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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】防水シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/42 20060101AFI20230301BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20230301BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230301BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
B32B27/42
B32B27/04 Z
B32B27/30 101
B32B5/02 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019075806
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020172074
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 忠洋
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0021789(KR,A)
【文献】特開2002-086602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04D 5/00-5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シートの一方の面側または両面側に形成され、ポリウレア樹脂を含む樹脂層と、を有し、
前記基材シートは、織布または不織布からなる芯材と、該芯材に含浸されたポリ塩化ビニル樹脂とを含み、
前記樹脂層の厚さが、前記基材シートの一方の面側または両面側の合計で1mm以上、2mm以下であり、
前記芯材を構成する織布は、目付量が30g/m 以上200g/m 以下であるガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維から選択される少なくとも1種の高強度な繊維からなり、
前記芯材を構成する不織布は、目付量が10g/m 以上200g/m 以下であるガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維から選択される少なくとも1種の高強度な繊維からなることを特徴とする防水シート。
【請求項2】
前記基材シートと前記樹脂層の間に、ポリ塩化ビニル樹脂からなる中間層が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の防水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートに関する。
【背景技術】
【0002】
土木分野において、防水機能を備えた下地シートを用いることがある。例えば、灌漑工事の基礎部分の施工や、建築物の通水部の施工などに、防水機能を備えた下地シートを敷設することによって、水による浸食などを防止する。
従来、土木向けの防水機能を備えた下地シートとして、例えば、2つの塩化ビニル樹脂層の間に、アクリル樹脂フィルムと補強用ネットとを介在させた防水シートが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、強化繊維を用いた繊維強化熱可塑性樹脂シートと防水層とから構成した複合防水シートが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-127319号公報
【文献】特開平8-281879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の防水シートは、その上に土砂や砕石等を配置して、砕石をならすために衝撃を加える(締固め作業)と、砕石を介して加えられた衝撃により、破損して、穴が開くという課題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、砕砕石を介して衝撃が加えられても破損することを抑制できる防水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1]基材シートと、該基材シートの一方の面側または両面側に形成され、ポリウレア樹脂を含む樹脂層と、を有し、前記基材シートは、織布または不織布からなる芯材と、該芯材に含浸されたポリ塩化ビニル樹脂とを含み、前記樹脂層の厚さが、前記基材シートの一方の面側または両面側の合計で1mm以上、2mm以下であり、前記芯材を構成する織布は、目付量が30g/m 以上200g/m 以下であるガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維から選択される少なくとも1種の高強度な繊維からなり、前記芯材を構成する不織布は、目付量が10g/m 以上200g/m 以下であるガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維から選択される少なくとも1種の高強度な繊維からなる防水シート
[2]前記基材シートと前記樹脂層の間に、ポリ塩化ビニル樹脂からなる中間層が形成された[1]記載の防水シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、砕石を介して衝撃が加えられても破損することを抑制できる防水シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
図4】本発明の第4の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
図5】実施例および比較例において、防水シートの追従性の評価方法を示す模式図である。
図6】実施例および比較例において、防水シートの追従性の評価方法を示す模式図である。
図7】実施例および比較例において、防水シートの追従性の評価方法を示す模式図である。
図8】実施例および比較例において、防水シートの追従性の評価方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の防水シートについて説明する。
なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0010】
(第1の実施形態)
「防水シート」
図1は、本発明の第1の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の防水シート10は、基材シート20と、基材シート20の一方の面20a側に形成された樹脂層31と、を有する。
【0011】
基材シート20は、織布または不織布からなる芯材21と、芯材21に含浸されたポリ塩化ビニル樹脂22とを含む。
【0012】
基材シート20では、ポリ塩化ビニル樹脂22が芯材21に含浸されるとともに、ポリ塩化ビニル樹脂22が芯材21の表面を覆っている。すなわち、基材シート20の最表面は、ポリ塩化ビニル樹脂22で形成されている。
【0013】
基材シート20の厚さは、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましく、1.0mm以上1.5mm以下であることがより好ましい。
基材シート20の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、防水シート10の耐衝撃性が向上する。一方、基材シート20の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、防水シート10の柔軟性が向上するため、防水シート10を敷設し易くなり、防水シート10をロール状に巻き取った状態で保管したり、搬送したりすることもできる。
【0014】
芯材21の厚さは、0.1mm以上0.3mm以下であることが好ましい。
芯材21の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、防水シート10の耐衝撃性が向上する。一方、芯材21の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、防水シート10の柔軟性が向上するため、防水シート10を敷設し易くなり、防水シート10をロール状に巻き取った状態で保管したり、搬送したりすることもできる。
【0015】
芯材21を構成する織布としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の高強度な繊維からなる織布や、これらの繊維を2種以上組み合わせた複合繊維からなる織布が挙げられる。
【0016】
織布の目付量は、30g/m以上200g/m以下であることが好ましく、100g/m以上150g/m以下であることがより好ましい。
織布の目付量が下限値以上であれば、強度不足の可能性がある。一方、織布の目付量が上限値以上であれば、防水シートの柔軟性が損なわれる可能性がある。
【0017】
芯材21を構成する不織布としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の高強度な繊維からなる不織布や、これらの繊維を2種以上組み合わせた複合繊維からなる不織布が挙げられる。
【0018】
不織布の目付量は、10g/m以上200g/m以下であることが好ましく、50g/m以上120g/m以下であることがより好ましい。
不織布の目付量が下限値以上であれば、強度不足の可能性がある。一方、不織布の目付量が上限値以上であれば、防水シートの柔軟性が損なわれる可能性がある。
【0019】
本実施形態のように、基材シート20の一方の面20a側のみに樹脂層31が形成されている場合、樹脂層31の厚さは、1mm以上であり、1mm以上2mm以下であることが好ましい。ここで、樹脂層31の厚さとは、芯材21に含浸されている部分を除いて、基材シート20の厚さ方向において、基材シート20の一方の面20aよりも外方にある部分の厚さのことである。
樹脂層31の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、十分な耐衝撃性が得られる。
樹脂層31の厚さが上記の上限値以下であれば、防水シート10が柔軟性を有するため、防水シート10を敷設し易くなり、防水シート10をロール状に巻き取った状態で保管したり、搬送したりすることができる。
【0020】
樹脂層31は、ポリウレア樹脂を含む。樹脂層31は、ポリウレア樹脂のみから構成されていてもよく、ポリウレア樹脂以外に顔料等を含んでいてもよい。
【0021】
ポリウレア樹脂としては、特に限定されないが、例えば、Rhino Linings社製のエクストリームやNOKUTEのポリウレアシリーズ等が挙げられる。
【0022】
本実施形態の防水シート10によれば、基材シート20と、基材シート20の一方の面20a側に形成されたポリウレア樹脂を含む樹脂層31と、を有し、基材シート20は、織布または不織布からなる芯材21と、芯材21に含浸されたポリ塩化ビニル樹脂22とを含み、樹脂層31の厚さが1mm以上であるため、砕石を介して衝撃が加えられても破損することを抑制できる。また、本実施形態の防水シート10は、ポリウレア樹脂を含む樹脂層31を有するため、一般的にコンクリート建造物の防水に用いられているポリウレタン樹脂の場合よりも耐衝撃性に優れる。なお、ここで言う耐衝撃性とは、コンクリート面上に敷設した防水シートの上に砕石を配置して、その砕石を介して防水シートに衝撃を加えた際に、防水シートが破損することがないことを指す。
【0023】
「防水シートの製造方法」
本実施形態の防水シート10の製造方法を説明する。
本実施形態の防水シート10の製造方法は、基材シート20の一方の面20a側に、ポリウレア樹脂を塗工して塗膜を形成する工程と、基材シート20の一方の面20a側に形成された塗膜を熱処理して、基材シート20の一方の面20a側に樹脂層31を形成する工程と、を有する。
以上の工程により、防水シート10が得られる。
【0024】
塗膜を形成する工程において、基材シート20の一方の面20a側に、ポリウレア樹脂を塗工する方法は、特に限定されないが、例えば、ロールコーター、バーコーター、スプレー、カーテンフローコーター、刷毛などを用い、所定の厚さの塗膜を形成することができる方法が挙げられる。
【0025】
樹脂層31を形成する工程において、塗膜を熱処理する温度は、ポリウレア樹脂の種類に応じて、適宜調整されるが、例えば、150℃以上とする。
【0026】
(第2の実施形態)
「防水シート」
図2は、本発明の第2の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
なお、図2において、図1に示した第1の実施形態の防水シートと同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態の防水シート100は、基材シート20と、基材シート20の一方の面20a側に形成された樹脂層31(第1の樹脂層)と、基材シート20の他方の面20b側に形成された樹脂層32(第2の樹脂層)と、を有する。すなわち、本実施形態の防水シート100では、基材シート20の両面側に、樹脂層(樹脂層31と樹脂層32)が形成されている。
【0027】
樹脂層32は、樹脂層31と同様の構成である。
【0028】
本実施形態のように、基材シート20の一方の面20a側に樹脂層31が形成され、基材シート20の他方の面20b側に樹脂層32が形成されている場合、樹脂層31の厚さと樹脂層32の厚さの合計は、1mm以上であり、1mm以上2mm以下であることが好ましい。ここで、樹脂層31の厚さとは、芯材21に含浸されている部分を除いて、基材シート20の厚さ方向において、基材シート20の一方の面20aよりも外方にある部分の厚さのことである。また、樹脂層32の厚さとは、芯材21に含浸されている部分を除いて、基材シート20の厚さ方向において、基材シート20の他方の面20bよりも外方にある部分の厚さのことである。
樹脂層31の厚さと樹脂層32の厚さの合計が上記範囲の下限値以上であれば、十分な耐衝撃性が得られる。
樹脂層31の厚さと樹脂層32の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、防水シート100が柔軟性を有するため、防水シート100を敷設し易くなり、防水シート100をロール状に巻き取った状態で保管したり、搬送したりすることができる。
【0029】
本実施形態の防水シート100によれば、基材シート20と、基材シート20の一方の面20a側に形成された樹脂層31(第1の樹脂層)と、基材シート20の他方の面20b側に形成された樹脂層32(第2の樹脂層)と、を有し、樹脂層31の厚さと樹脂層32の厚さの合計が1mm以上であるため、砕石を介して衝撃が加えられても破損することを抑制できる。また、本実施形態の防水シート100は、ポリウレア樹脂を含む樹脂層31を有するため、一般的にコンクリート建造物の防水に用いられているポリウレタン樹脂の場合よりも耐衝撃性に優れる。
【0030】
「防水シートの製造方法」
本実施形態の防水シート100の製造方法を説明する。
本実施形態の防水シート100の製造方法は、基材シート20の一方の面20a側および他方の面20b側に、ポリウレア樹脂を塗工して塗膜を形成する工程と、それぞれの面側に形成された塗膜を熱処理して、基材シート20の一方の面20a側に樹脂層31を形成し、基材シート20の他方の面20b側に樹脂層32を形成する工程と、を有する。
以上の工程により、防水シート100が得られる。
【0031】
塗膜を形成する工程は、第1の実施形態と同様に行う。
【0032】
樹脂層31と樹脂層32を形成する工程は、第1の実施形態と同様に行う。
【0033】
なお、本実施形態の防水シート100の製造方法において、基材シート20の一方の面20a側の樹脂層31と基材シート20の他方の面20b側の樹脂層32とは、同時に形成してもよいし、別々に形成してもよい。別々に形成する場合、例えば、樹脂層31を形成した後に、樹脂層32を形成する。
【0034】
(第3の実施形態)
「防止水シート」
図3は、本発明の第3の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
なお、図3において、図1に示した第1の実施形態の防水シートと同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の防水シート200は、基材シート20と、基材シート20の一方の面20a側に形成された樹脂層31と、基材シート20と樹脂層31の間に形成された中間層50と、を有する。すなわち、本実施形態の防水シート200では、基材シート20の一方の面20a側に、中間層50と樹脂層31とがこの順に形成されている。
【0035】
中間層50は、基材シート20の一方の面20a側に形成されている。この中間層50を介して、基材シート20の一方の面20a側に樹脂層31が形成されている。言い換えれば、中間層50における基材シート20とは反対の面50a側に、樹脂層31が形成されている。
【0036】
中間層50は、ポリ塩化ビニル樹脂からなる。
中間層50を構成するポリ塩化ビニル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ゾル状またはペースト状のものを用いることができ、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系などの各種可塑剤を適宜配合してもよい。ポリ塩化ビニル樹脂の例として、東ソー社製のペースト塩ビやカネカ社製のペーストPVC等が挙げられる。
【0037】
中間層50の厚さは、0.1mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上1.2mm以下であることがより好ましい。
中間層50の厚さが上記範囲の下限値以上であれば、防水シート200の耐衝撃性が向上する。一方、中間層50の厚さが上記範囲の上限値以下であれば、防水シート200の柔軟性が向上するため、防水シート200を敷設し易くなり、防水シート200をロール状に巻き取った状態で保管したり、搬送したりすることもできる。
【0038】
本実施形態の防水シート200によれば、基材シート20と樹脂層31の間に中間層50が形成されているため、第1の実施形態の防水シート10よりも耐衝撃性が向上する。
【0039】
「防水シートの製造方法」
本実施形態の防水シート200の製造方法を説明する。
本実施形態の防水シート300の製造方法は、基材シート20の代わりに、中間層50が形成された基材シート20を用いること以外は、第1の実施形態と同様である。
【0040】
(第4の実施形態)
「防水シート」
図4は、本発明の第4の実施形態の防水シートの概略構成を示す断面図である。
なお、図4において、図1に示した第1の実施形態の防水シート、図2に示した第2の実施形態の防水シートおよび図3に示した第3の実施形態の防水シートと同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の防水シート300は、基材シート20と、基材シート20の一方の面20a側に形成された樹脂層31(第1の樹脂層)と、基材シート20の他方の面20b側に形成された樹脂層32(第2の樹脂層)と、基材シート20と樹脂層31の間に形成された中間層50と、を有する。すなわち、本実施形態の防水シート300では、基材シート20の両面側に、樹脂層(樹脂層31と樹脂層32)が形成されている。
【0041】
本実施形態の防水シート300によれば、基材シート20と樹脂層31の間に中間層50が形成されているため、第2の実施形態の防水シート100よりも耐衝撃性が向上する。
【0042】
「防水シートの製造方法」
本実施形態の防水シート300の製造方法を説明する。
本実施形態の防水シート300の製造方法は、基材シート20の代わりに、中間層50が形成された基材シート20を用いること以外は、第2の実施形態と同様である。
【実施例
【0043】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
芯材として厚さ0.1mm、目付量100g/mのガラスクロス(商品名:H100、ユニチカ社製)に、ポリ塩化ビニル樹脂(商品名:ペーストPVC、カネカ社製)を含浸被覆させて、ガラスクロスとポリ塩化ビニル樹脂からなる、厚さ0.3mmの基材シートを作製した。
この基材シートの一方の面側に、フローコートにより、ポリ塩化ビニル樹脂(商品名:ZEST、新第一塩ビ社製)を積層して、厚さ0.9mmのポリ塩化ビニル樹脂層(PVC樹脂層)を形成した。
次に、基材シートの一方の面側に形成されたPVC樹脂層上と基材シートの他方の面側に、吹付けにより、ポリウレア樹脂(商品名:エクストリーム、ライノライニングス社製)を塗工して塗膜を形成した。
次に、基材シートの一方の面側と他方の面側に形成された塗膜を、基材シートの両面側に、それぞれ厚さ0.5mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成した。
その後、樹脂層、基材シート、PVC樹脂層および樹脂層がこの順に積層された積層体を300mm×300mmの大きさに裁断して、実施例1の防水シートを得た。
【0045】
「評価」
(1)耐衝撃性の評価
以下に示す方法により、実施例1の防水シートの耐衝撃性を評価した。
コンクリート下地の上に、防水シートを敷設した。
次に、防水シートの上に砕石を載せた。
次に、防水シート上の砕石に対して、コンクリート下地の表面に対して垂直方向に、プレートダンパーで20秒間衝撃を加えた。
その後、防水シートの破損の有無を、目視により確認した。
防水シートに貫通孔ができなかった上に、破損が全くなかった場合を「○」、防水シートに貫通孔ができなかったものの、多少の破損があった場合を「△」、防水シートに貫通孔ができた場合を「×」と評価した。
結果を表1に示す。
【0046】
(2)追従性の評価
以下に示す方法により、実施例1の防水シートの追従性を評価した。
図5に示すように、隣り合う2つの壁401と壁402が90°に入り合って形成された入隅403に防水シート500を配置した。詳細には、壁401の壁面401aと壁402の壁面402aのそれぞれに、両端が接するように、防水シート500を配置した。
次に、図6に示すように、防水シート500の中央部に対して、入隅403の中央(壁401と壁402が交わる点)404の方向(図6に示す矢印αの方向)に、押圧ゲージ(精密メカニカルフォースゲージ、型式:FPSシリーズ、イマダ社製)により、一定の圧力(50N)を加えた。これにより、図7に示すように、防水シート500を入隅403の形状に追従するように変形させた。このとき、図8に示すように、防水シート500における最も入隅403側に膨出している点500aと入隅403の中央404との距離dを、金尺により計測した。追従性の評価は、2回行った。
距離dが50mm以下の場合を「○」、距離dが50mm超75mm以下の場合を「△」、距離dが75mm超の場合を「×」と評価した。
なお、この防水シートの追従性の評価は、防水シートの柔軟性を評価するために行った。この評価による追従性に優れる防水シートは、柔軟性に優れると言える。
結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
基材シートの両面側に、それぞれ厚さ1mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の防水シートを得た。
実施例1と同様に、実施例2の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例1]
基材シートの一方の面に形成されたPVC樹脂層上のみに、厚さ0.5mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の防水シートを得た。
実施例1と同様に、比較例1の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例3]
基材シートの一方の面に形成されたPVC樹脂層上のみに、厚さ1mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の防水シートを得た。
実施例1と同様に、実施例3の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例4]
基材シートの一方の面に形成されたPVC樹脂層上のみに、厚さ2mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の防水シートを得た。
実施例1と同様に、実施例4の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
参考例1
基材シートの一方の面に形成されたPVC樹脂層上のみに、厚さ3mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、参考例1の防水シートを得た。
実施例1と同様に、参考例1の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0052】
参考例2
基材シートの一方の面に形成されたPVC樹脂層上のみに、厚さ4mmのポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、参考例2の防水シートを得た。
実施例1と同様に、参考例2の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
[比較例2]
基材シートとして、ポリ塩化ビニル樹脂が含浸されていないガラスクロスを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2の防水シートを得た。
実施例1と同様に、比較例2の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
[実施例7]
芯材としてガラスクロスの代わりに、厚さ0.1mm、目付量40g/mのガラス不織布(商品名:グラベスト、オリベスト社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例7の防水シートを得た。
実施例1と同様に、実施例7の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
[比較例3]
実施例1と同様にして、厚さ0.3mmの基材シートの一方の面に、厚さ0.9mmのPVC樹脂層を形成した。
次に、基材シートの一方の面に形成されたPVC樹脂層上に、目開き20mm、線径0.3mmのステンレスメッシュを、150℃~180℃で熱プレスすることにより積層して、比較例3の防水シートを得た。
実施例1と同様に、比較例3の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
[比較例4]
目開き20mm、線径0.6mmのステンレスメッシュを用いたこと以外は、比較例3と同様にして、比較例4の防水シートを得た。
実施例1と同様に、比較例4の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表2に示す。
【0057】
[比較例5]
目開き20mm、線径0.8mmのステンレスメッシュを用いたこと以外は、比較例3と同様にして、比較例5の防水シートを得た。
実施例1と同様に、比較例5の防水シートの耐衝撃性および追従性を評価した。結果を表2に示す。
【0058】
[比較例6]
防水シートの代わりに、厚さ1mmの防刃繊維からなる布(商品名:P-TEX、杉本織物社製)を用い、実施例1と同様に、防刃繊維からなる布の耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。
【0059】
[比較例7]
防水シートの代わりに、厚さ1.5mmの防刃繊維からなる布(商品名:P-TEX、杉本織物社製)を用い、実施例1と同様に、防刃繊維からなる布の耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。
【0060】
[比較例8]
防水シートの代わりに、厚さ2.3mmの防刃繊維からなる布(商品名:P-TEX、杉本織物社製)を用い、実施例1と同様に、防刃繊維からなる布の耐衝撃性を評価した。結果を表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
表1の結果から、実施例1、実施例2のように、基材シートの両面側にそれぞれ、ポリウレア樹脂からなる、厚さ0.5mmまたは厚さ1mmの樹脂層を形成した場合、防水シートは耐衝撃性および追従性に優れることが分かった。
表1の結果から、比較例1のように、基材シートの一方の面側のみにポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成し、その樹脂層の厚さを0.5mmとした場合、防水シートは耐衝撃性および追従性に劣ることが分かった。
表1の結果から、実施例3、実施例4のように、基材シートの一方の面側のみにポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成し、その樹脂層の厚さを1mmまたは2mmとした場合、防水シートは耐衝撃性および追従性に優れることが分かった。
表1の結果から、実施例5、実施例6のように、基材シートの一方の面側のみにポリウレア樹脂からなる樹脂層を形成し、その樹脂層の厚さを3mmまたは4mmとした場合、防水シートは耐衝撃性に優れるものの、追従性に劣ることが分かった。
表1の結果から、比較例2のように、基材シートとして、ポリ塩化ビニル樹脂が含浸されていないガラスクロスを用いた場合、基材シートの両面側にそれぞれ、ポリウレア樹脂からなる、厚さ0.5mmの樹脂層を形成しても、防水シートは耐衝撃性に劣ることが分かった。
表1の結果から、実施例7のように、芯材としてガラス不織布を用いても、基材シートの両面側にそれぞれ、ポリウレア樹脂からなる、厚さ0.5mmの樹脂層を形成した場合、防水シートは耐衝撃性および追従性に優れることが分かった。
【0064】
表2の結果から、比較例3~比較例5のように、基材シートにステンレスメッシュを積層した積層体は、追従性に優れるものの、耐衝撃性に劣ることが分かった。
表2の結果から、比較例6~比較例8のように、防刃繊維からなる布は、耐衝撃性に劣ることが分かった。
【符号の説明】
【0065】
10,100,200,300 防水シート
20 基材シート
21 芯材
22 ポリ塩化ビニル樹脂
31 樹脂層(第1の樹脂層)
32 樹脂層(第2の樹脂層)
50 中間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8