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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ロータリ圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
F04C18/356 W
F04C18/356 H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019080295
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020176569
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】島谷 紘史
(72)【発明者】
【氏名】江崎 郁男
(72)【発明者】
【氏名】小川 真
(72)【発明者】
【氏名】宇野 将成
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓朗
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-004790(JP,U)
【文献】実開昭57-036385(JP,U)
【文献】特開昭62-139994(JP,A)
【文献】特開2009-215893(JP,A)
【文献】実開平01-173482(JP,U)
【文献】特開昭62-203988(JP,A)
【文献】特開2005-076616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00 -29/12
F04C 18/356-18/46
F04C 19/00 -21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
該ハウジング内で鉛直方向に延びる回転軸と、
該回転軸が挿通された圧縮室を内側に有するシリンダと、
前記回転軸を回転可能に支持し、前記シリンダの上下に固定される上部軸受、及び下部軸受と、を備え、
前記シリンダは、一部が樹脂材料で形成され、
前記上部軸受は、前記圧縮室を上方から覆い、
前記下部軸受は、前記圧縮室を下方から覆い、
前記上部軸受及び前記下部軸受のうち少なくとも一方の少なくとも一部が樹脂材料で形成され、
前記上部軸受及び前記下部軸受における前記回転軸に対向する内面は金属材料で形成され、
前記上部軸受及び前記下部軸受における前記圧縮室に対向する内面の全ては金属材料で形成されているロータリ圧縮機。
【請求項2】
前記シリンダにおける前記樹脂材料で形成された部分と、前記上部軸受及び前記下部軸受のうちの少なくとも一方における前記樹脂材料で形成された部分と、が接する位置にシールを備える、請求項に記載のロータリ圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダの前記圧縮室を形成する内面は金属材料で形成されている請求項1又は2に記載のロータリ圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密閉型の電動ロータリ圧縮機として、例えば特許文献1に示されるような、ハウジングと、ハウジング内で鉛直方向に延びるとともに電動モータによって回転する回転軸と、回転軸に支持されたシリンダを有するロータリ圧縮部と、回転軸に回転可能に支持され、シリンダの上下に固定される上部軸受、及び下部軸受と、を備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-17574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のロータリ圧縮機では、以下のような問題があった。
すなわち、従来では、ロータリ圧縮部がガス圧縮時の反力に耐え得る強度が必要なため、一般的に金属材料が用いられている。一方で、ロータリ圧縮機としては、小型化や軽量化による低騒音化が求められている。しかしながら、金属材料により形成されるロータリ圧縮部の軽量化は困難であることから、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ロータリ圧縮機全体の軽量化を図ることができるロータリ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るロータリ圧縮機は、ハウジングと、該ハウジング内で鉛直方向に延びる回転軸と、該回転軸が挿通された圧縮室を内側に有するシリンダと、前記回転軸を回転可能に支持し、前記シリンダの上下に固定される上部軸受、及び下部軸受と、を備え、前記シリンダは、一部が樹脂材料で形成され、前記上部軸受は、前記圧縮室を上方から覆い、前記下部軸受は、前記圧縮室を下方から覆い、前記上部軸受及び前記下部軸受のうち少なくとも一方の少なくとも一部が樹脂材料で形成され、前記上部軸受及び前記下部軸受における前記回転軸に対向する内面は金属材料で形成され、前記上部軸受及び前記下部軸受における前記圧縮室に対向する内面の全ては金属材料で形成されている
【0007】
上記態様に係るロータリ圧縮機によれば、ロータリ圧縮機の中でも大きな重量となるシ
リンダの少なくとも一部を樹脂材料で形成したことにより軽量化を図ることができ、ロー
タリ圧縮機全体を軽量化できる。
また、このような構成によれば、シリンダに固定される上部軸受及び前記下部軸受のうち少なくとも一方の少なくとも一部が樹脂材料で形成された一部樹脂製となって軽量化されているので、さらにロータリ圧縮機全体の軽量化を図ることができる。
また、このような構成によれば、上部軸受及び下部軸受における回転軸に対向する内面である摺動面の回転軸に対する耐摩耗性を向上できる。また、上部軸受及び下部軸受における圧縮室に対向する内面の圧縮ガスや圧縮室内部の各部品に対する耐摩耗性も向上できる。
【0012】
また、上記のロータリ圧縮機は、前記シリンダにおける前記樹脂材料で形成された部分と、前記上部軸受及び前記下部軸受のうちの少なくとも一方における前記樹脂材料で形成された部分と、が接する位置にシールを備えてもよい。
【0013】
このような構成によれば、金属材料に比べ寸法精度が劣る樹脂材料同士での接触部分に金属材料同士での接触と同等の密閉性を付与できる。
【0014】
また、上記のロータリ圧縮機は、前記シリンダの前記圧縮室を形成する内面は金属材料で形成されていてもよい。
【0015】
このような構成によれば、シリンダ内面の圧縮ガスや圧縮室内部の各部品に対する耐摩耗性も向上できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のロータリ圧縮機によれば、ロータリ圧縮機全体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態によるロータリ圧縮機の構成を示した縦断面図である。
図2】本発明の第一実施形態によるロータリ圧縮機のシリンダ、上部軸受及び下部軸受の樹脂材料で形成されている部分を示した縦断面図である。
図3図1に示すA-A線断面図であって、シリンダにおける圧縮機の中心軸線に直交する面の水平断面図である。
図4】本発明の第二実施形態によるロータリ圧縮機のシリンダにおける圧縮機の中心軸線に直交する面の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第一実施形態〕
以下、本発明の実施形態によるロータリ圧縮機について、図面に基づいて説明する。かかる実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるロータリ圧縮機(以下、単に圧縮機1という)は、例えば空気調和機や冷凍装置などに用いられる密閉型の電動ロータリ圧縮機を一例としており、圧縮機本体10と、吸入管11と、アキュムレータ12と、を備えている。圧縮機1で圧縮される冷媒としては、R32、R454C等のHFO(ハイドロフルオロオレフィン)冷媒や、CO、プロパン、ヘリウム等の自然冷媒が用いられる。
【0020】
圧縮機本体10は、ハウジング2と、回転軸3と、上部軸受4Aと、下部軸受4Bと、電動モータ5と、ロータリ圧縮部6と、を有する。ロータリ圧縮部6には、ハウジング2内においてディスク状のシリンダ60が設けられている。
ここで、ハウジング2の中心軸と回転軸3とは鉛直方向(上下方向)に延在する共通軸上に配置され、この共通軸を以下、回転軸線Oという。回転軸3は、延在方向が上下方向となるように配置され、ハウジング2内において回転軸線O回りに回転可能に収容されている。
【0021】
ハウジング2は、密閉型で上下方向に延在している。ハウジング2は、円筒状をなす本体部21と、本体部21の上下の開口を閉塞する上部蓋部22及び下部蓋部23と、を有する。ハウジング2は、側壁下部におけるシリンダ60の外周面に対向する位置に、開口部24が形成されている。シリンダ60には、開口部24に対向した位置において、シリンダ内の所定位置まで連通する吸入ポート25が形成されている。
【0022】
ハウジング2の底部には、冷凍機油が溜められることで、油溜まりが形成されている。油の初期封入時における油溜まりの液面は、ロータリ圧縮部6の上方に位置している。これにより、ロータリ圧縮部6は、油溜まりの中で駆動される。冷凍機油として用いられる合成炭化水素系油(ベンゼン油)やエーテル/エステル系油,および鉱油が利用できる。
【0023】
上部蓋部22には、厚さ方向に貫通し、下部がハウジング2内に配置されており、上部がハウジング2の外に配置された吐出管13が設けられている。吐出管13は、油を含み、かつ圧縮された冷媒をハウジング2の外部へ吐出する。
【0024】
ハウジング2の外部には、圧縮機本体10に供給するに先立って冷媒を気液分離するためのアキュムレータ12が設けられている。アキュムレータ12は、ブラケット14を介してハウジング2の外周面に固定されている。アキュムレータ12には、内部の冷媒を圧縮機本体10に吸入させるための上述した吸入管11が設けられている。アキュムレータ12に接続されている吸入管11は、ハウジング2の開口部24を通して、吸入ポート25に接続されている。アキュムレータ12は、吸入管11を通じて冷媒の気相をロータリ圧縮部6へ供給する。
【0025】
電動モータ5は、ハウジング2内の上下方向の中央部に収容されている。電動モータ5は、ロータ51と、ステータ52と、を有する。ロータ51は、回転軸3の外周面に固定され、ロータリ圧縮部6の上方に配置されている。ステータ52は、ロータ51の外周面を囲むように配置され、ハウジング2の本体部21の内面21aに固定されている。
このように構成とされた電動モータ5には、電源(図示せず)が接続されている。電動モータ5は、この電源からの電力によって回転軸3を回転させるように構成されている。
【0026】
上部軸受4Aと下部軸受4Bは、上下からロータリ圧縮部6を挟むように配置されている。上部軸受4Aと下部軸受4Bとは、それぞれ一部が樹脂材料で形成され、ロータリ圧縮部6のシリンダ60とは別体として設けられていて、シリンダ60にボルト61で固定されている。
なお、回転軸3は、上部軸受4Aと下部軸受4Bによって回転軸線O回りに回転自在に支持されている。
上部軸受4A及び下部軸受4Bにおいて樹脂材料で形成されている箇所は、図2において2種類の太さの線でハッチングした部分であり、回転軸3に対向しておらず、かつ圧縮室60Aに対向していない部分である。上部軸受4A及び下部軸受4Bにおいて樹脂材料で形成されていない部分は、金属材料で形成されている。
【0027】
より具体的には、上部軸受4Aは、回転軸線Oを中心とした筒状をなす筒状部4Aaと、筒状部4Aaの下部に一体に設けられて筒状部4Aaから径方向外側に張り出すフランジ部4Abとを有している。
筒状部4Aaの内面には、回転軸線Oを中心とした筒状をなす金属製のリング4Hが嵌め込まれている。
フランジ部4Abは、圧縮室60Aに対向して圧縮室60Aを上方から覆っている。フランジ部4Abには、径方向内側の位置で上方に、かつ回転軸線Oを中心として環状に凹む内側凹部4Acが形成されている。この内側凹部4Acに回転軸線Oを中心とした環状をなす金属製のリング4Cが嵌め込まれている。筒状部4Aaに設けられたリング4Hの内面とフランジ部4Abに設けられたリング4Cの内面とは面一に設けられて回転軸3に対向している。また、フランジ部4Abに設けられたリング4Cにおける下面は、圧縮室60Aを上方から覆うことで圧縮室60Aを形成する内面の一部となっている。
フランジ部4Abにはさらに、内側凹部に対して径方向の外側の位置で上方に凹み、かつ回転軸線Oを中心として環状に凹む外側凹部4Adが形成されている。外側凹部4Adには後述するシール4Eが設けられている。
本実施形態では、まず上部軸受4Aの樹脂材料部分を例えば押出し成形、射出成型、又は3Dプリンタによるプリント成形等を用いて形成する。その後、筒状部4Aa及びフランジ部4Abの内面に金属製のリング4C、4Hを嵌め込むことで上部軸受4Aを形成している。
【0028】
同様に、下部軸受4Bは、回転軸線Oを中心とした筒状をなす筒状部4Baと、筒状部4Baの上部に一体に設けられて筒状部4Baから径方向外側に張り出すフランジ部4Bbとを有している。
筒状部4Baの内面には、回転軸線Oを中心とした筒状をなす金属製のリング4Jが嵌め込まれている。
フランジ部4Bbは、圧縮室60Aに対向して圧縮室60Aを下方から覆っている。フランジ部4Bbには、径方向内側の位置で下方に、かつ回転軸線Oを中心として環状に凹む内側凹部4Bcが形成されている。この内側凹部4Bcに回転軸線Oを中心とした環状をなす金属製のリング4Dが嵌め込まれている。筒状部4Baに設けられたリング4Jの内面とフランジ部4Bbに設けられたリング4Dの内面とは面一に設けられて回転軸3に対向している。また、フランジ部4Bbに設けられたリング4Dにおける上面は、圧縮室60Aを下方から覆うことで圧縮室60Aを形成する内面の一部となっている。
フランジ部4Bbにはさらに、内側凹部に対して径方向の外側の位置で下方に凹み、かつ回転軸線Oを中心として環状に凹む外側凹部4Bdが形成されている。外側凹部4Bdには後述するシール4Fが設けられている。
本実施形態では、まず上部軸受4Aの樹脂材料部分を例えば押出し成形、射出成型、又は3Dプリンタによるプリント成形等を用いて形成する。その後、筒状部4Aa及びフランジ部4Abの内面に金属製のリング4D、4Jを嵌め込むことで上部軸受4Aを形成している。
【0029】
ロータリ圧縮部6は、電動モータ5の下方でハウジング2内の底部に配置されている。 ロータリ圧縮部6は、シリンダ60と、偏心軸部62と、ピストンロータ63と、を有している。
【0030】
シリンダ60は、圧縮室60Aと、吸入孔60Bと、吐出孔(図示せず)と、を有する。圧縮室60Aは、シリンダ60の内部に形成されている。圧縮室60Aは、ピストンロータ63を収容している。なお、シリンダ60は、一部が樹脂材料で形成されている。
シリンダ60において樹脂材料で形成されている部分は、図2において2種類の太さの線でハッチングした部分であり、圧縮室60Aと対向していない部分である。
本実施形態では、まずシリンダ60の樹脂材料部分を例えば押出し成形、射出成型、又は3Dプリンタによるプリント成形等を用いて形成する。その後、樹脂材料部分の内側に金属製のリング4Gを嵌め込むことでシリンダ60を形成している。これによりシリンダ60における圧縮室60Aを形成する径方向内側を向く内面は、金属材料で形成されており、それ以外の部分は樹脂材料で形成されている。
また、シリンダ60の樹脂材料部分の上面と上部軸受4Aの樹脂材料部分とが対向する位置の上部軸受4A側にシール4Eが設けられており、シリンダ60の樹脂材料部分の下面と下部軸受4Bの樹脂材料部分とが対向する位置の下部軸受4B側にシール4Fが設けられている。
【0031】
シリンダ60、上部軸受4A及び下部軸受4Bに適用可能な樹脂材料としては、軽量、耐熱性、高強度な材料であって、例えば、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)の樹脂が挙げられる。
【0032】
一部樹脂製のシリンダ60は、ハウジング2の本体部21の内面21aに対して固定されている。図3の符号Pは、ハウジング2とシリンダ60との固定部を示している。ハウジング2へのシリンダ60の固定方法としては、焼き嵌め、冷やし嵌め、又は樹脂溶融を採用することができる。
【0033】
偏心軸部62は、回転軸3の下端部に設けられ、ピストンロータ63の内側において回転軸3の中心軸から直交する方向にオフセットした状態で設けられている。
ピストンロータ63は、シリンダ60の内径よりも小さい外径の円筒状をなしてシリンダ60の内側に配置され、偏心軸部62に挿入され固定されている。ピストンロータ63は、回転軸3の回転に伴って回転軸線Oに対して偏心して回転する。
【0034】
吸入孔60Bは、冷媒をシリンダ60の内部に流入可能とするための孔である。
吐出孔(図示せず)には、ハウジング2の中間圧とされた内部空間にロータリ圧縮部6で圧縮された冷媒が吐出される。
【0035】
シリンダ60には、図3に示すように、圧縮室60Aを、2つに区切るブレード64が設けられている。シリンダ60には、径方向に延在して形成されたブレード溝65が形成されている。ブレード64は、ブレード溝65の内面65aに摺動可能に案内されて、ピストンロータ63に対して接近離間する方向に進退自在に保持されている。そして、ブレード64は、径方向の外側の基端部64bが、不図示の圧縮バネによって弾性的に押圧されており、先端部64aがピストンロータ63の外周面63aに常に押し付けられた状態となっている。
【0036】
ブレード溝65には、ブレード64との摺動部分である内面65aには、一部樹脂製のシリンダ60における金属材料層66が形成されている。
【0037】
偏心軸部62は、ピストンロータ63の内径よりもわずかに小さな外径を有している。これにより、回転軸3が回転すると、偏心軸部62が回転軸3回りに旋回し、ピストンロータ63がシリンダ60内で偏心転動する。このとき、ブレード64は、不図示の圧縮バネにより押圧されているため、先端部64aがピストンロータ63の動きに追従して進退し、ピストンロータ63に常に押し付けられる。
【0038】
そして、このような圧縮機1においては、アキュムレータ12内に冷媒を取り込み、その冷媒をアキュムレータ12内で気液分離して、その気相を吸入管11からシリンダ60の吸入ポート25を介してシリンダ60の内部空間である圧縮室60Aに供給される。
そして、ピストンロータ63の偏心転動により、圧縮室60Aの容積が徐々に減少して冷媒が圧縮される。シリンダ60の所定の位置には、冷媒を吐出する吐出穴(図示省略)が形成されており、この吐出穴にはリード弁(図示省略)が備えられている。これにより、圧縮された冷媒の圧力が高まると、リード弁を押し開き、冷媒をシリンダ60の外部に吐出する。吐出された冷媒は、ハウジング2の上部に設けられた吐出管13から外部の図示しない配管に排出されるようになっている。
【0039】
次に、上述したロータリ圧縮機の作用効果について、図面に基づいて具体的に説明する。
本実施形態による圧縮機1では、図1図2及び図3に示すように、ロータリ圧縮機1の中でも大きな重量となるシリンダ60、上部軸受4A及び下部軸受4Bを一部樹脂材料で形成したことにより軽量化を図ることができ、ロータリ圧縮機1全体を軽量化できる。
【0040】
上述した本実施形態によるロータリ圧縮機1では、圧縮機1全体の軽量化を図ることができる。
【0041】
また、上部軸受4A及び下部軸受4Bの回転軸3に対向している部分と圧縮室60Aに対向している部分とを金属材料で形成したことで、上部軸受4A及び下部軸受4Bにおける圧縮室60Aに対向する内面の圧縮ガスや圧縮室60A内部の各部品に対する耐摩耗性を向上することができる。
さらに、シリンダ60の圧縮室60Aに対向する部分を金属材料で形成したことで、シリンダ内面の圧縮ガスや圧縮室60A内部の各部品に対する耐摩耗性も向上できる。
【0042】
また、シリンダ60の樹脂材料部分と上部軸受4A又は下部軸受4Bの樹脂材料部分とが対向する位置の上部軸受4A又は下部軸受4B側にシール4E又はシール4Fを設けたことで、樹脂材料同士での接触部分に金属材料同士での接触と同等の密閉性を付与できる。
【0043】
さらにまた、ハウジング2、回転軸3、上部軸受4A、下部軸受4B、電動モータ5、ロータリ圧縮部6(シリンダ60、偏心軸部62、ピストンロータ63)、アキュムレータ12の形状、大きさ等の構成は、適宜な構成に設定することが可能である。
【0044】
〔第二実施形態〕
図4に、本発明の第二実施形態によるロータリ圧縮機1A(以下、単に圧縮機1Aという)のシリンダ160における圧縮機の中心軸線に直交する面の水平断面図を示す。圧縮機1Aは、第一実施形態の構成に加え、シリンダ160において、回転軸3方向の中心付近であり、外周面と内周面との間の部分に、回転軸3を中心として環状にブレード溝65を避けて空洞67が設けられ、空洞67に樹脂材料である充填材68が充填されている。シリンダ160は、充填材68以外は金属材料で形成されている。充填材68の形成は、充填口69より樹脂材料が注入されることにより行われる。
【0045】
圧縮機1Aは、空洞67内部のみを樹脂材料である充填材68で形成することにより、シリンダ160を、強度を保ちつつ軽量化することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、空洞67を設けるために、シリンダ160の上部軸受4A又は下部軸受け4Bと対向する面から回転軸3方向に離れた箇所を切削しているが、そうではなく、上部軸受4A又は下部軸受け4Bと対向する面に、回転軸3を中心として環状にブレード溝65を避けて溝を形成するように切削してもよい。その場合は、溝に嵌合する形状に成形した樹脂材料を溝に嵌め込んでシリンダ160を形成する。
【0047】
シリンダ160の上部軸受4A又は下部軸受け4Bと対向する面に溝を形成することで、加工が容易となる。
【0048】
以上、本発明によるロータリ圧縮機の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0049】
例えば、本実施形態では、上部軸受4Aと下部軸受4Bとが一部樹脂材料により形成されているが、全体が樹脂材料で形成されている構成であってもよい。
この場合には、全体が樹脂材料で形成された上部軸受及び下部軸受両方の軽量化を図ることができるので、さらにロータリ圧縮機全体を軽量化できる。
【0050】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 圧縮機(ロータリ圧縮機)
2 ハウジング
3 回転軸
4A 上部軸受
4B 下部軸受
5 電動モータ
6 ロータリ圧縮部
10 圧縮機本体
12 アキュムレータ
21 本体部
21a 内面
60 シリンダ
60A 圧縮室
62 偏心軸部
63 ピストンロータ
64 ブレード
65 ブレード溝
65a 内面
66 金属材料層
O 回転軸線
P 固定部
図1
図2
図3
図4