(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】住宅の浮上防止装置及びこの浮上防止装置による住宅の浮上防止構造並びに該浮上防止装置を備えた住宅
(51)【国際特許分類】
E02D 31/12 20060101AFI20230301BHJP
E02D 5/56 20060101ALI20230301BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20230301BHJP
E02D 27/12 20060101ALI20230301BHJP
【FI】
E02D31/12
E02D5/56
E02D27/00 C
E02D27/12 Z
(21)【出願番号】P 2019082897
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502025473
【氏名又は名称】エイチ・アール・ディー・シンガポール プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094156
【氏名又は名称】稲葉 民安
(72)【発明者】
【氏名】萩原 浩
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117478(JP,A)
【文献】特開2014-077307(JP,A)
【文献】特開2006-328816(JP,A)
【文献】特開平07-127079(JP,A)
【文献】特開2015-042820(JP,A)
【文献】特開平04-001325(JP,A)
【文献】特開2002-070006(JP,A)
【文献】特開2005-351048(JP,A)
【文献】特開平11-117225(JP,A)
【文献】特表2005-527722(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0766450(KR,B1)
【文献】実開平01-090838(JP,U)
【文献】特開2007-284960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0003051(US,A1)
【文献】特開2002-227220(JP,A)
【文献】特開2007-132068(JP,A)
【文献】特開昭58-176319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22-5/80
E02D 27/00-27/52
E02D 29/00-37/00
E02D 17/00-17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設される埋設体と、
上記地盤の上方に形成され
内部には鉄筋が配筋されてなるベタ基礎又は布基礎からなるベース基礎部内に埋設される係合部材と、上記埋設体と上記係合部材とを連結する連結材と、を備え
、
上記係合部材には、水平方向に長さを有してなるとともに、上記ベース基礎部内に配筋される鉄筋の一部が内部に挿通される第1の鉄筋挿通用空間と、上記第1の鉄筋挿通用空間に挿通される鉄筋とは直交する方向に長さを有し上記ベース基礎部内に配筋される他の鉄筋の一部が挿通される第2の鉄筋挿通用空間と、がそれぞれ形成され、
上記連結材の上端にはナットが螺着されるボルト軸を有してなるとともに、
前記係合部材は、方形状に成形された天板部と、この天板部に対向する底板部と、方形状にそれぞれ成形された左側板部及び右側板部とを備えた角パイプ状に成形され、
上記天板部及び底板部のそれぞれには、上記ボルト軸が下側から挿通されるボルト軸挿通穴が形成され、
上記左側板部及び右側板部のそれぞれには、前記第1の鉄筋挿通用空間としての小径穴が形成され、
上記天板部、底板部、左側板部及び右側板部に囲まれた空間は、前記第2の鉄筋挿通用空間とされてなるとともに、
上記係合部材の下側から挿通され上記天板部の上面よりも上方に突出したボルト軸の上端側には、ナットが締結されることを特徴とする住宅の浮上防止装置。
【請求項2】
前記
連結材は、ワイヤであるとともに、該ワイヤの下端には無端状の係止部が形成され、
前記埋設体は、前記地盤内に打設されるアンカー杭であって、該アンカー杭の少なくとも上端側中途部から上端側までは管状に成形された管部が設けられ、この管部には、該アンカー杭の長さ方向とは直交する方向に形成された軸挿通穴を有し、この軸挿通穴は、該アンカー杭の長さ方向に複数並んで形成されてなるものであり、これら複数の軸挿通穴には、上記無端状の係止部が内嵌挿又は固定された係止軸が挿通されてなることを特徴とする請求項1記載の住宅の浮上防止装置。
【請求項3】
前記
アンカー杭の上端側に形成された管部の外周には、該アンカー杭に形成された挿通穴と同じ位置に前記係止軸が挿通される外側軸挿通穴が形成された補強用管体が固定されてなることを特徴とする請求項1
又は2記載の何れかの住宅の浮上防止装置。
【請求項4】
前記
埋設体は、セメントによりブロック状に成形されてなるとともに、
該埋設体内には、上端又は下端側若しくは外周に引抜抵抗部が形成された引抜抵抗部材が配置され、
前記連結材の下端は上記引抜抵抗部材に連結されてなることを特徴とする請求項
1,2又は3記載の何れかの住宅の浮上防止装置。
【請求項5】
前記引抜抵抗部材は、前記埋設体内に鉛直方向に埋設され軸状に成形された軸状抵抗体と、この軸状抵抗体の下端側又は上端側に固定され該軸状抵抗体の長さ方向とは直交する方向に長さ又は幅を有する板状抵抗体と、
を備えてなることを特徴とする請求項
4記載の住宅の浮上防止装置。
【請求項6】
前記
引抜抵抗部材は、前記埋設体内に鉛直方向に埋設され軸状に成形されてなるとともに外周には螺旋状の摩擦抵抗部が形成された軸状抵抗体を有してなることを特徴とする請求項
4記載の住宅の浮上防止装置。
【請求項7】
前記
請求項1ないし6記載の何れかの住宅の浮上防止装置により、住宅用基礎部を含めた住宅の水による浮上が防止されてなることを特徴とする住宅の浮上防止構造。
【請求項8】
前記
請求項1ないし6記載の何れかの住宅の浮上防止装置を備えてなることを特徴とする住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水や津波等の際に住宅が水に浮上することを防止するために採用される住宅の浮上防止装置及びこの浮上防止装置による住宅の浮上防止構造並びに該浮上防止装置を備えた住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台風による大雨や集中豪雨等により洪水が発生したり地震により津波等が発生したりすることにより、住宅に大きな被害が発生する場合が多い。こうした洪水等が発生した場合、住宅全体が地盤から浮上し、場合によっては洪水又は濁流により流されてしまう事態も発生する。
【0003】
そして、従来ではこうした住宅の浮上防止構造としては、特に提案されていない。因みに、洪水等に伴い上昇する地下水圧に対して建物の安定性を保持する建物の浮上り防止工法等は、特許文献1に開示されている。これは「建物の浮き上がり防止工法及び装置」に係るものであり、洪水時等に伴い上昇した地下水位と水圧を効率良く抑制する建物の浮上りを防止することを目的としたものであり、建物の地下構造部分の最下部に容量が十分に大きいピットを設け、このピットから建物下方の地盤中に集水井戸を設け、この集水井戸の上端部に一定の地下水圧に応じて開閉する水圧感応弁を設け、この水圧感応弁を介して一定水圧以上に達した地下水を前記ピット内に流入させるものである(特許文献1参照)。なお、この特許文献1には、従来の技術として、建物下方の地盤中に永久アンカー又は摩擦杭を打込んで建物を地盤に定着させ建物の浮上りを防止することも記載されているが、その具体的構造は、図面(第5図)に記載された構造以外に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された構造は、そもそも地下水圧に対して建物の安定性を保持するために採用された「建物の浮き上がり防止工法及び装置」であって、本発明のように、洪水等の際に住宅が水に浮上することを防止することを目的としたものではない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の住宅が有する課題を解決するために提案されたものであって、洪水等の際に住宅全体が水に浮上する事態を有効に防止するために採用される住宅の浮上防止装置及びこの浮上防止装置による住宅の浮上防止構造並びに該浮上防止装置を備えた住宅を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、住宅の浮上防止装置に係るものであって、地盤に埋設される埋設体と、上記地盤の上方に形成され内部には鉄筋が配筋されてなるベタ基礎又は布基礎からなるベース基礎部内に埋設される係合部材と、上記埋設体と上記係合部材とを連結する連結材と、を備え、上記係合部材には、水平方向に長さを有してなるとともに、上記ベース基礎部内に配筋される鉄筋の一部が内部に挿通される第1の鉄筋挿通用空間と、上記第1の鉄筋挿通用空間に挿通される鉄筋とは直交する方向に長さを有し上記ベース基礎部内に配筋される他の鉄筋の一部が挿通される第2の鉄筋挿通用空間と、がそれぞれ形成され、上記連結材の上端にはナットが螺着されるボルト軸を有してなるとともに、前記係合部材は、方形状に成形された天板部と、この天板部に対向する底板部と、方形状にそれぞれ成形された左側板部及び右側板部とを備えた角パイプ状に成形され、上記天板部及び底板部のそれぞれには、上記ボルト軸が下側から挿通されるボルト軸挿通穴が形成され、上記左側板部及び右側板部のそれぞれには、前記第1の鉄筋挿通用空間としての小径穴が形成され、上記天板部、底板部、左側板部及び右側板部に囲まれた空間は、前記第2の鉄筋挿通用空間とされてなるとともに、上記係合部材の下側から挿通され上記天板部の上面よりも上方に突出したボルト軸の上端側には、ナットが締結されることを特徴とするものである。
【0008】
この第1の発明に係る住宅の浮上防止装置は、上記埋設体と、係合部材と、連結材とを備えてなるものであって、上記埋設体は、ベース基礎部の下方に位置する地盤に埋設されるものである。この埋設体は、アンカー杭(請求項2参照)のように、地盤の表面から杭打ち機等により打設されるものや、セメントなどによりブロック状に形成されたもの(請求項4参照)以外に、少なくとも、洪水により住宅又はベース基礎部に対して浮上する力が作用した場合であっても、地盤との抵抗及び/又は埋設体の自重によりその埋設位置が保持されるものであれば良い。また、上記係合部材は、上記地盤の上方に形成されるベース基礎部内に埋設されるものであり、間に連結材を介して埋設体に連結されてなるものであって、上記ベース基礎部を含めた住宅全体に浮上する力が作用した際、該ベース基礎部に抵抗を付与するものである。なお、このように係合部材は、埋設体と地盤との抵抗により、ベース基礎部との間で抵抗が付与されるものであることから、その面積は比較的広く設定するととともに材質の強度も高いものを使用することが望ましい。
【0009】
したがって、上記第1の発明に係る住宅の浮上防止装置によれば、洪水や津波等の発生により、上記ベース基礎部を含めた住宅全体に浮力が生じた場合であっても、該ベース基礎部は、上記係合部材が、上記連結材を介して上記埋設体に連結されていることから、その位置を確実に保持することができ、ひいては濁流により住宅が流される等の事態を有効に防止することができる。
【0010】
特に、この第1の発明に係る住宅の浮上防止構造においては、上記係合部材には、水平方向に長さを有してなるとともに、上記ベース基礎部内に配筋される鉄筋の一部が内部に挿通される第1の鉄筋挿通用空間と、上記第1の鉄筋挿通用空間に挿通される鉄筋とは直交する方向に長さを有し上記ベース基礎部内に配筋される他の鉄筋の一部が挿通される第2の鉄筋挿通用空間と、がそれぞれ形成され、上記連結材の上端にはナットが螺着されるボルト軸を有してなるとともに、前記係合部材は、方形状に成形された天板部と、この天板部に対向する底板部と、方形状にそれぞれ成形された左側板部及び右側板部とを備えた角パイプ状に成形され、上記左側板部及び右側板部のそれぞれには、前記第1の鉄筋挿通用空間としての小径穴が形成され、上記天板部、底板部、左側板部及び右側板部に囲まれた空間は、前記第2の鉄筋挿通用空間とされている。
【0011】
したがって、上記ベース基礎部を含めた住宅全体に浮力が生じ、更にこうした浮力に伴って上記ベース基礎部に割れが生じ、或いは該係合部材と該ベース基礎部とが剥離した場合であっても、依然として該係合部材はそれぞれ長さ方向が異なる上記二種類の鉄筋に係合することから、上記住宅用基礎部を含めた住宅全体が水により浮上する事態を更に一層防止することができる。
【0012】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記連結材は、ワイヤであるとともに、該ワイヤの下端には無端状の係止部が形成され、前記埋設体は、前記地盤内に打設されるアンカー杭であって、該アンカー杭の少なくとも上端側中途部から上端側までは管状に成形された管部が設けられ、この管部には、該アンカー杭の長さ方向とは直交する方向に形成された軸挿通穴を有し、この軸挿通穴は、該アンカー杭の長さ方向に複数並んで形成されてなるものであり、これら複数の軸挿通穴には、上記無端状の係止部が内嵌挿又は固定された係止軸が挿通されてなることを特徴とするものである。
【0013】
この第2の発明に係る住宅の浮上防止装置では、先ず、上記連結材はワイヤである。そして、このワイヤ下端には無端状の係止部が形成されている。また、この第2の発明では、前記埋設体は、前記地盤内に打設されるアンカー杭である。そして、このアンカー杭の少なくとも上端側中途部から上端側までは管状に成形された管部が設けられ、この管部には、該アンカー杭の長さ方向とは直交する方向に形成された軸挿通穴を有し、この軸挿通穴は、該アンカー杭の長さ方向に複数並んで形成されている。そして、上記それぞれの軸挿通穴には、上記無端状の係止部に内嵌挿される係止軸が配置されている。すなわち、上記ワイヤの下端に形成された無端状の係止部は、上記アンカー杭に形成された管部内に挿入され、この係止部又は係止部材には、上記それぞれの軸挿通穴に挿通された係止軸が挿通されている。
【0014】
したがって、この第2の発明に係る住宅の浮上防止装置によれば、上記アンカー杭の上端に対して連結材であるワイヤの下端に容易且つ安定的に連結させることができるばかりではなく、ベース基礎部も含めた住宅全体に浮力が生じた場合であっても、上記ワイヤとアンカー杭との連結状態が解除されてしまう危険性を有効に防止することができる。また、上記連結材は、ワイヤであることから、地震等の発生により、或いは該地震に伴う地盤の液状化現象により、地盤とベース基礎部との間に多少のずれが生じた場合であっても、こうしたずれを有効に解消・吸収することができる。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第2の発明において、前記アンカー杭の上端側に形成された管部の外周には、該アンカー杭に形成された挿通穴と同じ位置に前記係止軸が挿通される外側軸挿通穴が形成された補強用管体が固定されてなることを特徴とするものである。
【0016】
この第3の発明に係る住宅の浮上防止装置では、前記アンカー杭の上端側に形成された管部の外周には、補強用管体が固定されている。この補強用管体は、上記アンカー杭に形成された挿通穴と同じ位置に前記係止軸が挿通される外側軸挿通穴が形成されたものである。言うまでもなく、上記補強用管体に形成された(例えば、最も上端側に形成された)特定の外側軸挿通穴は、上記アンカー杭に形成された(最も上端側に形成された)特定の軸挿通穴に連通しており、この特定の外側軸挿通穴の下方に形成された他の外側軸挿通穴も、上記アンカー杭に形成された特定の軸挿通穴の下方に形成された他の軸挿通穴に連通している。
【0017】
したがって、上記第3の発明に係る住宅の浮上防止装置によれば、比較的脆弱な上記アンカー杭の上端側に形成された管部の強度を、上記補強用管体により補強することができ、ベース基礎部も含めた住宅全体に浮力が生じた場合であっても、上記アンカー杭の上端側が上記浮力により破壊され、ワイヤとアンカー杭との連結状態が解除されてしまう危険性をより一層有効に防止することができる。
【0018】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1又は第2若しくは第3の発明の何れかにおいて、前記埋設体は、セメントによりブロック状に成形されてなるとともに、該埋設体内には、上端又は下端側若しくは外周に引抜抵抗部が形成された引抜抵抗部材が配置され、前記連結材の下端は上記引抜抵抗部材に連結されてなることを特徴とするものである。
【0019】
この第4の発明に係る住宅の浮上防止装置では、前記埋設体はセメントによりブロック状に成形されたものである。このブロック状に成形された埋設体の荷重や土壌との摩擦抵抗は、少なくとも住宅用基礎を含めた住宅の浮力を上回るものであることが必要である。また、この第4の発明では、この埋設体内には、上端又は下端側若しくは外周に引抜抵抗部が形成された引抜抵抗部材が配置され、前記連結材の下端は上記引抜抵抗部材に連結されている。したがって、ベース基礎部を含めた住宅に浮力が作用した場合、上記引抜抵抗部材により、連結材と埋設体との連結状態が解除される危険性を有効に防止することができる。特に、この第4の発明では、上記構成を有するばかりではなく、上記埋設体は、セメントによりブロック状に成形されてなるものであることから、該埋設体の埋設位置に地下水が存在する等して、地盤が極めて脆弱である場合であっても、該埋設体と地盤との摩擦抵抗と該埋設体の自重とにより、極めて安定した浮上防止機能を発揮することができる。
【0020】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第4の発明において、前記引抜抵抗部材は、前記埋設体内に鉛直方向に埋設され軸状に成形された軸状抵抗体と、この軸状抵抗体の下端側又は上端側に固定され該軸状抵抗体の長さ方向とは直交する方向に長さ又は幅を有する板状抵抗体と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0021】
この第5の発明に係る住宅の浮上防止装置では、前記引抜抵抗部材は、前記埋設体内に鉛直方向に埋設され軸状に成形された軸状抵抗体と、この軸状抵抗体の上端側又は下端側に固定され該軸状抵抗体の長さ方向とは直交する方向に長さ又は幅を有する板状抵抗体と、を備えていることから、該板状抵抗体と埋設体との抵抗を十分確保することができる。
【0022】
なお、上記板状抵抗体は、軸状抵抗体の長さ方向とは直交する方向に長さ又は幅を有するものであり、例えば円盤状又は方形状等に成形された板体であっても良いし、棒状又筒状に成形されたものであっても良い。
【0023】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第4の発明において、前記引抜抵抗部材は、前記埋設体内に鉛直方向に埋設され軸状に成形されてなるとともに外周には螺旋状の摩擦抵抗部が形成された軸状抵抗体を有してなることを特徴とするものである。
【0024】
この第6の発明に係る住宅の浮上防止装置では、前記引抜抵抗部材は、前記埋設体内に鉛直方向に埋設され軸状に成形されてなるとともに外周には螺旋状の摩擦抵抗部が形成された軸状抵抗体を備えている。この軸状抵抗体の外周に形成された摩擦抵抗部は、埋設体内に埋設される部位であることから、上記第5の発明と同じように、板状抵抗体と埋設体との抵抗を十分確保することができる。
【0025】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、住宅の浮上防止構造に係るものであって、前記第1ないし6記載の何れかの発明に係る住宅の浮上防止装置により、ベース基礎部を含めた住宅の水による浮上が防止されてなることを特徴とするものである。
【0026】
また、第8の発明(請求項18記載の発明)は、住宅に係るものであって、前記第1ないし6記載の何れかの発明に係る住宅の浮上防止装置を備えてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る住宅の浮上防止装置又は住宅の浮上防止構若しくは住宅によれば、ベース基礎部を含めた住宅全体が水により浮上する事態を極めて効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る住宅の要部を示す断面図である。
【
図4】スクリュー杭の上端側を拡大して示す断面図である。
【
図6】ワイヤの上端側を拡大して示す正面図である。
【
図7】スクリュー杭の上端側の内部にワイヤの下端側が挿入された状態を拡大して示す断面図である。
【
図8】アタッチメントとスクリュー杭の上端側の構成を示す断面図である。
【
図9】スクリュー杭の施工後に砕石層が形成された後の状態を模式的に示す側面図である。
【
図10】ターミナルボルトのボルト軸部が係合部材に固定された後の状態を模式的に示す正断面図である。
【
図11】係合部材に特定の鉄筋及び他の鉄筋が挿通された状態を模式的に示す正断面図である。
【
図12】係合部材に特定の鉄筋及び他の鉄筋が挿通された状態を模式的に示す平面図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置を備えた住宅の浮上防止構造を模式的に示す断面図である。
【
図14】
図13に示す住宅の浮上防止装置の上端側の構成を拡大して示す断面図である。
【
図15】
図13に示す住宅の浮上防止装置の下端側の構成を拡大して示す断面図である。
【
図16】
図13に示す住宅の浮上防止装置の他の例とこの他の例に係る住宅の浮上防止装置を備えた住宅の浮上防止構造を模式的に示す断面図である。
【
図17】
図16に示す住宅の浮上防止装置の下端側の構成を拡大して示す断面図である。
【
図18】本発明の第3の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置を備えた住宅の浮上防止構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。先ず、本発明の第1の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置を備えた住宅又は住宅の浮上防止構造について、それぞれ図面を参照しながら具体的に詳細に説明する。
【0030】
この第1の実施の形態に係る浮上防止装置を備えた住宅(又はその浮上防止構造)は、
図1に示すように、住宅1が支持されている住宅用基礎部2の下方に位置する地盤(符号は省略する。)内に埋設されたスクリュー杭3と、上記住宅用基礎部2内に埋設された係合部材4と、上記スクリュー杭3と上記係合部材4とを連結するワイヤ5とを備え、上記住宅用基礎部2を含めた住宅1全体が水により浮上することが防止されているものである。換言すれば、上記スクリュー杭3、上記係合部材4及び上記ワイヤ5は、本発明を構成する浮上防止装置である。なお、上記スクリュー杭3は、本発明を構成する埋設体又はアンカー杭であり、上記ワイヤ5は、本発明を構成する連結材である。
【0031】
なお、上記住宅用基礎部2は、コンクリートにより成形されてなるものであり、上記ベース基礎部(ベタ基礎又は布基礎)2aと、このベース基礎部2aの側方に起立して形成されその上面に上記住宅1の土台6が載置・固定される起立部2bが形成されており、これらベース基礎部2a及び上記起立部2b内には、それぞれ鉄筋7が埋設されている。そして、上記ベース基礎部2aに埋設された上記鉄筋7は、それぞれ略水平方向に配筋された複数の鉄筋7a(以下、これらの鉄筋7aを特定の鉄筋7aと言う。)と、上記特定の鉄筋7aと直交する方向に配筋された複数の鉄筋7b(以下、これらの鉄筋7bを他の鉄筋7bと言う。)が、それぞれ図示しない結束材により結束されている。また、上記住宅用基礎部2の下方には砕石層8が所定の高さに亘って形成され、この砕石層8の上面には、図示しない防湿フィルムが配置されている。
【0032】
そして、上記スクリュー杭3(本発明を構成する埋設体又はアンカー杭)は、上記砕石層8となる砕石を施工する前段階において、図示しない杭打ち機等により地表から該スクリュー杭3に回転力を付与しながら所定深さに鉛直方向に打設されるものである。そして、このスクリュー杭3は、
図1に示すように、全体が長尺に成形された棒状体であり、
図2又は
図3に示すように、内部は中空状とされ、その中途部から下端に亘って徐々に縮径されてなるとともに、先端は尖鋭状に成形されている。なお、このスクリュー杭3の上端側中途部から上端は、本発明を構成する管部である。また、このスクリュー杭3の下端から上端側中途部の外周面には、螺旋状凸部3aが形成されている。また、このスクリュー杭3の上端側中途部から上端までの部位(上記管部)は、該スクリュー杭3の長さ方向に第1ないし第3の軸挿通穴3b,3c,3dが正面側及び背面側にそれぞれ形成されている。これら第1ないし第3の軸挿通穴3b,3c,3dは、上記スクリュー杭3の長さ方向に直線状に並んだ状態で穿設されている。そして、上記スクリュー杭3の上端側であって、上記螺旋状凸部3aが形成されていない部位の外周には、円筒状に成形された補強用管体9が溶接されている。この補強用管体9は、炭素鋼を素材とするものであり、
図3に示すように、上記スクリュー杭3の正面側及び背面側にそれぞれ形成された上記第1ないし第3の軸挿通穴3b,3c,3dの形成位置に対応した箇所に、第1ないし第3の外側軸挿通穴9b,9c,9dがそれぞれ穿設されている。
【0033】
そして、上記補強用管体9が固定された上記スクリュー杭3には、
図4に示すように、上記補強用管体9に形成された第1ないし第3の外側軸挿通穴9b,9c,9dから該スクリュー杭3に形成された第1ないし第3の軸挿通穴3b,3c,3dに挿通・固定された第1ないし第3のワイヤ係止軸10,11,12が固定されている。なお、この実施の形態においては、上記ワイヤ係止軸10,11,12は、頭部10a,11a,12aと軸部10b,11b,12bを備えたボルトである。なお、上記ボルトの軸部10b,11b,12bは、上記頭部10a,11a,12aが位置する方向とは反対方向に露出し、これら露出した軸部10b,11b,12bには、それぞれナット13,14,15が螺着されている。
【0034】
また、上記ベース基礎部2aに埋設された上記係合部材4は、
図5に示すように、略角パイプ状に成形されてなるものである。すなわち、この係合部材4は、長方形状に成形された天板部41と、この天板部41と同じ形状に成形され該天板部41に対向してなる底板部42と、長方形状に成形された正面板部43と、この正面板部43と同一の形状に成形され上記正面板部43に対向してなる背面板部44とからなるものである。そして、上記天板部41の中央には上側ボルト挿通穴41aが形成され、上記底板部42の中央であって上記上側ボルト挿通穴41aの真下には、下側ボルト挿通穴42aが形成されている。これら上側ボルト挿通穴41a及び下側ボルト挿通穴42aは、それぞれ円形状に成形されたものであり、後述するワイヤ5の上端に基端が固定されたターミナルボルト17のボルト軸部17aが下側から挿通される部位である。また、上記天板部41には、2つの上側大径穴41b,41cが上記上側ボルト挿通穴41aの左右両側にそれぞれ形成されている。これら2つの上側大径穴41b,41cは、それぞれ後述するように、コンクリートがこの係合部材4内に流入する開口である。また、一方、上記正面板部43の上端側の左右両側には、正面側鉄筋挿通穴43a,43bがそれぞれ形成され、また、該正面板部43の中央には、上記コンクリートが流入する正面側大径穴43cが形成されている。また、上記背面板部44は、上記正面板部43と同一の形状に成形され、該背面板部44の上側の左右両側には、背面側鉄筋挿通穴44a,44bがそれぞれ形成され、また、該背面板部44の中央には、上記コンクリートが流入する背面側大径穴44cが形成されている。なお、上記正面側鉄筋挿通穴43a,43bと背面側鉄筋挿通穴44a,44bは、それぞれ
図1に示す特定の鉄筋7aの一部が挿通される部位であり、本発明を構成する鉄筋挿通用空間又は第1の鉄筋挿通用空間である。また、この係合部材4全体の内側に形成された空間は、
図1に示す他の鉄筋7bが挿通される部位であり、本発明を構成する鉄筋挿通用空間又は第2の鉄筋挿通用空間である。
【0035】
また、上記ワイヤ5は、上記スクリュー杭3と上記係合部材4とを互いに連結するものであり、該ワイヤ5の上端には、
図6に示すように、ターミナルボルト17の下端が固定されている。このターミナルボルト17は、略中央から上端に亘ってボルト軸部17aが形成され、このボルト軸部17aは、後述するナット18及び緩み止めナット19が螺着される部位である。なお、上記ターミナルボルト17は、本発明を構成するボルト軸である。また、このワイヤ5の下端には、
図7に示すように、ループ状(無端状)に湾曲して折り曲げられ該ワイヤ5の端部が固定金具20により固定されることによって形成された無端状の係止部5aが形成されている。なお、この無端状の係止部5aは、後述するように、上記スクリュー杭3の上端側から内部に挿入され、第1のワイヤ係止軸10(軸部10b)に係合される部位である。
【0036】
以下、上述した浮上防止装置を備えた住宅又は浮上防止構造を備えた住宅の施工方法について、その工程順に説明する。先ず、上記住宅1を建設する敷地であって該住宅1の下方に位置する地盤内に、上記ワイヤ5の下端が連結されたスクリュー杭3を所定の単位面積毎に複数本を埋設又は打設する。なお、このワイヤ5とスクリュー杭3とを連結させる作業は、上記スクリュー杭3の上端から、上記ループ状となされた係止部5aを該スクリュー杭3内に挿入し、次いで、上記第1ないし第3のワイヤ係止軸10,11,12(ボルトの軸部10b,11b,12b)を、第1ないし第3の外側軸挿通穴9b,9c,9d及び第1ないし第3の軸挿通穴3b,3c,3dに挿通するとともに、これらを上記係止部5a内に挿通させ、該ボルトの軸部10b,11b,12bを上記補強用管体9の外周面より外側に突出させ、この突出した軸部10b,11b,12bに、それぞれ上記ナット13,14,15を螺着させる。こうした作業により、
図7に示すように、スクリュー杭3とワイヤ5とが連結される。
【0037】
また、上記ワイヤ5が連結されたスクリュー杭3を地盤内に打設する際には、図示しない杭打ち機の先端に
図8に示すアタッチメント51を取り付け、このアタッチメント51を回転させるとともに下方に押圧力を付与することによって行う。このアタッチメント51は、上端側が図示しない杭打ち機に接続される筒状体52と、この筒状体52の下端に上面が溶接された円盤体53と、この円盤体53の下面に上端が溶接された大径筒状体54と、この大径筒状体54の外周に溶接された外側筒状カバー55とを備えている。上記筒状体52は、上記ターミナルボルト17やワイヤ5の外径寸法よりも大径状に成形されたものである。また、上記円盤体53は、中央に上記ターミナルボルト17やワイヤ5の外径寸法よりも大径状に成形された挿通穴53aが形成されている。また、上記大径筒状体54は、上記補強用管体9の外径寸法よりもやや大径状となされた内部空間を有してなるとともに、該大径筒状体54の下端から上端側中途部には、一方の切欠き部54aと他方の切欠き部54bとが、互いに対向した状態でそれぞれ形成されている。これら一方の切欠き部54a及び他方の切欠き部54bの長さ方向は、スクリュー杭3の長さ方向と同じ方向とされている。そして、上記一方の切欠き54aは、上記ボルト11,12の頭部11a,12aが下側から挿入される部位であり、上記他方の切欠き54bは、上記ボルト11,12の軸部11b,12bに螺着されたナット14,15が下側から挿入される部位である。したがって、このアタッチメント51が、
図8に示すように、スクリュー杭3に装着され、この状態で該アタッチメント51が上記杭打ち機の駆動により回転させられるとともに下方に押圧されると、上記スクリュー杭3は、一方の切欠き部54aとボルトの頭部11a,12aとが係合し、また、上記他方の切欠き部54bとナット14,15とが係合して、上記回転力が該スクリュー杭3に伝達され、また、上記円盤体53が下方に移動することに伴って該スクリュー杭3は下方に押圧される。なお、こうして打設されるそれぞれのスクリュー杭3の深さは、埋設されるスクリュー杭3の単位面積当たりの本数や該スクリュー杭3の太さ、或いは地盤の硬さ、更には水に対する住宅用基礎部2を含めた住宅1全体に作用する浮力等様々な要素にもよるが、およそ地盤面から下方に凡そ1mの深度に該スクリュー杭3の上端が位置する程度とすれば良い。
【0038】
そして、上述した要領又は作業により、複数本のスクリュー杭3を地盤内に施工する作業が終了すると、上記アタッチメント51を取り除き、次いで、
図9に示すように、上記地盤上に砕石を施工することにより上記砕石層8を形成し、次いでこの砕石層8上に、上記図示しない防湿フィルムを敷設する。なお、上記砕石層8を形成する際には、先に打設したスクリュー杭3の上端に係止されたワイヤ5の先端側は、該砕石層8上に露出させておくとともに、上記防湿フィルムには、所定個所に図示しない開口を設けておき、この開口から上記ワイヤ5の先端が外部に露出させておく(
図9参照)。そして、上記防湿フィルム敷設作業が終了すると、次いで、上記ターミナルボルト17のボルト軸部17aを上記係合部材4に固定する。この固定作業は、先ず、上記ターミナルボルト17の先端側を、係合部材4を構成する底板部42に形成された下側ボルト挿通穴42aに挿通し、次いで、上記天板部41に形成された上側ボルト挿通穴41aに挿通し、該天板部41の上面よりも上方にボルト軸部17aを突出させ、該ボルト軸部17aに座金21を内嵌挿させるとともに、上記ナット18を螺着させ、このナット18を下方に螺進させる。こうしたナット18の螺進操作により、やがて上記ナット18は上記天板部41の上面に当接する
とともにターミナルボルト17は上方に移動し、上記ワイヤ5が緊張した状態となり、この係合部材4を構成する底板部42の下面は上記除湿フィルムを間に介して上記砕石層8に圧接した状態となる(
図10参照)。なお、上記ターミナルボルト17のボルト軸部17aには、上記ナット18が不用意に緩むことを防止するために、更に緩み止めナット19を螺着させる。
【0039】
そして、上記ターミナルボルト17のボルト軸部17aに対するナット18及び緩み止めナット19を螺着させる作業が終了すると、次いで、上記除湿フィルム上において、先に説明した特定の鉄筋7aや他の鉄筋7bをそれぞれ複数配筋し、該特定の鉄筋7aと他の鉄筋7bとが交差する箇所には、針金等の図示しない結束材により互いを結束する。そして、こうした配筋作業においては、上記係合部材4が配置された個所に配筋される上記特定の鉄筋7aは、上記係合部材4の正面板部43に形成された上記正面側鉄筋挿通穴43a,43bと背面板部44に形成された背面側鉄筋挿通穴44a,44bに挿通し、また、該係合部材4全体の内側に形成された空間には、上記他の鉄筋7bを挿通する。こうした作業により、上記係合部材4と特定の鉄^筋7aや他の鉄筋7bとの関係は、
図11又は
図12に示す状態となる。
【0040】
そして、こうした配筋作業が終了すると次いで、所定の位置に複数の図示しない型枠を固定するとともに、これらの型枠内であって上記各鉄筋7が全て隠れるまでコンクリートを充填・打設し、この充填されたコンクリートが硬化した後に上記それぞれの型枠を取り外す。なお、こうしたコンクリートの打設により、上記係合部材4内には、上記上側大径穴41b,41c、正面側大径穴43c及び背面側大径穴44cのそれぞれから該コンクリートが流入・充填されることから、該係合部材4内においてもコンクリートで固められ、該係合部材4内に位置する鉄筋7a,7bが湿気等のより錆びる等の不都合を防止することができる。以上の一連の作業により、上記住宅用基礎部2の下方に位置する地盤内に埋設されたスクリュー杭3と、上記住宅用基礎部2を構成するベース基礎部(布基礎部)2a内に埋設された係合部材4と、上記スクリュー杭3と上記係合部材4とを連結するワイヤ5とを備えた浮上防止構造(
図1参照)が完成し、次いで、上記住宅用基礎部2を構成する起立部2b上に土台6を載置固定する等、これまで採用されている工程により住宅1を建設する。
【0041】
したがって、上述した浮上防止装置やこの浮上防止装置を備えた住宅の浮上防止構造又は該浮上防止装置を用いた住宅によれば、洪水や津波等の発生により上記住宅用基礎部2を含めた住宅1に対して浮上する力(浮力)が作用した場合であっても、上記浮上防止装置により現状を維持することができ、濁流などにより住宅用基礎部2を含めた住宅1全体が流されるなどの事態を有効に防止することができる。
【0042】
特に、この実施の形態に係る浮上防止装置や浮上防止構造では、上述したように、上記係合部材4には、上記特定の鉄筋7aが複数本挿通される正面側鉄筋挿通穴43a,43bや背面側鉄筋挿通穴44a,44bが形成され、また、該係合部材4全体の内側には、他の鉄筋7bが挿通される空間が形成され、さらに該接続部4内にはコンクリートが充填されることから、上記住宅用基礎部2を含めた住宅1全体に浮力が生じ、更にこうした浮力に伴って上記住宅用基礎部2のベース基礎部2aに割れが生じた場合であっても、依然として該係合部材4は上記鉄筋7に係合して、初期の状態を保持することができる。また、この実施の形態に係る浮上防止装置や浮上防止構造では、該浮上防止装置を構成する連結材として、例えば、図示しない鋼管や鉄筋等を用いることなく、上記ワイヤ5により構成したことから、地震により、或いは該地震に伴う地盤の液状化現象により、地盤と住宅用基礎部2との間に多少のずれが生じた場合であっても、こうしたずれを有効に解消・吸収することができ、上記地震等によりベース基礎部2aに割れが生じ、この結果、該住宅用基礎部2を含めた住宅1全体に浮力が作用した場合に、上記係合部材4がベース基礎部2aから脱落し、住宅1が浮上する等の事態を有効に防止することができる。
【0043】
なお、上述した実施の形態に係る住宅の浮上防止装置又は浮上防止構造等では、本発明を構成する埋設体として、上記スクリュー杭3を図示して説明したが、上記埋設体は、少なくとも地盤内に埋設され、住宅用基礎部2を含めた住宅1全体に浮力が作用した場合に、地盤との間で抵抗する機能(アンカー機能)を有するものであれば何れの形状や構造に係るものであっても良い。また、上記係合部材を上述したように略角パイプ状に成形することなく、少なくとも地盤に埋設された埋設体との間で連結材を介して連結・接続される機能を有するものであれば、例えば、平板状その他の形状に成形されたものであっても良い。また、上記ワイヤ5は、その下端に無端状の係止部5aが形成されたものであるが、上記係止部5aに代えて、該ワイヤ5の下端に図示しないリング状の係止部材が固定されているものであっても良い。
【0044】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置を備えた住宅の浮上防止構造について、それぞれ図面を参照しながら具体的に詳細する。なお、上記第1の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置1と同じ構成については、同じ符号を用いる。
【0045】
この住宅の浮上防止装置71は、
図13に示すように、住宅が支持されている上記住宅用基礎部2(ベース基礎部2a)が施工される敷地の下方に位置する地盤(符号は省略する。)内に埋設されるコンクリート製のブロックからなる埋設体73と、上記ベース基礎部2aの上面に配置される係合部材74と、上記埋設体73内に埋設された引抜抵抗部材76と、上記係合部材74と上記埋設体73とを、上記引抜抵抗部材76を介して連結する(異径)鉄筋75とを備えている。
【0046】
上記埋設体73は、本実施の形態においては直方体状に成形されてなるものであって、地盤内に埋設されるものであり、特に、
図13中二点鎖線で示す水位を有する地下水が存在する場合には、少なくとも下端がその地下水の水位よりも下方に埋設されるものである。換言すれば、上記埋設体73は、この住宅の浮上防止装置71を備えた住宅の浮上防止構造を施工する際に最初に施工されるものである。そして、この埋設体73内の下方側中途部には、上記引抜抵抗部材76が配置されている。この引抜抵抗部材76は、上記埋設体73の略中央よりも下方に埋設されたものであって、
図15に示すように、鉛直方向に長さを有し周面にはネジが螺刻された軸状抵抗体76aと、この軸状抵抗体76aに螺着された上側ナット76b及び下側ナット76cと、これら上側ナット76bと下側ナット76cとの間に配置・固定された板状抵抗体76dとから構成されている。この板状抵抗体76dは、本発明を構成する引抜抵抗部又は板状抵抗体であり、上記軸状抵抗体76aの長さ方向とは直交する方向に長さ及び幅を備えた板体であって、その中央には上記軸状抵抗体76aが挿通された挿通穴76eが形成されている。
【0047】
また、上記(異径)鉄筋75は、本発明を構成する連結材であって、
図14に示すように、その上端には、ターミナルボルト77の下端が固定されている。このターミナルボルト77は、略中央から上端に亘ってボルト軸部77aが形成され、このボルト軸部77aには、ナット78及び緩み止めナット79が螺着され、該ナット78の下方には座金80が挿通されている。また、上記係合部材74は、中央にボルト挿通穴74aが形成された方形状の板体であって、該ボルト挿通穴74a内には、上記ターミナルボルト77が挿通されている。一方、上記(異径)鉄筋75の下端には、
図13又は
図15に示すように、連結軸81が固定され、この連結軸81には上記軸状抵抗体76aの上端側が固定されている。
【0048】
そして、上記構成からなる住宅の浮上防止装置71が、上記住宅用基礎2から上記地盤内に施行された住宅の浮上防止構造は、
図13に示すように、上記係合部材74が上記ベース基礎部2aの上面に配置され、この係合部材74は、上記ターミナルボルト77を介して上記(異径)鉄筋75に連結されてなるとともに、この(異径)鉄筋75の下端は上記連結軸81及び軸状抵抗体76aを介して、地盤内に埋設された埋設体73に連結されている。
【0049】
なお、
図13に示す住宅の浮上防止構造を備えた住宅の施工方法について、その工程順に簡単に説明すると、先ず、上記地盤を掘削し、所定の枠体を用いてセメントを打設し、該セメントが硬化する前段階において、図示しないパイプ状のロッドを該セメント内に圧入する。この際、上記ロッドの内部には、予め該ロッドの下端側から上記(異径)鉄筋75の先端側を挿通する。この(異径)鉄筋75の下端には、上記連結軸81、軸状抵抗体76a及び板状抵抗体76dを固定・連結させて置き、該ロッドの他端(下面)には板状抵抗体76dの上面を当接させておく。こうした状態で上記ロッドを圧入し、その後にロッドを硬化する前のセメント内から上方に引き抜くことにより、上記板状抵抗体76dからワイヤ75の中途部は、上記埋設体73内に埋設される。なお、上記埋設体73の配置位置(地盤内における埋設位置)は、上記住宅用基礎2の下方に地下水が存在する場合には、その地下水の水位よりも、上記埋設体73の下面が下方となる位置とする。そして、上記埋設体73が硬化すると、上記地盤上に砕石を施工して砕石層8を形成し、次いでこの砕石層8上に、上記図示しない防湿フィルムを敷設する。なお、上記砕石層8を形成する際には、上記(異径)鉄筋75の先端側(上端側)は、該砕石層8上に露出させておくとともに、上記防湿フィルムには、所定個所に図示しない開口を設けておき、この開口から上記(異径)鉄筋75の先端が外部に露出させておく。そして、上記防湿フィルム敷設作業が終了すると、次いで、上記除湿フィルム上において、複数の鉄筋7を配筋し、こうした配筋作業が終了すると次いで、所定の位置に複数の図示しない型枠を固定するとともに、これらの型枠内であって上記各鉄筋7が全て隠れるまでコンクリートを充填・打設し、この充填されたコンクリートが硬化した後に上記それぞれの型枠を取り外す。なお、こうしたコンクリートを打設する前段階においては、予め上記地盤面から図示しないボイド管83(
図13参照)を立設させ、このボイド83管内に上記(異径)鉄筋75の上端に固定されたターミナルボルト77を挿通しておき、その上で上記砕石層8を形成し、その後に、コンクリートを打設することにより上記住宅用基礎部2を形成する。なお、このように住宅用基礎部2が形成された際(コンクリートが硬化した際)において、該住宅用基礎部2の上面から突出したボイド管83の一部は切除する。そして、上記ボイド管8から突出したターミナルボルト77に上記係合部材74を挿通し、次いで上記座金80、ナット78及び緩み止めナット79を挿通又は図示しないトルクレンチを使用して螺着させる。トルクレンチの使用による上記ナット78の螺進操作により、上記係合部材74の下面は、上記住宅用基礎部2の上面に圧接される。以上の一連の作業により、上記住宅用基礎部2の下方に位置する地盤内に埋設された埋設体73と、上記住宅用基礎部2の上面に配置された係合部材74と、上記(異径)鉄筋75とを備えた浮上防止構造(
図13参照)が完成する。
【0050】
したがって、上述した第2の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置71やこの装置を備えた住宅の浮上防止構造等によれば、洪水や津波等の発生により上記住宅用基礎部2を含めた住宅1に対して浮上する力(浮力)が作用した場合であっても、上記浮上防止装置により現状を維持することができ、濁流などにより住宅用基礎部2を含めた住宅1全体が流されるなどの事態を有効に防止することができる。特に、この第2の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置71では、上記埋設体73の埋設位置に地下水が存在する等して、地盤が極めて脆弱である場合であっても、該埋設体73と地盤との摩擦抵抗と該埋設体の自重とにより、極めて安定した浮上防止機能を発揮することができる。
【0051】
なお、上記第2の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置71のように、ブロック状に成形された埋設体73を地盤内に埋設する場合においては、
図16に示すように、引抜抵抗部材91を、外周に螺旋状の摩擦抵抗部91bが形成された軸状抵抗体91aと、この軸状抵抗体91aの上端側に形成された板状抵抗体91bとを備えているものであっても良い。すなわち、この例では、
図17に示すように、上記(異径)鉄筋75の下端に連結軸81が固定され、この連結軸81の下端にボルト軸93の上端が固定され、このボルト軸93の下端側に、連結ナット94が螺着されており、上記板状抵抗体91bはこの連結ナット94の外周に内周が溶接されてなるものである。また、この連結ナット94の下端には、上記軸状抵抗体91aが螺着されている。この軸状抵抗体91aは、上述した通り、外周に螺旋状の摩擦抵抗部91cが形成されており、上端にはボルト部91dが形成され、このボルト部91dの外周に上記連結ナット94が螺着されている。なお、この軸状抵抗体91aの下端は、
図16に示すように、直線状とされているものばかりでは無く、例えばUの字状に折曲された抵抗部を設けたり、或いは、該軸状抵抗体91aの下端側の外周にネジを螺刻してボルト部とし、このボルト部に上記板状抵抗体91bと同様の板状抵抗体を固定したりしたものであっても良い。
【0052】
こうした構成からなる住宅の浮上防止装置によれば、より一層埋設体73と係合部材74とを連結する上記(異径)鉄筋75が、該埋設体73から脱落する危険性は有効に解消することができる。
【0053】
また、先に説明した第1の実施の形態に係る浮上防止装置では、本発明を構成する係合部材が、上記住宅用基礎部2内に埋設されたものであり、地盤(符号は省略する。)内に埋設された埋設体であるスクリュー杭3と該係合部材とを連結材であるワイヤ5により連結したものであるが、このようにスクリュー杭3を埋設体として使用した場合であっても、
図18に示す第3の実施の形態に係る住宅の浮上防止装置を備えた住宅の浮上防止構造のように、係合部材97が住宅用基礎部2の上面に配置され、この係合部材97とスクリュー杭3とがワイヤ5により連結されてなるものであっても良い。なお、上記住宅用基礎部2内には、先に説明したボイド(スリーブ)83が埋設され、上記ワイヤ5の上端側は、このボイド(スリーブ)83内に挿通されている。
【符号の説明】
【0054】
1 住宅
2 住宅用基礎部
2a ベース基礎部
3 スクリュー杭
3b,3c,3d 第1ないし第3の軸挿通穴
4 係合部材
5 ワイヤ
5a 係止部
9 補強用管体
9b,9c,9d 第1ないし第3の外側軸挿通穴
10,11,12 第1ないし第3のワイヤ係止軸
17 ターミナルボルト
17a ボルト軸部
18 ナット
41 天板部
41a 上側ボルト挿通穴
42 底板部
42a 下側ボルト挿通穴
43 正面板部
43a,43b 正面側鉄筋挿通穴
44 背面板部
44a,44b 背面側鉄筋挿通穴
71 住宅の浮上防止装置
73 埋設体
74 係合部材
75 (異径)鉄筋
76 引抜抵抗部材
76a 軸状抵抗体
76d 板状抵抗体
91 引抜抵抗部材
91a 軸状抵抗体
91b 板状抵抗体
91c 摩擦抵抗部
97 係合部材