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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】自動運転システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/50 20060101AFI20230301BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230301BHJP
   F21S 43/00 20180101ALI20230301BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20230301BHJP
   B60W 30/08 20120101ALI20230301BHJP
   B60Q 1/28 20060101ALN20230301BHJP
   F21W 103/00 20180101ALN20230301BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230301BHJP
【FI】
B60Q1/50 Z
G08G1/16 A
G08G1/16 D
F21S43/00
B60W40/04
B60W30/08
B60Q1/28
F21W103:00
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019026806
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2020131876
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 槙吾
(72)【発明者】
【氏名】由川 輝
(72)【発明者】
【氏名】吉村 礁太
(72)【発明者】
【氏名】皆川 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲橋▼ 一輝
(72)【発明者】
【氏名】茂木 啓輔
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527490(JP,A)
【文献】特開2011-118753(JP,A)
【文献】特開2014-046838(JP,A)
【文献】特開2018-194976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/50
G08G 1/16
F21S 43/00
B60W 40/04
B60W 30/08
B60Q 1/28
F21W 103/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両を走行ルートに沿って自動走行させる車両制御演算部と、
前記自車両前方の走行環境情報を取得する前方走行環境情報取得部と、
前記前方走行環境情報取得部で取得した前記走行環境情報に基づいて前記自車両の接近を報知する対象となる報知対象通行者を認識する報知対象通行者認識演算部と、
前記報知対象通行者認識演算部で前記報知対象通行者を認識した場合、該報知対象通行者に対して認識している旨の認識状態を報知する認識状態報知部と
を備える自動運転システムにおいて、
前記報知対象通行者認識演算部は、
前記前方走行環境情報取得部で取得した走行環境に基づいて前記自車両の走行する車道と前記報知対象通行者の通行する路側帯とを区画する路側物の有無を検出する路側物検出部と、
前記前方走行環境情報取得部で取得した走行環境に基づいて前記自車両の前方の横断歩道を検出する横断歩道検出部と、
前記前方走行環境情報取得部で取得した走行環境に基づいて認識した通行者が前記自車両の方向を向いているか否かを検出する通行者状態検出部と
を有し、
前記報知対象通行者認識演算部は更に、
前記通行者状態検出部で前記通行者が前記自車両の方向を向いていると判定した場合であって、前記路側物検出部にて前記路側物が検出されないとき、又は前記横断歩道検出部で前記横断歩道を検出し且つ該横断歩道に近接する路側帯に前記通行者が検出されているとき、該通行者を前記報知対象通行者と特定する報知対象通行者認識部と、
前記報知対象通行者認識部で前記報知対象通行者を特定した場合、該報知対象通行者の方角を求める対象者方角演算部と
を有し、
前記認識状態報知部は、前記対象者方角演算部で求めた前記報知対象通行者の方角に向けて前記認識状態を報知する
ことを特徴とする自動運転システム。
【請求項2】
前記認識状態報知部は、前記報知対象通行者に向けて報知する前記認識状態をフロントガラスに表示する
ことを特徴とする請求項1記載の自動運転システム。
【請求項3】
前記認識状態の報知は、プロジェクタユニットから出射されるメッセージを前記フロントガラスに投影することで行う
ことを特徴とする請求項2記載の自動運転システム。
【請求項4】
前記認識状態の報知は、前記フロントガラスを介して指向性を有する光線を投光することで行う
ことを特徴とする請求項2記載の自動運転システム。
【請求項5】
前記通行者状態検出部は、前記通行者が前記自車両の方向を向いているか否かを、該通行者の身体的特徴量から判定する
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の自動運転システム。
【請求項6】
前記自車両の車速と予め設定されている報知判定車速とを比較する車速判定部
を更に有し、
前記報知対象通行者認識演算部は、前記車速判定部で前記自車両の車速が報知判定車速以下の場合に前記通行者が該自車両の方向を向いているか否かを調べる
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の自動運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転で走行している際に、路側帯を通行する通行者が報知対象通行者か否かを調べ、報知対象通行者と判定した場合は、この報知対象通行者に対して認識状態を報知する自動運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の車両技術分野においては、運転者の負担を軽減し、快適で且つ安全に走行させる自動運転システムが種々提案されている。この自動運転システムは、地図ロケータにて検出した自車両が走行している道路地図上の道路形状と、カメラユニット等のセンシングデバイスで検出した実際に走行している車線の道路形状との一致度を常に比較して、自車進行路を認識する。
【0003】
そして、道路地図上の道路形状とセンシングデバイスで検出した車線の道路形状との一致度が高い場合に、自車両は目標進行路に沿って走行していると判定し、運転者にハンドルを把持させることなく、制御システムが運転主体となって自動運転を行う運転モード(自動運転モード)を継続させる。
【0004】
その際、自動運転の継続が困難と判断された場合には、運転モードを、運転者にハンドル把持を要求する運転支援モードへ遷移させ、或いは、自動退避モードを実行させる。尚、この自動退避モードは、走行車線を、法定若しくは指定されている最低速度で走行させる。或いは、自車両を路側帯等の安全な場所へ誘導して停止させる。
【0005】
自動運転モードによる走行では、基本的に、運転者はハンドルを把持する必要も、前方を常時視認する必要もなく、自動運転システムからハンドルの把持要求があるまでは、ある程度リラックスしていることができる。従って、自動運転モードでの走行中において運転者は、運転席に着座した状態で運転操作以外の行動(読書、携帯端末の操作等)を行うことが可能となる。
【0006】
一方、自動運転システムは、自車両を自動運転により走行させるために、地図ロケータにより自車位置を認識し、ダイナミックマップに記憶されている自車両周辺の道路地図情報から、信号機、横断歩道、路側帯等の静的情報、及び交通量等の動的情報を取得する。又、車載カメラ等のセンシングデバイス、及び路車間通信等により、交通信号機の現示(点灯色)情報を取得する。更に、上述したセンシングデバイスによって、周囲の障害物、走行車両、通行者(歩行者、自転車運転者等)を認識する。
【0007】
ところで、例えば、道路幅が狭い車道の路側帯を通行する通行者に対して車両が近づいてくる場合、或いは通行者が横断歩道を渡る際に、通行者が接近してくる車両を認識しても、接近する車両が通行者を認識しているか否かが解らない場合、通行者は不安感を抱くことになる。
【0008】
自車両が自動運転モードで走行している場合、自動運転システムは当然通行者を認識しているが、通行者側からは、接近する車両が運転者のハンドル操作による手動運転によるものか、自動運転によるものかを明確に判別することはできない。
【0009】
例えば、特許文献1(特開2015-174541号公報)には、自動運転システムが自車両に接近する通行者(接近者)を検出し、接触する可能性がある場合、当該通行者に対し自車両が認識している旨を、表示や音声で報知することで、通行者が抱く不安感を解消させるようにした車両状態報知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-174541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
自動運転システムでは、接近する通行者を常時認識しているため、通行者とすれ違う際の横位置の距離が比較的狭い場合は、徐行或いは通行者が通過するまで停車させる。又、横断者用信号機が設置されていない横断歩道を通行者が横断しようとすれば、それを検知し、自車両を横断歩道の停止線手前で自動的に停止させる。そのため、通行者が接近する車両を認識していない場合であっても、それが自動運転システムにより自動運転している車両であれば、通行者の横を安全に通過し、或いは自動的に停車して通行者の通過を待つことになる。
【0012】
従って、自動運転システムにより自動運転を行っている車両が通行者に接近する場合であっても、それを認識していない、或いは認識していても接近する車両は安全に通過することを予め把握している通行者は、本来、不安感を抱いていないので、敢えて、自車両が通行者に対して認識している旨の報知をする必要はない。
【0013】
しかし、上述した文献に開示されている技術を自動運転システムに適用すると、自車両に近接する通行者を検出した場合、検出した通行者全員に対して認識していることを報知することになるため、不安感を抱いていない通行者に対しても不要な報知がなされてしまうという不都合がある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑み、自車両が接近することに不安感を抱く通行者を的確に察知して、当該通行者の方角に向けて自車両が接近する旨を報知することで、当該通行者の不安感を解消させると共に、不必要な報知を減少させることのできる自動運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、自車両を走行ルートに沿って自動走行させる車両制御演算部と、前記自車両前方の走行環境情報を取得する前方走行環境情報取得部と、前記前方走行環境情報取得部で取得した前記走行環境情報に基づいて前記自車両の接近を報知する対象となる報知対象通行者を認識する報知対象通行者認識演算部と、前記報知対象通行者認識演算部で前記報知対象通行者を認識した場合、該報知対象通行者に対して認識している旨の認識状態を報知する認識状態報知部とを備える自動運転システムにおいて、前記報知対象通行者認識演算部は、前記前方走行環境情報取得部で取得した走行環境に基づいて前記自車両の走行する車道と前記報知対象通行者の通行する路側帯とを区画する路側物の有無を検出する路側物検出部と、前記前方走行環境情報取得部で取得した走行環境に基づいて前記自車両の前方の横断歩道を検出する横断歩道検出部と、前記前方走行環境情報取得部で取得した走行環境に基づいて認識した通行者が前記自車両の方向を向いているか否かを検出する通行者状態検出部とを有し、前記報知対象通行者認識演算部は更に、前記通行者状態検出部で前記通行者が前記自車両の方向を向いていると判定した場合であって、前記路側物検出部にて前記路側物が検出されないとき、又は前記横断歩道検出部で前記横断歩道を検出し且つ該横断歩道に近接する路側帯に前記通行者が検出されているとき、該通行者を前記報知対象通行者と特定する報知対象通行者認識部と、前記報知対象通行者認識部で前記報知対象通行者を特定した場合、該報知対象通行者の方角を求める対象者方角演算部とを有し、前記認識状態報知部は、前記対象者方角演算部で求めた前記報知対象通行者の方角に向けて前記認識状態を報知する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通行者が自車両の方向を向いていると判定した場合であって、路側物が検出されないとき、又は横断歩道を検出しかつ横断歩道に近接する路側帯に通行者が検出されているとき、この通行者を報知対象通行者と特定し、特定した報知対象通行者の方角を求め、求めた報知対象通行者の方角に向けて認識状態を報知するようにしたので、自車両が接近することに不安感を抱く通行者を報知対象通行者として的確に察知し、この報知対象通行者の方角に向けて自車両が接近する旨を報知することができる。その結果、報知対象通行者不安感を解消させることができると共に、不安感をだかない通行者に対する不必要な報知を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】自動運転システムの概略構成図
図2】車道外側線を介して路側帯と区画されている車道を自動運転モードにより走行している車両の斜視図
図3】路側物を介して路側帯と区画されている車道を自動運転モードにより走行している車両の斜視図
図4】通行者認識状態報知処理ルーチンを示すフローチャート(その1)
図5】通行者認識状態報知処理ルーチンを示すフローチャート(その2)
図6】投影位置演算処理サブルーチンを示すフローチャート
図7】横断歩道を渡ろうとしている通行者が接近する車両を認識している状態を示す説明図
図8】自車両から報知対象通行者に対して認識状態を報知する態様を車室内から示す説明図
図9】プロジェクタユニットの概略構成図
図10】自車両が報知対象通行者に近接するに従い、報知状態を表示する位置が移動する状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の一実施形態を説明する。図1に示す自動運転システム1は、自車両M(図2参照)に搭載されている。この自動運転システム1は、自車両Mの現在位置(自車位置)を検出すると共に目的地までの走行ルートを生成するロケータユニット11、自車両M前方の走行環境情報を取得するカメラユニット21、及び自動運転制御ユニット23を有している。このロケータユニット11、及びカメラユニット21は一方が不調を来した場合には、他方のユニットで自動運転支援を一時的に継続させる冗長系が構築されている。そして、自動運転制御ユニット23は、ロケータユニット11とカメラユニット21とから得られた情報を比較し、現在走行中の道路形状の一致度が高い場合に自動運転モードを継続させる。
【0019】
ロケータユニット11は道路地図上の自車位置を推定すると共に、この自車位置の周辺、及び前方の道路地図データを取得する。一方、カメラユニット21は自車両Mが走行している車線(自車走行車線)の左右を区画する区画線の中央の道路曲率を求めると共に、この左右区画線の中央を基準とする自車両Mの車幅方向の横位置偏差を算出する。
【0020】
ロケータユニット11は、地図ロケータ演算部12と高精度道路地図データベース16とを有している。この地図ロケータ演算部12、後述する前方走行環境情報取得部21d、及び自動運転制御ユニット23は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。
【0021】
又、地図ロケータ演算部12の入力側に、GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)受信機13、自律走行センサ14、及び自動運転入力装置15が接続されている。GNSS受信機13は複数の測位衛星から発信される測位信号を受信する。
【0022】
自律走行センサ14は、トンネル内走行等、GNSS衛星からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない環境において、自律走行を可能にするもので、車速センサ、ヨーレートセンサ、及び前後加速度センサ等で構成されている。
【0023】
又、自動運転入力装置15は、搭乗者(主に運転者)が操作する端末装置であり、搭乗者は自動運転入力装置15を操作して、自動運転スイッチのON/OFF、目的地や経由地の情報(施設名、住所、電話番号等)の入力等、自動運転モードを実行させるために必要な情報を入力する。そして、この入力情報が地図ロケータ演算部12で読込まれる。この地図ロケータ演算部12は、自車位置推定演算部12aと走行ルート設定演算部12bとを備えている。
【0024】
又、高精度道路地図データベース16はHDD等の大容量記憶媒体であり、高精度な周知の道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)が記憶されている。この高精度道路地図情報は、基盤とする最下層の静的情報階層上に、自動走行をサポートするために必要な付加的地図情報が重畳された階層構造をなしている。付加的地図情報としては、道路の種別(一般道路、高速道路等)、道路形状、左右区画線、道路標識、停止線、交差点、信号機等の静的な位置情報、及び、渋滞情報や事故或いは工事による通行規制等の動的な位置情報が含まれている。尚、この道路地図情報(ローカルダイナミックマップ)は、図示しないクラウドサーバに記憶されて逐次更新されているグローバルダイナミックマップから、自車両Mを走行させる際に必要とする道路地図情報が読込まれて逐次更新される。
【0025】
自車位置推定演算部12aは、GNSS受信機13で受信した測位信号に基づき自車両Mの現在の位置座標(緯度、経度)を取得し、この位置座標を道路地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置(現在位置)を推定する。その際、GNSS衛星からの受信感度が低く測位信号を有効に受信することのできない場合、地図ロケータ演算部12は、自律走行センサ14で受信した信号を読込む。
【0026】
そして、車速センサで検出した車速、ヨーレートセンサで検出したヨーレート(ヨー角速度)、及び前後加速度センサで検出した前後加速度等に基づき移動距離と方位からローカライゼーションを行う。尚、車速センサで検出した車速は自動運転制御ユニット23においても読込まれる。
【0027】
走行ルート設定演算部12bは、自車位置推定演算部12aで推定した自車位置の位置座標と、自動運転入力装置15から入力された目的地(及び経由地)の位置座標(緯度、経度)とに基づき、高精度道路地図データベース16に格納されているローカルダイナミックマップを参照する。
【0028】
そして、自車位置と目的地(経由地が設定されている場合は、経由地を経由した目的地)とを結ぶ走行ルートを、予め設定されているルート条件(推奨ルート、最速ルート等)に従って生成する。尚、自動運転入力装置15に設けた自動運転スイッチがONであっても、目的地情報が入力されていない場合、走行ルート設定演算部12bは自車両Mを、現在走行している車線に沿って直進させる走行ルートを生成する。
【0029】
一方、カメラユニット21は、自車両Mの車室内前部の上部中央に固定されており、車幅方向中央を挟んで左右対称な位置に配設されているメインカメラ21a及びサブカメラ21bからなる車載カメラ(ステレオカメラ)と、画像処理ユニット(IPU)21c、及び前方走行環境情報取得部21dとを有している。このカメラユニット21は、メインカメラ21aで基準画像データを撮像し、サブカメラ21bで比較画像データを撮像する。この両画像データはIPU21cにて所定に画像処理される。
【0030】
前方走行環境情報取得部21dは、IPU21cで画像処理された基準画像データと比較画像データとを読込む。そして、基準画像データからパターンマッチング等によって対象物を認識し、又、基準画像データと比較画像データとの視差に基づいて両画像中の同一対象物の距離データ(自車両Mから対象物までの距離)を、三角測量の原理等を利用して算出し、これらを前方走行環境情報として取得する。更に、前方走行環境情報取得部21dは、メインカメラ21aで撮像した基準画像データで撮像した同一対象物の単位時間当たりの画像内での移動から当該対象物の方角情報を取得する。尚、自車両Mから同一対象物までの距離及び方角は、自車両Mが当該対象物に接近するに従って変化する。
【0031】
この前方走行環境情報取得部21dが前方走行環境情報として取得する対象物には、上述した自車走行車線の左右を区画する区画線の情報以外に、静的情報として、路側帯、横断歩道、停止線、道路標識、車両用信号機、路側帯と車道との境界に設置された路側物(ガードレール、ラバーポール、植え込み、縁石等)等が含まれる。更に、前方走行環境情報として取得する動的情報の対象物として、自車両Mの前方を走行する先行車(二輪車を含む)、路側帯を通行する通行者、及び、取得した車両用信号機の信号現示(点灯色)等が含まれる。
【0032】
尚、「路側帯」は、厳密には歩道が設けられていない道路(又は設けられていない側)において、道路(路面)標示によって区画することにより設けられた通行者用の通路を云う。従って、車道と路側帯とは段差無く続いていることになる。因みに、「歩道」は、道路を縁石やガードレールなどによって物理的に区画することにより設けられた通行者用の通路を云う。しかし、本実施形態において「路側帯」と「歩道」とを厳格に峻別することは内容を却って分かり難くするだけであるため、これらを総称して「路側帯」とする。
【0033】
又、本実施形態においては、「通行者」は路側帯を移動する者を示し、その代表として歩行者を示すが、通行者はこれに限定されるものではなく、自転車運転者も含まれる。従って、以下においては、歩行者を通行者35(図7参照)と称して説明する。
【0034】
又、前方走行環境情報取得部21dは、認識した通行者の身体の向き、即ち、通行者が自車両Mの方向(より詳しくは、運転席方向)を向いているか否かを調べる。通行者が自車両Mの方向(より詳しくは、運転席方向)を向いているか否かは身体的特徴量から判定する。身体的特徴量として、例えば、顔であれば、予め設定されている顔の特徴量(目、鼻、口、あご等)と比較して判定する。或いは上半身や目の動きの特徴量を比較して判定しても良い。
【0035】
尚、これらの対象物の少なくとも一部は、カメラユニット21に代えて、超音波センサ、ミリ波レーダやライダー(LIDAR;Light Detection and Ranging)等のセンシングデバイスによって検出しても良く、或いはカメラユニット21とセンシングデバイスとの組み合わせによって検出するようにしても良い。更に、上述した静的情報は、高精度道路地図データベース16に記憶されているローカルダイナミックマップから取得することも可能である。
【0036】
又、自動運転制御ユニット23の入力側にカメラユニット21の前方走行環境情報取得部21d、地図ロケータ演算部12、路車間情報取得部22が接続されている。路車間情報取得部22は道路に設置されている路側機からの情報を路車間通信により取得するもので、取得する情報としては車両用信号機までの距離、及び車両用信号機や横断者用信号機の信号現示(点灯色)等がある。
【0037】
一方、この自動運転制御ユニット23の出力側に、自車両Mを走行ルートに沿って走行させる操舵制御部26、強制ブレーキにより自車両Mを減速させるブレーキ制御部27、自車両Mの車速を制御する加減速制御部28、及び認識状態報知部29が接続されている。この認識状態報知部29は、フロントガラスMg(図8参照)にメッセージを投影する複数のプロジェクタユニット31を有している。尚、このプロジェクタユニット31の詳細については後述する。
【0038】
上述した自動運転制御ユニット23は、車両制御演算部23aと報知対象通行者認識演算部23bとを備えている。車両制御演算部23aは、操舵制御部26、ブレーキ制御部27、加減速制御部28を所定に制御して、GNSS受信機13で受信した自車位置を示す測位信号に基づき、自車両Mを走行ルート設定演算部12bで生成した走行ルートに沿って自動走行させる。
【0039】
その際、車両制御演算部23aは、カメラユニット21の前方走行環境情報取得部21dで取得した前方走行環境情報、及び、路車間情報取得部22で取得した車両用信号機までの距離、及びその現示(点灯色)を検出する。そして、車両用信号機までの距離が所定距離に達した際に、車両用信号機の信号現示が赤色の場合は減速制御を開始させて、横断歩道32手前の停止線32a(図7参照)で所定に停車させる。更に、この車両制御演算部23aは、図7に示すような車両用信号機が設置されていない横断歩道32であっても、この横断歩道32を横断しようとする通行者(図においては歩行者)35を認識した場合、手前の停止線32aで自動停止させる。
【0040】
その際、報知対象通行者認識演算部23bは、横断歩道32を渡ろうとする通行者35(図7には左右の通行者35を示す)を検出した場合、当該通行者35が、接近する車両(自車両M)が停止線32aで停車するかどうかの不安感を抱いているかどうかを調べる。そして、不安感を抱いていると判定した場合、認識状態報知部29に対し、認識している旨のメッセージ表示指令を送信する。
【0041】
認識状態報知部29は報知対象通行者認識演算部23bからの指令信号に従い、各プロジェクタユニット31を動作させて、自車両MのフロントガラスMgにメッセージを投影する。図9にプロジェクタユニット31の構成を例示する。認識状態報知部29に設けられている複数のプロジェクタユニット31は、同一の構成を有しており、主な構成部品として、発光側から画像表示部31a、投射レンズ31b、可動式光学ミラー31cを有している。又、画像表示部31aは、バックライト(光源)と液晶表示素子を代表とする表示素子を有している。
【0042】
プロジェクタユニット31は、画像表示部31aから出射される報知対象通行者認識演算部23bで設定したメッセージをフロントガラスMgに表示(投影)させる。又、可動式光学ミラー31cは、画像表示部から投射され、投射レンズ31bを介して拡大されたメッセージをフロントガラスMgの方向へ反射させ、このフロントガラスMgに、外方に向けて表示させるメッセージを投影するものである。この可動式光学ミラー31cは反射面31dを上下左右に揺動させる駆動部31eを有し、報知対象通行者認識演算部23bからの指令に従い、フロントガラスMgに対するメッセージの投影位置を可変させる。
【0043】
本実施形態では、認識状態報知部29内に、左右一対のプロジェクタユニット31が車幅方向に所定間隔を開けて配設されている。
【0044】
認識状態報知部29が、プロジェクタユニット31を駆動させてフロントガラスMgの投影位置Ml,Mrに投影するメッセージは、横断歩道32を渡ろうとしている通行者35であって、自車両M側を向いている者に対して行うものである。そのため、例えば、報知対象通行者認識演算部23bが認識状態報知条件を満足する通行者(以下、「報知対象通行者36」とする)が左右の路側帯34で認識された場合は、両報知対象通行者36に対してメッセージを送る。左右の路側帯34の一方を通行する通行者のみが報知対象通行者36と認識された場合は、その者に対してのみメッセージを送る。
【0045】
図7図8に示すように、フロントガラスMgに対するメッセージの投影位置(左投影位置Ml、右投影位置Mr)は、報知対象通行者認識演算部23bで求めた報知対象通行者36(図においては、左右に側報知対象通行者36を示す)の方角と、運転席に着座する一般的な運転者の目線に相当する予め設定された注視位置Msとを結ぶ線上であって、フロントガラスMgを透過する位置に設定される。
【0046】
ところで、図10に白抜き矢印で示すように、横断歩道を渡ろうとしている左右の報知対象通行者36に自車両Mが接近するに従い、報知対象通行者36と注視位置Msとを結ぶ線は次第に移動する。報知対象通行者認識演算部23bは、報知対象通行者36の方角から、フロントガラスMgに対するメッセージの投影位置Ml,Mrを求め、プロジェクタユニット31の駆動部31eを駆動させて、当該投影位置Ml,Mrにメッセージを投影させる。
【0047】
上述した報知対象通行者認識演算部23bで実行される認識状態報知条件の判定、及び報知対象通行者36に対する認識状態の報知処理は、具体的には図4図5に示す通行者認識状態報知処理ルーチンに従って行われる。
【0048】
このルーチンでは、先ず、ステップS1で、地図ロケータ演算部12からの信号に基づき、運転モードが自動運転モードか否かを調べる。そして、自動運転スイッチがONで、且つ運転モードとして自動運転モードが選択されている場合はステップS2へ進み、自動運転スイッチがOFF、或いは運転支援モード等、自動運転モード以外の運転モードが選択されている場合は、ルーチンを抜ける。
【0049】
ステップS2へ進むと、前方走行環境情報取得部21dで取得した前方走行環境情報に基づき、前方設定近距離以内の車道外側線33aの外側に設定されている路側帯34を通行する通行者35を検出する。この前方設定近距離は、横断歩道32を渡ろうとする通行者35が車両(自車両M)の接近に対して不安感を抱く距離であり、予め実験等に基づいて設定されている。因みに、本実施形態では、前方設定近距離を、自車両M前方10~20[m]以内に設定されている。又、路側帯34の情報は道路地図情報(静的情報)から取得するようにしても良い。
【0050】
次いで、ステップS3へ進み、路側帯34を通行する通行者35が検出されたか否かを調べ、検出されない場合は、ルーチンを抜ける。又、通行者35を検出した場合は、ステップS4へ進む。そして、ステップS4~S8において、検出した通行者35に対して認識状態報知条件が満足されているか否かの判定を行う。
【0051】
先ず、ステップS4では、検出した通行者35が自車両Mの方向を向いているか否かを調べ、向いている場合は、ステップS5へ進む。又、向いていない場合は、ルーチンを抜ける。通行者35が自車両Mの方向を向いているか否かは、例えば、上述したように通行者35の身体的特徴量を比較して判定する。尚、このステップS4での処理が、本発明の通行者状態検出部に対応している。
【0052】
その後、ステップS5へ進むと、自車両Mの前方設定近距離(例えば、10~20[m])以内に横断歩道32を認識したか否かを、前方走行環境情報取得部21dで取得した前方走行環境情報、或いは道路地図情報の静的情報に基づいて調べる。そして、横断歩道を認識しない場合は、ステップS7へジャンプする。又、横断歩道を認識した場合は、ステップS6へ進む。尚、このステップS5での処理が、本発明の横断歩道検出部に対応している。
【0053】
ステップS6では、ステップS3で認識した通行者35が、ステップS5で認識した横断歩道32を渡ろうとしているか否かを調べる。通行者35が横断歩道32を横断しようとしているか否かは、例えば、前方走行環境情報取得部21dで取得した当該通行者35が路側帯34側から横断歩道32側へ移動しているか否かで判定する。
【0054】
そして、通行者35が横断歩道32を渡ろうとしていると判定した場合は、ステップS8へ進む。又、通行者35が横断歩道32を渡ろうとしていない場合、即ち、通行者35が路側帯34を通行していると判定した場合は、ステップS7へ分岐する。
【0055】
尚、この場合、信号機が設置されているか否かを判定条件として加え、横断歩道32に信号機が設置されている場合は、通行者35が渡ろうとしている場合であっても、ルーチンを抜けるようにしても良い。即ち、信号機が設置されている横断歩道32を通行者35が渡ろうとしている状態は、車両用信号機の信号現示は赤色で、自車両Mは横断歩道32手前の停止線32aで停止しようとして減速しているため、通行者35が不安感を抱くことは無いと考えられる。
【0056】
又、ステップS5、或いはステップS6からステップS7へ進むと、路側帯34と車道33とが路側物37(図3参照)で区画されているか否かを調べる。この路側物37は、ガードレール、ラバーポール、植え込み、縁石等、車道33から路側帯34を物理的に区画する立体物であり、多くの場合、車道外側線33aの路側帯34側に設置されている。尚、路側物37で車道33と路側帯34とが区画されているか否かは、前方走行環境情報取得部21dで取得した前方走行環境情報、或いは道路地図情報の静的情報に基づいて判定する。又、このステップでの処理が、本発明の路側物検出部に対応している。
【0057】
そして、通行者35が通行する路側帯34と車道33とが車道外側線33aによってのみ区画されている、即ち、路側物37によって物理的に区画されていないと判定した場合はステップS8へ進む。又、車道33と路側帯34とが路側物37で区画されていると判定した場合はルーチンを抜ける。尚、図3には路側物37として縁石が例示されている。
【0058】
即ち、図2に示すように、車道33と路側帯34とが車道外側線33aによってのみ区画されている場合、通行者35は接近する車両(自車両M)に対し、接触するかもしれないという不安を抱き易くなる。これに対し、図3に示すように、車道33と路側帯34とが路側物(例えば、縁石)37で区画されていれば、路側帯34を通行する通行者35は自車両Mに接触すると云う不安感は抱き難い。
【0059】
その後、ステップS8へ進むと、車両制御演算部23aで設定した目標車速と報知判定車速とを比較する。自車両Mが自動運転モードで走行している場合、前方の路側帯34を通行する通行者35を認識しても、例えば、車線幅か広い一般道路の走行では減速することなく巡航させることができ、その際、通行者35に不安を抱かせることはない。尚、このステップでの処理が、本発明の車速判定部に対応している。
【0060】
自車両Mが自動運転モードで走行している際に、車両制御演算部23aは通行者35を含む障害物を常時認識している。そして、障害物を通過するに際しては、安全に通過可能な目標車速を設定し、各制御部26~28を制御する。その際、自車両Mが市街地路等、幅の狭い車道33を自動運転モードで走行するに際し、路側帯34に通行者35を検出した場合、すれ違う際の間隔(幅)が狭くなるに従い目標車速は低く設定される。又、その間隔が極めて狭い場合は、停車して通行者35が通過するまで待機することになる。
【0061】
しかし、通行者35側からは自車両Mが自動運転モードによる走行であるか否かを判別することはできない。そのため、通行者35の立場からすれば、接近する車両(自車両M)が自分(通行者35)を認識しているかどうか不安になり、その度合は、すれ違う際の間隔(幅)が狭いほど、換言すれば、目標車速が低速側に設定されるほど顕著になる。尚、この場合、目標車速に代えて、車速センサで検出した実際の車速と報知判定車速とを比較してもよいが、目標車速と比較することで、通行者35に対して瞬時に対応することができる。
【0062】
そして、目標車速が報知判定車速を超えている場合、車線幅が比較的広く、通行者は接近する自車両Mに対して不安感を抱いていないと判定し、ルーチンを抜ける。一方、目標自車速が報知判定車速以下の場合は、ステップS9へ進む。
【0063】
上述したように、自車両Mが自動運転モードで走行している場合、車両制御演算部23aは、前方設定距離以内の通行者35を常時認識し、横断歩道32を横断している、或いは横断しようとしている通行者35を検出した場合、自車両Mは横断歩道32手前の停止線32aで必ず停止する。そのため、不安感を抱いている通行者35に対してのみ自車両Mが認識していることを報知すれば良く、不安感を抱いていない通行者35に対して報知する必要は無い。
【0064】
従って、自車両Mが、路側物37で区画されていない路側帯34を通行し、或いは、横断歩道32を通行者35が横断しようとしている際に、自車両Mが接近しても当該通行者35が自車両Mの方向を向いていない場合は不安感を抱いていないと判定する。
【0065】
ステップS9では、上述したステップS4~S8の認識状態報知条件を満足した通行者35を報知対象通行者36として特定し、ステップS10へ進む。尚、図7における通行者35が認識状態報知条件を満足した報知対象通者として特定されているため、符号36を括弧書きで付す。又、このステップS9での処理が、本発明の報知対象通行者認識部に対応している。
【0066】
ステップS10では、特定した報知対象通行者36に対してメッセージを表示するためのフロントガラスMgの投影位置Ml,Mrを求める。この投影位置Ml,Mrは、図6に示す投影位置演算処理サブルーチンに従って求められる。
【0067】
このサブルーチンでは、先ず、ステップS21で、前方走行環境情報取得部21dで求めた報知対象通行者36の方角情報を取得する。前方走行環境情報取得部21dは、メインカメラ21aで撮像した基準画像データで撮像した同一対象物の単位時間当たりの画像内での移動から方角を算出する。報知対象通行者36が複数検出された場合は、各報知対象通行者36の方角を求める。尚、この方角は自車両Mと報知対象通行者36との距離が短くなるに従い、図10に示すように連続的に変化する。又、このステップS21での処理が、本発明の対象者方角演算部に対応している。
【0068】
次いで、ステップS22へ進み、ステップS21で算出した報知対象通行者36の方角と運転席に着座する一般的な運転者の目線に相当する予め設定された注視位置Msとを結ぶ線上であって、フロントガラスMgを透過する位置を求め、この位置を投影位置Ml,Mrとして特定する。尚、報知対象通行者36が左右の路側帯34の一方のみに検出された場合は、対応する側の投影位置(Ml又はMr)のみが算出される。
【0069】
更に、一つの路側帯に複数の報知対象通行者36が検出された場合、手前の報知対象通行者36から、先の報知対象通行者36まで投影位置Ml,Mrを連続的に移動させて、全員に報知する。即ち、報知対象通行者36は、自車両Mからのメッセージを認識した場合、不安感が解消され、自車両M方向に向けている姿勢を自己の進む方向へ戻す。そのため、手前の報知対象通行者36から順にメッセージを報知すれば良いことになる。従って、認識状態報知部29は、少なくとも左右一対のプロジェクタユニット31を備えていれば、ほぼ全員の報知対象通行者36に対してメッセージを報知することが可能となる。
【0070】
次いで、ステップS23へ進み、左右一対のプロジェクタユニット31の駆動部31eに対して投影位置Ml,Mrに対応する駆動信号を送信して、通行者認識状態報知処理ルーチンのステップS11へ進む。プロジェクタユニット31に設けられている可動式光学ミラー31cは、報知対象通行者認識演算部23bからの駆動信号にて駆動部31eを駆動させる。すると、反射面31dが、画像表示部31aから出射されるメッセージをフロントガラスMgの投影位置Ml,Mr方向へ反射させる位置にセットされる。
【0071】
次いで、通行者認識状態報知処理ルーチンのステップS11へ進むと、報知対象通行者36に向けて、自車両Mは報知対象通行者36を認識している旨を報知すべく、認識状態報知部29に報知指令信号を送信する。
【0072】
すると、認識状態報知部29は、報知対象通行者認識演算部23bから報知指令信号を受けて、対応するメッセージをプロジェクタユニット31の画像表示部31aに設けられている表示素子に表示させる。すると、この表示素子に表示されたメッセージが反射面31dで反射されて、フロントガラスMgの投影位置Ml,Mrに投影される。
【0073】
その結果、フロントガラスMgの投影位置Ml,Mrに「通行者を認識している」旨のメッセージが表示されて報知対象通行者36に報知される。報知対象通行者36は、このメッセージを認識することで不安感が解消し、安心感を覚える。又、報知対象通行者36に対してのみメッセージを報知することで、自車両Mの接近に不安を抱いていない通行者35に対しては、メッセージを報知することによる不快感や煩わしさを覚えさせることがない。又、このメッセージは、各報知対象通行者36に対して個別に報知されるため、各報知対象通行者36に対してより確実に安心感を与えることができる。
【0074】
尚、このメッセージは、文章である必要は無く、視覚的に認識されれば良いので、予め決められているメッセージ色(例えば、青色)、或いは、予め決められたピクトグラムやシンボルマークを表示させるようにしても良い。
【0075】
その後、ステップS12へ進み、自車両Mが停車のための減速中か否かを車両制御演算部23aでの制御状態に基づいて判定する。そして、停車のための減速が実行されていない場合は、ルーチンを抜ける。一方、停車のための減速が検出された場合は、ステップS13へ進む。ステップS13では、自車両Mが減速中である旨を、上述した通行者35に対して報知すべく、認識状態報知部29に報知指令を出力して、ルーチンを抜ける。
【0076】
認識状態報知部29は、報知対象通行者認識演算部23bから報知指令信号を受けると、「停車のために減速している」旨のメッセージをプロジェクタユニット31の画像表示部31aに設けられている表示素子に表示させる。すると、この画像表示部31aに表示されたメッセージが反射面31dで反射されて、フロントガラスMgの投影位置Ml,Mrに投影され、報知対象通行者36に報知される。
【0077】
尚、このメッセージは、文章である必要は無く、報知対象通行者36に向けて、予め決められているメッセージ色(例えば、青色)を点滅させるようにしても良い。或いは、予め決められたピクトグラムやシンボルマークを表示させるようにしても良い。
【0078】
その結果、例えば、信号機の設置されていない横断歩道32を渡ろうとしている報知対象通行者36は、自車両Mが停止線32aで停止するのを確認すること無く、安心して横断歩道32を渡ることができる。
【0079】
このように、本実施形態によれば、路側帯34を通行する通行者35に対して認識状態報知条件が満足されているか否かを調べるようにしたので、自車両Mが接近することに不安感を抱く通行者を的確に察知することができる。そして、認識状態報知条件が満足された通行者35を報知対象通行者36と特定し、当該報知対象通行者36に対してのみ、自車両Mは当該報知対象通行者36を認識している旨のメッセージを報知するようにしたので、報知対象通行者36の不安感を解消し、安心感を与えることができる。
【0080】
又、報知対象通行者36の方角を算出し、この報知対象通行者36と運転席に着座する一般的な運転者の目線に相当する予め設定された注視位置Msとを結ぶ線を透過するフロントガラスMgの位置を求め、当該位置を投影位置Ml,Mrとして設定し、プロジェクタユニット31からのメッセージを投影位置Ml,Mrに表示させるようにしたので、各報知対象通行者36に対して個別にメッセージが報知することができる。そのため、各報知対象通行者36の不安感をより確実に解消して、安心感を与えることができるばかりでなく、不要な報知を減少させることができる。
【0081】
尚、本発明は、上述した実施形態に限るものではなく、例えば自車両Mにドライバモニタリングシステムを搭載し、運転者の視線が、自車両Mの方向を向いている通行者35に向けられていることを検出した場合、当該通行者35に対しては、メッセージを報知しないという条件を、認識状態報知条件に加えても良い。
【0082】
又、認識状態報知部29は、プロジェクタユニット31の画像表示部31aに代えて、可視光線の一例であるLEDライトを設け、このLEDライトからの光線を投影位置Ml,Mrに投射するようにしても良い。
【符号の説明】
【0083】
1…自動運転システム、
11…ロケータユニット、
12…地図ロケータ演算部、
12a…自車位置推定演算部、
12b…走行ルート設定演算部、
13…GNSS受信機、
14…自律走行センサ、
15…自動運転入力装置、
16…高精度道路地図データベース、
21…カメラユニット、
21a…メインカメラ、
21b…サブカメラ、
21c…画像処理ユニット(IPU)、
21d…前方走行環境情報取得部、
22…路車間情報取得部、
23…自動運転制御ユニット、
23a…車両制御演算部、
23b…報知対象通行者認識演算部、
26…操舵制御部、
27…ブレーキ制御部、
28…加減速制御部、
29…認識状態報知部、
31…プロジェクタユニット、
31a…画像表示部、
31b…投射レンズ、
31c…可動式光学ミラー、
31d…反射面、
31e…駆動部、
32…横断歩道、
32a…停止線、
33…車道、
33a…車道外側線、
34…路側帯、
35…通行者、
36…報知対象通行者、
37…路側物、
M…自車両、
Mg…フロントガラス、
Ml,Mr…投影位置、
Ms…注視位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10