌクレオチド(センスおよび/またはアンチセンスDNAおよび/またはRNA);抗体(例えば、感染因子、腫瘍、薬物またはホルモンに対するもの);ならびに遺伝子療法試薬が非限定的に含まれる。ハイドロゲルは、多様なタンパク質(例えばコラーゲン)または治療剤などの化合物を共有結合的に取り付けるための官能基で修飾されている場合がある。マトリックスに組み入れることができる治療剤には、鎮痛薬、麻酔薬、抗真菌薬、抗生物質、抗炎症薬、駆虫薬、解毒薬、抗ヒスタミン薬、抗高血圧薬、抗マラリア薬、抗微生物薬、抗精神病薬、解熱薬、防腐薬、抗関節炎薬、抗結核薬、抗ウイルス薬、化学療法剤、カラーまたは蛍光イメージング剤、コルチコイド(ステロイドなど)、抗うつ薬、抑制薬、診断補助薬、酵素、ホルモン、催眠薬、ミネラル、栄養補助薬、副交感神経作用薬、カリウム補給薬、放射線増感薬、放射性同位体、イメージング造影剤、鎮静薬、スルホンアミド、刺激薬、交感神経模倣薬、精神安定薬、血管収縮薬、血管拡張薬、ビタミン、キサンチン誘導体などが非限定的に含まれる。治療剤は、他の小有機分子、天然単離実体もしくはそれらの類似体、有機金属剤、キレートされた金属もしくは金属塩、ペプチドベース薬、またはペプチドもしくは非ペプチド性受容体を標的とするもしくはそれと結合する作用物質でもあり得る。ある特定の態様では、治療剤とマトリックスとの連結は、プロテアーゼ感受性リンカーまたは他の生分解性の連結を介したものであり得ることが予期される。
【0100】
他の適切なハイドロゲル構成成分は、国際公開公報第2015/066627号に記載されている。
【0101】
植え込み方法
ここで図3を参照すると、本発明の別の局面は、方法(300)を提供する。
【0102】
段階S302において、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極が、対象内に植え込まれる。適切な植え込み領域には、対象の脳、脊髄、末梢神経系(例えば、末梢ニューロン、末梢軸索、軸索経路、神経節、後根神経節、自律神経節など)、および筋肉が含まれる。電極は、イメージングの助けを借りてまたは借りずに、定位手動または定位自動デリバリーシステムの助けを借りてまたは借りずに、植え込むことができる。いくつかの態様では、複数の電極は、関心対象の領域に植え込まれる。
【0103】
段階S304では、植え込み可能な生きた電極を成長させ、1つまたは複数の深部隣接宿主構造(例えば、宿主のニューロンまたは神経回路網)と数時間、数日、数週間、数ヶ月、数年、または数十年に渡り結合させる。最初の統合は、数時間から数日程度で起こるものの、慢性異物応答、機械的分離問題、電極近くのニューロン密度の低下、およびグリア性瘢痕形成が原因で経時的に有効性を失う従来の電極と対照的に、生きた電極は、数週間、数ヶ月、数年、数十年、および/または植え込まれた個体の生涯に渡り安定なインターフェースを形成することができる。追加的に、生きた電極は、生きたニューロンおよび軸索を含むので、構造体のニューロンと宿主ニューロンとの間に形成したシナプスは、永続性であることができ、および/または対象の体内の類似のシナプスと一致する自然なターンオーバー/可塑性を経験することができる。生きた電極と宿主の間に、ギャップ結合、電気シナプス、およびエファプス結合を非限定的に含む他の細胞通信点が形成することができる。
【0104】
段階S306において、適合性の刺激装置は、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置される。例えば、適合性の光波長を生成している光源を、植え込まれた電極に隣接する対象の脳表面にもしくは対象の頭蓋骨の外側に、または特別に適合する透明の頭蓋骨置換片の端から端まで頭蓋骨を通して、配置することができる。同様に、適合性の磁気源を、対象の脳表面にもしくは対象の頭蓋骨の外側に、または特別に適合する透明の頭蓋骨置換片の端から端まで頭蓋骨を通して、配置することができる。同様に、超音波などの音源を、対象の脳表面にもしくは対象の頭蓋骨の外側に配置することができる。
【0105】
段階S308およびS310において、植え込まれた電極のうちの少なくとも1つを作動させて脳活動を興奮(S308)、抑制(S310)、および/または他の方法でモデュレート(S312)するように、適合性の刺激装置を制御することができる。
【0106】
段階S314において、適合性のセンサーは、1つまたは複数の植え込み可能な生きた電極のうちの少なくとも1つの近位に配置される。例えば、植え込まれた電極に隣接する対象の脳表面に光センサーを配置することができる。同様に、適合性の磁気センサーを、対象の脳表面または対象の頭蓋骨の外側に配置することができる。
【0107】
段階S316において、植え込まれた電極によって発される1つまたは複数のシグナルは、センサーによって検出される。
【0108】
ある特定の態様では、植え込み可能な生きた電極は、脳とインターフェースして、記録もしくはニューロンを刺激するために使用される。ニューロンの刺激を、神経系の特定の機能または機能障害の処置のためまたは診断法として使用することができる。神経系機能障害の例は、パーキンソン病、アルツハイマー病、レビー小体認知症、前頭側頭認知症、ハンチントン病、プリオン病、運動ニューロン病、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳炎、てんかん、頭および脳奇形、水頭症、発作、慢性痛、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳卒中、無酸素性脳傷害、脳性麻痺、肥満、うつ病、多発性硬化症、炎症、片頭痛、糖尿病性ニューロパチー、閉じ込め症候群、膠芽腫、乏突起膠腫、転移などを非限定的に含むことができる。
【0109】
マクロTENN
本発明の別の態様は、異なる束/軸索へのより大きなアクセスを提供する末梢神経インターフェース(PNI)電極および技法を提供する。マクロ組織工学神経回路網(マクロTENN)は、より大きく、PNS適用のために特異的に改変されている。本発明の態様は、神経束にマクロTENNの内表面周囲に広がらせるように軸索の再生を導く。分離は、束および/または軸索を分離して、以前の技法では利用不可能であった神経選択性レベルを得ることが可能であるという機能的有用性を有する。
【0110】
末梢神経系における使用に加えて、マクロTENNを頭蓋神経とインターフェースするために使用することができる。
【0111】
マクロTENNは、本明細書記載のマイクロTENN技法と類似の技法を採用するが、より大きなハイドロゲルカラムの結果として、軸索が管の周辺に沿ってのみ成長する管状構造体が生じる。このように、本態様は、脱神経束化(defasciculization)および/または軸索からの広がりを促し、その結果、軸索は、管状カラム(周辺に配置された)内部または外部で多数の電極とより密接にインターフェースすることもできる。管状構造体中へのこの成長方法をテコ入れして、宿主の軸索を広げ、それらを接触している周囲の表面電極と近づけることは、末梢の宿主軸索との高度に選択的なインターフェース形成(記録または刺激)を可能にする。
【0112】
本明細書記載のマイクロTENNと同様に、マクロTENNは、図15A~15Cに示されるように細胞外マトリックス(ECM)コアと管状ハイドロゲルシェル(上記)との2部構築を有することができる。ECMコアは、ラミニンおよび/またはコラーゲン(上記)を非限定的に含む数個の異なる構成成分からなることができる。軸索は、コア内で成長することができ、一方でハイドロゲルは、コアチャンネル内外への可溶性因子の伝播を可能にする。
【0113】
例示的な寸法は、約1mm~約5mm(例えば、約1mm~約2mm、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、約4mm~約5mmなど)の細胞外マトリックスコア直径Aを含む。他の例示的な寸法は、約2mm~約7mm(例えば、約2mm~約3mm、約3mm~約4mm、約4mm~約5mm、約5mm~約6mm、約6mm~約7mmなど)のハイドロゲルの鞘の直径Cを含む。いくつかの態様では、ハイドロゲルの鞘Bの厚さは、約1mm~約2mmである。
【0114】
凝集物性TENN
本発明の別の局面は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアおよび該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた複数の凝集したニューロンを含む凝集物性TENNを提供する。
【0115】
本発明の別の局面は、細胞外マトリックスコアを提供する段階;および細胞外マトリックスコアの少なくとも一端を複数の凝集したニューロンと接触させる段階を含む、植え込み可能な生きた電極を製造する方法を含む。
【0116】
様々な態様では、凝集物性TENNは、それらの解離した対応物よりも高い軸索成長速度を示す。凝集物性TENNという用語は、TENNの構築前にニューロンが集中して凝集物を形成するTENNを包含し得る。本用語は、凝集物の任意の形成方法を包含し得る。角錐状ウェル中でのニューロンの遠心分離は、そのような凝集物を形成する一方法である。本技法を使用して製造されるTENNは、遠心分離されたTENNと称される場合があり、これらの用語は、本明細書において互換的に使用される。とはいえ、当業者は、これらの用語が必ずしも同一の広がりをもつわけではないと認識している。解離されたニューロンについて観察された成長速度は、文献に報告されたものと類似していた。しかし、凝集物からの軸索成長速度は、以前の報告を大きく超えた。一般的に、皮質の軸索は、平面培養で3日かけて100から1000μmの長さに達する。このように凝集物からの成長が増加する正確な原因は、まだ研究中である。しかし、理論に縛られることを望むものではないが、培地中に追加的な成長因子が存在しないこと、および解離したマイクロTENNの成長が比較的遅いことは、軸索「束」を成長させることにより起こる、より制御されたインビボ様ニューロン微小環境および自己強化性のより方向付けられた軸索伸長などの凝集法の特徴を意味づけている。
【0117】
様々な態様では、細胞外マトリックスコアは、コラーゲン-ラミニン細胞外マトリックスコアである。ラミニンは、接着分子であるので、軸索成長を加速するよりもむしろ支持し得る。複数の研究が、哺乳動物CNSにおける成長円錐挙動と軸索成長速度との間の関係を検討している。注目すべきことに、軸索の分岐は、成長円錐が一時的に前方移動を止め、一過性に伸長を減速する領野で起こる傾向がある。またもや理論によって限定されることを望むものではないが、二方向性マイクロTENN内の成長円錐は、凝集物から現れると、それ自体の凝集物内のニューロンまたは反対側の凝集物内のニューロンのいずれかという2クラスの標的が提示される。ECMが支持/成長促進を組み合わせること、および標的の選択が限られていることは、成長円錐の停止/軸索分岐を減少させ、適切な標的に到達するまで凝集物間区域内の成長を加速し得る。様々な態様では、LEBI,5mm群内のマイクロTENNが、5DIVでLEBI,2mm群と比較して速い成長を示したので、軸索とそれらの標的との間の距離は、軸索が成長する速さにも影響する場合がある。解離したマイクロTENNの最大10DIVの連続成長(たとえより遅い速度でも)は、凝集物(軸索成長およびシナプス形成についての大きな標的)に向けて集団で成長するのではなく、むしろ構造体全体のニューロンのランダムな分布に起因する場合があり、ニューロンは、それらの最も近くの隣接ニューロンに向けて個別に成長し続ける。
【0118】
迅速な軸索成長に加えて、シナプスの構造上の証拠が、早くも4DIVで目に見えた。シナプスはニューロン間の主要な接触および通信点であるので、シナプス形成の測定が、ニューロン培養の機能的成熟を決定するために使用されることが多い。シナプシン陽性の斑点が、4DIV~28DIVに観察されたが、これは、マイクロTENN内のニューロンが、プレーティングのすぐ後に時間と共に大きく増加した機能的接続を形成し始めることを示唆している(図33)。実際に、シナプスの形成が時間の関数として増加する傾向にある平面皮質培養についての文献と一致して、より遅い時点でのマイクロTENNは、より高いレベルのシナプシンを質的に発現した。早くも4DIVでのシナプシンの存在は、高い成長速度から予想され得るように、マイクロTENNニューロンがより早期に機能的接続を形成していることを指し示し得る。あるいは、図33についてのデータを提供した実験が行われたときに、凝集物内シナプスと凝集物間シナプスとを区別しなかったので、これらのシナプスの多くが、凝集物自体の内部で形成している場合がある。凝集物間シナプスの前に凝集物内シナプスが作られていることは、より早いDIVでの高いシナプシン発現を説明し得る。全体的に見て、マイクロTENNニューロンは、所望の生きた電極構成をインビトロで迅速に一貫して形成することが可能である。これは、凝集物ベースのマイクロTENNの迅速で再現性のある生産および特徴づけを可能にする。凝集物性TENNの形成方法を含む様々な態様では、凝集物のサイズ(および同時に、構造体あたりのニューロン数)を制御することは、単一細胞懸濁液を用いて作業する場合よりも、反復可能な研究および標準化された生産方法を可能にする。凝集物性TENNおよびそれらの製造方法に関する実験の詳細を、実施例と同様に図16、17、19、23、25、26、29~31および34に提示する。
【0119】
一体型センサー
本発明の態様は、感覚受容器を本明細書記載の生きた電極内に統合して、刺激を検出することおよび対応するシグナルを対象の神経系または外部システムに伝達することの両方を行うことができる一体型センサーを提供することができる。例えば、生きた電極は、感覚後根神経節細胞ならびに/または圧受容器、化学受容器(例えば、I型/グロムス細胞およびII型グリア様細胞)、電磁受容器(例えば、赤外線受容器、光受容器、紫外線受容器)、電気受容器、水受容器(hydroreceptor)、磁気受容器、機械受容器、侵害受容器、匂い受容器、浸透圧受容器、固有受容器、味覚受容器、温度受容器などの専門化されたセンサーを有する細胞を含むことができる。生きた電極は、蝸牛および/または前庭有毛細胞も含むことができる。
【0120】
外部センサーとの統合
本発明の態様は、外部センサーから対象の神経系または外部システムにシグナルを伝達するためにも利用することができる。例えば、人造センサーは、圧力、温度、位置、力、音、匂い、光などの条件を指し示す、電気、光、および/または磁気シグナルを発生することができる。本明細書記載の生きた電極構造の態様は、これらのシグナルを受信し、シグナルを対象の神経に伝達/変換することができる。
【0121】
生きた電極内への電気機械デバイスの統合
本発明のいくつかの態様が、本明細書記載の生きた電極に隣接し得るがそれと別個であり得る、表面オプトロードなどの外部電気機械デバイスに関連して記載されるものの、本発明の他の態様は、そのようなデバイスを生きた電極内に組み入れることができる。例えば、電気接触は、生きた電極内で成長させるまたはその中に挿入することができる。同様に、オプトロード、電磁デバイス、熱電式(ジュール-トムソン抵抗)加熱器、熱電式(ペルチェ)冷却器、および/または化学物質アプリケーターを生きた電極内で成長させるまたはその中に挿入することができる。例えば、神経伝達物質、ニューロンが応答するリガンド、および/または電気シグナルに応答するイオンを放出するように化学物質アプリケーターを適応および設定することができる。
【0122】
生物学的多重化
生物学的多重化は、電気通信に使用される種類のチャンネル選択、多重化および逆多重化の生物学的バージョンを包含すると広く定義することができる。いくつかの態様では、生物学的多重化は、集束および発散シグナル伝達の両方を含み、構造体の多数のニューロン内のシグナル処理は、単一の宿主実質標的に集束することができ、1つの構造体ニューロンは、多数の宿主実質ニューロンを標的とするために軸索を発散的に分岐させることができる(図21、パネルA~C)。同様に、宿主脳内のニューロンは、それ自体、内因性神経回路網に包埋しているので、生きた構造体が軸索出力をこれらの宿主ニューロンの1つに送る能力は、内因性神経回路網の特異的で安定な活性化を可能にする。1つの軸索は、原則的に数千の標的ニューロン上にシナプス形成することができるので、構造体内のニューロンの相対的に小さな集団は、広範囲に渡る効果を達成することもできる。マイクロパターン形成技法を配備することによって、生きた電極をインビトロで作り、インビボで植え込んだときにきめ細かい時分割多重化を可能にすることができる(図21、パネルD)。
【0123】
幹細胞から形成される生きた電極
その様々な局面および態様では、本発明の組成物は、幹細胞から生成され得る。様々な態様では、有害な免疫応答が、患者由来の自己細胞の使用により緩和され得る。ニューロン、乏突起膠細胞、星状膠細胞、およびシュワン細胞は、ヒト胚性幹細胞、人工多能性幹細胞、および脂肪由来幹細胞から分化させることができる。幹細胞の直接インビボ送達が、失われた細胞に取って代わり、栄養因子の放出により神経再生を助長し得るものの、それらが神経系を刺激するメカニズムは、不明のままであり、それらは、望ましくない表現型に分化する潜在性を有し、および/または腫瘍形成を招く。比較すると、生きた電極内で分化したニューロンを使用する顕著な利点がある。幹細胞を皮質投射ニューロン、介在ニューロン、ドーパミン作動性A9ニューロン、脊髄運動ニューロンなどの、特異的ニューロンサブタイプに分化させる既存のプロトコールを、特異的なニューロン組成を有する生きた電極を加工するために使用することができる。ニューロンは、最終分化しておりかつ加工された構造体の3D構成によって物理的に束縛されているので、このアプローチは、腫瘍形成のリスクがより少ない可能性がある。様々な態様では、再生応答を強化するために、分化したニューロンを遺伝的に改変することができる。以前の研究は、移植された細胞の低い生存率が、変成性のまたは「敵対的な」損傷環境内への送達が原因である可能性があると示唆している。様々な態様では、分化したニューロンの耐久性および再生能は、トランスフェクション技法またはウイルストランスダクションを使用することによる栄養因子の過剰発現により増強され得る。このアプローチは、操作された組織を、神経変性疾患の基礎をなす病態生理に対して耐性にし得る。
【0124】
制御プログラム細胞死性の生きた電極
様々な態様では、本明細書記載の生きた電極は、生きた電極ニューロンの、したがって軸索のプログラム細胞死を駆動する制御された「殺滅スイッチ」を含むように操作され得る。実際に、移植された構造体にプログラム細胞死を誘導するために異なる戦略を採用できることは、生きた電極の安全性を強化するための潜在的に重要な方法である。生きた電極構造体に包埋することができる開発中の複数の自殺遺伝子技法がある。これらの自殺遺伝子は、プロドラッグ、ならびに2つの臨床的に検証された構造体、iCasp9およびHSV-TKの導入によって活性化されるまで生物学的に不活性であり、様々な態様で適切であり得る迅速なアポトーシスに対する緩徐なアポトーシスにそれぞれ基づく異なる状況に十分に適している。
【0125】
軸索ベースの生きた電極のための潜在的用途
様々な態様では、生きた電極は、従来型のニューロモデュレーションを強化もしくは置換するために配備され得る、またはより遠くまで及ぶ薬物送達適用のために適用され得る。例えば、生きた電極は、特異的接続の強度に影響する重要な位置に正確に送達される場合がある。様々な態様では、大きすぎる影響を及ぼしておりかつ有害な機能的効果を引き起こしている経路をモデュレートするために、例えばてんかん様活動を示している回路網において過同期活動を弱めるために(下により詳細に説明する)、生きた抑制性(例えばGABA作動性)電極がシナプスを形成するように設計され得る。逆に、いくつかの態様では、興奮性(例えばグルタミン酸作動性)の生きた電極が、例えば変性経路の標的でグルタメートを放出している構造体由来の軸索とシナプスを形成して、弱い経路を強化し得る。様々な態様では、生きた電極は、緊張性(自己ペース/連続的)活動を介するか、宿主から生きた電極ニューロン細胞体/樹状突起への入力に応答することによるか、または外部に置かれたハードウェアもしくはコンピューターから制御されたかのいずれかの、軸索末端での神経伝達物質の大量放出によっても作用する場合がある。
【0126】
この種類の生物学的ニューロモデュレーションは、直接的(すなわち、シナプス介在的)に、興奮性もしくは抑制性入力を(もしくは両方を同時に)提供することができ、または回路の機能を強化するために広範性のモデュレーション神経伝達物質(例えばドーパミン)の制御放出を提供することができる。軸索ベースの生きた電極は、コンピューター制御の調節/フィードバックの可能性をもつ、構造体と周囲の脳との間で相互に中継および処理されるネットワークフィードバックに基づき作用することによって、例えばより一般的なニューロン移植片と比べて、この役割を独特に果たすことができる。本発明の組成物および方法の適用の見本を下に詳述する。
【0127】
フリードリヒ運動失調
フリードリヒ運動失調の大部分の例では、染色体9q13上のフラタキシン遺伝子の両方の対立遺伝子のイントロン1におけるトリヌクレオチド(GAA)リピートのエクスパンションが、遺伝子の転写低下(すなわち、サイレンシング)、遺伝子産物フラタキシンの発現減少、および後柱経路の最終的な破壊に繋がる。結果として患者は、末梢からの自己受容性および識別性シグナルの不在下で重症の運動不全を発生する。様々な態様では、生きた電極は、人工の感覚アーク(sensory arc)を提供することもできる。末梢から(四肢全ての関節に装着されたひずみ計、加速度計およびジャイロスコープ、または末梢神経の植え込み型カフ記録などから)のシグナルに打ち込むことによって、一次感覚皮質に植え込まれた生きた電極は、感覚フィードバックを提供することもでき、改善された随意運動および機能的独立性を可能にする。グルタミン酸作動性ニューロンと共に成長させた後、これらの生きた電極を中心後回の第IV層に終止するように植え込むこともでき、生きた電極自体が極めて小さいので、様々な態様では、異なる関節に対応する複数の構造体を植え込むこともできる(例えば、左膝からのジャイロが感覚皮質右内側部に植え込まれた生きた電極を駆動し、左肘および肩が感覚皮質右外側部に向かい、右上下肢および左半球についてその逆である)。
【0128】
重度の運動不全および感覚フィードバック
脳幹卒中、脊髄損傷、筋ジストロフィーおよび筋萎縮性側索硬化症では、随意運動制御の基質(一次運動皮質)が骨格筋から(およびある特定の場合には、延髄性-咽頭筋からも)機能的に離断するので、人々は麻痺する。神経運動プロステーシスは、脳から直接記録し、この記録された活動を環境中の制御デバイスに送って解読し、ロボットアクチュエーターをトリガーするか、または植え込まれた神経筋刺激装置を駆動することによってこの麻痺を克服しようとするブレイン-コンピューターまたはブレイン-マシンインターフェースのクラスを含む。いくつかのヒト治験が、このアプローチの安全性および有効性を示したとはいえ、患者は、純粋に視覚フィードバックにより制御を成し遂げる。運動ニューロン疾患または筋疾患を有するある特定の患者において感覚アークが保持され得るとはいえ、それは、脊髄完全離断では失われており、外部ロボットを使用する場合、全ての患者には利用不可能である。いくつかのグループが、触覚シグナルを、一次感覚皮質に植え込まれたマクロおよびマイクロ電極によって提供される電気刺激に連結することによって触覚フィードバックを提供することを試みた。この種類の人工触覚フィードバックは、非ヒト霊長類において有効であるように見えるが、ヒトではまだ試験されていない。フリードリヒ運動失調を有する小児および成人と同様に、生きた電極は、感覚皮質に直接植え込まれることにより、感覚アークを反復し広げるのに有望である(図20、パネルB参照)。外部装着されたセンサーによって駆動される態様に加えて、他の態様では、生きた電極活動を、ロボットアーム、動力付きのロボット外骨格装具、車いす部品および他の介助デバイスに搭載されたセンサーによってトリガーすることもできる。このように、麻痺した患者は、自分自身の肢およびこれらのデバイスの「肢」を事実上「感じて」、強化された随意制御を促進することもできる。追加的に、内部に植え込まれたマイクロプロセッサーを通ってルーティングされる運動皮質および感覚皮質の両方への二方向性インターフェースを提供することによって、様々な態様では、生きた電極は、リアルタイムの閉ループで皮質間通信をモデュレートして、運動機能および感覚/固有受容フィードバックを回復することもできる。
【0129】
慢性痛
様々な態様では、特別仕様の生きた電極は、疼痛減衰回路への入力をモデュレートするために有用であり得る。様々な態様では、エンドルフィンまたはエンケファリンを分泌しているペプチド作動性ニューロンを使用して生きた電極を創出し、次にそれを脊髄、中脳水道灰白質、腹後側視床または前帯状皮質の膠様質に植え込むこともできる。様々な態様では、これは、脊髄および脳電気刺激装置の非特異的アプローチと置き換わる。様々な態様では、このニューロモデュレーションの制御は、ユーザー依存性(例えば、全身医薬ポンプと類似)であることもできるので、オピエートまたは他のペプチドを直接注入するマイクロフルイディクスと異なり、そして標的体積を非特異的にモデュレートする電極と異なり、ニューロンから構成される生きた電極は、それ自体、上方調節および下方調節を受け、したがって、耐性、乱用または離脱の発生に対する追加的な予防法を提供する。
【0130】
アルツハイマー病およびレビー小体認知症
アルツハイマー病(アミロイド-タウオパチー)およびレビー小体認知症(アルファ-シヌクレイン病)の両方の特質は、前脳基底核におけるコリン作動性ニューロンの喪失である。これらのニューロンは、海馬の形成を含む内側側頭葉構造と相互に連結しており、エピソード記憶を形成するために必要である。様々な態様では、コリン作動性ニューロンを使用して築かれた生きた電極を、中隔核または他の隣接する前脳基底核、例えばマイネルト基底核またはブローカ対角帯に植え込むこともできる。様々な態様では、前脳基底部に定位的に植え込まれ、脳サービスに(脳弓柱路をたどって)半外在化された生きた電極は、外部コンピューターを用いた閉ループ制御を可能にすることもできる。偶発的符号化を強化するために側頭葉に植え込まれた別々の生きた電極の活動から解読された記憶干渉局所電場電位のシグネチャーの検出に応じて、生きた電極内のニューロンの異なる亜集団(コリン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性)を、光遺伝学的および骨内固定導波管を介して差次的にトリガーすることもできる。同様に、他の態様では、外部合図(例えば、スマートフォンのリマインダー、および使用者がトリガーするプッシュボタンのフラグ立て)を使用して、前脳基底部活動をモデュレートして保持および再生を強化することもできる。様々な態様では、第2の生きた電極を嗅内皮質および海馬に植え込み、次に、前脳基底部に植え込まれた生きた電極に、外部コンピューターを介して連結して、二方向性脳弓中隔海馬経路を機能的に再インスタンス化(re-instantiate)することもできる。
【0131】
前頭側頭認知症および自閉症スペクトラム障害
別の局面では、優位半球の下前頭回を冒す前頭側頭認知症性タウオパチーである失文法性原発性進行性失語症のために、ブローカ野を前運動皮質および一次運動皮質と連結(して、運動性失語症を代償し、運動代替ジェスチャーを可能に)する、およびブローカ野を人工弓状束としてウェルニッケ野と連結する両方のために、生きた電極を植え込むこともできる。行動障害型前頭側頭認知症(TDP-43オパチー、時にタウオパチー)に向けた態様では、変性眼窩前頭皮質を無傷の背外側前頭前、前頭極、および前帯状皮質と連結する構造体が、行動抑制および自己調節を再インスタンス化することもできる。意味性認知症変異型のFTD(TDP-43またはタウ)に向けた態様では、側頭葉の前頭腹側面の変性が起こり、それが意味的知識貯蔵庫の喪失ならびに多様な読解および知覚障害に繋がる場合がある。様々な態様では、紡錘状回の視覚性単語形成野に植え込まれた、生きた興奮性グルタミン酸作動性電極は、この領野において残存機能をブーストする場合があり、生きた電極を一次および二次視覚皮質領野を腹側側頭葉に連結する補助的軸索束として作って、失われた「腹側-何か」経路を再創出し、意味処理を回復することもできる。自閉症スペクトラム障害および行動障害型前頭側頭認知症の両方では、社会的知覚および相互作用が損なわれる。様々な態様では、表面および左背外側前頭前皮質内のグルタミン酸作動性ニューロンならびに視床下部の視索上核および傍室核に並置されたオキシトシン作動性ニューロンを用いて築かれた生きた電極は、行動の脱抑制を消失させ、社会的行動を回復することもでき、眼鏡フレーム、補聴器、腕輪または他の装いに控えめに搭載したマイクロホンおよびマイクロカメラから解読された社会的合図をトラッキングする外部コンピューターによって、表面皮質集団をトリガーすることもできる。
【0132】
脳卒中および脳性麻痺
虚血性脳卒中および出血性脳卒中の両方は、局所性脳組織破壊および多様な炎症度を招く。虚血性脳卒中では、組織を囲む周縁部は機能的であり続けると同時に、さらなる発作(血圧低下または低酸素からのものなど)に代謝的に脆弱な場合がある。子宮内でまたは周産期に起こったとき、脳卒中(例えば、胚マトリックス出血)は、脳の残りが周りで正常に発達しようとする静的な発作に繋がる可能性があり、ある特定の場合には、様々な程度の運動および認知機能障害を有する脳性麻痺に繋がる。脳の領野が損傷された場合、2面の機能、すなわち局所灰白質の「計算」およびまた軸索の(限局的内在性線維およびまた通過する交叉線維も)「接続性」が失われる。様々な態様では、マイクロTENNは、計算および接続性の両方を直接回復し、脳の不可逆的損傷片のための、ならびに代謝的、電気的および機能的に復活し、周囲の境界域を支持するための、「取り替え部品」として役立つ。中大脳動脈閉塞を用いた脳卒中の動物モデルにおいて、光遺伝学的移植片は、機能的移動性を回復することが示された。この移植片が外部レーザーによって「駆動された」のに反して、機能付与された生きた電極は、脳の無傷領域および身体センサーまたはコンピューター作動リハビリテーションによってトリガーされる外部モデュレーションの両方に「駆動」を行わせて、境界域内の活動ならびに脳卒中後の機能的移動性および行動を回復することもできる。
【0133】
難治性うつ病
薬物療法、精神療法および電気けいれん療法に対して難治性の重度臨床的うつ病は、帯状回を含む辺縁系構造における破壊されたグルコース取り込みを含む神経代謝性撹乱によって特徴づけられる。様々な態様では、マイクロTENNを植え込んで、前頭極皮質と前帯状部との間の接続性を高める、または膝上前帯状皮質を膝下前帯状皮質に連結し、その結果、前者が後者をモデュレートして、正常な代謝活性を回復し、症状を緩和することもできる。同様に、様々な態様では、ドーパミン作動性ニューロンが播種された場合、側座核に植え込まれた生きた電極を配備して、カテコールアミンのトーンの動的相変化を提供し、したがって、思考および知覚の気分的サリエンス標識を変化させて、リバウンドした不快気分または耐性のシナプス後上方調節を引き起こさずに、うつ症状を緩和することもできる。
【0134】
てんかん
てんかんのための適用は、生きた電極の先進の機能性が、既存のアプローチでは不可能な形で処置目標を達成することもできる2つの方法を示す。最初に、生きた電極を模造することができ、それにより、標的野に最も近いニューロン集団が標的領域に広く抑制性神経伝達物質GABAを分泌した。分泌は、構成的または早期てんかん様活動の測定に基づき脳表面から誘発されて(下記)のいずれかであった。このアプローチでは、生きた電極は、GABAリザーバーおよび送達システムとして効果的に役立つ(図20、パネルC参照)。色々な態様では、生きた電極に、ニューロリギンで装飾された細胞外マトリックス中の興奮性グルタミン酸作動性ニューロンを播種して、局所内因性GABA作動性ニューロンと同軸性にシナプス形成させることもできる。どちらのアプローチも、過同期活動の破壊を実現し、したがって、脳内の標的野からの病的発作の発生または伝播を停止し得る。脳内のてんかん様ネットワーク中のニューロンが、構造体内のニューロンから広がる樹状突起上にシナプスを形成する場合があるので、色々な態様が、焦点性閉ループ自己減衰回路を実現する場合があり、その結果、焦点性てんかん様活動は、生きた抑制性電極によって媒介されるこの自己抑制ループを介してそれ自体消失する。多焦点性てんかんに向けた態様では、生きた電極を、2つ以上のてんかん発生焦点(例えば、頭蓋内表面および深部記録によって特定されたもの)に植え込むこともできる。様々な態様では、従来の電極では不可能であった方法で発作の伝播を先制して停止させるために、センサー(例えば、継続中の局所電場電位を捕捉する骨内または帽状腱膜下リード)を使用して、発作前または発作活動のシグネチャーをピックアップし、表面から外在化した光遺伝学的修飾マイクロTENNの光刺激をトリガーすることもできる。
【0135】
パーキンソン病
さらなる局面では、本発明は、パーキンソン病の処置のためのマイクロTENN組成物および方法を提供する。一局面では、本発明は、実質的に柱体状の細胞外マトリックスコア;および該実質的に柱体状の細胞外マトリックスコアに沿ってまたはその内部に植え込まれた1つまたは複数のニューロンを含み、その際、ニューロンはドーパミン作動性ニューロンである。別の局面では、本発明は、ドーパミン作動性マイクロTENNを患者のSNpc中に植え込む段階を含む、パーキンソン病を処置する方法を含む。
【0136】
ドーパミン置換戦略および深部脳刺激の使用を含むパーキンソン病の現行の処置は、運動症状の根本にある原因を矯正するよりもむしろ運動不能を軽減することを目標とする。さらに、線条体へのドーパミン作動性ニューロンおよび/または胎児移植片植え込みは、局所ドーパミン源を提供する場合があり、これらのアプローチは、黒質線条体回路を再創出しない。これらのギャップに取り組むために、SNpcにおける失われたドーパミン作動性ニューロンおよび線条体へのそれらの軸索投射を物理的に回復するために正確に送達することもできる組織工学解決策が探究されている。この目的を果たすために、一局面では、本発明は、一次ドーパミン作動性ニューロンを利用するマイクロTENNを含む。最適な内部コアECMを用いて製作したとき、ニューロン凝集物をプレーティングしたマイクロTENNは、長さ6mmよりも大きく成長したことが見出された。さらに、ドーパミン作動性マイクロTENNは、誘起されたドーパミン放出を示し、インビトロで線条体細胞集団とシナプス形成することが可能であり、インビボ移植されると生存および細胞構成の維持を示す。
【0137】
ドーパミン作動性マイクロTENNは、ドーパミン作動性ニューロンにおいて富化され得る腹側中脳ニューロン集団を使用して製作してもよく、いくつかの態様は、純粋なドーパミン作動性集団ではない。他の態様は、純粋なドーパミン作動性集団を含む。様々な態様では、より高い純度のドーパミン作動性ニューロンが、機能的効力のために使用される場合があり、他の態様では、中脳単離細胞分取、および/または幹細胞源からの分化のためにより遅い発生時点が使用される場合があり、それらの全ては、ドーパミン作動性集団をさらに富化することが示されている。
【0138】
別の局面では、本発明は、マイクロTENNにドーパミン作動性「凝集物」をプレーティングするための方法を含み、この方法は、マイクロTENNに解離細胞をプレーティングしたいくつかの場合に観察された、ニューロン細胞体と神経突起との間の分離の欠如を軽減し得る。別個の細胞本体領域が内部コアの全長に渡り軸索を投射している所望の細胞構成をマイクロTENNが示すことを確実にすることは特に重要であった。それは、分離した細胞体領域および軸索領域が、黒質線条体経路の主要な特徴であるからである。
【0139】
理論に限定されることを望むものではないが、黒質線条体経路の細胞構成により近づいたことは、SNpcにおける変性ドーパミン作動性ニューロンおよびそれらの線条体への投射を再構築するためのマイクロTENN植え込み後の改善した機能的結果に繋がる。特に、SNpcにおけるドーパミン作動性ニューロンは、線条体ニューロン上に直接シナプス形成するのであって、中間シナプスおよび/またはニューロンを通ってその効果を発揮することはない。したがって、宿主と統合されたときにマイクロTENNの接続性およびタイミングが正確であるために、マイクロTENNは、SNpcから単シナプス経路を通るシグナルを伝播することにより線条体ニューロンのモデュレーションを達成する必要がある可能性がある。黒質線条体経路の構成に近づけるドーパミン作動性マイクロTENNは、本明細書において開示されるが、これらは、インビボの機能的統合がネイティブな単一シナプス経路を真似る可能性が増加している。
【0140】
いくつかの態様では、ドーパミン作動性細胞凝集物は、個別の細胞からの投射よりもおよそ10倍長かった神経突起の伸長を生じた。再度、理論によって限定されることを望むものではないが、これは、ニューロン凝集物内の細胞密度が脳内の密度をよりよく表しているという事実の影響を受けている場合がある。このより高い細胞密度により、解離した細胞よりも凝集したニューロンの方がその3D微小環境をよりよく制御し得、そのことが、今度は、より良好な細胞生存および健全性、したがって増強した軸索伸長を促進した。そのうえ、凝集物中の細胞の遺伝子発現も、脳内の細胞をよりよく表し得、軸索伸長を開始するために細胞が発生プログラムに入ることを可能にする。さらに、多くのニューロンサブタイプが、短距離または長距離通信のいずれかのためにプログラムされている。解離したマイクロTENNにおいて、「長距離」軸索は、マイクロカラムの長さに沿って中距離でシナプスのパートナーと出会う可能性がある。対照的に、凝集物性マイクロTENNについては、いかなる中間隣接物も不在であることにより、長距離伸長のためにタンパク質を上方調節することでマイクロカラムの長さまで投射するように「長距離」ニューロンが促進されたこともあり得る。最後に、凝集物は、集合および束状化した軸索投射を生じ、それは、集中持続性の成長促進シグナル伝達および/または物理的/構造的長所に起因して、軸索伸長のための持続的駆動力を産生し得る。ニューロン凝集物からのドーパミン作動性軸索伸長の速度および長さは、前例がなかった。とはいえ、凝集物からの極端に長い軸索投射のメカニズムを解明するためにさらなる研究は、明らかに必要とされる。
【0141】
いくつかの態様では、凝集物性マイクロTENNは、コラーゲンIおよびコラーゲンIとラミニンとのカクテルを内部コア中に含む。理論に縛られることを望むものではないが、この立体配置は軸索伸長のためになると考えられる。それは、ラミニンコーティングおよび空のコアとは異なり、コラーゲンIおよびコラーゲンIとラミニンとのカクテルの両方が、軸索伸長を支持する連続的な3D足場を提供するからである。架橋コラーゲンも連続的足場を提供するとはいえ、これはずっと硬く、成長円錐の伸長時に酵素分解に対する抵抗性がより大きい。しかし、架橋コラーゲンを含む態様は、様々な適用に適切であり得る理想的な構造特性を有し得る。
【0142】
様々な態様では、ドーパミン作動性マイクロTENNは、ニューロン凝集物内および軸索末端の両方でドーパミンを放出する。
【0143】
黒質線条体経路を渡るためのGFP+マイクロTENNの導入の1週間および1ヶ月後に、マイクロTENNの生存および細胞構成の維持の証拠が見出された。具体的には、生存しているGFP+ニューロンおよびTH+ニューロンが、導入投射経路に沿った内腔内に位置した。植え込みの1ヶ月後まで、植え込み片の投射経路と直行する組織切片が、断面に密なGFP+ニューロン/軸索およびTH+軸索があることを明らかにした。黒質線条体経路の回路は複雑であり、植え込みの投射経路は将来的な研究において洗練される可能性があるとはいえ、これらの結果は、インビボの植え込みおよび生存の概念証明を実証するために十分である。
【0144】
様々な態様では、線条体への中脳ドーパミン作動性細胞移植からの潜在的副作用である潜在的ランナウェイドーパミン過剰およびジストニアを軽減するために、マイクロTENNのドーパミン作動性出力が、線条体フィードバックおよびSNpc入力により連続的にモデュレートされ得る。マイクロTENNは、補助経路である。この操作された経路は、それがSNpcから線条体へのドーパミン作動性軸索投射の機能を模倣している点で独特であり、調整および制御できるドーパミン作動性入力を提供することを探究している。回路の再構築を指示するのに加えて、様々な態様では、操作された軸索路を介した制御された神経調節入力を提供するために、生きたドーパミン作動性電極として光遺伝学的に活性なマイクロTENNも配置され得る(図20、パネルA参照)。図20において、頭蓋下マイクロLEDアレイとの制御されたインターフェースを可能にするために、ニューロン細胞体集団が脳表面に準外在化したままにされる。黒質線条体路以外のインターフェースは、他の脳領野(例えば、一次運動皮質から記録されたベータ振動)、外部センサー(例えば、共に胸壁中のバッテリーケース内にあるジャイロスコープおよび加速度計、または手足に植え込まれたもしくは外部装着されたセンサーからストリーミングされる)、ならびに外部コンピューター(例えば、靴、ドレッドミルおよび歩行分析装置表面に包埋されたプロセシング3Dモーションキャプチャーおよび力センサー)からの情報が、基礎神経節回路をより健全な活動パターンにモデュレートすることもできるメカニズムを提供する。
【実施例
【0145】
以下の実施例は、当業者が本開示を理解する上で有用であり得るが、断じて本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0146】
以下の実施例のいくつかで採用される様々な材料および方法をここに提示する。全ての手順は、ペンシルベニア大学およびMichael J. Crescenz Veterans Affairs Medical CenterのIACUCによって承認されており、実験動物の人道的管理と使用に関する規範(Public Health Service Policy on Humane Care and Use of Laboratory Animals)(2015)に準拠して実施された。
【0147】
三次元マイクロTENNの製作
全ての供給品は、特に断りのない限り、Invitrogen、BD Biosciences、またはSigma-Aldrichからのものとした。マイクロTENNは、軸索が成長できるシリンダー内に成形されたアガロースECMヒドロゲルを含んだ。外側ヒドロゲル構造は、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中1%アガロースから構成した。毛細管現象を介して毛細管(Drummond Scientific)にアガロース溶液を吸引することによって、外径398μmのアガロースシリンダーを生成した。内側カラムを生産するために、アガロースを充填した毛細管の中心に鍼灸針(径:160μm)(Seirin)を挿入した。硬化したマイクロカラムを毛細管から押し出して、DPBS中に入れ、そこで、これらを6~12mm長に切り出し、UV光下で滅菌した(1時間)。適切なECMカクテル5μLを各マイクロカラムに加えた。ECMカクテルは、以下を含んだ:1.0mg/mLラット尾1型コラーゲン;1.0mg/mlマウスラミニンと混合した1.0mg/mlラット尾I型コラーゲン;1.75mg/mlマウスラミニン;ならびに、11.70mM N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボイミド塩酸塩、4.3mM N-ヒドロキシスクシンイミド、および35.6mM一塩基性リン酸ナトリウム中1.0mg/mLラット尾1型コラーゲン。次いで、これらのマイクロカラムを37℃で15~30分間インキュベートし、その後、DPBSをペトリディッシュに加えた。
【0148】
ニューロン細胞培養
雌のSprague-Dawleyラット(Charles River)を、初代腹側中脳ニューロン(ドーパミン作動性ニューロンが豊富にあると過去に示された中脳領域)の供給源とした(Weinert et al. 2015, Isolation, culture and long-term maintenance of primary mesencephalic dopaminergic neurons from embryonic rodent brains, Journal of visualized experiments : JoVE, (96))。二酸化炭素を使用して時期指定妊娠ラット(胎生14日目)を安楽死させ、その後、子宮を摘出した。脳をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に取り出し、そして、腹側中脳を単離した。腹側中脳を、アクターゼ(accutase)中、37℃で10分間解離させた。細胞を、相対遠心力(RCF)200で5分間遠心分離し、NEUROBASAL(登録商標)培地+2% B27+1%ウシ胎児血清(Atlanta Biologicals)+2.0mM Lグルタミン+100μMアスコルビン酸+4ng/mLマウス塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)+0.1%ペニシリン-ストレプトマイシンから構成される標準培地中に1~200万個の細胞/mLで再懸濁した。高濃度成長培地は、NEUROBASAL(登録商標)培地+2% B27+1%ウシ胎児血清(Atlanta Biologicals)+2.0mM Lグルタミン+100μMアスコルビン酸+0.1%ペニシリン-ストレプトマイシン+12ng/mLマウスbFGF+10ng/mL脳由来神経栄養因子(BDNF)+10ng/mLグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)+10ng/mL毛様体神経栄養因子(CNTF)+10ng/mLカルジオトロフィンから構成した。ドーパミン作動性ニューロン凝集物を、Ungrin MD, Joshi C, Nica A, et al. 2008, Reproducible, ultra high-throughput formation of multicellular organization from single cell suspension-derived human embryonic stem cell aggregates, PloS one, 3 (2): e1565から改作されたプロトコールに基づいて作製した。逆角錐状ウェルの注文製のアレイを、3Dプリント製鋳型から鋳造したポリジメチルシロキサン(PDMS)(SYLGARD(登録商標)184, Dow Corning)を使用して製作し、12ウェルプレート内に設置した。細胞溶液12μLを各角錐状ウェルに移し、そして、12ウェルプレートを1500rpmで5分間遠心分離し、その後、標準培地2mLを各アレイの上部に入れた。遠心分離は、ニューロンの強制凝集をもたらした(1凝集物当たりおよそ3,200個の細胞)。次いで、ウェルを一晩インキュベートした。プレーティングをする時点で、マイクロカラムを含有するディッシュからDPBSを除去し、培地交換した。鉗子を使用して、凝集物をマイクロカラムの一端(一方向)または両端(二方向)に挿入し、そして、培養物をインキュベーターに入れた(ドーパミン作動性ニューロンで作製された合計のマイクロTENN:n=300)。
【0149】
ECMコアなしの解離細胞を含有するマイクロTENNについて、ドーパミン作動性細胞を、標準培地に1000万個の細胞/mLで懸濁し、そして、この細胞懸濁液5μLを各マイクロカラムに加えた。マイクロTENNを60分間インキュベートし、その後、培地を加えた。ECMコアありの解離細胞を含有するマイクロTENNについて、ドーパミン作動性細胞を、プレーティングをする時点で、1.0mg/mLラット尾1型コラーゲンに懸濁し(10,000,000個の細胞/mL)、そして、この混合物5μLを各マイクロカラムに加えた。マイクロTENNを15分間インキュベートし、その後、培地を加えた。
【0150】
事前に温めた培地を使用して、培養培地をインビトロで3~4日(DIV)毎に交換した。場合によっては、マイクロTENNにアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(AAV2/1.hSynapsin.EGFP.WPRE.bGH, UPenn Vector Core)を形質導入して、緑色蛍光タンパク質(GFP)をニューロンで発現させた。ここで、3 DIVに、マイクロTENNを、ベクターを含有する培地(3.2×1010個のゲノムコピー/mL)中で一晩インキュベートし、そして、翌日培養物を培地ですすいだ。
【0151】
雌のSprague-Dawleyラット(Charles River, Wilmington, MA)を初代線条体ニューロンの供給源とした。二酸化炭素を使用して、時期指定妊娠ラット(胎生18日目)を安楽死させ、その後、子宮を摘出した。線条体ニューロンを単離するために、脳をHBSSに取り出し、そして、線条体を単離した。線条体を、トリプシン(0.25%)+エチレンジアミン四酢酸(EDTA)(1mM)中、37℃で12分間解離させた。次いで、トリプシン-EDTAを除去し、そして、DNase I(0.15mg/mL)を含有するHBSS中で組織をトリチュレートした。細胞を1000rpmで3分間遠心分離し、NEUROBASAL(登録商標)培地+2% B27+0.4mM Lグルタミン中に1~200万個の細胞/mLで再懸濁した。先に記載の通り、線条体の凝集物を作製してマイクロTENNに挿入した。ドーパミン作動性凝集物が線条体の凝集物とシナプスを形成したかを試験する場合、線条体の凝集物を10 DIVにドーパミン作動性マイクロTENNの空の端部に挿入した。線条体の凝集物がドーパミン作動性マイクロTENNの成長速度を増加させたかを試験する場合、これらを3 DIVに挿入した。
【0152】
免疫細胞化学
マイクロTENNを、4%ホルムアルデヒド中で35分間固定し、0.3% Triton X100プラス4%ウマ血清を使用して60分間透過処理した。一次抗体(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)+4%血清中)を4℃で12時間加えた。一次抗体は、以下のマーカーとした:(1)β-チューブリンIII(1:500, Sigma-Aldrich, cat #T8578)、ニューロンにおいて主に発現される微小管エレメント;(2)チロシンヒドロキシラーゼ(TH;1:500, Abcam, cat #AB113)、ドーパミンの産生に関与する酵素;(3)微小管関連タンパク質2(MAP-2)(1:500, Millipore, cat #AB5622)、樹状突起に見いだされる微小管関連タンパク質;(4)ドーパミンおよびcAMP調節ニューロンリンタンパク質(DARPP-32)(1:250, Abcam, cat #AB40801)、線条体中型有棘ニューロンに見いだされるタンパク質;ならびに(5)シナプシン1(1:1000, Synaptic Systems, cat #106001) 、中枢神経系のシナプス小胞で発現されるタンパク質。適切な蛍光二次抗体(Alexa-488、-594および/または-649、PBS+30nM Hoechst+4%血清中1:500)を18~24℃で2時間加えた。
【0153】
マイクロTENNの移植
雄のSprague-Dawleyラット(325~350g)にイソフルランで麻酔をかけ、定位固定フレームに装着した。頭皮をベタダイン(betadine)で清浄し、ブピバカインを切開線に沿って注射し、そして、正中切開を行って前頂測定点(Bregma landmark)を露出させた。5mmの頭蓋骨切除を、前頂に対して以下の座標を中心に行った:+4.8mm(AP)、2.3mm(ML)。マイクロTENNを、定位固定アーム上に装着されたハミルトンシリンジに取り付けられた針(OD:534μm、ID:420μm;Vita Needle, Needham, MA)に装填した。定位固定アームを水平面に対して34°に位置付け、硬膜を開き、そして、脳内に針を深さ11.2mmまで下ろした。針を所定の位置で10秒間維持し、その時点で、ハミルトンシリンジのプランジャーと接触するように固定アームを位置付けた。次いで、マイクロTENNを含有する針を脳から引き抜いた。頭皮を縫合して閉じ、そして、術後鎮痛用にブプレノルフィンを与えた。マイクロTENNを受けた動物を1週間(n=5)または1か月(n=5)のいずれか生存させた。屠殺時に、動物に麻酔をかけ、そして、ヘパリン加生理食塩水、続く10%ホルマリンによる経心腔的灌流を受けさせた。
【0154】
免疫組織化学
4%パラホルムアルデヒド中での固定の24時間後、パラフィン処理または凍結切片化のいずれかのために脳を調製した。脳を矢状に切断し、パラフィンに通して処理するかまたは飽和まで30%スクロースに入れて凍結した。切片を8μm(パラフィン)または35μm(低温切片)に切り出し、スライドに載せ、そして、免疫組織化学用に処理した。
【0155】
パラフィン切片を脱パラフィン処理し、次いで、再水和し、水中3%過酸化水素(Fisher, cat #S25359)を使用して内在性ペルオキシダーゼをクエンチし、続いて、TRIS-EDTA中で熱誘導エピトープ賦活化を行った。切片をウマ血清(ABC Universal Kit, Vector Labs, cat #PK-6200)で30分間ブロッキングした。ウサギ抗TH(1:750; Abcam, cat #ab112)をOptimax緩衝液中に4℃で一晩アプライした。関心対象の抗原を、DAB(Vector Labs, cat #SK-4100)を使用して可視化した。凍結切片を、0.1% Triton-x/PBS中5%正常ウマ血清で30~45分間ブロッキングした。一次抗体(ウサギ抗TH, 1:750, Abcam AB112;マウス抗Tuj1, 1:1000, Sigma T8578)を、2%ウマ血清/Optimax(登録商標)緩衝液中の切片に室温で2時間アプライした。二次抗体(1:1000)を、2%ウマ血清/PBS中に室温で1時間アプライした。切片をHoechstで対比染色した。
【0156】
顕微鏡検査およびデータ収集
インビトロ分析のために、マイクロTENNを、NIKON(登録商標)ECLIPSE(登録商標)Ti-S顕微鏡で位相差蛍光を使用して撮像し、画像収集は、NIKON(登録商標)ELEMENTS(商標)ソフトウェアと接続されたQICLICK(登録商標)カメラを使用した。神経突起の侵入の長さを決定するために、各マイクロTENN中の最長の観察可能な神経突起を、固定後のニューロン凝集物の近位端から測定した。インビトロ免疫細胞化学分析のために、NIKON(登録商標)A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡を使用して培養物およびマイクロTENNを蛍光撮像した。全てのマイクロTENN共焦点再構成は、全厚zスタック(z-stacks)からとした。脳へ移植した後のマイクロTENNの分析のために、NIKON(登録商標)A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡を使用してマイクロTENNを蛍光撮像した。各切片を分析して、マイクロTENNニューロン/神経突起の存在、構成、および伸長/統合を評価した。
【0157】
統計分析
群の試料サイズを事前に決定するために使用する方法はなかった。実験群間で明らかな目視による相違があるため、ほとんどの場合、研究者は、実験またはデータ評価中処置群に対して盲検下でなかった。インビボ移植研究のために、この実験での使用にラットを無作為に割り当てた。全てのデータの正規性を調べ、そして、非正規データについて調整を行った。対応のないパラメトリック両側t-検定を実施して、ドーパミン作動性末端標的を含有する一方向マイクロTENN対二方向マイクロTENN間で軸索伸長に統計的に有意な差があったかどうかを判定した。対応のない非パラメトリック両側マンホイットニー検定を実施して、以下の処置ペア間で軸索伸長に統計的に有意な差があったかどうかを判定した:解離細胞対凝集細胞、高い成長因子濃度対通常の成長因子濃度、および線条体末端標的を含有する一方向マイクロTENN対二方向マイクロTENN。対応のない非パラメトリック両側マンホイットニー検定を実施して、コラーゲンI内部コア対コラーゲンI-ラミニンカクテル内部コアの全軸索長に対する百分率としてのTH+軸索長間で統計的に有意な差があったかどうかを判定した。ANOVAを細胞外マトリックス研究のために実施した。群間で差が存在したとき、テューキーの事後ペアワイズ比較を実施した。全ての統計検定について、有意性にはp<0.05が求められた。データを平均±標準偏差として提示する。
【0158】
皮質ニューロンの単離および培養
神経細胞の単離および培養プロトコールは、公開されている研究のプロトコールと同様である。簡単に述べると、時期指定妊娠ラットを安楽死させ、そして、子宮を取り出した。胎生18日目の胎児を子宮から冷HBSSに移し、ここで、脳を摘出し、そして、顕微解剖を介して立体鏡下で大脳皮質半球体を単離した。皮質組織を0.25%トリプシン+1mM EDTA中37℃で解離させ、その後、トリプシン/EDTAを除去して、HBSS中0.15mg/ml DNaseに交換した。解離組織+DNaseを3000RPMで3分間遠心分離した後、DNaseを除去し、そして、NEUROBASAL(登録商標)+B27(登録商標)+Glutamax(商標)(ThermoFisher)および1%ペニシリン-ストレプトマイシンから構成されるニューロン培養培地中に細胞を再懸濁した。
【0159】
マイクロTENN/生きた電極の製作
マイクロTENNを三相プロセスで構築した(図29)。最初に、指定の形状(外径(OD)、内径(ID)、および長さ)のアガロースマイクロカラムを特注設計のアクリル型で形成した(図29、パネルA)。鋳型は、鍼灸針(Seirin, Weymouth, MA)がチャネル内で同心円状に位置合わせされるような針の挿入を可能にする、円筒形チャネルのアレイである。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)中の溶融アガロースを鋳型-針アセンブリに注ぎ、放冷した(アガロース:3%重量/体積)。アガロースが凝固したら、針を除去して鋳型を解体し、チャネルのサイズに等しい特定の外径および針の外径に等しい内径を有する中空アガロースマイクロカラムを得た。マイクロカラムを、UV光を介して30分間滅菌し、脱水を防止するためにDPBS中に必要となるまで保存した。これらの研究のために、鋳型チャネルを398μm径とし、そして、鍼灸針を180μmとし、結果として398μm ODおよび180μm IDを有するマイクロカラムが得られた。マイクロカラムを、2ミリメートルまたは5ミリメートルのいずれかの長さに切り出した。次に、初代皮質ニューロンを強制的に細胞凝集物にした(図29、パネルB)。これらの凝集物は、マイクロカラムの長さに及ぶ長い軸索束の成長に必要な構成を提供する。細胞を、特注設計の3Dプリント製鋳型から鋳造したPDMS(SYLGARD(登録商標)184, Dow Corning)製の逆角錐状ウェルのアレイに移した(図29、パネルB)。解離皮質ニューロンを、100万~200万個細胞/mlの密度で懸濁し、ウェル中にて200gで5分間遠心分離した。この遠心分離は、1凝集物/球体当たりのニューロンの数が正確に制御された、ニューロン(または任意の他の細胞タイプ)の強制凝集をもたらした(1ウェル当たり細胞懸濁液12μL)。角錐状ウェルおよび強制凝集プロトコールをUngrin等から改作した。最後に、マイクロカラムをDPBSから取り出し、そして、マイクロピペットを介して過剰のDPBSをマイクロカラム内部から除去した。次いで、マイクロカラムに、1.0mg/mlラット尾コラーゲン+1.0mg/mlマウスラミニン(Reagent Proteins, San Diego, CA)から構成される細胞外マトリックス(ECM)を充填した(図29、パネルC)。一方向マイクロTENNまたは二方向マイクロTENNに、立体鏡下で細鉗子を使用して、それぞれマイクロカラムの一端または両端に凝集物を慎重に設置することによって播種し、37℃、5% CO2で45分間付着させた。解離マイクロTENNを作製するために、解離皮質ニューロンを、先の研究で詳述した通りマイクロピペットを介してECM充填マイクロカラムに移した。次いで、インビトロで2日(DIV)毎に新鮮な培地に交換しながら、マイクロTENNをニューロン培養培地中で成長させた。
【0160】
成長の特性評価
培養中のマイクロTENNの位相差顕微鏡検査画像を、1、3、5、8、および10 DIVに、QIClick(登録商標)カメラおよびNIS Elements BR 4.13.00と組み合わせたNIKON(登録商標)Eclipse Ti-S顕微鏡を使用して10×の倍率で取得した。マイクロTENNを製作して、次の4群のうちの1群に分類した:解離/2mm長(LEDISS,2mm)(n=7)、一方向凝集物/2mm長(LEUNI,2mm)(n=6)、二方向凝集物/2mm長(LEBI,2mm)(n=9)、または二方向凝集物/5mm長(LEBI,5mm)(n=7)。特定の時点における各群の成長速度を、最新の時点と前の時点の間の日数で割った最長の同定可能な神経突起長の変化として定量した。最長の神経突起を、MATLABのImage Processing Toolbox(MathWorks, MA)からの機能を使用して各位相画像内にて手動で同定し、そして、起点の凝集物から神経突起先端への長さを測定した。より正確な分析のために全時点にわたって同一の開始マイクロTENNおよび開始点を使用した。平均成長速度を、指定の時点で群毎に見いだして、二元配置分散分析(ANOVA)で比較し、事後解析は必要に応じてボンフェローニ手順を用いて実施した(有意性にはp<0.05が求められる)。全てのデータを平均±s.e.m.として提示した。マイクロカラム全体にわたる凝集物特異的成長を同定するために、皮質ニューロン凝集物を、アデノ随伴ウイルス1(AAV1)形質導入(Penn Vector Core, Philadelphia, PA)を介して、緑色蛍光タンパク質(GFP)または赤色蛍光タンパク質mCherryのいずれかで標識した。簡単に述べると、角錐状ウェル中の凝集物を遠心分離した後、ヒトシナプシン-1プロモーターをパッケージングしたAAV1 1μLを、凝集物ウェルに加えた(終濃度:1凝集物当たり約3×109個のウイルスコピー)。凝集物を、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした後、培地を二回交換し、その後、形質転換凝集物をマイクロカラムに、各々、1つのGFP+および1つのmCherry+凝集物で、上記の通りプレーティングした(合計n=4)。複数DIVにわたって、NIS-Elements(登録商標)AR 4.50.00ソフトウェアと組み合わせたNIKON(登録商標)A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡でマイクロTENNの画像を取得した。z-面での10~20μmの連続スライスを蛍光チャネル毎に収集した。提示される全ての共焦点画像は、共焦点z-スライスの最大値投影である。
【0161】
生存率評価
ニューロン生存率を評価するために、ポリスチレン上にプレーティングされた5mm長の一方向(LEUNI)構築物および二方向(LEBI)構築物ならびに作製からの時間が一致する平板培養物を、10および28 DIVにカルセイン-AM/エチジウムホモダイマー-1(EthD-1)アッセイ(ThermoFisher)で染色した。代謝的に活性な細胞は、膜透過性カルセインAMをカルセインに変換し、これは緑色の蛍光(λexc約495nm;λem約515nm)を発するが、一方で、EthD-1は、膜損傷細胞に侵入し、核酸に結合すると赤色の蛍光(λexc約495nm;λem約635nm)を発する。簡単に述べると、培養物をDPBS中で穏やかにすすいだ。DPBS中のカルセイン-AM(1:2000希釈;終濃度約2μM)およびエチジウムホモダイマー-1(1:500;約4μM)の溶液を各培養物に加え、続いて、37℃、5% CO2で30分間インキュベートした。インキュベートに続いて、培養物を新鮮DPBS中で2回すすぎ、NIS-Elements(登録商標)AR 4.50.00ソフトウェアと組み合わせたNikon(登録商標)A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡にて10×の倍率で撮像した。ImageJ(National Institutes of Health, MD)を使用して、カルセイン-AM陽性およびエチジウムホモダイマー陽性の両細胞の全面積に対するカルセイン-AM陽性細胞の全面積の比率として生存率を定量した。各群の試料サイズは以下の通りであった:LEUNI,5mm(n=4、4);LEBI,5mm(n=7、4);平板培養物(n=9、5)、それぞれ10および28 DIV。全てのデータを平均±s.e.m.として提示した。
【0162】
ライブカルシウムイメージング
マイクロTENN凝集物接続性を調査するための概念実証として、凝集物に、遺伝的にコードされたカルシウムレポーターGCaMP6fまたはRCaMP1b(Penn Vector Core, Philadelphia, PA)を形質導入した。角錐状ウェル中の凝集物を遠心分離した後、ヒトシナプシン-1プロモーターをパッケージングしたAAV1 1μLを、凝集物ウェルに加えた(終濃度:1凝集物当たり約3×109個のウイルスコピー)。凝集物を、37℃、5% CO2で一晩インキュベートした後、培地を二回交換し、その後、形質転換凝集物をマイクロカラムに上記の通りプレーティングした。7~10 DIV後にANDOR Neo/Zylaカメラ(登録商標)およびNikon(登録商標)Elements AR 4.50.00と組み合わせたNIKON(登録商標)Eclipse Ti(登録商標)顕微鏡を使用してマイクロTENNを撮像し、その後、記録からのカルシウム移行を、NIKON(登録商標)Instruments(登録商標)Elements AR 4.50.00で同定した。マイクロTENNの選択した関心対象領域(ROI)の強度を、バックグラウンド(細胞本体または軸索なしのROIとして定義される)に対して経時的にプロットした。
【0163】
機能分析
蛍光カルシウム記録を上記の通り収集して、マイクロTENN活動のtiffスタックを作成した。各tiffスタックは、1秒当たり20フレームで記録した120秒の活動から構成された(合計2400フレーム)。機能分析を、3つのMATLAB(登録商標)ソフトウェアツールボックス-FluoroSNNAP、MATLAB(登録商標)ソフトウェア統計ツールボックス、およびEEGLAB用のSIFTを使用して実施した。FluoroSNNAPは、カルシウムイメージングに基づくニューロンのネットワーク分析をインビトロで実施するためのMeaney等によって設計されたインタラクティブソフトウェアパッケージである。簡単に述べると、時間平均画像をtiffスタックから生成し、その後、およそ20μm径のROIを手動で選択した。FluoroSNNAPを使用して、ROIの強度を抽出および正規化して、二方向マイクロTENN内の機能的接続性パターンを評価した;具体的には、正規化されたピアソン相互相関および正規化された位相同期マトリクスを、ROIのカルシウム移行パターンから作製した。追加的に、マイクロTENN全体にわたる情報フローを評価するために、SIFTツールボックスを使用して多変量自己回帰(MVAR)モデルに適合させ、これを使用して、正規化されたDirect Transfer Function(nDTF)接続性マトリクスを作成した。nDTFは、文献においてEEG活動の方向および周波数成分を決定するために使用されている19,20。ここで、これを適用して、二方向マイクロTENNにおけるある凝集物から別の凝集物への情報フローを検出した。数値的に安定した10次MVARモデルを使用して、スライドウィンドウ80秒および時間ステップ40秒でnDTF推定値を得た。ナイキストリミットによりnDTF係数を1~9Hzで得た。
【0164】
免疫細胞化学
マイクロTENNを、4、10、および28 DIVに4%ホルムアルデヒド中で35分間固定した。次いで、マイクロTENNを1×PBS中ですすぎ、PBS中0.3% Triton X100+4%ウマ血清で60分間透過処理した後、一次抗体と4℃で一晩インキュベートした。一次抗体は、軸索を標識するTuj-1/ベータ-IIIチューブリン(T8578, 1:500, Sigma-Aldrich)およびシナプス前部分化(presynaptic specializations)を標識するシナプシン-1(A6448, 1:500, Invitrogen)とした。一次抗体とのインキュベートに続いて、マイクロTENNをPBS中ですすぎ、蛍光標識二次抗体(1:500;Life Technologies、Invitrogen、およびJackson ImmunoResearchから供給)と18~24℃で2時間インキュベートした。最後に、Hoechst(33342, 1:10,000, ThermoFisher)を18~24℃で10分間加えた後、PBS中ですすいだ。NIS Elements AR 4.50.00と組み合わせたNIKON(登録商標)A1RSIレーザー走査型共焦点顕微鏡でマイクロTENNを撮像した。z-面での10~20μmの連続スライスを蛍光チャネル毎に収集した。提示される全ての共焦点画像は、共焦点z-スライスの最大値投影である。
【0165】
大脳皮質および皮質視床での植え込み
マイクロTENNのインビボ挙動の概念実証として、GFP+ニューロン/軸索ありの予め形成されたマイクロTENNを、先行研究の説明と類似の定位マイクロインジェクションを介して脳へ送達した12,13。体重325~350グラムの雄のSprague-Dawleyラットに、イソフルランで1分当たり1.0~2.0リットルにて麻酔をかけ(吸入:5.0%、維持:1-5~2.0%)、定位固定フレームに装着した。メロキシカム(2.0mg/kg)およびブピバカイン(2.0mg/kg)を、それぞれ頸の基部におよび切開線に沿って皮下に与えた。その領域を剃ってベタダイン溶液で清浄し、その後、感覚皮質にかけて小開頭を行った(座標:+4.8mm AP、±2.3mm ML)。二方向マイクロTENN(5mm長)を、ハミルトンシリンジに接続された針に装填し、正確な設置のため定位固定アーム上に装着した。強制的な排出なしで構築物を脳に送達するために、針を皮質に6mmの深さまでゆっくり挿入した。次いで、ハミルトンシリンジのプランジャーを固定し、一方で、マイクロTENNを含有する針をおよそ1.5mm/分にて手動で5mm上昇させた。このプロセスで、低力のマイクロTENN送達が可能となり、深部視床構造である後内側腹側核(VPM)とウイスカーバレル皮質を接続できる。
【0166】
組織採取および組織学
植え込み後の7日目および28日目に、ラットを安楽死させ、冷ヘパリン加生理食塩水および10%ホルマリンで灌流した。頭部の一晩の固定の後、脳を採取して、マイクロTENNの生存および宿主/マイクロTENNシナプス統合を評価した。簡単に述べると、脳を矢状に切断し、凍結切片化用に40μmのスライスに切り出した。凍結切片について、スライスを30分間風乾し、3分間エタノールで2回処理し、3分間PBS中で2回再水和した。切片を0.1% Triton-x/PBS中5%正常ウマ血清(ABC Universal Kit, Vector Labs, cat #PK-6200)で30~45分間ブロッキングした。一次抗体を、2%正常ウマ血清/Optimax緩衝液中の切片に室温で2時間アプライした。一次抗体は、ヤギ抗GFAP(1:1000)、ウサギ抗IBA1(1:1000)、ニワトリ抗MAP2(1:1000)、およびマウス抗Tuj1(1:1000)とした。切片を5分間PBSで3回すすぎ、その後、二次抗体(1:1000)を、2%正常ウマ血清/PBS中に室温で1時間アプライした。切片を、DNA特異的蛍光Hoechst 33342で10分間対比染色し、次いで、PBSですすいだ。免疫染色後、スライドをFluoromount-G封入剤でカバーガラス上に封入した。
【0167】
マイクロTENNのインビトロ開発
ヒドロゲルマイクロカラムを、ニューロン生存および軸索の有向成長を支持するようインビトロで最適化した。マイクロカラムは、5~30mm長であり、軸索伸長が中心細胞外マトリックス(ECM;内径150~400μm)を通るように方向付ける中空アガロース管(外径350~500μm)から構成した。解離ニューロンをマイクロカラムの一端または両端でタンパク質性マトリクスに送達し、軸索伸長の所望の長さに基づいてインビトロで7~42日間(DIV)培養した(図4)。電気刺激およびCa2+感受性色素を二方向マイクロTENNにおいて使用して、一方のニューロン集団を刺激してその結果生じた活動電位が軸索領域を渡って他方の集団に移動できることを実証した。マイクロTENNを、初代大脳皮質ニューロン、ドーパミン作動性ニューロン、および後根神経節ニューロンを含む複数のニューロンサブタイプを使用して作製した(図5)。
【0168】
また、軸索束(14 DIVに約1cm、28 DIVに2cm超)を有する長いマイクロTENNも図6に描写する通り作製した。追加的に、数百ミクロン~ミリメートルに及ぶより小さいマイクロTENNを図5に描写する通り作製した。これらを、ラット皮質の層IVまたはVを通過するように、生きた電極の目下の適用の1つのためにより適切に拡大縮小させた。
【0169】
図17は、免疫標識した長投射型一方向軸索ベースの生きた電極の表示を提供する。これらの軸索ベースの生きた電極構築物は、直径数百ミクロンオーダー(ヒトの毛の直径と類似する)であるが、比較的小さいマイクロインジェクション面積で脳の深層/核に到達させるために、少なくともセンチメートルオーダーに延長してもよい。
【0170】
マイクロTENNのインビボ送達および生存
マイクロTENNを、定位マイクロインジェクションを介して脳に送達し、別個の解剖領域を再接続する生きた軸索の架橋を提供した。インビボ送達のために、ヒドロゲル外皮は、輸送および移植の間に微小組織を保護する構造支持体を提供した。さらに、小さいサイズは、神経系の繊細な領域への低侵襲性の植え込みを可能にする。所望の長さのマイクロTENNを針に吸引し、皮質にゆっくり挿入し、そして、プランジャーを使用して排出した。皮質のバレル野と視床構造を接続するようマイクロTENNを定位的に挿入して、構築物の生存および統合を評価した。
【0171】
植え込み後の3、7、および28日目に、免疫組織化学および蛍光顕微鏡検査は、マイクロTENN内部での生存ニューロンを明らかにし、これは、軸索束が皮質-視床軸に並行に伸長した密なクラスターを維持した(図6)。これは、マイクロTENNニューロンが生存し、その軸索構成を維持したことを実証した。追加的に、マイクロTENNニューロンと宿主ニューロンとの間のシナプス形成の構造的証拠と併せて、植え込まれたニューロン由来の樹状突起が皮質を貫通したので、マイクロTENNニューロンは皮質統合を示した(図7)。
【0172】
記録/刺激アレイ
生きた電極は、脳深部から脳の表面で情報をニューロンへ/ニューロンから伝えるための生物学的導管として使用される。表面では、デバイスのアレイを使用して、マイクロTENNの表層端部を記録または刺激する。これらのアレイは、マイクロTENNの表層端部と正確な時間的および空間的様式で連動することができる特異的で広範なアレイを作製する、電気的、光学的、磁気的、化学的、音響学的、または他のモダリティを含むこともできる。これらのアレイを、脳の表面(硬膜下)、硬膜の上部(硬膜外)、頭蓋骨欠損内部(骨内または骨周囲)、帽状腱膜の下の頭蓋骨外部(帽状腱膜下)、または皮膚外部(頭皮上で非侵襲的)に設置することができる。これらのアレイを、マイクロエレクトロニクスに連結または組み込むことができる。これらは、電力バッテリー、高周波および/もしくは赤外線誘導コイル、光源、マルチプレクス/デマルチプレクス回路、ヒートシンクを利用した脳脊髄液流もしくは血管床、ならびに/または埋込導波路を含むことができる。
【0173】
実施の方法
図8は、従来の電極およびオプトロードと比べた生きた電極の利点を記載しており、生きた電極のシナプス統合に起因する増強された特異性を強調している。
【0174】
予め形成された3-Dの生きた電極は、次の少なくとも2つの臨床展開上の利点を提供する:(1)インビトロでの形質導入によるトランスフェクション物質および細胞/軸索の空間的制約、ならびに(2)細胞懸濁液に由来する成熟/減少問題の回避。
【0175】
生きた電極は、電極/オプトロードで使用される剛体材料と比べて、信号を脳深部構造へ/脳深部構造から送る柔軟な経路を提供し、したがって、慢性的な異物反応、機械的な分離問題、およびグリア性瘢痕を軽減する。
【0176】
オプトロードは、高レベルの特異性を達成することができるが、光学的方法は、組織吸収に起因して範囲が限定され得る。電極は、本質的に、電極周囲の一定体積を刺激するかまたはそれから記録する(図8における赤色の区域)。光遺伝学的形質導入の広がりは、複数の層における黄色のニューロンによって例示される(図8)。対照的に、生きた電極は、特定のニューロンサブタイプとシナプス形成するようにその構築物を設計することができ、ひいては周囲のニューロンと多くのシナプスを形成し得るので、高い特異性を提供する(図8および9)。
【0177】
図10および11は、ラット皮質での記録または刺激の理論的枠組みに使用されるべき生きた電極の例を示す。生きた電極の実施は、皮質だけに留まらず、非表層信号が記録または刺激される必要がある脳のあらゆる場所で採用することができる。追加的に、興奮性または抑制性ニューロンを選択的に活性化するために、マイクロTENNの入力/刺激バージョンを、特定のタイプのニューロンと連動するよう設計することができる。ここではラットが描写されているが、最終的には、その技術をヒト以外の霊長類およびヒトにおいて使用することもできる。生きた電極のさらなる反復は、複数の神経サブタイプとの相互作用を達成するための複数の神経タイプの使用を含むこともできる。例えば、別の神経細胞集団を抑制しながらある一神経集団を興奮させる生きた電極を所望することもできる(図1)。先に言及した通り、生きた電極を、脳との閉ループ相互作用を可能にする真の二方向インタフェースモダリティとなるよう開発することもできる。この生きた電極は、洗練された十分に制御された神経系の刺激を提供する制御された閉ループ様式で、脳を記録し、処理し、次いで刺激でき、現在一定の電気刺激適用を使用した力ずくの方法の代わりに繊細に疾患を処置することができるだろう。
【0178】
神経外科的植え込みのための組織工学によって作製された構築物
図12に示す通り、生きた電極を脳に植え込みして連動させ、神経系の特定の機能または機能障害(すなわち、パーキンソン病、肥満、炎症、片頭痛、糖尿病、てんかんなど)の処置のためにまたは診断としてニューロンを記録または刺激することができる。例えば、パーキンソン病患者では、ドーパミン作動性の生きた電極は、脳表面の活性化を制御しながら脳深部構造(例えば、線条体)へのドーパミン入力を回復させる。てんかん患者にとっては、GABA作動性の生きた電極を使用することで、早期てんかん様活動の検出時に活性化して発作焦点を抑制することもできる(例えば、抑制性の生きた電極は、発作前神経活動の最も早い兆候で多量のGABAを直接的に焦点に正確に送達することができる)。
【0179】
植え込みされた生きた電極はまた、閉じ込め症候群ありまたはなしの人の機能の回復または増大に関して生物学的実体と非生物学的実体との間の正確で選択的な連動についてニューロンを記録または刺激することで、思考を介した行動または感覚情報の入力に関する行動に影響を及ぼすこともできる。例えば、デバイス(例えば、ロボットハンド/アーム)作動に関する運動制御(運動皮質におけるニューロンまたは脳もしくは脊髄における運動出力拠点の読み取り活動)をモニタリングすることができる。また、外部デバイス(例えば、ロボットハンド/アーム)の感触および/または固有受容に関する感覚フィードバック(感覚皮質または脳の感覚処理拠点へ情報を入力する)を記録することもできる。
【0180】
また、生きた電極を植え込みして脳と連動させて、その活性化を、機能の再成長または改善を増強する方法として使用することもできる。例えば、植え込み可能な生きた電極は、局所の神経活動を制御して、内在性の再生を促進/誘発することができる。別の例では、生きた電極は、局所の神経活動を制御して、健全なネットワーク機能を増強し、かつ/または、有害なネットワーク機能を減弱/遮断する(例えば、回路のタイミングに関わる問題を修正する)することができる。
【0181】
インビトロでのマクロTENNの共焦点再構成:概念実証
出願人は、初代後根神経節ニューロンをマクロTENN構築物においてインビトロで7日(DIV)かけて成長させた。この期間に続いて、細胞を固定し、細胞核用マーカー(DAPI)およびその軸索用マーカー(ベータ-チューブリン-III/Tuj-1)で免疫標識した。次いで、構築物を共焦点顕微鏡にて撮像した。画像を再構築してつなぎ合わせ、全ての面で構築物の詳細な外観を提供した(図14)。画像が示したものは、図14のパネルDに絵で最も良く表され、それは、構築物のy方向で見た(すなわち、構築物の長さを見下ろした)再構成を表す(図14のパネルEに描写される)。図14のパネルDおよびEは、軸索が、管の内面に沿ってのみ成長し、構築物のコアを満たす細胞外マトリックス内では成長しないことを描写している。より小さい構築物では、軸索は、ここで見られる通り界面だけではなく、構築物の断面全体を通って成長する。構築物を上から見て、図14のパネルA~Cは、一番下(A)から開始して一番上(C)までの共焦点画像の連続スライスを示す。図14のパネルCでは、軸索は側壁に沿ってのみ成長し、一方で、図14のパネルBでは、構築物の底部で、軸索は底部の全面に沿って広がる。
【0182】
PNSにおける提案されたデバイス
マクロTENNの内面でのみ軸索が再成長することを示す知見に基づいて、出願人は、図15A~15Cに描写する通りの代表的な電極を作製することを提案する。このデバイスの展開は、(シーブ電極とは逆に、)妨げるもののないチャネルを通る軸索の成長を可能にするだろう。チャネルは、神経と同じサイズであっても、特定の神経およびその束のさらなる広がりおよび脱神経束を提供するようより大きくてもよい。電極を末梢に沿ってかつ構築物の長さに沿って設置することもでき、選択的な刺激および記録が可能になる(図15Aおよび15B)。構築物を神経よりも大きなサイズにした場合、構築物は、近位端および遠位端で先細となり、選択した神経の縫合および付着が可能になる(図15C)。より大きな断面積は、有利なことに、軸索/束がさらに広がることを可能にし、それによってより高い選択性を提供する。
【0183】
本発明の態様は、管の側壁の内部に対して優れた立体構造を提供する。理論に束縛されるものではないが、出願人は、ミッドプレーン技術と比べて管の内部を使用したことによるより大きな表面積が理由で、その立体構造が優れていると考えている。かさねて、理論に束縛されるものではないが、出願人は、より大きな表面積が軸索/束のより大きな分離、それ故により大きな選択性を可能にすると考えている。
【0184】
さらなるマイクロTENN製作技術
本発明のさらなる態様は、純粋な軸索路によってつながった別個のニューロン集団から構成される所望の構成のマイクロTENNをより一貫して作製する、新規の微小組織工学方法論を提供する。特に、本発明の態様は、図16のパネルC~Eに描写する通り、注文製の角錐状マイクロウェル内での「強制細胞凝集」を利用して、1凝集物/球体当たりのニューロンの数(したがって直径)が正確に制御されたニューロンの「凝集物」または「球体」を作製する。これを成し遂げるために、解離ニューロンを、特注設計の3Dプリント製鋳型から鋳造したPDMS(SYLGUARD(登録商標)184, Dow Corning)製の逆角錐状マイクロウェルのアレイを含有するチャンバーに移した。次いで、ウェルを200gで5分間遠心分離した。この遠心分離は、使用されるニューロンの密度および各ウェルに加えられる体積に基づいて1凝集物/球体当たりのニューロンの数が正確に制御されたニューロン(または望むなら任意の他の細胞タイプ)の強制凝集をもたらした。1~200万個の細胞/mLの密度の1ウェル当たり12μLのニューロン懸濁液が、マイクロカラム内に適合する適切な直径の凝集物/球体を作製するのに好適であった。次いで、凝集物/球体をマイクロカラムの一端または両端内に慎重に設置し、37℃、5% CO2で45分間付着させた。次いで、播種されたマイクロカラムを、NEUROBASAL(登録商標)培地、GLUTAMAX(商標)培地、およびB-27(登録商標)培地(ThermoFisher(商標))から構成されるニューロン成長培地中、インビトロで少なくとも数日間かけて成長させ、マイクロTENNを形成した(Laura A. Struzyna et al., “Rebuilding Brain Circuitry with Living Micro-Tissue Engineered Neural Networks”, 21(21-22): 2744-2756 Tissue Engineering Part A (2015) and J.P. Harris et al., “Advanced biomaterial strategies to transplant preformed micro-tissue engineered neural networks into the brain,” 13(1) J. Neural Eng. 016019 (2016)に記載の通り)。この方法論は、規定のニューロン細胞体領域とインビトロで数日にわたる数ミリメートルの軸索伸長を有する、一方向または二方向マイクロTENNの形成をもたらした(図17)。注目すべきことに、この方法論は、マイクロカラムの一端または両端に凝集物としてのニューロン細胞体を有する定義された区域と軸索投射が長軸方向に伸びてマイクロカラムの中心部をわたる定義された区域とから構成される理想的なマイクロTENN細胞構成を一貫して生産する(図17)。この理想的な分布を免疫細胞化学および共焦点顕微鏡検査によってさらに検証し、これらの凝集物マイクロTENNを全ての軸索を認識する抗体(ベータ-チューブリンIII)および全ての細胞核を認識する抗体(Hoechst)を使用して標識し、そして、マイクロカラムを含むヒドロゲルを非特異的に標識する。また、このマイクロTENNを、マイクロTENNにおける機能的な成熟および電気化学活性を示唆するシナプスマーカー(シナプシン)についても標識した。
【0185】
出願人は、微小組織工学方法論を進展させて、マイクロカラムの生体材料構築の一貫性を改善した。ここで、組織工学用途に設計された市販のBIOBOTS(商標)3Dプリンターを使用して、ヒアルロン酸または類似のヒドロゲルからマイクロカラムをプリントした。マイクロカラムを、200μmの外径Cおよび内径100~150μmの内径Aで、同時に生物活性の細胞外マトリックス(一般に、1mg/mLコラーゲンおよび/または1mg/mLラミニン)で満たしながらプリントし、図18に描写する通り、マイクロカラムの一端または両端に細胞凝集物送達のための100μmの深さGを有する間隙を確保した。マイクロTENNを、水平にまたは垂直に配向された中心放射軸を備えてプリントした。水平プリンティングは、速度の面でも、かつ/または、プリンティング由来の任意の隆起、溝、または他の人工物が、中心放射軸と並行できかつ神経成長の案内の役割を果たすことができることから好まれ得る。
【0186】
生物学的インターフェースとしての使用
本発明の態様を、宿主と様々な電子デバイスとの間のインターフェースとして利用することができる。本発明の態様を、光学センサーまたは磁気センサーという状況下で記載してきたが、本発明の態様は、生きた電極内でニューロンに印可される電気インパルスを介した連動を支持することもできる。
【0187】
本明細書で考察する通り、組織工学によって作製された「生きた電極」は、神経系を探査および調節する安定な長期インターフェースを可能にする。「生きた電極」は、非有機電極において固有の異物反応を軽減しながら標的特異性を増加させる。
【0188】
理論に束縛されるものではないが、出願人は、本明細書に記載の発明が以下の作用機序のうちの一つ以上によって作動すると考えている。第一に、本発明の態様は、慢性的な異物反応を軽減しながら特定のニューロンサブタイプと統合することによる標的特異性を提供する。第二に、本発明の態様は、先行アプローチで可能でない永続性を提供するシナプス統合を提供する。第三に、比較的少ない軸索によって誘発されるロバストな効果を通して生物学的多重化が可能である。
【0189】
オーダーメードされた「生きた電極」の脳における特定の細胞/領域との統合は、シナプスによって媒介される。操作された軸索路を介したシナプス統合は、従来のアプローチで可能でない永続性および標的特異性を提供する。
【0190】
操作されたニューロンおよび/または軸索路を使用したシナプスに基づくインターフェースは宿主と電子機器との間で生物学的連結を形成することができ、最終的に、人工装具の制御、感覚/固有受容フィードバック、および/または神経調節が可能となる。
【0191】
ロバストな効果、すなわち、多数の宿主ニューロンの動員は、「生物学的多重化」と称される新規のメカニズムを介して比較的少ない軸索によって誘発されることができる。例として、1つのマイクロTENN軸索は、(理論的には)数百またはさらに数千のニューロンとシナプス形成して、顕著な増幅効果を生み出すことができる。出願人は、現在、ヒトの毛の直径と近似するカラム内に約50,000個のニューロンを有する、したがって単一構築物で数百万の宿主ニューロンに影響を及ぼす可能性を示すマイクロTENNを構築している。
【0192】
様々な態様において、ある特定の神経伝達物質を放出/分泌するようにニューロン表現型を選択して、特定の疾患過程に関係するレベルを回復させることができる。様々な態様において、構築物を、特定の長さにオーダーメードして、特定の解剖学的標的において接続性を達成し、かつ、それらの領域内で特定のニューロンサブタイプとシナプス形成することができる。様々な態様において、タンパク質性マトリクスおよび共送達される因子を、モデュレーションの標的とされる特定の宿主ニューロンタイプを走触的かつ走化的に誘引するように変更することができる。様々な態様において、構築物ニューロンは、いかなる外部の人為的作動もなく特定のニューロンを標的とすることができる(但し、シナプス特異性が達成されることを条件とする)。様々な態様において、構築物に1種類以上のニューロン集団を播種することができ、これらの生きている神経ネットワークは、それら自体内で、かつ実質組織への高度な情報の標的指向化された出力を達成することによって、働きの多重化を行うことができる。
【0193】
解離ニューロン懸濁液をプレーティングしたマイクロTENN
ドーパミン作動性ニューロンを胚性ラットの腹側中脳から単離した。平板培養では、これらのニューロンは、健全なニューロン形態学、ドーパミン作動性ニューロンの存在(TH発現に基づく)、顕著な神経突起伸長(β-チューブリンIII発現に基づく)、およびネットワーク形成を28 DIVまでに示した。ドーパミン作動性マイクロTENNを作製するために、解離ニューロン懸濁液を使用した初期播種マイクロカラムを使用した。これらの解離細胞は、内腔の長さに湿潤したが、概して、内部コアの長さにわたって軸索を投射する別個の細胞本体領域の所望の細胞構成を作らなかった。
【0194】
しかしながら、微小組織構築物内の解離ニューロンは、健全な形態学を提示し、所望の細胞構成へと偶然に自己組織化することもあった。これらの場合、一方向性軸索投射は、数ミリメートルの長さに達し、そして、重要なことに、これらの構築物の健全性も28 DIVまで維持された。内部コアへの追加のECMの包含によって、正確な構成が生成される一貫性が増加したかを見るために、解離細胞をコラーゲンに懸濁し、混合物をマイクロカラム内部のゲルに注入した。
【0195】
残念ながら、コラーゲンの存在は、所望の細胞構成の生産を支援せず、そして、解離細胞は、内部コアの長さ全体にわたって広がり続けた(図23のパネルA1~A3)。これらの結果は、ヒドロゲルマイクロカラム内で広範な神経突起ネットワークを形成するドーパミン作動性ニューロンを培養できることを実証した一方で、これらの技術は、所望の細胞構成を一貫して生成するのに十分でなかった。
【0196】
強制的なニューロン凝集法
先のマイクロTENN製作法は、所望の細胞構成を確実に生成することがなかったので、ニューロンを凝集物へ機械的に集める方法を改作した(Ungrin MD, Joshi C, Nica A, et al. 2008, Reproducible, ultra high-throughput formation of multicellular organization from single cell suspension-derived human embryonic stem cell aggregates, PloS one, 3 (2): e1565)。胚組織を単一細胞懸濁液へ解離した後、細胞をウェルの底でペレットにするためにこの溶液を逆角錐状ウェル中にて遠心分離した。ウェルをインキュベーター内で一晩放置し、その間に、ペレットの細胞は、ニューロンの凝集球体になった。形成されたら、凝集物をアガロースマイクロカラムの端部に挿入した。この方法は、別個の細胞本体領域と軸索領域とを有するマイクロTENNを一貫してもたらした。さらに、マイクロカラム内での凝集物の深さおよび配置に基づいて、外在化または内在化した細胞本体領域を示すマイクロTENNを作製可能であったことが見いだされた(図23、パネルB~D)。さらに、この技術は、THおよびβ-チューブリンIII免疫反応性に基づき実証される通り、長投射型一方向軸索路をもたらした(図23、パネルE~F)。実際に、各マイクロTENNにおける最長の神経突起長で判断される通り、凝集物から投射された軸索は、解離ニューロンを播種したマイクロカラム内の類似の軸索伸長より、およそ10倍長く成長したことが確認された(図23、パネルG)。
【0197】
マイクロTENN長の最適化
黒質線条体路はラットでおよそ6mmあり、それ故、少なくとも6mm長のマイクロTENNが望ましい。長さについての成長条件を最適化するために、内腔におけるECM構成要素、成長因子の存在、および伸長に対するマイクロTENNの方向性の効果を試験した。コラーゲンIとコラーゲンIおよびラミニンは、各マイクロTENNにおける最長の神経突起長で判断される通り、最長の軸索伸長をもたらしたことが見いだされた(図24)。コラーゲンIコアとコラーゲンIおよびラミニンコアについての平均軸索伸長は、それぞれ、4892±703μmおよび4686±921μmであった。対照的に、架橋コラーゲンコア(1227±481μm)、ラミニンコートコア(205±615μm)、および空のコア(約0μm)は、大幅に低減された神経突起伸長をもたらしたことが見いだされた。2つの高成長群(コラーゲンまたはコラーゲンおよびラミニンからなる管腔)について、TH+ドーパミン作動性軸索投射は、最大軸索長の少なくとも60%に達したことが確認された(図24、パネルF)。また、マイクロカラム内の軸索伸長に対する培地成長因子濃度の効果も試験した。比較的低い濃度のbFGF(4ng/mL)を含有する培地を、ドーパミン作動性ニューロンの伸長および生存を増加させると以前に示された高濃度の成長因子を含有する培地と比較した。14 DIVに、高い成長因子濃度培地は、低濃度培地と比較して、より密度の高いまたはより長い軸索伸長をもたらさなかったことが見いだされた(n=14 各群のマイクロTENN)。最後に、ドーパミン作動性細胞の標的集団の使用が軸索伸長を増加させるかどうかを調査した。マイクロカラムの両端にドーパミン作動性凝集物を挿入することによって、二方向ドーパミン作動性マイクロTENNにプレーティングした。一方で、集団間の走化性シグナル伝達が伸長を増加させるかを確認するために、2つのドーパミン作動性ニューロン集団を1.2cmで分離した。14 DIVに、二方向マイクロTENNにおける軸索伸長は、一方向マイクロTENNにおける軸索伸長以下であったことが確認された(n=14各群のマイクロTENN)。したがって、操作されたニューロン凝集物の使用および特定のECM構成要素は、軸索伸長における重要な要因であった一方で、高い成長因子培地および標的ニューロン集団の存在は、軸索伸長に影響を及ぼさなかった。注目すべきは、14 DIVの平均ニューロン凝集物長は、1165±212μmであった;それ故、コラーゲン中のドーパミン作動性凝集物を使用して達成された総マイクロTENN長(ニューロン凝集物+軸索長)は、14 DIVに>6mmであり、これはラットの黒質線条体路をつなぐのに適する。最適化研究に続いて、コラーゲンIの内部コアを有するドーパミン作動性マイクロTENNを製作し、28 DIVにわたって成長させて、軸索伸長がマイクロカラム内でさらに進行したかを突き止めた。28 DIVまでの継続した軸索伸長が、ドーパミン作動性軸索について6046±670μm、全ての軸索について7697±1085μm、総凝集物+軸索長について8914±1187μmの長さで見いだされた。いくつかの場合には、この時点での最大の総マイクロTENN長は、ラットの黒質線条体路を網羅するのに必要な長さを十分に超える10mmを上回った(図25)。
【0198】
線条体集団とのシナプスの形成
黒質線条体路を含むドーパミン作動性軸索が脳において線条体ニューロンとシナプス形成するので、組織工学によって作製された黒質線条体路が線条体ニューロンの集団とインビトロでシナプス形成する能力を探求した。ドーパミン作動性マイクロTENNを作製し、10 DIV後に、胚性ラット線条体の凝集物を、マイクロカラムの空の端部に挿入した。さらに4 DIV以降に、2つの集団間の潜在的なシナプス統合を評価するために免疫細胞化学を実施した。この分析は、2つの凝集物集団、具体的にはTH+ドーパミン作動性ニューロンとDARPP-32+中型有棘線条体ニューロンにおける、適切なニューロンサブタイプの存在を裏付けた(図26)。さらに、共焦点顕微鏡検査は、ドーパミン作動性軸索および線条体ニューロンが関与する広範な軸索樹状統合および推定上のシナプス形成を明らかにした(図26のパネルD、E、G、H)。また、免疫細胞化学は、大部分の線条体(DARPP-32+)神経突起がMAP-2+でもあったことを裏付けし、このことは、これらが樹状突起であったことを示唆している(データ示さず)。線条体集団によって生成された走化性の合図がドーパミン作動性ニューロン凝集物からの軸索伸長に影響を与えたかを判定するために、軸索伸長の長さを線条体末端標的ありとなしで定量した。線条体ニューロンの標的集団を含有するドーパミン作動性マイクロTENNにおける軸索伸長は、一方向ドーパミン作動性マイクロTENNにおける軸索伸長よりも統計的に大きいものではないことが見いだされた(n=9 各群のマイクロTENN;図26、パネルF)。
【0199】
予め形成されたドーパミン作動性マイクロTENNのインビボでの移植および生存
予め形成されたドーパミン作動性マイクロTENNを脳へ正確に送達する能力、ならびに植え込み後の様々な時点でのそれらの生存および構成を実証するために、コラーゲンIを含有する内腔を有するドーパミン作動性凝集物マイクロTENNを、GFPを発現するように形質導入し、14 DIV間成長させ、その後、これらを特注の針に吸引し、成体雄Sprague-Dawleyラットの黒質線条体路近くに定位的にマクロインジェクションした。1週間および1か月の時点で動物を屠殺したところ(各n=5)、マイクロTENN管腔内の生存GFP+ニューロンおよび軸索が明らかとなり、それは、アガロースマイクロカラムがこれらの時点で部分的にしか分解されなかったので黒質線条体路にわたって容易に同定された(図27)。組織切片を、軸索マーカーβ-チューブリンIIIおよびドーパミン作動性マーカーTHについて共標識したところ、ロバストなニューロン性かつドーパミン作動性の軸索集団の保存が明らかになった。特に、長軸方向に投射されているTH+軸索が存在し、このことは、脳への移植後にマイクロTENNがそれらの細胞構成を維持できたことを裏付けた(図27)。
【0200】
インビトロでの生きた電極成長の定量化
先の研究では、マイクロTENNに初代皮質ニューロンの単一の細胞懸濁液を播種し、それは、多くの場合にマイクロTENN内部全体にわたりランダムな部位にクラスターを形成した(図29、パネルC~D)。今回の世代のマイクロTENNは、マイクロカラムへのプレーティングの前に予め形成した皮質凝集物で形成され、これにより、別個の細胞体域および軸索域の所望の細胞構成のより優れた制御および再現性が可能になった(図29、パネルF~H)。この再現性はそれ自体で、生きた電極として適用する際に必要な工程であるインビトロでのマイクロTENNのロバスト解析を導く。凝集物マイクロTENNに、1凝集物当たりおよそ8,000~10,000個のニューロンをプレーティングし、マイクロカラム長を2mmおよび5mmとした。一方向(1つの凝集物を)および二方向(2つの凝集物を)の両方の2mm長マイクロTENN(LEUNI,2mmおよびLEBI,2mm)がプレーティングされ、一方で、全ての5mm長LE(LEBI,5mm)は、二方向構築物としてプレーティングされた。2mm長の解離マイクロTENN(LEDISS,2mm)にプレーティングすることによって、先行の解離マイクロTENNの成長特性を現行の凝集物に基づく構築物と比較した(表1、図30)。位相差顕微鏡検査画像の分析を通して、最初の数日内にインビトロで、健全な軸索伸長が全ての凝集物LEにわたりECMコアに沿って見いだされた(図30)。LEBI,5mm群内の凝集物LEニューロンは、1087.7±84.3ミクロン/日をピークとした急速な軸索成長速度を全ての測定DIVにわたり呈した。LEUNI,2mm群内のニューロンは、1日目に358±19.8ミクロン/日の初期ピーク軸索成長速度を示し、これは時間と共に着実に減少した。LEBI,2mm群内で、ニューロン突起は、マイクロカラムの長さを渡り、5 DIVに反対側の集団とシナプス形成し(図30、パネルA)、成長速度が同時に減少した(図30、パネルD)。LEBI,5mm群からのニューロンは、最初の3 DIV間、LEBI,2mmニューロンと類似の速度で成長したが、これらは、5 DIVまで成長速度の大幅な増加を示し、その後、シナプスが凝集物間で形成されるにつれて、軸索成長は減速した(図30、パネルC~D)。全ての凝集物マイクロTENN群における成長速度は、1 DIVに61.7±5ミクロン/日の最大成長速度に達した解離マイクロTENNの成長速度を上回った(表1)。
【0201】
二元配置ANOVAは、DIV(F統計量=15.97)およびLE群(F統計量=27.4)、ならびにそれらの相互作用(F統計量=5.92)に由来する有意な主効果(全てp<0.0001)を明らかにした。そのため、後続のペアワイズ比較にボンフェローニ解析を使用し、異なるDIVにLE群内およびLE群間の両方でいくつかの統計差を明らかにした。概して、二方向マイクロTENNについての成長速度は、より遅い時点よりもより早い時点で大きかったが、一方で、解離および一方向マイクロTENNについての成長速度は、時間によって大きく変化することはなかった。注目すべきことに、5 DIVでのLEBI,5mmの成長速度は、LEDISS,2mm(p<0.0001)、LEUNI,2mm(p<0.0001)、およびLEBI,2mm(p<0.001)についての全ての成長速度よりも大きかった。さらに、LEBI,5mm群それ自体で、5 DIVでの成長速度は、全ての他のDIVの成長速度より統計的に大きかった(p<0.01)。3 DIVでのLEBI,2mmの成長速度もまた、LEDISS,2mmについての全ての成長速度より大きかった(p<0.01)。LEBI,5mm(p<0.001)およびLEBI,2mm(p<0.01)の両方について、1 DIVでの成長速度は、10 DIVでの成長速度より大きかった。
【0202】
(表1)マイクロTENNの成長速度
データを平均±s.e.m.としてミクロン/日の単位で提示した。
【0203】
GFPおよびmCherryで標識した二方向マイクロTENNを経時的に撮像して、各凝集物からの軸索投射間の相互作用を観察した(図31)。共焦点画像は、反対の軸索と接触したときに、反対の凝集物に向かって互いに並行して投射が成長し続けたことを明らかにし、このことは、2つのニューロン集団間の物理的相互作用を裏付けている(図31)。
【0204】
生きた電極の急性および慢性生存率
生/死染色および共焦点顕微鏡検査を介して、短い一方向LEおよび短い二方向LEについて10および28 DIVでの生存を定量した(図32)。作製からの時間が一致する平板培養物を対照とした。全ての染色細胞(すなわち、カルセイン-AM+細胞およびエチジウムホモダイマー+細胞の両方)の積算面積に対するカルセイン-AM陽性細胞の積算面積の比として生存率を定義した。生きた電極におけるニューロン生存が少なくとも28 DIVまで持続することを確認し、40 DIVまで生存の証拠があった(図32)。ANOVAは、DIVが有意な主効果であった(F統計量=32.21、p<0.0001)が、LE/培養群ではそうでなかった(p>0.84)ことを示した。また、相互作用効果も有意であることが見いだされ(p<0.01)、それでボンフェローニ解析を使用して各時点で群を比較した(図32、パネルC)。28 DIVでの平板培養物の生存は、10 DIVでのLEUNI(p<0.05)、LEBI(p<0.001)、および平板培養物(p<0.0001)の生存よりも統計的に低いことが見いだされた。さらに、10 DIVでの平板培養物生存率は、28 DIVでのLEUNIおよびLEBI の両方の生存率を上回った(p<0.01)。
【0205】
経時的な生きた電極の構成およびシナプス形成
経時的なLE構成を特性評価するために、二方向LEを、4、10、および28 DIVに固定し、免疫標識して、細胞核、軸索、およびシナプスを同定した(図33)。ニューロン細胞体は、Tuj-1で示される通り、長い軸索によってつながった凝集物にほぼ例外なく局在した(図33);軸索および樹状突起もまた、恐らくはプレーティング時かまたは直後に形成された凝集物内接続から、凝集物内に見いだされた。特定の時点間にわたるシナプシン1陽性斑点の合計面積を使用して、シナプスの存在を定性的に評価した。マイクロTENN凝集物内のシナプシンの適度な分布だけでなく、マイクロカラムの管腔内のシナプシン発現の増加も確認され、このことは、二方向マイクロTENN内のニューロンが凝集物間でコミュニケーションをとる能力を有し得ることを示唆している。
【0206】
皮質視床での植え込み
予め形成されたマイクロTENN(管状ヒドロゲルマイクロカラムに入れられたニューロン凝集物から投射された整列軸索路から構成されるよう上記の通り製作された)を、ウイスカーバレル皮質をVPMと接続することによって、反復皮質視床経路に植え込みした。齧歯動物脳への注射の1か月後、GFP+マイクロTENNが、生存したこと、および予め形成された細胞体-軸索分布の構成を維持したことが見いだされた(図34)。GFP+細胞本体の大きな高密度のクラスター(凝集物)が、背側および腹側の植え込み領域に、軸索および樹状突起がその2つの場所にまたがる管腔内に見いだされた(図34)。
【0207】
等価物
特定の用語を使用して本発明の好ましい態様を記載してきたが、そのような記載は、単に例証を目的としたものであり、そして、以下の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなしに変更および変形を行ってよいことが理解されるべきである。
【0208】
参照による組み入れ
本明細書に引用される全ての特許、公開特許出願、および他の参考文献の全内容は、その全体が参照によって本明細書に明示的に組み入れられる。
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