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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】絶縁状態監視装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20230301BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R27/02 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019055807
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159691
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000167107
【氏名又は名称】光商工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓朗
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-193708(JP,A)
【文献】特開2003-215196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平面電極と、
前記水平面電極に対して略直角に設けられた垂直面電極と、
前記水平面電極と略平行に所定の距離離して配置された第1電極および前記垂直面電極と略平行に所定の距離離して配置された第2電極を有する共通電極と、
前記水平面電極の一端と前記垂直面電極の一端とを接続した接続点と前記共通電極との間に第1交流電圧を発生させ、絶縁状態に応じて電圧を自動調整できる第1電圧発生手段と、
前記水平面電極と前記垂直面電極との間に前記第1交流電圧とは異なる周波数の第2交流電圧を発生させる第2電圧発生手段と、
前記第1交流電圧と、前記共通電極と前記接続点間に流れる電流に基づいて、前記水平面電極と前記垂直面電極間の総合インピーダンスおよび総合絶縁抵抗および総合静電容量を算出し、前記水平面電極と前記共通電極間の第3電圧、および、前記垂直面電極と前記共通電極間の第4電圧、および、前記第3電圧と前記第4電圧の電圧差、および、前記総合インピーダンスに基づいて、前記水平面電極と前記共通電極間の絶縁抵抗および静電容量、かつ、前記垂直面電極と前記共通電極間の絶縁抵抗および静電容量を求める演算器と、
を備えたことを特徴とする絶縁状態監視装置。
【請求項2】
前記第1交流電圧と、前記共通電極と前記接続点間に流れる電流に基づいて、以下の(1)式~(4)式により、前記水平面電極と前記垂直面電極間の前記総合絶縁抵抗および前記総合静電容量を算出することを特徴とする請求項1記載の絶縁状態監視装置。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

ただし、r:接続点と共通電極間の抵抗
:総合インピーダンスZの電圧
V1:第1交流電圧
Vr:抵抗rの両端に発生する電圧
I1:共通電極と接続点間に流れる電流
θ1:VzとI1の位相差
θr:V1とVrの位相差
θz:V1とVzの位相差
R:総合絶縁抵抗
C:総合静電容量
f1:第1交流電圧の周波数
Z:総合インピーダンス
【請求項3】
前記水平面電極と前記共通電極間の第3電圧、および、前記垂直面電極と前記共通電極間の第4電圧、および、前記第3電圧と前記第4電圧の電圧差、および、前記総合インピーダンスに基づいて、以下の(11)式,(12)式,(15)式~(21)式により、前記水平面電極と前記共通電極間の絶縁抵抗および静電容量、かつ、前記垂直面電極と前記共通電極間の絶縁抵抗および静電容量を求めることを特徴とする請求項1または2記載の絶縁状態監視装置。
【数11】

【数12】

=0と仮定すると、
【数15】

【数16】

【数17】

=0と仮定すると、
【数18】

【数19】

【数20】

【数21】

ただし、I3:水平面電極と共通電極間に流れる電流
I4:垂直面電極と共通電極間に流れる電流
V2:第2交流電圧
V3:水平面電極と共通電極間の電圧
V4:垂直面電極と共通電極間の電圧
ΔV:V3とV4の電圧差
r:接続点と共通電極間の抵抗
:水平面電極と共通電極間のインピーダンス
:垂直面電極と共通電極間のインピーダンス
Z:総合インピーダンス
θ3:V3の位相
θ4:V4の位相
θI3:I3の位相
θ:Zの位相
I3=I3のうち絶縁抵抗成分に流れる電流
I3=I3のうち静電容量成分に流れる電流
θI4:I4の位相
I4=I4のうち絶縁抵抗成分に流れる電流
I4=I4のうち静電容量成分に流れる電流
:水平面電極と共通電極間の絶縁抵抗
:水平面電極と共通電極間の静電容量
:垂直面電極と共通電極間の絶縁抵抗
:垂直面電極と共通電極間の静電容量
f2:第2交流電圧の周波数
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 電気設備内の電気機器における絶縁状態の劣化を診断する絶縁状態監視装置に係り、特に、電気機器の水平方向および垂直方向における絶縁状態の劣化を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キュービクルや配電盤、工場等の電気設備においては、電気設備内の電気機器に塵埃等が堆積すると、当該電気機器の絶縁状態が劣化し、最悪の場合火災等が生じる恐れがある。そこで、従来は、定期的に電気設備等の清掃やメンテナンス等を行い、電気機器の絶縁性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-162320号公報
【文献】特開平8-210890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、どの程度の期間でどの程度の塵埃が堆積するのか、どの程度の塵埃が堆積するとどの程度の絶縁劣化が生じるのかが不明であるため、メンテナンス性の効率化を図ることができない。
【0005】
また、場所や季節や風向き等により、電気機器に堆積する塵埃等の量が異なる。定期的に電気設備等の清掃やメンテナンスを行う場合、一般的には、塵埃等が多い状況を想定してメンテナンスのスケジュールを組むため、清掃やメンテナンスの間隔が短くなり、清掃やメンテナンスの回数が多くなる。
【0006】
また、電気機器には立体的構造のものもあり、塵埃は電気機器の水平方向だけでなく、風向き等の環境により電気機器の垂直方向にも堆積することがある。
【0007】
以上示したようなことから、絶縁状態監視装置において、電気機器の水平方向および垂直方向における絶縁状態を監視することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、水平面電極と、前記水平面電極に対して略直角に設けられた垂直面電極と、前記水平面電極と略平行に所定の距離離して配置された第1電極および前記垂直面電極と略平行に所定の距離離して配置された第2電極を有する共通電極と、前記水平面電極の一端と前記垂直面電極の一端と前記共通電極の一端とを接続した接続点と前記共通電極との間に第1交流電圧を発生させ、絶縁状態に応じて電圧を自動調整できる第1電圧発生手段と、前記水平面電極と前記垂直面電極との間に前記第1交流電圧とは異なる周波数の第2交流電圧を発生させる第2電圧発生手段と、前記第1交流電圧と、前記共通電極と前記接続点間に流れる電流に基づいて、前記水平面電極と前記垂直面電極間の総合インピーダンスZおよび総合絶縁抵抗および総合静電容量を算出し、前記水平面電極と前記共通電極間の第3電圧、および、前記垂直面電極と前記共通電極間の第4電圧、および、前記第3電圧と前記第4電圧の電圧差、および、前記総合インピーダンスに基づいて、前記水平面電極と前記共通電極間の絶縁抵抗および静電容量、かつ、前記垂直面電極と前記共通電極間の絶縁抵抗および静電容量を求める演算器と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、絶縁状態監視装置において、電気機器の水平方向および垂直方向における絶縁状態を監視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における絶縁状態監視装置を示す概略図。
図2】V1,VZの関係を示す等価回路。
図3】V1,Vr,VZ,I1の関係を表すベクトル図。
図4】VZ,IR,I1,ICの関係を表すベクトル図。
図5】V2,V3,V4の関係を表す等価回路。
図6】V2,V3,V4,ΔVの関係を表すベクトル図。
図7】V3,I3,Zの関係を表すベクトル図。
図8】V4,I4,Zの関係を表すベクトル図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願発明における絶縁状態監視装置の実施形態を図1図8に基づいて詳述する。
【0012】
[実施形態]
まず、本実施形態における絶縁状態監視装置の構成を図1の概略図に基づいて説明する。本実施形態における絶縁状態監視装置は、電気設備内に設置されるものとする。図1に示すように、絶縁状態監視装置は、水平面電極1と垂直面電極2と共通電極3と、を備える。
【0013】
水平面電極1は地面に対して略平行に設けられる。垂直面電極2は水平面電極1に対して約90°(略直角)の角度差が設けられている。共通電極3は、水平面電極1と略平行に所定の距離離して配置された第1電極3aと、垂直面電極2と略平行に所定の距離離して配置された第2電極3bと、を有する。
【0014】
図1では、所定の形状の水平面電極1、垂直面電極2、共通電極3を示しているが、水平面電極1と垂直面電極2とが約90°の角度差を有し、共通電極3が水平面電極1と略平行に所定の距離離して配置された第1電極3aと、垂直面電極2と略平行に所定の距離離して配置された第2電極3bと、を有していれば、その他の形状であってもよい。
【0015】
本実施形態では、プリント基板上のパターン(銅箔等)により水平面電極1および垂直面電極2および共通電極3を構成するものとするが、その他の材質等によって水平面電極1,垂直面電極2,共通電極3を構成してもよい。
【0016】
水平面電極1の一端と垂直面電極2の一端は接続点で接続される。本実施形態では、水平面電極1の一端と垂直面電極2の一端とは後述するトランスTrの2次側を介して接続される。共通電極3の一端は、第1電圧発生手段4やフィルタ5,増幅回路6、抵抗r、r1を介してトランスTrの2次側の中性点に接続される。
【0017】
共通電極3とトランスTrの2次側の中性点(前記接続点)との間には、第1交流電圧V1を発生させる第1電圧発生手段4が設けられる。なお、第1電圧発生手段4と共通電極3およびトランスTrの2次側の中性点との間には、フィルタ5,増幅回路6,抵抗r,r1が設けられる。第1電圧発生手段4は、共通電極3と水平面電極1および垂直面電極2間の絶縁抵抗を計測するため、絶縁状態に応じて電圧を自動調整できるものとする。
【0018】
水平面電極1と垂直面電極2との間には、トランスTrを介して第2交流電圧V2を発生させる第2電圧発生手段7が設けられる。第2交流電圧V2は第1交流電圧V1の周波数f1とは異なる周波数f2とする。また、トランスTrの2次側と水平面電極1および垂直面電極2との間には、図1に示すようにヒューズ8a,8bを設けても良い。
【0019】
電流検出手段9は、接続点と共通電極3間の電流I1を検出する。電流I1は水平面電極1および垂直面電極2と共通電極3間の絶縁状態により値が異なる。電流検出手段9で検出された電流I1は、フィルタ10,増幅回路11,A/D変換器12を介して演算器13に出力される。
【0020】
第2交流電圧V2により、水平面電極1と共通電極3との間に第3電圧V3が印加され、垂直面電極2と共通電極3との間に第4電圧V4が印加される。電圧検出手段14は、第3電圧V3および第4電圧V4を検出し、第3電圧V3と第4電圧V4の電圧差ΔVを算出する。電圧検出手段14で検出された第3電圧V3および第4電圧V4および電圧差ΔVは、フィルタ15,増幅回路16,A/D変換器12を介して演算器13に出力される。
【0021】
演算器13は、第1交流電圧V1と電流I1から水平面電極1と垂直面電極2間の総合インピーダンスZ,総合絶縁抵抗R,総合静電容量Cを演算式Aによって演算する。また、演算器13は、第3電圧V3,第4電圧V4,電圧差ΔV,総合インピーダンスZに基づいて、水平面電極1と共通電極3間の絶縁抵抗RHおよび静電容量CH、かつ、垂直面電極2と共通電極3間の絶縁抵抗RVおよび静電容量CVを演算式Bによって演算する。
【0022】
表示手段17は、演算器13において演算式Bによって演算された絶縁抵抗RHおよび静電容量CH、絶縁抵抗RVおよび静電容量CVを表示する。
【0023】
警報手段18は、絶縁抵抗RHおよび静電容量CH、絶縁抵抗RVおよび静電容量CVと予め設定された所定の閾値とを比較し、前記各数値が閾値以下となった場合に、表示または音響による警報を行う。
【0024】
次に、水平面電極1と垂直面電極2間の総合インピーダンスZ,総合絶縁抵抗R並びに総合静電容量Cを求めるための演算式Aについて説明する。図2は、第1交流電圧V1と総合インピーダンスZにかかる電圧VZの関係を示す等価回路である。図2において、水平面電極1と共通電極3間の絶縁抵抗をRH,静電容量をCHとし、垂直面電極2と共通電極3間の絶縁抵抗をRV,静電容量をCVとする。また、接続点と共通電極3間の抵抗rの両端に発生する電圧をVr、電流をI1とし、総合インピーダンスZにかかる電圧をVZとする。また、第1交流電圧V1の周波数をf1とする。
【0025】
水平面電極1と垂直面電極2間の総合インピーダンスZは、図2に示すように、水平面電極1と垂直面電極2の総合絶縁抵抗Rと総合静電容量Cを並列合成した値である。総合インピーダンスZにかかる電圧VZは、第1交流電圧V1、総合インピーダンスZに流れる電流I1から以下の(1)式となる。
【0026】
【数1】
【0027】
総合インピーダンスZは、第1交流電圧V1によって総合インピーダンスZに流れる電流I1と(1)式から以下の(2)式となる。
【0028】
【数2】
【0029】
図3は、第1交流電圧V1,降下電圧Vr,総合インピーダンスZにかかる電圧VZ,電流I1をベクトルとして表した図である。第1交流電圧V1と降下電圧Vr間の位相差をθr,第1交流電圧V1と総合インピーダンスZにかかる電圧VZ間の位相差をθz,総合インピーダンスZにかかる電圧VZと電流I1間の位相差をθ1とすると、位相差θ1は以下の(3)式となる。
【0030】
【数3】
【0031】
総合インピーダンスZ、および、上記(3)式により、総合絶縁抵抗R、総合静電容量Cは以下の(4)式となる。
【0032】
【数4】
【0033】
図4は、電流I1,総合絶縁抵抗Rに流れる電流IR,総合静電容量Cに流れる電流IC,総合インピーダンスZにかかる電圧VZをベクトルとして表した図である。電流IRと電流I1間の位相差をθ1とすると、電流IR,電流ICは以下の(5)式となる。
【0034】
【数5】
【0035】
電流IR、電流ICを用いて、総合絶縁抵抗R,総合静電容量Cを以下の(6)式と表すことができる。
【0036】
【数6】
【0037】
総合インピーダンスZは、総合絶縁抵抗Rと総合静電容量Cを並列合成した値であるため、以下の(7)式となる。
【0038】
【数7】
【0039】
次に、水平面電極1と共通電極3間の絶縁抵抗RHおよび静電容量CH、かつ、垂直面電極2と共通電極3間の絶縁抵抗RVおよび静電容量CVを求めるための演算式Bについて説明する。
【0040】
図5は、第2交流電圧V2,第3電圧V3,第4電圧V4の関係を示す等価回路である。第2交流電圧V2は周波数f2であり、トランスTrの2次側の中性点でV2/2,V2/2に2分割される。図5のHorizonは水平面電極1と接続される側を示し、Verticalは垂直面電極2と接続される側を示している。水平面電極1(Horizon)と共通電極3(Common)間の電圧がV3であり、垂直面電極2(Vertical)と共通電極3(Common)間の電圧がV4である。水平面電極1と共通電極3間のインピーダンスをZHとし、垂直面電極2と共通電極3間のインピーダンスをZVとする。水平面電極1と共通電極3間に流れる電流をI3とし、垂直面電極2と共通電極3間に流れる電流をI4とする。トランスTrの2次側中性点(接続点)と共通電極3間の抵抗をrとし、抵抗rに流れる電流をIrとする。第3電圧V3と第4電圧V4の電圧差をΔVとする。
【0041】
等価回路を表す図5に示すように、共通電極3(Common)に流れ込む電流Irは以下の(8)式となる。
【0042】
【数8】
【0043】
上記(8)式を、Ir=ΔV/r,I3=V3/ZH,I4=V4/ZVを使用して書き替えると以下の(9)式となる。
【0044】
【数9】
【0045】
合成インピーダンスは、以下の(10)式となる。
【0046】
【数10】
【0047】
次に、水平面電極1と共通電極3間のインピーダンスZHと垂直面電極2と共通電極3間のインピーダンスZVを求める。まず、第2交流電圧V2,第3電圧V3,第4電圧V4の関係は以下の(11)式となる。
【0048】
【数11】
【0049】
電位差ΔV=-V3+V4であるため、V3=V4-ΔVV4=V3+ΔVとなる。これを(11)式に代入すると、以下の(12)式となる。
【0050】
【数12】
【0051】
上記(9)式,(10)式,(11)式より、水平面電極1と共通電極3間のインピーダンスZHと垂直面電極2と共通電極3間のインピーダンスZVは以下の(13)式となる。
【0052】
【数13】
【0053】
次に、第3電圧V3の実部V3re,虚部V3im,位相θ3,第4電圧V4の実部V4re,虚部V4im,位相θ4を求める。図6は第2交流電圧V2,第3電圧V3,第4電圧V4,電圧差ΔVの関係を示すベクトル図である。第2交流電圧V2と第3電圧V3間の位相差をθ3、第2交流電圧V2と第4電圧V4間の位相差をθ4、第2交流電圧V2と電圧差ΔV間の位相差をΔθとする。第3電圧V3の実部V3re,虚部V3im,位相差θ3,第4電圧V4の実部V4re,虚部V4im,位相差θ4は以下の(14)式となる。なお、添字のreはベクトル実部の大きさを示し、imは虚部の大きさを示す。図6において横軸をre,縦軸をimとする。
【0054】
【数14】
【0055】
図7は、第3電圧V3と電流I3と総合インピーダンスZを表すベクトル図である。第3電圧V3の位相をθ3、総合インピーダンスZの位相をθz、電流I3の位相をθI3とする。
【0056】
図8は、第4電圧V4と電流I4と総合インピーダンスZを表すベクトル図である。第4電圧V4の位相をθ4、総合インピーダンスZの位相をθz、電流I4の位相をθI4とする。
【0057】
V=0と仮定すると、電流I3は以下の(15)式となる。
【0058】
【数15】
【0059】
(15)式から位相θI3は以下の(16)式となる。
【0060】
【数16】
【0061】
そして、電流I3のうち絶縁抵抗成分に流れる電流I3R,電流I3のうち静電容量成分に流れる電流I3Cは以下の(17)式となる。
【0062】
【数17】
【0063】
H=0と仮定すると、電流I4は以下の(18)式となる。
【0064】
【数18】
【0065】
(18)式から位相θI4は以下の(19)式となる。
【0066】
【数19】
【0067】
そして、電流I4のうち絶縁抵抗成分に流れる電流I4R,電流I4のうち静電容量成分に流れる電流I4Cは以下の(20)式となる。
【0068】
【数20】
【0069】
第2交流電圧V2および上記のI3R,I3C,I4R,I4Cに基づいて、水平面電極1と共通電極3間の絶縁抵抗RHおよび静電容量CH、かつ、垂直面電極2と共通電極3間の絶縁抵抗RVおよび静電容量CVを、以下の(21)式により求める。
【0070】
【数21】
【0071】
以上示したように、本実施形態における絶縁状態監視装置によれば、電気機器の絶縁状態を検出することが可能となる。また、水平面電極1と共通電極3間の絶縁抵抗RHおよび静電容量CH、かつ、垂直面電極2と共通電極3間の絶縁抵抗RVおよび静電容量CVを演算し、電気機器の水平方向および垂直方向の汚染状態に応じた各電極の絶縁状態をそれぞれ監視することが可能となる。電気機器には、立体的構造のものもあり、塵埃等は電気機器の水平方向だけでなく、風向き等の環境により電気機器の垂直方向にも堆積することがある。そのため、電気機器の水平方向と垂直方向の絶縁状態を同時に監視することにより、電気機器全体の絶縁状況を正確に把握することが可能となる。また、電気機器の水平方向および垂直方向それぞれに絶縁状態監視装置を設ける必要がなく、一つの絶縁状態監視装置でよい。
【0072】
なお、実施形態では塵埃が電気機器に堆積した場合について説明したが、本願発明は、塵埃の堆積に限らず、電気機器に何らかの物質が付着して絶縁状態が劣化した場合も絶縁状態を監視することが可能である。
【0073】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0074】
1:水平面電極
2:垂直面電極
3:共通電極
4:第1電圧発生手段
5,10,15:フィルタ
6,11,16:増幅回路
7:第2電圧発生手段
8a,8b:ヒューズ
9:電流検出手段
12:A/D変換器
13:演算器
14:電圧検出手段
17:表示手段
18:警報手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8