IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ガラス株式会社の特許一覧

特許7235583ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置
<>
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図1
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図2
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図3
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図4
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図5
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図6
  • 特許-ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-02-28
(45)【発行日】2023-03-08
(54)【発明の名称】ガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/90 20060101AFI20230301BHJP
【FI】
G01N21/90 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019088144
(22)【出願日】2019-05-08
(65)【公開番号】P2020183896
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】原田 崇
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寿
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 悠貴
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-85464(JP,A)
【文献】特開2010-19804(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186885(JP,U)
【文献】特開昭61-277514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103698337(CN,A)
【文献】国際公開第2018/061196(WO,A1)
【文献】特開2014-129224(JP,A)
【文献】特開2013-167481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
B65G 47/00-B65G 47/20
G01B 11/00-G01B 11/30
G06T 1/00
G06T 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、
前記ガラスびんを中心軸の周りに回転しながら、エリアセンサカメラで前記ガラスびんを撮像して所定数の画像からなる画像群を取得する工程と、
回転方向における基準位置にある前記ガラスびんの少なくとも一部が撮像された第1画像を前記画像群から選択する工程と、
前記第1画像より第1の所定数前に撮像された前画像と、前記第1画像より第2の所定数後に撮像された後画像と、を前記画像群から選択する工程と、
前記第1画像、前記前画像、及び前記後画像に基づいて欠点の有無を判定する工程と、を含み、
前記基準位置は、前記第1画像に前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像される位置に予め設定され、
前記前画像及び前記後画像は、前記第1模様の少なくとも一部に対応する模様をそれぞれ含み、
前記第1の所定数及び前記第2の所定数は、前記第1画像における前記第1模様よりも前記前画像及び前記後画像における前記第1模様の方が明るく表れる数になるようにあらかじめ設定されることを特徴とする、ガラスびんの検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のガラスびんの検査方法において、
前記ガラスびんの胴部は、横断面の外形が略四角形であり、
前記第1画像を選択する工程は、前記画像に撮像された前記胴部の幅に基づいて前記基準位置にある前記ガラスびんが撮像された前記第1画像を選択することを特徴とする、ガラスびんの検査方法。
【請求項3】
請求項2に記載のガラスびんの検査方法において、
前記基準位置は、前記画像における前記胴部の幅が最小となる位置であり、
前記第1画像には、前記胴部における正面部が撮像され、
前記前画像には、正面部に対して前記回転方向の前方の前角部が撮像され、
前記後画像には、正面部に対して前記回転方向の後方の後角部が撮像されることを特徴
とする、ガラスびんの検査方法。
【請求項4】
粗型でゴブからパリソンを成形し、前記パリソンを仕上型でガラスびんに成形し、前記ガラスびんに対して請求項1~請求項のいずれか1項に記載のガラスびんの検査方法を行って欠点がないと判定されたガラスびんを得ることを特徴とする、ガラスびんの製造方法。
【請求項5】
表面に彫刻を有するガラスびんの検査装置であって、
前記検査装置は、
前記ガラスびんを中心軸の周りに回転させる回転機構と、
回転する前記ガラスびんを撮像するエリアセンサカメラと、
前記エリアセンサカメラで撮像される所定数の画像からなる画像群を記憶する記憶部と、
回転方向における基準位置にある前記ガラスびんの少なくとも一部が撮像された第1画像を前記画像群から選択し、かつ、前記第1画像より第1の所定数前に撮像された前画像と、前記第1画像より第2の所定数後に撮像された後画像と、を選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記第1画像、前記前画像、及び前記後画像に基づいて欠点の有無を判定する判定部と、
を含み、
前記基準位置は、前記第1画像に前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像される位置に予め設定され、
前記前画像及び前記後画像は、前記第1模様の少なくとも一部に対応する模様をそれぞれ含み、
前記第1の所定数及び前記第2の所定数は、前記第1画像における前記第1模様よりも前記前画像及び前記後画像における前記第1模様の方が明るく表れる数になるようにあらかじめ設定されることを特徴とする、ガラスびんの検査装置。
【請求項6】
請求項に記載のガラスびんの検査装置において、
前記検査装置は、前記ガラスびんを載せて回転軸を中心に回転する載置台と、前記載置台の上の前記ガラスびんの口部を上から押さえる押さえ部材と、前記載置台の回転角度を検出する検出機構と、を含み、
前記エリアセンサカメラは、前記検出機構からの前記回転角度の信号に基づいて所定角度ごとの画像を撮像し、
前記載置台は、前記回転軸から放射状に延びる複数の溝を有し、
前記押さえ部材は、前記口部の端面に接触する平坦面と、前記平坦面の周囲に前記口部の側面と接触する環状壁と、を有することを特徴とする、ガラスびんの検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法及びガラスびんの製造方法並びにガラスびんの検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に凹凸のある彫刻を施したガラスびんが知られている。彫刻を有するガラスびんは、独創性や高級感があり、消費者に好ましい印象を与える。
【0003】
このような表面に凹凸のあるガラスびんの検査方法として、例えば特許文献1が提案されている。特許文献1の発明では、凹凸による彫刻面と凹凸の無い平滑面とを光学的に判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-216906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明では、単に凹凸のある面と無い面とを判定するだけであり、ガラスびんの欠点を検査できていない。凹凸のあるガラスびんを光学的に検査しようとすると、凹凸による暗部であるのか、傷や泡等の欠点による暗部であるのかを判定しにくい。現在も、凹凸のあるガラスびんの傷や泡等の欠点の有無は、もっぱら目視検査に頼っている。
【0006】
そこで、本発明は、表面に彫刻を有するガラスびんにおける欠点の有無を画像から自動的に判定する検査方法及びガラスびんの製造方法並びに検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0008】
なお、以下の説明において、「彫刻」は、ガラスびんの表面の凹凸による意匠であり、「模様」は、ガラスびんを撮像して得られた画像に現れる「彫刻」に起因する明暗濃度の変化である。
【0009】
[1]本発明に係るガラスびんの検査方法の一態様は、
表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、
前記ガラスびんを中心軸の周りに回転しながら、エリアセンサカメラで前記ガラスびんを撮像して所定数の画像からなる画像群を取得する工程と、
回転方向における基準位置にある前記ガラスびんの少なくとも一部が撮像された第1画像を前記画像群から選択する工程と、
前記第1画像より第1の所定数前に撮像された前画像と、前記第1画像より第2の所定数後に撮像された後画像と、を前記画像群から選択する工程と、
前記第1画像、前記前画像、及び前記後画像に基づいて欠点の有無を判定する工程と、を含み、
前記基準位置は、前記第1画像に前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像される位置に予め設定され、
前記前画像及び前記後画像は、前記第1模様の少なくとも一部に対応する模様をそれぞれ含み、
前記第1の所定数及び前記第2の所定数は、前記第1画像における前記第1模様よりも前記前画像及び前記後画像における前記第1模様の方が明るく表れる数になるようにあらかじめ設定されることを特徴とする。
【0010】
ガラスびんの回転により異なる角度で撮像されることで、同じ彫刻であっても角度の異なる画像ごとに模様の見え方が異なる。なぜなら、彫刻はガラスびんの表面にある凹凸であるので、撮像する角度によって模様が暗く現れたり、ほとんど模様として認識できないくらい明るく現れたりする。また、撮像された面に彫刻がない場合でも、背面にある彫刻がびんを透過して画像に撮像されることもある。そのため、前記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、第1画像に撮像された第1模様の少なくとも一部を、撮像された角度の違う前後の画像により重複して検査できるので、彫刻による模様を欠点と誤判定することを抑制できる。これにより、前記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、欠点の有無を画像から自動的に判定できる。
【0011】
[2]前記ガラスびんの検査方法の一態様において、
前記ガラスびんの胴部は、横断面の外形が略四角形であり、
前記第1画像を選択する工程は、前記画像に撮像された前記胴部の幅に基づいて前記基準位置にある前記ガラスびんが撮像された前記第1画像を選択することができる。
【0012】
前記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、胴部が略四角形であれば、容易に基準位置にある第1画像を選択することができる。
【0013】
[3]前記ガラスびんの検査方法の一態様において、
前記基準位置は、前記画像における前記胴部の幅が最小となる位置であり、
前記第1画像には、前記胴部における正面部が撮像され、
前記前画像には、正面部に対して前記回転方向の前方の前角部が撮像され、
前記後画像には、正面部に対して前記回転方向の後方の後角部が撮像されることができる。
【0014】
ガラスびんの角部は正面部に比べてびんの肉厚変化による明暗濃度の変化も大きく、画像による検査が難しい部分である。前記ガラスびんの検査方法の一態様によれば、正面部と共に前後の角部でも第1模様に対応する模様を重複して検査するため、欠点をより確実に判定できる。
【0019】
]本発明に係るガラスびんの製造方法の一態様は、
粗型でゴブからパリソンを成形し、前記パリソンを仕上型で表面に彫刻を有するガラスびんに成形し、前記ガラスびんに対して前記ガラスびんの検査方法を行って欠点がないと判定されたガラスびんを得ることを特徴とする。
【0020】
前記ガラスびんの製造方法の一態様によれば、彫刻を有するガラスびんであっても、欠点を自動で判定することができるので、欠点のないガラスびんを製造することができる。
【0021】
]本発明に係るガラスびんの検査装置の一態様は、
表面に彫刻を有するガラスびんの検査装置であって、
前記検査装置は、
前記ガラスびんを中心軸の周りに回転させる回転機構と、
回転する前記ガラスびんを撮像するエリアセンサカメラと、
前記エリアセンサカメラで撮像される所定数の画像からなる画像群を記憶する記憶部と、
回転方向における基準位置にある前記ガラスびんの少なくとも一部が撮像された第1画像を前記画像群から選択し、かつ、前記第1画像より第1の所定数前に撮像された前画像
と、前記第1画像より第2の所定数後に撮像された後画像と、を選択する選択部と、
前記選択部で選択された前記第1画像、前記前画像、及び前記後画像に基づいて欠点の有無を判定する判定部と、
を含み、
前記基準位置は、前記第1画像に前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像される位置に予め設定され、
前記前画像及び前記後画像は、前記第1模様の少なくとも一部に対応する模様をそれぞれ含み、
前記第1の所定数及び前記第2の所定数は、前記第1画像における前記第1模様よりも前記前画像及び前記後画像における前記第1模様の方が明るく表れる数になるようにあらかじめ設定されることを特徴とする。
【0022】
前記ガラスびんの検査装置の一態様によれば、第1画像に撮像された第1模様の少なくとも一部を、撮像された角度の違う前後の画像により重複して検査できるので、彫刻による模様を欠点と誤判定することを抑制できる。これにより、前記ガラスびんの検査装置の一態様によれば、欠点の有無を画像から自動的に判定できる。
【0025】
]前記ガラスびんの検査装置の一態様において、
前記検査装置は、前記ガラスびんを載せて回転軸を中心に回転する載置台と、前記載置台の上の前記ガラスびんの口部を上から押さえる押さえ部材と、前記載置台の回転角度を検出する検出機構と、を含み、
前記エリアセンサカメラは、前記検出機構からの前記回転角度の信号に基づいて所定角度ごとの画像を撮像し、
前記載置台は、前記回転軸から放射状に延びる複数の溝を有し、
前記押さえ部材は、前記口部の端面に接触する平坦面と、前記平坦面の周囲に前記口部の側面と接触する環状壁と、を有することができる。
【0026】
前記ガラスびんの検査装置の一態様によれば、載置台に対するガラスびんの滑りを抑制することにより、所定角度ごとのガラスびんの画像をより正確に撮像できる。また、前記ガラスびんの検査装置の一態様によれば、平坦面と環状壁によってガラスびんの傾斜を抑制し、画像におけるガラスびんの傾斜を抑制できるため、検査精度を向上できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るガラスびんの検査方法の一態様によれば、表面に彫刻を有するガラスびんであっても、精度の高い検査を自動的に行うことができる。また、本発明に係るガラスびんの検査装置の一態様によれば、表面に彫刻を有するガラスびんであっても、精度の高い検査を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る検査装置の平面図である。
図2】押さえ部材及び載置台を模式的に示す側面図である。
図3】載置台の平面図である。
図4】本実施形態に係る検査方法のフローチャートである。
図5】選択する工程を説明する模式図である。
図6】検査ゲートを説明する模式図である。
図7】検査ゲートを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0030】
本実施形態に係るガラスびんの検査装置は、表面に彫刻を有するガラスびんの検査装置であって、前記検査装置は、前記ガラスびんを中心軸の周りに回転させる回転機構と、回転する前記ガラスびんを撮像するエリアセンサカメラと、前記エリアセンサカメラで撮像
される所定数の画像からなる画像群を記憶する記憶部と、回転方向における基準位置にある前記ガラスびんの少なくとも一部が撮像された第1画像を前記画像群から選択し、かつ、前記第1画像より所定数前に撮像された前画像と、前記第1画像より所定数後に撮像された後画像と、を選択する選択部と、前記選択部で選択された前記第1画像、前記前画像、及び前記後画像に基づいて欠点の有無を判定する判定部と、を含み、前記基準位置は、前記第1画像に前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像される位置に予め設定され、前記前画像及び前記後画像は、前記第1模様の少なくとも一部に対応する模様をそれぞれ含むことを特徴とする。
【0031】
本実施形態に係るガラスびんの検査装置は、表面に彫刻を有するガラスびんの検査装置であって、前記検査装置は、前記ガラスびんを中心軸の周りに回転する回転機構と、回転する前記ガラスびんを撮像するエリアセンサカメラと、前記エリアセンサカメラで撮像する所定数の画像群を記憶する記憶部と、前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像された第1画像を前記画像群から選択する選択部と、前記第1画像中にあらかじめ用意した検査ゲートを設定し、前記検査ゲート内における欠点の有無を判定する判定部と、を含み、前記検査ゲートは、前記第1模様を検査する第1検査ゲートと、前記第1模様以外の領域を検査する第2検査ゲートとを含み、前記第1検査ゲートと第2検査ゲートとで異なる検査を行うことを特徴とする。
【0032】
1.検査装置
図1図3を用いて、ガラスびん10の検査装置1について詳細に説明する。図1は本実施形態に係る検査装置1の平面図であり、図2は押さえ部材32及び載置台30を模式的に示す側面図であり、図3は載置台30の平面図である。なお、図2及び図3では撮像部40をエリアセンサカメラ42として示し、図2の押さえ部材32は縦断面で示す。
【0033】
図1図3に示す検査装置1は、表面に彫刻16(図2を参照)を有するガラスびん10の検査装置1である。検査装置1は、ガラスびん10の製造ラインの一部として組み込まれ、成形後、徐冷されたガラスびん10を供給部90から検査装置1に導入し、検査後のガラスびん10を排出部96から次工程へ排出する。検査装置1は、回転機構と、エリアセンサカメラ42と、記憶部54と、選択部51と、判定部52と、を含む。本実施形態における回転機構は、ガラスびん10の搬送装置の一部と自転用駆動装置34とが協同するが、これに限らず、ガラスびん10を間欠搬送する装置であれば、停止位置でガラスびん10を回転する機構であってもよい。また、本実施形態では記憶部54等が検査装置1の制御部50に含まれた例について説明するが、検査装置1の制御部50とは別に設けてもよい。
【0034】
ガラスびん10は、ガラス製であって、透明または半透明である。半透明とは、ガラスびん10を透過した発光部20からの光によって内部の泡を判定可能な程度の透明度である。ガラスびん10の胴部14は、横断面の外形が略四角形である。ここで略四角形には正方形及び長方形が含まれ、一般に角形びんと呼ばれるような角部が曲面になっているびんも含まれる。ガラスびん10の横断面形状は、円形または四角形以外の多角形であってもよい。ガラスびん10は、表面に彫刻を有する。彫刻は、ガラスびん10の表面に形成された凹凸であり、例えば、成形時の金型の表面に刻まれた凹凸により成形される。彫刻としては、例えば、幅が0.2mm以上、深さまたは突出高さが0.03mm以上2.0mm以下である。
【0035】
中心軸12は、載置台30及び押さえ部材32によって支持されたガラスびん10が回転する回転中心軸を示す仮想線である。中心軸12は、ガラスびん10の口部13の横断面における内周円の中心と一致する。
【0036】
検査装置1は、ガラスびん10を透過した光を用いて撮像部40で撮像し、撮像された画像における黒色に表れた部分をガラスびん10における欠点として検出する透過光方式の検査装置1である。欠点は発光部20からの光がランダムに反射し、または屈折し、他の部分(検出体の無い胴部14)と比べて撮像部40に届く光が極めて少なくなる。そのため、欠点がある部分は他の部分に比べて暗くなり、画像ではガラスびん10に黒色の欠点として表れる。また、彫刻16による暗い部分もあるため、これを欠点として誤判定しないことが求められる。
【0037】
基準線41は、撮像部40と中心軸12とを結ぶ仮想線である。基準線41を中心にして、撮像部40はガラスびん10を撮像することができる。基準線41は、撮像部40からガラスびん10の中心軸12へ向かうカメラの光軸と一致する。ガラスびん10の移動に合わせて撮像部40も追従するため、基準線41も移動する。なお、間欠搬送の検査装置にあっては、撮像部40が所定位置に固定されるため、基準線41は常に同じ位置にある。
【0038】
1-1.搬送装置
図1に示すように、検査装置1は、環状の搬送装置92を含む。搬送装置92は、連続的にガラスびん10を搬送し、検査位置でも停止しない。搬送装置92の所定位置に、ガラスびん10を照らす発光部20と、ガラスびん10を挟んで発光部20と対向して配された撮像部40と、が配置される。
【0039】
上流にある仕上げ型及び徐冷炉から供給部90を介して搬送装置92へガラスびん10を順次送り込み、検査の終了したガラスびん10を搬送装置92から順次排出して下流側へ搬送する。
【0040】
搬送装置92は、図2に示す載置台30及び押さえ部材32により載置台30の回転軸31を中心に回転可能にガラスびん10を支持しながら搬送する。したがって、ガラスびん10は、搬送装置92の外周を公転しつつ、中心軸12及び回転軸31を中心に自転する。
【0041】
搬送装置92は、ベルト94を介して公転用駆動装置95の駆動力を回転軸93に伝えることによりガラスびん10を公転させる。ベルト94及び公転用駆動装置95は検査装置1の図示しない機台内に配置される。公転用駆動装置95には直接的にまたは間接的に第1回転検出部55aが設けられ、ガラスびん10の搬送路上の移動角度を検出し、制御部50に出力する。
【0042】
搬送装置92は、ガラスびん10を中心軸12の周りに回転させる回転機構を含む。回転機構は、自転用駆動装置34及びプーリ36との間で搬送路に沿って張られたベルト35とを含む。自転用駆動装置34を駆動することで、ガラスびん10を自転させる。ベルト35及び自転用駆動装置34等は検査装置1の機台内に配置される。ベルト35は、ガラスびん10を支持した載置台30に直接的にまたは間接的に連結されており、自転用駆動装置34の駆動力が伝達される。ベルト35には第2回転検出部55bが接触しており、自転用駆動装置34によるベルト35の移動角度を検出し、制御部50に出力する。制御部50は、第1回転検出部55a及び第2回転検出部55bの出力信号に基づいてガラスびん10の回転角度を算出する。
【0043】
第1回転検出部55a及び第2回転検出部55bは、回転量を検出可能なものであればよく、例えばロータリエンコーダである。なお、搬送装置92が間欠回転する場合には、ガラスびん10の停止位置(検査位置)で第2回転検出部55bの出力に基づいてガラスびん10の回転角度を制御部50が算出する。
【0044】
搬送装置92は、ガラスびん10を載せて回転軸31を中心に回転する載置台30と、載置台30の上のガラスびん10の口部13を上から押さえる押さえ部材32と、載置台30の回転角度を検出する検出機構と、を含む。本実施形態における検出機構は、第1回転検出部55a及び第2回転検出部55bである。載置台30及び押さえ部材32は、樹脂製が好ましいが、金属であってもよい。
【0045】
図3に示すように、載置台30は、回転軸31から放射状に延びる複数の溝30aを有する。溝30aにガラスびん10の底部15に設けられた図示しないナーリングが係合することにより、載置台に対するガラスびんの滑りを抑制する。その結果、所定角度ごとのガラスびん10の画像をより正確に撮像できる。
【0046】
押さえ部材32は、ガラスびん10の口部13の端面に接触する平坦面32aと、平坦面32aの周囲に口部13の側面と接触する環状壁32bと、を有する。平坦面32aは、口部13の端面と面接触することによりガラスびん10の傾斜を抑制する。環状壁32bは、口部の側面と接触することにより、ガラスびんの傾斜を抑制する。ガラスびん10の傾斜を抑制することで、画像におけるガラスびんの傾斜を抑制できるため、常に画像におけるガラスびん10の中心軸12が一定となり、検査精度を向上できる。環状壁32bは、下方に向かって拡径するテーパ状の内面を有する。環状壁32bは、口部13に向かって下降する際にテーパ状の内面で口部13を所定位置にガイドする。環状壁32bの内面は、口部13の形状により、テーパ状でなく鉛直方向に延びていてもよい。
【0047】
1-2.制御部
制御部50は、選択部51と、判定部52と、画像処理部53と、記憶部54とを含む。制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置、キーボード、マウス、タッチパッド等の入力装置、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置で構成される。制御部50は、検査装置1がガラスびん10を所定速度で搬送する処理と、ガラスびん10を検査する処理とを実行する。ガラスびん10を検査する処理を行う制御部50を搬送する処理を行う制御部と別に設けてもよい。
【0048】
記憶部54は、撮像部40のエリアセンサカメラ42で撮像される所定数の画像からなる画像群を記憶する。1本のガラスびん10を撮像して得られる画像群は、少なくともガラスびん10の1周以上を撮像した画像であることが好ましく、例えば、ガラスびん10の約1.33周(480°)以上に対応する画像である。1本のガラスびん10を撮像して得られる画像群は、搬送速度や回転速度の他、CPU等の画像処理能力などにも影響されるが、例えば、ガラスびん10の外周を中心軸12の周りに1°以上5°以下の角度ごとに撮像された画像である。例えば、ガラスびん10を回転角度2.5°毎に480°撮像した場合、ガラスびん10一本当たり192枚の画像からなる画像群を記憶部54に記憶する。
【0049】
選択部51は、ガラスびん10の少なくとも一部が撮像された画像を記憶部54に記憶された画像群から選択する。各画像には常にガラスびん10の所定位置が撮像される。ガラスびん10の「少なくとも一部」は、検査対象となる部分であり、必ずしもガラスびん10の全体が撮像される必要はない。画像には胴部14の全体が撮像されることが好ましい。
【0050】
判定部52は、選択部51で選択された画像に基づいて欠点の有無を判定する。判定部
52で判定される欠点としては、例えば、ガラスびん10の内部にある泡、ガラスびん10の表面にある表面泡、カーボン汚れ、白石・異物などである。判定部52は、直径が1.5mm以上の泡・表面泡を欠点として判定することが好ましい。また、判定部52は、彫刻16に起因する画像中の模様を欠点として誤判定しないことが好ましい。
【0051】
制御部50は、判定部52の判定結果をガラスびん10ごとに出力し、例えば、排出部96以降のラインで欠点有りと判定したガラスびん10を排除する。制御部50における具体的な処理については、下記「2.検査方法」で説明する。
【0052】
1-3.撮像部及び発光部
図1及び図2に示すように、撮像部40は、ガラスびん10を挟んで発光部20と対向して配される。撮像部40は、ガラスびん10の中心軸12を通る基準線41上に配置される。撮像部40は、ガラスびん10の少なくとも検査対象部分を撮像でき、ここではガラスびん10の全体が撮像部40の視野内に入るように配置されている。
【0053】
撮像部40は、回転するガラスびん10を撮像するエリアセンサカメラ42とトラッキングミラー44とを含む。撮像部40は、発光部20の光がガラスびん10を透過した画像を撮像することができる。エリアセンサカメラ42としては、CCD型イメージセンサやCMOS型のイメージセンサなどを用いることができる。
【0054】
トラッキングミラー44は、ガラスびん10の移動に追従してガラスびん10を撮像するためのものである。トラッキングミラー44を備えたエリアセンサカメラ42については、日本国の特開2004-279222号に開示されている。トラッキングミラー44は、図示しないモータによって搬送装置92の外周を搬送されるガラスびん10に追従して回転する。この回転によって中心軸12と撮像部40とを結ぶ基準線41(カメラの光軸と一致する)は、トラッキングミラー44の回転によってガラスびん10の移動に追従する。トラッキングミラー44の振れ角は、第1回転検出部55aの出力に基づいて、制御部50が次の撮像位置を予測し、その予測した撮像位置のガラスびん10を撮像できるように振れ角を演算する。その演算された振れ角に基づいて制御部50がトラッキングミラー44のモータを駆動する。そして、予測したガラスびん10の撮像位置でエリアセンサカメラ42がガラスびん10を撮像する。また、エリアセンサカメラ42は、第1回転検出部55a及び第2回転検出部55bからの回転角度の信号に基づいて所定角度ごとのガラスびん10の画像を撮像する。エリアセンサカメラ42は、撮像した画像データを制御部50へ出力する。
【0055】
発光部20は、ガラスびん10を照らす光源である。発光部20は、ガラスびん10を撮像部40の反対側から照らすことができる面光源である。発光部20は、検査装置1で検査することを予定している最大のガラスびん10の全体を照らすことができる大きさに設定されている。発光部20は、部分的に発光することが可能であってもよい。
【0056】
発光部20は、ガラスびん10側の正面が長方形の形状であり、その正面のほぼ全面が発光面となっている。発光部20は、ガラスびん10及び撮像部40に対し正対し、ガラスびん10を透過した光が撮像部40に届くように配置される。
【0057】
発光部20の光源としては、例えばLEDや有機EL等の公知の光源を用いることができる。発光部20は拡散照明であり、LEDを用いる場合には光源の前面に拡散板を配置して均一な光をガラスびん10に対して照射することができる。拡散板は、LED等の光源からの光を拡散させて外部に出射させる公知のものを用いることができる。拡散板によって光が拡散されることで、多数の光源を用いた場合に光源が存在しない部分とのムラを減少することができる。
【0058】
2.製造方法
本実施形態に係るガラスびんの製造方法は、粗型でゴブからパリソンを成形し、前記パリソンを仕上型でガラスびんに成形し、前記ガラスびんに対して後述するガラスびんの検査方法を行って欠点がないと判定されたガラスびんを得ることを特徴とする。
【0059】
ガラスびんは、まず粗型でゴブからパリソンを成形する。パリソンは、粗型内に配置した高温のゴブ内に圧縮空気を吹き込んで有底筒状に成形される。圧縮空気の代わりにプランジャを用いてもよい。次に、パリソンを仕上型に移し、仕上型内でパリソンに圧縮空気を吹き込んで製品であるガラスびんを成形する。成形直後のガラスびんは高温であるので、徐冷炉に移してゆっくりと冷やされる。徐冷炉から出たガラスびんに対して下記検査方法を実行する。下記検査方法を実行して欠点がないと判定されたガラスびんが良品の製品である。
【0060】
3.検査方法
第1実施形態に係るガラスびんの検査方法は、表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、前記ガラスびんを中心軸の周りに回転しながら、エリアセンサカメラで前記ガラスびんを撮像して所定数の画像からなる画像群を取得する工程と、回転方向における基準位置にある前記ガラスびんの少なくとも一部が撮像された第1画像を前記画像群から選択する工程と、前記第1画像より所定数前に撮像された前画像と、前記第1画像より所定数後に撮像された後画像と、を前記画像群から選択する工程と、前記第1画像、前記前画像、及び前記後画像に基づいて欠点の有無を判定する工程と、を含み、前記基準位置は、前記第1画像に前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像される位置に予め設定され、前記前画像及び前記後画像は、前記第1模様の少なくとも一部に対応する模様をそれぞれ含むことを特徴とする。
【0061】
第2実施形態に係るガラスびんの検査方法は、表面に彫刻を有するガラスびんの検査方法であって、前記ガラスびんを中心軸の周りに回転しながら、エリアセンサカメラで前記ガラスびんを撮像して所定数の画像からなる画像群を取得する工程と、前記彫刻の少なくとも一部に対応する第1模様が撮像された第1画像を前記画像群から選択する工程と、前記第1画像中にあらかじめ用意した検査ゲートを設定し、前記検査ゲート内における欠点の有無を判定する工程と、を含み、前記検査ゲートは、前記第1模様を検査する第1検査ゲートと、前記第1模様以外の領域を検査する第2検査ゲートと、を含み、前記第1検査ゲートと第2検査ゲートとで異なる検査を行うことを特徴とする。
【0062】
3-1.第1実施形態
図1図3における検査装置1を用いた第1実施形態に係るガラスびん10の検査方法について、図4図6を用いて説明する。図4は本実施形態に係る検査方法のフローチャートであり、図5は選択する工程(S16、S18)を説明する模式図であり、図6は検査ゲート80を説明する模式図である。図6は、画像の上下を省略して示すと共に、撮像された順に(a)前画像100、(b)第1画像101、(c)後画像102を模式的に示す。
【0063】
図4に示すように、第1実施形態に係る検査方法は、表面に彫刻を有するガラスびん10の検査方法であって、画像群を取得する工程S12と、第1画像を画像群から選択する工程S16と、前画像と後画像とを画像群から選択する工程S18と、欠点の有無を判定する工程S20,S30と、を含む。第1実施形態に係る検査方法は、S12の前に撮像を開始する工程S10をさらに含んでもよく、S12の後に基準位置を検出する工程S14を含んでもよく、S20,S30の後に良品として処理する工程S24及び不良品として処理する工程S22、S32をさらに含んでもよい。各工程について図1図3を参照
しながら以下順番に説明する。
【0064】
工程S10:制御部50は、撮像部40に撮像開始を指令する。撮像部40は、制御部50の指令に従って、ガラスびん10を中心軸12の周りに回転しながら、エリアセンサカメラ42でガラスびん10を撮像する。その際、制御部50は、第1回転検出部55a及び第2回転検出部55bからの出力に基づいてガラスびん10の回転角度を演算し、設定角度(例えば2.5度)毎に全周(例えば480°)を撮像する。撮像された画像データは、撮像部40から制御部50に送信される。
【0065】
工程S12:制御部50は、撮像部40から送信される所定数の画像からなる画像群を取得する。画像群は、1本のガラスびん10毎にまとめられる複数の画像である。画像群は、例えば、192枚の画像を含む。記憶部54は、エリアセンサカメラ42で撮像される所定数の画像からなる画像群を例えば一時的に記憶する。
【0066】
S14:制御部50は、記憶部54に記憶された画像群の中の画像から基準位置を検出する。画像群には、中心軸12を中心にガラスびん10を回転させて、図5に示すように例えば2.5°毎に撮像部40が撮像した画像が含まれる。基準位置は、図5に示すように第1画像101に彫刻16の少なくとも一部に対応する第1模様71が撮像される位置に予め設定される。
【0067】
基準位置は、対象となるガラスびん10によって適宜設定でき、特に、ガラスびん10における彫刻16の位置に合わせて設定される。図5に示すガラスびん10の胴部14は、横断面の外形が略四角形であって、正面部14aに彫刻16がある。この例では、基準位置が彫刻16のある正面部14a(回転角度が0°)として設定される。なお、図示は省略するが、4面全てに彫刻16があり、いずれの面を正面部14aとしてもよいものとする。図5の-15°、0°、+15°で撮像した画像が、それぞれ図6に示す前画像100、第1画像101、後画像102に対応する。制御部50は、記憶部54の画像に撮像された胴部14の幅Dに基づいてガラスびん10の基準位置を検出する。胴部14が略四角形であるので回転角度が変わると、幅Dの違いとして画像に現れるので、容易に基準位置を検出することができる。図5に示すように、正面部14aがエリアセンサカメラ42と正対する基準位置は、画像における胴部14の幅Dが最小となる位置である。幅Dは、例えば前画像100、第1画像101及び後画像102において、胴部14と背景との明暗濃度の急激な変化によって胴部14の両端のエッジ86,86を制御部50が検出する。制御部50は、エッジ86,86の間隔を幅Dとして算出し、その中から最も小さい幅Dが算出された第1画像101におけるガラスびん10が基準位置にあると検出する。
【0068】
工程S16:選択部51は、回転方向Rにおける基準位置にあるガラスびん10の少なくとも一部が撮像された第1画像101を画像群から選択する。
【0069】
図6に示す第1画像101を選択する工程S16は、工程S14によって制御部50が胴部14の幅Dに基づいて基準位置にあると検出した第1画像101を選択する。図6では、選択部51は、最も小さい幅Dが算出された第1画像101をガラスびん10が基準位置にある画像として選択する。
【0070】
図6に示すように、第1画像101には、胴部14における正面部14aが撮像される。胴部14の横断面が四角形以外の場合でも、基準位置にある第1画像101を選択することができればよい。例えば、第1模様71の水平方向の端部を検出することができれば、胴部14の両端のエッジ86,86のいずれか一方から基準位置における第1模様71の端部までの距離に基づいて第1画像101を選択してもよい。
【0071】
第1画像101には、中心にある正面部14aと、胴部14の両端のエッジ86,86付近にある前角部14b及び後角部14cと、が撮像される。第1画像101は、図5の回転角度が0°の状態であり、太い破線で示す範囲を主に撮像する。
【0072】
第1画像101には、基準位置で撮像できる彫刻16の全てが第1模様71として撮像される必要はなく、基準位置で撮像できる彫刻16の少なくとも一部に対応する第1模様71が撮像されていればよい。発光部20の光が彫刻16により拡散して画像内に模様として認識できないほど明暗濃度の変化が小さい部分もあるため、第1模様71は彫刻16の少なくとも一部に対応するように撮像されればよい。また、正面部14aの背面側に彫刻16がある場合にはそれが画像に映り込む場合があってもよい。
【0073】
工程S18:選択部51は、第1画像101より所定数前に撮像された前画像100と、第1画像101より所定数後に撮像された後画像102と、を記憶部54に記憶された画像群から選択する。図5及び図6では、前画像100は、第1画像101より6枚前(-15°)に撮像された画像であり、太い破線で示した範囲を主に撮像する。後画像102は、第1画像101より6枚後(+15°)に撮像された画像であり、太い破線で示した範囲を主に撮像する。前画像100には、正面部14aに対して回転方向Rにおける前方の前角部14bが撮像される。後画像102には、正面部14aに対して回転方向Rにおける後方の後角部14cが撮像される。
【0074】
さらに、図6には示さないが、他の基準位置にある第2画像、第3画像及び第4画像を選択し(S16)、各画像に対して前画像と後画像を選択することができる(S18)。そして、後述する工程S20~S32を同様に実行することができる。このように他の基準位置、すなわち胴部14の横断面が四角形の場合の正面部14a以外の残りの面(背面部及び左右側面部)に対して判定部52で欠点の有無を判定することができる。
【0075】
工程S20:判定部52は、選択部51で選択された第1画像101に基づいて欠点Eの有無を判定する。第1画像101内に欠点Eがあると判定した場合には、制御部50は工程S22を実行する。第1画像101内に欠点Eがないと判定した場合には、制御部50は工程S23を実行する。
【0076】
工程S30:判定部52は、前画像100及び後画像102に基づいて欠点Eの有無を判定する。前画像100または後画像102内に欠点Eがあると判定した場合には、制御部50は工程S32を実行する。前画像100または後画像102内に欠点Eがないと判定した場合には、制御部50は工程S23を実行する。
【0077】
前画像100及び後画像102は、第1模様71の少なくとも一部に対応する模様71a,71bをそれぞれ含む。第1模様71と模様71a,71bとは発光部20からの光が彫刻16に当たる角度が異なるため、明暗濃度が変化し、第1模様71として現れた暗い部分が模様71a,71bでは明るく現れたりする。第1画像101からの「所定数」は、検査する前にあらかじめ撮影された画像群の中から模様の現れ方を確認して基準位置よりも模様が明るく現れる角度に設定することが好ましい。それによって、第1画像101では模様なのか欠点なのかを判定しにくかった部分が彫刻16の形状によって前画像100または後画像102では判定しやすくなる。例えば、横断面が略四角形のガラスびん10の前角部14b及び後角部14cは正面部14aに比べてびんの肉厚変化による明暗濃度の変化も大きく、画像による検査が難しい部分であるが、回転角度の異なる前後の画像を用いて模様71a,71bを重複して検査するため、欠点Eをより確実に判定できる。
【0078】
工程S22及び工程S32:制御部50は、欠点Eがあると判定された当該ガラスびん
10について不良品として処理する工程S22及び工程S32を実行する。例えば、制御部50は、当該ガラスびん10に不良品としての識別データを付し、下流側の搬送路に設けられた図示しない不良品排出部から当該ガラスびん10を排出する。
【0079】
工程S23:制御部50は、工程S20及び工程S30で欠点Eがないと判定した場合、全ての画像に欠点Eがないと判定し、工程S24を実行する。このように、第1画像101に撮像された第1模様71の少なくとも一部を、撮像された角度の違う前画像100及び後画像102により重複して検査できるので、彫刻16による模様を欠点Eと誤判定することを抑制できる。具体例を示すと、図6の第1画像101のように欠点Eが比較的明るく現れてほとんど見えない場合や、第1模様71の近くに欠点Eがあって欠点Eであるか模様の一部であるかを判定しにくい場合などがある。しかし、前画像100では欠点Eが暗く現れて明らかに欠点Eであると判定することができる場合がある。そのため、誤判定を抑制できるので、欠点Eの有無を画像から自動的に判定できる。
【0080】
工程S24:制御部50は、欠点Eがないと判定された当該ガラスびん10を良品として処理する。例えば、検査装置1の下流側の搬送路に設けられた図示しない次工程の検査や梱包を実行する。
【0081】
3-2.第2実施形態
図1図3における検査装置1を用いた第2実施形態に係るガラスびん10の検査方法について、図4図7を用いて説明する。図7は、検査ゲート80を説明する模式図である。
【0082】
図4に示すように、第2実施形態に係る検査方法は、第1実施形態に係る検査方法と同様に、S10~S14、S20、S24の工程を実行する。第2実施形態に係る検査方法は、さらにS18、S30及びS23の工程を実行してもよい。以下の説明では、第1実施形態に係る検査方法と同じ工程については説明を省略する。
【0083】
S16:選択部51は、彫刻16の少なくとも一部に対応する第1模様71が撮像された第1画像101を記憶部54に記憶された画像群から選択する。工程S16で選択された画像に対して工程S20を実行する。工程S18は実行してもよいし、実行しなくてもよい。工程S18を実行しない場合には、工程S20で第1画像101内に欠点Eがないと判定すると、工程S23を省略して工程S24を実行する。
【0084】
S20:判定部52は、第1画像101中にあらかじめ用意した検査ゲート80を設定し、検査ゲート80内における欠点Eの有無を判定する。
【0085】
検査ゲート80は、第1模様71を検査する第1検査ゲート81と、第1模様71以外の領域を検査する第2検査ゲート82とを含む。判定部52は、第1検査ゲート81と第2検査ゲート82とで異なる検査を行う。判定部52が第1検査ゲート81及び第2検査ゲート82における判定の結果、欠点Eがないと判定した場合に、制御部50はS24を実行する。第1模様71とそれ以外の領域とで異なる検査を行うことにより、欠点Eの検出精度を向上できるため、検査装置1を用いて欠点Eの有無を画像から自動的に判定できる。図6では第1検査ゲート81は、第2検査ゲート82で囲まれている。すなわち、図7に示すように第2検査ゲート82は、第1検査ゲート81を除いた領域である。
【0086】
第1検査ゲート81は、第2検査ゲート82よりも低い感度で検査を行う。例えば、判定部52の判定基準として、明暗濃度の変化例えば輝度のしきい値を設定することができる。この場合、第2検査ゲート82より第1検査ゲート81の方が輝度のしきい値が低く設定される。第1検査ゲート81は第1模様71が現れる領域に設定されているため、し
きい値を高い輝度に設定すると、第1模様71による暗部も欠点Eとして誤判定してしまうことになるからである。
【0087】
第2検査ゲート82は、第1模様71の少なくとも一部を含むように、第1画像101内の比較的広い範囲にあらかじめ設定される。
【0088】
第1検査ゲート81は、実際に撮像された画像を用いて、基準位置にあるガラスびん10の第1模様71に重なるようにオペレータが設定する。例えば、オペレータはペイント系の画像編集ソフトを用いて、第1模様71に重なるように線を描いた異なるレイヤーを第1検査ゲート81として作成できる。第1検査ゲート81の線の太さは、誤判定を抑制するため、例えば第1模様71よりも太い線にすることができる。
【0089】
画像処理部53は、判定部52による判定が行われる前に、選択部51によって選択された画像に対して暗い部分である検出体を抽出するために公知の画像処理を実施することができる。公知の画像処理としては、二値化処理、膨張、収縮、BottomHat(暗強調)、TopHat(明強調)、Average(平滑化)などがある。画像処理部53は、第1検査ゲート81と第2検査ゲート82とで二値化する際の諧調のしきい値を変えてもよい。
【0090】
S18:選択部51は、ガラスびん10の回転方向Rにおける第1画像101とは異なる角度で第1模様71の少なくとも一部に対応する模様71aが撮像された第2画像としての例えば前画像100をさらに選択してもよい。第1実施形態に係る検査方法と同様に後画像102をさらに選択してもよい。
【0091】
S30:判定部52は、第2画像としての前画像100に対応してあらかじめ用意した第1検査ゲート81と第2検査ゲート82とで異なる検査を行う。第1画像101に撮像された第1模様71の少なくとも一部を、撮像された角度の違う画像により重複して検査できるので、彫刻16による模様を欠点Eと誤判定することを抑制でき、検査精度が向上する。
【0092】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能であり、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。ここで、「同一の構成」とは、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0093】
1…検査装置、10…ガラスびん、12…中心軸、13…口部、14…胴部、14a…正面部、14b…前角部、14c…後角部、15…底部、16…彫刻、20…発光部、22…発光領域、30…載置台、30a…溝、31…回転軸、32…押さえ部材、32a…平坦面、32b…環状壁、34…自転用駆動装置、35…ベルト、36…プーリ、40…撮像部、41…基準線、42…エリアセンサカメラ、44…トラッキングミラー、50…制御部、51…選択部、52…判定部、53…画像処理部、54…記憶部、55a…第1回転検出部、55b…第2回転検出部、71…第1模様、71a…模様、71b…模様、80…検査ゲート、81…第1検査ゲート、82…第2検査ゲート、86…エッジ、90…供給部、92…搬送装置、93…回転軸、94…ベルト、95…公転用駆動装置、96…排出部、100…前画像、101…第1画像、102…後画像、D…幅、E…欠点、R…回転方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7