(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】心拍センサ、心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ及びこれを含むスマートフォン、並びにウェアラブル心拍センサ、血管造影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20230301BHJP
A61B 5/1455 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
A61B5/0245 100B
A61B5/1455
(21)【出願番号】P 2019012001
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0014255
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】許 哲 準
(72)【発明者】
【氏名】朴 敬 培
(72)【発明者】
【氏名】李 東 宣
(72)【発明者】
【氏名】韓 文 奎
(72)【発明者】
【氏名】盧 卓 均
(72)【発明者】
【氏名】林 允 熙
(72)【発明者】
【氏名】陳 勇 完
(72)【発明者】
【氏名】堤 清彦
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0078513(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0136227(US,A1)
【文献】特開2016-214512(JP,A)
【文献】特開2018-000543(JP,A)
【文献】特開2016-087062(JP,A)
【文献】特開2013-150772(JP,A)
【文献】特開2008-103670(JP,A)
【文献】特開2016-126472(JP,A)
【文献】特開2016-087209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/145-5/1455
H01L 27/14-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色光を発光する発光部と、
前記発光部から血管に前記白色光が照射された後、透過した光又は反射した光を検出する
半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイと、その上に形成される近赤外線有機光電変換素子とを含むセンサ部と、を有
し、
前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、
前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする心拍センサ。
【請求項2】
前記発光部の強さは、1~10mWであることを特徴とする請求項1に記載の心拍センサ。
【請求項3】
前記複数の無機光電変換素子のそれぞれは、単位ピクセルを定義することを特徴とする
請求項1に記載の心拍センサ。
【請求項4】
前記近赤外線有機光電変換素子の吸光度と
前記複数の無機光電変換素子で測定された吸光度とを用いて心拍数及び酸素飽和度を計算する信号処理部をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の心拍センサ。
【請求項5】
半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイと、
前記半導体基板上に形成された近赤外線有機光電変換層と、前記近赤外線有機光電変換層の上部に配置される共通電極と、前記有機光電変換層の下部に配置されるピクセル電極と、を含む近赤外線有機光電変換素子と、を有し、
前記
複数の無機光電変換素子及び前記近赤外線有機光電変換素子は、白色光が血管に照射された後、透過した光又は反射した光を検出
し、
前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、
前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ。
【請求項6】
前記複数の無機光電変換素子のそれぞれは、単位ピクセルを定義することを特徴とする
請求項5に記載の心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ。
【請求項7】
前記近赤外線有機光電変換素子の吸光度と前記
複数の無機光電変換素子で測定された吸光度とを用いて心拍数及び酸素飽和度を計算する信号処理部をさらに有することを特徴とする
請求項5に記載の心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ。
【請求項8】
白色光を発光する発光部と、
近赤外線有機光電変換素子と
半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイとが積層されたセンサ部と、を有
し、
前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、
前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とするウェアラブル心拍センサ。
【請求項9】
前記近赤外線有機光電変換素子の吸光度と前記
複数の無機光電変換素子で測定された吸光度とを用いて心拍数及び酸素飽和度を計算する信号処理部をさらに有することを特徴とする
請求項8に記載のウェアラブル心拍センサ。
【請求項10】
前記センサ部の信号を表示するフレキシブルなディスプレイ部をさらに有することを特徴とする
請求項8に記載のウェアラブル心拍センサ。
【請求項11】
白色光を発光する発光部と、
半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなり、前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含んで単位ピクセルを定義するアレイと、
前記半導体基板上に形成された近赤外線有機光電変換層と、前記近赤外線有機光電変換層の上部に配置される共通電極と、前記
近赤外線有機光電変換層の下部に配置されるピクセル電極と、を含む近赤外線有機光電変換素子と、を有し、
前記
複数の無機光電変換素子及び前記近赤外線有機光電変換素子は、前記白色光が血管に照射された後、透過した光又は反射した光を検出
し、
前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする血管造影装置。
【請求項12】
前記近赤外線有機光電変換素子の吸光度と前記
複数の無機光電変換素子で測定されたピクセル別吸光度とを用いた心拍数及び酸素飽和度を計算する信号処理部をさらに有することを特徴とする
請求項11に記載の血管造影装置。
【請求項13】
白色光を発光する発光部と、
前記発光部から血管に前記白色光が照射された後、透過した光又は反射した光を検出する心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサと、有し、
前記近赤外線有機イメージセンサは、前記近赤外線有機イメージセンサ内の半導体基板内に形成された
複数の無機光電変換素子からなるアレイと、前記半導体基板上に形成された近赤外線有機光電変換層と前記近赤外線有機光電変換層の上部に配置される共通電極と前記有機光電変換層の下部に配置されるピクセル電極とを含む近赤外線有機光電変換素子と、を含
み、
前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、
前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサを含むスマートフォン。
【請求項14】
前記近赤外線有機光電変換素子の吸光度と前記
複数の無機光電変換素子で測定された吸光度とを用いて心拍数及び酸素飽和度を計算する信号処理部をさらに有することを特徴とする
請求項13に記載の心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサを含むスマートフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍センサに関し、特に、波長選択性がある光電変換素子を適用して低出力のLEDを使用可能にして皮膚損傷を防止し、電力消費量も減少させることができる心拍センサ、心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ及びこれを含むスマートフォン、並びにウェアラブル心拍センサ、血管造影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関を訪問せずとも日常生活の中で多様な生体信号や健康情報などを周期的に正確にチェックできるスマートなヘルスケアセンサに対する開発が人類の寿命の延びとともに重要視されている。
近年は、スマートフォンあるいはスマートバンドのようなアクセサリーに身体情報を感知しモニターできる機能が追加され、このような情報を多様に活用するための方案も着実に研究開発されている。
正確な生体情報を測定及び収集するために既存の大型の医療機器を小型化することが核心課題であり、測定素子の性能も小型化に関係なく機能を維持しなければならない。
【0003】
心拍センサ(Pulse Oximetry)は、非浸湿的な方式で心拍数と血中酸素飽和度を同時にセンシングでき、小型化にも利点があり、多くの製品へ適用されている。
心拍数と血中の酸素飽和度情報を簡単に測定し累積できれば、心血管系及び肺機能のような健康情報に基づいて病気予防に有用に活用することができる。
現在までに開発された心拍センサは、主に2個のLEDと1個のフォトダイオードとで構成される。
LEDは、それぞれ赤色領域と緑色領域の波長帯で狭い幅の選択的な発光特性を有したものを使用し、1サイクル内でそれぞれのLEDが照射され、血管を通してフォトダイオードで得られた光学信号を分析して心拍数及び酸素飽和度を決定する。
【0004】
最近では、心拍センサを携帯用アクセサリーに適用するために、フレキシブルな形態に製造するための多様な試みが施行されている(下記に示す特許文献1又はAll-organic optoelectronic sensor for pulse oximetry、Lchner、C.M et al.,Nature Comm.,5、5745(2014))。
【0005】
しかし、現在まで開発された心拍センサに使用されるフォトダイオード(photodiode)は波長選択性を有しておらず、LED光源の波長分離に依存する。
特に、感度(sensitivity)が高くないフォトダイオード(photodiode)の使用を補償し、皮膚を透過して血管を通過した光から正確な信号を得るために感度(sensitivity)が高くないフォトダイオード(photodiode)の使用を補償せしめるために光源の強さが十分に強くなければならない。
したがって、患者あるいは被測定者の皮膚に火傷や組織の破壊を引き起こす可能性があるという問題があった。
また、下記に示す特許文献1のような既存の医療用センサは、鉛線(lead wire)を使用しているが、これは柔軟性を有さないのでセンサの寿命を左右するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国特許公開第2017/0044826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記従来の心拍センサにおける問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、波長選択性がある光電変換素子を適用して低出力のLEDを使用可能にして皮膚損傷を防止し、電力消費量も減少させることができる心拍センサを提供することにある。
【0008】
また、小型化が可能で携帯用に製造可能な心拍センサ、又は有機物質で形成されてウェアラブルに製造可能なウェアラブル心拍センサを提供することにある。
さらに、スマートフォンなど多様な携帯用装置に設けられる心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ及びこれを有する血管造影装置及びスマートフォンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明による心拍センサは、白色光を発光する発光部と、前記発光部から血管に前記白色光が照射された後、透過した光又は反射した光を検出する半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイと、その上に形成される近赤外線有機光電変換素子とを含むセンサ部と、を有し、前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するためになされた本発明による心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサは、半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイと、前記半導体基板上に形成された近赤外線有機光電変換層と、前記近赤外線有機光電変換層の上部に配置される共通電極と、前記有機光電変換層の下部に配置されるピクセル電極と、を含む近赤外線有機光電変換素子と、を有し、前記複数の無機光電変換素子及び前記近赤外線有機光電変換素子は、白色光が血管に照射された後、透過した光又は反射した光を検出し、前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする。
【0011】
上記目的を達成するためになされた本発明によるウェアラブル心拍センサは、白色光を発光する発光部と、近赤外線有機光電変換素子と半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイとが積層されたセンサ部と、を有し、前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明による血管造影装置は、白色光を発光する発光部と、半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなり、前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含んで単位ピクセルを定義するアレイと、前記半導体基板上に形成された近赤外線有機光電変換層と、前記近赤外線有機光電変換層の上部に配置される共通電極と、前記近赤外線有機光電変換層の下部に配置されるピクセル電極と、を含む近赤外線有機光電変換素子と、を有し、前記複数の無機光電変換素子及び前記近赤外線有機光電変換素子は、前記白色光が血管に照射された後、透過した光又は反射した光を検出し、前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明による心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサを含むスマートフォンは、白色光を発光する発光部と、前記発光部から血管に前記白色光が照射された後、透過した光又は反射した光を検出する心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサと、有し、前記近赤外線有機イメージセンサは、前記近赤外線有機イメージセンサ内の半導体基板内に形成された複数の無機光電変換素子からなるアレイと、前記半導体基板上に形成された近赤外線有機光電変換層と前記近赤外線有機光電変換層の上部に配置される共通電極と前記有機光電変換層の下部に配置されるピクセル電極とを含む近赤外線有機光電変換素子と、を含み、前記複数の無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子、緑色光光電変換素子、及び青色光光電変換素子を含み、前記赤色光光電変換素子、前記緑色光光電変換素子、前記青色光光電変換素子は、ベイヤー(bayer)タイプに配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る心拍センサ、心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ及びこれを含むスマートフォン、並びにウェアラブル心拍センサ、血管造影装置によれば、波長選択性がある光電変換素子を適用して低出力のLEDを使用可能にして皮膚損傷を防止し、電力消費量も減少させることができる。
また、小型化が可能で携帯用に製造可能である。
また、有機物質で形成されてウェアラブルに構成することができる。
さらに、心拍センサはスマートフォンなど多様な携帯用装置のイメージセンサに組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態による心拍センサの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】赤色光電変換素子と近赤外線有機光電変換素子の外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)特性と赤色波長と近赤外線波長でのオキシヘモグロビン(HbO
2)とデオキシヘモグロビン(Hb)の吸光係数を示すグラフである。
【
図3】
図1に示した心拍センサが適用されたパッチタイプの心拍センサの概略図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態による心拍センサの概略構成を示すブロック図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態による心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサの概略構成を示す概略断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態による心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサのピクセルアレイを示す概略斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態による心拍センサが組み込まれたイメージセンサの読み出し回路を示す概略図である。
【
図8】本発明のまた他の実施形態による心拍センサが組み込まれたイメージセンサを含むスマートフォンを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る心拍センサ、心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサ及びこれを含むスマートフォン、並びにウェアラブル心拍センサ、血管造影装置を実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
本発明は、様々な相違する形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態による心拍センサの概略構成を示すブロック図である。
図1を参照すると、心拍センサは、電源部110、発光部120、センサ部130、信号処理部160、及び通信部170を含む。
電源部110は、発光部120、センサ部130、信号処理部160、及び通信部170に電源を供給するための部分であり、携帯用装置の場合には超小型バッテリー又はフレキシブルバッテリー等で構成され得る。
【0018】
発光部120は、白色LED一つのみで構成され得る。
白色LEDは、無機LED又は有機LEDがいずれも可能であり、フレキシブルな装置で実現するためには有機LEDの方がより適合する。
従来の心拍センサでは、波長選択性を有さないフォトダイオード一つのみを使用するため、発光部で波長を分割する方式を採用した。
その結果、発光部に赤色領域に選択的な発光特性を有するLEDと近赤外線領域又は緑色領域に選択的な発光特性を有するLED二つを備え、感度が高くないフォトダイオードの感度を補償するために光源の強さ(light intensity)を10~30mW程度で非常に強くして発光する構造を採用した。
【0019】
しかし、本実施形態による心拍センサでは、後述するセンサ部130で波長選択性を有するため、発光部120を白色LED一つのみで構成することができ、白色LED光源の強さも1~10mWの低強度のみで発光させることができる。
センサ部130は、近赤外線有機光電変換素子140と赤色光電変換素子150とで構成される。
【0020】
図2は、赤色光電変換素子と近赤外線有機光電変換素子の外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)特性と赤色波長と近赤外線波長でのオキシヘモグロビン(HbO
2)とデオキシヘモグロビン(Hb)の吸光係数を示すグラフである。
【0021】
図2を参照すると、近赤外線有機光電変換素子(Near infrared OPD)140では近赤外線波長の外部量子効率(External Quantum Efficiency:EQE)が高く、赤色光電変換素子(Red PD)150では赤色光波長の外部量子効率が高い。
しかし、オキシヘモグロビン(HbO
2)とデオキシヘモグロビン(Hb)の分子吸光係数(molar extinction coefficient)を見てみると、近赤外線光領域ではオキシヘモグロビン(HbO
2)がデオキシヘモグロビン(Hb)より相対的に高い分子吸光係数を示し、赤色光領域ではデオキシヘモグロビン(Hb)がオキシヘモグロビン(HbO
2)より相対的に高い吸光係数を示す。
【0022】
したがって、再び
図1を参照すると、信号処理部160は、センサ部130の近赤外線有機光電変換素子140と赤色光電変換素子150で測定された吸光度に基づいてHb/HbO
2の濃度比率を計算した後、これを活用して酸素飽和度を計算する。
そして、測定時に現れる波形を通して心拍数を計算する。
信号処理部160でデジタル化された信号は、通信部170を通じて測定された酸素飽和度と心拍数信号を外部の遠隔処理装置(例:スマートフォン、遠隔モニタリング装置など)に伝送する。
通信部170は、有線で実現することもでき、ブルートゥース(登録商標)、ジグビー、UWB(Ultra Wide Band)又はIEEE802.11系のWi-Fiなどの近距離無線通信規格で実現することもできる。
【0023】
図1では、センサ部130を構成する近赤外線有機光電変換素子140と赤色光電変換素子150は積層型で構成してもよい。
この時、近赤外線有機光電変換素子140と同様に、赤色光電変換素子150も有機物で形成してもよい。
このように有機物だけで光電変換素子(140、150)を形成する場合、フレキシブル基板に製造が容易である。
したがって、使い捨て型又はパッチ型心拍センサなどのようなウェアラブル心拍センサを実現することができる。
この場合、フレキシブルなディスプレイ部180も心拍センサに一緒に設置して通信部170を通じて外部ディスプレイに伝達せずに直ちに結果を示すこともできる。
【0024】
図3は、
図1に示した心拍センサが実現されたパッチ型心拍センサの概略図である。
パッチ型の柔軟な基板に発光部(白色LED)120と、近赤外線有機光電変換素子140と赤色有機光電変換素子150が積層されたセンサ部130を含む。
センサ部130で測定された信号を
図3で示すように有線で伝送するときには、
図1の信号処理部160や通信部170の形成を省略することもできる。
【0025】
図4は、本発明の第2の実施形態による心拍センサの概略構成を示すブロック図である。
図4を参照すると、
図1に示した心拍センサのセンサ部130とは異なり、センサ部130を近赤外線有機光電変換素子140とその下部の無機赤色光電変換素子450とで構成する。
【0026】
下部の無機赤色光電変換素子450は、半導体基板、例えばシリコン基板内に形成してもよい。
無機赤色光電変換素子450は、複数の無機赤色光電変換素子のアレイを含み、それぞれの無機赤色光電変換素子450が単位ピクセルを定義する。
このように下部の無機赤色光電変換素子450を複数の赤色ピクセルアレイで形成すれば、被写体に対する心拍数と酸素飽和度をピクセル化された情報として得ることができる。
【0027】
この場合、手術などの医療目的の心拍センサ及びカメラに適用可能であり、手術部位の特定血管で血流問題及び破損程度を正確な心拍数マッピング(mapping)を通じて提供することができる。
また、高解像度の血管イメージを通して損傷しない部分の追加の損傷防止にも寄与できる。
また、このような高解像度高効率積層型心拍センサを活用すれば、手術しなくても精密な血管イメージング(imaging)を通じて診断やレーザ治療ができる血管造影装置に活用することができる。
【0028】
図5は、本発明の第3の実施形態による心拍センサが組み込まれた近赤外線有機イメージセンサの概略構成を示す概略断面図であり、
図6は、心拍センサが組み込まれたイメージセンサ500のピクセルアレイを示す概略斜視図である。
図5及び
図6を参照すると、イメージセンサ500は、半導体基板550内に形成された無機光電変換素子(550r、550g、550b)のアレイと、その上に形成された近赤外線有機光電変換素子540を含む。
複数の無機光電変換素子は、基板550の一定領域に所定の配列で形成される。
無機光電変換素子は、赤色光光電変換素子550r、緑色光光電変換素子550g、及び青色光光電変換素子550bを含み得る。
【0029】
図6には赤色光光電変換素子550r、緑色光光電変換素子550g、及び青色光光電変換素子550bがベイヤー(bayer)タイプに配置された場合を示しているが、これらの配列は多様に変形できることはもちろんである。
近赤外線有機光電変換素子540は、近赤外線有機光電変換層542と、その上部に配置される共通電極544と、その下部に配置される各ピクセル別に形成されたピクセル電極546との組み合わせで構成される。
各ピクセル電極546は、層間絶縁膜530内に形成されたビアに充填されたコンタクト548を通じて電荷蓄積部549と連結される。
共通電極544の上部には入射光に対して透明な平坦層560が形成される。
平坦層560上の各画素に対応する位置には、各画素に入射光を集光するためのマイクロレンズ580が形成される。
【0030】
図7は、本発明の一実施形態による心拍センサが組み込まれたイメージセンサ500の読み出し回路を示す回路図である。
無機光電変換素子(550r、550g、550b)に蓄積された電荷と電荷蓄積部549に蓄積された電荷は、3つのトランジスタ構成又は4つのトランジスタ構成などのトランジスタからなる読み出し回路を利用してセンシングされる。
図7には、無機赤色光電変換素子550rを示しているが、これは無機緑色光電変換素子550gと無機青色光電変換素子550bにも同様に適用可能である。
【0031】
図7を参照すると、無機赤色光電変換素子550rに蓄積された電荷は、無機赤色光電変換素子550rに接続されたドレインと電源Vccに接続されたソースを有するリセットトランジスタTr1、リセットトランジスタTr1のドレインに接続されたゲートと電源Vccに接続されたソースを有する出力トランジスタTr2、及び出力トランジスタTr2のドレインに接続されたソースと信号出力ライン720に接続されたドレインを有する行選択トランジスタTr3によって読み出される。
【0032】
近赤外線有機光電変換素子540によって検出され電荷蓄積部549に蓄積された電荷は、電荷蓄積部549に接続されたドレインと電源Vccに接続されたソースを有するリセットトランジスタTr1、リセットトランジスタTr1のドレインに接続されたゲートと電源Vccに接続されたソースを有する出力トランジスタTr2、出力トランジスタTr2のドレインに接続されたソースと信号出力ライン710に接続されたドレインを有する行選択トランジスタTr3によって読み出される。
【0033】
無機赤色光電変換素子550rで発生し貯蔵された電荷は、出力トランジスタTr2を通じて電荷量に対応する信号に変換される。
行選択トランジスタTr3がターンオンするとき、信号は信号出力ライン720に出力される。
信号が出力された後に、無機赤色光電変換素子550rの電荷は、リセットトランジスタTr1によってリセットされる。
必要によっては、無機赤色光電変換素子550rとリセットトランジスタTr1のドレインの間に伝達トランジスタ(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0034】
バイアス電圧がピクセル電極546と共通電極544の間に印加されるとき、電荷は近赤外線有機光電変換層542上に入射する光に対応して発生し、ピクセル電極546と接続されたコンタクト548を通じて電荷蓄積部549に移動する。
電荷蓄積部549に貯蔵された電荷は、出力トランジスタTr2を通じて電荷量に対応する信号に変換される。
行選択トランジスタTr3がターンオンするとき、信号は信号出力ライン710に出力される。
信号が出力された後に、電荷蓄積部549の電荷は、リセットトランジスタTr1によってリセットされる。
必要によっては、電荷蓄積部549とリセットトランジスタTr1のドレインの間に伝達トランジスタ(図示せず)をさらに含んでもよい。
【0035】
二つの信号出力ライン(710、720)を通じて出力された信号は、信号処理部160に伝達され、信号処理部160で伝達されたデータに基づいて心拍数及び酸素飽和度を計算する。
このような処理は、心拍センサモードの場合に該当する。
カメラモードの場合には、無機赤色光電変換素子550r、無機青色光電変換素子550b、無機緑色光電変換素子550gの全ての信号と近赤外線有機光電変換素子540の信号をすべて出力し、信号処理部160からイメージ信号を最終出力することができる。
必要によっては、2つのモードを同時に進行することも可能である。
【0036】
図5及び
図6に示した心拍センサが組み込まれたイメージセンサ500を使用する場合には、一般的なイメージセンサを使用するカメラモードと心拍センサモードを同時に又は選択的に進行できるという長所がある。
つまり、必要によってはカメラモードのみを動作させたり、心拍センサのみを動作させたり又はカメラモードと心拍センサモードを同時に動作させることができる。
したがって、
図8に示すように、スマートフォンなどのモバイル装置において、心拍センサ1200と後面カメラ1300とが別々に設置されているものを、一つのカメラ1000に統合することができる。
カメラ1000の一側面には白色光を発光して血管に照射するための発光部1100をさらに含んでもよい。
【0037】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
110 電源部
120 発光部
130 センサ部
140、540 近赤外線有機光電変換素子
150 赤色光電変換素子(赤色有機光電変換素子)
160 信号処理部
170 通信部
180 ディスプレイ部
500 イメージセンサ
530 層間絶縁膜
542 近赤外線有機光電変換層
544 共通電極
546 ピクセル電極
548 コンタクト
549 電荷蓄積部
550 半導体基板
550(r、g、b) (赤色、緑色、青色)光電変換素子(無機光電変換素子)
560 平坦層
580 マイクロレンズ